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フラフラの煌大を抱えるも、いくら細いと言えど大きい煌大を私が支えるというのはかなりきつく、一緒になって足がもつれそうになる。
しかしここで転べば、煌大を立たせることも困難になると思った私は意地で何とか家まで着いた。

もうすぐでベッドだ。
そう思って息が荒くなる中、もう限界に達しそうだった私は電気も付けずに急いで煌大をベッドに放り投げようとしたせいか、足元にあった何かに気づかずつまづいてしまい、勢いよく煌大と一緒にベッドにダイブしてしまった。

「いった!!」

煌大が私の上に乗りかかるようにベッドに寝転んだが、そんなことよりもつまずいた側の足に痛みが走り、声が上がる。
その声で煌大も少し意識を取り戻したのか、目を開け私の上から上半身を起こした。

「ちょ、煌大起きたならどいてくれる!?足が痛いの」

私は煌大を押し、急いで痛みを感じた足を確認しようとしたが、煌大に私の声は聞こえていないのか全くびくともしない。

それどころか煌大はぼーっとした表情でじっと私を見ていた。

「ちょっと早く!重いんだよー!」

動かない煌大に痺れを切らした私は再度煌大を力いっぱい押すも、全然動こうとしてくれない。
それどころか煌大は体勢を整え、私にまたがると、腕を私の横に置いて逃げられないような形を取る。

「ちょっと煌大!どいて!」

何だか煌大の様子がおかしいのはすぐに分かった。
私はぐっと煌大の胸を押し、何とか逃れようともがくも意味がない。
目が慣れて来たせいか、煌大の表情が月明りに照らされ、茶色の瞳がじっと私に向き、微かに息が荒いことに気づく。

「こうだ」
「し、黙って」

この空気感に堪えられないと思った私は再度煌大に呼び掛けようとしたが、すぐに煌大の声がかき消した。
その一言で一気に緊張感が襲う。

「リノさん…」

私は今何が起きているのか分からず、頭が混乱し始めるも煌大から目を背けることができない。
煌大は片方の腕で体勢を崩すことなく自身の体を支えると、もう片方の腕を外し、私の頬に大きな手を添えて来た。

やばい、これはかなりまずい!
何でこんなことになるの!?

どんどん近づく煌大の顔に、私の顔が熱くなる。
もう逃げられない、そう思った私はぐっと目を閉じるとすぐに唇に柔らかい感触が落ちた。

1秒くらいだと思うが当たってすぐその感触はなくなった。
私は短い感触にホッとしたのだが、すぐまた同じ感触が襲う。
それも次は激しく、ぐっと強く押し当てられたかと思うと、生暖かい息といっしょに塗れた感触が降りて来た。

「ん!ちょ!んー!!」

微かに空いた隙間から声を発するもすぐに塞がれ、激しさが増す。
抵抗しようと煌大の肩に両手を当て、押し続けるが全くビクともしない。
それどころか抵抗していることに煩わしさを感じたのか、煌大は私の手をベッドに押し付けると更に続ける。

もう息が持たない!と思った時タイミングよく煌大の唇が離れ、お互いに荒くなった息が交じり合う。

「い、今すぐどかないと怒るよ!」

少し顔との距離ができたため、煌大の目を見てきっと睨んだが、煌大は全く応えないのか私を解放するどころか、次は首元に唇を押し当てて来た。

「煌大!やめて!」

このままじゃ本当にヤバイと思った私は、急いで空いていた足を煌大の腹にめがけて落とした。
そのおかげで煌大の手が私から離れ、煌大も腹を抱え始めたので、その隙にベッドから降り、急いで電気を点けた。

煌大は声こそ上げはしないが、腹を抑えながらその場でうずくまっている。
私は急いでコップに水を入れると、そのまま腹の痛みに悶える煌大に差し出した。

「今すぐ酔いを醒ましなさい!」

少し涙目になりながら差し出された水と私を交互に見ると、ゆっくりとコップを受け取り一口含む。

「…すみません」

水を飲んですぐ酔いが醒めるわけでもないが、ちょっと気持ちは落ち着いたのか、しゅんっとして煌大が謝ってきた。
例えるなら耳としっぽを下げた子犬のような感じだ。

「全く…何を考えてんのよ…」

私はいつもの煌大に戻ったことで安堵し、その場に座り込むと大きく溜息を吐く。
草食系だと思い油断していたのが仇となったとかなり後悔した。

「お酒に酔ってるからってやり過ぎだよ…本当…心臓に悪いって」

まだしゅんっとしている煌大に何だかそれ以上責めることもできず、私は溜息交じりで言うとごまかすように少し笑った。

「…酔ってるからじゃないです」

「え?」

もうこの話は終わろう、お互いに忘れようという意味で笑いかけたのだが、煌大は再度水を口に含むと、コップをテーブルの上に置いて私に目を向けた。

その目は先ほど私に向けられたような、何か愛おしいものを見るような目だ。

「僕…俺、ずっとリノさんのことそういう目で見てました」
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