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欧州女形演芸場ものがたり -l'Okama -・12
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さて、話は変わりまして、サン=ドニ地区ですが。
このサン=ドニ、パリの下町であり職人街でした。
いえ、実は今でもそうなのです。
で、旧来は鋳物や金属加工を生業とする職人の工場が多数並んでおりまして、金属を錬金鋳造したり、あるいは鍛冶屋をもっと大規模にしたような場所で作られる武具や金具に道具の類の製造のために、燃やす木材や、果ては貴重ではありますが燃える石に油などを使いに使っておりました。
つまり、サン=ドニの一帯、ものすごく空気が悪かったのです。
おまけに、職人たちが多数通いの住みのするものですから、ごみや汚物もそれなりに出てまいります。
で、この多数の職人たちを目当てとした娼婦も多数住んでおりまして、サン=ドニが娼婦街であった起源ともされております。
しかし、娼婦の間では「このサン=ドニでは確かに金を稼げるけど、同時に命を削ってるようなもんだ」「金を稼ぐか太い旦那を見つけて逃げ出せるか、それとも病に伏せって死ぬかの二択」などという、よろしくない場所である評価が固まっておったのです。
ですが…聖院時代から、ここのカイゼンは密かに行われて来たそうです。
そして痴女皇国時代に入っての直接的な介入を受けてからは、ほぼ真っ先に環境改良対象とされたのです。
パリ市内の中でもいち早く近代型の上下水道が敷かれ、工場にも手が入ったのが、このサン=ドニ地区なのです。
そして、シトロエンやルノーにプジョーといった国策工場に納入する部品を製造する下請け工場や、貴金属類の加工場はもちろん、我がフランスが欧州では先陣を切って進めることなるという紙幣印刷に必要な機械類の部品製造が企画されたのです。
(当面は客車に限定するけどさ、鉄道車両の製造も行うのよね、こことあと、英国で…)
そう、類似の機械産業の発展の可能性がある大英帝国とは、ある意味で競争関係になってしまうのです。
そして、サン=ドニのためにと暗黒大陸からスペインを経由して集められた労働者たち。
この、労働者たちですが。
暗黒大陸地区本部の食糧や医療事情の大幅な改善によって、各地の農家で人余りが生じているせいだそうです。
しかし、マリアリーゼ陛下やベラ子陛下に言わせますと、これは予定通りであると。
そして、当初の移民たちは魔毒環境適合化と称して、マドリードまたは滅姦におる出稼ぎ者のうち、志願者を募っております。
これは、地域の聖母教会または愛染隣保会館を経由して、なるべく最低限度でも学業を納めた者を送り込むためだそうです。
(というのは建前で、欧州人に合わせた身体に変わってもらう必要があるからね…やはり黒んぼたちだと何かにつけてかわいそうなことになるから…)
(濃くてもダリア統括程度の肌の色で、ということみたいね…)
そう、黒んぼたちがこのパリに溶け込んでもらえるようにする作戦なのです。
もちろん、肌の色を変えるとあっては、その出自を否定されたように受け取られても仕方はないでしょう。
しかし、このフランスでももはや弱毒型苗床運用地域にされたところが結構増えたのです。
第一、フランスの都であるパリがそもそも、今や複数の苗床を運用する場所となりました。
(ま、これは労働魔族を生み出すっていうよりも、偽女種や女の子を生み出すのが主目的なのよね…)
つまり、パリの市内の庶民はこのサン=ドニまたは近隣地区に集中して住むよう、国土局の主導によって都市計画とやらが描かれたのです。
(具体的に言うと、サン=ドニには単身者向けのアパルトマンを集中させますた…)
(れんぽう世界のパリの街並みが痴女皇国世界でも見たいなら、ここなのですよね…他はヴェロニク様やリヴィエラ様はもとより、ジョスリーヌ様やダリア統括でも「あれ?」という顔をなさいます時が結構ありますから…」
つまり、れんぽう世界のパリとはかなり、様変わりしとるのです。
そして、サン=ドニで金を稼いだり伴侶を見つけたものは、もう少しよろしい住まいをとなりますから、ではサンドニの東西の森を切り開いてこしらえた住宅にどうぞ、とやっとるわけです。
それと、このサン=ドニだけでなく、他の地域でも広まっておりますが、この冬は煤煙で曇った空を見ることが減って、澄んだ冬の空気の下で夜空に満天の星を眺められるだろうと。
(ニューヨークと同じで、温水や蒸気によるロードヒーティングを含めた地域暖房を導入したところがあるんですよね…)
そう、サン=ドニがまさにそれ。
おそらく、凍てついた石畳に足を取られたり、あるいは降り積もる雪で馬車はおろか人の往来にまで支障を来たすことは減るだろうと言われております。
問題はネズミですが、実のところ、パリ市内ではネズミを見ることがほとんどなくなったのです…。
猫でも増えたんでしょうか。
いえ、そもそもネズミが隠れられる場所が減ってしまったからなのです。
実はパリの下水道幹線とやら、苗床の触手が通行する通路でもあるのです。
つまり、ネズミやら何やらは、そこに隠れておる時点で苗床の触手が伸びてきて御用、となってしまうのです…。
更には、石畳や舗装路を定期的に洗い流す仕掛けや、苗床の排泄物を肥料や火薬などの原料として再生する燐化装置などの働きで、悪臭漂うパリの街並みは今や文字通りの花の都。
セーヌ川の水が澄んでるとか、どんな魔法よと思いましたが、実際に澄んでいて魚も釣れるのですから。
ただ、その釣れる魚の中に、例のハラマスが結構な数で混ざってるのが、その。
(今やドーバーの舌平目よりもハラマスの方が魚料理に使われてるって、どうなの…)
(若い男女を孕ませるためだから仕方ないとは思うけどさ…)
ええ、フラメンシアと2人して、顔を見合わせたものです。
そして、人口増加と躍進著しいサン=ドニには、かつて村役場が存在しました。
しかし、増え続ける人口に手狭となったこともあって、サン=ドニ聖母教会の近所の建物に移転したのです。
では、その役場の建物、どないしたのか。
ここをまさに、演芸場…それも、偽女種ばかりが出演する歌劇の演芸場にしてしまったんです…。
https://x.com/725578cc/status/1858477251131846906
これは、サン=ドニ修道院や近隣の聖母教会で管理している娼婦連中の慰労のためでもあるのです。
「でも、おかげでおんなのひとたちも、サン=ドニをおとずれるようになったそうではないですか…」
「ただ、問題はですね、偽女種たちを買おうと思っていた女の需要をどういう風に捌くかとか、まだまだ問題は山積みではあるんですよね…」
で、ここの演芸場に出演している偽女種たち。
実のところは、ブローニュ分館や、ヴァンせンヌ娯楽館本館の子たちで、適性がありそうな者を演劇の世界に連れて行っておるのです。
ここで大成した偽女種、なんと狂い馬や赤風車といった高級キャバレークラブとやらにも出演の機会があるのだとか。
つまり、偽女種を好む客のために踊り、時に春を売るのです。
更には、掴んだ顧客の出自や身元によっては、奉仕偽女種から指導偽女種への昇格もあり。
ええ…ブローニュやヴァンセンヌの偽女種たちは、奉仕偽女種が基本。
暗黒大陸や他の土地から移住したものはもちろん、河原の一族の出であっても職人の技能や芸ごと、あるいは学業に邁進することに挫折した者たちは、元来ならば乞食となるのが通例でした。
しかし、今では痴女皇国の他の土地と同様に、乞食となる理由をことごとく廃され改善されるのです。
健康になり若返る代償に、学問を修めるか働くべし、となってしまったのです…。
それも嫌なら、男なら偽女種、女は売春しか道はありません。
もしくは、罰姦聖母教会の助修士…今や、はっきりを言えば精気収入と魔毒抜き要員専門となりつつある職種にされて、数年で完全に苗床の餌となるか、生まれ変わるかの二択。
しかし、ここに売春婦の身の上で、それなりの太い客を掴み、かつての第二身分たる貴族の暮らし向きに近い生活を送っていた女がおります。
それが、高級娼婦ユールを名乗っていた、ジュディト=ジュリー・ベルナールです。
このベルナール、その太い顧客の多数を失って途方に暮れておりましたが、宰相タレーランの国葬の後の葬礼夜会に現れ、窮状を訴えたのは記憶に新しいところ。
そして、その経験と経歴によって、即座に遊撃騎兵隊入りが決定した人物です。
いえ、それだけでなく、その娘4人も、こちらで預かって実質孤児院の寄宿学校に入れました。
1人を除けば、ですが。
他の3人からは文句も出ましたが、才能試験とやらである項目が突出していた調査結果を受けての決定だと、4人と母親をここに呼んだ上で、アルト閣下に説明して頂いたのです。
ええ、アルト閣下、引き続きフランス支部の暫定支部長をお勤めなのです。
ぞして、我が支部の外交部門から財務部門に移られたマルハレータ殿下ともども、引き続きエリゼ宮とベルサイユを往来するお立場。
(私が相変わらずグラン・アパルトマン住まいなのをなんとかしろぉおおおおおお)
(うるさいフラメンシアやなっ。アルト閣下にパパンのお部屋、マルハ殿下にママンのお部屋をあてがったら残るんはグラン・アパルトマンしかあらへんやないけぇっ)
ええ、フラメンシアは引き続き、鏡の間が存在する中央通廊棟の1階にある、王妃の隠し部屋住まいを強要しておるのです。
んで、実のところは大トレアノンと小トレアノンを交換して、弟たちを小トレアノン、わしとソフィーが大トレアノン住まいに変えたのです。
理由その1。
弟たちと寵妃の生活、優先。
というより、夜毎のアヘ声とか、朝の儀式とやらのアヘアヘいう声がですね。
理由その2。
うちのママン専用の劇場、実は小トレアノンのすぐ側に存在するのです。
これ、エマニエル部長がベルサイユ宮殿をパリに引っ越しさせた神業の際に、田舎村や小トレアノンや愛の神殿ごと、こっちに持って来られたのです。
で、この間、ここの劇場の専属団員向けの名目で、50人も入れば満員の小さな寮舎が併設されたのです。
これ、なんのためか。
この建物、鹿苑寮と名付けられました。
で、寮監に任命されたのは、他ならぬジュディト=ジュリー・ベルナール。
そう…ルイ15世時代に作られた王専用娼館「鹿の園」を再現したかのごとき場所の管理者に任じられたのです。
ただしこの鹿苑寮、小トレアノン駐在の侍従女官寮も兼ねております。
そして、演劇と歌謡の才能に特徴があるとみなされた、ジュディトの末娘サラのためであるのが最大理由なのですが、ベルサイユ演劇場で行っていたバレエの練習、今はこのアントワネット小劇場と命名された演劇場に主な場所を移しております。
(一般の女官たちは女官たちで、ベルサイユ演劇場で宮廷舞踊を習うのですよね…)
(ちなみにアルト閣下の駐在が長い理由の1つですけど、このアントワネット劇場でバレエと宮廷舞踊覚えるまでは聖院本宮はもちろん、痴女宮にも帰さんとか2人のマリアリーゼ陛下が合同で言い聞かせたからだっちゅうのは内緒で…)
(ううううう、あたくしがおどりなんておぼえなくてもいいきがします!)
(あかん。ベルサイユと言えば夜会でしょうがっ)
(白マリの言う通りだぞ…せっかくフランスに出張中なんだから、社交ダンスくらい覚えて帰れ…)
(あたくしにクラブジュネスのすけべいおどりいがいをおぼえろというの、オリューレに車のうんてんをやらせたり、めるこにけいさん間違いがないおしごとをようきゅうするのとかわりはないとおもいます!)
(わかったから練習してきなさい…)
(おにあくましろよめくろよめ!)
(あのさーアルト、聖院のおめーの監督はあくまでも白マリだからな…あたしはそれに合意してるだけだぞ…)
マリアリーゼ陛下が2人いらっしゃるっちゅうのはともかく、聖院の方でも昨今は女のたしなみとかいうことで、女官への教育内容を見直しているそうですね…。
心底嫌そうに、ドレス姿でえっちらおっちら踊っておられるアルト閣下を見ていると、少しだけかわいそうにも思えますが。
まぁともかくですね。
うちの弟たちに関して言えば、そのマリアリーゼ陛下他が実情を鑑みて「女好きでないのもまずい」と判断された結果、女好きにもほどがあったのがばっきばきに記録で伝わっておる、うちのお祖父様のルイ15世や曽祖父様ルイ14世由来の遺伝子を活性化させるとかいう処置によって、おじい様を知る者には生まれ変わったのかと思わせるほどのおめこ好きになった経緯があります。
しかし、その反動で、女好きの暮らし向きを余儀なくされとるのです…ええ、小トレアノンを弟たちの住まいにしたのも、ほんっとにやむを得ない事情だと思って欲しいのです。
しかし、弟たちとて、こうしておいた方がよろしいのです。
それに…あの夜会の晩に、アフロディーネ女官長がお越しだったの、覚えておいででしょうか。
ふふふ。
ちょいとばかり、何かを仕掛けてお帰りになったそうですよ。
そして、同じような仕掛け、娼婦ユールとその娘の1人であるサラ・ベルナールという少女にも。
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でまぁ、ある日の早朝。
私とそしてオスカーと…オスカーの幼なじみであるアンドレイなる青年、例の屋根なしシトロエンで大トレアノンを後にします。
https://x.com/725578cc/status/1859416170476208563
理由は…うちの弟どもの、監視。
もっとはっきりと言えば、おめこしすぎでタレーランみたいに燃えて死んでもろては困るが故に、定期的に体調を調べる必要があるのです。
そして、元来ならば私なら私がオメコしてやれば一瞬にヤバいかどうか判断できるらしいのですが、さすがにこの方法はちょっと勘弁させて頂きたいところ。
で、ベルサイユ本宮で、フラメンシアとアルト閣下をお乗せしてから、改めて小トレアノンのすぐ近くに移されておる愛の神殿に向かうのです。
「あのさぁ…なんで私が荷台なわけ…?」
ええ、このくるまには、椅子は4人分。
となると、吹きっさらしの後ろの荷台で我慢させるべきはアルト閣下か、黒薔薇騎士であるフラメンシアとなってしまうのです、私の脳内規則では。
となると、閣下とフラメンシアでは、どっちをどう座らせるか、自明の理というもの。
でまぁ、オスカーとアンドレイを前に座らせ、後ろにアルト閣下と私、そして荷台には不機嫌極まりない顔のフラメンシアが陣取って、愛の神殿の近くに参ります。
(ここでやっているのは南洋ぎょうせい局などの、あさの日課とおなじですね…)
そう、鹿苑寮には1ヶ月でしたか、1週間でしたか、とにかくベルサイユ詰めの新人で一定以上の成績考課を上げた生徒または学生女官が交代で配属されて来るのです。
ちなみに、大トレアノンにも同じように女官見習いが送られて来ますよ。
そして、朝の洗礼めいたことをやるのです、いえ、犯っとるのです。
つまり、女官見習いで優秀な子は王兄か王弟のお手つき、絶対に1回は経験するのです。
そして、次に優秀な4名。
王兄と王弟が女官見習いを犯すのを見て興奮した寵妃母娘と寮監母娘のちんぽを咥え、興奮の証を頂くことになっとるそうです。
(なんでこんなことに…)
(私に聞くな私に…)
(どうも、ドロテアとジュリーが決めたようです…鹿苑寮に住むからには、極力、王兄様と王弟様以外のちんぽを受け入れないようにしようと…)
つまり、うちの弟たち以外とはなるべく性交しないようにしとると。
(ゆうげき騎兵隊に行けばいやでもおめこはするのですしね…)
ええ、小トレアノンに回される見習いってのがですね、遊撃騎兵隊候補なんですわ。
私らの住まいの方は普通に、女官だ尼僧だ騎士だのの見習いなんで、えろえろにはなりません。
したかったら、他のベルサイユ詰めの女官と同じで、偽女種の配給も受けられるし、ブローニュでもヴァンセンヌでも行ってこいやということなのです。
または、サン=ドニの偽女種劇場。
おひねりを弾めば相手してくれますからね、あそこの芸能偽女種。
その代わり、一晩買い切りが基本だそうですけど…。
(あのげきじょうのおかまちゃんたち、女のひとにかわれないばあいはどうしてるのですか)
(一般の配給偽女種に混ざってベルサイユに来るか、連絡すればサン=ドニ修道院の修練士以上の尼僧が手配されますので、ちんぽ突っ込みに行ってるそうです…)
(ああそうか、せんずり禁止令、芸能偽女種にも生きるのよね…)
ええ、新たな偽女種の品種、爆誕。
この芸能偽女種、人気が出れば出るほど延命されるそうです。
そして、ここフランスでの運用実績を受けて、今や南欧河原の一大興業地にもなっとるらしいマドリードでも、奉仕偽女種の河原は芸能偽女種への転換が始まるそうですよ、フラメンシアによれば。
(で。オスカーはこういうの慣れてるとしても、アンドレイには辛いと思うわよ…)
(愛の洞窟を貸してもらいなさい…)
ええ、愛の神殿でやっとることをもはや正視できない赤面状態のアンドレイ青年ですが、股間は正直です。
仕方ないので、オスカーに面倒を見てもらうべき。
(監視の仕事はわしらがやるから、遠慮のう行って来なさい…)
(あー…アンドレイもベルサイユ詰めになったんだし、せんずり禁止令の対象よね、確実に…)
というわけで、木陰から見張るわしら一団から抜けて、こそーっと愛の洞窟に向かうオスカーとアンドレイ。
で、朝の一発を選抜見習い相手に出し終えた弟どもとドロテアにポーリーヌ、そしてジュリーとサラ、どないするつもりなのか。
朝食の前に、アントワネット記念演劇場でバレエのレッスンなのです。
朝の体操がわりに。
そして、その後の入浴を経て朝食…で、弟どもと有志はパリ市内の学校から招かれた教師を前に、一般の市井の学校生徒並みかそれ以上の授業を午前中いっぱい受ける立場なのです。
この時、その後の授業に影響しない程度におめこしていいとなってます、鹿苑寮の風呂場で。
んで、ここからは私たちにも支部公務が発生する時間帯ですから、アルト閣下やフラメンシアともども、エリゼ宮に向かわなくてはなりません。
(オスカー…お楽しみのせいでベルサイユ聖母教会の朝行に遅刻せんように…)
ひいいいい、とかいう声が愛の洞窟から聞こえたかもしませんが、無視します。
そして、私はアルト閣下に抱えられると、あっちゅう間にエリゼ宮の正面玄関へ。
その後を、ほぼ間髪入れずにフラメンシアがついてきますが、いつの間にか合流したマルハレータ殿下よりは死にそうな顔ですよ。
(フラメンシアちゃんはくろばら修行のやりなおしをいわれないように…)
(エリゼ宮におると机仕事ばかりなんですよ!)
いえ、机仕事はまだマシでっせ。
弟どもが受けとる授業内容によっては、わしらも生徒で参加させられとるやろが。
第一フラメンシア、お前、マドリードに戻ったら軍大学の卒業試験ちゃうんか…。
ええ、わしもフラメンシアも、学生身分を申し渡されとるのです…。
ちなみに妹のソフィー、鹿苑寮の連中と一緒に授業、受けてますよ。
ええ、楽しいことばかりではないベルサイユ暮らしなのです。
ですから弟ども。
べっぴんに囲まれておめこざんまいの暮らしさせたってんねんから、せめて学校くらいは出ろ、な!
そう…午前中いっぱい、わしらフランス王族はこぞって、死にそうな顔なのです。
ついでにイスパニア王族の1名と、痴女皇国皇族の1名も死にそうな顔です。
あまり死にそうじゃないのは球根詐欺の王族の方くらい、ですかね。
そして弟どもは昼食の後でお昼寝とかすると思うでしょ。
甘い甘い。
今度は体育実技とかで、騎士に鍛えられたり乗馬やったりしとるのです。
もしくは、本宮や小トレアノンの掃除の手伝いや田舎村の畑仕事のお手伝いとか、そしてベルサイユの慈善孤児院訪問とかサン=ドニ修道院やサン=ドニ愛染隣保会館の慰問とか、福祉関係のお仕事も結構あるんですよ?
ええ、こういうのって、ほんまは王妃や王女の仕事なんですけどね、わしとフラメンシアがね、アルト閣下やマルハレータ殿下に助けられつつもパパンのような国王の仕事も代行してますんでね。
お前らがわしらの代わりに女の仕事をやっとくれ。
これで、弟どもをこき使う口実にしております。
まぁ、わしらはエリゼ宮だけでなく、ルーブル宮に行って王国議会に出席したりとか、閣僚と打ち合わせたりとか、それなりに色々あるのです。
(おれは女なのにパパンのように働いておる…色気は、生活の色気はないのか!)
(テレーズ、辛いでしょうけど頑張るのよ…今のフランスはあなたが実質、国王のようなもの…)
(ママン。娘が可哀想に思えるんなら、金田から戻ってくるという選択、毛の一本ほどでいいんで、思ってもらえませんでしょうか)
(何を言うのですかテレーズ。もはや私は金田の田舎教会の単なる司祭マリーですよっ)
(うそつけ…ソフィーとフェルセンが育ったらモントリオールかケベックの基幹教会に戻るゆう話、聞こえてますわよ…)
ええ、近々、金田に赴任するというナポレオン・ボナパルトの補佐を言われとるらしいのです、うちのママン。
まぁ、娘の苦境に故郷へ戻るとかいう殊勝な考えをあの母に期待した私が愚かでした。
ぜってぇ、国力を蓄えたら金田を侵略さしてもらう。
そして、あの不肖のママンをギロチンにかけるのではなく、公開懲罰したる。
金田名産の砂糖かえでのシロップ漬けにして蜂の巣の近所に放置するとか、飢えた偽女種の群れの中に投じるか。
(テレーズ、あんたは中原龍皇国の鬼婦人か…)
失礼な。人豚にせんだけ、まだマシや思うてくれや。
それはともかく、ブルボン王家の家長であるわしと、妹のソフィー。
そして、フランス支部副支部長にしてヴァロワ王家の筆頭王女であるフラメンシアは、南欧行政局の副局長でもあります。
つまり、わしら姉妹とフラメンシア、アルト閣下とマルハレータ殿下ともども、夜会から逃げられんのです。
ですので、ほぼ毎晩、泣きながらドレスの着付けをマルハレータ殿下とフラメンシアに手伝ってもらってるアルト閣下ですけどね。
わたくしテレーズなんてね、もっと泣きたいんですよ。
ええ、あいつら弟どもも、お役目なのはわかってます。
わかってますけどね、小トレアノンとかアントワネット劇場とか、果ては夜の愛の神殿で愛の行為に絶賛体力消費中な上に、いちゃらぶの声が私らには聞こえるのですよ?
というかマルハレータ殿下とフラメンシアとアルト閣下が聞き耳立ててる内容がね、こっちに流れてくるんですよ。
ソフィーは済ました顔で流してやがりますが、この女は割と冷淡冷静です。
しかし、フランス王国の筆頭王女でありながら、浮いた話が浮かばないこのテレーズ。
弟どもがね、芸能人の卵とか、あのタレーランが手ぇ出しくさったほどの美人若妻とかね、その娘の忠実な女騎士とかね。
状況が状況だけに、おめこを控えろとか言えないのです。
(ねーさま、ジョセフにーさまやシャルルにーさま、詰め込みきょういくをされておるのですからこれくらいは大目にっておもうのですわ、わたくし…)
そうは言っても、辛いもんは辛いのよ、ソフィー…。
ええ、なんであの晩、わしもなんか縁をくれやとかアフロディーネ女官長に依頼せんかったのでしょうか。
(すみません、まず相手みつくろってください)
(テレーズ。うちの息子でよけりゃあ、お世話しますわよ)
(イザベルおばさまのとこの息子さんは遠慮します。あの子らに下心がないのはともかく、その母親に下心がありまくり。いくら南欧行政局長さまの息子さんといっても、このテレーズの婿にはちょっとご遠慮させて頂きたくっ)
(あなたの叔母として申しますけどね。あなた、アントワネットからも婿、そろそろ探しときやとか釘、刺されてませんか)
(ええ確かに。しかし、おばさまとこのお子様であれば、わしはまだ英国から婿をもらうことを選びます)
(フランシス…オリバー…うちの息子でドーバーの向こうに出せる子はいなかったかしら…いえ、あなた方やホレイショの子でもよいのですよ…)
(は。陛下の要望たれば)
(英国男子を見繕いましょう、なんならホレイショでも)
(クロムウェル卿。それするとエマ嬢に刺されるのは私なのでその案は海軍としては却下である)
(陸軍としては強く推奨する!)
ええ、なんか、ドーバーの向こうで勝手に決められても困るのです。
とりあえず、わしが学生の間くらいは。
…でないと、激務の合間を縫ってヴァンセンヌやブローニュはもちろん、偽女種劇場に通えんでしょうが!
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ふらめ「オチがひどいがな」
おすかー「殿下、よりによってヴァンセンヌやブローニュはもちろんですが、サン=ドニの偽女種演芸場はちょっと…」
てれこ「名前。それはともかく、私がサン=ドニに通うのは王が大衆演芸場に通うようなもんらしいです」
おすかー「つまり、王族がオペラ座はまだしもそういう下賤の場に顔を出すとか、あまつさえヴァンセンヌやブローニュで偽女種売春の覗きをしておるとか、一大醜聞…」
どろてあ「刺激的な光景が見れるのですよねぇ…」
ふらめ「テレーズ…覗き王女か、あんたは…」
てれこ「で、次回ですが、ちょっとフランスを離れた話になるかも知れません。未成年も読めるお話になるかも知れないと」
あると「おうじさまたちのえろえろなおはなしもかかれるかもしれないのです…」
他全員「ではまた、お目にかかりましょう…」
このサン=ドニ、パリの下町であり職人街でした。
いえ、実は今でもそうなのです。
で、旧来は鋳物や金属加工を生業とする職人の工場が多数並んでおりまして、金属を錬金鋳造したり、あるいは鍛冶屋をもっと大規模にしたような場所で作られる武具や金具に道具の類の製造のために、燃やす木材や、果ては貴重ではありますが燃える石に油などを使いに使っておりました。
つまり、サン=ドニの一帯、ものすごく空気が悪かったのです。
おまけに、職人たちが多数通いの住みのするものですから、ごみや汚物もそれなりに出てまいります。
で、この多数の職人たちを目当てとした娼婦も多数住んでおりまして、サン=ドニが娼婦街であった起源ともされております。
しかし、娼婦の間では「このサン=ドニでは確かに金を稼げるけど、同時に命を削ってるようなもんだ」「金を稼ぐか太い旦那を見つけて逃げ出せるか、それとも病に伏せって死ぬかの二択」などという、よろしくない場所である評価が固まっておったのです。
ですが…聖院時代から、ここのカイゼンは密かに行われて来たそうです。
そして痴女皇国時代に入っての直接的な介入を受けてからは、ほぼ真っ先に環境改良対象とされたのです。
パリ市内の中でもいち早く近代型の上下水道が敷かれ、工場にも手が入ったのが、このサン=ドニ地区なのです。
そして、シトロエンやルノーにプジョーといった国策工場に納入する部品を製造する下請け工場や、貴金属類の加工場はもちろん、我がフランスが欧州では先陣を切って進めることなるという紙幣印刷に必要な機械類の部品製造が企画されたのです。
(当面は客車に限定するけどさ、鉄道車両の製造も行うのよね、こことあと、英国で…)
そう、類似の機械産業の発展の可能性がある大英帝国とは、ある意味で競争関係になってしまうのです。
そして、サン=ドニのためにと暗黒大陸からスペインを経由して集められた労働者たち。
この、労働者たちですが。
暗黒大陸地区本部の食糧や医療事情の大幅な改善によって、各地の農家で人余りが生じているせいだそうです。
しかし、マリアリーゼ陛下やベラ子陛下に言わせますと、これは予定通りであると。
そして、当初の移民たちは魔毒環境適合化と称して、マドリードまたは滅姦におる出稼ぎ者のうち、志願者を募っております。
これは、地域の聖母教会または愛染隣保会館を経由して、なるべく最低限度でも学業を納めた者を送り込むためだそうです。
(というのは建前で、欧州人に合わせた身体に変わってもらう必要があるからね…やはり黒んぼたちだと何かにつけてかわいそうなことになるから…)
(濃くてもダリア統括程度の肌の色で、ということみたいね…)
そう、黒んぼたちがこのパリに溶け込んでもらえるようにする作戦なのです。
もちろん、肌の色を変えるとあっては、その出自を否定されたように受け取られても仕方はないでしょう。
しかし、このフランスでももはや弱毒型苗床運用地域にされたところが結構増えたのです。
第一、フランスの都であるパリがそもそも、今や複数の苗床を運用する場所となりました。
(ま、これは労働魔族を生み出すっていうよりも、偽女種や女の子を生み出すのが主目的なのよね…)
つまり、パリの市内の庶民はこのサン=ドニまたは近隣地区に集中して住むよう、国土局の主導によって都市計画とやらが描かれたのです。
(具体的に言うと、サン=ドニには単身者向けのアパルトマンを集中させますた…)
(れんぽう世界のパリの街並みが痴女皇国世界でも見たいなら、ここなのですよね…他はヴェロニク様やリヴィエラ様はもとより、ジョスリーヌ様やダリア統括でも「あれ?」という顔をなさいます時が結構ありますから…」
つまり、れんぽう世界のパリとはかなり、様変わりしとるのです。
そして、サン=ドニで金を稼いだり伴侶を見つけたものは、もう少しよろしい住まいをとなりますから、ではサンドニの東西の森を切り開いてこしらえた住宅にどうぞ、とやっとるわけです。
それと、このサン=ドニだけでなく、他の地域でも広まっておりますが、この冬は煤煙で曇った空を見ることが減って、澄んだ冬の空気の下で夜空に満天の星を眺められるだろうと。
(ニューヨークと同じで、温水や蒸気によるロードヒーティングを含めた地域暖房を導入したところがあるんですよね…)
そう、サン=ドニがまさにそれ。
おそらく、凍てついた石畳に足を取られたり、あるいは降り積もる雪で馬車はおろか人の往来にまで支障を来たすことは減るだろうと言われております。
問題はネズミですが、実のところ、パリ市内ではネズミを見ることがほとんどなくなったのです…。
猫でも増えたんでしょうか。
いえ、そもそもネズミが隠れられる場所が減ってしまったからなのです。
実はパリの下水道幹線とやら、苗床の触手が通行する通路でもあるのです。
つまり、ネズミやら何やらは、そこに隠れておる時点で苗床の触手が伸びてきて御用、となってしまうのです…。
更には、石畳や舗装路を定期的に洗い流す仕掛けや、苗床の排泄物を肥料や火薬などの原料として再生する燐化装置などの働きで、悪臭漂うパリの街並みは今や文字通りの花の都。
セーヌ川の水が澄んでるとか、どんな魔法よと思いましたが、実際に澄んでいて魚も釣れるのですから。
ただ、その釣れる魚の中に、例のハラマスが結構な数で混ざってるのが、その。
(今やドーバーの舌平目よりもハラマスの方が魚料理に使われてるって、どうなの…)
(若い男女を孕ませるためだから仕方ないとは思うけどさ…)
ええ、フラメンシアと2人して、顔を見合わせたものです。
そして、人口増加と躍進著しいサン=ドニには、かつて村役場が存在しました。
しかし、増え続ける人口に手狭となったこともあって、サン=ドニ聖母教会の近所の建物に移転したのです。
では、その役場の建物、どないしたのか。
ここをまさに、演芸場…それも、偽女種ばかりが出演する歌劇の演芸場にしてしまったんです…。
https://x.com/725578cc/status/1858477251131846906
これは、サン=ドニ修道院や近隣の聖母教会で管理している娼婦連中の慰労のためでもあるのです。
「でも、おかげでおんなのひとたちも、サン=ドニをおとずれるようになったそうではないですか…」
「ただ、問題はですね、偽女種たちを買おうと思っていた女の需要をどういう風に捌くかとか、まだまだ問題は山積みではあるんですよね…」
で、ここの演芸場に出演している偽女種たち。
実のところは、ブローニュ分館や、ヴァンせンヌ娯楽館本館の子たちで、適性がありそうな者を演劇の世界に連れて行っておるのです。
ここで大成した偽女種、なんと狂い馬や赤風車といった高級キャバレークラブとやらにも出演の機会があるのだとか。
つまり、偽女種を好む客のために踊り、時に春を売るのです。
更には、掴んだ顧客の出自や身元によっては、奉仕偽女種から指導偽女種への昇格もあり。
ええ…ブローニュやヴァンセンヌの偽女種たちは、奉仕偽女種が基本。
暗黒大陸や他の土地から移住したものはもちろん、河原の一族の出であっても職人の技能や芸ごと、あるいは学業に邁進することに挫折した者たちは、元来ならば乞食となるのが通例でした。
しかし、今では痴女皇国の他の土地と同様に、乞食となる理由をことごとく廃され改善されるのです。
健康になり若返る代償に、学問を修めるか働くべし、となってしまったのです…。
それも嫌なら、男なら偽女種、女は売春しか道はありません。
もしくは、罰姦聖母教会の助修士…今や、はっきりを言えば精気収入と魔毒抜き要員専門となりつつある職種にされて、数年で完全に苗床の餌となるか、生まれ変わるかの二択。
しかし、ここに売春婦の身の上で、それなりの太い客を掴み、かつての第二身分たる貴族の暮らし向きに近い生活を送っていた女がおります。
それが、高級娼婦ユールを名乗っていた、ジュディト=ジュリー・ベルナールです。
このベルナール、その太い顧客の多数を失って途方に暮れておりましたが、宰相タレーランの国葬の後の葬礼夜会に現れ、窮状を訴えたのは記憶に新しいところ。
そして、その経験と経歴によって、即座に遊撃騎兵隊入りが決定した人物です。
いえ、それだけでなく、その娘4人も、こちらで預かって実質孤児院の寄宿学校に入れました。
1人を除けば、ですが。
他の3人からは文句も出ましたが、才能試験とやらである項目が突出していた調査結果を受けての決定だと、4人と母親をここに呼んだ上で、アルト閣下に説明して頂いたのです。
ええ、アルト閣下、引き続きフランス支部の暫定支部長をお勤めなのです。
ぞして、我が支部の外交部門から財務部門に移られたマルハレータ殿下ともども、引き続きエリゼ宮とベルサイユを往来するお立場。
(私が相変わらずグラン・アパルトマン住まいなのをなんとかしろぉおおおおおお)
(うるさいフラメンシアやなっ。アルト閣下にパパンのお部屋、マルハ殿下にママンのお部屋をあてがったら残るんはグラン・アパルトマンしかあらへんやないけぇっ)
ええ、フラメンシアは引き続き、鏡の間が存在する中央通廊棟の1階にある、王妃の隠し部屋住まいを強要しておるのです。
んで、実のところは大トレアノンと小トレアノンを交換して、弟たちを小トレアノン、わしとソフィーが大トレアノン住まいに変えたのです。
理由その1。
弟たちと寵妃の生活、優先。
というより、夜毎のアヘ声とか、朝の儀式とやらのアヘアヘいう声がですね。
理由その2。
うちのママン専用の劇場、実は小トレアノンのすぐ側に存在するのです。
これ、エマニエル部長がベルサイユ宮殿をパリに引っ越しさせた神業の際に、田舎村や小トレアノンや愛の神殿ごと、こっちに持って来られたのです。
で、この間、ここの劇場の専属団員向けの名目で、50人も入れば満員の小さな寮舎が併設されたのです。
これ、なんのためか。
この建物、鹿苑寮と名付けられました。
で、寮監に任命されたのは、他ならぬジュディト=ジュリー・ベルナール。
そう…ルイ15世時代に作られた王専用娼館「鹿の園」を再現したかのごとき場所の管理者に任じられたのです。
ただしこの鹿苑寮、小トレアノン駐在の侍従女官寮も兼ねております。
そして、演劇と歌謡の才能に特徴があるとみなされた、ジュディトの末娘サラのためであるのが最大理由なのですが、ベルサイユ演劇場で行っていたバレエの練習、今はこのアントワネット小劇場と命名された演劇場に主な場所を移しております。
(一般の女官たちは女官たちで、ベルサイユ演劇場で宮廷舞踊を習うのですよね…)
(ちなみにアルト閣下の駐在が長い理由の1つですけど、このアントワネット劇場でバレエと宮廷舞踊覚えるまでは聖院本宮はもちろん、痴女宮にも帰さんとか2人のマリアリーゼ陛下が合同で言い聞かせたからだっちゅうのは内緒で…)
(ううううう、あたくしがおどりなんておぼえなくてもいいきがします!)
(あかん。ベルサイユと言えば夜会でしょうがっ)
(白マリの言う通りだぞ…せっかくフランスに出張中なんだから、社交ダンスくらい覚えて帰れ…)
(あたくしにクラブジュネスのすけべいおどりいがいをおぼえろというの、オリューレに車のうんてんをやらせたり、めるこにけいさん間違いがないおしごとをようきゅうするのとかわりはないとおもいます!)
(わかったから練習してきなさい…)
(おにあくましろよめくろよめ!)
(あのさーアルト、聖院のおめーの監督はあくまでも白マリだからな…あたしはそれに合意してるだけだぞ…)
マリアリーゼ陛下が2人いらっしゃるっちゅうのはともかく、聖院の方でも昨今は女のたしなみとかいうことで、女官への教育内容を見直しているそうですね…。
心底嫌そうに、ドレス姿でえっちらおっちら踊っておられるアルト閣下を見ていると、少しだけかわいそうにも思えますが。
まぁともかくですね。
うちの弟たちに関して言えば、そのマリアリーゼ陛下他が実情を鑑みて「女好きでないのもまずい」と判断された結果、女好きにもほどがあったのがばっきばきに記録で伝わっておる、うちのお祖父様のルイ15世や曽祖父様ルイ14世由来の遺伝子を活性化させるとかいう処置によって、おじい様を知る者には生まれ変わったのかと思わせるほどのおめこ好きになった経緯があります。
しかし、その反動で、女好きの暮らし向きを余儀なくされとるのです…ええ、小トレアノンを弟たちの住まいにしたのも、ほんっとにやむを得ない事情だと思って欲しいのです。
しかし、弟たちとて、こうしておいた方がよろしいのです。
それに…あの夜会の晩に、アフロディーネ女官長がお越しだったの、覚えておいででしょうか。
ふふふ。
ちょいとばかり、何かを仕掛けてお帰りになったそうですよ。
そして、同じような仕掛け、娼婦ユールとその娘の1人であるサラ・ベルナールという少女にも。
--
でまぁ、ある日の早朝。
私とそしてオスカーと…オスカーの幼なじみであるアンドレイなる青年、例の屋根なしシトロエンで大トレアノンを後にします。
https://x.com/725578cc/status/1859416170476208563
理由は…うちの弟どもの、監視。
もっとはっきりと言えば、おめこしすぎでタレーランみたいに燃えて死んでもろては困るが故に、定期的に体調を調べる必要があるのです。
そして、元来ならば私なら私がオメコしてやれば一瞬にヤバいかどうか判断できるらしいのですが、さすがにこの方法はちょっと勘弁させて頂きたいところ。
で、ベルサイユ本宮で、フラメンシアとアルト閣下をお乗せしてから、改めて小トレアノンのすぐ近くに移されておる愛の神殿に向かうのです。
「あのさぁ…なんで私が荷台なわけ…?」
ええ、このくるまには、椅子は4人分。
となると、吹きっさらしの後ろの荷台で我慢させるべきはアルト閣下か、黒薔薇騎士であるフラメンシアとなってしまうのです、私の脳内規則では。
となると、閣下とフラメンシアでは、どっちをどう座らせるか、自明の理というもの。
でまぁ、オスカーとアンドレイを前に座らせ、後ろにアルト閣下と私、そして荷台には不機嫌極まりない顔のフラメンシアが陣取って、愛の神殿の近くに参ります。
(ここでやっているのは南洋ぎょうせい局などの、あさの日課とおなじですね…)
そう、鹿苑寮には1ヶ月でしたか、1週間でしたか、とにかくベルサイユ詰めの新人で一定以上の成績考課を上げた生徒または学生女官が交代で配属されて来るのです。
ちなみに、大トレアノンにも同じように女官見習いが送られて来ますよ。
そして、朝の洗礼めいたことをやるのです、いえ、犯っとるのです。
つまり、女官見習いで優秀な子は王兄か王弟のお手つき、絶対に1回は経験するのです。
そして、次に優秀な4名。
王兄と王弟が女官見習いを犯すのを見て興奮した寵妃母娘と寮監母娘のちんぽを咥え、興奮の証を頂くことになっとるそうです。
(なんでこんなことに…)
(私に聞くな私に…)
(どうも、ドロテアとジュリーが決めたようです…鹿苑寮に住むからには、極力、王兄様と王弟様以外のちんぽを受け入れないようにしようと…)
つまり、うちの弟たち以外とはなるべく性交しないようにしとると。
(ゆうげき騎兵隊に行けばいやでもおめこはするのですしね…)
ええ、小トレアノンに回される見習いってのがですね、遊撃騎兵隊候補なんですわ。
私らの住まいの方は普通に、女官だ尼僧だ騎士だのの見習いなんで、えろえろにはなりません。
したかったら、他のベルサイユ詰めの女官と同じで、偽女種の配給も受けられるし、ブローニュでもヴァンセンヌでも行ってこいやということなのです。
または、サン=ドニの偽女種劇場。
おひねりを弾めば相手してくれますからね、あそこの芸能偽女種。
その代わり、一晩買い切りが基本だそうですけど…。
(あのげきじょうのおかまちゃんたち、女のひとにかわれないばあいはどうしてるのですか)
(一般の配給偽女種に混ざってベルサイユに来るか、連絡すればサン=ドニ修道院の修練士以上の尼僧が手配されますので、ちんぽ突っ込みに行ってるそうです…)
(ああそうか、せんずり禁止令、芸能偽女種にも生きるのよね…)
ええ、新たな偽女種の品種、爆誕。
この芸能偽女種、人気が出れば出るほど延命されるそうです。
そして、ここフランスでの運用実績を受けて、今や南欧河原の一大興業地にもなっとるらしいマドリードでも、奉仕偽女種の河原は芸能偽女種への転換が始まるそうですよ、フラメンシアによれば。
(で。オスカーはこういうの慣れてるとしても、アンドレイには辛いと思うわよ…)
(愛の洞窟を貸してもらいなさい…)
ええ、愛の神殿でやっとることをもはや正視できない赤面状態のアンドレイ青年ですが、股間は正直です。
仕方ないので、オスカーに面倒を見てもらうべき。
(監視の仕事はわしらがやるから、遠慮のう行って来なさい…)
(あー…アンドレイもベルサイユ詰めになったんだし、せんずり禁止令の対象よね、確実に…)
というわけで、木陰から見張るわしら一団から抜けて、こそーっと愛の洞窟に向かうオスカーとアンドレイ。
で、朝の一発を選抜見習い相手に出し終えた弟どもとドロテアにポーリーヌ、そしてジュリーとサラ、どないするつもりなのか。
朝食の前に、アントワネット記念演劇場でバレエのレッスンなのです。
朝の体操がわりに。
そして、その後の入浴を経て朝食…で、弟どもと有志はパリ市内の学校から招かれた教師を前に、一般の市井の学校生徒並みかそれ以上の授業を午前中いっぱい受ける立場なのです。
この時、その後の授業に影響しない程度におめこしていいとなってます、鹿苑寮の風呂場で。
んで、ここからは私たちにも支部公務が発生する時間帯ですから、アルト閣下やフラメンシアともども、エリゼ宮に向かわなくてはなりません。
(オスカー…お楽しみのせいでベルサイユ聖母教会の朝行に遅刻せんように…)
ひいいいい、とかいう声が愛の洞窟から聞こえたかもしませんが、無視します。
そして、私はアルト閣下に抱えられると、あっちゅう間にエリゼ宮の正面玄関へ。
その後を、ほぼ間髪入れずにフラメンシアがついてきますが、いつの間にか合流したマルハレータ殿下よりは死にそうな顔ですよ。
(フラメンシアちゃんはくろばら修行のやりなおしをいわれないように…)
(エリゼ宮におると机仕事ばかりなんですよ!)
いえ、机仕事はまだマシでっせ。
弟どもが受けとる授業内容によっては、わしらも生徒で参加させられとるやろが。
第一フラメンシア、お前、マドリードに戻ったら軍大学の卒業試験ちゃうんか…。
ええ、わしもフラメンシアも、学生身分を申し渡されとるのです…。
ちなみに妹のソフィー、鹿苑寮の連中と一緒に授業、受けてますよ。
ええ、楽しいことばかりではないベルサイユ暮らしなのです。
ですから弟ども。
べっぴんに囲まれておめこざんまいの暮らしさせたってんねんから、せめて学校くらいは出ろ、な!
そう…午前中いっぱい、わしらフランス王族はこぞって、死にそうな顔なのです。
ついでにイスパニア王族の1名と、痴女皇国皇族の1名も死にそうな顔です。
あまり死にそうじゃないのは球根詐欺の王族の方くらい、ですかね。
そして弟どもは昼食の後でお昼寝とかすると思うでしょ。
甘い甘い。
今度は体育実技とかで、騎士に鍛えられたり乗馬やったりしとるのです。
もしくは、本宮や小トレアノンの掃除の手伝いや田舎村の畑仕事のお手伝いとか、そしてベルサイユの慈善孤児院訪問とかサン=ドニ修道院やサン=ドニ愛染隣保会館の慰問とか、福祉関係のお仕事も結構あるんですよ?
ええ、こういうのって、ほんまは王妃や王女の仕事なんですけどね、わしとフラメンシアがね、アルト閣下やマルハレータ殿下に助けられつつもパパンのような国王の仕事も代行してますんでね。
お前らがわしらの代わりに女の仕事をやっとくれ。
これで、弟どもをこき使う口実にしております。
まぁ、わしらはエリゼ宮だけでなく、ルーブル宮に行って王国議会に出席したりとか、閣僚と打ち合わせたりとか、それなりに色々あるのです。
(おれは女なのにパパンのように働いておる…色気は、生活の色気はないのか!)
(テレーズ、辛いでしょうけど頑張るのよ…今のフランスはあなたが実質、国王のようなもの…)
(ママン。娘が可哀想に思えるんなら、金田から戻ってくるという選択、毛の一本ほどでいいんで、思ってもらえませんでしょうか)
(何を言うのですかテレーズ。もはや私は金田の田舎教会の単なる司祭マリーですよっ)
(うそつけ…ソフィーとフェルセンが育ったらモントリオールかケベックの基幹教会に戻るゆう話、聞こえてますわよ…)
ええ、近々、金田に赴任するというナポレオン・ボナパルトの補佐を言われとるらしいのです、うちのママン。
まぁ、娘の苦境に故郷へ戻るとかいう殊勝な考えをあの母に期待した私が愚かでした。
ぜってぇ、国力を蓄えたら金田を侵略さしてもらう。
そして、あの不肖のママンをギロチンにかけるのではなく、公開懲罰したる。
金田名産の砂糖かえでのシロップ漬けにして蜂の巣の近所に放置するとか、飢えた偽女種の群れの中に投じるか。
(テレーズ、あんたは中原龍皇国の鬼婦人か…)
失礼な。人豚にせんだけ、まだマシや思うてくれや。
それはともかく、ブルボン王家の家長であるわしと、妹のソフィー。
そして、フランス支部副支部長にしてヴァロワ王家の筆頭王女であるフラメンシアは、南欧行政局の副局長でもあります。
つまり、わしら姉妹とフラメンシア、アルト閣下とマルハレータ殿下ともども、夜会から逃げられんのです。
ですので、ほぼ毎晩、泣きながらドレスの着付けをマルハレータ殿下とフラメンシアに手伝ってもらってるアルト閣下ですけどね。
わたくしテレーズなんてね、もっと泣きたいんですよ。
ええ、あいつら弟どもも、お役目なのはわかってます。
わかってますけどね、小トレアノンとかアントワネット劇場とか、果ては夜の愛の神殿で愛の行為に絶賛体力消費中な上に、いちゃらぶの声が私らには聞こえるのですよ?
というかマルハレータ殿下とフラメンシアとアルト閣下が聞き耳立ててる内容がね、こっちに流れてくるんですよ。
ソフィーは済ました顔で流してやがりますが、この女は割と冷淡冷静です。
しかし、フランス王国の筆頭王女でありながら、浮いた話が浮かばないこのテレーズ。
弟どもがね、芸能人の卵とか、あのタレーランが手ぇ出しくさったほどの美人若妻とかね、その娘の忠実な女騎士とかね。
状況が状況だけに、おめこを控えろとか言えないのです。
(ねーさま、ジョセフにーさまやシャルルにーさま、詰め込みきょういくをされておるのですからこれくらいは大目にっておもうのですわ、わたくし…)
そうは言っても、辛いもんは辛いのよ、ソフィー…。
ええ、なんであの晩、わしもなんか縁をくれやとかアフロディーネ女官長に依頼せんかったのでしょうか。
(すみません、まず相手みつくろってください)
(テレーズ。うちの息子でよけりゃあ、お世話しますわよ)
(イザベルおばさまのとこの息子さんは遠慮します。あの子らに下心がないのはともかく、その母親に下心がありまくり。いくら南欧行政局長さまの息子さんといっても、このテレーズの婿にはちょっとご遠慮させて頂きたくっ)
(あなたの叔母として申しますけどね。あなた、アントワネットからも婿、そろそろ探しときやとか釘、刺されてませんか)
(ええ確かに。しかし、おばさまとこのお子様であれば、わしはまだ英国から婿をもらうことを選びます)
(フランシス…オリバー…うちの息子でドーバーの向こうに出せる子はいなかったかしら…いえ、あなた方やホレイショの子でもよいのですよ…)
(は。陛下の要望たれば)
(英国男子を見繕いましょう、なんならホレイショでも)
(クロムウェル卿。それするとエマ嬢に刺されるのは私なのでその案は海軍としては却下である)
(陸軍としては強く推奨する!)
ええ、なんか、ドーバーの向こうで勝手に決められても困るのです。
とりあえず、わしが学生の間くらいは。
…でないと、激務の合間を縫ってヴァンセンヌやブローニュはもちろん、偽女種劇場に通えんでしょうが!
------------------------------------------------
ふらめ「オチがひどいがな」
おすかー「殿下、よりによってヴァンセンヌやブローニュはもちろんですが、サン=ドニの偽女種演芸場はちょっと…」
てれこ「名前。それはともかく、私がサン=ドニに通うのは王が大衆演芸場に通うようなもんらしいです」
おすかー「つまり、王族がオペラ座はまだしもそういう下賤の場に顔を出すとか、あまつさえヴァンセンヌやブローニュで偽女種売春の覗きをしておるとか、一大醜聞…」
どろてあ「刺激的な光景が見れるのですよねぇ…」
ふらめ「テレーズ…覗き王女か、あんたは…」
てれこ「で、次回ですが、ちょっとフランスを離れた話になるかも知れません。未成年も読めるお話になるかも知れないと」
あると「おうじさまたちのえろえろなおはなしもかかれるかもしれないのです…」
他全員「ではまた、お目にかかりましょう…」
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