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アルトのアメリカ大冒険 - Route 69 -1

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というわけで。

いきなりですが、おはなしは大陸にとびます。

なんでなのか。

いぜん、痴女こうこくで罪人かしらをしていたクロムウェルというおじさん、いまはいぎりすのじょおうさまにいわれてここにいるからです。

で、そのおじさんのとなりにはワシントンとかいうおにいさんもいます。

さらに、アレーゼさまもおへやのまんなかにいます。

「ふむ…彼が我がアメリカへの移住を希望しているというのか…」

じろり、とあたくしがつれてきた、おっさんをねぶみしています。

「とりあえず、現在の罪人頭の推薦状を読む限りではまぁ、能力はあるようにも思えるが…クロムウェル顧問、そしてワシントン民選総督、どうかな」

「そうですな…ジョゼフ・フーシェ君…だったか。君は救世主教徒だったとあるが、聖母教会、または英国国教会に帰依する意志の有無をまずは聞いておくとしようか」

「このアメリカ合国にあっては、痴女皇国・米大陸統括本部から申し渡された条件を満たす者を移民として受け入れる事となっているが、その要項の一つに「聖母教会への敵対行為を行わない」ことを宣誓頂くことを義務付けられているのはあらかじめ、説明を受けて頂いているだろうが…」

ええ、このフーシェというおっさん、ジーナさま語では無茶しぃ…つまり、むちゃくちゃするひとだったのです。

で、今は痴女宮で罪人頭をやってもらっているナポレオンという人のおすすめで、ひとがたらないのだったらあめりかに行ってもらうのはどうかと、すいせんをもらったのです。

(まぁぶっちゃけ、やっかいばらいというのは…)

(このままフランス革命が進行しておれば、リヨンで大虐殺をやるとか、警察大臣とやらになるとかいう話も伺いましたな…)

(頭は切れるようですが、逆に痴女皇国の罪人たちを扇動しようとして見事に失敗、ですか…)

で、ほんとうなら女官にしてしまうか、頭の中をいれかえることにされかけました。

しかし、このアメリカ。

北のほうには、フランスから移りすんだひとが多くすんでいるそうです。

「フーシェ君、と言ったな。ま、かけたまえ…この北アメリカの大地では、先住民族の自治権を認めている。そして、その自治権を持った諸族と、東部から南部にかけての欧州移民が統治する各州の集合体として国家が機能しているのだ。しかし…」

「クロムウェル顧問、そこからは私が引き継がせて頂きましょう。欧州各国ではある意味、人余りの現象が起きている。そこで欧州諸国はこのアメリカ大陸への移民を企図したが、ここなアレーゼ閣下他、痴女皇国によって既にアメリカ大陸の先住民は保護され、自治を認められている状況にあった」

で、ここでちらりとクロムウェルのおじさんをみる、おにいさん。

「そこで我々は英国を経由して痴女皇国と交渉し、共存を前提とした移民の移住を承認頂いたのだ。だが、農地開発事業について先住民総称である「嘘つかない族いんであん」酋長会議との折衝の過程で「なるべく東側でやって欲しい」という要望を受ける事となった…その理由は、北米大陸の中央部にあるグレートプレーンズと称している大平原の開拓問題にあった」

と、壁のちずをみながらはなす、おにいさん。

「このグレートプレーンズには、嘘つかない族にとって貴重な食料資源である猛牛ばっふぁろーが数多く生息しており、痴女皇国もその牧牛を手助けしておられる。ですな、アレーぜ閣下」

うなずく、アレーゼさま。

「この大平原を開拓して農地にしない理由はある。ここは台地上…周囲に対しては盛り上がっている地形が多く、乾燥しやすいのだ。そして、草原を耕して畑にしたが最後、草木の代わりの農作物を迅速に植えておかないと、大規模な砂嵐が発生することが懸念されている」

この、アレーゼさまのおはなしに、そんなばかなという顔をする、フーシェとかいうおっさん。

しかし、他のかたがたはにやりとわらっておられます。

「このアメリカでは土地の広さが尋常ではない。その広さゆえに、欧州では考えもつかないような自然の猛威が起きてしまうのだ。例えば君の生国フランスがいくつも入ってしまうようなこの大平原全てを耕したとしようか…草木が生えていることで抑えられていた空気の暑さに歯止めが効かなくなり、大平原の周囲との間に暴風が発生するのだ」

「これは実際に起きたものでね、ダストボールやダストストームと呼ばれている。更には、急激な気温の上昇降下を起こす裸の土地を放置すれば、関係ないはずの周囲の土地でも竜巻という渦が空中に起きかねないのだ…」

ええ、このおへやにつめている、秘書やくの女官がかべにそういうことがおきたさいのがぞうや映像を映し出してくれました。

「つまり、我々アメリカ合州国としては、金を掘りに来たり、はたまたひと儲けようとして農場をやりたいとか言ってくる連中に対しては、一定の規制を敷いておかないと、このような天罰めいた気象災害に後々苦しめられる事になるのだよ」

「そして、アメリカ合州国の経営を脅やかす過剰な移民受け入れは、アメリカ合州国の独立を承認する代わりに、我が英国の企業の進出や投資を推進している英王室、そして祖国としても経済的損失を被ることになるだろう。合州国の行政顧問として招聘しょうへいされているこの私としても、なるべくならば回避したいのでね…損失を」

「クロムウェル顧問閣下の発言の意図、お分かりかね…フーシェ君…もしも君が単なる一移民としての地位に甘んじるならば、この合州国東部のいち移民としての移住手続きに入って頂かねばならない。すなわち、この部屋からは即刻退出頂く。しかし、だ…君がフランス王国の出身者として、相応の利益を祖国に持ち帰ることも企図して自分の地位確保に邁進する気概があるならば、我がアメリカの北側に所在する、金田という一帯を紹介できるだろう」

「で。ワシントン閣下が言われた、くだんの金田の地についてだがね…我が女王陛下と、そしてフランス王国の暫定王朝となったヴァロワ朝の現女王たるイザベル1世陛下の会談が痴女皇国の斡旋によって行われた。内容は…イザベル陛下は元々、この広大なアメリカのうち、南米ならびに中米部分の開発の後見者として痴女皇国の指名を受けた立場であるが、この度フランス王国の統治に関わる立場となったことで、この北米の地に於ける統治に口を出さざるを得なくなったとの仰せだ…ワシントン閣下」

「むろん、我がアメリカ合州国は建国まもない国家であるが、金田の統治についても元来は意欲を見せたいところだ…だが、このアメリカの地における無闇な侵略や開発を防ぎ、流入移民と現地住民との協調を図った統治を前提に独立を支援頂いた立場としては、建前では協力を歓迎せざるを得ない。で、クロムウェル閣下…」

「むろん、ワシントン閣下の本音は別にあるのだ。金田なる地はこのアメリカ合州国の更に上となる。で…上にあるということは、すなわち寒いという事だ。これが、人がろくに住んでいないということが判明しておるにも関わらずだな、そもそも進んで上の方に行く者がいないという理由なのだ…」

ええ、おふたりがのみもの片手ににやにやしておられるのはこれなのです。

ようは、このフーシェというおじさんにたいして、じぶんの国がほしいならばこの、かなだとかいう北のとちをまかせてやるからひとつがんばってみろ、というはなしにしたいわけです。

「で、フーシェ殿…普通ならこんな、森と山ばかりが広がる土地…しかも、寒いことがわかっている場所に誰が好き好んで住むものか、そうは思わないかね」

「ふむ…確かにその通りでございますな。いくら自分のものにできるぞと申されましても、アレマーニュどいつの黒い森や北方帝国おそろしあの森、ああいうものを想像するだに、切り開くにも人や金を必要と致しますでしょう」

と、落ちついたのか、考え込むようすの、このいけすかないおっさん。

じつはこのおじさん、くろむうぇるさんよりもさらに、けんりょくとかいうものがだいすきなのです。

しかし、自分がおうさまにむいてないことをしっています。

で、フランスかくめいに参加したのも、じつのところは自分のすきにできるおうさま役を探していたというのもあったようですね。

(その辺はナポレオン君からお聞きしていますよ、彼に罪人頭を引き継いで頂いた立場ですのでね…)

(しかし、なぜ、どうていのおじさんではなくこのひとを先におくりこんだのでしょうか…)

(こらアルト…フこの心話、ーシェ氏に漏れないようにしているだろうな…まぁ、私が聞いているのは、フーシェはロベスピエールとの仲がかなり悪く、その元・童貞とかいう指導者に従うのを内心では快く思っていないということだな。しかし…もしも、ロベスピエールとの間で金田の開発を競わせた場合に、こうして自分が少しでも先んじることが可能であれば狡知を発揮するのではないかというイザベル陛下の推薦もあってね)

(では、フーシェに対する釣り餌、不肖ながら総督の私が見せておきますか)

「フーシェ君…ひとつ、良いことを教えよう。我が国が建国するはるか前から、このアレーゼ様を中心とした痴女皇国の有志による探検と、現地調査は幾度か行われている。その中で、川の砂から砂金が発見されるという現地住民の証言が多く拾えているのは、金田…それも西方に集中しているのだよ。ただ…推しむらくは現地の環境の厳しさゆえに、現状では資源保護を名目として金田側に開拓者を送り込むのを差し止めている状態でね」

「確かに金は出ることが確実視されている。しかし、金はアメリカ国内でもある程度は採集可能なこともあって、無理からに森林に分け入り金探しをするまでもあるまいという統治方針を打ち出しているのだが…どうだね、ひとつ建国のための開発原資になりうるか、君自身が探ってみてはどうだろうかね?」
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