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プロローグ①
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突然だけれど、世間一般ではお見合いとは、結婚相手として適当かどうかを互いに判断するために、男女が人を介して面会すること。
けれど、貴族の間では、お見合いというのは、婚約者との顔合わせを差す言葉。そう、ここでは定番の断り文句である【ご縁がなかったことで、うんちゃらかんちゃら】は通用しない。
家同士の繋がりが第一のこの腐った貴族社会では、個人の感情など毛ほども尊重されることはない。まして女性など、駒の一つでしかないのだ。
は?どの面下げて駒とか言っちゃうわけ!?
なんてこと口にできるものなら、既に声に出している。がしかし、できない。私は腐っても貴族の一員であり、この国の一人であるから。
だから私は決めたのだ。この愚かで時代錯誤の社会から、体の良い言い訳を見つけて、自力脱出させてもらうと。
雲一つない澄み渡った青空。5月の爽やかな風が吹く今日、私はお見合いをする。というか、現在進行形でお見合い中だ。
お見合い会場は、私の婚約者となる公爵家の庭。
お金持ちですねーっと、嫌味の一つでも言いたくなるぐらい広々とした庭。花壇は一つじゃなくて、ひい、ふう、みい………もういいや。とにかくいっぱい。そして、等間隔に違う花を植えてあるけれど、実のなるものは一つも無い。全部鑑賞用。母さまが見たら、絶対に青筋立てるわ、これ。
あと噴水全部で3つあるけど、そんなに必要?え、何ここで泳ぐの?と心の中でツッコミを入れてみる。
もちろんそんなことは顔にださず、私は今日の為にあつらえた、楚々とした令嬢らしい水色のドレスに白いパラソルを刺して、3歩前を歩くお見合い相手の後ろをしずしず歩く。
それにしても、前を歩くこの男、何をとち狂って私なんかと、お見合いを申し出たのだろう。
突然だけれど、私の名前は、ミリア・ホーレンス。一応、男爵令嬢という立ち位置に居る。そう一応という前置きがつくのは、父親が元軍人で、私が生まれる前に功績をあげて称号を貰い男爵という地位となった歴史の浅い家柄のためだ。
そして母親は商家から嫁いできたため、私は社交界ではインチキ令嬢と蔑まれている。ついでに言えば、私には二人の兄がいるけれど、同じくインチキ男爵と嘲笑を受けている。
ま、それは本当のことなので、別段気にするつもりはない。ただちょっかいを出してきた人間に関しては老若男女問わず鉄拳制裁をするけれど。あ、言わなくても良いけれど、兄二人も同じようにしている。
………父に関しては洒落にならない危険人物なので、珍獣扱いされている。母さまは、元商家のお嬢様だけあって、なんだかんだとそつなく過ごしている。
と、まぁそんなちょっとという枠からはみ出しているクセが強いホーレンス一家だけれど、今現在ここにいる彼とは縁もゆかりもない。
なにせ、この人お貴族中のお貴族。公爵家のご長男であらせられるのだ。
底辺男爵家と頂点に立つ公爵家。その差は天と地と程。同じ貴族というくくりはあるけれど、【ミルクとワインって同じ飲み物だよねー】っていうくらい、ざっくりとしたものだ。いや、【ゴリラと人間、同じだよねー指の数5本だし】のほうがわかりやすいのかもしれない。まぁ、どっちでも良いけど。
そんな一生関わり合いがないはずの公爵家のご長男様と、男爵家のインチキ令嬢がお見合いをしている。傍から見たら、『んな、馬鹿な!?』と目を引ん剝くか、悪質なドッキリだろうと思うだろう。かく言う私も、そう思っている。
と、心の中で思う存分喋りまくりの私だが、実際に口に出すことはできないので、パラソルをくるりと回して前を歩く男をじっと見つめる。
本当に、彼は何を思ってこんな茶番をしているのだろう。
けれど、貴族の間では、お見合いというのは、婚約者との顔合わせを差す言葉。そう、ここでは定番の断り文句である【ご縁がなかったことで、うんちゃらかんちゃら】は通用しない。
家同士の繋がりが第一のこの腐った貴族社会では、個人の感情など毛ほども尊重されることはない。まして女性など、駒の一つでしかないのだ。
は?どの面下げて駒とか言っちゃうわけ!?
なんてこと口にできるものなら、既に声に出している。がしかし、できない。私は腐っても貴族の一員であり、この国の一人であるから。
だから私は決めたのだ。この愚かで時代錯誤の社会から、体の良い言い訳を見つけて、自力脱出させてもらうと。
雲一つない澄み渡った青空。5月の爽やかな風が吹く今日、私はお見合いをする。というか、現在進行形でお見合い中だ。
お見合い会場は、私の婚約者となる公爵家の庭。
お金持ちですねーっと、嫌味の一つでも言いたくなるぐらい広々とした庭。花壇は一つじゃなくて、ひい、ふう、みい………もういいや。とにかくいっぱい。そして、等間隔に違う花を植えてあるけれど、実のなるものは一つも無い。全部鑑賞用。母さまが見たら、絶対に青筋立てるわ、これ。
あと噴水全部で3つあるけど、そんなに必要?え、何ここで泳ぐの?と心の中でツッコミを入れてみる。
もちろんそんなことは顔にださず、私は今日の為にあつらえた、楚々とした令嬢らしい水色のドレスに白いパラソルを刺して、3歩前を歩くお見合い相手の後ろをしずしず歩く。
それにしても、前を歩くこの男、何をとち狂って私なんかと、お見合いを申し出たのだろう。
突然だけれど、私の名前は、ミリア・ホーレンス。一応、男爵令嬢という立ち位置に居る。そう一応という前置きがつくのは、父親が元軍人で、私が生まれる前に功績をあげて称号を貰い男爵という地位となった歴史の浅い家柄のためだ。
そして母親は商家から嫁いできたため、私は社交界ではインチキ令嬢と蔑まれている。ついでに言えば、私には二人の兄がいるけれど、同じくインチキ男爵と嘲笑を受けている。
ま、それは本当のことなので、別段気にするつもりはない。ただちょっかいを出してきた人間に関しては老若男女問わず鉄拳制裁をするけれど。あ、言わなくても良いけれど、兄二人も同じようにしている。
………父に関しては洒落にならない危険人物なので、珍獣扱いされている。母さまは、元商家のお嬢様だけあって、なんだかんだとそつなく過ごしている。
と、まぁそんなちょっとという枠からはみ出しているクセが強いホーレンス一家だけれど、今現在ここにいる彼とは縁もゆかりもない。
なにせ、この人お貴族中のお貴族。公爵家のご長男であらせられるのだ。
底辺男爵家と頂点に立つ公爵家。その差は天と地と程。同じ貴族というくくりはあるけれど、【ミルクとワインって同じ飲み物だよねー】っていうくらい、ざっくりとしたものだ。いや、【ゴリラと人間、同じだよねー指の数5本だし】のほうがわかりやすいのかもしれない。まぁ、どっちでも良いけど。
そんな一生関わり合いがないはずの公爵家のご長男様と、男爵家のインチキ令嬢がお見合いをしている。傍から見たら、『んな、馬鹿な!?』と目を引ん剝くか、悪質なドッキリだろうと思うだろう。かく言う私も、そう思っている。
と、心の中で思う存分喋りまくりの私だが、実際に口に出すことはできないので、パラソルをくるりと回して前を歩く男をじっと見つめる。
本当に、彼は何を思ってこんな茶番をしているのだろう。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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