44 / 114
12日目①
しおりを挟む
.。*゚+.*.。 11日目 ゚+..。*゚+
「ねぇレオナード、もし神様が一つだけ願いを叶えてくれるって言ったらどうする?」
「迷わず、彼女との未来を望むね」
「恐ろしいくらいブレないわね。あなたは」
「で、君は?」
「この世からダンスという愚行を消して欲しいわ」
「………夜会まであと4日なんだ。頼むから、耐えてくれ」
という会話ができるくらい昨日の悪夢のような出来事から一晩経った私は、そこそこ回復した。
けれど、丸一日ダンスのレッスンができなかったという事実は、良い感じに私のテンションを下げてくれる。そして、万に一つの期待を込めて、レオナードに切り出してみたけれど、やはり、彼は予定通りダンスをマスターさせたいようだった。
そんな私たちは今日もボールルームにいる。何だか東屋でくだらないことを喋っていたのが、遠い昔のように感じてしまう。
けれど、そう思っていたのは私だけのようだった。
「ミリア嬢、さっそくだが、ダンスのレッスンを始めよう」
そう言ってレオナードは私に向かって当然のように手を伸ばしてきた。
「ねえレオナード、その前に一つ良いかしら?」
「………………も、もちろんだとも」
にこりと笑みを浮かべて口を開いた私に、レオナードは少し間を置いて頷いた。その間が妙に気になったけれど、それより私はちょっと気付いた事があったので、先に伝えることにする。
「私、思ったんだけど、ダンスと思うから変に身体に力が入り過ぎたり、緊張してしまうと思うのよ。だから、いっそ、ステップを剣術とか体術の足運びだと思えばもっとスムーズにいくと思うのよ」
「.........言われてみれば、確かにそうだ」
実は今朝、レオナードの屋敷に向かう準備をしている最中に気付いたのだ。もっと言うなら、準備をしている最中、窓から見えた兄達の鍛錬をしている姿で気付いたのだ。
特に踏み込みの際の足運びは、ものすごくステップに近い動きだと。
いつもなら、兄達の掛け声は、鳥のさえずりの一部。そして鍛錬している姿は庭と同化しているはずなのに。どうやら、今日の私はいつも以上に冴えているようだ。
そしてこのこの提案に、自称剣にそこそこ自身があるレオナードは、なる程といった感じで、軽く指を鳴らした。彼もそんなチャラいことをするのかと、ちょっと驚く。
というどうでも良いことは伝えることはせずに、私はさらりと別の事を口にした。
「そういう訳で、試しにちょっとレオナード一人で踊ってみてちょうだい」
口元だけを意識して笑みを作って、手のひらを部屋の中央へと向ければ、彼は無言で小さく首を横に降った。一人ダンスを目にしたことがない私は少々残念だ。
「ミリア嬢、申しわけないが私は既にステップをマスターしている身だ。私一人で踊ったところで意味がない。さぁ、早く手を出したまえ」
至極真っ当な言葉で返され、めずらしく私は言葉を失ってしまう。
そんな立ちすくむ私に、レオナードは無言で私の手を取って、部屋の中央へと誘った。
「ねぇレオナード、もし神様が一つだけ願いを叶えてくれるって言ったらどうする?」
「迷わず、彼女との未来を望むね」
「恐ろしいくらいブレないわね。あなたは」
「で、君は?」
「この世からダンスという愚行を消して欲しいわ」
「………夜会まであと4日なんだ。頼むから、耐えてくれ」
という会話ができるくらい昨日の悪夢のような出来事から一晩経った私は、そこそこ回復した。
けれど、丸一日ダンスのレッスンができなかったという事実は、良い感じに私のテンションを下げてくれる。そして、万に一つの期待を込めて、レオナードに切り出してみたけれど、やはり、彼は予定通りダンスをマスターさせたいようだった。
そんな私たちは今日もボールルームにいる。何だか東屋でくだらないことを喋っていたのが、遠い昔のように感じてしまう。
けれど、そう思っていたのは私だけのようだった。
「ミリア嬢、さっそくだが、ダンスのレッスンを始めよう」
そう言ってレオナードは私に向かって当然のように手を伸ばしてきた。
「ねえレオナード、その前に一つ良いかしら?」
「………………も、もちろんだとも」
にこりと笑みを浮かべて口を開いた私に、レオナードは少し間を置いて頷いた。その間が妙に気になったけれど、それより私はちょっと気付いた事があったので、先に伝えることにする。
「私、思ったんだけど、ダンスと思うから変に身体に力が入り過ぎたり、緊張してしまうと思うのよ。だから、いっそ、ステップを剣術とか体術の足運びだと思えばもっとスムーズにいくと思うのよ」
「.........言われてみれば、確かにそうだ」
実は今朝、レオナードの屋敷に向かう準備をしている最中に気付いたのだ。もっと言うなら、準備をしている最中、窓から見えた兄達の鍛錬をしている姿で気付いたのだ。
特に踏み込みの際の足運びは、ものすごくステップに近い動きだと。
いつもなら、兄達の掛け声は、鳥のさえずりの一部。そして鍛錬している姿は庭と同化しているはずなのに。どうやら、今日の私はいつも以上に冴えているようだ。
そしてこのこの提案に、自称剣にそこそこ自身があるレオナードは、なる程といった感じで、軽く指を鳴らした。彼もそんなチャラいことをするのかと、ちょっと驚く。
というどうでも良いことは伝えることはせずに、私はさらりと別の事を口にした。
「そういう訳で、試しにちょっとレオナード一人で踊ってみてちょうだい」
口元だけを意識して笑みを作って、手のひらを部屋の中央へと向ければ、彼は無言で小さく首を横に降った。一人ダンスを目にしたことがない私は少々残念だ。
「ミリア嬢、申しわけないが私は既にステップをマスターしている身だ。私一人で踊ったところで意味がない。さぁ、早く手を出したまえ」
至極真っ当な言葉で返され、めずらしく私は言葉を失ってしまう。
そんな立ちすくむ私に、レオナードは無言で私の手を取って、部屋の中央へと誘った。
0
初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる