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【現在】居候、ときどき助手編
18.衝撃の事実です①
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言葉にしたら壊れてしまうものがある。そして、私はそれを痛いほど知っている。けれど、曖昧にしたままではいけないものもある。───だから私はデュアの腕に抱かれながら、意を決して口を開いた。
「ねぇ、デュア。これって……拳銃だよね?」
デュアの懐を指さして聞いてみる。デュアは一瞬怪訝そうな顔をしたけれど、すぐに私が示すところに気づいてくれた。
「ああ、お前のところではそう言うのか」
デュアは平坦な口調でそう言って、すんなり懐から拳銃を取り出した。
そして、ほらっとデュアは惜しげもなくそれを持ち上げて私に見せてくれる。間近で見るそれは、美しい装飾がされているが間違いなく人を殺せる武器だった。磨き上げられた黒い輝きが、急に恐ろしく感じる。
でも、戦争中は両国とも弓矢や剣が主流の戦いだった。あの時は国の存続がかかっていたのだ。武器を出し惜しみしている場合じゃなかったはず。
ということは……。
「これ、ティスタリアで作られたやつじゃないよね。……私の世界から持ち込んだヤツだよね?」
人殺しの武器を異世界に持ち込んだなんて考えたくないけれど、それしか考えられない。私だって日本の遊びや文化を伝えたのだ。可能性は十分にある。
震える声で問うた私に、デュアは一つ頷いて、静かに口を開いた。
「ああ、そうだ。たしか300年位前に、聖女を召喚したとき、その女性が持っていたものらしい」
「えええええ!?───・・・っ痛」
衝撃の事実に、傷のことなんて忘れて、思わず絶叫する。
過去に聖女を召喚したことがあるなんて初耳だ。っていうか、ガダルド王と色んな話をしてきたはずなのに、その話題は一度もでなかった。どういうこと!?あ、もしかして王様のお得意のウッカリってヤツ?
「ロゼフ、何か冷やすもの持ってこいっ」
顔をしかめながら驚愕する私に、デュアは慌ててロゼ爺に指示を出す。
・・・っていうか、デュア気付いてる?私、元の世界とか言っちゃってるし、デュアも普通に受け止めているけど、良いの?大丈夫!?もう、何かグダグダなんですけど。
でも、今それを突っ込んでしまったら、話は更にややこしくなるだろう。全てを理解する前に私の脳が悲鳴を上げてしまう。一先ず、目の前の疑問を解くのが先決だ。
ということで、デュアが手にしている拳銃に視線を戻す。
それにしても拳銃持参で召喚なんて、なかなかファンキーな女性だ。何の役にも立たなかった私とは別方向にすごい。とはいえ、なぜこんな物騒なものを持って召喚されたのだろう。その時の状況を聞いてみたいけれど、デュアは知っているのだろうか。いや、多分知らないだろうな。
そんな事を口にしないで考えていたけれど、しっかり顔に出ていたようで、疑問を口にするより前に、デュアが答えてくれた。
「その時の聖女は、元の世界でも戦争真っただ中だったらしい。召喚されても状況が飲み込めず、いきなり王に向かって銃口を向けたと、文献に残っている」
……なるほど、女兵士さんだったのか。カッコイイ。300年前なら、世界のいたるところで戦争、内乱が勃発していたはず。そう考えたら戦争中に召喚されたら、そりゃ状況を理解する前に銃口を向けるのは致し方ない。そして何の手土産も持たずに召喚されたただの女子高生の私は、少々肩身が狭い。
とりあえず、デュアの説明で納得した私は、むくりと湧き出た好奇心に勝てず、口を開いた。
「ねぇデュア、この拳銃、触ってみても良い?」
「ああ」
てっきり断れるかと思いきや、デュアはいとも簡単に拳銃を手渡してくれた。手にしたそれは、見た目よりずっしりと重い。
水鉄砲か、屋台の射的なら経験はあるが、本物の拳銃を前にすると、それがどれだけ、チャチなものだったのかわかった。
手にした拳銃はシリンダーとかトリガーとか、なんとなくパーツの名称は知っているけれど実物を触るのは初めてだった。そこで再び疑問が湧いてくる。
拳銃は大切に使えば長持ちするのかもしれない。でも、銃弾は消耗品だ。どうやって補充をしているのだろう、と。
銃弾を製造するにはそれなりの技術が必要だし専門的な知識が必要だ。過去の聖女さんは、銃弾を製造できる技術も持っていたのだろうか。
私の頭で考えていても一生答えは出ないので、デュアに聞いてみる。
「拳銃の銃弾はどうしてるの?」
「ジュウダン?ああ、弾のことか。……これだ」
そう言ってデュアは懐から小石を取り出した。
へー小石かぁ。斜め上にすごいね。でも、命中率は最悪だろう。あ、いや、デュアは易々と命中させていた。デュアすごいねー。一流のスナイパーじゃん。・・・じゃなくって!!
「こ、小石で撃ってるの!?」
「小石ってお前……王が聞いたら泣くぞ。良く見ろ」
目を丸くした私に、デュアはその小石を無理矢理握らせる。
押し付けられた小石をランプの灯りにかざして見てみると、内側が角度によってキラキラと色彩を帯びている、変わった石だった。その特徴に一つだけ思い当たるものがあった。
「これ、黒鍾石じゃん!」
ぐわっと叫ぶけど、今度はしっかり傷口を押さえておいたから、痛みはない。ドヤ顔をキメる私に、デュアはやれやれと溜息を付いて口を開いた。
「やっと気づいたか。毎日、同じ石を身に付けておいて、まったく呆れる」
私の胸元を指さしながら、デュアは残念な子を見る目でこちらを見る。視線が痛い。
でも、デュアがあからさまに呆れるのも無理はない。王様から貰ったこの石は元は黒鍾石と言って、この国でしか取れない希少なもの。この石だけは、魔力を込めることができるのだ。と、いうことは──。
「この黒鍾石で撃つってことは、やっぱり命中率もあがるの?」
「さあなぁ。命中率は知らん。そもそも本当の弾で撃ったことがないから、比べようがない。ただこれは、人体に入れば消えるようにできているし、命中しても出血しない優れものだ」
なるほど。この拳銃で撃たれたら、全員、原因不明の突然死で処理されるわけだ。暗殺にはうってつけのものなんだ。
でも、魔法は王様しか使えないはず。そしてさっき、私が魔法石を小石呼ばわりしたとき、デュアが王様が泣くって言ってた。それはつまり……
「この銃弾って、まさか王様が……」
「あいつ以外、作れないかならな」
ええええええ、デュア今、何て言った!?
銃弾をガダルド王に作らせているのにも驚きだけど、王様をあいつ呼ばわりしたことの方が、もっと驚きだった。
さてさて、拳銃については理解した。でも、理解した分、新たな疑問がわいてくる。
「色々、突っ込みたいことがあるんだけど……」
そこまで言って、一旦、言葉を止めてしまった。デュアはどれだけのことを教えてくれるのだろうか。
「今更隠しても、遅すぎるだろ。何だ?言ってみろ」
ありがとう、デュア。ではお言葉に甘えて、早速これから聞いてみよう。
「デュアが、なんでそんなものを持ってるの?」
「……そこからか」
意外そうに目を丸くするデュアに、私はそっと視線をずらす。
わかってるよ、デュア。一番聞きたいのは、これじゃない。でも、そのことは最後に聞きたい。
私のその気持ちを汲み取ってくれたのか、デュアは一瞬の間の後、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、デュア。これって……拳銃だよね?」
デュアの懐を指さして聞いてみる。デュアは一瞬怪訝そうな顔をしたけれど、すぐに私が示すところに気づいてくれた。
「ああ、お前のところではそう言うのか」
デュアは平坦な口調でそう言って、すんなり懐から拳銃を取り出した。
そして、ほらっとデュアは惜しげもなくそれを持ち上げて私に見せてくれる。間近で見るそれは、美しい装飾がされているが間違いなく人を殺せる武器だった。磨き上げられた黒い輝きが、急に恐ろしく感じる。
でも、戦争中は両国とも弓矢や剣が主流の戦いだった。あの時は国の存続がかかっていたのだ。武器を出し惜しみしている場合じゃなかったはず。
ということは……。
「これ、ティスタリアで作られたやつじゃないよね。……私の世界から持ち込んだヤツだよね?」
人殺しの武器を異世界に持ち込んだなんて考えたくないけれど、それしか考えられない。私だって日本の遊びや文化を伝えたのだ。可能性は十分にある。
震える声で問うた私に、デュアは一つ頷いて、静かに口を開いた。
「ああ、そうだ。たしか300年位前に、聖女を召喚したとき、その女性が持っていたものらしい」
「えええええ!?───・・・っ痛」
衝撃の事実に、傷のことなんて忘れて、思わず絶叫する。
過去に聖女を召喚したことがあるなんて初耳だ。っていうか、ガダルド王と色んな話をしてきたはずなのに、その話題は一度もでなかった。どういうこと!?あ、もしかして王様のお得意のウッカリってヤツ?
「ロゼフ、何か冷やすもの持ってこいっ」
顔をしかめながら驚愕する私に、デュアは慌ててロゼ爺に指示を出す。
・・・っていうか、デュア気付いてる?私、元の世界とか言っちゃってるし、デュアも普通に受け止めているけど、良いの?大丈夫!?もう、何かグダグダなんですけど。
でも、今それを突っ込んでしまったら、話は更にややこしくなるだろう。全てを理解する前に私の脳が悲鳴を上げてしまう。一先ず、目の前の疑問を解くのが先決だ。
ということで、デュアが手にしている拳銃に視線を戻す。
それにしても拳銃持参で召喚なんて、なかなかファンキーな女性だ。何の役にも立たなかった私とは別方向にすごい。とはいえ、なぜこんな物騒なものを持って召喚されたのだろう。その時の状況を聞いてみたいけれど、デュアは知っているのだろうか。いや、多分知らないだろうな。
そんな事を口にしないで考えていたけれど、しっかり顔に出ていたようで、疑問を口にするより前に、デュアが答えてくれた。
「その時の聖女は、元の世界でも戦争真っただ中だったらしい。召喚されても状況が飲み込めず、いきなり王に向かって銃口を向けたと、文献に残っている」
……なるほど、女兵士さんだったのか。カッコイイ。300年前なら、世界のいたるところで戦争、内乱が勃発していたはず。そう考えたら戦争中に召喚されたら、そりゃ状況を理解する前に銃口を向けるのは致し方ない。そして何の手土産も持たずに召喚されたただの女子高生の私は、少々肩身が狭い。
とりあえず、デュアの説明で納得した私は、むくりと湧き出た好奇心に勝てず、口を開いた。
「ねぇデュア、この拳銃、触ってみても良い?」
「ああ」
てっきり断れるかと思いきや、デュアはいとも簡単に拳銃を手渡してくれた。手にしたそれは、見た目よりずっしりと重い。
水鉄砲か、屋台の射的なら経験はあるが、本物の拳銃を前にすると、それがどれだけ、チャチなものだったのかわかった。
手にした拳銃はシリンダーとかトリガーとか、なんとなくパーツの名称は知っているけれど実物を触るのは初めてだった。そこで再び疑問が湧いてくる。
拳銃は大切に使えば長持ちするのかもしれない。でも、銃弾は消耗品だ。どうやって補充をしているのだろう、と。
銃弾を製造するにはそれなりの技術が必要だし専門的な知識が必要だ。過去の聖女さんは、銃弾を製造できる技術も持っていたのだろうか。
私の頭で考えていても一生答えは出ないので、デュアに聞いてみる。
「拳銃の銃弾はどうしてるの?」
「ジュウダン?ああ、弾のことか。……これだ」
そう言ってデュアは懐から小石を取り出した。
へー小石かぁ。斜め上にすごいね。でも、命中率は最悪だろう。あ、いや、デュアは易々と命中させていた。デュアすごいねー。一流のスナイパーじゃん。・・・じゃなくって!!
「こ、小石で撃ってるの!?」
「小石ってお前……王が聞いたら泣くぞ。良く見ろ」
目を丸くした私に、デュアはその小石を無理矢理握らせる。
押し付けられた小石をランプの灯りにかざして見てみると、内側が角度によってキラキラと色彩を帯びている、変わった石だった。その特徴に一つだけ思い当たるものがあった。
「これ、黒鍾石じゃん!」
ぐわっと叫ぶけど、今度はしっかり傷口を押さえておいたから、痛みはない。ドヤ顔をキメる私に、デュアはやれやれと溜息を付いて口を開いた。
「やっと気づいたか。毎日、同じ石を身に付けておいて、まったく呆れる」
私の胸元を指さしながら、デュアは残念な子を見る目でこちらを見る。視線が痛い。
でも、デュアがあからさまに呆れるのも無理はない。王様から貰ったこの石は元は黒鍾石と言って、この国でしか取れない希少なもの。この石だけは、魔力を込めることができるのだ。と、いうことは──。
「この黒鍾石で撃つってことは、やっぱり命中率もあがるの?」
「さあなぁ。命中率は知らん。そもそも本当の弾で撃ったことがないから、比べようがない。ただこれは、人体に入れば消えるようにできているし、命中しても出血しない優れものだ」
なるほど。この拳銃で撃たれたら、全員、原因不明の突然死で処理されるわけだ。暗殺にはうってつけのものなんだ。
でも、魔法は王様しか使えないはず。そしてさっき、私が魔法石を小石呼ばわりしたとき、デュアが王様が泣くって言ってた。それはつまり……
「この銃弾って、まさか王様が……」
「あいつ以外、作れないかならな」
ええええええ、デュア今、何て言った!?
銃弾をガダルド王に作らせているのにも驚きだけど、王様をあいつ呼ばわりしたことの方が、もっと驚きだった。
さてさて、拳銃については理解した。でも、理解した分、新たな疑問がわいてくる。
「色々、突っ込みたいことがあるんだけど……」
そこまで言って、一旦、言葉を止めてしまった。デュアはどれだけのことを教えてくれるのだろうか。
「今更隠しても、遅すぎるだろ。何だ?言ってみろ」
ありがとう、デュア。ではお言葉に甘えて、早速これから聞いてみよう。
「デュアが、なんでそんなものを持ってるの?」
「……そこからか」
意外そうに目を丸くするデュアに、私はそっと視線をずらす。
わかってるよ、デュア。一番聞きたいのは、これじゃない。でも、そのことは最後に聞きたい。
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