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惨奴侯爵の妻 - Renee Pelagie de Sade - ・8
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なんということでしょうか。
しかも、王さま…ルイ16せいへいか、もしかして、からだがごりっぱになっておられませんか。
ええ、そこには、服のところどころがやぶれたり、きゅうくつになってしまったがために、すっぽんぽんもどうぜんになってしまった王さまが。
「いや、急に服が窮屈になりましてな…しかし困ったものだ…」
いえ、そりゃきゅうくつにもなるでしょうと、あたくしはもうしました。
罪人寮のざいにんたちとあまりかわらない、むきむきのからだになっておられるのはあきらかだったからです。
「よめ…これは、おうさまのいまのすがたをみていただいた方が…」
「あなた、是非にご自身の今のお姿、ご覧になって下さいまし…」
ええ、王妃さまも、だんなさん…王さまをみつめるそのめがきらきらしています。
ですが、よめの聖環のかめらでとったえいぞうを見たおうさま、ふくざつなかおです。
「いやその、何か剛力で大兵肥満というのか、とにかく立派な身体になってしまったのは自分でも何となくはわかるのですがな、さすがに」
しかし、力こぶを作るなどして、むきむきになったそのからだにはけっしてふまんばかりでもないごようす。
そうですよ…おそらく、よめがどさくさまぎれになにかしたとはおもいますけどね、王さまのおからだ、痴女宮の罪人寮の罪人たちもかくやの、きたえあげられたすがたになってしまったのですっ。
そう…おうさまがごりっぱになったのは、ちんぽだけではなかったのです。
(な、なんか我らが王、ものすごくご立派になっておられんか…逸物に見合ったお体と申すべきか…)
(王妃様が若返られたってのはお聞きしたけどさ…もしかするとこの国のどの兵隊より強くなられたんじゃ…)
そう、へたをすると…おーくというのですか、おーくっくっくと笑いながらおんなを犯そうとするかいぶつよりも強くなったのではないでしょうか。
「まぁ、裸もなんだ…とりあえずこれを着て頂いてだな」
と、よめがおうさまに着せつけたふく。
なんですかこれ。
どうみても、おうさまむけとはおもえませんよ。
「柔道の道着だけど」
「マリアリーゼ陛下、それクロオビでは…まさか陛下にカラテやジュウドウの技術もお教えに…」
ええと、ぽわかーるさまとじょすりん、そのふくのいみをしっているようです。
あと、べらこへいかも。
「合気道もすり込んどいたから、なんかあったら身体が勝手に動くと思うよ…多分、そっちのテンプレス級のフグーあるでしょ、あんなふぐぅとかいう名前のかかと落としで有名だった空手の格闘家並みに強いと思うから」
「ねーさん!」
「ふん、これくらいしといた方が今後の激動のフランスにはいいだろ…だって、うちのクリス父さんですらプロボクサーをノックアウトできるんだぞ、本気でやったら…ねぇ父さん」
そこには、むりやりによびつけられたらしい、こまったかおのくりすさまが。
「マリア…なんで僕を因縁のパリに呼びつけるの…」
ええそうですよ、よのなか、してはならないはなしとか、よんではいけない場所がそんざいするのです。
とくに、くりすさまには。
おかまさくせん、という単語もきんしなのです…。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/73/
「ま、まぁ…今回はブローニュもヴァンセンヌも行かないし、第一、今のパリには偽女種はいてもほもはいないから…」
しかし、別のいみであぶないきがします。
なにせ、さいきんのくりすさま、おかまじょうたいでもないのに、かみのけをおんなのこのようにのばしているのです。
ふだんはうしろでまとめてくくっておられますけどね…。
「ポニテという単語をアルトがすっと出せないだけで」
「何を解説しとるのですか…」
ええ、さすがにべらこへいか、血相をかえてくりすさまのよこに立たれます。
まぁ、べらこへいかは聖母さまですし、くりすさまは聖母きょうかいの聖父さまあつかい。
ですので、二人のかんけいをしらなくてもふしぜんにはおもわれないでしょう。
「でさぁ…捕まった連中の指導者の中に、ナポレオン・ボナパルトって人はいるかな」
と、しばられて座らされているれんちゅうにきく、よめ。
で、わりとこがらなおにいさんが、確かにナポレオンはおれだともうします。
「よし、んじゃ取引だ。あんたでもいいけど、あんたが信頼できる同期や部下でもいい、3人、素手の喧嘩に強そうなやつを選んでくれねぇかな。そいつがあたしたちの方で選んだ人物と喧嘩して勝ったら、あんたらを自由の身にしてあげよう」
えええええ。
「まーたねーさんが悪い癖を…ポワカール閣下、いいんですか…」
「まぁ、この場はマリアリーゼ陛下の差配を拝見させて頂きましょう。で…どうかねナポレオン大尉、武器を使わぬ決闘だが…」
「ふむ…俺としては推したい奴もいるが、直接に選ぶと不公平になるな…よし、俺が立候補を呼びかけるから、呼応してくれた者の中から決闘の対戦者を選ばせてくれ。それで良いか」
えらくあたまのかいてんが早そうなひとですね、このおにいさん。
「皆、聞いての通りだ。素手の格闘に自信がある者は参加の意志を示してくれ」
と、なわをはずされたそのおにいさん、つかまったれんちゅうに声をかけます。
(目星はついてるみたいだね、ある程度は)
(ベシェールかローランか、はたまたミシェル・ネイを選ぶかですな…それよりマリアリーゼ陛下、私には対戦させて頂けないので?)
(ええー、ポワカール閣下、やりたいんですか…ジョスリンに頼もうと思ったんだけど…まぁ、今の閣下ならいけると思うんですけどね…)
(それよりマリア。僕を面子から外す選択はないの…?)
(父さん…ここでいいとこ見せないとベラ子が泣くでしょ…ジーナかーさんだってやらせろって言ってるしさ…)
おまちなさい、よめ。
くりすさまに無理じいをして、どうしますか。
あたくしがおるではありませんか。
なんでしたら、3にんまとめてでも。
(それはやめろっ。ただ、罪人扱いするけど、男組のセコンド役は頼む…)
なるほど、ぎゃくに、おとこたちに防具のつけかたやたたかいかたをおしえるのですね。
ふこうへいがあってはいけないたたかいです。
で、あたくしがつくとしって、おれもおれもとみんながさわぎます…。
「おいおい…現金な連中だな…だがこの戦いは勝ってもらわないと困る戦いだ。皆、すまないがこのナポレオンの人選に乗ってくれ…それにおそらく、あの少年も戦う面子に入っているからには見かけ通りの強さじゃない可能性がある。だから…すまないが、俺の首にかけてでも、ここは選ばせてくれないか」
(要はナポレオンの兄さん、負けた時の責任を取るって言ってくれてんだよ…だから悪いんだけど、兄さんの人選に任せてやってくれねぇか…)
(諸君。諸君らの子孫として申しておくが、敗北したからと言って死刑や刑務所などといった措置にはならないと約束させて頂こう。申し遅れたが、私は諸君の直接の子孫ではないが…フランス共和国の民選王としての職務を8年ほど勤めさせて頂いた者で、フランス人であることは間違いない。同じフランス人として、諸君らの処遇が過酷にならぬことをこの私、ミシェル・ポワカールが保証する…)
(うん、ポワカール閣下もこう言っておられるっていうか…そもそも、この格闘で決着をつけようってのはポワカール閣下が言い出された温情措置なんだよ。でなきゃさ、あたしが命じてあの訳わからん鉄の象みたいな代物の大群、あんたらにけしかけてたとこだったんだわ…)
みれば、いつのまにかひろばのまわりに、せんしゃや装甲しゃというものがあつまっています。
さらには、あおかん号に似たかっちゅうまでもが。
どごぉおおおおおん。
どかんどかんと、せんしゃのたいほうが火をふきました。
「な、なんじゃあれは!」
「あれ大砲だったんか…」
「いや待て、砲弾らしきが飛んでなかったぞ…」
ええ、かんしゅうのみなさまには「けいきづけにたいほうをぶっぱなしますけど、たまがとばない花火のようなものなのでおどろかないように。ちなみにあのくるまたちはふらんすで作られたものだそうですよ」とちゅういをしておきました。
それに、くるまたちにはあかしろあおのふらんすの旗がたっています。
「さすがに優秀な兵士の方々が多いようだ…そう、今撃ったのは空砲…儀礼の時などに撃つものだ…だが、次の砲弾が空砲だという保証はない…」
「ポワカール閣下…何やら複雑な気分ですな、あれが未来のフランスの兵力だというのと、とりあえずこの場では反乱鎮圧に来られたというのは…」
ふあんそうにしておられるおうさまに、おれにまかせろといわんばかりの笑顔でおうじる、ぽわかーるさま。
「王陛下。あの戦車たちは王陛下の指揮下にあるも同然ですよ」
で、ぽわかーるさまの合図で、いちだいの戦車がごろごろと音をたててちかよってきました。
その、たいほうがついているところの上からおりてきたへいたいさん…女のひとですよ。
「陛下、ご紹介させて頂きましょう。フランス共和国陸軍・第三機甲師団第2機甲旅団所属・第551戦車戦闘群を率いるジャンヌ・ド・バヴィエール少佐です」
「紹介に預かりましたジャンヌでございます。王陛下、並びにアントワネット妃殿下に我が指揮下の戦車隊を観閲頂けること、その身に余る光栄に存じます」
と、そのえらいおんなのひと、おうさまとお妃さまに臣下のれいをとっています。
「ジャンヌ君と申したか…この巨大なからくり、出来れば我が国民にその禍々しい砲口を向けることがないよう、余から希望しておく…」
「御意。ポワカール閣下もそれを望んでおられます。そして陛下、あくまでもこの戦車…ルクレールⅢという形式名を与えられたこれはパリ市民、そしてフランス国民を防衛するために作られたものです」
しかし、このばにこんなもんをもちこんだほんとうの理由ですけどね。
あたくしにもわかりますよ。
この、せんしゃたちがここにきたということは、パリのまちなかでなにかしようとしたれんちゅうはあらかたおさえられたか、もしくはなにかしようとしてもおさえつけられる段取りがついておるということでしょう。
すなわち。
「おうさまにさからうのはもはや、あきらめておけ」
よめとポワカールさまからの、むごんの圧力というものでしょう。
(まぁ、アルトかあたしかベラ子どころか、ジョスリン1人で充分に反乱は鎮圧できるけどさ…)
(民衆にはこの見た目が威圧的な車両群の方が効果があるでしょう。敵に回すと恐ろしいが、味方にすれば頼れるという意思表示に協力したまで)
(しかも、わざわざやったわけじゃないんだけど、女性の指揮官だからね…女が軍の指揮を取ったり、こういうものを動かす時代もいずれはやってくるよっていいアピールになるし)
なるほど、たしかにあるいたり走ってとつげきしたり、うまにのってぶきをふりまわすこの時代ならば、おとこでないとなかなかにせんそうでおてがらをたてるのもむずかしくはあるでしょう。
しかし、きかいのたすけをかりてたたかうなら、また、はなしはかわるでしょう。
じょすりんがまさにそうですけど、ちじょしゅでなくとも、おとことおんなのからだのちがいやたいりょくを補うことができますからね。
ええ、さらには、せんとうきの飛ぶ音すらきこえてますよ。
ごていねいに、ひろばのじめんぎりぎり…ここにいるひとたちをほのおでやかないていどの高さにまでおりてきた一機のひこうき、じーなさまあたりがのっているようなばしょのまどをとうめいにすると、左手でてをふってゆっくりとみなさんに「みかたですよ」とせんでんしておられます。
「Bonjour à tous à Paris. Je suis le lieutenant-commandant Perrine Closter de l'flottille 11F de l'armée de l'air navale française. Grâce à vous tous, la France est désormais en mesure de protéger son pays avec un si bel avion…」
(皆さんこんにちわ、私はフランス共和国海軍航空隊第11F飛行隊所属の少佐、ペリーヌ・クロステルです。みなさんのおかげで未来の我々は、こんな素晴らしい飛行機で国を守れるようになりました)
これも、おそらくはよめのかんがえた、ひにくたっぷりのいやがらせでしょう。
(ふふふふふ、わかってるじゃないのアルト。海軍航空隊は今、搭載艦もろとも宙兵隊扱いだし、そもそもポワカール閣下は宙兵隊総指揮官でもあるからな…)
(アルト閣下、さらに、この飛ぶ何かを人が自由自在に操っており、その人物がフランス共和国海軍の軍人を名乗っているならば、この飛行機がいざという時に何をするかはもはや皆の想像の範囲でしょう…ただ飛ぶためのものを軍隊が持つわけがない…そう思わないかね、ナポレオン大尉にロベスピエール書記…)
(つ、つまりあれは…革命派を攻撃する何かの一つだと…)
(ふむ…我々に敵意があるかはともかく、甚だしく興味深い代物だな…未来の我がフランス、あんなものを戦場で使役するのか…)
(まぁそういうことだよ。あれ、ここから10分でマルセイユまで行くほど速く飛べるんだが、その際の空気抵抗が激しくなるのを防ぐために砲弾やら爆弾の類は機内に隠しているがね、あれ1機だけでもでパリを火の海に変える対地兵装を積んでいるんだ。貴君らがお望みとあらば、革命派とやらの拠点を選択して廃墟に変えて見せろという指示、このジョスリーヌ・メルランも発令できるんだが)
と、じょすりんがおどかします。
(少佐、デモ飛行してやってくれ。ただこの時代だ、ガラス窓もやわだろうから、地表付近で音速は超えないでくれよ)
(bien reçu)
で、そのひこうき…あたまをもちあげると、ぐんぐんとじょうしょうしていきます。
そして、なんじゅうびょうかのあとで、このひろばのうえをかなりの速さでとびぬけていきます。
それも、ほかのひこうきとつれだって。
で、ひろばのうえでみごとなちゅうがえりやきょくげいひこうをみせてくださいます。
(アルト閣下は驚かれませんな…)
(あたくしほら、じーなさまのうしろにのってとんだこともなんどか)
(ああ、そうでしたね…アルト閣下であればジーナ閣下とも長いお付き合いでしたね)
おつきあいのじがちがう気もしますが、まぁとにかく、ぽわかーるさまのおはなしをば。
「重ねて言うが、我々フランス共和国軍はフランス人、わけても民衆を弾圧するために来たわけではない。痴女皇国との提携の契約によって、フランス王国人…特にお集まりの第三身分の民衆のみなさんを、万一現れた暴徒から保護して欲しいという依頼に基づいて、私たちの先祖かも知れないみなさんの前に来させて頂いたまで。みなさんの安全は他ならぬこのポワカールと痴女皇国のマリアリーゼ上皇陛下並びにマリアヴェッラ皇帝陛下、アルトリーゼ将軍閣下が保証しよう」
(つまり、あたくしにかってにあばれるなということですね…しくしく)
(アルトさんは革命派のみなさんの面倒を見るのです…不公平があってはいけないのです…禍根のない戦いをさせたげるのですよ…)
「ま、貴君らに選択肢を与えたのは王陛下とマリアリーゼ陛下の慈悲でもあるが、この私の希望でもある…すなわち、優秀有能な兵士諸君にその活躍の場所を与えて頂きたいと私も願ったのだ…時代は違うが、私もフランスの国民…それも選挙で選ばれて指導者となっていた立場なのでね」
で。
ぽわかーるさまも、おうさまと同じかっこうになってますよ。
「優男に見える私の方が与しやすいという判断ですよ。さぁ、勇敢な諸君が名を上げるまたとない機会だぞ」
よほど自信がおありなのでしょう。
(それはそうですよ…共和国の陸軍人、それも士官学校以上の教育課程を経ているのですから、格闘技の一つくらいは最低でも習わされますって…)
この、じょすりんのはつげんに、ひくとおもいきや、よっしゃとたちあがるものたちも。
「では、人選を済ませたらこちらのリング…闘技の場に出て頂きます。アルトさん、選抜された方々の誘導とセコンド役、よろしくお願いしますよ…」
しかも、王さま…ルイ16せいへいか、もしかして、からだがごりっぱになっておられませんか。
ええ、そこには、服のところどころがやぶれたり、きゅうくつになってしまったがために、すっぽんぽんもどうぜんになってしまった王さまが。
「いや、急に服が窮屈になりましてな…しかし困ったものだ…」
いえ、そりゃきゅうくつにもなるでしょうと、あたくしはもうしました。
罪人寮のざいにんたちとあまりかわらない、むきむきのからだになっておられるのはあきらかだったからです。
「よめ…これは、おうさまのいまのすがたをみていただいた方が…」
「あなた、是非にご自身の今のお姿、ご覧になって下さいまし…」
ええ、王妃さまも、だんなさん…王さまをみつめるそのめがきらきらしています。
ですが、よめの聖環のかめらでとったえいぞうを見たおうさま、ふくざつなかおです。
「いやその、何か剛力で大兵肥満というのか、とにかく立派な身体になってしまったのは自分でも何となくはわかるのですがな、さすがに」
しかし、力こぶを作るなどして、むきむきになったそのからだにはけっしてふまんばかりでもないごようす。
そうですよ…おそらく、よめがどさくさまぎれになにかしたとはおもいますけどね、王さまのおからだ、痴女宮の罪人寮の罪人たちもかくやの、きたえあげられたすがたになってしまったのですっ。
そう…おうさまがごりっぱになったのは、ちんぽだけではなかったのです。
(な、なんか我らが王、ものすごくご立派になっておられんか…逸物に見合ったお体と申すべきか…)
(王妃様が若返られたってのはお聞きしたけどさ…もしかするとこの国のどの兵隊より強くなられたんじゃ…)
そう、へたをすると…おーくというのですか、おーくっくっくと笑いながらおんなを犯そうとするかいぶつよりも強くなったのではないでしょうか。
「まぁ、裸もなんだ…とりあえずこれを着て頂いてだな」
と、よめがおうさまに着せつけたふく。
なんですかこれ。
どうみても、おうさまむけとはおもえませんよ。
「柔道の道着だけど」
「マリアリーゼ陛下、それクロオビでは…まさか陛下にカラテやジュウドウの技術もお教えに…」
ええと、ぽわかーるさまとじょすりん、そのふくのいみをしっているようです。
あと、べらこへいかも。
「合気道もすり込んどいたから、なんかあったら身体が勝手に動くと思うよ…多分、そっちのテンプレス級のフグーあるでしょ、あんなふぐぅとかいう名前のかかと落としで有名だった空手の格闘家並みに強いと思うから」
「ねーさん!」
「ふん、これくらいしといた方が今後の激動のフランスにはいいだろ…だって、うちのクリス父さんですらプロボクサーをノックアウトできるんだぞ、本気でやったら…ねぇ父さん」
そこには、むりやりによびつけられたらしい、こまったかおのくりすさまが。
「マリア…なんで僕を因縁のパリに呼びつけるの…」
ええそうですよ、よのなか、してはならないはなしとか、よんではいけない場所がそんざいするのです。
とくに、くりすさまには。
おかまさくせん、という単語もきんしなのです…。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/73/
「ま、まぁ…今回はブローニュもヴァンセンヌも行かないし、第一、今のパリには偽女種はいてもほもはいないから…」
しかし、別のいみであぶないきがします。
なにせ、さいきんのくりすさま、おかまじょうたいでもないのに、かみのけをおんなのこのようにのばしているのです。
ふだんはうしろでまとめてくくっておられますけどね…。
「ポニテという単語をアルトがすっと出せないだけで」
「何を解説しとるのですか…」
ええ、さすがにべらこへいか、血相をかえてくりすさまのよこに立たれます。
まぁ、べらこへいかは聖母さまですし、くりすさまは聖母きょうかいの聖父さまあつかい。
ですので、二人のかんけいをしらなくてもふしぜんにはおもわれないでしょう。
「でさぁ…捕まった連中の指導者の中に、ナポレオン・ボナパルトって人はいるかな」
と、しばられて座らされているれんちゅうにきく、よめ。
で、わりとこがらなおにいさんが、確かにナポレオンはおれだともうします。
「よし、んじゃ取引だ。あんたでもいいけど、あんたが信頼できる同期や部下でもいい、3人、素手の喧嘩に強そうなやつを選んでくれねぇかな。そいつがあたしたちの方で選んだ人物と喧嘩して勝ったら、あんたらを自由の身にしてあげよう」
えええええ。
「まーたねーさんが悪い癖を…ポワカール閣下、いいんですか…」
「まぁ、この場はマリアリーゼ陛下の差配を拝見させて頂きましょう。で…どうかねナポレオン大尉、武器を使わぬ決闘だが…」
「ふむ…俺としては推したい奴もいるが、直接に選ぶと不公平になるな…よし、俺が立候補を呼びかけるから、呼応してくれた者の中から決闘の対戦者を選ばせてくれ。それで良いか」
えらくあたまのかいてんが早そうなひとですね、このおにいさん。
「皆、聞いての通りだ。素手の格闘に自信がある者は参加の意志を示してくれ」
と、なわをはずされたそのおにいさん、つかまったれんちゅうに声をかけます。
(目星はついてるみたいだね、ある程度は)
(ベシェールかローランか、はたまたミシェル・ネイを選ぶかですな…それよりマリアリーゼ陛下、私には対戦させて頂けないので?)
(ええー、ポワカール閣下、やりたいんですか…ジョスリンに頼もうと思ったんだけど…まぁ、今の閣下ならいけると思うんですけどね…)
(それよりマリア。僕を面子から外す選択はないの…?)
(父さん…ここでいいとこ見せないとベラ子が泣くでしょ…ジーナかーさんだってやらせろって言ってるしさ…)
おまちなさい、よめ。
くりすさまに無理じいをして、どうしますか。
あたくしがおるではありませんか。
なんでしたら、3にんまとめてでも。
(それはやめろっ。ただ、罪人扱いするけど、男組のセコンド役は頼む…)
なるほど、ぎゃくに、おとこたちに防具のつけかたやたたかいかたをおしえるのですね。
ふこうへいがあってはいけないたたかいです。
で、あたくしがつくとしって、おれもおれもとみんながさわぎます…。
「おいおい…現金な連中だな…だがこの戦いは勝ってもらわないと困る戦いだ。皆、すまないがこのナポレオンの人選に乗ってくれ…それにおそらく、あの少年も戦う面子に入っているからには見かけ通りの強さじゃない可能性がある。だから…すまないが、俺の首にかけてでも、ここは選ばせてくれないか」
(要はナポレオンの兄さん、負けた時の責任を取るって言ってくれてんだよ…だから悪いんだけど、兄さんの人選に任せてやってくれねぇか…)
(諸君。諸君らの子孫として申しておくが、敗北したからと言って死刑や刑務所などといった措置にはならないと約束させて頂こう。申し遅れたが、私は諸君の直接の子孫ではないが…フランス共和国の民選王としての職務を8年ほど勤めさせて頂いた者で、フランス人であることは間違いない。同じフランス人として、諸君らの処遇が過酷にならぬことをこの私、ミシェル・ポワカールが保証する…)
(うん、ポワカール閣下もこう言っておられるっていうか…そもそも、この格闘で決着をつけようってのはポワカール閣下が言い出された温情措置なんだよ。でなきゃさ、あたしが命じてあの訳わからん鉄の象みたいな代物の大群、あんたらにけしかけてたとこだったんだわ…)
みれば、いつのまにかひろばのまわりに、せんしゃや装甲しゃというものがあつまっています。
さらには、あおかん号に似たかっちゅうまでもが。
どごぉおおおおおん。
どかんどかんと、せんしゃのたいほうが火をふきました。
「な、なんじゃあれは!」
「あれ大砲だったんか…」
「いや待て、砲弾らしきが飛んでなかったぞ…」
ええ、かんしゅうのみなさまには「けいきづけにたいほうをぶっぱなしますけど、たまがとばない花火のようなものなのでおどろかないように。ちなみにあのくるまたちはふらんすで作られたものだそうですよ」とちゅういをしておきました。
それに、くるまたちにはあかしろあおのふらんすの旗がたっています。
「さすがに優秀な兵士の方々が多いようだ…そう、今撃ったのは空砲…儀礼の時などに撃つものだ…だが、次の砲弾が空砲だという保証はない…」
「ポワカール閣下…何やら複雑な気分ですな、あれが未来のフランスの兵力だというのと、とりあえずこの場では反乱鎮圧に来られたというのは…」
ふあんそうにしておられるおうさまに、おれにまかせろといわんばかりの笑顔でおうじる、ぽわかーるさま。
「王陛下。あの戦車たちは王陛下の指揮下にあるも同然ですよ」
で、ぽわかーるさまの合図で、いちだいの戦車がごろごろと音をたててちかよってきました。
その、たいほうがついているところの上からおりてきたへいたいさん…女のひとですよ。
「陛下、ご紹介させて頂きましょう。フランス共和国陸軍・第三機甲師団第2機甲旅団所属・第551戦車戦闘群を率いるジャンヌ・ド・バヴィエール少佐です」
「紹介に預かりましたジャンヌでございます。王陛下、並びにアントワネット妃殿下に我が指揮下の戦車隊を観閲頂けること、その身に余る光栄に存じます」
と、そのえらいおんなのひと、おうさまとお妃さまに臣下のれいをとっています。
「ジャンヌ君と申したか…この巨大なからくり、出来れば我が国民にその禍々しい砲口を向けることがないよう、余から希望しておく…」
「御意。ポワカール閣下もそれを望んでおられます。そして陛下、あくまでもこの戦車…ルクレールⅢという形式名を与えられたこれはパリ市民、そしてフランス国民を防衛するために作られたものです」
しかし、このばにこんなもんをもちこんだほんとうの理由ですけどね。
あたくしにもわかりますよ。
この、せんしゃたちがここにきたということは、パリのまちなかでなにかしようとしたれんちゅうはあらかたおさえられたか、もしくはなにかしようとしてもおさえつけられる段取りがついておるということでしょう。
すなわち。
「おうさまにさからうのはもはや、あきらめておけ」
よめとポワカールさまからの、むごんの圧力というものでしょう。
(まぁ、アルトかあたしかベラ子どころか、ジョスリン1人で充分に反乱は鎮圧できるけどさ…)
(民衆にはこの見た目が威圧的な車両群の方が効果があるでしょう。敵に回すと恐ろしいが、味方にすれば頼れるという意思表示に協力したまで)
(しかも、わざわざやったわけじゃないんだけど、女性の指揮官だからね…女が軍の指揮を取ったり、こういうものを動かす時代もいずれはやってくるよっていいアピールになるし)
なるほど、たしかにあるいたり走ってとつげきしたり、うまにのってぶきをふりまわすこの時代ならば、おとこでないとなかなかにせんそうでおてがらをたてるのもむずかしくはあるでしょう。
しかし、きかいのたすけをかりてたたかうなら、また、はなしはかわるでしょう。
じょすりんがまさにそうですけど、ちじょしゅでなくとも、おとことおんなのからだのちがいやたいりょくを補うことができますからね。
ええ、さらには、せんとうきの飛ぶ音すらきこえてますよ。
ごていねいに、ひろばのじめんぎりぎり…ここにいるひとたちをほのおでやかないていどの高さにまでおりてきた一機のひこうき、じーなさまあたりがのっているようなばしょのまどをとうめいにすると、左手でてをふってゆっくりとみなさんに「みかたですよ」とせんでんしておられます。
「Bonjour à tous à Paris. Je suis le lieutenant-commandant Perrine Closter de l'flottille 11F de l'armée de l'air navale française. Grâce à vous tous, la France est désormais en mesure de protéger son pays avec un si bel avion…」
(皆さんこんにちわ、私はフランス共和国海軍航空隊第11F飛行隊所属の少佐、ペリーヌ・クロステルです。みなさんのおかげで未来の我々は、こんな素晴らしい飛行機で国を守れるようになりました)
これも、おそらくはよめのかんがえた、ひにくたっぷりのいやがらせでしょう。
(ふふふふふ、わかってるじゃないのアルト。海軍航空隊は今、搭載艦もろとも宙兵隊扱いだし、そもそもポワカール閣下は宙兵隊総指揮官でもあるからな…)
(アルト閣下、さらに、この飛ぶ何かを人が自由自在に操っており、その人物がフランス共和国海軍の軍人を名乗っているならば、この飛行機がいざという時に何をするかはもはや皆の想像の範囲でしょう…ただ飛ぶためのものを軍隊が持つわけがない…そう思わないかね、ナポレオン大尉にロベスピエール書記…)
(つ、つまりあれは…革命派を攻撃する何かの一つだと…)
(ふむ…我々に敵意があるかはともかく、甚だしく興味深い代物だな…未来の我がフランス、あんなものを戦場で使役するのか…)
(まぁそういうことだよ。あれ、ここから10分でマルセイユまで行くほど速く飛べるんだが、その際の空気抵抗が激しくなるのを防ぐために砲弾やら爆弾の類は機内に隠しているがね、あれ1機だけでもでパリを火の海に変える対地兵装を積んでいるんだ。貴君らがお望みとあらば、革命派とやらの拠点を選択して廃墟に変えて見せろという指示、このジョスリーヌ・メルランも発令できるんだが)
と、じょすりんがおどかします。
(少佐、デモ飛行してやってくれ。ただこの時代だ、ガラス窓もやわだろうから、地表付近で音速は超えないでくれよ)
(bien reçu)
で、そのひこうき…あたまをもちあげると、ぐんぐんとじょうしょうしていきます。
そして、なんじゅうびょうかのあとで、このひろばのうえをかなりの速さでとびぬけていきます。
それも、ほかのひこうきとつれだって。
で、ひろばのうえでみごとなちゅうがえりやきょくげいひこうをみせてくださいます。
(アルト閣下は驚かれませんな…)
(あたくしほら、じーなさまのうしろにのってとんだこともなんどか)
(ああ、そうでしたね…アルト閣下であればジーナ閣下とも長いお付き合いでしたね)
おつきあいのじがちがう気もしますが、まぁとにかく、ぽわかーるさまのおはなしをば。
「重ねて言うが、我々フランス共和国軍はフランス人、わけても民衆を弾圧するために来たわけではない。痴女皇国との提携の契約によって、フランス王国人…特にお集まりの第三身分の民衆のみなさんを、万一現れた暴徒から保護して欲しいという依頼に基づいて、私たちの先祖かも知れないみなさんの前に来させて頂いたまで。みなさんの安全は他ならぬこのポワカールと痴女皇国のマリアリーゼ上皇陛下並びにマリアヴェッラ皇帝陛下、アルトリーゼ将軍閣下が保証しよう」
(つまり、あたくしにかってにあばれるなということですね…しくしく)
(アルトさんは革命派のみなさんの面倒を見るのです…不公平があってはいけないのです…禍根のない戦いをさせたげるのですよ…)
「ま、貴君らに選択肢を与えたのは王陛下とマリアリーゼ陛下の慈悲でもあるが、この私の希望でもある…すなわち、優秀有能な兵士諸君にその活躍の場所を与えて頂きたいと私も願ったのだ…時代は違うが、私もフランスの国民…それも選挙で選ばれて指導者となっていた立場なのでね」
で。
ぽわかーるさまも、おうさまと同じかっこうになってますよ。
「優男に見える私の方が与しやすいという判断ですよ。さぁ、勇敢な諸君が名を上げるまたとない機会だぞ」
よほど自信がおありなのでしょう。
(それはそうですよ…共和国の陸軍人、それも士官学校以上の教育課程を経ているのですから、格闘技の一つくらいは最低でも習わされますって…)
この、じょすりんのはつげんに、ひくとおもいきや、よっしゃとたちあがるものたちも。
「では、人選を済ませたらこちらのリング…闘技の場に出て頂きます。アルトさん、選抜された方々の誘導とセコンド役、よろしくお願いしますよ…」
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