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19日目①
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.。*゚+.*.。 19日目 ゚+..。*゚+
「おはようレオナード」
「…………おはよう、ミリア嬢」
「早速だけれど、私、あなたのテンションの低さについて、何かしらのリアクションを取った方が良いかしら?」
「…………それについては、特にこちらからの希望はない」
「あらそうなの?その低いテンションが振り切れるくらいのブラックジョークをかますくらいは、やぶさかじゃないわよ?」
「…………ありがとう。気持ちだけもらっておく。それよりも、今日は君に相談したいことがある」
「あら、ごめんなさい。あいにく相談は契約に含まれていません」
「………君の好きなケーキと、当家シェフティエ自慢のスコーンを用意した」
「私で良ければ、相談に乗りますわ。レオナード」
「………ああ、ありがとう」
ほんわかしたスコーンを目にするなり、手のひらを返した私にレオナードは一瞬だけ微妙な顔をしたけれど、すぐにアルバードに向かって『ありったけ持ってこいっ』と叫んだ。
何だか最近レオナードの言動が、ちょいちょい公爵家のお坊ちゃまから、はみ出していくような気がしてならない。…………私のせいだろうか。
なにせ私は、なんちゃって男爵令嬢。中身はしょせんド庶民。知らず知らずのうちに、彼に悪い影響を与えているのかもしれない。
そんなことをふと思ったら、昨日の一件についても不安を覚えてしまった。
「ねえ、レオナード。今更聞くのもアレなんだけれど………。私………お見舞い品、失敗しちゃったかしら?」
おずおずと問いかければ、レオナードはとんでもないといった感じで大きく首を横に振った。
「いや、安心してくれ。それは素直に受け取って貰えたし、とても喜んでいた。改めてありがとう。恩に着る。………ただ私の見舞い品は、受け取って貰えなかった」
「………………」
しゅんと肩を落とすなどという表現では温い程、彼は意気消沈してしまった。どうしよう、掛ける言葉がみつからない。
「まぁ…………アレじゃない?生モノっていうか、賞味期限のあるものじゃないんだから、次の機会にとって置いたら?」
なんとか励ましの言葉を捻り出してそう伝えれば、レオナードは力なく微笑んでくれた。
でも、私は内心、うげっと呻いてしまう。だって、相談って間違いなくアイリーンさんのこと。しかも、この様子を見るに相当重たい内容のようだ。
っていうか、そんな重い話を受けても、私はアドバイスなどできるわけがない。ここは早々にスコーンとケーキをいただきお暇させてもらおう。
「早速相談だが…………ミリア嬢。何だか今日は食べるペースが一段と早くないか?」
しまった。もう気付かれてしまったか。
「いやぁね、レオナード。気のせいよ?ささっ。どうぞ、相談内容を教えてちょうだい」
そう言いながらもスコーンにジャムを塗る手を止めない私に、レオナードは何か言いたげだった。けれど、時間が惜しいのだろう。すぐに気持ちを切り替えて口を開いた。
「では、さっそくだが。ミリア嬢、あと10日で私は女性を口説くことができる男だと思うか?」
─────カシャン。
質問の内容が斜め上すぎて、思わずバターナイフを滑り落してしまった。
椅子に座ったまま拾い上げようと、そっと腕を伸ばしてみたけれど、レオナードの目力で止められてしまった。うぅ.........これは、答えてから拾えということか。ちっ、クソが付くほど、めんどくさい。
「だ、大丈夫よ。あなたは、やればできる子なんだから」
そう言った途端、激しい後悔に襲われた。
ああ.........まさか、出会ってすぐに彼が口にした、このイタいセリフを自分の口から言うとは夢にも思わなかった。
「おはようレオナード」
「…………おはよう、ミリア嬢」
「早速だけれど、私、あなたのテンションの低さについて、何かしらのリアクションを取った方が良いかしら?」
「…………それについては、特にこちらからの希望はない」
「あらそうなの?その低いテンションが振り切れるくらいのブラックジョークをかますくらいは、やぶさかじゃないわよ?」
「…………ありがとう。気持ちだけもらっておく。それよりも、今日は君に相談したいことがある」
「あら、ごめんなさい。あいにく相談は契約に含まれていません」
「………君の好きなケーキと、当家シェフティエ自慢のスコーンを用意した」
「私で良ければ、相談に乗りますわ。レオナード」
「………ああ、ありがとう」
ほんわかしたスコーンを目にするなり、手のひらを返した私にレオナードは一瞬だけ微妙な顔をしたけれど、すぐにアルバードに向かって『ありったけ持ってこいっ』と叫んだ。
何だか最近レオナードの言動が、ちょいちょい公爵家のお坊ちゃまから、はみ出していくような気がしてならない。…………私のせいだろうか。
なにせ私は、なんちゃって男爵令嬢。中身はしょせんド庶民。知らず知らずのうちに、彼に悪い影響を与えているのかもしれない。
そんなことをふと思ったら、昨日の一件についても不安を覚えてしまった。
「ねえ、レオナード。今更聞くのもアレなんだけれど………。私………お見舞い品、失敗しちゃったかしら?」
おずおずと問いかければ、レオナードはとんでもないといった感じで大きく首を横に振った。
「いや、安心してくれ。それは素直に受け取って貰えたし、とても喜んでいた。改めてありがとう。恩に着る。………ただ私の見舞い品は、受け取って貰えなかった」
「………………」
しゅんと肩を落とすなどという表現では温い程、彼は意気消沈してしまった。どうしよう、掛ける言葉がみつからない。
「まぁ…………アレじゃない?生モノっていうか、賞味期限のあるものじゃないんだから、次の機会にとって置いたら?」
なんとか励ましの言葉を捻り出してそう伝えれば、レオナードは力なく微笑んでくれた。
でも、私は内心、うげっと呻いてしまう。だって、相談って間違いなくアイリーンさんのこと。しかも、この様子を見るに相当重たい内容のようだ。
っていうか、そんな重い話を受けても、私はアドバイスなどできるわけがない。ここは早々にスコーンとケーキをいただきお暇させてもらおう。
「早速相談だが…………ミリア嬢。何だか今日は食べるペースが一段と早くないか?」
しまった。もう気付かれてしまったか。
「いやぁね、レオナード。気のせいよ?ささっ。どうぞ、相談内容を教えてちょうだい」
そう言いながらもスコーンにジャムを塗る手を止めない私に、レオナードは何か言いたげだった。けれど、時間が惜しいのだろう。すぐに気持ちを切り替えて口を開いた。
「では、さっそくだが。ミリア嬢、あと10日で私は女性を口説くことができる男だと思うか?」
─────カシャン。
質問の内容が斜め上すぎて、思わずバターナイフを滑り落してしまった。
椅子に座ったまま拾い上げようと、そっと腕を伸ばしてみたけれど、レオナードの目力で止められてしまった。うぅ.........これは、答えてから拾えということか。ちっ、クソが付くほど、めんどくさい。
「だ、大丈夫よ。あなたは、やればできる子なんだから」
そう言った途端、激しい後悔に襲われた。
ああ.........まさか、出会ってすぐに彼が口にした、このイタいセリフを自分の口から言うとは夢にも思わなかった。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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