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2.ロイド殿下のために(2)
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「お嬢様、もういい加減諦めてはいかがですか?」
サラが私の絡まった髪の毛を綺麗にほどきながら、大きく溜息をついた。
「んー…殿下って思った以上に強情なのかもしれないわね」
「もういつものお嬢様に戻ってください。私の手も限界ですよ」
そう言って、サラは腕を大きく振る。
確かに、ずっと早朝に起きてもらって、一人で私の長い髪の毛を巻き、帰宅後はそれをほどいてくれているのだ。
そりゃあ限界というか、悲鳴をあげたくもなるだろう。
「そうね…ハッ!サラ!きっと殿下は私の卒業パーティーで婚約破棄をするのかもしれないわ!」
どうしたものか考えていると、ふと今後の卒業パーティーのことを思い出す。
その理由は、いつぞか流行った恋愛小説に出て来た悪役令嬢が、卒業式典で断罪されていたのだ。
これは結構有名な話だし、ヒロインと主人公はそれによって周囲からも賞賛され、素敵な関係を築けたというもの。
「何をおっしゃってるんですか。殿下がそのようなことをなさるわけがありません」
サラは私の閃いた顔を見て、更に呆れたと言わんばかりに大きく溜息を吐く。
「どうして?」
「どうしてって…卒業パーティーでは多くの生徒だけではなく、その親御様や、他国の爵位をお持ちになる方々が集まられる大きな式典です。もし、そのような場で婚約破棄をしてみてください」
サラに言われるがまま、私は考えた。
確かに、そのような場での婚約破棄は冗談でも笑えない空気になるだろう。
私だけではなく、家族を巻き込んでの大惨事になりかねない。
しかし逆もある。
多くの貴族が集まるからこそ周知してもらうことができるというものだ。
「それに、殿下はお嬢様にドレスを送ってくれています」
それも確かに。
「んー…おかしいなぁ」
「何もおかしくありません!お嬢様はもっと殿下のお気持ちと向き合うべきです!」
サラは何を怒っているのか、私の髪の毛をまた思いっきり引っ張った。
そして、くしを乱暴に置くと、ぷんぷんとどこかへ行ってしまった。
何を怒っているのかしら…。
私はサラにといでもらった髪の毛を弄りつつ、鏡を見る。
こんなに頑張ったのに、殿下は全く婚約破棄をする気配がない。
だからと言って、サマンモナス嬢との関係が変わった様子もないことは事実。
密かに他のご令嬢方はサマンモナス嬢と殿下が婚約をするのではないかと、今もウキウキしているようだ。
私もそう思っていたのだけれど、殿下はいくじがないのか、全く言い出しもしない。
もしかして、私に傷がつくと思ってる?
そうか!殿下の優しさが、きっと2人を苦しめてしまっているのだ!
私はそう思うと、明日殿下に伝えることができたと喜んだ。
それが、殿下を怒らせることになるとも知らず。
サラが私の絡まった髪の毛を綺麗にほどきながら、大きく溜息をついた。
「んー…殿下って思った以上に強情なのかもしれないわね」
「もういつものお嬢様に戻ってください。私の手も限界ですよ」
そう言って、サラは腕を大きく振る。
確かに、ずっと早朝に起きてもらって、一人で私の長い髪の毛を巻き、帰宅後はそれをほどいてくれているのだ。
そりゃあ限界というか、悲鳴をあげたくもなるだろう。
「そうね…ハッ!サラ!きっと殿下は私の卒業パーティーで婚約破棄をするのかもしれないわ!」
どうしたものか考えていると、ふと今後の卒業パーティーのことを思い出す。
その理由は、いつぞか流行った恋愛小説に出て来た悪役令嬢が、卒業式典で断罪されていたのだ。
これは結構有名な話だし、ヒロインと主人公はそれによって周囲からも賞賛され、素敵な関係を築けたというもの。
「何をおっしゃってるんですか。殿下がそのようなことをなさるわけがありません」
サラは私の閃いた顔を見て、更に呆れたと言わんばかりに大きく溜息を吐く。
「どうして?」
「どうしてって…卒業パーティーでは多くの生徒だけではなく、その親御様や、他国の爵位をお持ちになる方々が集まられる大きな式典です。もし、そのような場で婚約破棄をしてみてください」
サラに言われるがまま、私は考えた。
確かに、そのような場での婚約破棄は冗談でも笑えない空気になるだろう。
私だけではなく、家族を巻き込んでの大惨事になりかねない。
しかし逆もある。
多くの貴族が集まるからこそ周知してもらうことができるというものだ。
「それに、殿下はお嬢様にドレスを送ってくれています」
それも確かに。
「んー…おかしいなぁ」
「何もおかしくありません!お嬢様はもっと殿下のお気持ちと向き合うべきです!」
サラは何を怒っているのか、私の髪の毛をまた思いっきり引っ張った。
そして、くしを乱暴に置くと、ぷんぷんとどこかへ行ってしまった。
何を怒っているのかしら…。
私はサラにといでもらった髪の毛を弄りつつ、鏡を見る。
こんなに頑張ったのに、殿下は全く婚約破棄をする気配がない。
だからと言って、サマンモナス嬢との関係が変わった様子もないことは事実。
密かに他のご令嬢方はサマンモナス嬢と殿下が婚約をするのではないかと、今もウキウキしているようだ。
私もそう思っていたのだけれど、殿下はいくじがないのか、全く言い出しもしない。
もしかして、私に傷がつくと思ってる?
そうか!殿下の優しさが、きっと2人を苦しめてしまっているのだ!
私はそう思うと、明日殿下に伝えることができたと喜んだ。
それが、殿下を怒らせることになるとも知らず。
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