転生錬金術師令嬢は全てを識るホムンクルスなので最強ですが、残念ながら竜にしか興味がございません。

忍丸

文字の大きさ
上 下
14 / 15

転生令嬢のお薬は大変優秀でございます。

しおりを挟む
 夜明け前、ルークはリーンを抱き抱え、魔女の城から出て、『魔女の森』の外に向かった。
 あの後、魔女王ソフィアによって『移植転移』をされたリーンの体調が悪くなり、熱を出して動けなくなったからだ。
 ソフィアいわく、体内の調整が出来ておらず、身体に馴染むまでしばらくかかるそうだ。
 だが、リーンをこのまま『魔女の森』に置いておくわけにいかず、森が閉じてしまう前に、軽量魔法を使ってリーンを抱き上げ、ソフィアが『魔女の抜け道』を作ってくれて、出入口付近まで連れてきてくれた。
「…よろしくね」
 ソフィアがルークに声をかけてきた。
 ルークは眠るリーンを抱えたまま、足を止め、ソフィアの方に振り向いた。
「…貴女は、ソレでいいのか?」
 気になっていたことを聞く。
「…うん?…子供の事?」
 ソフィアは微笑んで言う。
「リーンの事、信用してるから…。それに、私が育てるより、リーンの元で自由に選ばせてあげたいの」
 子供の未来を…か…。
 彼女にも何か思うことが有るのだろう。
 リーンと同じ様に長寿で、いつから魔女王として君臨しているのか分からないが、彼女には選ぶ事が出来なかったのかもしれない…。
「…俺の元に来ても、王族として逃れられない事も有るぞ」
「…それでも…」
 ソフィアは苦笑いしている。
 それでも、彼女の体内から外に出れず、命が消えるより…リーンの子供として、産まれてくることを望んでいる…か…。
 ルークはため息を付き、リーンを抱え直すとソフィアに背を向けて『魔女の森』を抜け、バラのアーチをくぐり、小川に掛かる橋を渡った。
 背中に視線を感じたが、ルークは振り向かず真っ直ぐに、アオとカズキが待つ馬車へと急いだ。


 森を抜け街道に近付くと、見慣れた馬車が道を塞ぐように停まっていた。
 見慣れた、ルークの屋敷の馬車だ。
 ルークが馬車に近付くと、こちらに気がついたガズキが馬車から降りてきた。
「…ルーク様!…リーンさん…」
「ルーク様!」
 アオも馬車から顔を覗かせ、降りてくる。
「リーンさんはどうしたんですか?」
「詳しい話は移動しながらだ」
 アオはすぐさま馬車内の座席に、毛布を何枚も敷いて横たわる場所を作り、丸めた毛布を枕代わりにすると、そこへルークが、眠るリーンをそっと横たえる。
 ガズキは準備しかけた朝食の食材を一旦終い、移動の準備を始め、日が昇り、辺りが明るくなって来る頃には、街道から馬車を動かし、少し先にある馬車の休憩所へむかった。


 休憩所には小さな小川が有り、馬車を並んで停車することができ、誰でも使用できるので、馬に水や食事を与えたり、自分達の食事も出きる場所だ。
 そこへ馬車を停車させ、ガズキは馬に水と食事を与え、アオが馬車の外でお湯を沸かして、朝食の準備を始めた。
 リーンは横たわったまま…。
 ルークはそんなリーンの髪を撫でる。
 朝食の準備が出きると、馬車の中に三人顔を見合わせて、朝食を食べながら、ルークが『魔女の森』であったことを話し始めた。
 アオもガズキも神妙な顔をして、頭を抱えながら、取りあえず口に食事を運んでいた。
「ルーク様はそれで良いんですか?」
 『魔女の森』での事が話し終わると、アオが聞いてくる。
 まあ、言われると思った。
「…リーンの子供だろ。俺にはソレだけで良い…」
 誰が何て言おうと、リーンの全てを守ると決めたのだ。
 例えソレが、魔女王との子供だとしても…。
「…ルーク様がそれで良いのなら、俺たちは全力で見守りますよ」
 アオとガズキは顔を見合せ頷いて、そう言って微笑んだ。
 良い仲間を持って俺は幸せだな…。
 ルークは眠るリーンをチラリと見て、残りの朝食を食べ始めた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...