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1日目①
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.。*゚+.*.。 1日目 ゚+..。*゚+
「今朝、あなたからお手紙を頂いたんですが、この内容は何かの間違いですよね?」
「ん?君と婚約する。ついては詳しい話をしたいから、我が家に来い、という内容のことか?」
「ええ、そうです。一字一句間違えずに言えてお利口さんですが、こんな手紙を朝早く受け取り、誰にもバレないようにこっそり屋敷を抜け出して来た私の気持ちを察して下さい」
「ああ、君はまだ就寝中だったか。それはすまなかったな」
「………違います。私が耄碌していなければのお話ですが、私はあなたからお見合いを断られました。まぁぶっちゃけ婚約破棄といっても過言ではないでしょう。そんな私は、あなたからの婚約破棄をを笑顔で承諾したはずです」
「安心してくれ、その通りだ。君は耄碌していない」
「そうですか。では、話を元に戻しますが、婚約破棄の破棄は間違いですよね?」
「いや、そこは間違いない」
「はぁ!?気でも触れましたか?」
「いや、気が変わった」
「………もう一回、気が変わるように致しましょうか?」
ぐっと拳を突き出した私に、先日、最高の笑顔でお見合いを断った男はぶるりと身を震わせながら、口を開いた。
「ずいぶんと噂とは違うようだな、ミリア嬢」
「何が言いたいのですか?レオナード様」
拳はそのままにして、片眉を吊り上げれば、目の前の優男は、そっと私から視線を外した。まったくもって情けない、これでも剣を手にする男なのだろうか。
「家柄だけは、ご立派ですが、中身はなんともひ弱なお坊ちゃまですわね。はっきり言って宜しいですわよ。わたくしが、口より先に拳が出る荒くれ物で、家柄はあなたより格下の成り上がりの男爵令嬢または、インチキ令嬢。そんなわたくしが、あなた様のような格式ある公爵家からの婚約破棄を承諾するわけがない。ゴネるなり、泣くなりすべきところを、あっさりと承諾した腹いせにこうして呼び出しをしていらっしゃるんでしょ?」
「息継ぎもなしに、一気に言い切ったが、君の肺活量はどうなっているんだ!?」
「気にするところ、そこですか!?」
くわっと目を見開いて、指の関節を曲げて、ぽきりと音を立てれば、レオナードは違う違うと大降りに両手を振って口を開いた。
「ミリア嬢、君は貴族の男連中から、幻想の花って言われてるんだよ」
「いや、幻って………ここに居ますけど………」
「そうじゃなくって、滅多に夜会に姿を現さない。ごくごく稀に出席したとしても、一瞬で消えてしまうから、そう呼ばれているんだ」
「あー………」
「加えて君のその容姿、母君から受け継いだ漆黒の髪に、紫色の瞳はミステリアスで、男どもの妄想を更にかきたてる。………余計なお世話だが、本当に父君に似なくて良かったな」
「最後の一文、父上に伝えて良いかしら?」
「………失言だった、すまない。忘れてくれ」
父の名を出した途端、ものすごい早さで頭を下げた公爵家のご長男様を見て、自分の父親がどれほど恐れられている人物なのかを知りちょっと複雑な気持ちになる。まぁ、それは置いといて………。
ここは、ロフィ家の庭。そう、昨日お見合いをしたあの無駄に広い庭に、私とレオナードは居る。ちなみに今日は歩いている訳ではない。庭の奥にある東屋で、テーブルを挟んで対峙している。
目の前のテーブルには、上品で高そうなティーカップとポット。そしてスコーンにケーキにジャムにクッキーにショコラに果実に………と、所狭しと並べられている。
っていうか、昨日のお見合いより歓迎ムードって何それ?
再び微妙な気持ちになってしまった私だけれど、一先ずこの昨日から始まった茶番の理由を聞きたくて口を開いた。ま、事と次第によったら、東屋でボコボコにされた公爵家のご長男様が発見されることになるかもしれないけれど。
「ぶっちゃけ、あなた何をしたいんですか?」
「………怒らずに聞いてもらえるか?」
「無理………と言いたいけれど、私もそこは知りたいところだし、百歩譲って善処するわ」
「いや、確約してくれ」
「ぅるっさいわね、さっさと話しなさいっ」
バンッとテーブルを叩きつければ、レオナードは小さく胸に十字を切ってから口を開いた。
「今朝、あなたからお手紙を頂いたんですが、この内容は何かの間違いですよね?」
「ん?君と婚約する。ついては詳しい話をしたいから、我が家に来い、という内容のことか?」
「ええ、そうです。一字一句間違えずに言えてお利口さんですが、こんな手紙を朝早く受け取り、誰にもバレないようにこっそり屋敷を抜け出して来た私の気持ちを察して下さい」
「ああ、君はまだ就寝中だったか。それはすまなかったな」
「………違います。私が耄碌していなければのお話ですが、私はあなたからお見合いを断られました。まぁぶっちゃけ婚約破棄といっても過言ではないでしょう。そんな私は、あなたからの婚約破棄をを笑顔で承諾したはずです」
「安心してくれ、その通りだ。君は耄碌していない」
「そうですか。では、話を元に戻しますが、婚約破棄の破棄は間違いですよね?」
「いや、そこは間違いない」
「はぁ!?気でも触れましたか?」
「いや、気が変わった」
「………もう一回、気が変わるように致しましょうか?」
ぐっと拳を突き出した私に、先日、最高の笑顔でお見合いを断った男はぶるりと身を震わせながら、口を開いた。
「ずいぶんと噂とは違うようだな、ミリア嬢」
「何が言いたいのですか?レオナード様」
拳はそのままにして、片眉を吊り上げれば、目の前の優男は、そっと私から視線を外した。まったくもって情けない、これでも剣を手にする男なのだろうか。
「家柄だけは、ご立派ですが、中身はなんともひ弱なお坊ちゃまですわね。はっきり言って宜しいですわよ。わたくしが、口より先に拳が出る荒くれ物で、家柄はあなたより格下の成り上がりの男爵令嬢または、インチキ令嬢。そんなわたくしが、あなた様のような格式ある公爵家からの婚約破棄を承諾するわけがない。ゴネるなり、泣くなりすべきところを、あっさりと承諾した腹いせにこうして呼び出しをしていらっしゃるんでしょ?」
「息継ぎもなしに、一気に言い切ったが、君の肺活量はどうなっているんだ!?」
「気にするところ、そこですか!?」
くわっと目を見開いて、指の関節を曲げて、ぽきりと音を立てれば、レオナードは違う違うと大降りに両手を振って口を開いた。
「ミリア嬢、君は貴族の男連中から、幻想の花って言われてるんだよ」
「いや、幻って………ここに居ますけど………」
「そうじゃなくって、滅多に夜会に姿を現さない。ごくごく稀に出席したとしても、一瞬で消えてしまうから、そう呼ばれているんだ」
「あー………」
「加えて君のその容姿、母君から受け継いだ漆黒の髪に、紫色の瞳はミステリアスで、男どもの妄想を更にかきたてる。………余計なお世話だが、本当に父君に似なくて良かったな」
「最後の一文、父上に伝えて良いかしら?」
「………失言だった、すまない。忘れてくれ」
父の名を出した途端、ものすごい早さで頭を下げた公爵家のご長男様を見て、自分の父親がどれほど恐れられている人物なのかを知りちょっと複雑な気持ちになる。まぁ、それは置いといて………。
ここは、ロフィ家の庭。そう、昨日お見合いをしたあの無駄に広い庭に、私とレオナードは居る。ちなみに今日は歩いている訳ではない。庭の奥にある東屋で、テーブルを挟んで対峙している。
目の前のテーブルには、上品で高そうなティーカップとポット。そしてスコーンにケーキにジャムにクッキーにショコラに果実に………と、所狭しと並べられている。
っていうか、昨日のお見合いより歓迎ムードって何それ?
再び微妙な気持ちになってしまった私だけれど、一先ずこの昨日から始まった茶番の理由を聞きたくて口を開いた。ま、事と次第によったら、東屋でボコボコにされた公爵家のご長男様が発見されることになるかもしれないけれど。
「ぶっちゃけ、あなた何をしたいんですか?」
「………怒らずに聞いてもらえるか?」
「無理………と言いたいけれど、私もそこは知りたいところだし、百歩譲って善処するわ」
「いや、確約してくれ」
「ぅるっさいわね、さっさと話しなさいっ」
バンッとテーブルを叩きつければ、レオナードは小さく胸に十字を切ってから口を開いた。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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