悪役令嬢を演じたら、殿下の溺愛が止まらなくなった

平山かすみ

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6.ロイド殿下は真相を語る(1)

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夜、結局私は殿下の魔法にもかかっていたようで、様子を見るためにまた王宮に泊まることとなった。

しかし今回はちゃんと来賓用の部屋。

もう時間は夜中を過ぎているだろう。

暗くなった部屋で私は眠れず、窓から外を眺めていた。

窓の外はかなり広い庭が広がっており、恐らく庭師たちが頑張ったのだろう。

至る所に薔薇が咲いている。

薄暗い状況でも微かな月明かりだけで、よく見えるものだ。

「……」

だけど私は薔薇を見つつも殿下が気になっていた。

ここから殿下の部屋は見えない。

キーラが扉を施錠してからは何も音も聞こえなければ、姿だって見ない。

キーラ曰く殿下の部屋は妨害魔法が施され、恐らく内側からも外側からも魔法が効かないだろうと言う。

私は自分の唇に手を当て、微かにまだ感じる殿下の温もりを確かめた。

気持ちよかった…。

殿下の意思ではないのかもしれないけど、唇を重ね合わせた時、本当に心地良くて、またあれが欲しいとさえ思う。

「はっ!私何を!

ダメダメ!あれは違うのよ!」

私は邪な気持ちを拭うために勢いよく頭を振った。

そう、あれは殿下の意思では無い。

また欲しいなんて、なんて卑猥なことを考えてしまうのか。

「あー…でも会うだけでも会いたいな…」

私は転移魔法を使うことは出来ない。
だからどれだけ殿下に会いたくても、見張りをしている騎士たちの目を抜けて殿下のもとまで行くことは出来ないのだ。

それにキーラからも会いに行くことは危険を招くからしては行けないと念も押されている。

でも……

私は扉の前まで行くと、こっそりと耳を当ててみる。

音は当たり前だが聞こえない。

少しだけ覗いてみようかな…


扉を微かに開け、外を見てみる。

「イファルジャー様、早くお休み下さい」

するとすぐに横にいた護衛騎士に言われてしまった。

「……はい」

私は諦めて扉を閉めると、ベッドに横になった。

ベッドに横になると、ふとあの殿下の顔を思い出す。

鋭く光った深紅の瞳に、少し上がった息。

殿下から微かに匂った甘い香り。

それを思い出しただけで心臓が跳ね上がる。

私よりも年下でまだまだ子供だと思っていたのに、あんなにも力があって男らしくて…。

……15歳であれって……

先を想像すると少し怖い気もする。

私は1人そんなことを思い出しながら、気づくと眠りについていた。

翌朝、サラがカーテンを開ける音で目が覚めた。

目を開けると、外は少し曇っている。

「おはようございます。お嬢様。」

サラも私が起きたことに気づいたようで、私にストールを持ってきてくれた。

確かに少し肌寒い気がする。

もうすぐ暑い日になると思ったが、まだ先なのだろうか。

「おはよう。……殿下は?」

「ロイド殿下はまだ確認できておりません。キーラ様含む魔法騎士が様子を見に行っております」

「そう…」

「会いたいのですか?」

「え?ち、違うわよ!無事か気になって…」

嘘だ。本当は会いたい。

「会いに行かれてはいかがでしょうか」

「え、でも…」

「様子を見に部屋の近くまで行くだけです」

サラは何食わぬ顔で私に言う。

部屋の前に行くだけ。
それなら許されるかもしれない。

私は意を決めると、早速サラの手を借りて支度をする。

今日はサラの希望で髪の毛も巻かない!
と言うか、巻くものを持ってきてないようだ。

そういえば、昨日も巻かなかったな。

街に行くからと編み込んでもらった。

まぁ、今はそんなこと関係ないか。

私は準備を終え、すぐに殿下の部屋まで向かった。

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