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11日目③
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ほとんど拉致という状態で私はアルバードに連行され、レオナードのお母様の元へと歩く。
どうでも良いけれど、この屋敷の廊下には無駄な装飾品が等間隔に並べられている。最初は置く場所に困って放置しているのかと思ったけれど、この馬鹿デカい屋敷なら仕舞う場所に困るわけがないので、展示されているということなのだ。
全くもって金持ちのやる事は摩訶不思議だ。
我が家の廊下には絵画や花瓶などと言った装飾品は一切置いていない。あ……そうか。兄二人が廊下も鍛錬の時に使うから、置くに置けないということか。でも、質素倹約をモットーにしているお母様の事、兄達が廊下で鍛錬をしなくても、装飾品を置くことはしないだろう。
というどうでも良いことを考えながら歩いてみる。そう、そんなくだらないことでも考えなければ、私はこの胸の内で暴れる感情を抑え込むことができないのだ。
まったくもってアルバードは、姑息な手を使ってくれたものだ。
今まで彼はどんなに私の逆鱗に触れようとも自分の力でなんとかしようとしてきた。なのに、今回は彼らしくもない手段を選んだ。それはきっと、そうせざるを得なかったから。
それに認めたくないけれど、彼の謀略を読めなかった自分にもわずかに非がある。だから今回は甘んじて、レオナードのお母様と対峙しよう。けれど、その後はしっかり彼と話し合わなくてはならない。もちろん拳でだ。
「こちらでございます、ミリアさま」
無意識に指の関節を鳴らした途端、前を歩くアルバードの足がピタリと止まった。どうやら、ここがレオナードのお母様が待つ部屋のようだ。
さて、この扉の向こうには、所謂【ざあます言葉】を吐く魔物が潜んでいる。間違いなく私が最も苦手とするタイプだろう。でも、敵前逃亡は我が家の恥になるので、それはしない。
けれど、全てを甘受するつもりはないので、しっかりクギを指すのも忘れない。
「アルバード、言っておくけれど、わたくし5分経ったら、どんな状況でもお暇させていただきますわよ」
「かしこまりました」
初老の執事は私の言葉に難色を見せると思いきや、あっさりと頷いて、恭しく扉を開けた。
「失礼いたします。奥様、ミリア様をお連れしました」
一礼したアルバードは、視線だけで私に入室を促す。そして、意を決して部屋に一歩踏み出した途端、可憐な声が飛んできた。
【やだーっ、可愛いっ!!】と。
そして、驚いて硬直する私に向かって突進してくる人がいる────それはレオナードのお母様であった。
「っんもう、レオナードったらこんな可愛いお嬢さんとダンスできるなんて幸せ者ねっ。わたくしったら、てっきりロフィ家のお嬢さんとの婚約が嫌で、適当な嘘を吐いたと思っていたの。でも………ふふっ、違ったみたいね」
「…………はぁ」
出会って2秒で私は、この女性に絶対に敵わないことを知った。
それは家柄とか見た目の美醜とかではなく、目の前の女性が女子力全開の乙女系タイプだったから。
何となく目を合わせたら最後、どこまでも一方的に喋り散らかす予感がして私は曖昧な返事をした後、視線を泳がせながら辺りを伺う。
深みのあるボルドーの壁紙を基調として、シックな家具に囲まれたこの部屋は、多分レオナードのお母様の私室なのだろう。けれど、物凄く広い。ボールルームも大概広かったけれど、それよりもだ。
「あら、緊張なさっているの?うふふっ。可愛らしいお嬢さんね。そんなに硬くならないで。実は今日、あなたをお呼びしたのは、息子の粋な計らいに、私も一口乗りたいなと思ったからなの」
「………………え?」
正確には『え゛』に近い発音だったけれど、お母様は気付いていらっしゃらないご様子だ。良かった、人の話を聞かない人で。
思わず素が出て焦ったけれど、何とか誤魔化すことができてほっと安堵の息を吐く。けれどそれは一瞬だった。
「可愛いお嬢さん、わたくしからのささやかな贈り物を受け取ってくださいな」
そう言って、レオナードのお母様は突拍子もなく優雅に扇を開いた。そうすれば、アルバードは無言で部屋の扉を開けた。途端にぞろぞろ入室してくる、人、人、人。え?何ですかこの人達。
予想もしなかった出来事が続いて呆然とする私に、レオナードのお母様は、くすくすと無邪気な笑みを浮かべてこう言った。
「夜会当日、あなたを素敵なお嬢様にして差し上げますわ。でも安心してくださいな。時間は取らせませんから。だって、今はダンスの練習の最中なんでしょ?靴屋に、仕立て屋に、宝石屋。全部呼んでおいたから、すぐに採寸できるから。あっでも、仕上がりは当日のお楽しみにしていてね」
可憐なウィンクをするレオナードのお母様は、年齢を感じさせないくらい可愛らしかった。
けれど、これが身内で毎日顔を会わせないといけないのだと思ったら、ぶっちゃけキツイなとも思ったりした。
どうでも良いけれど、この屋敷の廊下には無駄な装飾品が等間隔に並べられている。最初は置く場所に困って放置しているのかと思ったけれど、この馬鹿デカい屋敷なら仕舞う場所に困るわけがないので、展示されているということなのだ。
全くもって金持ちのやる事は摩訶不思議だ。
我が家の廊下には絵画や花瓶などと言った装飾品は一切置いていない。あ……そうか。兄二人が廊下も鍛錬の時に使うから、置くに置けないということか。でも、質素倹約をモットーにしているお母様の事、兄達が廊下で鍛錬をしなくても、装飾品を置くことはしないだろう。
というどうでも良いことを考えながら歩いてみる。そう、そんなくだらないことでも考えなければ、私はこの胸の内で暴れる感情を抑え込むことができないのだ。
まったくもってアルバードは、姑息な手を使ってくれたものだ。
今まで彼はどんなに私の逆鱗に触れようとも自分の力でなんとかしようとしてきた。なのに、今回は彼らしくもない手段を選んだ。それはきっと、そうせざるを得なかったから。
それに認めたくないけれど、彼の謀略を読めなかった自分にもわずかに非がある。だから今回は甘んじて、レオナードのお母様と対峙しよう。けれど、その後はしっかり彼と話し合わなくてはならない。もちろん拳でだ。
「こちらでございます、ミリアさま」
無意識に指の関節を鳴らした途端、前を歩くアルバードの足がピタリと止まった。どうやら、ここがレオナードのお母様が待つ部屋のようだ。
さて、この扉の向こうには、所謂【ざあます言葉】を吐く魔物が潜んでいる。間違いなく私が最も苦手とするタイプだろう。でも、敵前逃亡は我が家の恥になるので、それはしない。
けれど、全てを甘受するつもりはないので、しっかりクギを指すのも忘れない。
「アルバード、言っておくけれど、わたくし5分経ったら、どんな状況でもお暇させていただきますわよ」
「かしこまりました」
初老の執事は私の言葉に難色を見せると思いきや、あっさりと頷いて、恭しく扉を開けた。
「失礼いたします。奥様、ミリア様をお連れしました」
一礼したアルバードは、視線だけで私に入室を促す。そして、意を決して部屋に一歩踏み出した途端、可憐な声が飛んできた。
【やだーっ、可愛いっ!!】と。
そして、驚いて硬直する私に向かって突進してくる人がいる────それはレオナードのお母様であった。
「っんもう、レオナードったらこんな可愛いお嬢さんとダンスできるなんて幸せ者ねっ。わたくしったら、てっきりロフィ家のお嬢さんとの婚約が嫌で、適当な嘘を吐いたと思っていたの。でも………ふふっ、違ったみたいね」
「…………はぁ」
出会って2秒で私は、この女性に絶対に敵わないことを知った。
それは家柄とか見た目の美醜とかではなく、目の前の女性が女子力全開の乙女系タイプだったから。
何となく目を合わせたら最後、どこまでも一方的に喋り散らかす予感がして私は曖昧な返事をした後、視線を泳がせながら辺りを伺う。
深みのあるボルドーの壁紙を基調として、シックな家具に囲まれたこの部屋は、多分レオナードのお母様の私室なのだろう。けれど、物凄く広い。ボールルームも大概広かったけれど、それよりもだ。
「あら、緊張なさっているの?うふふっ。可愛らしいお嬢さんね。そんなに硬くならないで。実は今日、あなたをお呼びしたのは、息子の粋な計らいに、私も一口乗りたいなと思ったからなの」
「………………え?」
正確には『え゛』に近い発音だったけれど、お母様は気付いていらっしゃらないご様子だ。良かった、人の話を聞かない人で。
思わず素が出て焦ったけれど、何とか誤魔化すことができてほっと安堵の息を吐く。けれどそれは一瞬だった。
「可愛いお嬢さん、わたくしからのささやかな贈り物を受け取ってくださいな」
そう言って、レオナードのお母様は突拍子もなく優雅に扇を開いた。そうすれば、アルバードは無言で部屋の扉を開けた。途端にぞろぞろ入室してくる、人、人、人。え?何ですかこの人達。
予想もしなかった出来事が続いて呆然とする私に、レオナードのお母様は、くすくすと無邪気な笑みを浮かべてこう言った。
「夜会当日、あなたを素敵なお嬢様にして差し上げますわ。でも安心してくださいな。時間は取らせませんから。だって、今はダンスの練習の最中なんでしょ?靴屋に、仕立て屋に、宝石屋。全部呼んでおいたから、すぐに採寸できるから。あっでも、仕上がりは当日のお楽しみにしていてね」
可憐なウィンクをするレオナードのお母様は、年齢を感じさせないくらい可愛らしかった。
けれど、これが身内で毎日顔を会わせないといけないのだと思ったら、ぶっちゃけキツイなとも思ったりした。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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