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17日目⑤
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指の関節を鳴らしてみたのは軽いジャブの為だった。けれど、隣にいるレオナードは、そうは聞こえなかったようだった。
「デリック、今、何て言った?」
聞いているこちらが驚く程、怒りを滲ませたものだった。演技にしたら、これは迫力がありすぎる。
慌ててレオナードに絡ませている腕を軽く引いて、やり過ぎだと伝えてみるが、彼の表情は全く動かなかった。そして、美しく整えられた庭が、一気に一触即発の空気に包まれる。
そんな中、この場にそぐわない軽い笑い声が響いた。ちなみに声の主は、弟のデリックだった。
「嫌だなぁー、兄さんったら。冗談だよ」
にこりと人懐っこい笑みに早変わりしたデリックだったけれど、私に視線を移した彼の眼は笑っていなかった。ああ、この状況が更に悪くなる予感しかしない。
「この人、なかなかの美人さんだからね。兄さんが、僕がミリアさんに恋心を抱くのか心配かなって思ってさ。あんな言い方しちゃったんだ。ごめんね、兄さん」
「そういうことなら、まぁ…………いい。ただミリアは私の婚約者だ。それを忘れるな」
「うんっ」
私の予想を良い意味で裏切って、肩透かしをくらったと思うほど、二人は兄弟だけにわかる独特の笑みを浮かべた。傍観するしかなかった私は、気付かれぬよう、ほっと安堵の息を吐く。けれど、デリックは再び余計なことを口にした。
「まぁでも、チェフ家の…………何て言ったっけ………あのご令嬢。あれと婚約するかもっていう噂を耳にしたときは、本気で縁談をぶち壊そうと思ったけどね」
さらりと物騒なことを言うデリックに慄くよりも、兄弟そろって名前を覚えていなかった事実が、地味にツボに入って、思わず笑いそうになる。
でも今ここで爆笑なんぞしようもんなら、余計にややこしい事態になるのは間違いない。崩壊寸前の表情筋を叱咤して、【あら、いやだ、困っちゃう】的な乙女の表情を作る。
そんな私の地味な努力に気付いていないデリックは、勝手気ままに言葉を続ける。
「それに言っちゃなんだけど、あの家の長男。えっと、シェナンドだっけ?あんな馬鹿と義理とはいえ血縁関係を結ぶなんて吐き気がするし。本当に良かった。安心したよ、兄さん」
さらりと変態シェナンドをディスる弟君に、今度は好感すら持ってしまう。
何だ良いヤツじゃん。うっかり殴らなくて良かった。なんてことを思っていたら───。
「でも………さ、兄さん、ちょっと教えて欲しいんだ」
小首を傾げて問うたデリックは、無邪気な笑みを浮かべている。けれど動物的直感で、これが和やかになりかけたこの場をぶち壊す何かだと気づく。
慌てて止めようとした私だったけれど、レオナードが口を開くのが一歩早かった。
「何をだ?」
「うん、あのね」
くるりとレオナードに視線を向けるデリックの口元には意地の悪い笑みが浮かんでいる。いやもう、めっさ嫌な予感しかない。
そしてその予感は見事に的中してしまった。
「長年片思いしていたのに、どうして急に、この人に心変りしたの?」
…………あぁ、それ言っちゃ駄目じゃん。
思わず額に手を当て、天を仰ぎたくなった。
「デリック、今、何て言った?」
聞いているこちらが驚く程、怒りを滲ませたものだった。演技にしたら、これは迫力がありすぎる。
慌ててレオナードに絡ませている腕を軽く引いて、やり過ぎだと伝えてみるが、彼の表情は全く動かなかった。そして、美しく整えられた庭が、一気に一触即発の空気に包まれる。
そんな中、この場にそぐわない軽い笑い声が響いた。ちなみに声の主は、弟のデリックだった。
「嫌だなぁー、兄さんったら。冗談だよ」
にこりと人懐っこい笑みに早変わりしたデリックだったけれど、私に視線を移した彼の眼は笑っていなかった。ああ、この状況が更に悪くなる予感しかしない。
「この人、なかなかの美人さんだからね。兄さんが、僕がミリアさんに恋心を抱くのか心配かなって思ってさ。あんな言い方しちゃったんだ。ごめんね、兄さん」
「そういうことなら、まぁ…………いい。ただミリアは私の婚約者だ。それを忘れるな」
「うんっ」
私の予想を良い意味で裏切って、肩透かしをくらったと思うほど、二人は兄弟だけにわかる独特の笑みを浮かべた。傍観するしかなかった私は、気付かれぬよう、ほっと安堵の息を吐く。けれど、デリックは再び余計なことを口にした。
「まぁでも、チェフ家の…………何て言ったっけ………あのご令嬢。あれと婚約するかもっていう噂を耳にしたときは、本気で縁談をぶち壊そうと思ったけどね」
さらりと物騒なことを言うデリックに慄くよりも、兄弟そろって名前を覚えていなかった事実が、地味にツボに入って、思わず笑いそうになる。
でも今ここで爆笑なんぞしようもんなら、余計にややこしい事態になるのは間違いない。崩壊寸前の表情筋を叱咤して、【あら、いやだ、困っちゃう】的な乙女の表情を作る。
そんな私の地味な努力に気付いていないデリックは、勝手気ままに言葉を続ける。
「それに言っちゃなんだけど、あの家の長男。えっと、シェナンドだっけ?あんな馬鹿と義理とはいえ血縁関係を結ぶなんて吐き気がするし。本当に良かった。安心したよ、兄さん」
さらりと変態シェナンドをディスる弟君に、今度は好感すら持ってしまう。
何だ良いヤツじゃん。うっかり殴らなくて良かった。なんてことを思っていたら───。
「でも………さ、兄さん、ちょっと教えて欲しいんだ」
小首を傾げて問うたデリックは、無邪気な笑みを浮かべている。けれど動物的直感で、これが和やかになりかけたこの場をぶち壊す何かだと気づく。
慌てて止めようとした私だったけれど、レオナードが口を開くのが一歩早かった。
「何をだ?」
「うん、あのね」
くるりとレオナードに視線を向けるデリックの口元には意地の悪い笑みが浮かんでいる。いやもう、めっさ嫌な予感しかない。
そしてその予感は見事に的中してしまった。
「長年片思いしていたのに、どうして急に、この人に心変りしたの?」
…………あぁ、それ言っちゃ駄目じゃん。
思わず額に手を当て、天を仰ぎたくなった。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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