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私と司令官さまの攻防戦
司令官さまは酒乱でした①
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基本的に軍事施設で働いている私は、与えられた仕事以外のことをしようとは思わない。なにせ触れるもの全てが機密情報なもので。
一般人が見てはいけないものをうっかり目にしてクビになるならラッキーだけれど、ガチで首を落とされるのは、たまったもんじゃない。
同じ首つながりでも、その差は天と地ほど。
そう思って最低限、かつ、やっても咎められることはないと思う仕事だけを精一杯やってきた。
でも、自分の行動すべてが、あざといのかなぁと思ってしまうと、何をするにしても怖くなってしまう。
今まで私は、マーカスのことだけ考えていたから人の目なんて気にしたことはなかった。というか人の意見になんて耳を貸さなかった。
それはつまり、陰でどう言われても、これがマーカスに渡す給料に繋がると思えば平気だったということ。
でも、そんな私の思い込みや、無神経さが、今の私を苛んでいる。
それに、この施設にいる人達が皆、大人で優しいから何も言わないだけ。なのにそれに気付かず、私は甘えていたのだ。
……もはや、土下座をしたい案件である。
けれどまぁ、そんな私は絶賛、残業中だったりする。───だって、明日はお休みだから、お仕事に差し障りがあっては困るし。それに、今は執務室に誰も居ないから。
色分けされたファイルの棚から、該当するものを間引いていく。司令官さまが良く使うファイルだから、私が居なくても、すぐ手に取れるように。
それから一応、薬膳茶の用意だけはしておこうと思う。お湯だけ入れれば、すぐ飲めるように。あとは、何かあるかなぁ。
……ああ。一応、明日の朝、ウィルさんに声を掛けておいた方が良いのか。でも、あれから気まずくて自分から何となく避けてしまっているので、顔を会わせにくい。
そんなことをつらつらと考えながら一心不乱に手を動かしていたら、キィっと静かに扉が開く音が聞こえた。
巡回の軍人さんかな?そんなことを思いながら振り返った私は、思わず手にしていたファイルを落としそうになってしまった。
なぜなら、扉にもたれかかるように腕を組んでこちらを見つめる───司令官さまがいたから。
「なんだ居たのか」
「………………………」
居て悪ぅございましたね。
そんな言葉を飲み込んだ私は、結構な大人になったと痛感する。
それにしても、こんな夜更けに何しに来たんだろう。悪いことをしたつもりはないけれど、不意を付かれてしまうと、何だか妙に後ろめたい。
そんな気持ちでまごまごしていると、司令官さまは胸元のタイを外しながら、こちらに近づいて来た。余談だけれど、その手はなぜかわからないけれど、手袋が嵌められてなかった。
「夜中にここに来るなと言っておいただろう?君は危機管理能力が足りない」
こちらに向かう途中で、自分の執務机にタイを放った司令官さまは足を止め、眉間に皺を寄せながらそんなことを言う。
「…………申し訳ありません」
会った早々、小言を頂戴されれば、さすがに上司の言葉とはいえ、カチンとくる。
だから、少々不貞腐れた口調になる私は子供ではない。ちょっと思うことがあるだけだ。
でも、司令官さまにとったら、私の態度は生意気なものに見えたのだろう、あからさまに邪魔と言いたげな表情を浮かべて再び口を開いた。
「で、なんでここに居るんだ?」
「明日はお休みだから、ちょっと、書類整理をしておこうと思いまして。でも、もう終わります」
というか、途中ですがお暇させていただきます。
後半の言葉は胸の中で呟いて、私は手にしているファイルを自分の机にいささか乱暴に置く。
「誰も、帰れなどとは言ってないだろう」
「は?」
前言撤回するようなことを言った司令官さまは、カツカツと足音を響かせ、私のすぐ傍に来た。───その途端、露骨に顔を顰めてしまった。
なにしろこのイケメン、マジで酒臭かったから。そして、どうやら私は、酔っぱらいに絡まれているようだ。うん。今すぐ、撤退すべし。
「休みか。……マーカスにでも遭うのか?」
「は?」
酔っぱらいというイケメンモンスターを前に、扉までどのルートが一番近いかの算段を立てていたら、意味の分からない質問が飛んできた。
1ミクロも考えてなかったことなので、今回の間抜けな声は見逃して欲しい。
「私は質問をしている。答えたまえ」
っとにもうっ、酔っぱらいは面倒くさい。
「マーカスには会いません。ユリナと会うだけです」
吐き捨てるようにそう言えば、司令官さまは顎に手を当て少し目を瞑る。そして短い声を上げた。
「ああ、この前市場であった彼女か。何をするんだ?言っておくが、休みであっても護衛は付けるし、移動は馬車だ」
「はぁ!?嫌ですよ」
冗談じゃない。明日は、恋に生きる親友と、あざとさについて語り合う予定なのだ。
そんな赤裸々な本音トークなど、施設の人に聞かれるなんて死んだ方がマシだ。それに、こんなの人権侵害にあたること。
そんでもって、司令官さまに詳細を伝えて、諦めてもらうよう説得することなんでできるわけがない。
───なのに、司令官さまは、むっとした表情を浮かべておられる。私もつられてむっとしてしまう。
「……し、司令官さまには、関係ないことじゃないですか」
弱々しい声とは裏腹に結構強気にぷいっと顔を背ければ、あなたどなた?と聞きたくなるほど甘い声が耳朶を刺した。
「……つれないな。シア。君は、その言葉で私がどんな気持ちになるかわからないんだろうな」
えっとぉ……司令官さま、妙に艶めかしいことを言ってくれますが……あなたが、私が酔っぱらったことで説教してくれた事実を今、口に出せない私の気持ちをわかっていただけますでしょうか?
と、はっきり言えない私は、曖昧な言葉を選んで、目の前の酔っぱらいに伝えることにする。
「司令官さまだって、私がどんな気持ちになっているかわからないでしょうね」
「ほう?言って見たまえ。ま、私はある程度、君の気持ちを理解しているつもりだ」
「……なら、司令官さまの見解を述べてください」
手のひらを向けて促せば、司令官さまは腕を組んでよかろうという言葉を皮切りに、口を開いた。
「君は、未だにマーカスのことを忘れられない。そして、本当はマーカスの力になりたいと思い続けている。そして───」
「んなわけないじゃないですかっ」
鼻で笑ってしまう程、的外れなものだった。というか、思いっきり鼻で笑ってしまっていた。
もちろん司令官さまからしたら、小娘にそんな態度を取られればご立腹になるのは致し方ないことで、ぎろりと視線を厳しくして、乱暴に口を開いた。
「じゃあ、何だ?答えろ」
「一国民としての権利、黙秘権を行使させていただきます」
最近、覚えたカッコいいフレーズを口にして、この場を去ろうとした瞬間、司令官さまは目を冷たく細めた。
しまった。さすがにこれは怒られる。
慌ててスカートの裾を引っ掴んで、廊下へと続く扉にダッシュを決めようとすれば、すぐさま腕を掴まれた。
そしてそのまま両手を一纏めにされ、トンという背中に軽い衝撃が走る。
一拍置いて気付いた。壁に押し付けらたことを。
「……し、司令官さま……あ、あの……」
「煩い。喋るな」
顎を掴まれ、無理矢理視線が絡み合う。
「嫌だっ。離してくださいっ」
「駄目だ。誰が離すか。───……ああ、もうまどろっこしいな……」
見たことも無い強い眼差しを至近距離で受けて、身体が硬直したように動かない。怖い。ものっすごく怖い。
そんなことを思いながらカタカタと小刻みに震える私に、司令官さまはふっと微笑みかけた。
「ああ、そうか。手を伸ばせば、君はこんなに近くに居たんだな」
そう言って司令官さまは、長いまつ毛を伏せるようにして、私の唇に自分の唇を押し当てた。
一般人が見てはいけないものをうっかり目にしてクビになるならラッキーだけれど、ガチで首を落とされるのは、たまったもんじゃない。
同じ首つながりでも、その差は天と地ほど。
そう思って最低限、かつ、やっても咎められることはないと思う仕事だけを精一杯やってきた。
でも、自分の行動すべてが、あざといのかなぁと思ってしまうと、何をするにしても怖くなってしまう。
今まで私は、マーカスのことだけ考えていたから人の目なんて気にしたことはなかった。というか人の意見になんて耳を貸さなかった。
それはつまり、陰でどう言われても、これがマーカスに渡す給料に繋がると思えば平気だったということ。
でも、そんな私の思い込みや、無神経さが、今の私を苛んでいる。
それに、この施設にいる人達が皆、大人で優しいから何も言わないだけ。なのにそれに気付かず、私は甘えていたのだ。
……もはや、土下座をしたい案件である。
けれどまぁ、そんな私は絶賛、残業中だったりする。───だって、明日はお休みだから、お仕事に差し障りがあっては困るし。それに、今は執務室に誰も居ないから。
色分けされたファイルの棚から、該当するものを間引いていく。司令官さまが良く使うファイルだから、私が居なくても、すぐ手に取れるように。
それから一応、薬膳茶の用意だけはしておこうと思う。お湯だけ入れれば、すぐ飲めるように。あとは、何かあるかなぁ。
……ああ。一応、明日の朝、ウィルさんに声を掛けておいた方が良いのか。でも、あれから気まずくて自分から何となく避けてしまっているので、顔を会わせにくい。
そんなことをつらつらと考えながら一心不乱に手を動かしていたら、キィっと静かに扉が開く音が聞こえた。
巡回の軍人さんかな?そんなことを思いながら振り返った私は、思わず手にしていたファイルを落としそうになってしまった。
なぜなら、扉にもたれかかるように腕を組んでこちらを見つめる───司令官さまがいたから。
「なんだ居たのか」
「………………………」
居て悪ぅございましたね。
そんな言葉を飲み込んだ私は、結構な大人になったと痛感する。
それにしても、こんな夜更けに何しに来たんだろう。悪いことをしたつもりはないけれど、不意を付かれてしまうと、何だか妙に後ろめたい。
そんな気持ちでまごまごしていると、司令官さまは胸元のタイを外しながら、こちらに近づいて来た。余談だけれど、その手はなぜかわからないけれど、手袋が嵌められてなかった。
「夜中にここに来るなと言っておいただろう?君は危機管理能力が足りない」
こちらに向かう途中で、自分の執務机にタイを放った司令官さまは足を止め、眉間に皺を寄せながらそんなことを言う。
「…………申し訳ありません」
会った早々、小言を頂戴されれば、さすがに上司の言葉とはいえ、カチンとくる。
だから、少々不貞腐れた口調になる私は子供ではない。ちょっと思うことがあるだけだ。
でも、司令官さまにとったら、私の態度は生意気なものに見えたのだろう、あからさまに邪魔と言いたげな表情を浮かべて再び口を開いた。
「で、なんでここに居るんだ?」
「明日はお休みだから、ちょっと、書類整理をしておこうと思いまして。でも、もう終わります」
というか、途中ですがお暇させていただきます。
後半の言葉は胸の中で呟いて、私は手にしているファイルを自分の机にいささか乱暴に置く。
「誰も、帰れなどとは言ってないだろう」
「は?」
前言撤回するようなことを言った司令官さまは、カツカツと足音を響かせ、私のすぐ傍に来た。───その途端、露骨に顔を顰めてしまった。
なにしろこのイケメン、マジで酒臭かったから。そして、どうやら私は、酔っぱらいに絡まれているようだ。うん。今すぐ、撤退すべし。
「休みか。……マーカスにでも遭うのか?」
「は?」
酔っぱらいというイケメンモンスターを前に、扉までどのルートが一番近いかの算段を立てていたら、意味の分からない質問が飛んできた。
1ミクロも考えてなかったことなので、今回の間抜けな声は見逃して欲しい。
「私は質問をしている。答えたまえ」
っとにもうっ、酔っぱらいは面倒くさい。
「マーカスには会いません。ユリナと会うだけです」
吐き捨てるようにそう言えば、司令官さまは顎に手を当て少し目を瞑る。そして短い声を上げた。
「ああ、この前市場であった彼女か。何をするんだ?言っておくが、休みであっても護衛は付けるし、移動は馬車だ」
「はぁ!?嫌ですよ」
冗談じゃない。明日は、恋に生きる親友と、あざとさについて語り合う予定なのだ。
そんな赤裸々な本音トークなど、施設の人に聞かれるなんて死んだ方がマシだ。それに、こんなの人権侵害にあたること。
そんでもって、司令官さまに詳細を伝えて、諦めてもらうよう説得することなんでできるわけがない。
───なのに、司令官さまは、むっとした表情を浮かべておられる。私もつられてむっとしてしまう。
「……し、司令官さまには、関係ないことじゃないですか」
弱々しい声とは裏腹に結構強気にぷいっと顔を背ければ、あなたどなた?と聞きたくなるほど甘い声が耳朶を刺した。
「……つれないな。シア。君は、その言葉で私がどんな気持ちになるかわからないんだろうな」
えっとぉ……司令官さま、妙に艶めかしいことを言ってくれますが……あなたが、私が酔っぱらったことで説教してくれた事実を今、口に出せない私の気持ちをわかっていただけますでしょうか?
と、はっきり言えない私は、曖昧な言葉を選んで、目の前の酔っぱらいに伝えることにする。
「司令官さまだって、私がどんな気持ちになっているかわからないでしょうね」
「ほう?言って見たまえ。ま、私はある程度、君の気持ちを理解しているつもりだ」
「……なら、司令官さまの見解を述べてください」
手のひらを向けて促せば、司令官さまは腕を組んでよかろうという言葉を皮切りに、口を開いた。
「君は、未だにマーカスのことを忘れられない。そして、本当はマーカスの力になりたいと思い続けている。そして───」
「んなわけないじゃないですかっ」
鼻で笑ってしまう程、的外れなものだった。というか、思いっきり鼻で笑ってしまっていた。
もちろん司令官さまからしたら、小娘にそんな態度を取られればご立腹になるのは致し方ないことで、ぎろりと視線を厳しくして、乱暴に口を開いた。
「じゃあ、何だ?答えろ」
「一国民としての権利、黙秘権を行使させていただきます」
最近、覚えたカッコいいフレーズを口にして、この場を去ろうとした瞬間、司令官さまは目を冷たく細めた。
しまった。さすがにこれは怒られる。
慌ててスカートの裾を引っ掴んで、廊下へと続く扉にダッシュを決めようとすれば、すぐさま腕を掴まれた。
そしてそのまま両手を一纏めにされ、トンという背中に軽い衝撃が走る。
一拍置いて気付いた。壁に押し付けらたことを。
「……し、司令官さま……あ、あの……」
「煩い。喋るな」
顎を掴まれ、無理矢理視線が絡み合う。
「嫌だっ。離してくださいっ」
「駄目だ。誰が離すか。───……ああ、もうまどろっこしいな……」
見たことも無い強い眼差しを至近距離で受けて、身体が硬直したように動かない。怖い。ものっすごく怖い。
そんなことを思いながらカタカタと小刻みに震える私に、司令官さまはふっと微笑みかけた。
「ああ、そうか。手を伸ばせば、君はこんなに近くに居たんだな」
そう言って司令官さまは、長いまつ毛を伏せるようにして、私の唇に自分の唇を押し当てた。
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