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弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 6.2

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んで。

わたくし室見理恵、江戸城大奥での語り手をしろということで、引き続き江戸城大奥は将軍様のお住まいである御殿向ごてんむきという区画の大広間よりお送りしております。

実は、連邦世界の大奥と、痴女皇国世界の江戸城大奥は場所も、構造も違うのです。

まず、連邦世界での江戸城大奥は、本丸の更に北側の奥まった場所に存在しました。

江戸城大奥概念図(連邦世界)
-----------------------------------------------
  天守閣(焼失)
 ⬜︎  |長局向|(長局向=大奥女中・女房居住区)
|御殿向|長局向|(御殿向=将軍・正室・側室居住区)
|御殿向|長局向|(広敷向=大奥事務・庶務区画)
|御殿向|広敷向|=>平川門へ
 ||御鈴廊下|| ←原則将軍以外の男は通行不可
--------
 中奥・表(本丸)
-----------------------------------------------
<i912435|38087>
https://x.com/725578cc/status/1864421178972254250
https://x.com/725578cc/status/1864422900138430685

しかし、痴女皇国世界での江戸城大奥は、本丸の真西に所在するようにされたのです。

その理由は…これまた、江戸城の真西に所在するように移築増床された日枝神社に近寄せるため。

では、具体的にどうなったのか。

聖院暦105*年12月・江戸城概略図
-----------------------------------------------
     天守閣(焼失)
     |蓮| ⬜︎|長 局 向|
|御殿向||池||長  局  向|
|御殿向||堀||長  局  向|
|御殿向||=||広  敷  向|
←城外に |↑| ||御鈴廊下||
日枝神社|地|--------
    |下| 中  奥
    |道| 表(本丸)
-----------------------------------------------

「つまりは旧・大奥跡地をぜーんぶ女子寮にしたと…」

「で、しょうぐんさまはうけつけのなかのちかどうをとおって、おすまいにいくようになったのですか」

「こうして頂いた理由ですが、実のところは大奥の隣に、皇居の建設が始まっているせいもあると伺っておりますわね…実際に、年明けには皇子様…親王様が江戸でお住まいになられるとかで」

「そーなんですよー、東京…江戸の学習院へのご留学って話が出たこともありまして…」

そう…まだ、年齢としては中学生くらいの当代の将軍である徳川家綱とくがわいえつなくん。

彼と近い年齢の皇太子殿下を江戸に留学させるのはどうかという話が出たのです。

そして、親元や主な廷臣に従者たちと離れて江戸で暮らす皇太子さまのためにも、家綱くんと仲良くさせるのはどうかと言う案が出された、こうお考え下さい。

「なるほど、隣のお家に遊びに行くような関係をお考えと…」

もちろん、実際には比丘尼国の頂点となるであろうお子さんたちですから、私のような平民の出の人間のように友人宅を気軽に訪れるとはいかないでしょうけど、それにしてもすぐ側であれば一緒に通学する等の、友達付き合いも自然に発生するとは思えます。

「で、この話を徳田おまつさんのいまの殿だんなさまあつかいにしましたところ、江戸城の今のおめこ漬け状態が悪影響となりはしないかと言われまして…」

(それと、うちえどじょうの中って、正直皇家のもんに全貌を見せていいもんかという頭の固いさむらい気質もおりましてね… いや、侍が一番強かった時分ならその考えが兵法としちゃ当たりだと思いますよ。しかし、じょすりぬ団長みてぇにものを透かして見れたり、室見さまでも、本気を出したら一人で関ヶ原だろうが島原だろうが抑えられるって聞いちゃねぇ…)

と、今は日枝神社ひえじんじゃ併設の日枝慈母寺扱いのお坊さんとなっている建前の、家光さんから注釈が。

そこでエマちゃんと私が主になって考えたんですけどね、将軍一家の居住区画である御殿向ごてんむきと、大奥詰めの女性の寮区画である長局向ながつぼねむきを分離して、ついでに大奥勤務女性の学校も併設してしまうのはどうですかという草案を出したところ、これはいいとなりまして…。

これには、大奥の勤務者であり居住者の大半を占める、奥女中の構成が大きく影響を及ぼしています。

そして、江戸城を揺るがした「お美代の方」と、その女性の父親の日啓にっけいという智泉院ちせんいん住職の地位にあったお坊さんの引き起こした「中山なかやま法華寺ほっけじ事件」も尾を引いていたのです…。

(理恵さんに語り手を代わってもらって間違いなかったと思える一瞬…)

(ううううう、それであたしが大奥に関する事件の解説までをも…)

で、この一件のせいで虎次郎くんという、痴女宮周辺で実質的な放し飼いにされていたボルネオ虎をこの江戸城に招いて愛玩動物兼、将軍の護衛役にするという話にも繋がったのですが…。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/131/

この、中山法華寺事件をかいつまんで説明させて頂きますと、一言で言ってしまえば「就職紹介詐欺・姦淫事件」なのです…。

で、お美代さんという女性、私も面識があるから言えますけど、男好きしそうな女性でした。

で、徳川家の二代目将軍である秀忠ひでたださんのお手付きとなったお美代さんですが。

秀忠さんの息子さんの家光さんについて、ほもの傾向があるのと、家光さんがちゃんと女性とお突き合いをして後継者を産ませることに及んでくれるのか、父親として非常に心配している愚痴を聞いてしまったのが、そもそもの発端であると。

(そりゃ、国千代の兄者が将軍家の跡目を巡って揉めた件も、親父殿の悩みのたねでしたからねぇ…だからこそ俺も、お美代とさ、井伊の家の直滋の件に絡めて早々に隠居を決めて家綱に将軍職を譲ったようなもんで…)

そこで、お美代さんは「見目麗しい良家の子女を集めて江戸城の奥にを作るのはどないでしょう(室見意訳)」と秀忠さんに吹き込んだそうなのです。

そして、その奥座敷に住まわせて将軍様の子種をゲットする女性については、仏託を得て厳選するのがよろしくはおまへんか、とも。

(んで、あの毛むくじゃらだるまひでただのおやじ…俺に子作りさせる一心で、おなごを集めよったんですけどねぇ…)

んで、今は浮浪の托鉢僧侶である徳田滋光とくだしげみつとかいう偽名で絶賛潜伏中…でもないか状態の、くだんの三代目将軍だった徳川家光とくがわいえみつさん、お父さんとはそれなりに確執があったらしいようです。。

(もはや俺の正体があっちこっちでバレてーらっちゅうのはともかくですな)

(そして、お美代さんはお父さんの経営する小さなお寺…智泉院を、ご自身の出身寺である中山法華寺の御用取次所…祈祷受付事務所に指定させたんですよね…)

(それで合ってます。で、室見さまにも話は伝わっとると思うんですがね、お美代のやつぁ、今の大奥制度で言うなら、御中﨟おちゅうろう…側室候補として選ばれたいならば我が宗派の上人様の徳にあやかって亀頭、いやさ祈祷きとうを受けろとかいう話を親父の日啓に触れ回らせたんですわ。そして、その話を間に受けた国主や旗本他のええとこの侍の娘やら、豪商豪農の娘やら奥方やらを智泉院におびき寄せて坊主たちに歓待させたんですよね)

ご説明、ありがとうございます。

(で、その坊主どもは智泉院ばかりでなく日啓ゆかりの中山法華寺など、名だたる大寺に籍を置いておった坊主たちも面子に入っとりましてねぇ…。そして、室見さまにわかりやすう申しますと、ほすとくらぶをやらせたんですわ…それも、まぐわいありの…)

ええ、ベラちゃんや雅美さんに言わせると、ボーイズバーならぬ、ボーズズバー事件。

そして、饗応の席で出される酒や美食はもちろん、ウホっいい坊主…という印象の若い僧侶か、あるいはいかにも夜の生活が強そうに見える男前のお坊さんばかり集めて、ちんぽで接待するという破戒的ばちあたり饗宴らんこうぱーてぃーを繰り広げておったそうです。

(なんせ、今の奥で言うなら御年寄…齢三十以上か、中臈ちゅうろう御客会釈おきゃくあしらいに分類されるような、女中の中でも偉いおば…おねえちゃんまでもがわっざわざ智泉院に通い詰めてやがりましてね…そりゃあもう、全貌を明るみにすりゃあ、あっちこっちの国主の家にまで飛び火しかねねぇごっつい醜聞すきゃんだるってやつですよ)

しかし、あまりに楽しいことばかりだと、長続きはしないもの。

家をおろそかにして智泉院に入り浸る奥さんや娘さんを不審に思った家族からの密かな申し立ての結果、隠密までもを動かした調査によって、ボーズズバーの実態が明るみになったのです…。

まぁ、その後に何がどうなったかは当時のアルトさん枠のお話に詳しく書かれておりますが、この事件の発生を受けて、大奥での採用条件や、奥の中での監視体制が厳しくなったというのは家光さんと、おまつさんの弁。

で、現在は、大奥の事務所である広敷向ひろしきむけを担当する管理職…つまり、御台所…将軍正妻を代行している立場のおまつさんが主体となった面接チームが、とりあえず紹介のあった女性を審査することで人選を手がけているそうです。

「これも、来年弥生か卯月…四月からは奥も、本格的に学生身分者を大奥登用の資格にすると伺うております…」

で、現在では試行的に学習院と陸王けいおう女子学舎の生徒を大奥に受け入れて、問題の洗い出しに協力してもらっている段階でもあるそうです。

(長局向の中に教室があるのも、陸王女子学舎の分校扱いとして、既存の大奥女中と学生派遣者の水準格差を埋めるためでもあるんですよねぇ…)

「しかし、室見様。考えてみれば、国主の娘であれば基本は、よそに嫁に行かせられる立場。嫁入りにふさわしい女として、習い事をやらされるのが常ですわ。それに、室見様の頭を見せてもろうた際に、義務きょういくとやらが実際には如何なものか、わたくしも知ることが出来ました故…あのような寺子屋通いが今後は必須と考えまするに、今までの暮らし向きで読み書きや、必要に応じてそろばんですとか舞やら何やらを覚えておりました件、おなごならおなごを集めて教えることに切り替えたと思えば良いのでしょう」

で、このお話。

実は、新装なった大奥御殿向の中の、大広間にて行なっております。

そして、大広間を仕切る屏風の向こうで昼食を食べている家綱くんと同じであるという御膳が、私たちにも振舞われている状態。

つまり、このお話は「家綱くんは聞いてない建前」で痴女皇国や比丘尼国朝廷関係者と幕府の女性重職が食事しながら行なっている世間話というべきものなのです。

(余は知らぬ存ぜぬしらんぷりぷりで過ごせと、ぼくの前でお魚とかお肉ぱくぱく食べているお坊さまがゆうのです。ええのですか、これ)

(いえつな…おれはお前をそんな風に育てた覚えは…)

(父上。お言葉ですが、屏風の向こうのかあさ…芳春院様に気取られますとあとでおせっかんが。息子ほったらかして諸国まんゆうあそびあるいてるとのうわさもしきり。ええと、御台所代行おまつかあさま、徳田滋光さまあてのつけ払いの書状、なんでか日枝慈母寺ではなくて広敷向に送られてくるということで事務方がおこっていたはなしを父上にしておくべきでしょうか。品川のおっぱぶのぴんきーろーずとかいうお店の)

(家光さん、それ、乳上のお店じゃ…)

(あるてろーぜ様がしながわ支店つくらせてくれとか嘆願を入れられまして。よこはめの租界ですけべ酒場を開いたじゃひんしゅくものだってんで、やむをえず免状をおまつ様が出したんですよ…俺が許可できる立場じゃないっての、室見さまもごぞんじでしょうに…)

しかし、そのもみもみできそうな酒場に通ってるらしい家光さんが、父親らしいかというと、疑問は残りますよ…流石の私でも!

------------------------------------------------

りええ「んで、おまつさんとしてはどうなんですか。家光さん、新橋の飲み屋街とかも行ってるそうですけど」

おまつ「ほんまは色々言いたいです。しかし、公方しょうぐんの地位を降りて出家しとる立場なので、吉原のええとこで遊ぶにはお給金がですね…足らんのですよ」

りええ「つまりまぁ、せめて大衆酒場系統の遊びくらいはさせてあげようというわけですか」

おまつ「ほんまに陰間やって遊び金を稼ごうとしたときは、流石に信綱様と二人して止めました…」

りええ「つまり家光さん、今は長髪のいけめんホスト外観なのですが、偽女種に変わると結構な色気がですね」

のぶつな「偽女種11号に変化へんげするのに、おまつ様の助けがいるようにされてます…」

おまつ「わたくしでなくともできるんですけどね、ある程度の格式の巫女のですね」

いえみつ「せめて偽女種に変わるくらいは自分の好きにさせてくださいよ…」

おまつ「家綱…上様に頼み込まれたらわたくしも心を揺らします(にやり)」→実は家綱の実母

いえつな「つまり父上、家庭をかえりみろとゆうことですね(にやにや)」

いえみつ「おまえらああああああ(泣)」
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