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27日目
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.。*゚+.*.。 27日目 ゚+..。*゚+
「無事、帰還おめでとう。レオナード」
「…………ああ、何度か死んだ祖母の顔がちらついたが、無事こうして生きている」
「そう。亡きお婆様に再会できて良かったわね。あとね、考えようによったら、こんな恐ろしい体験をして、かつ、五体満足のまま生還できたのなら、これから先どんなことがあっても大丈夫って思わない?」
「ま、まぁそういう考えもあるな。まったく君は、無駄にポジティブな考え方をするな、ミリア嬢。私は、もう色んな感情を飛び越えて、君を尊敬しているよ」
「あら、今頃?尊敬してほしいタイミングは沢山あったと思うけど。でも、まっいいわ、ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ」
「そこもポジティブだな……………あっ、いや、なんでもない。さて、そろそろ時間だ」
「…………そう。じゃあ、ありきたりだけれど、頑張ってね。成功を祈っているわ、レオナード」
「ありがとうミリア嬢。行ってくるよ。ありきたりだけれど、君も元気で」
そう言って私達は、同時に立ち上がった。そしてこれまた同時に口を開いた。
「さようなら」
「さようなら」
別れの言葉を紡いだ途端、爽やかな風が二人の間を通り抜けていき、東屋のテーブルにセットされたテーブルクロスがふわりと浮く。
それが静かに元の位置に戻ったのを合図に私達は歩き出した。
私のドレスは何時も通り質素倹約を絵に描いたような地味なドレス。けれどレオナードは、まるで街に居る青年のようなそれ。足元に至っては、旅靴と言われるゴツいブーツだ。
日頃の彼を目にしていれば違和感がある。けれど、事情を知っている私からすれば当然の服装だ。
頑張ってね、レオナード。あなたは、やればできる子なんだから。
私は歩く足を止めて、そう心の中でエールを送る。反対にレオナードは立ち止まった私に気付いて、振り返ろうとした。けれどその足は止まることはなかった。
うん、それで良い。っていうか、間に合わなかったら、シャレにならないからさっさと行け。
去っていく彼の後ろ姿を見つめ、私は笑みを浮かべつつも、若干、ハラハラする。割合的には、後半のハラハラ度の方が多い。
そんな初めてのお遣いを見守る保護者のような気持ちでいたけれど、完全にレオナードの姿が消えれば、つんっと鼻の奥が痛んだ。
今日レオナードは、アイリーンさんに会う。もっと詳しく説明すると、レオナードは故郷に帰るアイリーンさんに会うのだ。そしてきっとそのまま、アイリーンさんの故郷に留まるのだろう。今日の彼の服装はその決意の表れなのだ。
でも、家族には何と言って出たのだろう。こっそり屋敷の使用人を観察したけれど、いつもと違うレオナードの服装に彼らは疑問視することも、訝しむ様子もなかった。
まぁいっか。外に出ちゃえばこっちのものだ。
それに、これ以上あれこれ考えても、私にできることはもう何もないのだから。できることは全て昨日のうちに終わらせてある。
私は昨日、レオナードが自宅へ向かった後、とある場所に向かった。───そこはつい先日、訪問したアイリーンさんの自宅。
そして私はアイリーンさんに懇願した。『故郷に帰る前に、レオナードに、もう一度だけあって欲しい』と。もちろんアイリーンさんは、即座に断った。取り付く島もない程、秒速で。
でも、私は頑張った。それはそれは頑張って説得というか、お願いをした。
どうにも頷いてくれないアイリーンさんに、最終的に土下座をし…………ようとしたけれど、それは彼女に止められてしまってできずじまいだったけれど。
そして、私の土下座しようとした意気込みが伝わったのか、それとも『急に居なってしまったら、気持ちはずっと宙ぶらりんになってしまいますっ』という私の言葉が届いたのかわからないけれど…………アイリーンさんは、やっと頷いてくれた。
そして、今に至るのだ。
先に言っておくけれど、善は急げというけれど、昨日の今日で行動に移すのは、随分と早くね?というツッコミは無しにして欲しい。だって、アイリーンさんが故郷に帰るのは、今日なのだから。早い早くないという問題ではなく、行動に移すのは今日しかなかったのだ。
という、そんなこんな慌ただしい状況で、レオナードは心を決めて、行動を示してくれた。
「………レオナード、ありがとう。私の我儘に付き合ってくれて」
今度は声に出して言ってみる。
実はレオナードの為なんていうふうに聞こえるかもしれないけれど、本当は、これは全部、私の自己満足なのだ。
私は、今になっても私達の契約はwin-winじゃないといけないと思っている。けれど、このままだと私だけがwinになってしまうのだ。
昨日、自宅に戻った私に、父上はこう言った。『ミリア、もう何も言わない。お前の好きにすると良い』と。
天変地異が起こったのかと思った。いや、父上が死ぬのかと思った。でも、そうではなく、レオナードは約束通り私の未来を護ってくれたのだ。
とっても嬉しかった。でも、私だけ、望む未来に進むのが、どうしても嫌だった。
私はレオナードに幸せになって欲しい。海を渡った後でも、彼のことを思い出せば、いつでも笑顔でいる彼を想像したい。きっと元気で過ごしているだろうといつでも思いたい。
だから、これで良い。軋む胸の痛みも、未だにつんとする鼻の奥の痛みも、きっときっと気のせいだろう。
だから私は、痛みを振り払うように勢いよく振り返る。次いで、今までありがとう。そんな気持ちを込めて、ロフィ家の庭に一礼した。────そして、私は自宅へと戻ったのであった。
っと、最後に………もう、言っちゃって良いかな。
本当に本当に余談だけれど、今日のレオナードはとてもカッコよかった。飾らない彼の服装は、いつもの何倍も素敵だった。まぁ、夜会の時の盛装もそれなりにカッコよかったけれど。
装飾の無いシンプルな服装は、彼の本来の見目麗しさを最大限に引き立ててくれることを、今日、知った。
あとは、兄さま達が普段着にしている稽古着なんかも、きっと似合うのだろう。一度くらいは見てみたかった。それだけが、唯一の心残りだったりもする。
「無事、帰還おめでとう。レオナード」
「…………ああ、何度か死んだ祖母の顔がちらついたが、無事こうして生きている」
「そう。亡きお婆様に再会できて良かったわね。あとね、考えようによったら、こんな恐ろしい体験をして、かつ、五体満足のまま生還できたのなら、これから先どんなことがあっても大丈夫って思わない?」
「ま、まぁそういう考えもあるな。まったく君は、無駄にポジティブな考え方をするな、ミリア嬢。私は、もう色んな感情を飛び越えて、君を尊敬しているよ」
「あら、今頃?尊敬してほしいタイミングは沢山あったと思うけど。でも、まっいいわ、ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ」
「そこもポジティブだな……………あっ、いや、なんでもない。さて、そろそろ時間だ」
「…………そう。じゃあ、ありきたりだけれど、頑張ってね。成功を祈っているわ、レオナード」
「ありがとうミリア嬢。行ってくるよ。ありきたりだけれど、君も元気で」
そう言って私達は、同時に立ち上がった。そしてこれまた同時に口を開いた。
「さようなら」
「さようなら」
別れの言葉を紡いだ途端、爽やかな風が二人の間を通り抜けていき、東屋のテーブルにセットされたテーブルクロスがふわりと浮く。
それが静かに元の位置に戻ったのを合図に私達は歩き出した。
私のドレスは何時も通り質素倹約を絵に描いたような地味なドレス。けれどレオナードは、まるで街に居る青年のようなそれ。足元に至っては、旅靴と言われるゴツいブーツだ。
日頃の彼を目にしていれば違和感がある。けれど、事情を知っている私からすれば当然の服装だ。
頑張ってね、レオナード。あなたは、やればできる子なんだから。
私は歩く足を止めて、そう心の中でエールを送る。反対にレオナードは立ち止まった私に気付いて、振り返ろうとした。けれどその足は止まることはなかった。
うん、それで良い。っていうか、間に合わなかったら、シャレにならないからさっさと行け。
去っていく彼の後ろ姿を見つめ、私は笑みを浮かべつつも、若干、ハラハラする。割合的には、後半のハラハラ度の方が多い。
そんな初めてのお遣いを見守る保護者のような気持ちでいたけれど、完全にレオナードの姿が消えれば、つんっと鼻の奥が痛んだ。
今日レオナードは、アイリーンさんに会う。もっと詳しく説明すると、レオナードは故郷に帰るアイリーンさんに会うのだ。そしてきっとそのまま、アイリーンさんの故郷に留まるのだろう。今日の彼の服装はその決意の表れなのだ。
でも、家族には何と言って出たのだろう。こっそり屋敷の使用人を観察したけれど、いつもと違うレオナードの服装に彼らは疑問視することも、訝しむ様子もなかった。
まぁいっか。外に出ちゃえばこっちのものだ。
それに、これ以上あれこれ考えても、私にできることはもう何もないのだから。できることは全て昨日のうちに終わらせてある。
私は昨日、レオナードが自宅へ向かった後、とある場所に向かった。───そこはつい先日、訪問したアイリーンさんの自宅。
そして私はアイリーンさんに懇願した。『故郷に帰る前に、レオナードに、もう一度だけあって欲しい』と。もちろんアイリーンさんは、即座に断った。取り付く島もない程、秒速で。
でも、私は頑張った。それはそれは頑張って説得というか、お願いをした。
どうにも頷いてくれないアイリーンさんに、最終的に土下座をし…………ようとしたけれど、それは彼女に止められてしまってできずじまいだったけれど。
そして、私の土下座しようとした意気込みが伝わったのか、それとも『急に居なってしまったら、気持ちはずっと宙ぶらりんになってしまいますっ』という私の言葉が届いたのかわからないけれど…………アイリーンさんは、やっと頷いてくれた。
そして、今に至るのだ。
先に言っておくけれど、善は急げというけれど、昨日の今日で行動に移すのは、随分と早くね?というツッコミは無しにして欲しい。だって、アイリーンさんが故郷に帰るのは、今日なのだから。早い早くないという問題ではなく、行動に移すのは今日しかなかったのだ。
という、そんなこんな慌ただしい状況で、レオナードは心を決めて、行動を示してくれた。
「………レオナード、ありがとう。私の我儘に付き合ってくれて」
今度は声に出して言ってみる。
実はレオナードの為なんていうふうに聞こえるかもしれないけれど、本当は、これは全部、私の自己満足なのだ。
私は、今になっても私達の契約はwin-winじゃないといけないと思っている。けれど、このままだと私だけがwinになってしまうのだ。
昨日、自宅に戻った私に、父上はこう言った。『ミリア、もう何も言わない。お前の好きにすると良い』と。
天変地異が起こったのかと思った。いや、父上が死ぬのかと思った。でも、そうではなく、レオナードは約束通り私の未来を護ってくれたのだ。
とっても嬉しかった。でも、私だけ、望む未来に進むのが、どうしても嫌だった。
私はレオナードに幸せになって欲しい。海を渡った後でも、彼のことを思い出せば、いつでも笑顔でいる彼を想像したい。きっと元気で過ごしているだろうといつでも思いたい。
だから、これで良い。軋む胸の痛みも、未だにつんとする鼻の奥の痛みも、きっときっと気のせいだろう。
だから私は、痛みを振り払うように勢いよく振り返る。次いで、今までありがとう。そんな気持ちを込めて、ロフィ家の庭に一礼した。────そして、私は自宅へと戻ったのであった。
っと、最後に………もう、言っちゃって良いかな。
本当に本当に余談だけれど、今日のレオナードはとてもカッコよかった。飾らない彼の服装は、いつもの何倍も素敵だった。まぁ、夜会の時の盛装もそれなりにカッコよかったけれど。
装飾の無いシンプルな服装は、彼の本来の見目麗しさを最大限に引き立ててくれることを、今日、知った。
あとは、兄さま達が普段着にしている稽古着なんかも、きっと似合うのだろう。一度くらいは見てみたかった。それだけが、唯一の心残りだったりもする。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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