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17日目③
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さて困った。傍から見たら、私達は婚約者同士という設定なのに、どこをどう見てもそんなふうには見えないだろう。
これが普段の私達なら別段気にすることではないけれど、これからこの契約においてのメインイベントを控えているのだ。契約書に書かれた規格外の報奨金が脳裏にチラついてしまう。…………ここは一つ私から折衷案を持ち掛けることにしよう。
「じゃあ、こうしましょう、レオナード。私達、腕を組んで弟さまに会いましょう」
ぱんっと軽く手を叩いて、そう言えば、レオナードの表情は途端に別のものに変わった。
「契約書には、腕までの接触と書いてあるが…………良いのか?ミリア嬢」
目をぱちくりするレオナードに、私はちょっと微妙な気持ちになってしまう。だって、つい一昨日まで、私達はダンスの為にがっつり触れ合っていた仲なのだ。正直言って今更感満載だ。
でも、それを言い出したら別の論議が始まりそうな予感がして、私はそれらの全てをすっ飛ばして、大きく頷くだけにする。
「ええ、私は構わないわ。腕を組んでいたら、私が弟さまに殴り掛かろうとするのを、あなたは事前に阻止できるでしょ?それなら、かなり安心じゃない?」
くるりと視線を向ければ、なぜかレオナードはがっかりした表情を浮かべてしまった。一体、彼は何を期待していたのだろうか。やっぱり、殴らないという言質が欲しいのだろうか。申し訳ないが、私は見え透いた嘘を付くような人間ではないので、ここは譲れない。
「…………嫌かしら?」
じっと上目遣いでレオナードを見つめれば、彼はまさかと言わんばかりに、勢い良く首を横に振った。
「デリックにもその方が、私達の関係を見せつけるのには都合がいい。是非とも腕を組ませてくれ」
爽やかな笑顔になったレオナードはそう言って、私に腕を差し出そうとしたが、あっと短い言葉を吐いて、その腕を引っ込めてしまった。
まさか、この秒の間に気が変わったのだろうか。クソ面倒くさい奴と心の中で悪態を付いたけれど、そうではなかった。
レオナードは忘れていたと呟きながら、上着のポケットからタイピンを取り出して、それを付けただけだった。
「…………あ、これ」
そこまで言って、驚いて言葉が見つからない。だって、レオナードが付けたタイピンは昨日私が受け取らなかったほうの宝石だったから。
たった一日で、これをタイピンに仕立て直してしまう公爵家の財力に圧巻してしまうが、限りなく透明に近い黄色のそれは、レオナードの襟元に結ばれたグレーのタイにとても良く似合っていた。
「昨日、伝え忘れていたが、君も身に着けてもらっていたので安心した。さすがだ、ミリア嬢」
ちょっと眉を上げてそう言うレオナードに再び驚いてしまう。口には出さなかっただけで、レオナードはとっくに私の髪飾りに気付いていたようだった。
「さ、弟を待たすのは、色々と厄介だ。急ごう」
用意していた髪飾りの言い訳を口にする前に、レオナードはさっさと私の手を自分の腕に絡ませて歩き始めてしまった。
そんな私は妙に頬が熱くなってしまい、絡ませた腕から熱が伝わってしまうか心配で、とてもとてもぎこちない歩き方しかできなかった。
これが普段の私達なら別段気にすることではないけれど、これからこの契約においてのメインイベントを控えているのだ。契約書に書かれた規格外の報奨金が脳裏にチラついてしまう。…………ここは一つ私から折衷案を持ち掛けることにしよう。
「じゃあ、こうしましょう、レオナード。私達、腕を組んで弟さまに会いましょう」
ぱんっと軽く手を叩いて、そう言えば、レオナードの表情は途端に別のものに変わった。
「契約書には、腕までの接触と書いてあるが…………良いのか?ミリア嬢」
目をぱちくりするレオナードに、私はちょっと微妙な気持ちになってしまう。だって、つい一昨日まで、私達はダンスの為にがっつり触れ合っていた仲なのだ。正直言って今更感満載だ。
でも、それを言い出したら別の論議が始まりそうな予感がして、私はそれらの全てをすっ飛ばして、大きく頷くだけにする。
「ええ、私は構わないわ。腕を組んでいたら、私が弟さまに殴り掛かろうとするのを、あなたは事前に阻止できるでしょ?それなら、かなり安心じゃない?」
くるりと視線を向ければ、なぜかレオナードはがっかりした表情を浮かべてしまった。一体、彼は何を期待していたのだろうか。やっぱり、殴らないという言質が欲しいのだろうか。申し訳ないが、私は見え透いた嘘を付くような人間ではないので、ここは譲れない。
「…………嫌かしら?」
じっと上目遣いでレオナードを見つめれば、彼はまさかと言わんばかりに、勢い良く首を横に振った。
「デリックにもその方が、私達の関係を見せつけるのには都合がいい。是非とも腕を組ませてくれ」
爽やかな笑顔になったレオナードはそう言って、私に腕を差し出そうとしたが、あっと短い言葉を吐いて、その腕を引っ込めてしまった。
まさか、この秒の間に気が変わったのだろうか。クソ面倒くさい奴と心の中で悪態を付いたけれど、そうではなかった。
レオナードは忘れていたと呟きながら、上着のポケットからタイピンを取り出して、それを付けただけだった。
「…………あ、これ」
そこまで言って、驚いて言葉が見つからない。だって、レオナードが付けたタイピンは昨日私が受け取らなかったほうの宝石だったから。
たった一日で、これをタイピンに仕立て直してしまう公爵家の財力に圧巻してしまうが、限りなく透明に近い黄色のそれは、レオナードの襟元に結ばれたグレーのタイにとても良く似合っていた。
「昨日、伝え忘れていたが、君も身に着けてもらっていたので安心した。さすがだ、ミリア嬢」
ちょっと眉を上げてそう言うレオナードに再び驚いてしまう。口には出さなかっただけで、レオナードはとっくに私の髪飾りに気付いていたようだった。
「さ、弟を待たすのは、色々と厄介だ。急ごう」
用意していた髪飾りの言い訳を口にする前に、レオナードはさっさと私の手を自分の腕に絡ませて歩き始めてしまった。
そんな私は妙に頬が熱くなってしまい、絡ませた腕から熱が伝わってしまうか心配で、とてもとてもぎこちない歩き方しかできなかった。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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