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お遣いの章
お遣い中でも身だしなみは大事です①
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シュスイへ向けて出発して今日で二日目。初日は、なだらかな街道をゆっくり歩き、夕方には旅籠に泊まった。
旅籠では、部屋割りを巡ってシュウトとヒノエが一触即発の危機があったけど、とりあえず皆、無傷で朝日を拝むことができた。
今日は、舗装されていない山道をずっと、ずっと、ずぅーと、ずぅっーと歩いている。そしてこの先も当分続く───らしい。ぶっちゃけ、気が遠くなる。
そんなこんなで、私は思わず息を切らしながら、ぽろりと弱音をこぼしてしまった。
「シュスイの秘境って遠いのね……」と。
よく考えれば、今まで長時間歩くのも、舗装してない山道を歩くのも初めてだった。しかも、傷が癒えてからもほとんど外出していなかった。病み上がりといえば聞こえは良いけれど、とどのつまり運動不足だったので、すでに膝がガクガクしている。
遠足気分でいれたのは初日だけ。というか、そんな気分でいれたのは私の考えが甘かっただけのこと。
「瑠璃、強情張らずに、そろそろこちらに来い」
そう言ってカザハに騎乗したまま手を差し伸ばしてくれるシュウトに、私は無言で首を横に振る。
今朝からシュウトは何度も、カザハに乗るように進めてくれる。でも素直に頷けない。それは未だにシュウト達の同行を認めていないからではなく、昨日、大人気なくふて腐れてしまった手前、どうしていいのかわからず意地になっているだけのこと。
ちなみにシュウトもナギも相変わらずの様子で、私に対して苛立ちも怒りも不満もなく、ただ私の体調だけを気遣ってくれる。
正直な気持ち、今朝二人の顔を見てほっとしたのだ。まだ傍にいてくれる、と。
シュスイは聖域で安全なところだとタツミから聞いているし、私が会うべき人物は神殿を護る巫女で私の到着を心待ちにしているらしい。つまり私に対して悪意どころか歓迎してくれている……らしい。
でも知らない世界で見ず知らずの人に会うという不安は消されていない。
だからシュウトとナギが傍にいてくれるのは私にとったら何より安心できるということ。……本当は、それ以外にもある。
単純にシュウトと外を並んで歩けて嬉しい。
朝、おはようと言ってくれて嬉しいし、振り返って目が合うとふわりと笑ってくれる、ただそれだけのことが、胸をぎゅっと掴まれるぐらい嬉しい。
それを素直に言葉にして伝えたら良いのにと思うけれど、私は未だに素直に胸の内を伝える事が苦手で、昨日の仲直りのやり方すら見つけられずにいる。
そしてそれを認めたくない私は、年齢もさることながら見た目も中身もこの5人の中で一番子供である。
「─────……瑠璃、ほら」
再びシュウトは私に手を差し伸べてくれる。
「だ……大丈夫。はぁはぁ……全然、ま、まだ歩けます」
「あと二歩が限界のように見えるぞ」
「……き、気のせいです。余裕で歩けます……はぁはぁ」
強がりを言ってみたところで、息切れは誤魔化すことができなかった。そんな私の荒い息が先導しているタツミにまで聞こえてしまったのだろう。タツミは振り返り、こちらに戻りながら口を開いた。
「まぁ、ここまで歩けば明日にはシュスイに到着ですわ。ちょうど近くに廃寺があるんで、今日はここで休みましょ」
「……はい、わかっ───ひゃっ」
タツミは、ひょいと私を抱きかかえると、カザハに座らせた。
「瑠璃さま、もうすぐっすよ~。だからもうちょっと、我慢してくださいね」
タツミは私に向かってにっこりと笑うと、カザハの鼻先を軽く撫で、手綱を引いて歩き出した。
カザハに乗るのを拒んでいた私だけど、タツミの人懐っこい笑顔に素直にうなずいてしまう。
出会った時からそうだったけど、タツミは人の心を解すのに長けている。タツミの爪の垢を煎じて飲んだら、この可愛げのない性格は少しはマシになるのだろうか。まぁ、本当にそんなもん出てきたら全力で拒否するけれど。
それと、どうでも良いけれど・・・恨みがましい目で、タツミを睨むシュウトを窘めたほうが良いのだろうか。ただ、その手に持ってる物騒なヤツは直ちにしまってもらうようお願いすべきだろう。私も大人気ないけど、シュウトもそこそこに大人気ない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タツミが言っていた廃寺は、それから半時も経たず姿を現した。見た目は、かなり薄気味悪いけど、堂の中は以外にも広く、一晩休むには、十分な建物だった。
「でも、絶対、夜は怖いわよね……」
私は靴を脱いで、思いっきり伸びをしながら独り言を呟いた。
「……瑠璃さま、夜ではなくても見れますわよ」
「……え?───ひゃぁ!!」
急に寒気を帯びて振り返ったら、すぐ後ろに人形のように整った顔のヒノエがいた。おののく私とは対照的に、ヒノエの表情は全く動かない。と、いうことで、ヒノエのさっきの発言が本当なのか冗談なのか全くわからない。一応……念のため、確認しよう。
「ヒノエさん……あの、冗談ですよね?」
「ふふっ……さぁ、どうでしょう」
ヒノエは意味ありげに、微笑むだけだった。確認なんてしなければよかった。
実際私は、真っ暗な社で一人で過ごしたこともあるし、人外の生き物にも遭遇しているけど、それはそれ、これはこれ。やっぱり怖いものは怖い。選べるものなら絶対に、会いたくないものだ。
蒼白になっている私に、少し間を置いてヒノエはおっとりと口を開いた。
「大丈夫ですわ。ここにいるのは雑魚ばかり。怖がる程のものではありません」
あーやっぱりいるんだ……。できれば、そんなものいないから大丈夫という答が良かった。でも聞いてしまったものは仕方がない。都合よくここだけ記憶喪失になれない私は、今日は一番に寝ようと、こっそり心に誓った。
それからとりあえず、食料を調達するといって、タツミを含む男性の三人は、夕暮れ間近なのに、寺から飛び出してしまった。
幸い廃寺にも台所があったので、私とヒノエは、三人がいつでも帰ってきたら調理に取り掛かることができるように、手分けをして掃除を始めた。けれど───
「それにしても、瑠璃様……その格好は如何かと……」
「え?」
黙々と板張りに雑巾がけをしていた私は、ヒノエに突然、話しかけられ手を止めた。
如何と言われても───私は視線を下に向けて、自分の服装を改めて見回す。
私が身につけているものは確かに高価な衣ではないがシュスイに行くと決まって、ナギが用意してくれた肌触りの良い丈夫な木綿の衣だ。
このコキヒ国では旅服は女性でも袴を履くので、とても歩きやすい。あとケープみたいな外套を羽織る。
衣と袴は深緑、外套は山吹色。どれも指し色に緋色の装飾が付いていて、私は一目見ただけで、この旅服がお気に入りになったのだ。ということで、特に如何呼ばわりされるほどの格好ではない。私はヒノエの言葉にきょとんと首を傾げる。
ヒノエは、そのとぼけた私の反応に、イラっとしたらしく、目をむいて叫んだ。
「仮にもシュスイの姫君が、こんな小汚い格好をして……野良着にザンバラ髪でヒノエは……ヒノエは情けなくて、涙が出てきます!!」
───イヤイヤ……涙なんて出てないじゃん。
なんていうツッコミを心の中で、力いっぱい入れた。もちろん、声に出す勇気はなかったけれど。
旅籠では、部屋割りを巡ってシュウトとヒノエが一触即発の危機があったけど、とりあえず皆、無傷で朝日を拝むことができた。
今日は、舗装されていない山道をずっと、ずっと、ずぅーと、ずぅっーと歩いている。そしてこの先も当分続く───らしい。ぶっちゃけ、気が遠くなる。
そんなこんなで、私は思わず息を切らしながら、ぽろりと弱音をこぼしてしまった。
「シュスイの秘境って遠いのね……」と。
よく考えれば、今まで長時間歩くのも、舗装してない山道を歩くのも初めてだった。しかも、傷が癒えてからもほとんど外出していなかった。病み上がりといえば聞こえは良いけれど、とどのつまり運動不足だったので、すでに膝がガクガクしている。
遠足気分でいれたのは初日だけ。というか、そんな気分でいれたのは私の考えが甘かっただけのこと。
「瑠璃、強情張らずに、そろそろこちらに来い」
そう言ってカザハに騎乗したまま手を差し伸ばしてくれるシュウトに、私は無言で首を横に振る。
今朝からシュウトは何度も、カザハに乗るように進めてくれる。でも素直に頷けない。それは未だにシュウト達の同行を認めていないからではなく、昨日、大人気なくふて腐れてしまった手前、どうしていいのかわからず意地になっているだけのこと。
ちなみにシュウトもナギも相変わらずの様子で、私に対して苛立ちも怒りも不満もなく、ただ私の体調だけを気遣ってくれる。
正直な気持ち、今朝二人の顔を見てほっとしたのだ。まだ傍にいてくれる、と。
シュスイは聖域で安全なところだとタツミから聞いているし、私が会うべき人物は神殿を護る巫女で私の到着を心待ちにしているらしい。つまり私に対して悪意どころか歓迎してくれている……らしい。
でも知らない世界で見ず知らずの人に会うという不安は消されていない。
だからシュウトとナギが傍にいてくれるのは私にとったら何より安心できるということ。……本当は、それ以外にもある。
単純にシュウトと外を並んで歩けて嬉しい。
朝、おはようと言ってくれて嬉しいし、振り返って目が合うとふわりと笑ってくれる、ただそれだけのことが、胸をぎゅっと掴まれるぐらい嬉しい。
それを素直に言葉にして伝えたら良いのにと思うけれど、私は未だに素直に胸の内を伝える事が苦手で、昨日の仲直りのやり方すら見つけられずにいる。
そしてそれを認めたくない私は、年齢もさることながら見た目も中身もこの5人の中で一番子供である。
「─────……瑠璃、ほら」
再びシュウトは私に手を差し伸べてくれる。
「だ……大丈夫。はぁはぁ……全然、ま、まだ歩けます」
「あと二歩が限界のように見えるぞ」
「……き、気のせいです。余裕で歩けます……はぁはぁ」
強がりを言ってみたところで、息切れは誤魔化すことができなかった。そんな私の荒い息が先導しているタツミにまで聞こえてしまったのだろう。タツミは振り返り、こちらに戻りながら口を開いた。
「まぁ、ここまで歩けば明日にはシュスイに到着ですわ。ちょうど近くに廃寺があるんで、今日はここで休みましょ」
「……はい、わかっ───ひゃっ」
タツミは、ひょいと私を抱きかかえると、カザハに座らせた。
「瑠璃さま、もうすぐっすよ~。だからもうちょっと、我慢してくださいね」
タツミは私に向かってにっこりと笑うと、カザハの鼻先を軽く撫で、手綱を引いて歩き出した。
カザハに乗るのを拒んでいた私だけど、タツミの人懐っこい笑顔に素直にうなずいてしまう。
出会った時からそうだったけど、タツミは人の心を解すのに長けている。タツミの爪の垢を煎じて飲んだら、この可愛げのない性格は少しはマシになるのだろうか。まぁ、本当にそんなもん出てきたら全力で拒否するけれど。
それと、どうでも良いけれど・・・恨みがましい目で、タツミを睨むシュウトを窘めたほうが良いのだろうか。ただ、その手に持ってる物騒なヤツは直ちにしまってもらうようお願いすべきだろう。私も大人気ないけど、シュウトもそこそこに大人気ない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タツミが言っていた廃寺は、それから半時も経たず姿を現した。見た目は、かなり薄気味悪いけど、堂の中は以外にも広く、一晩休むには、十分な建物だった。
「でも、絶対、夜は怖いわよね……」
私は靴を脱いで、思いっきり伸びをしながら独り言を呟いた。
「……瑠璃さま、夜ではなくても見れますわよ」
「……え?───ひゃぁ!!」
急に寒気を帯びて振り返ったら、すぐ後ろに人形のように整った顔のヒノエがいた。おののく私とは対照的に、ヒノエの表情は全く動かない。と、いうことで、ヒノエのさっきの発言が本当なのか冗談なのか全くわからない。一応……念のため、確認しよう。
「ヒノエさん……あの、冗談ですよね?」
「ふふっ……さぁ、どうでしょう」
ヒノエは意味ありげに、微笑むだけだった。確認なんてしなければよかった。
実際私は、真っ暗な社で一人で過ごしたこともあるし、人外の生き物にも遭遇しているけど、それはそれ、これはこれ。やっぱり怖いものは怖い。選べるものなら絶対に、会いたくないものだ。
蒼白になっている私に、少し間を置いてヒノエはおっとりと口を開いた。
「大丈夫ですわ。ここにいるのは雑魚ばかり。怖がる程のものではありません」
あーやっぱりいるんだ……。できれば、そんなものいないから大丈夫という答が良かった。でも聞いてしまったものは仕方がない。都合よくここだけ記憶喪失になれない私は、今日は一番に寝ようと、こっそり心に誓った。
それからとりあえず、食料を調達するといって、タツミを含む男性の三人は、夕暮れ間近なのに、寺から飛び出してしまった。
幸い廃寺にも台所があったので、私とヒノエは、三人がいつでも帰ってきたら調理に取り掛かることができるように、手分けをして掃除を始めた。けれど───
「それにしても、瑠璃様……その格好は如何かと……」
「え?」
黙々と板張りに雑巾がけをしていた私は、ヒノエに突然、話しかけられ手を止めた。
如何と言われても───私は視線を下に向けて、自分の服装を改めて見回す。
私が身につけているものは確かに高価な衣ではないがシュスイに行くと決まって、ナギが用意してくれた肌触りの良い丈夫な木綿の衣だ。
このコキヒ国では旅服は女性でも袴を履くので、とても歩きやすい。あとケープみたいな外套を羽織る。
衣と袴は深緑、外套は山吹色。どれも指し色に緋色の装飾が付いていて、私は一目見ただけで、この旅服がお気に入りになったのだ。ということで、特に如何呼ばわりされるほどの格好ではない。私はヒノエの言葉にきょとんと首を傾げる。
ヒノエは、そのとぼけた私の反応に、イラっとしたらしく、目をむいて叫んだ。
「仮にもシュスイの姫君が、こんな小汚い格好をして……野良着にザンバラ髪でヒノエは……ヒノエは情けなくて、涙が出てきます!!」
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