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エピローグ
その後の私達
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───それから2ヶ月が経った。
無事に秋の剣術大会が終わって、もうすっかり冬の季節。軍人の皆さんは、冬服の制服に指定のコートを着て本日も元気に国境警備に励んでいます。
そして、私は司令官さまの秘書として勤務を続けている。
秋の始めの頃、今すぐ辞めたい。やりがい皆無とほざいていた私だけれど、今では毎日を楽しく、そして忙しく過ごしている。
ただ窃盗団の残党は未だに捕縛できていないので、私は未だにどこへ行くにも馬車移動。そして心配性の司令官さまどこにでも付いて来る。
だから女子の本音トークがしたくても、ユリナとはまだ会えていない。ま、彼女も恋人との時間が忙しいので、近況報告は手紙でのやり取りの方が都合が良いようだ。
ちなみに、薬草園の担当は、正式に私が任命された。とても嬉しい。そしてそれに伴い、軍の紋章が刻まれた白衣が支給され、これもまた嬉しい。
あと薬草園の関係で、ちょいちょい実家に帰る時は、ウィルさんも一緒。手土産の菓子を持った司令官さまと、大きなキャベツを持ったウィルさんと3人で乗る馬車は少々狭いと思うけれど、それは別段不満はない。
それに最大の理由として、実は私は寒いのが苦手だから、外に出たくないのだ。
思い出したくも無いけれど、去年、夏の熱さにも冬の寒さにも負けず必死こいて働けたのは、所謂、恋に恋したナチュラルハイ状態だったというわけで。
………という近況報告などどうでもいいことと思っているだろう。聞きたいのはそれじゃなく、別のアレだと。
期待を裏切るようで申し訳ないが、司令官さまと私の関係はそこまでは進んでいない。
なにせきちんと交際を始めるのは、司令官さまが初めてなのだ。だからちょっとしたことでも、私は臆病になってしまうし、まごついてしまう。
でも司令官さまはそんな私を見ても、怒らないし、急かさない。同じ歩幅で歩こうとしてくれている。
といっても、多少の変化はある。
就業時間を過ぎれば、司令官さまは私の事をシアと呼ぶ。そして私も司令官さまのことをアルさんと呼ぶ。それからキスも……する。
ただ、キスをするたびに赤面する私を嬉しそうに観察する司令官さまは、やっぱりドが付くSだと痛感してしまう。
───………そんなことを考えながら、手元の資料を整理していた私だったけれど、就業を知らせるチャイムが鳴った。
そうすれば、司令官さまは、待ってましたと言わんばかりに、にこりと笑って私に話しかける。
「シア、明日の休みはどうする?」
「薬草園に引きこもります」
「却下」
「えー」
机の上を片付けていた私は、思わず非難の声をあげてしまった。
すぐに司令官さまは、ちょっと眉を上げて、こちらに歩いて来る。そして、膝を付き椅子に座ったままの私と目を合わせる。
「明日は市が立つ日だ。付き合ってもらおう」
「嫌です」
「なぜ?」
「………寒いからです」
目を逸らして本音を口にすれば、司令官さまは声を上げて笑った。
「なら、丁度良い。明日は朝食を食べたら、西門に集合だ」
「は?………え?いや、ちょっと」
「シア、お疲れさま。今日は明日に備えて、ゆっくり休みなさい」
「………お、お疲れ様で──……んっ」
就業の挨拶を返そうとしたら、司令官さまの唇に封じられてしまった。
なんだかキスで言い含めた感満載だ。けれど、司令官さまは物足りなさげに危険な目を向けている。
このままここに居座れば、なんだかとっても危ない予感がして、私はそそくさと部屋を後にした。
翌朝、私は身支度を整えて、司令官さまとの待ち合わせ場所に向かっている。
「……うー、さっぶぅい」
空は抜けるような晴天。だけど、北風は容赦ない。
はぁーっと両手に息を吹きかけて、私は肩にかけていたショールをきつく胸元でかき合わせる。
この前、実家からコートを持って帰るのを忘れてしまいとても後悔している。やっぱり、今日は外出なんかしないで、ぬくぬくとした温室で過ごしたい。
それに、これからの季節、薬草の手入れが難しくなる。栄養価の高い肥料も用意しないとな……などと考えながら歩いていたら───。
「───……それにしても、あの秘書の娘、災難だよなぁ」
建物の角からそんな声が聞こえ、ピタッと足が止まった。
そして、そぉーっと顔を覗かせば、いつぞやにお世話になった警備兵のお兄さん3人が輪になって談笑している。
「だよなぁ。あんな若い身空で司令官に捕まるなんてなぁ」
「うんうん。窃盗団の残党なんて、とっくに拘束してるのに、当の本人には知らされていないなんて気の毒だよなぁ」
「仕方ないんじゃね?あの司令官殿が、ベタ惚れしてるんだから。ほいほい街に出して、知らん男に粉かけられるかもしれなくて、気が気じゃないんだろうな」
はぁあああああっ!?
咄嗟に両手を口元に覆ったので、絶叫はなんとか堪えることができたけれど、この真実については聞き流すことはできない。
「あのぉー。すいませーん」
「あっおはようございます!シンシアさん。今日、司令官殿とデートですよね?楽しんできてくださいね」
警備兵の一人から満面の笑みを向けられ、私は膝から崩れ落ちそうになってしまった。
そして、警備兵のお兄さん達は次々にこんなことを言い放つ。
「今日は市が立つ日ですよね?夕方までラブラブしてきてくださいねー」
「そうそう、市の東側に新しい屋台ができているそうなんですよ。確か、なんかの芋のデンプンを固めたのが入っている飲み物屋さん。王都で大人気だそうですから、行ってみてくださいねー」
「あっ、串焼きのお肉も美味しいらしいですよ!司令官殿にいっぱいおねだりしてきてくださいねー」
警備兵の皆さんは、悪びれるどころか、そう言って元気に手を振って私を見送ってくれた。
そんな空気の中、真相を確かめることができなかった私は、はははと乾いた声を上げて、その場を去ることしかできなかった。
「シア、おはよう」
待ち合わせ場所に到着すれば、既に司令官さまはそこに居た。
今日は軍服ではなく私服。厚手の深緑色のジャケットに、グレー色のタイ。渋い色合いの服装だけれど、イケメンだからしっかり自分スタイルに仕上げている。大変良くお似合いだ。
ここで普段ならドギマギしてしまう私だけれど、先程の一件があり、ちょっとぶすっとした顔になってしまう。
「…………おはようございます」
私を見つめながら、眩しそうに眼を細める司令官さま、あのぉー…私に何か言うことは無いんでしょうか?
そんな気持ちでじっと見上げれば、突然、ふわりと厚手の布で私を覆った。
「王都で注文していたんだが、昨日届いた。ああ、柔らかい色は、シアに良く似あうな」
肩に掛かった布を少し指で引っ張れば、滑らかな毛織物の感触。良く見ればそれは淡い黄緑色のコートだった。
驚いて司令官さまを見れば、ちょっとした悪戯が成功したような笑みを浮かべて、掠めるようなキスをする。
「……ちょっ、なんていうところでっ」
「誰も見ていない。ほら、ちゃんと袖を通しなさい」
真っ赤になった私に、司令官さまは意地悪く笑いながらも、子供の世話を焼くように私にコートを着させてくれた。
そしてきちんとボタンをはめた後、満足気に目を細めて頷いた。
………もう。さっきまで私、怒っていたはずなのに。司令官さまの笑顔を見た途端、すっかり機嫌が直っている。そして、ドキドキと胸の鼓動が忙しい。
そしてこの束縛といっても過言ではない司令官さまの行動を、心配性とだなぁの一言で済まそうとしている自分は、惚れてしまった弱みということなのだろうか。
「よし。では、行こう」
私の心中など知らない司令官さまは、嬉しそうに笑って私に手を差し出す。
今日の司令官さま普段着なので、手袋は嵌めていない。大きな手のひらには、長年の稽古でできた剣だこがある。
それを見つめながら手を重ねれば、自然な流れで指と指が絡まる。そして、あっという間に互いの熱が伝わる。
「シア、寒くないか?」
私を見つめる司令官さまの眼差しは、どこまでも優しい。
「寒くないですよ。アルさん」
そう。新しいコートに、隣にはあなたが居る。
ずっと寒い冬が苦手だった。でも、生まれて初めてこの季節が暖かいものになる予感がした。
でもこの後、私と司令官さまが歩み未来がどうなるのかは……───それはまた、別のおはなし。
゚+*:;;:*+*:;;:* おわり *:;;:*+゚*:;;:*+゚
無事に秋の剣術大会が終わって、もうすっかり冬の季節。軍人の皆さんは、冬服の制服に指定のコートを着て本日も元気に国境警備に励んでいます。
そして、私は司令官さまの秘書として勤務を続けている。
秋の始めの頃、今すぐ辞めたい。やりがい皆無とほざいていた私だけれど、今では毎日を楽しく、そして忙しく過ごしている。
ただ窃盗団の残党は未だに捕縛できていないので、私は未だにどこへ行くにも馬車移動。そして心配性の司令官さまどこにでも付いて来る。
だから女子の本音トークがしたくても、ユリナとはまだ会えていない。ま、彼女も恋人との時間が忙しいので、近況報告は手紙でのやり取りの方が都合が良いようだ。
ちなみに、薬草園の担当は、正式に私が任命された。とても嬉しい。そしてそれに伴い、軍の紋章が刻まれた白衣が支給され、これもまた嬉しい。
あと薬草園の関係で、ちょいちょい実家に帰る時は、ウィルさんも一緒。手土産の菓子を持った司令官さまと、大きなキャベツを持ったウィルさんと3人で乗る馬車は少々狭いと思うけれど、それは別段不満はない。
それに最大の理由として、実は私は寒いのが苦手だから、外に出たくないのだ。
思い出したくも無いけれど、去年、夏の熱さにも冬の寒さにも負けず必死こいて働けたのは、所謂、恋に恋したナチュラルハイ状態だったというわけで。
………という近況報告などどうでもいいことと思っているだろう。聞きたいのはそれじゃなく、別のアレだと。
期待を裏切るようで申し訳ないが、司令官さまと私の関係はそこまでは進んでいない。
なにせきちんと交際を始めるのは、司令官さまが初めてなのだ。だからちょっとしたことでも、私は臆病になってしまうし、まごついてしまう。
でも司令官さまはそんな私を見ても、怒らないし、急かさない。同じ歩幅で歩こうとしてくれている。
といっても、多少の変化はある。
就業時間を過ぎれば、司令官さまは私の事をシアと呼ぶ。そして私も司令官さまのことをアルさんと呼ぶ。それからキスも……する。
ただ、キスをするたびに赤面する私を嬉しそうに観察する司令官さまは、やっぱりドが付くSだと痛感してしまう。
───………そんなことを考えながら、手元の資料を整理していた私だったけれど、就業を知らせるチャイムが鳴った。
そうすれば、司令官さまは、待ってましたと言わんばかりに、にこりと笑って私に話しかける。
「シア、明日の休みはどうする?」
「薬草園に引きこもります」
「却下」
「えー」
机の上を片付けていた私は、思わず非難の声をあげてしまった。
すぐに司令官さまは、ちょっと眉を上げて、こちらに歩いて来る。そして、膝を付き椅子に座ったままの私と目を合わせる。
「明日は市が立つ日だ。付き合ってもらおう」
「嫌です」
「なぜ?」
「………寒いからです」
目を逸らして本音を口にすれば、司令官さまは声を上げて笑った。
「なら、丁度良い。明日は朝食を食べたら、西門に集合だ」
「は?………え?いや、ちょっと」
「シア、お疲れさま。今日は明日に備えて、ゆっくり休みなさい」
「………お、お疲れ様で──……んっ」
就業の挨拶を返そうとしたら、司令官さまの唇に封じられてしまった。
なんだかキスで言い含めた感満載だ。けれど、司令官さまは物足りなさげに危険な目を向けている。
このままここに居座れば、なんだかとっても危ない予感がして、私はそそくさと部屋を後にした。
翌朝、私は身支度を整えて、司令官さまとの待ち合わせ場所に向かっている。
「……うー、さっぶぅい」
空は抜けるような晴天。だけど、北風は容赦ない。
はぁーっと両手に息を吹きかけて、私は肩にかけていたショールをきつく胸元でかき合わせる。
この前、実家からコートを持って帰るのを忘れてしまいとても後悔している。やっぱり、今日は外出なんかしないで、ぬくぬくとした温室で過ごしたい。
それに、これからの季節、薬草の手入れが難しくなる。栄養価の高い肥料も用意しないとな……などと考えながら歩いていたら───。
「───……それにしても、あの秘書の娘、災難だよなぁ」
建物の角からそんな声が聞こえ、ピタッと足が止まった。
そして、そぉーっと顔を覗かせば、いつぞやにお世話になった警備兵のお兄さん3人が輪になって談笑している。
「だよなぁ。あんな若い身空で司令官に捕まるなんてなぁ」
「うんうん。窃盗団の残党なんて、とっくに拘束してるのに、当の本人には知らされていないなんて気の毒だよなぁ」
「仕方ないんじゃね?あの司令官殿が、ベタ惚れしてるんだから。ほいほい街に出して、知らん男に粉かけられるかもしれなくて、気が気じゃないんだろうな」
はぁあああああっ!?
咄嗟に両手を口元に覆ったので、絶叫はなんとか堪えることができたけれど、この真実については聞き流すことはできない。
「あのぉー。すいませーん」
「あっおはようございます!シンシアさん。今日、司令官殿とデートですよね?楽しんできてくださいね」
警備兵の一人から満面の笑みを向けられ、私は膝から崩れ落ちそうになってしまった。
そして、警備兵のお兄さん達は次々にこんなことを言い放つ。
「今日は市が立つ日ですよね?夕方までラブラブしてきてくださいねー」
「そうそう、市の東側に新しい屋台ができているそうなんですよ。確か、なんかの芋のデンプンを固めたのが入っている飲み物屋さん。王都で大人気だそうですから、行ってみてくださいねー」
「あっ、串焼きのお肉も美味しいらしいですよ!司令官殿にいっぱいおねだりしてきてくださいねー」
警備兵の皆さんは、悪びれるどころか、そう言って元気に手を振って私を見送ってくれた。
そんな空気の中、真相を確かめることができなかった私は、はははと乾いた声を上げて、その場を去ることしかできなかった。
「シア、おはよう」
待ち合わせ場所に到着すれば、既に司令官さまはそこに居た。
今日は軍服ではなく私服。厚手の深緑色のジャケットに、グレー色のタイ。渋い色合いの服装だけれど、イケメンだからしっかり自分スタイルに仕上げている。大変良くお似合いだ。
ここで普段ならドギマギしてしまう私だけれど、先程の一件があり、ちょっとぶすっとした顔になってしまう。
「…………おはようございます」
私を見つめながら、眩しそうに眼を細める司令官さま、あのぉー…私に何か言うことは無いんでしょうか?
そんな気持ちでじっと見上げれば、突然、ふわりと厚手の布で私を覆った。
「王都で注文していたんだが、昨日届いた。ああ、柔らかい色は、シアに良く似あうな」
肩に掛かった布を少し指で引っ張れば、滑らかな毛織物の感触。良く見ればそれは淡い黄緑色のコートだった。
驚いて司令官さまを見れば、ちょっとした悪戯が成功したような笑みを浮かべて、掠めるようなキスをする。
「……ちょっ、なんていうところでっ」
「誰も見ていない。ほら、ちゃんと袖を通しなさい」
真っ赤になった私に、司令官さまは意地悪く笑いながらも、子供の世話を焼くように私にコートを着させてくれた。
そしてきちんとボタンをはめた後、満足気に目を細めて頷いた。
………もう。さっきまで私、怒っていたはずなのに。司令官さまの笑顔を見た途端、すっかり機嫌が直っている。そして、ドキドキと胸の鼓動が忙しい。
そしてこの束縛といっても過言ではない司令官さまの行動を、心配性とだなぁの一言で済まそうとしている自分は、惚れてしまった弱みということなのだろうか。
「よし。では、行こう」
私の心中など知らない司令官さまは、嬉しそうに笑って私に手を差し出す。
今日の司令官さま普段着なので、手袋は嵌めていない。大きな手のひらには、長年の稽古でできた剣だこがある。
それを見つめながら手を重ねれば、自然な流れで指と指が絡まる。そして、あっという間に互いの熱が伝わる。
「シア、寒くないか?」
私を見つめる司令官さまの眼差しは、どこまでも優しい。
「寒くないですよ。アルさん」
そう。新しいコートに、隣にはあなたが居る。
ずっと寒い冬が苦手だった。でも、生まれて初めてこの季節が暖かいものになる予感がした。
でもこの後、私と司令官さまが歩み未来がどうなるのかは……───それはまた、別のおはなし。
゚+*:;;:*+*:;;:* おわり *:;;:*+゚*:;;:*+゚
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