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15日目③
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「ミリア嬢、そろそろ、退却するするか?」
「…………え?あ、……ええ、そうね。ちょうど頃合いね」
ターンの後、ふわりと揺れるシフォンのドレスに気を取られていたせいで、レオナードの問いに答えるのが少々遅れてしまった。
瞬間、気遣う翡翠色の眼差しが降ってきた。
「足を痛めてしまったか?ミリア嬢」
「まさか。体力的にも、日頃鍛えている二本の脚も、まったく全然、これっぽっちも問題ないわ。朝までだって余裕で踊れると思う。ただ気力的には、ちょっと自信がないけれど」
「良かった。安心した。あと、私も君と同じ気持ちだ」
勢い良く首を横に振りたいところだけれど、今は絶賛ダンス中。声を潜めて応えるのが精一杯だった。けれど、レオナードは淡々と答えた私に、ちょっと眉を上げて、再び恋人に向ける優しい笑みを浮かべた。
そんな居心地が悪くなる彼の表情を避けるように、私はちらりと辺りを伺った。
夜会は中盤を迎え、賑わいは最高潮になってきた。もちろん、私達が受ける視線も比例している。この辺りでとんずらしなければ、退却はより難しくなるだろう。
けれど、どうやらそう簡単にはいかないようだ。
「ねえレオナード、ちょっと困ったわ。退路が全て断たれてしまっているわ」
声を潜めてそう囁けば、レオナードもさすがに小さくため息をついた。
これまで鉄壁だった彼の表情が崩れたのも致し方ない。なにせ出口に向かう扉には、すでに着飾った令嬢達に包囲されている。そして、その令嬢に群がる蜂の如く、男性陣が引き寄せられている状態なのだ。
アレを突破するのは、かなりの難関だ。ある程度は覚悟していた私だけれど、さすがにここまでとは予測できなかった。
けれどレオナードは、一瞬表情が崩れたけれど、それ以外は至極冷静だった。
「ああ、これは由々しき事態だな。ただ、万策尽きたわけではない。………………ここはもう強行突破でいく。いくぞ、ミリア嬢」
強行突破とはなんぞや!?とレオナードに聞く前に、彼は行動で示してくれた。私の腰を強く抱き、庭へと続くテラスへと一直線に歩き出したのだ。
ダンスは曲が終わるまで最後まで踊りきる。その常識をレオナードはあっさりと打ち破ったのだ。
「え?ちょっ、ちょっと待って────」
「ギャラリーが見ている。ここは演じてくれ」
「………………」
公爵家のご長男様のまさかの暴挙に、まるでモーゼのなんちゃらのように人々が左右に別れ、道が開けていく。そして、短い言葉で私を諫めた後、顔色一つ変えずに悠然と歩くレオナード。
ほとんど引きずられるように歩く私としては、心を無にして足を左右に動かすことしかできない。
そして、強行突破は成功し、私達は無事に(?)会場を後にすることができた。
庭を並んで歩く私達。けれど、レオナードの手は私の腰に添えられたまま。布ごしに彼の手のひらの温もりが伝わってきて、意識したくなくても、そこに意識が向いてしまう。ま、レオナードにとったら、これも念には念を入れて、というこのなのだろうけれど。
ただ私としては、さっきから予想外のことばかりで、心がざわざわと落ち着かない。こんなことなら、もっと入念な打ち合わせをするべきだった。
と、そんなことを考えながら、一刻も早く馬車に乗り込もうと足早に歩を進めていたら───。
「お待ちくださいレオナード様っ」
という、悲痛な叫び声が背後から聞こえて来た。
振り返ったそこには、チェフ家の令嬢が居た。
「…………え?あ、……ええ、そうね。ちょうど頃合いね」
ターンの後、ふわりと揺れるシフォンのドレスに気を取られていたせいで、レオナードの問いに答えるのが少々遅れてしまった。
瞬間、気遣う翡翠色の眼差しが降ってきた。
「足を痛めてしまったか?ミリア嬢」
「まさか。体力的にも、日頃鍛えている二本の脚も、まったく全然、これっぽっちも問題ないわ。朝までだって余裕で踊れると思う。ただ気力的には、ちょっと自信がないけれど」
「良かった。安心した。あと、私も君と同じ気持ちだ」
勢い良く首を横に振りたいところだけれど、今は絶賛ダンス中。声を潜めて応えるのが精一杯だった。けれど、レオナードは淡々と答えた私に、ちょっと眉を上げて、再び恋人に向ける優しい笑みを浮かべた。
そんな居心地が悪くなる彼の表情を避けるように、私はちらりと辺りを伺った。
夜会は中盤を迎え、賑わいは最高潮になってきた。もちろん、私達が受ける視線も比例している。この辺りでとんずらしなければ、退却はより難しくなるだろう。
けれど、どうやらそう簡単にはいかないようだ。
「ねえレオナード、ちょっと困ったわ。退路が全て断たれてしまっているわ」
声を潜めてそう囁けば、レオナードもさすがに小さくため息をついた。
これまで鉄壁だった彼の表情が崩れたのも致し方ない。なにせ出口に向かう扉には、すでに着飾った令嬢達に包囲されている。そして、その令嬢に群がる蜂の如く、男性陣が引き寄せられている状態なのだ。
アレを突破するのは、かなりの難関だ。ある程度は覚悟していた私だけれど、さすがにここまでとは予測できなかった。
けれどレオナードは、一瞬表情が崩れたけれど、それ以外は至極冷静だった。
「ああ、これは由々しき事態だな。ただ、万策尽きたわけではない。………………ここはもう強行突破でいく。いくぞ、ミリア嬢」
強行突破とはなんぞや!?とレオナードに聞く前に、彼は行動で示してくれた。私の腰を強く抱き、庭へと続くテラスへと一直線に歩き出したのだ。
ダンスは曲が終わるまで最後まで踊りきる。その常識をレオナードはあっさりと打ち破ったのだ。
「え?ちょっ、ちょっと待って────」
「ギャラリーが見ている。ここは演じてくれ」
「………………」
公爵家のご長男様のまさかの暴挙に、まるでモーゼのなんちゃらのように人々が左右に別れ、道が開けていく。そして、短い言葉で私を諫めた後、顔色一つ変えずに悠然と歩くレオナード。
ほとんど引きずられるように歩く私としては、心を無にして足を左右に動かすことしかできない。
そして、強行突破は成功し、私達は無事に(?)会場を後にすることができた。
庭を並んで歩く私達。けれど、レオナードの手は私の腰に添えられたまま。布ごしに彼の手のひらの温もりが伝わってきて、意識したくなくても、そこに意識が向いてしまう。ま、レオナードにとったら、これも念には念を入れて、というこのなのだろうけれど。
ただ私としては、さっきから予想外のことばかりで、心がざわざわと落ち着かない。こんなことなら、もっと入念な打ち合わせをするべきだった。
と、そんなことを考えながら、一刻も早く馬車に乗り込もうと足早に歩を進めていたら───。
「お待ちくださいレオナード様っ」
という、悲痛な叫び声が背後から聞こえて来た。
振り返ったそこには、チェフ家の令嬢が居た。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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