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-Tango Argentina- ラテンの紅い情熱の花・8
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「ああっぼっちゃまっむりでごぜぇます…」
ええ。
なんでまた、と思ったのですが。
このフアレス少年、どうもフアナという単語が苗字に含まれておるようなのですが、ハプスブルグ家の系列の子孫っぽいのです、実家。
(この王賓庭園でのIFFステータス参照は制限かかるみたいですね…少なくとも貴族や富豪同士が、どこの誰とか調べられないようになってますよ…)
(なるほど、仮面つけて女遊びか男遊びしとんのは一応、お忍びの建前と…)
で、フアナといえば思い出すのは狂乱女王の名で知られた方ですが、この方の子孫なら確実にスペイン王の血筋です。
つまりは、イザベル陛下とは別系統のスペイン王家の外戚。
ただ、現状だとスペイン王国では血縁より実力重視の政治に移りつつあります。
フアレス少年のおうちも、無理からに見合い結婚を強要するよりは、実力ある女を探させる方が息子にはええやろと考えている節がありますね。
ですが、実力で女を捕まえられるかというと…ちょおーーーーーーーーーーっと、お姉さんに任せてみんかね?と言いたくなる部類。
なぜか。
フアレスくんの体型、少なくとも私の好みではないのです。
そう、フランス王かあんたはと言いたくなる、その体型。
この時代の貴族は肥満も尊重しておったようですけどね、それで早死にするとかあったでしょうが。
(肉料理の時間だとかベルサイユ住まいかあんたの家はぁっ、と言いたくなる部類の身体ですね…)
(フランシスカさん、あたしもあまり人のことは言えませんが、メキシコ料理も肉が多かったのでは…)
(お言葉ですがベラ子陛下、あれは連邦世界のメキシコでの話。スペイン征服後やその後のアメリカ建国の影響だのなんだのあって、向こうの牧畜や食肉文化が流入したからでもあるのですっ)
ええ、ベラ子陛下の指摘は確かに、間違ってません。
ですが、明日輝や魔屋や淫化なんて、痴女皇国が手を入れる前はお肉って貴重品の部類だったんです。
リャマやアルパカの肉ですら珍重されてたのは、クシ王子のカパコチャ…山に生き埋めにされるいけにえの儀式の事前準備からも明らかだったのですからね…。
しかし、このフアレスくん。
「え?軍学校に通ってないの?」というのが見た瞬間の私の疑問だったのです。
痴女皇国世界のスペイン王国、聖母教会網の充実もあって、教育制度…特に高等教育については二つないし、三つの道が存在するようになりました。
まず、私が申し上げた軍学校に入学し、闘牛騎士または婦人騎士を目指す流れ。
つまり軍人としての教育教練を受けることになります。
これだと絶対に、肥満者にはなってませんし、矯正されます。
で、二番目が聖母教会の高等教育…つまり、修道院への流れです。
この流れでも、肥満者は矯正されます。
最悪、体型補正と併せて一時的に懲罰偽女種や奉仕偽女種にされてしまいます。
しかし、フアレス少年は三番目の道…つまり従来からの高級教育を受けていたようなのです。
それは、上記二つに属しない王立学校や私学校、あるいはカテキョを頼む部類の貴族っぽい教育の流れで大きくなった部類。
ですから、デブってもある程度はしゃあないかも知れません。
おまけに昨今のスペイン、どうやら有全珍発のお肉やらその原料の牛豚鶏他が市場で楽に手に入るようになったこともあり、フランス王室…ベルサイユ宮殿も真っ青の「毎日お肉料理」生活、ある程度以上の所得の家庭なら割と普通にできてしまうようなのです。
つまり、フアレス少年はデザートやお菓子に砂糖を使いまくったものはもちろん、主皿に牛肉豚肉鶏肉が絶対確実に載ってるコースメニューまたは、簡易な盛り合わせが毎日のお食事の基本だったようです、本人の記憶を見る限りでは。
ところが、彼がお熱を上げている黒人メイド候補のワイゼラ。
どうも引っかかるもんがあって、血統とか人種を探りますと、ケニアとエチオピアの混血みたいなのです。
つまり、黒人でも美人の多い民族と、鍛え抜かれた戦士を多数輩出した戦闘民族の混血。
しかも、ケニアのマサイなんて肉食傾向も多かった民族じゃないですか。
そりゃ、元のスタイルも悪くはないだろうと。
で、悪いこと。
そういう出自の娘であれば、周りの男に肥満者、おると思いますか。
つまり、ワイゼラの審美眼からすれば、フアナ少年はアフエラなのです…。
ええ、私が「任せてみんか」と思った理由ですけどね、何も今更、明日輝戦士のための訓練とは言いませんよ。
ただ、ちょっと半年ばかり南米のチンボテで過ごすか、あるいは我がメヒコのルチャ養成コースを受けてもらうかして、モテる体型に矯正をしてあげようかなとも。
(フランシスカさんが本気の目になっとる…)
(デ部はカルテルでも上位の幹部にのみ許されたのです…筋肉ダルマでないデ部は命に関わったのです…)
ええ、犯罪者であろうが、取り締まる側であろうが、肉体言語での会話も上手でないとヤバかった国の生まれの私です。
戦えぬ男はだめなのです…。
そして、ワイゼラがマサイ族の考えなら、そりゃもう肥満者なんぞは本来ならあかんと言い出しかねないでしょうし、エチオピアにしても、デ部部員がまともに生きてられるような優雅な国には思えません。
(ううむ、しかし、罪人寮に入寮する罪人の要領で体型を矯正してあげるなら…)
(ベラ子陛下。お言葉ですが、このフアレス少年にそんな楽な道を歩ませては本人のためになりませんっ)
ええ、私は思い知ったのです。
あのプチ・デ部の6919号の体型は、不健全な精神を宿すと。
健全な肉体なら健全な精神が宿るとまでは申しませんが、少なくとも屈折した変態にはなりづらいでしょう。
そしてですねぇ、ブティークの店員の勧めもあったんでしょうけどね、絶対お前、変な趣味性癖、育ちつつあるやろと。
そもそも、この王賓庭園、フアレス君のような未成年が出入りして、男自慢女自慢をする場所なのか。
普通は成人が利用する場所、ちゃうんかい。
私は元来は教育者でもなんでもありませんが「男やったら自分の実力で女引っ掛けて連れて歩かんかいっ」という精神が蔓延した国の出身です。
言うては何ですが、君とカルテルの小僧を比べたら、単純に言うとカルテルの下っ端を選ぶぞ、私。
(ああ、フランシスカさんは武闘派…)
(プロレスと麻薬組織抗争の国の人でしたね…)
(ベラ子陛下、ジーナ閣下…特にジーナ閣下は小太りの男というだけで、私同様に掘り返されたくない過去がおありのはずです…ですが、フアレス少年に、さぁ今痩せろすぐ痩せろと言っても、一朝一夕の努力で筋骨逞しい身体にはなれんでしょう。陛下どころか、私でもその気になれば体型補正は一瞬ですが、それではこの子のためにならんのですっ)
(とりあえずフアレスくん…あとでフランシスカさんのお話を聞いてあげるのです…あたしたちは君とワイゼラさんの恋路をこれ以上邪魔はしませんから…)
と、ベラ子陛下にも言われましたので、とりあえずはワイゼラのリードに任せて、私たちは他の「そういういけない遊び」に耽る連中の観察に戻ります。
で。
ここで女を口説いている連中の目的は、性具または性奴隷。
厳しい事を申し上げますと、囲い込む方がコスト的に安上がりとか考えている部類も少なくはありません。
そして、美人の奴隷を確保して交配すれば、美人の娘が生まれるくらいは考えついて…下手をすれば、実行する権力や財力を有する部類です…。
ですが、河原女たちはその希望を叶える存在からは程遠いでしょう。
それに、今や河原者の大半は女の上に、河原の掟があります。
河原の女と、俗人の間で子供を作れば、その子は河原の子として育てよ。
まして今や、このマドリードでも苗床運用が始まっておるのです。
ですので、ここにいるお貴族様たちの子種をもらっても、良くて河原の子になるか、普通は苗床の滋養兼、汎用型女官や偽女種を生み出すための遺伝子素材となってしまうのです。
(だからあたいは尼僧身分も持ってんだからさ…還俗しないと人の嫁はもちろん、メカケにすらなれやしないんだよ…おまけに河原女の身分もあるんだよ…いや、手はあるよ!)
と、さっき自転車で男を乗せてこの王賓庭園に来ていた河原女、やることをやりながらも男に言い聞かせております。
では、その思いつきとは。
(ああ、簡単な事だし、河原女の間じゃ一応の口説きのかわし文句としては広まってましたよ。つまり、あたしらがこのマドリードに来て半年がたったら、愛隣会館で次の巡業先や移り先を決めてもらうでしょう。その移り先が決まったら、この商家の兄ちゃんなら兄ちゃんに教えておくんですよ。追いかけるんなら追いかけていいよって。んで、聖母教会のやっかいになってるんなら、そこで告解してやりゃ、兄さんの股ぐらのいちもつはとりあえず満足できるし、あたいも気に入ったちんぽなら追っかけて欲しいとは思いまさぁね)
おおっ。
つまり、日本流に申し上げますと、ゲイニンやゲイノウジンのオッカケ。
日本の大衆演芸の美形青年を追いかける婦人方の、男性版というべきか。
そして、私にはもう一つ、思いついたことがあります。
それは、聖母グアダルーペ伝説に基づいたメヒコ各地からグアダルーペ聖母聖堂への巡礼や、あるいはスペインの北部に所在するサンティアゴ・ディ・コンポステーラへの巡礼。
つまり、尼僧身分を得た踊り子たちは、教会を巡って巡礼かつ興行する立場だとするのです。
そして踊り子の支援者は、その踊り子について同行したり、あるいは巡礼を助けてやる。
これ、どうですかジーナ閣下にベラ子陛下。
日本でも、オヘンロとか巡礼風習、あるんでしょ。
要は、踊り子のオッカケサンがしたいならやらせてやる。
しかし、宗教の絡んだオッカケはそれなりに大変やで。
あと、普通なら女性単独での巡礼とか絶対に危険でしょう。
しかし、痴女皇国世界のスペイン。
ましてや、河原女たちも痴女種女官化されとるのです。
本気を出せば、この時代の男が戦って勝てる相手ではありません。
(さすがは才媛の誉れも高いフランシスカ局長…その案、乗りましたわ)
(しかし、巡礼やったら御朱印帳とかいるわな…)
(母様、売春手帳とか考えてませんよね…風俗店のスタンプ割引やポイントカードみたいにするとか…)
(ベラ子。うちを見損なうな。サンティアゴ・ディ・コンポステラの巡礼みたいにホタテ貝の貝殻をもらうんや。で、溜まったらサンティアゴの聖母教会で例のホタテ水着に加工…いたっ!あんたは実の親に何をさらすんじゃ!)
(かーさま。あたしのあの、サンティアゴ仕様の聖母像とかビアリッツ仕様の聖母像とかですね、あれを知っての発言ですか…)
ええ、ベラ子陛下の「笑ってはいけない聖母像」ですね。
ただ、お言葉ですが、あれは誰が見ても笑うと思いますよ、ええ。
まぁともかく、踊り子連中の口説きあしらいも、それなりに経験が共有されておる模様。
それに、聖母教会相手では、いくら金持ちと言えど無理強いはできません。
今のスペインの政体からしますと、例え田舎の教会であろうと、応援尼僧を買い切るとか無理難題を言えば、その段階で概ね、千人までの相手ならドレインして倒されますし、それこそ婦人騎士団の部隊が派遣されて御用となり、マドリードで裁かれる話になりかねないでしょう。
(それに今なら、半日ありゃあ、イスパニアの大抵の町や村には辿り着けるんだからさ…)
ええ、室見局長がこだわったという、高速列車の在来線直通。
これのおかげで、陸続きのイベリア半島内なら、よほど山の中でなければ半日ちょっとで到着できるそうです。
で、その河原女がタンゴ衣装に着替えて踊るのに合わせて、ホセとヴィータが踊り出します。
更には、他の踊り子たちも。
映画は、そこで第二幕の幕切れとなるそうです。
で…この王賓公園の北側を主な根城にしている黒人女たち。
彼女たちの場合は、河原女とは事情が変わるのですよ。
暗黒大陸本部では、船舶搭載型即成栽培プラントを使用した人口増加と、大規模な民族と言語の整理に入っています。
言い換えれば、そんな強硬策を取る必要があるほどに、部族間抗争が苛烈な地域があるということ。
そして、難民化した者たちをよそに避難させたり、あるいは部落ごとよそに移住させることも。
そうした過程で、人余りとなった者で有望そうな人材を諸子宦官国経由で欧州に出稼ぎさせることはできないか。
これは、南欧支部やジブラルタル、そして海綿菓子国だの地中海沿岸諸国でも港湾労働者他を必要としていたため、歓迎はされました。
しかし、これらの黒人中心のアフリカ系民族を長期に亘って居住させれば、連邦世界の欧州を揺るがしている自称・難民と類似の事態を招くことが懸念されたのです。
そこで、考案された対策が「三河監獄国方式」すなわち、一定期間の出稼ぎの後で必ず諸子または母国に戻ることが義務付けられたわけなのですね。
ですので、ワイゼラが言っている「あと2ヶ月しかここにいられない」というのは正にこの、言ってみれば出稼ぎビザで南欧支部に渡航しているがごとき立場の自分にかかっている制限を示しているのです。
これを破って居座り続けると、聖環によって強制ドレインがかかった上に、位置情報が婦人騎士団に送られてしまいます。
では、ワイゼラは何がなんでも強制的に帰国…または、暗黒大陸に戻る必要があるのか。
(聖アントニオ教会経由で、雇用延長申請をデボー聖堂の暗黒大陸事務所に提出して、承認が取れたら引き続き滞在できますわよ。ただ…アウグスティーナ)
(はい、陛下…身元引受人の同意と、私ども南欧支部と暗黒大陸出張所双方の承認を要します。そして、フアレス少年の親御さん…成人者でなければ、身元引受人とはなれないのです…)
そう、フアレス少年の父親の承認は、最低でも必要。
そして、もっとも大事な事があります。
そもそもこの有期限出稼ぎ制度、連邦世界のアフリカ黒人奴隷化問題と同様の悲劇を防ぐために設けられたもの。
出稼ぎしているワイゼラならワイゼラ本人の意志確認が絶対に必要なのです。
で、当のワイゼラはと言えば…。
(フアレスぼっちゃんは、さかりがちなのをのぞけば悪い人でもないとはおもいますだ。しかし、わたいとしては、もうすこし力があってながつづきしてもらわんと、ほんまにそのきにはなれませんですだ…)
ああ、やっぱり。
つまり、体を鍛えろって話になるのです。
しかし、ここで甘やかせば絶対に、ワイゼラと変態性交の道にどっぷりとはまり、挙句家業をほったらかしてサド侯爵やバタイユ伯爵のような変態の道に突っ走りかねない。
ええ、あの偽女種6919号の再来のような鬼畜変態を生産するのか、はたまたフアレス少年が踏みとどまるのか。
分岐点が今、まさにここにあると思えるのです。
ですが、はいはいと手を挙げた者がおります。
「総督さま…このぼっちゃんの体力づくりなら、おらがやってるように球蹴り、させてみちゃいかがでしょう…あるていどは広い庭のお屋敷住まいなら、練習だけならなんとかなりますし、走り込みだって、お屋敷の周りを走るだけでもそこそこできるんじゃないでしょうか…」
ええ。
なんでまた、と思ったのですが。
このフアレス少年、どうもフアナという単語が苗字に含まれておるようなのですが、ハプスブルグ家の系列の子孫っぽいのです、実家。
(この王賓庭園でのIFFステータス参照は制限かかるみたいですね…少なくとも貴族や富豪同士が、どこの誰とか調べられないようになってますよ…)
(なるほど、仮面つけて女遊びか男遊びしとんのは一応、お忍びの建前と…)
で、フアナといえば思い出すのは狂乱女王の名で知られた方ですが、この方の子孫なら確実にスペイン王の血筋です。
つまりは、イザベル陛下とは別系統のスペイン王家の外戚。
ただ、現状だとスペイン王国では血縁より実力重視の政治に移りつつあります。
フアレス少年のおうちも、無理からに見合い結婚を強要するよりは、実力ある女を探させる方が息子にはええやろと考えている節がありますね。
ですが、実力で女を捕まえられるかというと…ちょおーーーーーーーーーーっと、お姉さんに任せてみんかね?と言いたくなる部類。
なぜか。
フアレスくんの体型、少なくとも私の好みではないのです。
そう、フランス王かあんたはと言いたくなる、その体型。
この時代の貴族は肥満も尊重しておったようですけどね、それで早死にするとかあったでしょうが。
(肉料理の時間だとかベルサイユ住まいかあんたの家はぁっ、と言いたくなる部類の身体ですね…)
(フランシスカさん、あたしもあまり人のことは言えませんが、メキシコ料理も肉が多かったのでは…)
(お言葉ですがベラ子陛下、あれは連邦世界のメキシコでの話。スペイン征服後やその後のアメリカ建国の影響だのなんだのあって、向こうの牧畜や食肉文化が流入したからでもあるのですっ)
ええ、ベラ子陛下の指摘は確かに、間違ってません。
ですが、明日輝や魔屋や淫化なんて、痴女皇国が手を入れる前はお肉って貴重品の部類だったんです。
リャマやアルパカの肉ですら珍重されてたのは、クシ王子のカパコチャ…山に生き埋めにされるいけにえの儀式の事前準備からも明らかだったのですからね…。
しかし、このフアレスくん。
「え?軍学校に通ってないの?」というのが見た瞬間の私の疑問だったのです。
痴女皇国世界のスペイン王国、聖母教会網の充実もあって、教育制度…特に高等教育については二つないし、三つの道が存在するようになりました。
まず、私が申し上げた軍学校に入学し、闘牛騎士または婦人騎士を目指す流れ。
つまり軍人としての教育教練を受けることになります。
これだと絶対に、肥満者にはなってませんし、矯正されます。
で、二番目が聖母教会の高等教育…つまり、修道院への流れです。
この流れでも、肥満者は矯正されます。
最悪、体型補正と併せて一時的に懲罰偽女種や奉仕偽女種にされてしまいます。
しかし、フアレス少年は三番目の道…つまり従来からの高級教育を受けていたようなのです。
それは、上記二つに属しない王立学校や私学校、あるいはカテキョを頼む部類の貴族っぽい教育の流れで大きくなった部類。
ですから、デブってもある程度はしゃあないかも知れません。
おまけに昨今のスペイン、どうやら有全珍発のお肉やらその原料の牛豚鶏他が市場で楽に手に入るようになったこともあり、フランス王室…ベルサイユ宮殿も真っ青の「毎日お肉料理」生活、ある程度以上の所得の家庭なら割と普通にできてしまうようなのです。
つまり、フアレス少年はデザートやお菓子に砂糖を使いまくったものはもちろん、主皿に牛肉豚肉鶏肉が絶対確実に載ってるコースメニューまたは、簡易な盛り合わせが毎日のお食事の基本だったようです、本人の記憶を見る限りでは。
ところが、彼がお熱を上げている黒人メイド候補のワイゼラ。
どうも引っかかるもんがあって、血統とか人種を探りますと、ケニアとエチオピアの混血みたいなのです。
つまり、黒人でも美人の多い民族と、鍛え抜かれた戦士を多数輩出した戦闘民族の混血。
しかも、ケニアのマサイなんて肉食傾向も多かった民族じゃないですか。
そりゃ、元のスタイルも悪くはないだろうと。
で、悪いこと。
そういう出自の娘であれば、周りの男に肥満者、おると思いますか。
つまり、ワイゼラの審美眼からすれば、フアナ少年はアフエラなのです…。
ええ、私が「任せてみんか」と思った理由ですけどね、何も今更、明日輝戦士のための訓練とは言いませんよ。
ただ、ちょっと半年ばかり南米のチンボテで過ごすか、あるいは我がメヒコのルチャ養成コースを受けてもらうかして、モテる体型に矯正をしてあげようかなとも。
(フランシスカさんが本気の目になっとる…)
(デ部はカルテルでも上位の幹部にのみ許されたのです…筋肉ダルマでないデ部は命に関わったのです…)
ええ、犯罪者であろうが、取り締まる側であろうが、肉体言語での会話も上手でないとヤバかった国の生まれの私です。
戦えぬ男はだめなのです…。
そして、ワイゼラがマサイ族の考えなら、そりゃもう肥満者なんぞは本来ならあかんと言い出しかねないでしょうし、エチオピアにしても、デ部部員がまともに生きてられるような優雅な国には思えません。
(ううむ、しかし、罪人寮に入寮する罪人の要領で体型を矯正してあげるなら…)
(ベラ子陛下。お言葉ですが、このフアレス少年にそんな楽な道を歩ませては本人のためになりませんっ)
ええ、私は思い知ったのです。
あのプチ・デ部の6919号の体型は、不健全な精神を宿すと。
健全な肉体なら健全な精神が宿るとまでは申しませんが、少なくとも屈折した変態にはなりづらいでしょう。
そしてですねぇ、ブティークの店員の勧めもあったんでしょうけどね、絶対お前、変な趣味性癖、育ちつつあるやろと。
そもそも、この王賓庭園、フアレス君のような未成年が出入りして、男自慢女自慢をする場所なのか。
普通は成人が利用する場所、ちゃうんかい。
私は元来は教育者でもなんでもありませんが「男やったら自分の実力で女引っ掛けて連れて歩かんかいっ」という精神が蔓延した国の出身です。
言うては何ですが、君とカルテルの小僧を比べたら、単純に言うとカルテルの下っ端を選ぶぞ、私。
(ああ、フランシスカさんは武闘派…)
(プロレスと麻薬組織抗争の国の人でしたね…)
(ベラ子陛下、ジーナ閣下…特にジーナ閣下は小太りの男というだけで、私同様に掘り返されたくない過去がおありのはずです…ですが、フアレス少年に、さぁ今痩せろすぐ痩せろと言っても、一朝一夕の努力で筋骨逞しい身体にはなれんでしょう。陛下どころか、私でもその気になれば体型補正は一瞬ですが、それではこの子のためにならんのですっ)
(とりあえずフアレスくん…あとでフランシスカさんのお話を聞いてあげるのです…あたしたちは君とワイゼラさんの恋路をこれ以上邪魔はしませんから…)
と、ベラ子陛下にも言われましたので、とりあえずはワイゼラのリードに任せて、私たちは他の「そういういけない遊び」に耽る連中の観察に戻ります。
で。
ここで女を口説いている連中の目的は、性具または性奴隷。
厳しい事を申し上げますと、囲い込む方がコスト的に安上がりとか考えている部類も少なくはありません。
そして、美人の奴隷を確保して交配すれば、美人の娘が生まれるくらいは考えついて…下手をすれば、実行する権力や財力を有する部類です…。
ですが、河原女たちはその希望を叶える存在からは程遠いでしょう。
それに、今や河原者の大半は女の上に、河原の掟があります。
河原の女と、俗人の間で子供を作れば、その子は河原の子として育てよ。
まして今や、このマドリードでも苗床運用が始まっておるのです。
ですので、ここにいるお貴族様たちの子種をもらっても、良くて河原の子になるか、普通は苗床の滋養兼、汎用型女官や偽女種を生み出すための遺伝子素材となってしまうのです。
(だからあたいは尼僧身分も持ってんだからさ…還俗しないと人の嫁はもちろん、メカケにすらなれやしないんだよ…おまけに河原女の身分もあるんだよ…いや、手はあるよ!)
と、さっき自転車で男を乗せてこの王賓庭園に来ていた河原女、やることをやりながらも男に言い聞かせております。
では、その思いつきとは。
(ああ、簡単な事だし、河原女の間じゃ一応の口説きのかわし文句としては広まってましたよ。つまり、あたしらがこのマドリードに来て半年がたったら、愛隣会館で次の巡業先や移り先を決めてもらうでしょう。その移り先が決まったら、この商家の兄ちゃんなら兄ちゃんに教えておくんですよ。追いかけるんなら追いかけていいよって。んで、聖母教会のやっかいになってるんなら、そこで告解してやりゃ、兄さんの股ぐらのいちもつはとりあえず満足できるし、あたいも気に入ったちんぽなら追っかけて欲しいとは思いまさぁね)
おおっ。
つまり、日本流に申し上げますと、ゲイニンやゲイノウジンのオッカケ。
日本の大衆演芸の美形青年を追いかける婦人方の、男性版というべきか。
そして、私にはもう一つ、思いついたことがあります。
それは、聖母グアダルーペ伝説に基づいたメヒコ各地からグアダルーペ聖母聖堂への巡礼や、あるいはスペインの北部に所在するサンティアゴ・ディ・コンポステーラへの巡礼。
つまり、尼僧身分を得た踊り子たちは、教会を巡って巡礼かつ興行する立場だとするのです。
そして踊り子の支援者は、その踊り子について同行したり、あるいは巡礼を助けてやる。
これ、どうですかジーナ閣下にベラ子陛下。
日本でも、オヘンロとか巡礼風習、あるんでしょ。
要は、踊り子のオッカケサンがしたいならやらせてやる。
しかし、宗教の絡んだオッカケはそれなりに大変やで。
あと、普通なら女性単独での巡礼とか絶対に危険でしょう。
しかし、痴女皇国世界のスペイン。
ましてや、河原女たちも痴女種女官化されとるのです。
本気を出せば、この時代の男が戦って勝てる相手ではありません。
(さすがは才媛の誉れも高いフランシスカ局長…その案、乗りましたわ)
(しかし、巡礼やったら御朱印帳とかいるわな…)
(母様、売春手帳とか考えてませんよね…風俗店のスタンプ割引やポイントカードみたいにするとか…)
(ベラ子。うちを見損なうな。サンティアゴ・ディ・コンポステラの巡礼みたいにホタテ貝の貝殻をもらうんや。で、溜まったらサンティアゴの聖母教会で例のホタテ水着に加工…いたっ!あんたは実の親に何をさらすんじゃ!)
(かーさま。あたしのあの、サンティアゴ仕様の聖母像とかビアリッツ仕様の聖母像とかですね、あれを知っての発言ですか…)
ええ、ベラ子陛下の「笑ってはいけない聖母像」ですね。
ただ、お言葉ですが、あれは誰が見ても笑うと思いますよ、ええ。
まぁともかく、踊り子連中の口説きあしらいも、それなりに経験が共有されておる模様。
それに、聖母教会相手では、いくら金持ちと言えど無理強いはできません。
今のスペインの政体からしますと、例え田舎の教会であろうと、応援尼僧を買い切るとか無理難題を言えば、その段階で概ね、千人までの相手ならドレインして倒されますし、それこそ婦人騎士団の部隊が派遣されて御用となり、マドリードで裁かれる話になりかねないでしょう。
(それに今なら、半日ありゃあ、イスパニアの大抵の町や村には辿り着けるんだからさ…)
ええ、室見局長がこだわったという、高速列車の在来線直通。
これのおかげで、陸続きのイベリア半島内なら、よほど山の中でなければ半日ちょっとで到着できるそうです。
で、その河原女がタンゴ衣装に着替えて踊るのに合わせて、ホセとヴィータが踊り出します。
更には、他の踊り子たちも。
映画は、そこで第二幕の幕切れとなるそうです。
で…この王賓公園の北側を主な根城にしている黒人女たち。
彼女たちの場合は、河原女とは事情が変わるのですよ。
暗黒大陸本部では、船舶搭載型即成栽培プラントを使用した人口増加と、大規模な民族と言語の整理に入っています。
言い換えれば、そんな強硬策を取る必要があるほどに、部族間抗争が苛烈な地域があるということ。
そして、難民化した者たちをよそに避難させたり、あるいは部落ごとよそに移住させることも。
そうした過程で、人余りとなった者で有望そうな人材を諸子宦官国経由で欧州に出稼ぎさせることはできないか。
これは、南欧支部やジブラルタル、そして海綿菓子国だの地中海沿岸諸国でも港湾労働者他を必要としていたため、歓迎はされました。
しかし、これらの黒人中心のアフリカ系民族を長期に亘って居住させれば、連邦世界の欧州を揺るがしている自称・難民と類似の事態を招くことが懸念されたのです。
そこで、考案された対策が「三河監獄国方式」すなわち、一定期間の出稼ぎの後で必ず諸子または母国に戻ることが義務付けられたわけなのですね。
ですので、ワイゼラが言っている「あと2ヶ月しかここにいられない」というのは正にこの、言ってみれば出稼ぎビザで南欧支部に渡航しているがごとき立場の自分にかかっている制限を示しているのです。
これを破って居座り続けると、聖環によって強制ドレインがかかった上に、位置情報が婦人騎士団に送られてしまいます。
では、ワイゼラは何がなんでも強制的に帰国…または、暗黒大陸に戻る必要があるのか。
(聖アントニオ教会経由で、雇用延長申請をデボー聖堂の暗黒大陸事務所に提出して、承認が取れたら引き続き滞在できますわよ。ただ…アウグスティーナ)
(はい、陛下…身元引受人の同意と、私ども南欧支部と暗黒大陸出張所双方の承認を要します。そして、フアレス少年の親御さん…成人者でなければ、身元引受人とはなれないのです…)
そう、フアレス少年の父親の承認は、最低でも必要。
そして、もっとも大事な事があります。
そもそもこの有期限出稼ぎ制度、連邦世界のアフリカ黒人奴隷化問題と同様の悲劇を防ぐために設けられたもの。
出稼ぎしているワイゼラならワイゼラ本人の意志確認が絶対に必要なのです。
で、当のワイゼラはと言えば…。
(フアレスぼっちゃんは、さかりがちなのをのぞけば悪い人でもないとはおもいますだ。しかし、わたいとしては、もうすこし力があってながつづきしてもらわんと、ほんまにそのきにはなれませんですだ…)
ああ、やっぱり。
つまり、体を鍛えろって話になるのです。
しかし、ここで甘やかせば絶対に、ワイゼラと変態性交の道にどっぷりとはまり、挙句家業をほったらかしてサド侯爵やバタイユ伯爵のような変態の道に突っ走りかねない。
ええ、あの偽女種6919号の再来のような鬼畜変態を生産するのか、はたまたフアレス少年が踏みとどまるのか。
分岐点が今、まさにここにあると思えるのです。
ですが、はいはいと手を挙げた者がおります。
「総督さま…このぼっちゃんの体力づくりなら、おらがやってるように球蹴り、させてみちゃいかがでしょう…あるていどは広い庭のお屋敷住まいなら、練習だけならなんとかなりますし、走り込みだって、お屋敷の周りを走るだけでもそこそこできるんじゃないでしょうか…」
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キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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