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18日目①
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.。*゚+.*.。 18日目 ゚+..。*゚+
「今日も街に行きたいんだが、付き合ってもらえるか?」
「あらレオナード、口の利き方を覚えたようね」
「………いきなり辛辣だな。だが頼む」
「まぁ、特に予定もないし別に良いわよ」
「恩に着る。アイリーンが体調を崩したと聞いて、居も立っても居られないんだ」
「そう、お見舞いに行きたかったのね。でも、これはお見舞い品?」
「ああ、きっと彼女が喜ぶと思って、選んだんだ」
「…………アイリーンさんの家に行く前に、選び直しましょう」
レオナードは、お見舞い品については自信満々、でも片想い中のアイリーンさんのことが心配で、浮足立っているご様子だ。良く見れば、彼の足は本当に2センチ程浮いている。.........というのは嘘だけれど。
もちろんこうして毎日顔を会わせているのも、昨日、茶番を演じたのも、全部レオナードがアイリーンさんと駆け落ちをするため。
だから私は嫌な顔をするつもりは無いし、レオナードを引き留めるつもりもない。ただ、馬車に積まれた数々の品を見て口を出さずにはいられなかった。
さて今日の私達はロフィ家の門前に居る。なぜこんなところで立ち話をしているかと言えば、レオナードがここで待ち伏せをしていたからだ。
きっと前回、サンルームで私を怒らせたことを覚えているからの行動だろう。もしくは、一秒でも早く彼女の元に向かいたいからか。ああ、そういえば弟のデリックがまだ屋敷にいるからかもしれない。
と、色々推測したけれど、ぶっちゃけ私にとったら些末なこと。それより、話を元に戻すけれど、この馬車に積まれたお見舞い品にだけは物申したい。
扉が開け放たれている馬車から見えるのは、ラッピングされた大小様々な箱。多分、ドレスとか宝石類とかなのだろう。なぜわかるかと言えば、私も同じ箱をつい先日贈られたから。…………夜会前日に。
そこでふと視線を感じて顔を向ければ、ちょっとムッとしているレオナードと目が合った。どうやらこのお坊ちゃんは、お見舞い品にケチを付けた私にお怒りのようだ。
「レオナード、今、アイリーンさんが体調を崩したと言っていたけれど、詳しい病名は?」
「風邪だと聞いているが…………」
そこまで言って、レオナードは口を噤んでしまった。翡翠色の瞳が憂えている。いつもならムキになって言い返してくるのに、今日の彼はそんな余裕はないらしい。本当に心からアイリーンさんを心配しているのだろう。
ああ………なんというか、とても残念だ。一昨日あれだけ二人で恋愛小説を読み漁ったというのに。かつ、以前、彼は図書室で女性の口説き方について独り学んだはずだというのに。
それが全然、全く、何一つ身についていないなんて。
「ねえレオナード、贈り物をするときってタイミングも必要よ。風邪を引いていて寝込んでいる人時には、女性が喜ぶ一般的な品よりも先に、まず元気になってもらう品を選ぶべきじゃないのかしら?」
「…………確かにそうだ」
少しの間の後、レオナードは、しゅんと肩を落として、小さく呟いた。
本当は嫌味の一つでも言ってから、これを伝えようと思った。けれど、弱っている人間を更に追い込むのは私の主義に反するので、それは次回までとっておくことにする。
とにもかくにも、一先ずレオナードには元気を出して欲しい。
「レオナード、僭越ですが私にお見舞いの品を選ばせて貰える?」
「.........ああ、もちろんだとも」
私の提案にレオナードは、再び少し間を置いて頷いた。顔色まで少し悪くみえる。
ああ、もしかして彼は、アイリーンさんを想うあまり、自分まで風邪を引いてしまったと錯覚しているのかもしれない。
全くもって情けない。お見舞いに行く人間が、病人を心配させるような顔色になってどうするというのだ。今すぐ首根っこを掴んで、庭の噴水に頭からぶち込んでやろうか。そうすれば一発で、目を覚ましてくれるだろう。
ということをふと思い付いたけれど、気付けば私はレオナードに引っ張られて、馬車に乗り込んでいた。
「今日も街に行きたいんだが、付き合ってもらえるか?」
「あらレオナード、口の利き方を覚えたようね」
「………いきなり辛辣だな。だが頼む」
「まぁ、特に予定もないし別に良いわよ」
「恩に着る。アイリーンが体調を崩したと聞いて、居も立っても居られないんだ」
「そう、お見舞いに行きたかったのね。でも、これはお見舞い品?」
「ああ、きっと彼女が喜ぶと思って、選んだんだ」
「…………アイリーンさんの家に行く前に、選び直しましょう」
レオナードは、お見舞い品については自信満々、でも片想い中のアイリーンさんのことが心配で、浮足立っているご様子だ。良く見れば、彼の足は本当に2センチ程浮いている。.........というのは嘘だけれど。
もちろんこうして毎日顔を会わせているのも、昨日、茶番を演じたのも、全部レオナードがアイリーンさんと駆け落ちをするため。
だから私は嫌な顔をするつもりは無いし、レオナードを引き留めるつもりもない。ただ、馬車に積まれた数々の品を見て口を出さずにはいられなかった。
さて今日の私達はロフィ家の門前に居る。なぜこんなところで立ち話をしているかと言えば、レオナードがここで待ち伏せをしていたからだ。
きっと前回、サンルームで私を怒らせたことを覚えているからの行動だろう。もしくは、一秒でも早く彼女の元に向かいたいからか。ああ、そういえば弟のデリックがまだ屋敷にいるからかもしれない。
と、色々推測したけれど、ぶっちゃけ私にとったら些末なこと。それより、話を元に戻すけれど、この馬車に積まれたお見舞い品にだけは物申したい。
扉が開け放たれている馬車から見えるのは、ラッピングされた大小様々な箱。多分、ドレスとか宝石類とかなのだろう。なぜわかるかと言えば、私も同じ箱をつい先日贈られたから。…………夜会前日に。
そこでふと視線を感じて顔を向ければ、ちょっとムッとしているレオナードと目が合った。どうやらこのお坊ちゃんは、お見舞い品にケチを付けた私にお怒りのようだ。
「レオナード、今、アイリーンさんが体調を崩したと言っていたけれど、詳しい病名は?」
「風邪だと聞いているが…………」
そこまで言って、レオナードは口を噤んでしまった。翡翠色の瞳が憂えている。いつもならムキになって言い返してくるのに、今日の彼はそんな余裕はないらしい。本当に心からアイリーンさんを心配しているのだろう。
ああ………なんというか、とても残念だ。一昨日あれだけ二人で恋愛小説を読み漁ったというのに。かつ、以前、彼は図書室で女性の口説き方について独り学んだはずだというのに。
それが全然、全く、何一つ身についていないなんて。
「ねえレオナード、贈り物をするときってタイミングも必要よ。風邪を引いていて寝込んでいる人時には、女性が喜ぶ一般的な品よりも先に、まず元気になってもらう品を選ぶべきじゃないのかしら?」
「…………確かにそうだ」
少しの間の後、レオナードは、しゅんと肩を落として、小さく呟いた。
本当は嫌味の一つでも言ってから、これを伝えようと思った。けれど、弱っている人間を更に追い込むのは私の主義に反するので、それは次回までとっておくことにする。
とにもかくにも、一先ずレオナードには元気を出して欲しい。
「レオナード、僭越ですが私にお見舞いの品を選ばせて貰える?」
「.........ああ、もちろんだとも」
私の提案にレオナードは、再び少し間を置いて頷いた。顔色まで少し悪くみえる。
ああ、もしかして彼は、アイリーンさんを想うあまり、自分まで風邪を引いてしまったと錯覚しているのかもしれない。
全くもって情けない。お見舞いに行く人間が、病人を心配させるような顔色になってどうするというのだ。今すぐ首根っこを掴んで、庭の噴水に頭からぶち込んでやろうか。そうすれば一発で、目を覚ましてくれるだろう。
ということをふと思い付いたけれど、気付けば私はレオナードに引っ張られて、馬車に乗り込んでいた。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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