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3日目①
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.。*゚+.*.。 3日目 ゚+..。*゚+
「ミリア嬢、今日は街へ行こう」
「婚約者をダシに、恋人に会いに行くのね」
「............察しが良いのはありがたいが、もう少し別の表現は無いのか」
「あら、失礼しました。では早速、偽装婚約という、お仕事が始まるのね、ではいかがかしら?」
「…………もういい。正解にしとく」
本日は曇天の空模様。いつ雨が降り出してもおかしくない状況なので、お屋敷ではなく離れのサンルームに通された。そして着席した途端、そうレオナードから切り出されたのだ。満面の笑みで。………できることなら、着席する前に言ってほしかった。
あからさまに溜息をついてもレオナードは、気にする素振りはない。うきうきと上着を羽織りソワソワしている。恋する少女かっと内心吐き捨てる。が、ちょっと気になることがある。
目の前に本日も、ロフィ家のお抱えシェフが作った果実のタルトが用意されている。ビワにさくらんぼに、スモモに杏。我が家では基本、バナナしか口にできないフルーツが、こんなにも贅沢に乗っているのだ。
ま、まさか、それすら口にする前に、外出しようとしているのだろうか。
「レオナード、まさか今すぐ行くの?」
「当たり前だろ。もうずっと君が来るのを待っていたんだ」
「え?あの………ちょっと」
「さあ行こう。ミリア嬢。もたもたするな」
せめてタルトを一口だけでも、とフォークを握った途端、ぐいっとレオナードに腕を取られてしまった。そして────。
「………あ」
カシャンという金属音と共に、手にしていたフォークが床に滑り落ちたことを知る。知らず知らずのうちに私の眉間に皺が寄る。
「………レオナード」
呻くように私が彼の名を呟いた途端、レオナードは自分の愚行に気づいたのだろう。土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
「すまないっ、ミリア嬢。………彼女に逢えると思ったら、つい………その………浮かれてしまった」
顔を上げて、もじもじし始めたレオナードを見て私は小さく息を吐いた。なんだかもうケーキをホール食いしたようにお腹いっぱいになってしまったのだ。ったく、一口も食べていないのに。
「もう、いいわ。行きましょう。その彼女さんのところに」
今から無理してタルトを食べても絶対に美味しさが半減する。どうせ食べるのなら、気力体力共に絶好調の状態でいただきたい。スウィーツに向き合うときは、いつも私は本気モードで挑みたいのだ。
「い、良いのか?」
おずおずと問いかけるレオナードに、私は無言で席を立つ。でも、彼は本当に良いのかとオロオロと伺うような言葉を口にしてはいるが、ちゃっかりその頬はバラ色に染まっていた。つい数秒前に、死を覚悟したような表情をしていたのに、彼女に逢えるとなった途端、この様。………まったくゲンキンな奴だ。
そんなことを心の中で呟きながら、私はサンルームの扉に手をかけたけれど、レオナードに釘をさすのは忘れなかった。
「言っておくけど、このテーブルのスウィーツ、全部、お土産にして持って帰るからね」
そう言い放てば、レオナードは弾かれたように頷いた。
「もちろんだ、ミリア嬢。ああ、ショコラも追加しておこう」
その言葉にちょっと頬が緩んでしまったけれど、幸いにもレオナードに気づかれることはなかった。
「ミリア嬢、今日は街へ行こう」
「婚約者をダシに、恋人に会いに行くのね」
「............察しが良いのはありがたいが、もう少し別の表現は無いのか」
「あら、失礼しました。では早速、偽装婚約という、お仕事が始まるのね、ではいかがかしら?」
「…………もういい。正解にしとく」
本日は曇天の空模様。いつ雨が降り出してもおかしくない状況なので、お屋敷ではなく離れのサンルームに通された。そして着席した途端、そうレオナードから切り出されたのだ。満面の笑みで。………できることなら、着席する前に言ってほしかった。
あからさまに溜息をついてもレオナードは、気にする素振りはない。うきうきと上着を羽織りソワソワしている。恋する少女かっと内心吐き捨てる。が、ちょっと気になることがある。
目の前に本日も、ロフィ家のお抱えシェフが作った果実のタルトが用意されている。ビワにさくらんぼに、スモモに杏。我が家では基本、バナナしか口にできないフルーツが、こんなにも贅沢に乗っているのだ。
ま、まさか、それすら口にする前に、外出しようとしているのだろうか。
「レオナード、まさか今すぐ行くの?」
「当たり前だろ。もうずっと君が来るのを待っていたんだ」
「え?あの………ちょっと」
「さあ行こう。ミリア嬢。もたもたするな」
せめてタルトを一口だけでも、とフォークを握った途端、ぐいっとレオナードに腕を取られてしまった。そして────。
「………あ」
カシャンという金属音と共に、手にしていたフォークが床に滑り落ちたことを知る。知らず知らずのうちに私の眉間に皺が寄る。
「………レオナード」
呻くように私が彼の名を呟いた途端、レオナードは自分の愚行に気づいたのだろう。土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
「すまないっ、ミリア嬢。………彼女に逢えると思ったら、つい………その………浮かれてしまった」
顔を上げて、もじもじし始めたレオナードを見て私は小さく息を吐いた。なんだかもうケーキをホール食いしたようにお腹いっぱいになってしまったのだ。ったく、一口も食べていないのに。
「もう、いいわ。行きましょう。その彼女さんのところに」
今から無理してタルトを食べても絶対に美味しさが半減する。どうせ食べるのなら、気力体力共に絶好調の状態でいただきたい。スウィーツに向き合うときは、いつも私は本気モードで挑みたいのだ。
「い、良いのか?」
おずおずと問いかけるレオナードに、私は無言で席を立つ。でも、彼は本当に良いのかとオロオロと伺うような言葉を口にしてはいるが、ちゃっかりその頬はバラ色に染まっていた。つい数秒前に、死を覚悟したような表情をしていたのに、彼女に逢えるとなった途端、この様。………まったくゲンキンな奴だ。
そんなことを心の中で呟きながら、私はサンルームの扉に手をかけたけれど、レオナードに釘をさすのは忘れなかった。
「言っておくけど、このテーブルのスウィーツ、全部、お土産にして持って帰るからね」
そう言い放てば、レオナードは弾かれたように頷いた。
「もちろんだ、ミリア嬢。ああ、ショコラも追加しておこう」
その言葉にちょっと頬が緩んでしまったけれど、幸いにもレオナードに気づかれることはなかった。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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