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5.ロイド殿下がおかしい(7)
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「これ…」
「とても綺麗じゃありませんか?」
そう言ってサマンモナス子爵令嬢は深紅のジュエリーを手に取ると、私の目に近づける。
私は目が離せなくなり、じっと見つめてしまう。
何だか頭がぽーっとするような、何も考えられない、そんな気持ちになる。
心地よくて、幸せに満ちるような…。
「え、ええ。綺麗ね」
ゆっくりジュエリーからサマンモナス子爵令嬢に目を向けると、何だかサマンモナス子爵令嬢が一段と綺麗に見え、
サマンモナス子爵令嬢の言うことなら何でも受け入れられるような不思議な気持ちになった。
そしめ今すぐにでもサマンモナス子爵令嬢の要望を聞いて、それに答えさせて欲しくなる。
「サマンモナス子爵令嬢、わたしっ」
サマンモナス子爵令嬢の手を取り、声を発したとき、すかさずロイド殿下が私の体を止めた。
「サマンモナス子爵令嬢、私たちはこれで失礼するよ」
「え?あ、ロイド様!!」
「あ、ま、待って!サマンモナス子爵令嬢!」
私は何かをサマンモナス子爵令嬢に言わなければいけない。
そんな気がして必死にロイド殿下の腕から脱しようとするも、全然抜けない。
結局離されたことによって、とてつもない虚無感に襲われた。
「なんで…私…」
悲しさと不安、胸の痛みにとてつもない頭痛が襲う。
そのせいなのか分からないが、涙がこぼれてきた。
「お嬢様!」
外に出ると外で待機していたサラが走ってくる。
「サラ、キーラ今すぐ王宮に戻ろう」
「今すぐ馬車を呼びます」
「いや、転移する。おまえたちは馬車で戻れ」
「しかし、それは殿下の負担が…」
「今すぐこの場を離れないとカリエが危ない」
「分かりました、私たちも急いで戻ります」
そんな会話が続くけれど、私にはどうでもよかった。
今すぐ私をサマンモナス子爵令嬢のところに戻して。
その気持ちで一杯だったにも関わらず、次に移った視界はロイド殿下の部屋だった。
「カリエ、ベッドに横になって」
ロイド殿下は泣きじゃくる私の肩を掴み、ベッドに誘導する。
しかし私はその手を振り払った。
今までロイド殿下の手を振り払うなんてことはしたことがないのに…。
「嫌です!放して!今すぐサマンモナス子爵令嬢のとこに行かなきゃ!」
「カリエ!しっかりして!」
「殿下、今すぐ戻して…」
心の奥底ではなぜ自分がこんなことを言ってしまうのか分からない。
でも、それを止めることができないのだ。
「カリエ、僕を見て」
ロイド殿下の切なそうな声に私はふとロイド殿下に目を持っていく。
「大丈夫、その気持ちはすぐになくなるから。おいで」
そう言ってロイド殿下は大きく私に腕を広げた。
「…殿下…」
私はゆっくりロイド殿下に歩みを進めると、腕の中に収まった。
耳に届く殿下の鼓動がとても心地いい。
なぜあんなにサマンモナス子爵令嬢のもとに行かなければいけなかったのか分からないけれど、
その気持ちも薄れていく。
「カリエ、いい?よく聞いて。
今メイドを呼んだけど、恐らくここに来るまで少し時間がかかる。
その間に僕は転移魔法を使ったことで自制が抑えられなくなると思う。
そうなったらカリエ、真っ先に君が危ない。
僕が君に危害を加えようとしたら、すぐに攻撃魔法を使ってほしい」
「え、何を急に…」
ロイド殿下は私をぎゅっと一度力強く抱きしめた後腕を緩め、
私の顔を覗き込んだ。
ロイド殿下の表情は何だか苦しそうで、息も上がっているように見える。
「メイドが来て外に出たら、1日僕の部屋に来てはいけない。
分かるね?」
「え、分かりません…どういうことですか?」
「ごめんね、カリエ。君を守るためなんだ」
全く分からない。
ロイド殿下のこんな辛そうな表情を見るのは初めてだし、ロイド殿下から今のような話を聞いたこともない。
「とても綺麗じゃありませんか?」
そう言ってサマンモナス子爵令嬢は深紅のジュエリーを手に取ると、私の目に近づける。
私は目が離せなくなり、じっと見つめてしまう。
何だか頭がぽーっとするような、何も考えられない、そんな気持ちになる。
心地よくて、幸せに満ちるような…。
「え、ええ。綺麗ね」
ゆっくりジュエリーからサマンモナス子爵令嬢に目を向けると、何だかサマンモナス子爵令嬢が一段と綺麗に見え、
サマンモナス子爵令嬢の言うことなら何でも受け入れられるような不思議な気持ちになった。
そしめ今すぐにでもサマンモナス子爵令嬢の要望を聞いて、それに答えさせて欲しくなる。
「サマンモナス子爵令嬢、わたしっ」
サマンモナス子爵令嬢の手を取り、声を発したとき、すかさずロイド殿下が私の体を止めた。
「サマンモナス子爵令嬢、私たちはこれで失礼するよ」
「え?あ、ロイド様!!」
「あ、ま、待って!サマンモナス子爵令嬢!」
私は何かをサマンモナス子爵令嬢に言わなければいけない。
そんな気がして必死にロイド殿下の腕から脱しようとするも、全然抜けない。
結局離されたことによって、とてつもない虚無感に襲われた。
「なんで…私…」
悲しさと不安、胸の痛みにとてつもない頭痛が襲う。
そのせいなのか分からないが、涙がこぼれてきた。
「お嬢様!」
外に出ると外で待機していたサラが走ってくる。
「サラ、キーラ今すぐ王宮に戻ろう」
「今すぐ馬車を呼びます」
「いや、転移する。おまえたちは馬車で戻れ」
「しかし、それは殿下の負担が…」
「今すぐこの場を離れないとカリエが危ない」
「分かりました、私たちも急いで戻ります」
そんな会話が続くけれど、私にはどうでもよかった。
今すぐ私をサマンモナス子爵令嬢のところに戻して。
その気持ちで一杯だったにも関わらず、次に移った視界はロイド殿下の部屋だった。
「カリエ、ベッドに横になって」
ロイド殿下は泣きじゃくる私の肩を掴み、ベッドに誘導する。
しかし私はその手を振り払った。
今までロイド殿下の手を振り払うなんてことはしたことがないのに…。
「嫌です!放して!今すぐサマンモナス子爵令嬢のとこに行かなきゃ!」
「カリエ!しっかりして!」
「殿下、今すぐ戻して…」
心の奥底ではなぜ自分がこんなことを言ってしまうのか分からない。
でも、それを止めることができないのだ。
「カリエ、僕を見て」
ロイド殿下の切なそうな声に私はふとロイド殿下に目を持っていく。
「大丈夫、その気持ちはすぐになくなるから。おいで」
そう言ってロイド殿下は大きく私に腕を広げた。
「…殿下…」
私はゆっくりロイド殿下に歩みを進めると、腕の中に収まった。
耳に届く殿下の鼓動がとても心地いい。
なぜあんなにサマンモナス子爵令嬢のもとに行かなければいけなかったのか分からないけれど、
その気持ちも薄れていく。
「カリエ、いい?よく聞いて。
今メイドを呼んだけど、恐らくここに来るまで少し時間がかかる。
その間に僕は転移魔法を使ったことで自制が抑えられなくなると思う。
そうなったらカリエ、真っ先に君が危ない。
僕が君に危害を加えようとしたら、すぐに攻撃魔法を使ってほしい」
「え、何を急に…」
ロイド殿下は私をぎゅっと一度力強く抱きしめた後腕を緩め、
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ロイド殿下の表情は何だか苦しそうで、息も上がっているように見える。
「メイドが来て外に出たら、1日僕の部屋に来てはいけない。
分かるね?」
「え、分かりません…どういうことですか?」
「ごめんね、カリエ。君を守るためなんだ」
全く分からない。
ロイド殿下のこんな辛そうな表情を見るのは初めてだし、ロイド殿下から今のような話を聞いたこともない。
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