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6.ロイド殿下は真相を語る(3)
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それから殿下はサマンモナス嬢のことを話してくれた。
「カリエは相当勘違いしているようだけど、サマンモナス子爵令嬢のことを僕は何とも思ってないよ」
「え!?」
まさかの言葉に私は驚きを隠せない。
だって、絶対そうだと思っていたのにまさかの言葉に驚かないわけがないだろう。
「やっぱりまだ勘違いしてたんだね。
あんなに伝えてるのに…君にははっきり言わないと伝わらないのか…」
殿下は私の顔を見て眉を下げる。
「……まぁ、それはおいおいとして……
サマンモナス子爵令嬢はサマンモナス子爵の養子として入ったんだけど、どうやら白魔法を備えていたようなんだ」
白魔法。
魔法界の中でもかなり珍しい魔法だ。
癒しと魅了の力を持ち、聖女や聖職者くらいにしか備わらないと聞いたことがある。
「と言っても微量でね。魅了もサマンモナス子爵令嬢の力だけでは完璧にはかからない。
それは僕を通して分かったんだけどね」
「え!?殿下魅了にかかりに行ったんですか!?」
正気とは思えない。
「大丈夫だよ、キーラがおかしいと思ったらすぐに離す予定だったからね」
「それでも……」
「あぁ、かかれば危険だったと思う。一種の賭けだったんだ」
「なぜそこまで…」
「魅了は国にとって危険なんだ。
強い力を持てば持つほど、この国から出す訳には行かない。だって、他国へ渡れば戦力となるからね」
「なるほど…」
でもどうやってこの国に縛り付けるのだろうか。
それを考えると、やはり殿下との婚約になるのでは…。
「カリエ、君が考えてる事が正解だよ」
「え!?声に出てましたか?」
「声というか、顔にね」
あははと笑う殿下に私は恥ずかしくなった。
「僕はそれだけは避けたかったんだ。…カリエ、君と結婚したかったから」
「え…でも……」
「まぁ、聞いて」
口を挟もうとした私に殿下はしーっと人差し指を立てる。
私もそれに従い口をつぐんだ。
「だから、僕はサマンモナス子爵令嬢にどれだけの力があるのか見極めたかったんだ」
「もし強力な力があったらどうされるつもりだったんですか?」
「んー、まぁそれは言わないでおくよ」
私の問いに殿下はニッコリ笑う。
しかし目は笑っていない。
何だかゾッとする。
絶対いい事は考えていなかったに違いない。
「とまぁ、そんな理由でサマンモナス子爵令嬢の近くで観察してたわけなんだけど、大した魅了はなかったね」
その言葉を聞き、私はすぐに学園でのことを思い出した。
もしかしていつもサマンモナス子爵令嬢といたのは、別に気持ちがあったからではない?
「カリエには伝えようか悩んだんだんだけど、ほら、カリエ演技下手でしょ?」
へ、下手って…
「いつも考えてることが顔に出るから、あんまり良くないかなってなったんだよ」
「だけどそれも失敗だったね。
僕の愛は伝わってると思ってたけど、逆に伝わってなさすぎて不安にさせたんだよね?」
ふと悲しそうに笑う殿下に私は心が痛くなった。
私は殿下の何を見ていたのだろうか。
しっかり向き合っていれば、きっと気づけたはずなのに…。
私は殿下が優しくサマンモナス嬢に接するのを見て、周囲の反応を見て、逃げたのだ。
「ごめんなさい…わたし…」
「カリエ、僕は君だけしか見えてないんだ。
強がりだけど優しくて、令嬢らしくしようとしてもどこか抜けてて、笑った顔が綺麗で可愛くて…」
殿下はゆっくり起き上がると私をギュッと抱きしめる。
私はそれが辛くて、申し訳ない気持ちが強くなり、目から涙が零れた。
「誰にも渡したくない。カリエ、愛してる」
そう言って殿下は私の唇にそっと優しく自身の唇を添えてくれた。
「カリエは相当勘違いしているようだけど、サマンモナス子爵令嬢のことを僕は何とも思ってないよ」
「え!?」
まさかの言葉に私は驚きを隠せない。
だって、絶対そうだと思っていたのにまさかの言葉に驚かないわけがないだろう。
「やっぱりまだ勘違いしてたんだね。
あんなに伝えてるのに…君にははっきり言わないと伝わらないのか…」
殿下は私の顔を見て眉を下げる。
「……まぁ、それはおいおいとして……
サマンモナス子爵令嬢はサマンモナス子爵の養子として入ったんだけど、どうやら白魔法を備えていたようなんだ」
白魔法。
魔法界の中でもかなり珍しい魔法だ。
癒しと魅了の力を持ち、聖女や聖職者くらいにしか備わらないと聞いたことがある。
「と言っても微量でね。魅了もサマンモナス子爵令嬢の力だけでは完璧にはかからない。
それは僕を通して分かったんだけどね」
「え!?殿下魅了にかかりに行ったんですか!?」
正気とは思えない。
「大丈夫だよ、キーラがおかしいと思ったらすぐに離す予定だったからね」
「それでも……」
「あぁ、かかれば危険だったと思う。一種の賭けだったんだ」
「なぜそこまで…」
「魅了は国にとって危険なんだ。
強い力を持てば持つほど、この国から出す訳には行かない。だって、他国へ渡れば戦力となるからね」
「なるほど…」
でもどうやってこの国に縛り付けるのだろうか。
それを考えると、やはり殿下との婚約になるのでは…。
「カリエ、君が考えてる事が正解だよ」
「え!?声に出てましたか?」
「声というか、顔にね」
あははと笑う殿下に私は恥ずかしくなった。
「僕はそれだけは避けたかったんだ。…カリエ、君と結婚したかったから」
「え…でも……」
「まぁ、聞いて」
口を挟もうとした私に殿下はしーっと人差し指を立てる。
私もそれに従い口をつぐんだ。
「だから、僕はサマンモナス子爵令嬢にどれだけの力があるのか見極めたかったんだ」
「もし強力な力があったらどうされるつもりだったんですか?」
「んー、まぁそれは言わないでおくよ」
私の問いに殿下はニッコリ笑う。
しかし目は笑っていない。
何だかゾッとする。
絶対いい事は考えていなかったに違いない。
「とまぁ、そんな理由でサマンモナス子爵令嬢の近くで観察してたわけなんだけど、大した魅了はなかったね」
その言葉を聞き、私はすぐに学園でのことを思い出した。
もしかしていつもサマンモナス子爵令嬢といたのは、別に気持ちがあったからではない?
「カリエには伝えようか悩んだんだんだけど、ほら、カリエ演技下手でしょ?」
へ、下手って…
「いつも考えてることが顔に出るから、あんまり良くないかなってなったんだよ」
「だけどそれも失敗だったね。
僕の愛は伝わってると思ってたけど、逆に伝わってなさすぎて不安にさせたんだよね?」
ふと悲しそうに笑う殿下に私は心が痛くなった。
私は殿下の何を見ていたのだろうか。
しっかり向き合っていれば、きっと気づけたはずなのに…。
私は殿下が優しくサマンモナス嬢に接するのを見て、周囲の反応を見て、逃げたのだ。
「ごめんなさい…わたし…」
「カリエ、僕は君だけしか見えてないんだ。
強がりだけど優しくて、令嬢らしくしようとしてもどこか抜けてて、笑った顔が綺麗で可愛くて…」
殿下はゆっくり起き上がると私をギュッと抱きしめる。
私はそれが辛くて、申し訳ない気持ちが強くなり、目から涙が零れた。
「誰にも渡したくない。カリエ、愛してる」
そう言って殿下は私の唇にそっと優しく自身の唇を添えてくれた。
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