悪役令嬢を演じたら、殿下の溺愛が止まらなくなった

平山かすみ

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6.ロイド殿下は真相を語る(4)

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「でもね、ここから本題になるんだけど」

そう前置きすると殿下は大きくため息をつく。

「実はあの深紅の宝石はどうやら魅了の力を増大させる効果があるようなんだ」

「あの宝石がですか?」

「うん、あの宝石については最近調べていてね。
最近までジルファ国近郊の鉱山にあったらしいが、誰も知らなかったんだ」

ジルファ国近郊の鉱山と言えば、確か魔物が多すぎて深くは調べることができないと言われていたところだ。

「でも多くの女性の間で最近あの宝石が主流になってね。

父上から調査をするよう言われていたんだ。」

そんなことがあったとは知らなかった…。

私は主流には疎い部分があるせいか、そういうことに全く気付かない。

「その調査の内容から、あの宝石には身に着けた相手の魔力を増幅させる効果があると分かったんだ。」

「増幅…ですか?」

ほ、欲しいかも…。

私は元からそこまで魔力は高くない。

だからこそ魔法授業は中の中だし、実技に関しては下だ…。

「カリエ、顔に出ているよ。

駄目だからね」

「…はい」

「恐らくあの時サマンモナス子爵令嬢は無意識だと思うが、深紅の宝石を持ったことで魅了の力が増幅して発動し、カリエにかかってしまった」

「あれが…魅了の力ですか…」

今あの時の気持ちなどを思い出すだけでもゾッとする。

「もしあれがサマンモナス子爵令嬢の手に渡るとマズイと思うんだ」

殿下はんーっと唸りつつ、眉間にシワがよっている。

「でもサマンモナス子爵令嬢が魅了の力をお持ちでも悪用しなければよろしいのではないですか?」

「…それを僕も願っていたんだけどね…」

願って「いた」ということは、叶わなかったのだろう。

「悪用されたのですか?」

「ああ。カリエの1つ下の学年にシーヴァル国から来た王子がいるでしょ?」

「ええ、ユリシーズ様でよね?」

よく覚えている。
ユリシーズ様はとても身長が高く、赤い炎をまとう赤龍と言われている。

その理由は火の魔法を得意として、赤い髪の毛がまた目立つからだ。

「サマンモナス子爵令嬢はユリシーズに魅了をかけたんだ」

「えぇ!?」

「でも先程も言ったようにそこまで強くなかったから、すぐ解けたんだけどね」

「…なぜユリシーズ様に?」

「分からない。最初はこちらも誰がかけたものなのか分からず、探すところから始めたんだ」

「そしたらサマンモナス子爵令嬢から僕に近づいてきて、僕に魅了をかけたことでサマンモナス子爵令嬢が犯人だと分かった。

それがサマンモナス子爵令嬢に白魔法があると分かったきっかけなんだ」

「殿下は大丈夫だったのですか?」

「サマンモナス子爵令嬢が持つ本来の弱さなら、
魅了をかけようとした相手に心決めた人がいたらそう簡単にかからないんだよ」

「心に決めた人…?」

殿下はニッコリ笑うと、私もその意味がすぐに分かり、顔が熱くなる。

「だからもう調査もいいかと思っていたんだけど…どこから嗅ぎつけたのか、サマンモナス子爵令嬢の行きつけであるジュエリーショップにあの宝石が出るようになった。

恐らく魅了の力をサマンモナス子爵令嬢が持っていると知るものの仕業だろう」

殿下の話し方からして、かなり重大なことなのだろうと分かる。

「もし、もしサマンモナス子爵令嬢があの宝石で作ったジュエリーを殿方に送ったらどうなるのですか?」

「恐らくだが、魅了が増幅し、宝石を通して魅了にかかるだろう」

それがもし殿下なら…。

私はゾッとした。

「今すぐアリスに言って、処分していただきましょう!」

「いや、そうはいかない。調査をして出処と相手の明確な目的などを調べないと。

そのためには泳がせておく必要があるんだ」

そんな…。

私はどんどん不安がつのる。

「カリエ、もし…もし僕が魅了にかかっても、愛してるのは君だけだ。

それだけは信じて待っていて欲しい」

殿下もきっと不安なのだろう。

悲しそうな目を向けると私の頬に手を添えた。
その手はひんやりと冷たく、微かに震えている。

「…はい」

ここで私まで不安がっていてはいけない。
殿下を信じることで、きっと殿下も安心出来るだろう。

私はそう思い返事をすると、殿下の部屋を後にした。
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