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女子プロの星☆アステ皇帝(かいざあ)・7
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ううむ。
男の中にも春を売る男がおるという事実を改めて突きつけられ、うろたえる私、フランシスカ。
で、なぜに中米出身者、特にメヒカーナである私が内心はそんな春を売るような男…更には偽女種や6919号をあまり良くは思えていないのか。
いえ、理解はしてますよ。
それに、毛嫌いしているわけでもないのです。
ただ…ですねぇ。
うちの国、男らしくないと人権がないのです。
それは、スペイン支配から脱却した後のメヒコの歴史と、貧民の娯楽に由来するところ大の気風風習習慣なのです…。
実はメヒコには、スペインであれば闘牛に匹敵する…いえ、それ以上に民衆には絶大な人気を博したエル・デポルテが存在します。
ええ、ルチャ・リブレ…すなわちプロレスリングです。
メヒコでのルチャ・リブレの歴史は古いと言えば古く、西暦1800年台にフランス流のレスリングをメヒコ流に改訂したエンリケ・ウガルテチェアという格闘家がルチャ・リブレの鼻祖として伝わっております。
そして、1934~35年にかけてルチャ・リブレ界に登場した選手が、メヒコにおけるルチャドール…プロレスラーを崇める決定的な活躍を長年に渡って続け、更には彼の息子までもが同じレスリングスタイルを踏襲するのです。
その選手のリングでの呼び名、聖人と申します。
その活躍は映画や漫画でも伝えられ、スペルエストレージャ中のスーパースターとして今なお、メヒコでは語り継がれる立場。
特に、映画ではプロレスラーが主演する「ルチャシネマ」が一つの分野になっているほどなのです。
(日本じゃミル・マスカラスってのが有名な覆面選手だったけどな)
(メヒコの覆面選手は絶対に素顔を晒してはならないという掟がありますが、これをアメリカでも適用させたのがその、マスカラスであったのですよね…マスカラスもエル・サントの掟を忠実に守ったルチャドールにしてテクニカなのですが)
(そう言えば、フランシスカさんも覆面ルチャドーラとして稼ごうとした時期があったと聞いたけどさ…)
(あれは体力を要するので、体型がモデル稼業とはいささかに違わなくてはなりません。で、泣く泣く断念したのです…)
で、マリアリーゼ陛下がこの件をご存知なのはともかく、皆様にはお分かりでしょうか。
メヒコでは強い男女、そして戦う男女を支持する気風が存在するのですが、その理由の一つがルチャ・リブレ人気なのです…。
そして覆面レスラーに悪役ではなく善玉が多いのは、かかってエル・サントの人気が絶大なためでもあるのですよ…。
(日本でも一時期、プロレスが人気を博したこともあったし…あの筋肉の消しゴムが流行した漫画も、言ってみりゃメキシコのプロレス人気の影響も受けたようなもんだ。覆面選手、何人か出てたしね…)
(そもそもあの、7つの球の物語でも天下一武道会がありましたでしょう。あれもメヒコであの漫画が流行った理由のうちなのです…)
で、勧善懲悪の思想や、麻薬王と呼ばれた連中が喜捨を欠かさない理由も、ルチャ・リブレ人気にあるのです。
ルチャ・リブレでは必ず最後に正義が勝つという単純明快な方向で試合が進むことが望ましいのです。
それゆえに悪役は悪役でなくてはならないのですが、一方で正義の選手は覆面で正体を隠しながら戦うという、革命戦争でのゲリラにも似たスタイルで戦うことが好まれました。
そう…自由な戦いと言われておるのは伊達ではないのです…。
で、そんな気風のルチャ・リブレはメヒコ以外でも人気を博しておりまして、更には中南米における侠気の気風とあいまって、強い男女に尊敬が集まる風土の醸成を助けたのです。
お分かりでしょうか、6919号のような…英語で言えばギークやナードと分類されるようなオタクたちは、我がメヒコや彼の母国などでは、大変に肩身が狭いのです…。
(まぁ、逆に弱い男を助ける強い女って絵図も描けるじゃんか。それにさ、メキシコでのプロレス人気をさ、明日輝の統治の参考にしようって考えてるよね、フランシスカさん…あなたも確か、幼い頃はルチャドーラになりたかったわけだし、ある意味であなたの夢を叶えるような話ができるかも知れないね…)
どえええええっ。
そ、それはまさか…。
いえ、私もそれなりのことを考えてはおりましたよ。
特に、統治後の人気取り。
痴女皇国世界でのスペインで行われている姦淫闘牛やローマの闘技場での演し物、果ては南洋での競牛など、庶民向けの娯楽は何らかの形で必要でしょう。
そのあたりで私は、色々と思うところがあったのです…。
ええ、血生臭い生贄の儀式に代わって、民衆の支持を得られるような何かを…。
(ふふふふふふふふふふふふ、あたしは前向きにモノを考える人間は大好きなんだけどさ、一見、突飛な着想を思いつく人間も大好きなんだよ…だからあたしがあなたの着想、形にする手伝いをしてあげるよ…いいだろ雅美さん…)
(今の明日輝や魔屋の実態を考えると、確かに一種の神事は必要だと思うしね…その辺はマリアちゃんならさ、ほら、ゆっきーのお父さん…宇賀神さんなんか昔っからの熱烈なプロレスマニアだったでしょ…あの人に聞いたらかなりの話は教えてくれると思うわよ…)
むう、確かに日本にはメヒコからも何人の選手が訪問しておって、あちらでも名の通った選手が輩出されてはおりますが。
(更に都合のいいことにさ、アステカの戦士を名乗る覆面レスラーがいたんだよ…アニメと特撮の複合番組にもなったんだけどね…)
あ…確かいましたね。
こちら…メヒコのリングにも上がったことがあるのでは。
(フランシスカさん。皇帝として忠告しておきますが、姉の悪役笑いの時は注意してください。ロクなことを思いついてないというのがもはや、女官たちの定評なのです…)
(今度は大丈夫だって…雅美さんもその辺の事情を知ってるんだし、宇賀神さんにも話をするからさ…)
以前には何か、失敗事例があったのでしょうか。
気になりますが、それよりも上皇陛下…そして内務局長様の後ろ盾というのは魅力的。
ええ、この瞬間に私の思いつき、形になることが確定したようです。
(それと、魔屋と明日輝の平定作戦についての指揮官だけど…さすがにアルトがやりすぎるという件はあたしも重く見ている。なもんで人選をしてから伝えるから、そうだな…とりあえずは地雷国の帰りに痴女宮警務局に寄ってくれ。統括騎士団長のダリアに話は通しておく。一応は痴女皇国本国も絡んだ公式の軍事作戦扱いにするから…)
(はいはい。まぁ、アルトさん単体で行かせるわけには行きませんしな…)
(なぜあたくしがしきかんではだめなのですかぁっ)
(行かせねぇとは言ってないだろうが…)
(そう言えばマリアリーゼ陛下、私の腹案なのですが…明日輝でも魔屋でも、生贄を要求していた存在…神を否定してしまう出来事を歓迎するどころか、神の不在を嘆き悲しむという事態が起きておりますとか)
(そうなんだよね…精神支配めいたもんがあってね…いけにえを捧げることで自分たちの生活を脅かされないようにされていたって認識がなかなか外れないって魔族さんたちも頭抱えてんだよね…捧げ物はいいとしても、質のいい少年少女を何かのたんびに犠牲にしてたらもったいないって思うけどねぇ、あたしらは…)
(で、もしかするとですね、そういう迷信の打破のためには、こういう方向性も考えられるのでは…ごにょごにょ)
(ふむふむ。確かに興味深い思いつきだね…じゃ、本宮に戻ったら連絡おくれよ)
どうも、私の出した発案、マリアリーゼ陛下の興を惹く内容だったようです。
(とりあえずは…専門家ってわけじゃないけど、その方面に詳しい人に心当たりがあるんだ)
つまり、検討者としてその人物を呼んで来られるのでしょう。
---------------------
で。
助平な話をご期待であった皆様。
本当に申し訳ありません。
(実は、珍芥子国方面の視察の際に、そりゃもう色々と…)
この、カーティカ様の発言で、何かをお察し頂ければ。
しかし、痴女皇国管内である地雷国や珍芥子国の去就もそれ相応に気にはなりますけど、なんといっても私フランシスカの目下の職務、我が祖国と全く同じ場所にある明日輝、そしてオノリナや6919号の生国の昔の姿でもある魔屋の統治を担当していくための戦略を進める立場なのです…。
(りくえすとを下されば、やみおちまりあの方で助平ばなしを暴露するそうです…)
(それはもうずこばこずっぽずっぽ)
(落ち着いたらまた、お伺いさせて頂きます…)
ええ、地雷国は地雷国で、このインドシナ半島なる一帯の拠点として本国から注力されている立場なのを理解させて頂きました。
その一方、私に任される明日輝と魔屋。
正直、地理的には要衝であるとは思いますけど、痴女皇国の発展に寄与する産業なり何かしらを興せる場所なのかと申しますと、うーむ。
(まぁまぁ…確かに、フランシスカさんの祖国だけに問題点をよく把握してもらってるとは思うよ。だけどね、あの地のいけにえ文化の根絶とさ、何より新しい文化の創出を図ってくれることをあたしは期待したいんだよね。だから、地雷国に比べて扱いが劣るとかそういうことは考えないようにね…何のためにアレーゼおばさまに米大陸統括本部長をやってもらっているか、それは南北アメリカ大陸の広さと重要性を鑑みての家族会承認事項なんだからね…)
つまり、私がこれは必要とかこれが欲しいと言ったことは、それなりに検討頂けるようです。
(少なくとも淫化を南米行政支局とした程度の支援はあるとお考え下さい…痴女皇国本国の力を信じて欲しいのです…)
マリアヴェッラ陛下からも、励ましと支援を確約するお言葉を頂きましたし…。
で、エマニエル部長が助っ人で来られて乗組員に加わったスケアクロウ、アンコール・トム飛行場を離れると一気に聖院空港上空に転移してしまいます。
この、恒星間超光速航行まがいの転移飛行操作、最低でもスケアクロウの認定操縦者4名が揃っていないと出来ないらしいですね…。
まぁともかく、時差的には1時間程度ですので、夕闇迫る聖院空港に着陸したスケアクロウから、高級そうなルノーのミニバンに分乗して本宮の最上階に近いダム側入り口に連れて行かれます。
そして、貴賓応接室に案内された私たちの目の前には…なんと、水割りを作るマリアリーゼ陛下と、頭頂部の髪の毛の位置がそこそこに後退したものの、ジュウドウかカラテ…またはルチャ・リブレの経験者を想起させる鍛えた肉体のハポンの男性が。
「ああ、これはこれは申し訳ない…皆さんの到着待ちだってことで、マリアさんにNBで作られ始めた銘柄のスコッチを試させて頂いていましてね…マリアさん、こちらがメキシコとかグアテマラ辺りの方で…Hola mujeres hermosas.Soy un humilde empleado de una estación de televisión japonesa, pero me gustaría agradecerles.(美しい女性のみなさん、こんにちわ。私は日本のテレビ局のしがない社員ですが、よろしく)」
ほう…スペイン語が少しはおできになられるようですね。
「Soy un humilde empleado de una estación de televisión japonesa, pero me gustaría agradecerles.(取材だけじゃなくて若い頃、休職してアメリカをうろついたことがありましてね。英語を喋れない人もいたもんですから)」
で、この方が昔からの日本のぷろれすファンで、ルチャ・リブレにもお詳しいウガジンという方…広報部のユキコ・ウガジン部長のお父様なのだそうです。
「宇賀神です。よろしく」
握手を交わした手の拳だこが目に付く御仁ですが、やはり格闘技をかじっているだけではなく、お仕事でも乱闘をせざるを得なかった立場のお方なのですね。
「フランシスカさんのような方に集ってくる虫を追い払うような仕事もさせられていましてね。同じ業界のモンとして、著名なキャスターにお目にかかれるのは光栄ですよ」
なるほど、カントウ・メディアが昔はカントウ・テレビジョンを名乗っていた時代からの生え抜きのテレビマンで、ディレクトル経験者なのですか…思わぬところでギョウカイジンにお会いするものです。
で、失礼かとは思ったのですが、密かに頭の中を覗かせて頂きます。
ふむ…皇帝室のイトウ課長が昔、エスクェーラ・セコンダリア…高校在学中に、悪漢の手からお守りになった経験もお持ちと…って相手、コロンビアのメデジン・カルテルの手の者だったのですか!
ええ…いくら治安のよい日本といえど、それなりに凶暴な手口で商売敵を排除したり、警察や軍とも相応にやり合った連中です。
首魁だったパブロ・エスコバルこそ排除されましたが、その縄張りやカルテルの運営の諸々はメヒコの悪人に引き継がれたのを存じております。
ううむ、なんたる私好みの経歴…しかし、美人の奥様がいらっしゃるのですか、これは残念。
(フランシスカ様が恋する乙女の目をしておられますが)
(メヒコの女性がルチャのエストレージャに憧れるのは仕方ないよ、姉さん…)
(いいこと6919号…エストレージャ、それもスペルエストレージャはもちろん、ルードやルーダであってもルチャ・リブレの選手は民衆の耳目を集める存在なのよ…エスカンダロを起こさないように鍛錬と精進を欠かさないことを興行主からは求められるの…)
そして、ルチャ・リブレの公式選手となるためには先輩選手に弟子入りして団体の認定試験に合格する必要があるのです…結構、門は狭いのですよ…。
「まぁ、言ってみれば芸能人…それも人気俳優や女優めいた存在ですからね…時間があればアレナ・メヒコにも足を伸ばして観戦したかったんですが」
ほう。ルチャ・リブレの聖地までご存知とは。
ますますもって、このウガジンなる人物、マリアリーゼ陛下が下にも置かぬ態度で接しておられる理由が何となく理解できました。
ちなみにこの場にはマリアリーゼ陛下とセニョール・ウガジンと私たちの他、マリアヴェッラ陛下とジョスリーヌ分団長、そしてダリア統括騎士団長とアルト将軍閣下が在席しておられますよ。
と、そこに…本宮女官寮2階の購買部で買い込まれたらしきお菓子の袋を持って現れる、タナカ内務局長とペルセポネーゼ黒薔薇騎士団長が。
「お待たせ、とりあえずアテに指定されたド◯タコスとハバネロ買って来たけどいいの?」
「はいはい、あんがと…まぁ、中米の人にはこれがいいでしょ…」
いや、いくらメヒカーナでも、そうそう辛いものばかり食べてる訳でもないのですが。
しかしまぁ、コ*ナやテキーラに合うと言えば合うのです、日本のメヒコ風味のお菓子。
でまぁ…私はもちろん、オノリナや6919号も、見た目はともかく実際には飲酒可能な年齢です。
我々にもとりあえずはコ*ナ・エキストラの瓶が振る舞われますので、差し当たっては乾杯をば。
「しかし、中米の話だと…伊藤知広さん…瞳さんのお父さんの方が詳しいかも知れませんぜ、マリアさん。何たってあの御仁、アラスカからパタゴニアまでロケでうろついた経歴持ちだし」
「いやいや、その辺はあたしと雅美さんでフォローするからさ…で、ここなフランシスカさんなんだけど、痴女皇国のメキシコっていうか中米地区の戦略担当なんだよ。ただ…アステカやマヤ神話の信奉者が現地に根強くてさ、あたしらも正直手ぇ焼いてんだよ…」
「あー、アメリカのネイティブと同じようなもんだな。ほら、自然信仰が強いから、他の考えを押し付けようとしてもうまく行かないってのは世界あるあるってところでしょう」
「んだね…ただ、インディアンと違って何かあるといけにえの風習をやりそうになるのが頭の痛ぇとこなんだよ…」
「かといって、スペインみたいに征服しちまうわけにもいかないと…」
と、考え込まれるウガジン様。
「ま、フランシスカさんがプロレスを現地で流行らせて、相撲の御前試合とか奉納試合みたいな感じで新しい信仰を向こうの民衆に与えるって考え自体は悪くないと思いますよ。あとは、アステカやマヤの連中が神様のお告げだの神の救いだって思ってくれるような出来事が…そうだな、悪役レスラーめいた征服者や侵略者が、こっちの中南米のスペイン征服者よろしく現れて暴れようとする出来事が起きたとしましょうか。で、マリアさんの配下の方々が、そいつらを撃退することで信用が得られるかも知れませんぜ」
ええ…partido de arreglo de partidos(八百長試合)ですか…。
「いやいや、その辺は演出次第ですよ。それに、本場のメキシカンスタイルだと八百長に見えない八百長でないと客は沸かないでしょ。迫真の演技ってやつですよ」
と、不器用なウインクをしてみせるウガジン様ですが。
「そういえば…とある機会でルチャドールやルチャドーラ達から八百長に関しての話をお聞きした事があります。確かに、ルードやルーダが暴れるとしても、観客に危害を及ぼしたり、際限なく暴虐を尽くすのは民衆の支持を得ない行為。従って、悪役が悪役として振る舞うにも作法があると言っておられましたね…」
「ですから、そういった暗黙の了解までをも否定しちまうと、全てのプロレスの試合は八百長試合ってことになるんですよ。観客を沸かせるための演出は必ず必要だと思いますぜ、俺は…」
ええ、確かにルチャ・リブレは相手を傷つけたり殺すための本当の喧嘩ではなく、あくまでも格闘の試合。
そして、観客が存在する興行なのですよね…。
「でね、ここにおられる皆さんは男より強い訳ですよね。だったらこういう事も考えていいんじゃないかっていう話をさせて頂きましょう。言ってみれば、マヤやアステカの現地住民に皆さんが強くて頼りになるってことを知らしめるならですよ、連邦世界のメキシコと違って、女子プロレスラー、つまりルチャドーラが主役を務めればいいんじゃないですか?」
男の中にも春を売る男がおるという事実を改めて突きつけられ、うろたえる私、フランシスカ。
で、なぜに中米出身者、特にメヒカーナである私が内心はそんな春を売るような男…更には偽女種や6919号をあまり良くは思えていないのか。
いえ、理解はしてますよ。
それに、毛嫌いしているわけでもないのです。
ただ…ですねぇ。
うちの国、男らしくないと人権がないのです。
それは、スペイン支配から脱却した後のメヒコの歴史と、貧民の娯楽に由来するところ大の気風風習習慣なのです…。
実はメヒコには、スペインであれば闘牛に匹敵する…いえ、それ以上に民衆には絶大な人気を博したエル・デポルテが存在します。
ええ、ルチャ・リブレ…すなわちプロレスリングです。
メヒコでのルチャ・リブレの歴史は古いと言えば古く、西暦1800年台にフランス流のレスリングをメヒコ流に改訂したエンリケ・ウガルテチェアという格闘家がルチャ・リブレの鼻祖として伝わっております。
そして、1934~35年にかけてルチャ・リブレ界に登場した選手が、メヒコにおけるルチャドール…プロレスラーを崇める決定的な活躍を長年に渡って続け、更には彼の息子までもが同じレスリングスタイルを踏襲するのです。
その選手のリングでの呼び名、聖人と申します。
その活躍は映画や漫画でも伝えられ、スペルエストレージャ中のスーパースターとして今なお、メヒコでは語り継がれる立場。
特に、映画ではプロレスラーが主演する「ルチャシネマ」が一つの分野になっているほどなのです。
(日本じゃミル・マスカラスってのが有名な覆面選手だったけどな)
(メヒコの覆面選手は絶対に素顔を晒してはならないという掟がありますが、これをアメリカでも適用させたのがその、マスカラスであったのですよね…マスカラスもエル・サントの掟を忠実に守ったルチャドールにしてテクニカなのですが)
(そう言えば、フランシスカさんも覆面ルチャドーラとして稼ごうとした時期があったと聞いたけどさ…)
(あれは体力を要するので、体型がモデル稼業とはいささかに違わなくてはなりません。で、泣く泣く断念したのです…)
で、マリアリーゼ陛下がこの件をご存知なのはともかく、皆様にはお分かりでしょうか。
メヒコでは強い男女、そして戦う男女を支持する気風が存在するのですが、その理由の一つがルチャ・リブレ人気なのです…。
そして覆面レスラーに悪役ではなく善玉が多いのは、かかってエル・サントの人気が絶大なためでもあるのですよ…。
(日本でも一時期、プロレスが人気を博したこともあったし…あの筋肉の消しゴムが流行した漫画も、言ってみりゃメキシコのプロレス人気の影響も受けたようなもんだ。覆面選手、何人か出てたしね…)
(そもそもあの、7つの球の物語でも天下一武道会がありましたでしょう。あれもメヒコであの漫画が流行った理由のうちなのです…)
で、勧善懲悪の思想や、麻薬王と呼ばれた連中が喜捨を欠かさない理由も、ルチャ・リブレ人気にあるのです。
ルチャ・リブレでは必ず最後に正義が勝つという単純明快な方向で試合が進むことが望ましいのです。
それゆえに悪役は悪役でなくてはならないのですが、一方で正義の選手は覆面で正体を隠しながら戦うという、革命戦争でのゲリラにも似たスタイルで戦うことが好まれました。
そう…自由な戦いと言われておるのは伊達ではないのです…。
で、そんな気風のルチャ・リブレはメヒコ以外でも人気を博しておりまして、更には中南米における侠気の気風とあいまって、強い男女に尊敬が集まる風土の醸成を助けたのです。
お分かりでしょうか、6919号のような…英語で言えばギークやナードと分類されるようなオタクたちは、我がメヒコや彼の母国などでは、大変に肩身が狭いのです…。
(まぁ、逆に弱い男を助ける強い女って絵図も描けるじゃんか。それにさ、メキシコでのプロレス人気をさ、明日輝の統治の参考にしようって考えてるよね、フランシスカさん…あなたも確か、幼い頃はルチャドーラになりたかったわけだし、ある意味であなたの夢を叶えるような話ができるかも知れないね…)
どえええええっ。
そ、それはまさか…。
いえ、私もそれなりのことを考えてはおりましたよ。
特に、統治後の人気取り。
痴女皇国世界でのスペインで行われている姦淫闘牛やローマの闘技場での演し物、果ては南洋での競牛など、庶民向けの娯楽は何らかの形で必要でしょう。
そのあたりで私は、色々と思うところがあったのです…。
ええ、血生臭い生贄の儀式に代わって、民衆の支持を得られるような何かを…。
(ふふふふふふふふふふふふ、あたしは前向きにモノを考える人間は大好きなんだけどさ、一見、突飛な着想を思いつく人間も大好きなんだよ…だからあたしがあなたの着想、形にする手伝いをしてあげるよ…いいだろ雅美さん…)
(今の明日輝や魔屋の実態を考えると、確かに一種の神事は必要だと思うしね…その辺はマリアちゃんならさ、ほら、ゆっきーのお父さん…宇賀神さんなんか昔っからの熱烈なプロレスマニアだったでしょ…あの人に聞いたらかなりの話は教えてくれると思うわよ…)
むう、確かに日本にはメヒコからも何人の選手が訪問しておって、あちらでも名の通った選手が輩出されてはおりますが。
(更に都合のいいことにさ、アステカの戦士を名乗る覆面レスラーがいたんだよ…アニメと特撮の複合番組にもなったんだけどね…)
あ…確かいましたね。
こちら…メヒコのリングにも上がったことがあるのでは。
(フランシスカさん。皇帝として忠告しておきますが、姉の悪役笑いの時は注意してください。ロクなことを思いついてないというのがもはや、女官たちの定評なのです…)
(今度は大丈夫だって…雅美さんもその辺の事情を知ってるんだし、宇賀神さんにも話をするからさ…)
以前には何か、失敗事例があったのでしょうか。
気になりますが、それよりも上皇陛下…そして内務局長様の後ろ盾というのは魅力的。
ええ、この瞬間に私の思いつき、形になることが確定したようです。
(それと、魔屋と明日輝の平定作戦についての指揮官だけど…さすがにアルトがやりすぎるという件はあたしも重く見ている。なもんで人選をしてから伝えるから、そうだな…とりあえずは地雷国の帰りに痴女宮警務局に寄ってくれ。統括騎士団長のダリアに話は通しておく。一応は痴女皇国本国も絡んだ公式の軍事作戦扱いにするから…)
(はいはい。まぁ、アルトさん単体で行かせるわけには行きませんしな…)
(なぜあたくしがしきかんではだめなのですかぁっ)
(行かせねぇとは言ってないだろうが…)
(そう言えばマリアリーゼ陛下、私の腹案なのですが…明日輝でも魔屋でも、生贄を要求していた存在…神を否定してしまう出来事を歓迎するどころか、神の不在を嘆き悲しむという事態が起きておりますとか)
(そうなんだよね…精神支配めいたもんがあってね…いけにえを捧げることで自分たちの生活を脅かされないようにされていたって認識がなかなか外れないって魔族さんたちも頭抱えてんだよね…捧げ物はいいとしても、質のいい少年少女を何かのたんびに犠牲にしてたらもったいないって思うけどねぇ、あたしらは…)
(で、もしかするとですね、そういう迷信の打破のためには、こういう方向性も考えられるのでは…ごにょごにょ)
(ふむふむ。確かに興味深い思いつきだね…じゃ、本宮に戻ったら連絡おくれよ)
どうも、私の出した発案、マリアリーゼ陛下の興を惹く内容だったようです。
(とりあえずは…専門家ってわけじゃないけど、その方面に詳しい人に心当たりがあるんだ)
つまり、検討者としてその人物を呼んで来られるのでしょう。
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で。
助平な話をご期待であった皆様。
本当に申し訳ありません。
(実は、珍芥子国方面の視察の際に、そりゃもう色々と…)
この、カーティカ様の発言で、何かをお察し頂ければ。
しかし、痴女皇国管内である地雷国や珍芥子国の去就もそれ相応に気にはなりますけど、なんといっても私フランシスカの目下の職務、我が祖国と全く同じ場所にある明日輝、そしてオノリナや6919号の生国の昔の姿でもある魔屋の統治を担当していくための戦略を進める立場なのです…。
(りくえすとを下されば、やみおちまりあの方で助平ばなしを暴露するそうです…)
(それはもうずこばこずっぽずっぽ)
(落ち着いたらまた、お伺いさせて頂きます…)
ええ、地雷国は地雷国で、このインドシナ半島なる一帯の拠点として本国から注力されている立場なのを理解させて頂きました。
その一方、私に任される明日輝と魔屋。
正直、地理的には要衝であるとは思いますけど、痴女皇国の発展に寄与する産業なり何かしらを興せる場所なのかと申しますと、うーむ。
(まぁまぁ…確かに、フランシスカさんの祖国だけに問題点をよく把握してもらってるとは思うよ。だけどね、あの地のいけにえ文化の根絶とさ、何より新しい文化の創出を図ってくれることをあたしは期待したいんだよね。だから、地雷国に比べて扱いが劣るとかそういうことは考えないようにね…何のためにアレーゼおばさまに米大陸統括本部長をやってもらっているか、それは南北アメリカ大陸の広さと重要性を鑑みての家族会承認事項なんだからね…)
つまり、私がこれは必要とかこれが欲しいと言ったことは、それなりに検討頂けるようです。
(少なくとも淫化を南米行政支局とした程度の支援はあるとお考え下さい…痴女皇国本国の力を信じて欲しいのです…)
マリアヴェッラ陛下からも、励ましと支援を確約するお言葉を頂きましたし…。
で、エマニエル部長が助っ人で来られて乗組員に加わったスケアクロウ、アンコール・トム飛行場を離れると一気に聖院空港上空に転移してしまいます。
この、恒星間超光速航行まがいの転移飛行操作、最低でもスケアクロウの認定操縦者4名が揃っていないと出来ないらしいですね…。
まぁともかく、時差的には1時間程度ですので、夕闇迫る聖院空港に着陸したスケアクロウから、高級そうなルノーのミニバンに分乗して本宮の最上階に近いダム側入り口に連れて行かれます。
そして、貴賓応接室に案内された私たちの目の前には…なんと、水割りを作るマリアリーゼ陛下と、頭頂部の髪の毛の位置がそこそこに後退したものの、ジュウドウかカラテ…またはルチャ・リブレの経験者を想起させる鍛えた肉体のハポンの男性が。
「ああ、これはこれは申し訳ない…皆さんの到着待ちだってことで、マリアさんにNBで作られ始めた銘柄のスコッチを試させて頂いていましてね…マリアさん、こちらがメキシコとかグアテマラ辺りの方で…Hola mujeres hermosas.Soy un humilde empleado de una estación de televisión japonesa, pero me gustaría agradecerles.(美しい女性のみなさん、こんにちわ。私は日本のテレビ局のしがない社員ですが、よろしく)」
ほう…スペイン語が少しはおできになられるようですね。
「Soy un humilde empleado de una estación de televisión japonesa, pero me gustaría agradecerles.(取材だけじゃなくて若い頃、休職してアメリカをうろついたことがありましてね。英語を喋れない人もいたもんですから)」
で、この方が昔からの日本のぷろれすファンで、ルチャ・リブレにもお詳しいウガジンという方…広報部のユキコ・ウガジン部長のお父様なのだそうです。
「宇賀神です。よろしく」
握手を交わした手の拳だこが目に付く御仁ですが、やはり格闘技をかじっているだけではなく、お仕事でも乱闘をせざるを得なかった立場のお方なのですね。
「フランシスカさんのような方に集ってくる虫を追い払うような仕事もさせられていましてね。同じ業界のモンとして、著名なキャスターにお目にかかれるのは光栄ですよ」
なるほど、カントウ・メディアが昔はカントウ・テレビジョンを名乗っていた時代からの生え抜きのテレビマンで、ディレクトル経験者なのですか…思わぬところでギョウカイジンにお会いするものです。
で、失礼かとは思ったのですが、密かに頭の中を覗かせて頂きます。
ふむ…皇帝室のイトウ課長が昔、エスクェーラ・セコンダリア…高校在学中に、悪漢の手からお守りになった経験もお持ちと…って相手、コロンビアのメデジン・カルテルの手の者だったのですか!
ええ…いくら治安のよい日本といえど、それなりに凶暴な手口で商売敵を排除したり、警察や軍とも相応にやり合った連中です。
首魁だったパブロ・エスコバルこそ排除されましたが、その縄張りやカルテルの運営の諸々はメヒコの悪人に引き継がれたのを存じております。
ううむ、なんたる私好みの経歴…しかし、美人の奥様がいらっしゃるのですか、これは残念。
(フランシスカ様が恋する乙女の目をしておられますが)
(メヒコの女性がルチャのエストレージャに憧れるのは仕方ないよ、姉さん…)
(いいこと6919号…エストレージャ、それもスペルエストレージャはもちろん、ルードやルーダであってもルチャ・リブレの選手は民衆の耳目を集める存在なのよ…エスカンダロを起こさないように鍛錬と精進を欠かさないことを興行主からは求められるの…)
そして、ルチャ・リブレの公式選手となるためには先輩選手に弟子入りして団体の認定試験に合格する必要があるのです…結構、門は狭いのですよ…。
「まぁ、言ってみれば芸能人…それも人気俳優や女優めいた存在ですからね…時間があればアレナ・メヒコにも足を伸ばして観戦したかったんですが」
ほう。ルチャ・リブレの聖地までご存知とは。
ますますもって、このウガジンなる人物、マリアリーゼ陛下が下にも置かぬ態度で接しておられる理由が何となく理解できました。
ちなみにこの場にはマリアリーゼ陛下とセニョール・ウガジンと私たちの他、マリアヴェッラ陛下とジョスリーヌ分団長、そしてダリア統括騎士団長とアルト将軍閣下が在席しておられますよ。
と、そこに…本宮女官寮2階の購買部で買い込まれたらしきお菓子の袋を持って現れる、タナカ内務局長とペルセポネーゼ黒薔薇騎士団長が。
「お待たせ、とりあえずアテに指定されたド◯タコスとハバネロ買って来たけどいいの?」
「はいはい、あんがと…まぁ、中米の人にはこれがいいでしょ…」
いや、いくらメヒカーナでも、そうそう辛いものばかり食べてる訳でもないのですが。
しかしまぁ、コ*ナやテキーラに合うと言えば合うのです、日本のメヒコ風味のお菓子。
でまぁ…私はもちろん、オノリナや6919号も、見た目はともかく実際には飲酒可能な年齢です。
我々にもとりあえずはコ*ナ・エキストラの瓶が振る舞われますので、差し当たっては乾杯をば。
「しかし、中米の話だと…伊藤知広さん…瞳さんのお父さんの方が詳しいかも知れませんぜ、マリアさん。何たってあの御仁、アラスカからパタゴニアまでロケでうろついた経歴持ちだし」
「いやいや、その辺はあたしと雅美さんでフォローするからさ…で、ここなフランシスカさんなんだけど、痴女皇国のメキシコっていうか中米地区の戦略担当なんだよ。ただ…アステカやマヤ神話の信奉者が現地に根強くてさ、あたしらも正直手ぇ焼いてんだよ…」
「あー、アメリカのネイティブと同じようなもんだな。ほら、自然信仰が強いから、他の考えを押し付けようとしてもうまく行かないってのは世界あるあるってところでしょう」
「んだね…ただ、インディアンと違って何かあるといけにえの風習をやりそうになるのが頭の痛ぇとこなんだよ…」
「かといって、スペインみたいに征服しちまうわけにもいかないと…」
と、考え込まれるウガジン様。
「ま、フランシスカさんがプロレスを現地で流行らせて、相撲の御前試合とか奉納試合みたいな感じで新しい信仰を向こうの民衆に与えるって考え自体は悪くないと思いますよ。あとは、アステカやマヤの連中が神様のお告げだの神の救いだって思ってくれるような出来事が…そうだな、悪役レスラーめいた征服者や侵略者が、こっちの中南米のスペイン征服者よろしく現れて暴れようとする出来事が起きたとしましょうか。で、マリアさんの配下の方々が、そいつらを撃退することで信用が得られるかも知れませんぜ」
ええ…partido de arreglo de partidos(八百長試合)ですか…。
「いやいや、その辺は演出次第ですよ。それに、本場のメキシカンスタイルだと八百長に見えない八百長でないと客は沸かないでしょ。迫真の演技ってやつですよ」
と、不器用なウインクをしてみせるウガジン様ですが。
「そういえば…とある機会でルチャドールやルチャドーラ達から八百長に関しての話をお聞きした事があります。確かに、ルードやルーダが暴れるとしても、観客に危害を及ぼしたり、際限なく暴虐を尽くすのは民衆の支持を得ない行為。従って、悪役が悪役として振る舞うにも作法があると言っておられましたね…」
「ですから、そういった暗黙の了解までをも否定しちまうと、全てのプロレスの試合は八百長試合ってことになるんですよ。観客を沸かせるための演出は必ず必要だと思いますぜ、俺は…」
ええ、確かにルチャ・リブレは相手を傷つけたり殺すための本当の喧嘩ではなく、あくまでも格闘の試合。
そして、観客が存在する興行なのですよね…。
「でね、ここにおられる皆さんは男より強い訳ですよね。だったらこういう事も考えていいんじゃないかっていう話をさせて頂きましょう。言ってみれば、マヤやアステカの現地住民に皆さんが強くて頼りになるってことを知らしめるならですよ、連邦世界のメキシコと違って、女子プロレスラー、つまりルチャドーラが主役を務めればいいんじゃないですか?」
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