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アルトのアメリカ大冒険 - Route 69 -4.2
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メキシコ・アメリカ国境の町であるシウダード・フアレス。
国境を挟んですぐの場所にアメリカ側の都市であるエルパソが存在します。
この町、実は近年までアメリカ側と同様にエルパソを名乗っていた時期があるそうです。
と、私の隣に立つフランシスカ・中米行政局長兼「連邦世界の」メキシコ合衆国総統+痴女皇国メキシコ支部長が教えて下さいます。
「で…なんですかこの車。ハンドルが右側なのですが」
「私も知りませんよ…アメリカ経由で持ち込まれたそうですけど…」
ええ、目の前にある白い車を引き取りに来たのです、私とジェニファーちゃん。
そして、ジェニファーちゃんがもんのすっごく不満そうな顔をしている理由、私は知っています。
で、ですねぇ。
これから痴女皇国世界の北米…それも、このわたくし室見理恵が北米地区の視察を行うためのアシとして持ち込まれるであろう車なのですが、主な運転手役たるジェニファーちゃんの強い強い希望でアメリカ製のフルサイズバンまたはミニバンにして欲しいという要望、痴女皇国NY支部には連絡が行っていたはずなのです。
しかし、アメリカ合衆国はエルパソ方面から来た貨物列車のコンテナの封印を係員が解いた後で現れたこの車。
(昨今では貧富格差が一層激しくなったアメリカ側からの密入国者すら少なくないと聞きますから、厳重な検査や封印はやむを得ないとは思いますけど…)
(痴女種が検査したら一発なんですけどね。現実にメキシコ側からの密入国、今やほぼ0件にまでなってる訳ですし)
まぁともかく、出て来た車を見た瞬間、ベラちゃんがあれ?という顔をしたのです。
続いて、車には多少詳しいフランシスカさん…そして北米市場でそれなりに売れて知名度もある、おっさん自動車のエンブレムを見た瞬間にジェニファーちゃんがおいおいという顔をしたのです。
ええ、出て来たのはおっさん自動車の古ぼけたミニバンです。
つまり、日本車です。
「確かこのクルマ、アメリカで売ってなかったのデハ…」
「メヒコオッサンの工場で作ってるものなら、何もアメリカで入手する必要はありませんしね…」
そう、昨今ではアメリカ監獄社や米国おっさん自動車といった日本車メーカーの現地法人、大地震のあとの救済措置という意味合いもあって、治安が劇的にカイゼンされたメキシコに工場を移転する動きすらあるのですよ…。
(メヒコだと労働力が安価な上に、今やウチの提供する労働者、組合がどうのとか言い出さない部類ですからね…ふふふ)
(UAWもカンショウが困難ですからねぇ、今のメヒコには…)
そういう裏事情話はともかく、なんでベラちゃんがここにおるのか。
「どうせならエログランドにしてあげましょうよ…ねーさん…なんでこんなもんを…」
まず、引き取りに来た面子の中には、車の手配に口を挟んでもらった関係でベラちゃんも混ざっていたのです。
そして、おっさん自動車なら北米おっさんの工場で作られたものもあるしと車内の検分を始めたのですがね。
日本車であるどころか、車内には漢字表記も見える、完璧なまでに右ハンドルの日本仕様だったのです…。
「これ…メヒコでもナンバーつけて走らせるんですか…」
ええ、フランシスカさんも呆れ顔。
そして、私はベラちゃんがここに来ていた理由を悟りました。
とりあえずこのメンツの中で右ハンドルの、それも結構大きめのミニバンを運転できるのはベラちゃん、次いでフランシスカさんとなるからです。
ええ、これ、幅と長さはダンケ号の5ナンバー版より大きいそうです。
確かに我々の要望である、6人から7人の人間を乗せてアメリカ大陸を移動できる車、という条件は満たせそうなのですが。
ううむ。
しかし、このボロっちい中古ミニバンで北米大陸を…と思っておりますと。
(道中に聖母教会がいくつも出来つつありますから燃料補給は可能です。何より痴女皇国世界では南米縦割街道がエルパソから更に北へと伸ばされているじゃないですか…)
あ。
失念しておりました。
そして、その南米縦割街道は道の名前を変えてエルパソから、更にアメリカ合州国の北部へと向かって砂漠や草原を突っ切っておるはずなのです…。
うぬ。
この私ともあろう者が。
ただ、それを差し引いても車のボロさがぁっ…と思っておりますと、ピンクの光がその車を包みます。
ええ、エマちゃんが手助けしてくれたようです。
(工場出荷時に戻してます。あとそれ、エンジンが2.5Lのガソリン4亀頭でっか…おっさん自動車純正オイルの5W-30でいけますな…ええとね理恵さん、1000キロ走った時点で心話で連絡貰えますか。今そのミニバン、実質的な走行距離が10キロ未満の新車状態なんで…一応は慣らし運転をやって欲しいんですわ)
ふむふむ。
そんなに大層な車とも思えませんが、とりあえずはそういうものらしいのです。
(それと、ナビですけど連邦世界のメキシコに対応したDVDディスクが入ってますさかいな、痴女皇国世界に行ったら必ずグローブボックスの中のアメリカ用って書かれとるDVDと入れ替えてください…)
(そういうところの手回しがいいなら、いっそアメリカ製の車にしたげてよ…)
(なんかこれで行けいう話がありましてな…ちなみにその車、天の声も狙ってた時期があるそうですわ)
おいっ。
どこからの差金でこんな車になったのか、なんとはなく読めた気もしますが、とりあえず新車同然となって輝いているその車を走らせてみることにしましょう。
(ガソリンはレギュラーでいけます…インパルのECUに交換したり、3.5のV6やとハイオク仕様ですけどな…)
で、エマちゃんから鍵を転送で貰ったらしいベラちゃんですが。
「エマ助、これどうやって開けるのよ…監獄車みたいに近づくだけで開けてくれたりとか、ないの…?」
(古い車ですからな。ダァハンドルのとこの黒いボタンを押してもろたら開くはずですわ。で、猿人始動ですけど…)
どうも、今時のおっさん自動車の車とまた違う操作を要求されるようです。
(そもそも鍵の形状が違います。今時のおっさんならラグビーボール型の鍵が主流のはずなのですが、これは見ての通りにカードキー風味…で、エマ助、何よこれ…スタートボタンどこよ…)
(鍵差し込んで回す車と同じですがな。キーシリンダーの位置にある回転スイッチ、鍵の要領で捻ってエンジンかけてくらはい…)
で、エアコンの操作とかナビの操作方法をいちいち聞いているベラちゃんですが、理由はあります。
https://x.com/725578cc/status/1828292036614836609
https://x.com/725578cc/status/1828293090043728094
この車、ベラちゃんの乱暴ルギーニの対極にあるのです。
ベラちゃんの車は阿部んたでも売る巣でも、エアコンやナビ、そしてオーディオはボイスコントロールまたは画面を触って操作するのが基本だそうです。
しかし、この車はその、ナビ画面の手前にあるスイッチ群が全てなのだそうです…。
(オーディオとクルーズコントロールはハンドルのボタンでいじれるようになってるみたいですけど、痴女皇国世界でラジオは聞けませんしね…)
(この古さからすると、メディアウォッチはもちろん、スマホとの連携操作すらできない可能性があるわね…)
ほんとに、なんでこんな車にしたのでしょうか。
(ただ…利点はありますね。やってみないと分かりませんが、車内はそこそこの広さがありますから、おめこできると思いますよ)
…このエロ皇帝、考えが行き着くところはそこなのでしょうか。
そう思った瞬間、我々の周囲の光景が一変します。
ええと、私には見覚えがありますよ。
そして、フランシスカさんも、知っているはず…いえ、フランシスカさんの服装が一変しています。
具体的には、目のところを隠すマスクというか覆面をつけておられます。
そして、さっきまでの「スカートの丈以外は」大人しいスーツ姿から一転、ど派手な赤白緑のハイレグ衣装に。
で、それが痴女皇国世界の女裂振珍帝国の正装の一つであることを私は知っています。
更に、そのフランシスカさんの傍に立つ、二人の少年。
ふたりとも長髪で、混血っぽい肌の色と顔立ち。
そして二人とも助平褌と言われる偽女種または奉仕少年用のTバック下着姿なのですが、その前が異様なまでに膨らんでいるのです。
特にドミンゴくんのそれは、金色の助平褌からはみ出さんばかり。
いっそのこと、出しておいてもいいのではとも思えます…私たちが痴女皇国世界へ転移されたのは間違いありませんし。
で…これも、その理由を私は知ってるんですよね…。
(本当はビエルネを連れて来たかったのですけどね…フライデイしか空いてなかったのですよ…)
種を明かせば、赤白緑の助平褌の子がフランシスカさんとビエルネくんの息子さんであるフライデイくん。
そして、金色の助平褌の子がビエルネくんとディアネ(ディアナ)大司教との間のお子さんのドミンゴくんです。
で、なじぇにこの二人がいるのか。
「という訳で私の本体…女裂振珍帝国の方でご案内をば」
つまり、フランシスカさんは連邦世界における痴女皇国メキシコ支部長の執務もありますので、私同様、連邦世界に分体を出してもらっている立場なのです。
いえ…時々は入れ替えておられるようですが、本体がメキシコ合衆国の方でしたかね。
そして、黒人混血少年の二人が連れて来られているのもさりながら、ここはどこかという説明をまず、させて頂きましょうか。
まず、痴女皇国世界のエルパソですが、現在のところは米大陸統括本部の統治下に置かれている「アメリカ合州国」と女裂振珍帝国との間の国境都市になっています。
しかし、連邦世界と大きく違う点があります。
それは、アメリカ側の貨物駅の場所と、規模。
そして国境を通過する南米縦割街道などがリオグランデ川を渡る橋の規模。
-----エルパソ市(アメリカ・女裂振珍)略図------------
アメリカ合州国ニューメキシコ州
|貨 物||トラック |河底トンネル
|ヤード||ターミナル| ↑
|| || ||
------------------------------------------------
|| || リオグランデ川 ||
------------------------------------------------
|| || ||
鉄道は↓ティノチティトラン方面へ
道路は南米縦割街道他へ
女裂振珍帝国エルパソ国境市
------------------------------------------------
お分かりでしょうか。
現時点では北米中西部の原生草原地帯や砂漠地帯の開発、まだまだこれからです。
そして、東南部部の平原などでは農耕もしていた嘘つかない族ですが、基本は狩猟民であり「畑作など狩りの腕前が劣っていると自ら言っているようなものではないか」などと農業主体の生活をしている部族をあざけるような考えをする者までが少なくなかったようなのです…。
ですが、痴女皇国の女体化作戦によって、こうした男尊女卑的な考え方に待ったがかかりました。
そして、痴女皇国流の統治や聖母教会の浸透を図るためにも、アメリカのすぐ下にある女裂振珍から食料や生活物資を支援するためのインフラ整備工事が行われたのです…。
つまり、このエルパソの街の規模や貨物取扱施設の規模、連邦世界のエルパソと真逆のようなものなんですよ…。
(アメリカよりも我がメヒコの方が富みつつあるのは連邦世界も同様ですけど、こちらの方がより顕著ですからねぇ、南北逆転傾向…)
そう、連邦世界だと大規模な農場開発を行って「世界の食料庫」と言われるまでに広大な農地や牧地が広がるアメリカ中部~南部ですけど、痴女皇国世界の北米大陸では地下水源も含めた埋蔵資源の不足が指摘されたのです。
そこで、綿花や牧畜以外の食糧生産規模を現地の人口に見合った程度に抑えるように開発程度を制限する一方、農産地から遠いこのニューメキシコから北のグレートプレーンズに展開する嘘つかない族のために、中米または南米から麦やとうもろこしにお米、そして木材などを輸出する流れが企画された結果が、このエルパソから「北に向かって物を送り出す」ための土地構造なのです。
(開発が進めば連邦世界同様に逆の流れ…アメリカからの物資輸送にも対応する土地や道路・線路の準備工事も終えていますけどね)
ええ、わたくし室見が、このエルパソの街について知った顔であるのもやむを得ないことなのです。
何せ、ここの街と南北の道路や線路建設のために、何度かはこの街に来てるのですから…。
で、現状ではティノチティトランの先の破膜無生まで、貨物主体ですが鉄道を敷いています。
そして南米縦割街道も。
もっとも、鉄道と道路は中米地区の熱帯から亜熱帯地帯で産出する木材を北米に送り込むのが主な目的です。
(これ、カリブ沿岸とアメリカ大陸西側にまともな港を作れる場所が少ないせいもあるのですよね…)
実は、アルゼンチンチンや尻出国から運ばれた冷凍肉だの大豆だの麦だのとうもろこしだの。
カリブ海側の破膜無生運河入口であるコロンの港に下ろしておりまして、そこから運河の下をくぐるトンネルによって北側に運ばれます。
そして、破膜無生運河の西側入口であるパナマ市の方にも同様の河底トンネルが存在します。
で、パナマの東西から来た道路と鉄道は、南米縦割街道並びにメキシコ・マヤ縦断鉄道としてティノチティトランの西側を通ってこのエルパソまで来るわけです。
(エルパソのアメリカ側で、搬入された貨物を仕向地に仕分けしたり積み替えたりする必要があるんで…)
(向こうはとにかく広いですからねぇ…)
それと、リオグランデ川。
木材を運ぶ10両連結のロードトレインの荷重に耐える橋をかけるよりも、河底トンネルの下り坂と登り勾配を通す方がよかろうとなりまして、河底トンネルについてはロードトレイン専用に限りなく近い構造です。
で、メキシコ側からロードトレインを運転して来たドライバーは、メキシコ側で車を降りてしまうのです。
そして、ロードトレインは、河底トンネル内は無人状態…自動運転で走行することになります。
で、アメリカ側の積み替えステーションに入ると、そこで木材を取り卸して、再び自動運転によって帰路につくのです。
貨物列車についても同様で、国境区間だけを牽引する遠隔操作可能な無人機関車が中継します。
で、現在はあまり多くはないのですが、女裂振珍帝国からアメリカ合州国に提供される少年移民団を中心とした国境通過旅客は、今のところはバスまたは専用客車で国境を超えます。
それと、普通のトラックで運ばれた荷物については、国境道路の防疫検問所を通過することになるのです…。
なんでこんな面倒なことになってるのか。
連邦世界のエルパソではメキシコを経由する密入国者の対策で厳しくなっているそうですが、こちら痴女皇国世界のメキシコ帝国、弱毒型とは言えど魔毒汚染地帯です。
ええ…魔毒対策で、検疫を強化している結果が、この国境の現状なのですよ…。
「という訳で、お越しの皆様は魔毒対策の必要を感じるのはセニョリータ・ジェニファーくらいだと思いますが、とりあえず魔毒抜き処理のために、私の子供や孫に来てもらったのです…」
国境を挟んですぐの場所にアメリカ側の都市であるエルパソが存在します。
この町、実は近年までアメリカ側と同様にエルパソを名乗っていた時期があるそうです。
と、私の隣に立つフランシスカ・中米行政局長兼「連邦世界の」メキシコ合衆国総統+痴女皇国メキシコ支部長が教えて下さいます。
「で…なんですかこの車。ハンドルが右側なのですが」
「私も知りませんよ…アメリカ経由で持ち込まれたそうですけど…」
ええ、目の前にある白い車を引き取りに来たのです、私とジェニファーちゃん。
そして、ジェニファーちゃんがもんのすっごく不満そうな顔をしている理由、私は知っています。
で、ですねぇ。
これから痴女皇国世界の北米…それも、このわたくし室見理恵が北米地区の視察を行うためのアシとして持ち込まれるであろう車なのですが、主な運転手役たるジェニファーちゃんの強い強い希望でアメリカ製のフルサイズバンまたはミニバンにして欲しいという要望、痴女皇国NY支部には連絡が行っていたはずなのです。
しかし、アメリカ合衆国はエルパソ方面から来た貨物列車のコンテナの封印を係員が解いた後で現れたこの車。
(昨今では貧富格差が一層激しくなったアメリカ側からの密入国者すら少なくないと聞きますから、厳重な検査や封印はやむを得ないとは思いますけど…)
(痴女種が検査したら一発なんですけどね。現実にメキシコ側からの密入国、今やほぼ0件にまでなってる訳ですし)
まぁともかく、出て来た車を見た瞬間、ベラちゃんがあれ?という顔をしたのです。
続いて、車には多少詳しいフランシスカさん…そして北米市場でそれなりに売れて知名度もある、おっさん自動車のエンブレムを見た瞬間にジェニファーちゃんがおいおいという顔をしたのです。
ええ、出て来たのはおっさん自動車の古ぼけたミニバンです。
つまり、日本車です。
「確かこのクルマ、アメリカで売ってなかったのデハ…」
「メヒコオッサンの工場で作ってるものなら、何もアメリカで入手する必要はありませんしね…」
そう、昨今ではアメリカ監獄社や米国おっさん自動車といった日本車メーカーの現地法人、大地震のあとの救済措置という意味合いもあって、治安が劇的にカイゼンされたメキシコに工場を移転する動きすらあるのですよ…。
(メヒコだと労働力が安価な上に、今やウチの提供する労働者、組合がどうのとか言い出さない部類ですからね…ふふふ)
(UAWもカンショウが困難ですからねぇ、今のメヒコには…)
そういう裏事情話はともかく、なんでベラちゃんがここにおるのか。
「どうせならエログランドにしてあげましょうよ…ねーさん…なんでこんなもんを…」
まず、引き取りに来た面子の中には、車の手配に口を挟んでもらった関係でベラちゃんも混ざっていたのです。
そして、おっさん自動車なら北米おっさんの工場で作られたものもあるしと車内の検分を始めたのですがね。
日本車であるどころか、車内には漢字表記も見える、完璧なまでに右ハンドルの日本仕様だったのです…。
「これ…メヒコでもナンバーつけて走らせるんですか…」
ええ、フランシスカさんも呆れ顔。
そして、私はベラちゃんがここに来ていた理由を悟りました。
とりあえずこのメンツの中で右ハンドルの、それも結構大きめのミニバンを運転できるのはベラちゃん、次いでフランシスカさんとなるからです。
ええ、これ、幅と長さはダンケ号の5ナンバー版より大きいそうです。
確かに我々の要望である、6人から7人の人間を乗せてアメリカ大陸を移動できる車、という条件は満たせそうなのですが。
ううむ。
しかし、このボロっちい中古ミニバンで北米大陸を…と思っておりますと。
(道中に聖母教会がいくつも出来つつありますから燃料補給は可能です。何より痴女皇国世界では南米縦割街道がエルパソから更に北へと伸ばされているじゃないですか…)
あ。
失念しておりました。
そして、その南米縦割街道は道の名前を変えてエルパソから、更にアメリカ合州国の北部へと向かって砂漠や草原を突っ切っておるはずなのです…。
うぬ。
この私ともあろう者が。
ただ、それを差し引いても車のボロさがぁっ…と思っておりますと、ピンクの光がその車を包みます。
ええ、エマちゃんが手助けしてくれたようです。
(工場出荷時に戻してます。あとそれ、エンジンが2.5Lのガソリン4亀頭でっか…おっさん自動車純正オイルの5W-30でいけますな…ええとね理恵さん、1000キロ走った時点で心話で連絡貰えますか。今そのミニバン、実質的な走行距離が10キロ未満の新車状態なんで…一応は慣らし運転をやって欲しいんですわ)
ふむふむ。
そんなに大層な車とも思えませんが、とりあえずはそういうものらしいのです。
(それと、ナビですけど連邦世界のメキシコに対応したDVDディスクが入ってますさかいな、痴女皇国世界に行ったら必ずグローブボックスの中のアメリカ用って書かれとるDVDと入れ替えてください…)
(そういうところの手回しがいいなら、いっそアメリカ製の車にしたげてよ…)
(なんかこれで行けいう話がありましてな…ちなみにその車、天の声も狙ってた時期があるそうですわ)
おいっ。
どこからの差金でこんな車になったのか、なんとはなく読めた気もしますが、とりあえず新車同然となって輝いているその車を走らせてみることにしましょう。
(ガソリンはレギュラーでいけます…インパルのECUに交換したり、3.5のV6やとハイオク仕様ですけどな…)
で、エマちゃんから鍵を転送で貰ったらしいベラちゃんですが。
「エマ助、これどうやって開けるのよ…監獄車みたいに近づくだけで開けてくれたりとか、ないの…?」
(古い車ですからな。ダァハンドルのとこの黒いボタンを押してもろたら開くはずですわ。で、猿人始動ですけど…)
どうも、今時のおっさん自動車の車とまた違う操作を要求されるようです。
(そもそも鍵の形状が違います。今時のおっさんならラグビーボール型の鍵が主流のはずなのですが、これは見ての通りにカードキー風味…で、エマ助、何よこれ…スタートボタンどこよ…)
(鍵差し込んで回す車と同じですがな。キーシリンダーの位置にある回転スイッチ、鍵の要領で捻ってエンジンかけてくらはい…)
で、エアコンの操作とかナビの操作方法をいちいち聞いているベラちゃんですが、理由はあります。
https://x.com/725578cc/status/1828292036614836609
https://x.com/725578cc/status/1828293090043728094
この車、ベラちゃんの乱暴ルギーニの対極にあるのです。
ベラちゃんの車は阿部んたでも売る巣でも、エアコンやナビ、そしてオーディオはボイスコントロールまたは画面を触って操作するのが基本だそうです。
しかし、この車はその、ナビ画面の手前にあるスイッチ群が全てなのだそうです…。
(オーディオとクルーズコントロールはハンドルのボタンでいじれるようになってるみたいですけど、痴女皇国世界でラジオは聞けませんしね…)
(この古さからすると、メディアウォッチはもちろん、スマホとの連携操作すらできない可能性があるわね…)
ほんとに、なんでこんな車にしたのでしょうか。
(ただ…利点はありますね。やってみないと分かりませんが、車内はそこそこの広さがありますから、おめこできると思いますよ)
…このエロ皇帝、考えが行き着くところはそこなのでしょうか。
そう思った瞬間、我々の周囲の光景が一変します。
ええと、私には見覚えがありますよ。
そして、フランシスカさんも、知っているはず…いえ、フランシスカさんの服装が一変しています。
具体的には、目のところを隠すマスクというか覆面をつけておられます。
そして、さっきまでの「スカートの丈以外は」大人しいスーツ姿から一転、ど派手な赤白緑のハイレグ衣装に。
で、それが痴女皇国世界の女裂振珍帝国の正装の一つであることを私は知っています。
更に、そのフランシスカさんの傍に立つ、二人の少年。
ふたりとも長髪で、混血っぽい肌の色と顔立ち。
そして二人とも助平褌と言われる偽女種または奉仕少年用のTバック下着姿なのですが、その前が異様なまでに膨らんでいるのです。
特にドミンゴくんのそれは、金色の助平褌からはみ出さんばかり。
いっそのこと、出しておいてもいいのではとも思えます…私たちが痴女皇国世界へ転移されたのは間違いありませんし。
で…これも、その理由を私は知ってるんですよね…。
(本当はビエルネを連れて来たかったのですけどね…フライデイしか空いてなかったのですよ…)
種を明かせば、赤白緑の助平褌の子がフランシスカさんとビエルネくんの息子さんであるフライデイくん。
そして、金色の助平褌の子がビエルネくんとディアネ(ディアナ)大司教との間のお子さんのドミンゴくんです。
で、なじぇにこの二人がいるのか。
「という訳で私の本体…女裂振珍帝国の方でご案内をば」
つまり、フランシスカさんは連邦世界における痴女皇国メキシコ支部長の執務もありますので、私同様、連邦世界に分体を出してもらっている立場なのです。
いえ…時々は入れ替えておられるようですが、本体がメキシコ合衆国の方でしたかね。
そして、黒人混血少年の二人が連れて来られているのもさりながら、ここはどこかという説明をまず、させて頂きましょうか。
まず、痴女皇国世界のエルパソですが、現在のところは米大陸統括本部の統治下に置かれている「アメリカ合州国」と女裂振珍帝国との間の国境都市になっています。
しかし、連邦世界と大きく違う点があります。
それは、アメリカ側の貨物駅の場所と、規模。
そして国境を通過する南米縦割街道などがリオグランデ川を渡る橋の規模。
-----エルパソ市(アメリカ・女裂振珍)略図------------
アメリカ合州国ニューメキシコ州
|貨 物||トラック |河底トンネル
|ヤード||ターミナル| ↑
|| || ||
------------------------------------------------
|| || リオグランデ川 ||
------------------------------------------------
|| || ||
鉄道は↓ティノチティトラン方面へ
道路は南米縦割街道他へ
女裂振珍帝国エルパソ国境市
------------------------------------------------
お分かりでしょうか。
現時点では北米中西部の原生草原地帯や砂漠地帯の開発、まだまだこれからです。
そして、東南部部の平原などでは農耕もしていた嘘つかない族ですが、基本は狩猟民であり「畑作など狩りの腕前が劣っていると自ら言っているようなものではないか」などと農業主体の生活をしている部族をあざけるような考えをする者までが少なくなかったようなのです…。
ですが、痴女皇国の女体化作戦によって、こうした男尊女卑的な考え方に待ったがかかりました。
そして、痴女皇国流の統治や聖母教会の浸透を図るためにも、アメリカのすぐ下にある女裂振珍から食料や生活物資を支援するためのインフラ整備工事が行われたのです…。
つまり、このエルパソの街の規模や貨物取扱施設の規模、連邦世界のエルパソと真逆のようなものなんですよ…。
(アメリカよりも我がメヒコの方が富みつつあるのは連邦世界も同様ですけど、こちらの方がより顕著ですからねぇ、南北逆転傾向…)
そう、連邦世界だと大規模な農場開発を行って「世界の食料庫」と言われるまでに広大な農地や牧地が広がるアメリカ中部~南部ですけど、痴女皇国世界の北米大陸では地下水源も含めた埋蔵資源の不足が指摘されたのです。
そこで、綿花や牧畜以外の食糧生産規模を現地の人口に見合った程度に抑えるように開発程度を制限する一方、農産地から遠いこのニューメキシコから北のグレートプレーンズに展開する嘘つかない族のために、中米または南米から麦やとうもろこしにお米、そして木材などを輸出する流れが企画された結果が、このエルパソから「北に向かって物を送り出す」ための土地構造なのです。
(開発が進めば連邦世界同様に逆の流れ…アメリカからの物資輸送にも対応する土地や道路・線路の準備工事も終えていますけどね)
ええ、わたくし室見が、このエルパソの街について知った顔であるのもやむを得ないことなのです。
何せ、ここの街と南北の道路や線路建設のために、何度かはこの街に来てるのですから…。
で、現状ではティノチティトランの先の破膜無生まで、貨物主体ですが鉄道を敷いています。
そして南米縦割街道も。
もっとも、鉄道と道路は中米地区の熱帯から亜熱帯地帯で産出する木材を北米に送り込むのが主な目的です。
(これ、カリブ沿岸とアメリカ大陸西側にまともな港を作れる場所が少ないせいもあるのですよね…)
実は、アルゼンチンチンや尻出国から運ばれた冷凍肉だの大豆だの麦だのとうもろこしだの。
カリブ海側の破膜無生運河入口であるコロンの港に下ろしておりまして、そこから運河の下をくぐるトンネルによって北側に運ばれます。
そして、破膜無生運河の西側入口であるパナマ市の方にも同様の河底トンネルが存在します。
で、パナマの東西から来た道路と鉄道は、南米縦割街道並びにメキシコ・マヤ縦断鉄道としてティノチティトランの西側を通ってこのエルパソまで来るわけです。
(エルパソのアメリカ側で、搬入された貨物を仕向地に仕分けしたり積み替えたりする必要があるんで…)
(向こうはとにかく広いですからねぇ…)
それと、リオグランデ川。
木材を運ぶ10両連結のロードトレインの荷重に耐える橋をかけるよりも、河底トンネルの下り坂と登り勾配を通す方がよかろうとなりまして、河底トンネルについてはロードトレイン専用に限りなく近い構造です。
で、メキシコ側からロードトレインを運転して来たドライバーは、メキシコ側で車を降りてしまうのです。
そして、ロードトレインは、河底トンネル内は無人状態…自動運転で走行することになります。
で、アメリカ側の積み替えステーションに入ると、そこで木材を取り卸して、再び自動運転によって帰路につくのです。
貨物列車についても同様で、国境区間だけを牽引する遠隔操作可能な無人機関車が中継します。
で、現在はあまり多くはないのですが、女裂振珍帝国からアメリカ合州国に提供される少年移民団を中心とした国境通過旅客は、今のところはバスまたは専用客車で国境を超えます。
それと、普通のトラックで運ばれた荷物については、国境道路の防疫検問所を通過することになるのです…。
なんでこんな面倒なことになってるのか。
連邦世界のエルパソではメキシコを経由する密入国者の対策で厳しくなっているそうですが、こちら痴女皇国世界のメキシコ帝国、弱毒型とは言えど魔毒汚染地帯です。
ええ…魔毒対策で、検疫を強化している結果が、この国境の現状なのですよ…。
「という訳で、お越しの皆様は魔毒対策の必要を感じるのはセニョリータ・ジェニファーくらいだと思いますが、とりあえず魔毒抜き処理のために、私の子供や孫に来てもらったのです…」
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