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欧州女形演芸場ものがたり -l'Okama -・1

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「ねぇテレーズ、あんたこれ真剣に実施するつもりなの…?」

何やら、ぱそこんに送られてきた図面やら地図やらを見てしかめ面をしておる、フラメンシア。

で、フラメンシアが見ておりますもの。

実のところは内務局と国土局の連名で我が南欧行政支局・フランス支部に送られて来た内緒の業務計画書とやらでして、同じものがわたくしテレーズの使っております、ぱそこんとやらにも送られて来ております。

そして、それを読んで目まいがしたのは事実。

ですので、フラメンシアに言い返します。

「私に言うな。それに、こんなことでわざわざオペラ・ガルニエを使える訳がないでしょ…」

「まぁ、テレーズ殿下の申される通りですわな…」

と、金田に赴任する事になったプロフェスール・マリーに代わって、フランス支部の後見者役でお越しのマルハレータ殿下も合意されるこの話、一体なにごとなのか。

で、この話をしておりますのは、エリゼ宮。

大トレアノン⬜︎
小トレアノン⬜︎
ベルサイユ宮殿
⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎|    |
====== コンコルド|ティルリー|ルーブル|
 エリゼ宮⬛︎| 広場  |宮殿  |宮殿  |
---------------------
セーヌ川   シテ島・ノートルダム大聖堂→
---------------------

本当ならベルサイユ宮殿の前庭が存在した位置に立っていた宮殿です。

しかし、元々は南にあったファサードを北側に向ける形で移築されておりますこともさりながら、窓ガラス1枚を割ることもなくそっくりそのまセーヌ河岸に移されてしまったのです。

目下のところは痴女皇国フランス支部の使用拠点として接収されておりまして、私も毎朝、ここに出勤とやらをする羽目になっております。

で、天下のフランス王ならば馬車でも仕立てて向かうところですが、目下、フラメンシアやマルハレータ殿下と一緒にぷじょーとかいう縫い機屋のこしらえたというケッタマシンに乗って通うのが通例です。

なぜならば…ベルサイユの裏門からすぐの場所…人間の足でも5分もかからないところにエリゼ宮も移築されておるからなのです…。

「くるまの使用許可は即位後だそうです…」

「とりあえず、マリアリーゼ陛下が置いてかれてるくるま、あれ基本的に即位後に乗って欲しいて言われてますけどな、それ以前に専用の運転技術がいるしろものばかりですやん…」

実はマルハレータ殿下、私たちのじどうしゃ運転の教官としてもお越しなのです。

本来ならばこの役目、プロフェスール・マリーがお務めになるはずだったのですけど、マリーセンセイは今、金田。

そこで、運転慣れしている幹部ということもあって、マルハレータ殿下がフランスにさまよって来られたようなのです。

「テレーズ殿下にまで、ワイがさまよえるオランダ王女と思われてる件!」

しかし、考えてみればそれだけ殿下が優秀な方だという事でしょう。

確か、痴女皇国世界出身者としては初めて、あのスケアクロウというひこうきの免状を下ろしてもらえたそうですし…。

で、アメリカ大陸から英国を経由して帰って来た私とフラメンシア。

こいつは人種的にはフランス人ですが、スペイン王室の娘です。

何といっても、今のイスパニア女王にしてフラメンシアのご母堂たるイザベル1世陛下、ご存知の通り本名はフランス読みだとエリザベート・デ・ヴァロワ…ヴァロワ王家の出なのです。

そして、何度も重ねて申し上げますが、ジョルジュ・アルベール・モーリス・ヴィクトール・バタイユ(Georges Albert Maurice Victor Bataille)というフランス人の変態男爵がフラメンシアの実の父親なのですっ。

こやつがイスパニア人の癖にフランス語混じりの聖院第二公用語で喋る癖があるのも、実のところはこの出自が原因なのです。

そう、こやつの姉であるクララ王女やカタリナ王女と違い、人種的にはフランス人なのです…。

まぁともかく、私たちはその、計画書とやらを写したがめんを仕舞い込むと、外出の支度をします。

ええ、わたくし、マルハレータ殿下の監督の下、くるまの運転を習う事を兼ねて出かけるのです。

そして、本当ならば私に運転を教える程度には技倆を持ち合わせておるというフラメンシアですが、お互いで「あいつに習うのは死んでも嫌」「あいつに教えるのは死んでも嫌」となっておりまして…。

そして、今から参りますヴァンセンヌ娯楽館への訪問に際して、オスカーはなぜか私に同行しないのですが、これにはちゃんとした理由があります。

で、少々話を飛ばしますが、昨今のフランス軍。

一旦はリストラクシュアシオン…皆様にわかりやすく申しますと、りすとらとやらを行なっております。

しかし、その場で再任官を志す者に対しては、聖母教会への尼僧登用試験を受けてもらうか、男性化復帰適性診察とやらを受診してもらうとなりました。

なぜ、尼僧なのか。

これは、例の女体化の雨を降らされた件が影響しております。

そして新生フランス国軍は聖女騎士団とされ、聖女ジャンヌ・ダルクの如くフランス国家と聖母への忠誠を誓う武装集団と定義されました。

この、聖女騎士団の編成については、私たちが北米大陸を視察した後に行なっております。

そして、目下のところ、オスカーを騎士団長として任じる形で再出発。

この段階で、フランス国内の聖母教会の尼僧で助祭以上…つまり、騎士研修も受けた者については聖女騎士団へ自動的に編入され、教会所轄管区の治安維持に寄与することとなりました。

同様に、警察組織も一旦は解体され、聖女騎士団の警務騎士資格者が任務を代行することにされております。

で、聖女騎士団の本拠地ですが、マドレーヌ寺院をこれに充てることになりました。

厳密に言えば、マドレーヌ寺院の隣の聖女騎士団警務本部・軍務本部となります。

大トレアノン⬜︎  ⬜︎→マドレーヌ寺院
小トレアノン⬜︎  ⬜︎→ガルニエ宮
ベルサイユ宮殿   (オペラ・ガルニエ)
⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎|    |
===== コンコルド|ティルリー|ルーブル|
 エリゼ宮⬜︎| 広場  |宮殿  |宮殿  |
---------------------
セーヌ川   シテ島・ノートルダム大聖堂→
--------------------

つまり、私どもの本拠であるエリゼ宮やヴェルサイユにも程近い場所に、軍と警察の本拠が移築されたとお考えください。

この組織変更、実はれんぽう世界のフランス共和国の協力あっての、ものだね。

なんとジョスリーヌ団長の指揮下で、予め決められていた場所に一瞬で何百もの聖母教会の建物が出現するか、さもなくば救世主教会を接収して聖母教会に改築する作業が終わってしまったのです…。

そして、間髪を得ずに、聖母教会尼僧として痴女種兵士を送り込み、女体化の雨で混乱するフランス各地を一気に制圧するというとんでもない作戦、パリで私たちが保護されている間に起きていたのです…。

(ま、人間をダメにするお酒、箱1つ程度のお仕事ですわな、うちにかかれば)

つまり、エマニエル部長がその本来のお力の一端を示されたということですね。

そして、反抗する警察官僚や軍人は片端から精気を吸われて動けなくされた上で、一瞬にしてノートルダム寺院地下の苗床送りにされておるそうです…。

で、本来ならば国軍が消滅したも同然のこのフランス王国、なぜ、周辺国が手出しをしなかったのか。

当時の時点で既に神聖ローマ帝国はドイツ・オーストリア二重帝国とされ、ハンガリーは東欧行政局管内へと移管されております。

そして、人魚姫国から北は北欧支部によって制圧済み。

欧州地区本部が所在するスイスはもちろん、当時の南欧支部もイタリア支部も、痴女皇国の指揮下ですから国境の安定を図れども侵略なぞするはずがありません。

唯一、動きそうな戦力と傾向があった英国ですら、痴女皇国支部と英国国教会が所在しますから、痴女皇国の意向を無視してフランスを侵略することは不可能な状況だったのです。

そう…まさに無血宗教革命とでもいうべきこの、一瞬の侵攻によって、フランス王国は実質的に聖母教会が支配する国になってしまったのです…。

で、もっと重要な組織改革、私とフラメンシアがアメリカと金田から戻った後で行われました。

それまで、フランス王国内で最も高い地位であった大司教座が存在するノートルダム聖母教会の更に上位に、我がベルサイユの中の一室である救世主教礼拝堂改め、ヴェルサイユ聖母教会が座することになったのです。

それと、旧・ロレーヌ公国領土を主体とする中仏ストラスブール支部。

フランス王国の領土に編入され、アルザス・ロレーヌ行政県を所轄する支部とされたのです。

で、フランス王国は痴女皇国の制圧以降はフランス支部とされておりましたが、このような組織変更を受けて少しばかりその地位が上がったそうです。

南欧行政局(本部・マドリード)
 →イザベル局長

フランス広域支部
 →マルハレータ暫定支部長

スペイン広域支部
 →フラメンシア暫定支部長

金田広域支部
 →マリアンヌ・ド・ロレーヌ暫定支部長

海綿菓子支部
 →ジョアン4世支部長※

尻出帝国支部>南米行政局に順次編入
 →ペドロ支部長※

※(偽女種が支部長なのは海綿菓子国系支部くらいだそうです)

つまり、どちらかというとフランス王国に対して中立か、もしくはあまり発展して欲しくない部類の人選でマルハレータ殿下が選ばれたとお考え下さい。

(まぁ、ロッテルダムやハーグ、そして通路国になりますけどアントワープとかの港、せいぜい活用してもろたら愚妹にもちょっとはゼニ、回りますさかいにな…)

でまぁ、私の右横にマルハレータ殿下がお座りになっての、うんてん練習。

マリアリーゼ陛下が都合なさったお車にて、わたくしテレーズは練習しとるのです、しとるのですが。

「ま、まぁ…馬力あらへんのはわかるから、慎重に運転してもらえたら…」
https://x.com/725578cc/status/1856559508933488822

何が言いたいのか。

まず、私が座っている場所、目の前に丸い輪っかがあるのですが、問題はその先です。
<i905436|38087>

つまりこの車、回転灯籠とかいう燭台まがいの仕掛けで、今の速さを御者に知らせてくるのですけどね、それがもう見づらいのなんのって。
<i905435|38087>

しかも、普通の車とは前方を照らしたり右や左に曲がるぞという合図を出すの、さおではなくぼたんを押すのです。

つまり、他の国のくるまだけでなく、れんぽう世界で作られた他のフランス生まれのくるまたちとも違った、変な御者席なのです。

ええ、あの湯田屋のハゲ頭めが、なんでこんな車にした、と申したくなります。

(テレーズちゃん…その車の中や外を考えて絵にしたのはイタリア人なんだ…)

(となると、文句を言うべきはまず、ベラ子陛下かマダム・ルクレツィア)

(言いがかりですわ!)

(確かにマルチェロ・ガンディーニって、あのカウンタックを考えた人だそうですけど…)

まぁ、えんやとっとどっこいしょと動かしてる分には普通のくるまだっちゅうのは、私にもわかります。

このくるま、パパンのお葬式の時に使われて今はベルサイユのガラージュに納まっている高価そうなれんちゅうとは全く違うのです。

もう、見るからに第三身分のれんちゅうに配るために考えよったな、とは私にもわかりますよ。

しかし、言い換えてみれば、第三身分の者どもでも、おとな4人または家族全員を乗せてバカンスに行ったり、あるいは日常のお使いにこういうもんを使える程度には、連邦世界のフランスはぜいたくができるようなのです。

下手するとベルサイユのパパンやママンのお部屋とか、客間よりもふっかふかですよ、この椅子。

石畳の道でもごっつんゴンゴンという衝撃を受け止めているのは明らかですし、内装についてもですね、それはそれはもう、安もんくっさいのさえ我慢すりゃあ、明るく楽しい庶民の家族とやらの良い思い出作りができる事でしょう。

安もんは安もんでも、安もんなりに色遣いとか考えてますし、そこそこ大きいせいか、後ろのいすの足元も見た目の割には広々としとります。

欠点は、人でいうと準備たいそうとやらが必要なこと、くらいですかね。

ええ、この車、御者と助手の間の狭いすきまに立ってる短いればーを動かすと、車体が持ち上がったり下がったりしよるのです。

第三身分の大衆が手にするくるまとしては、かなーりぜいたくな装備ではないでしょうか。

それに、わしら4人姉妹兄弟、いっぺんに運ぶにはこれ、充分すぎんかと思ったりもしとるのです。

確かに、わしらの誰かが御者役を務めなくてはなりませんが、お隣さん。

あの、お隣さんのくにでは、女王や王が軍隊に入ったり、自分でこういう馬なし馬車を動かして狩りに行ったり別荘の周りで遊んどるらしいではないですか。

そのひそみにならいますとですね。

マリアリーゼ陛下が妹君や痴女皇国の家臣にもしつけておられるそうですけど、ある程度のこたぁ、自分でできるようにしとけという方針とも合うと思うのですよ、私らが、くるまの運転を習うのも。

要はわたくしテレーズ、イタリア人が見た目を考えよったというこのフランスらしく無さげな外づらのこのシトロエンBXとかゆうくるま、気に入ったのです。

(ただ…欧州車の常で、リクライニングはめいっぱい倒れないのです…)

(ベラ子陛下とか後ろのフラメンシアみたいに車内でオメコする趣味はありまへん、今んところは)

(テレーズちゃん、辛辣になりましたね…)

(なんかエゲレスで会うた、あの女王のおばちゃんに毒されたんですかね…いえ、私自身も、ああまで一見は丁寧で物腰柔らかそうに見えて実際は尊大で偉っそうなおばちゃんというのも、それはそれでありかなぁとも)

(確かにあの家系はああいう手合いが多いんだよ…そういう風に教育されているしな…)

(だけどねーさん、テレーズちゃんまで変態病に汚染させる気ですか…)

(諦めろ…大体、野獣号だって実のところはドイツ・ポストモダン風味な内装を蹴られて泣く泣く英国帆船風味に仕上げた悲しい事実があるんだぞ…)

そういえば、あの船、どことなく英国趣味って雰囲気でしたね。

まぁ、英国のれんちゅうの買春の趣味とかを見聞しておりまするに、やはり本国ふうではなく、フランスらしいもんを、という考えで飲み食いしたり女遊びをしとるようなのです。

それと、マリアリーゼ陛下に教えられたこと。

かつての英国王室や貴族ども、フランスかぶれの傾向がそれはそれは強かったそうでして、フランスの料理人を雇うのが富の象徴だったり、あえてイングランド語やスコッツ語にゲール語ではなく、フランス語で会話するのが宮廷の作法だったりなどなど。

(密かにフランスへのコンプレックスが強いんだよ…これがさ、パリを灸場やジョクジャカルタの南街区のように統制されたおめこ都市にせずに男も残したり性別戻しに応じるように指示した理由なんだ…ほら、タレーランさんや料理人のカレームさんだって、女になってなかったろ…)
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