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14日目①
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.。*゚+.*.。 14日目 ゚+..。*゚+
「目の前に男女一人ずついる」
「は?」
「いいから聞いてくれ」
「…………………はぁ」
「このどちらかと君は契りを結ばなければならない。そうしなければ、君は八つ裂きにされる」
「何勝手に、私を窮地に追い込んでるの?」
「いいから聞いてくれ」
「…………………はぁ」
「そうなった時、君はどちらを選ぶ。あ、八つ裂きにする相手と戦うという選択肢は省いてくれ」
「まぁ……男を選ぶかしらね」
「そうか」
「で、何が言いたかったの?」
「君が同性愛者かどうか確認したかっただけだ」
「随分遠回しな質問だったわね。で、私があなたを八つ裂きにして良い?」
「………………すまなかった」
そんな謝罪で水に流せると思っているのだろうか。
私は豪快に指の間接を鳴らして、足首もぐりぐりと回す。ついでに肩も回して、軽くその場で2、3回跳ねたあと、レオナードに向かって顎で庭を示した。まぁ言葉にするなら『表に出ろや』という意味で。
けれど、レオナードは、自分の左胸を押さえながら、もう一度謝罪の言葉を紡ぐだけだった。でも、その顔色は棺桶が似合うものだった。.........ちょっと、やり過ぎたかもしれない。
「ふふっ、冗談よ、レオナード。相変わらず、すぐに本気にしちゃうのね」
口元に手を当てて、くすくすと笑みを向ければ、レオナードの頬にわずかに赤みが差す。けれど、表情はまだ死んだままだった。そんな彼に構わず、私は言葉を続けた。
「あんな馬鹿の極みと言われるような質問をしたのは、本当はこう言いたかったんでしょ?…………私には色気が皆無だって」
こてんと無邪気に首を倒して言い切れば、レオナードの首が僅かに動いた。けれど、縦なのか横なのか判定が微妙な動きだった。いつのまにそんな小汚い手を覚えたのだろう。
でも、まぁレオナードを問い詰めなくてもわかる。私は本当にダンスに向いていない人間だったのだ。運動神経云々ではなく、根本的なアレで。
昨日、契約書の見直しをした私達は、最終仕上げをしようと意気込んでダンスを始めた。
ステップは完璧にマスターした。そしてどの曲でどのステップを使うかという案件も、二人だけにしかわからない合図を決めたおかげで、難無くクリアすることができた。
けれど一つだけ問題があることに気付いてしまったのだ。
もともと体術や剣術の足運びを応用してマスターしたこのステップ、踊り続けているうちに、ついつい組み手のような錯覚を起こしてしまい…………そのぉ、レオナードをぶん投げたくなってしまうのだ。
もちろんレオナードだって、自称だけれど、剣に憶えがある。だから投げ飛ばされないよう頑張って踏ん張ってくれるので、まだ、彼を大理石の床に叩きつけてはいない。
いないけれど、傍から見た私達は、どう映るのだろうという疑問にぶち当たり、昨日、急遽会議を開いたけれど、やっぱりこれを打破する案は浮かんでこなかったのだ。
という経緯があったので、一晩経った今日、レオナードが私にこんな質問をしたのは、致し方無い。ただこんな遠回しな質問にしないで、ストレートに聞いて欲しかったというのが私の本音だったりもする。
「ま、ドレスアップすれは気分も変わるでしょ?それに賭けましょうレオナード」
私だって一応、妙齢の女子なのだ。きっと夜会という雰囲気に呑まれれば、それなりにダンスを踊れるはず………………多分、きっと。
「目の前に男女一人ずついる」
「は?」
「いいから聞いてくれ」
「…………………はぁ」
「このどちらかと君は契りを結ばなければならない。そうしなければ、君は八つ裂きにされる」
「何勝手に、私を窮地に追い込んでるの?」
「いいから聞いてくれ」
「…………………はぁ」
「そうなった時、君はどちらを選ぶ。あ、八つ裂きにする相手と戦うという選択肢は省いてくれ」
「まぁ……男を選ぶかしらね」
「そうか」
「で、何が言いたかったの?」
「君が同性愛者かどうか確認したかっただけだ」
「随分遠回しな質問だったわね。で、私があなたを八つ裂きにして良い?」
「………………すまなかった」
そんな謝罪で水に流せると思っているのだろうか。
私は豪快に指の間接を鳴らして、足首もぐりぐりと回す。ついでに肩も回して、軽くその場で2、3回跳ねたあと、レオナードに向かって顎で庭を示した。まぁ言葉にするなら『表に出ろや』という意味で。
けれど、レオナードは、自分の左胸を押さえながら、もう一度謝罪の言葉を紡ぐだけだった。でも、その顔色は棺桶が似合うものだった。.........ちょっと、やり過ぎたかもしれない。
「ふふっ、冗談よ、レオナード。相変わらず、すぐに本気にしちゃうのね」
口元に手を当てて、くすくすと笑みを向ければ、レオナードの頬にわずかに赤みが差す。けれど、表情はまだ死んだままだった。そんな彼に構わず、私は言葉を続けた。
「あんな馬鹿の極みと言われるような質問をしたのは、本当はこう言いたかったんでしょ?…………私には色気が皆無だって」
こてんと無邪気に首を倒して言い切れば、レオナードの首が僅かに動いた。けれど、縦なのか横なのか判定が微妙な動きだった。いつのまにそんな小汚い手を覚えたのだろう。
でも、まぁレオナードを問い詰めなくてもわかる。私は本当にダンスに向いていない人間だったのだ。運動神経云々ではなく、根本的なアレで。
昨日、契約書の見直しをした私達は、最終仕上げをしようと意気込んでダンスを始めた。
ステップは完璧にマスターした。そしてどの曲でどのステップを使うかという案件も、二人だけにしかわからない合図を決めたおかげで、難無くクリアすることができた。
けれど一つだけ問題があることに気付いてしまったのだ。
もともと体術や剣術の足運びを応用してマスターしたこのステップ、踊り続けているうちに、ついつい組み手のような錯覚を起こしてしまい…………そのぉ、レオナードをぶん投げたくなってしまうのだ。
もちろんレオナードだって、自称だけれど、剣に憶えがある。だから投げ飛ばされないよう頑張って踏ん張ってくれるので、まだ、彼を大理石の床に叩きつけてはいない。
いないけれど、傍から見た私達は、どう映るのだろうという疑問にぶち当たり、昨日、急遽会議を開いたけれど、やっぱりこれを打破する案は浮かんでこなかったのだ。
という経緯があったので、一晩経った今日、レオナードが私にこんな質問をしたのは、致し方無い。ただこんな遠回しな質問にしないで、ストレートに聞いて欲しかったというのが私の本音だったりもする。
「ま、ドレスアップすれは気分も変わるでしょ?それに賭けましょうレオナード」
私だって一応、妙齢の女子なのだ。きっと夜会という雰囲気に呑まれれば、それなりにダンスを踊れるはず………………多分、きっと。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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