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最低最悪の再会

♪昨晩の上書き②

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 上書き?それって…………つまり、レイディックが、昨晩のフード男と同じようなことするということ?

 レイディックの口から紡がれた言葉を理解した途端、どうしていいのかわからず、ただただ狼狽えてしまう。昨日、あれ程、レイディックを望んだというのに。

「レイ、あの…………」

 咄嗟に彼の名をよんだけれど、続きの言葉が何も浮かばない。

 でも、このまま流されるように、しかも同情されながら、昨日と同じように身体を結ぶなんてできるわけがない。そんなことをされるくらいなら、いっそもう…………と、思ってもみないことすら願ってしまう。

 だってずっと大好きだった…………いや、今でも好きな人と、そんな形で結ばれるなんて、過去の幸せだった記憶すら黒く塗りつぶしてしまうようなものだ。

 でも今の私が、そんな素直な気持ちを、この人に伝えて良いのだろうか。

 レイディックの口から流れるように語られる昔話からは、懐かしさは伝わってくるけれど、私に対しての感情は未だに読めない。

 穿った考えをしてしまうなら、この人もまた優しい言葉で私を抱き、あのフード男のように一瞬で姿を消してしまうのかもしれない。

 そんなふうに一瞬のうちに頭の中で沢山の考えがよぎった。けれど、どれも言葉にできず、結局俯くことしかできなかった。

 そんな私を見て、レイディックは拒絶と受け取ったのだろう。俯いた瞬間、彼は私の顎を掴んだ。 

「アスティア、僕を拒まないで。もしね昨日の事を思い出したら、今からすることをすぐに思い出して。ね?」

 顎を掴んだ手を離したと思ったら、すぐに両手で私の頬を壊れ物を扱うような手つきで包み込む。そしてレイディックは、額に優しい口付けを落としてくれた。

 ────トクン。

 小さく心臓が撥ねた。嬉しさと、切なさと、後悔が入り混じったそれは、思いの外、自分の心をかき乱す。

 そして、その複雑な気持ちに耐え切れず、きゅっと瞳を閉じた瞬間、レイディックから残酷な問いを投げられた。

「ねえ、アスティア、昨日、どこを触られたの?教えて?」
「…………っ」

 そんなことを聞かれたって、具体的に答えられるわけがない。

 再び強く目を瞑って、首を横に振る。瞬間、膝裏と背中にレイディックの手を感じたと思ったら、すぐに水の抵抗を受ける。そしてあっと思ったら、私は浴槽の淵に腰かけていた。

 このバスルームは処置室でもある。だから、窓には薄いカーテンしか掛けられていない。そのため、私はレイディックに裸体を晒していることになる。

 かっと頬が熱くなる。慌てて両手を交差して胸を隠して、浴槽に戻ろうとすれば、レイディックが尖った口調で私の名を呼ぶ。

 それは、なぜか抗うことができないもの。そして、レイディックは留まった私を見て満足そうに頷くと、石鹸を手にして泡立てながら、別の提案を口にした。

「じゃあ、僕が聞くから。君は頷くだけで良いよ」
「…………っ」

 再び首を横に振ろうとしたけれど、その前に彼の手が私の鎖骨に触れた。

「ここは?」
「…………」

 ゆるゆると首を横に振れば、そのまま指を離さず、なぞるように下へと滑る。

「じゃあ、ここは?」
「んっ」

 泡にまみれたレイディックの手が私の胸の先端に触れた。思わず声が出てしまう。けれど、そうですと言って頷くことなんでできるわけがない。

 とはいえ、無言でいてしまえば、肯定と取られても仕方がない。そして、レイディックはその通りに受け取ってしまったようだ。

 私より遥かに大きな手が、私の両方の胸の膨らみを包み込んだ。 

 その手はゆっくりと泡を広げていく。けれど、偶然なのか意図的なのかわからないけれど、レイディック指は確実に私の胸の先端に触れる。

「…………っ」

 ぬるぬるとした泡のせいもあって、それは少し触れるだけでも、声を抑えることが難しい程の刺激だった。何より、大好きだった彼に触れられているというのもある。

 けれど、レイディックは始終無言でいる。私に向かって煽るような言葉を吐かないかわりに、男の欲求も口にしない。

 いっそ、はっきり口に出してくれたら良いのに…………。

 そんなことを思ってしまうくらいレイディックの態度は歯がゆいものだった。

 けれど、その手はどこまでも優しく淫靡で、私は長湯をしたつもりはないのに、ふわふわと身体が浮き立つような感覚を覚えてしまっていた。けれども───。

「痛っ」

 突然、秘部に尖った痛みが走り、思わず声を出してしまった。

 数拍間を置いて、その痛みは、石鹸の泡がしみたからだということに気付いた。

「アスティア、ちょっと見せてね」

 一瞬驚いて手を止めたレイディックだったけれど、私に断りを入れると、素早い動きで私の足の間に身体を滑りませた。

 そして頭の位置を低くして、花びらを開くように、そっと私の秘部の襞を両手で広げた。途端に、彼の整ったその顔は、憂えたものに変わった。

「…………痛かったんだろうね」

 まるで自分が深手を負ったかのように、痛みと辛さをにじませた声音だった。
 
 でも、私は秘部の痛みより、彼が自分ですら、きちんと見たことが無いそこを、間近で目にしていることの方が恥ずかしかった。

「み、見ないで。レイ、そんなところ…………」

 羞恥のあまり身体を捩って、逃げたくなる。けれど、レイディックは私の膝を捉えて離さない。

 そしてレイディックは、再び……いや、先程よりももっと残酷な問いを私に投げた。

「アスティア、この中に出されたの?」

 ただその口調は、まるで天気の話をしているような、なんでもないようなものだった。
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