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がんばれペアーズ・おねショタ布教軍創設ものがたり・10.2
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ふむ。
どうやら、痴女皇国の目指すところは聖母教会による他地域の支配を淫化神殿に置き換えた行政形態。
従って、純粋な淫化神話に基づいた教育をする…という訳でもなさそうです。
「生き神様がいるのに、我々の都合の良いようにせずしてどうしますか。それに、イリヤさんたちは純粋な淫化の神様ではないのです。ただ…古来からこの淫化の人々と接触交流していて、一種の貿易取引すらあった一族の子孫ではあるのですけどね」
ぬうっ。
そして、とりあえずは淫化神殿の階級制度や、神事などを学ぶことに。
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南米行政支局神殿神官階級・聖母教会階級対比
聖母教会 淫化神殿
(聖母) 太陽神(代理)淫化では聖イリヤ
(聖女) 月神(代理) 淫化では聖ロッテ
(教皇) 淫化皇帝 太陽神血統世襲
枢機卿 百万神官 百万卒以上
大司教 十万神官 十万卒以上
司教 万卒神官 一万卒以上
司祭 千卒神官 千人卒以上 ↑ちんぽ有
-------------------------------------------------------
助祭 百卒神官 百人卒以上 ↓ちんぽ無
修道司祭 ※ 十人卒以上
修道助祭 ※ 一人卒以上
-------------------------------------------------------
↓学生身分
修練士 太陽処女・侍従候補(男子・偽女種含む)
助修士 太陽処女・侍従候補(男子・偽女種含む)
※太陽乙女・月乙女・偽女種侍従
-------------------------------------------------------
で、この神職階級の違いは既に、痴女皇国と淫化側で協議して決定されたものであると。
そして、この階級の違い…更には性別の違いで、居住可能な場所が大幅に変わるようなのです。
何が言いたいのか、と申しますと、男子学校の場所をどこにするかで、通学経路の問題が出るのです。
元来は月乙女街区と俗人街区の境界に男子校舎を作る予定でした。
しかし、教育目標として、同世代である太陽乙女と組ませた方が良いのではとなったのです。
これには、試験的に集めた少年たちの面倒を積極的に見ているのが太陽乙女である件もさりながら、月乙女達は俗人区画のもう1種類の住人である成人俗人男性の生活を支援することが主任務であるのも影響しておるそうです。
ですので、現状ではサクサイワマン南神殿の聖院学院・淫化神学部校舎内に男子教室を設けるべきではないのか。
従来の淫化神殿の処女尊重傾向は痴女皇国との提携によって変更され、処女ではなく乙女と定義されおめこさせる事が正義となった今、南神殿に少年…それも成人すれば女神官の侍従となる立場の少年が出入りしても良いのではとなったのです。
が、しかし。
少年たちは現在、クスコ市街の外れたる俗人区画の男子寮に居住する立場。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/170/
https://x.com/725578cc/status/1724374427243344223?s=20
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淫化帝国挿入器具市帝都略図
←サクサイワマン神殿(黄金広場から2km程度)
ハナン・クスコ(北半街区)
クンティスーユ地区|チンチャイスーユ地区
太陽乙女神官候補寮|貴人居住区画
太陽乙女神官寮 |
---------○----------
コリャスーユ地区 |アンティスーユ地区
月乙女神官寮 |俗人居住区画
乙女侍従官寮 |男子生徒寮もこの区画
フリン・クスコ(南半街区) →クスコ空港
○黄金広場・行政神殿
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淫化帝国炸砕岩満神殿略図
□□□□□□□←北神殿
□□□●□□□ 王居・中央塔
□□□□□□□ 転送ゲート他
中央広場 挿入器具市街地↘︎
□□□□□□□←南神殿・東西塔
□●□□□●□ 太陽処女学校
□□□□□□□ 黄金騎士修練所他
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お分かりでしょうか。
現状の男子生徒寮であれば、学校を南神殿に設けた場合の通学を徒歩とすると…最大、片道1時間近くかかるのです。
「今の行政宮殿そばに設けた男子の仮設校舎なら、30分かからないんだけどね…」
「男子生徒寮を乙女の花園たるクンティスーユ地区に新設すべきか。はたまた、往復1時間を我慢して通ってもらうか、通学用の交通機関を用意するか…」
で、ここでも問題があります。
サクサイワマン神殿、北と南に別れております。
<i795766|38087>
(連邦世界のサクサイワマン遺跡はこのような感じですが、私どもの隼神殿は南北の神殿外観と大きさが同じになっております。ただ、北神殿と南神殿では突き出た塔の数が違いますが…)
で、イリヤ様やチャスカ様に理由をご説明頂きましたが。南側は後宮扱いの乙女の園。
サクサイワマン神殿の朝と夕方の儀式は北神殿で行われますが、南神殿で行われる中天…午の儀式。
これはサクサイワマンの神官候補として選抜された処女が太陽乙女として認められる儀式となるそうです。
(この儀式はどすけべ内容かつ、チャスカの身体に精毒を流し込んで魔毒浄化を図るための重要な儀式なのですよ…だから私やロッテは避けてたんです…出席…)
(お言葉ですがイリヤ様。マチュピチュとワイナピチュの朝晩も大概)
(これチャスカ。しかもサクサイワマンの中天の儀式って本来は男人禁制でしょ…おまけにハルキは南の神殿長に伴われて行政宮殿に行くとか恐ろしい話になっていたではないですか、当初…私たちが強硬に反対して、やっとクイリョルがサクサイワマンの苗床の間に来る話になったではないですか…)
ええと、これは一体全体。
(丞相クイリョルは元来、月乙女の立場ですが、行政神官として太陽乙女の地位を与えられております。で、クイリョルは元々は太陽神殿であった行政神殿の長として、そこに起居する立場なのですよ…では、彼女の魔毒抜き、どうするのって話になりまして…)
で、サクサイワマンの転送ゲートの間と行政神殿地下を繋ぐことで、クイリョル様は毎日の昼食の代わりに、その…チャスカ様の伴侶兼皇配侍従のハルキ様から精毒を頂いていると…つまり、クイリョル様、まだ少年のハルキ様に犯される立場なのですね…。
更にはチャスカ様曰く。
(淫化の価値観だと、本当は淫化皇帝の所有物たるハルキに犯されるだけでも大変に栄誉となるのです。それに、ですねぇ…行政神殿よりはサクサイワマン居住者…つまりハルキの方が格上なんですよ、で、格下のクイリョルの住居でもある行政神殿にハルキが行ってオメコとやらをするだけでも畏れ多い話ではあります)
で、ではどこで精気授受…いえもとい魔毒抜きを。
(行政神殿の正面です。ハルキの訪問を出迎えたクイリョルがハルキをシャクハチして、その後で精毒を下賜されるのが本来の予定された儀式でした。これでも、本当なら神事なので黄金神殿か、さもなくば行政神殿にも一応は存在する黄金の間…小さいものですけど、そこですべき話なのですよ…ただ、時間的にも儀式的にも面倒な内容になってしまうので、略式で神殿前でやっちゃえというのが私の出した妥協案でしたっ)
確かに略式なのでしょう。
聖母教会の正式手順の洗礼や各種儀式、それに慈母寺の類似祭礼に通暁せざるを得なかった私としても、まぁ、どんな式にしたかったかは理解できますよ。
それに、たまにある痴女宮の重懲罰。
あの本宮正面玄関の前で、黒薔薇騎士か内務局長様か、はたまたアルト様かダリア団長に犯されるアレに比べたら。
(私ら、あの面子からいい加減外して欲しいのですけどな…ペルセちゃん含めて黒薔薇からも言われてますねん…もう時代も時代やし、滝壺か雅美さんのお墓の前で充分やんと…)
(ダリアはまだくろばら出身としてもですよ、あたくしまであんなことをやらせるのですか!)
(ダリアもアルトくんもメンツに入ってよ!でないと黒薔薇が出払ってたらあたしの役目なのよ!ブイブイ言わせてた昔ならいざ知らず、今、あれやれって言われてもね…あとダリア、お願いだからあたしのお墓の前で懲罰やめて…)
(あの穢れ具合が、悪さした連中には程よく恐ろしげに効きますねんがな…)
ええと。
田中局長のお墓のあの恐ろしい状況はともかくですね。
嫌な意見が殺到している事ならば、やめるべき、やめさせるべきでは。
仮にも痴女皇国の大幹部、百万卒どころでは効かない方々がこうもぼやきを致されるとは。
(世の中覆せない理不尽もあるんですわ…)
(れおのーるさんもいいかげん、りふじんを知ったとおもうのですが、せけんにはもっとりふじんな事がそんざいするのです…)
(マリ公。さすがにあの玄関はやめたれ…せやないと、懲罰写真の引き伸ばし版を本宮玄関に飾らすぞ…)
あら。
初代聖母様ですね、この心話。
しかし、皆様の件もさりながら、私の今の境遇について初代聖母様にちょこっと言ってみても…駄目ですかね。
(ええと、レオノールさんか。オリューレさんと缶詰ちゃんから今、概略を教えてもろたけど、淫化への配転が出た以上はそれに従っとくほうがこの場は無難やな…)
聖母様、缶詰…と言いかけていたマルハレータ陛下、どうやらジーナ様の矯正は諦めてしまわれたようですね。
(それにあんた。余程派手なミスをせぇへんかったら、これから制度を整えて国としてやっていこうという淫化やろ?はっきり言えば手柄立て放題やんか。あとは…悪い癖を矯正しとく事やな。こればかりは、うちにもどないにもならん)
なるほど…聖母様、元々は軍隊で専門的な分野を担当する軍人を養成する教官役だったそうですが、自助努力の線引きをきっちりされる癖がおありのようですね…。
(まぁ、うちの元来の仕事では甘やかそうにも甘やかされん職務の士官を養成しとったからな…マルハちゃんが今、教わっとるような事を更にきつくした教程が待ってると思うといて…)
(ううううう、聖母様からも「とりあえず輸送機のライセンスから始めなさい」と言われましてん…)
(さすがにバンシーの飛ばし方教えるんは大変やしな…うちも今、基本はNBやからマルハちゃんにべったり言う訳にもいかんのや…そのアトランティックIIのライセンス下りたら、痴女皇国とNBの大気圏内限定やけどスケアクロウの操縦試験受験資格は出せるよってな…)
(えええええ、許可やなしに受験の資格なんですか…)
(飛行機というものは厳しいのや…)
(そりゃそうだ…プランセス、軍隊で使っている乗り物はすべからく、生命に関わる危機的な状況での運用を前提にされているからな…アトランティックII輸送機ももちろんだが、あのVAB装甲車にしても、軍人が扱う前提で設計されている代物なんだよ…)
(あー、それであの装甲車、ひっくり返っても座席に身体を縛り付けとく紐がついてますのか…)
(ああ、ジョスリンから回してもろた装甲車か。あれはIED…簡易地雷なんかで吹っ飛ばされた時に車の中で体が変なとこに飛んで行ったりぶつかって負傷してまう二次災害防止のための椅子が兵員輸送室に入ってるやろな…メーカーや形式は違うけど、宙兵隊や日本の自衛軍やらでも似たような車は使っとるし、何より飛行機の操縦用の椅子がそうなっとるやろ?)
で、話の中身は分からねど、気付いた事があります。
聖母様の本来の考え自体が、甘やかすにも限界があるから自分で自分を何とかして行きなさい、というのが教え方の基本にあると思うのです。
(そらそやろ…人は普通、人の親になるんやで…今の痴女皇国やったら即成栽培かかるから、親になった実感が薄いとは思うけどな…)
う。
この、聖母様の一言がぶっすりと胸に刺さった気がします。
(人はいつか親と死に別れるんが通常やねんからな。それにあんた、男にしても女にしても、甘やかし過ぎはあかんと思うぞ…特に男の子相手。で、逆に女にはかなりきっつい部類ちゃうか)
う。
言われてみれば、昔は教えた男の子、結構甘やかしてたかも…。
(大方それで失意するような事があって、そっからドSに針が逆振りした部類やろあんた…うちは痴女種能力を完全に使えんようになっとるみたいやけど、それくらいは読めるぞ…)
ひぃいいいいいっ。
逆にそこまで読めるのも結構、恐ろしい気がします。
(人は便利さに溺れるんや…今更百人卒未満の痴女種どころか還俗とか言われてみい…あんたにしてみたら死刑宣告も同然の仕打ちにならんか…)
た、確かに…。
(これはうちも内務局皇帝室秘書課長をやっとったせいで娘どもの監督をやらなあかんかったが為に培ったスキルやけどな、まぁ、自分の能力を過信せんことと、他人の感情を把握することやな…)
うう、とんでもないところでとんでもない方にお説教を受けてしまったようです。
(それとこの場でついでに、レオノールにはあまりよろしうないお知らせとよろしいかもわからんお知らせがある…。マクシミリアンの淫化行きは却下された…ただ、ちょっとおもろい話をイリヤはんとかロッテはんから聞いてな。にやにや)
何やらニヤニヤしている上司…直接の主君ではありませんが、私の人生に多大な影響を及ぼせる人物です。
それと、マルハレータ陛下、あの気性の荒いマドゥラ族や、果てはカリブを席巻した荒くれ海賊たちからも一種の信用を得ているお方です。
その理由は…。
(簡単や。空手形を掴まさんこと。これに尽きる。翻ってれんぽう世界のスペイン、インカや他の南米で一体何をやったか知ったら、その真逆を行ったったら信じてもらえるやろ?)
ふむ…。
(ただ、ワイはいにしえの淫化の生贄の風習を聞きつけた時に思いついた事でな。これを実際に実行するかどうか、そしてワイの思うた通りに行くかどうかはわからんぞ…まぁとりあえず巡察の車の中で話しよか。チャスカ陛下も乗ってくるらしいし)
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「実は、ワイナピチュに眠る先帝アヤから聞いた話です。この淫化を痴女皇国があわや誅滅しかけた理由として、国難を避け豊穣を祈るがために少年少女を高山に埋める生贄風習があったとか」
「ふむ…それは初耳ですね…」顔をしかめるオリューレ様。
で、クスコ市内をゆっくりと走る件の装甲車とやら、運転席のジョスリーヌ様は私たちからは見えませんが、車長席に座って誘導しておられるのはチャスカ様。
そしてオリューレ様、マルハレータ陛下、大臣のクイリョル様。そして私が装甲車の後ろにおりますが、そこに駆けつけて来られるイリヤ様とアスタロッテ様。
(田野瀬です。インカの歴史も絡むというので田中内務局長…雅美さんに心話参加を依頼しました…)
(えーと、カパコチャの儀式って奴でしょ。あたし専攻はアジア史だったからちゃんと説明できるかどうかわかんないけど、今の淫化には当時の風習を知ってる人が激減してしまった実情もあるからね…クイリョルさん、カパコチャについてどれくらいご存知ですか?)
「はい、マサミ様…古来の淫化では、神の世界に遣わす使者として選ばれし少年少女を育てておりました。ご承知かも知れませぬが、乳母の辺りの南淫化や離魔の辺りでは一帯を治める黄金神殿が存在致しますので、そこが独自にカパコチャをしておったとも伝わっております」
(その辺は連邦世界のインカとあまり変わらないわね。街道や飛脚便を整備してはいたけど、南米一帯を支配するインカ文明をもってしても中央集権国家の運営は難しかったようでね…アルゼンチンやチリの辺りは地方政府めいた組織に自治させてたの。それが、クイリョルさんが言う地方の黄金神殿ね。離魔の近所にも淫化とは別の古代文明国家が作ったピラミッドを改装した神殿があるはずよ)
「は。パチャカマックの事ですな」
(で…アカタマ砂漠…痴女皇国世界だとアルゼンチンチンの赤玉砂漠に聳えるジュジャイジャコっていう標高6,700メートルを超す成層火山が存在するんだけど、連邦世界の歴史では1999年にこの火山の山頂から三体の少年少女のミイラが発見されたの。ただ、この火山は周辺が乾燥した砂漠なので僅かな雪しか山頂に存在しないくらい乾いた土地にあります。で、ミイラ化してた子供たちと副葬品の保存状態が極めて良かったことで、カパコチャの儀式に関する詳細な研究が進んだ経緯があったのよ…なんせ淫化もそうだけど、インカ帝国に文字が存在しなかったからね…伝承は口頭か、現代に残ってる遺産遺跡を解析するしかなかったのよ、従来は)
「で、ここからは私が引き継がせて頂きます。挿入器具市近辺…即ち本国の黄金神殿が把握していた範囲ですが、天災など国難が生じた際は暗死の山々でなるべく高い山を選び、神の元に遣わすべく育てておった子供を埋めておったのです…」
重々しく語るクイリョル様。
マサミ様の話と合わせてお聞きしましたところ、その風習、地域によっては定期的にやっていた可能性もあるそうです。
で、カパコチャなる儀式の1年前から選抜されたいけにえ候補の子供たちには、ふんだんにコカの葉ととうもろこし酒、そして充実した食事が与えられていたそうです。
「理由は、神に遣わす使者は自らの足にて神の頂きに登る必要があるとされたからです。神官や用人が同行しますが、これは山の頂にて使者となる子と、その装いや用品を埋めて神に祈るがため。あくまでも使者が登らねばならなかったのです…」
(まぁ実際には大の大人でも後年、登頂に苦労するような山だから子供を背負って登るのも厳しかったんでしょう。アンデスで一番高いアコンカグアでも少年のミイラが見つかってるんだけど、これ、標高5,000メートルくらいで発見された上に頭を強く打った痕跡があったのよ…恐らく山頂に至る前に滑落して死んだ可能性があるって言われてるけどね…)
なるほど、しかし、そんな厳しい山にわざわざ登るとは。
(インカの神の世界は天上にあるとされたの。で、なるべく神に近い場所で人の要望を伝える代わりに、神の世界で暮らしなさいという風に子供たちを教育してたはず…ですね、クイリョルさん)
「マサミ様のお話の通り。で…その神への使者の中に、将来を嘱望された前淫化…淫化帝国となる前の皇朝の皇子クシがおられたはずなのです…クシはその才覚故に父王や兄に妬まれ、カパコチャの使者として指名されてしまったのです…」
ええっ。
それでは、既にお亡くなりなのでは。
(もちろん。ただねぇ…いけにえにされた場所によっては氷漬けか、はたまたジュジャイジャコのミイラみたいにうまく乾燥して保存状態が良好な可能性があるのよ。まぁ、エベレストの遭難者のご遺体が残ってるのと類似の状態なのね)
「マサミ様。皇子クシの登りし山、かなりの確度で知られております。このクスコから見て日の昇る方角よりやや南、ネバド・アウサンガト…雪に覆われし神界の門、との意がございます…淫化暦の冬には、神門が開かれて神が地に降臨する事を祝う祭りを致す山でございます…」
(そうそう、クスコから割と近い…50キロほどってのもあって、そこの山中にクシ皇子の遺体が残ってる可能性があるのよねぇ)
「で、マサミ殿…まさか、人を蘇らせるとか…そのような話でございますか…」
(そういう話でもあるし、そういう話じゃないかも知れません。で、お次はイリヤさんとロッテさん。リュネの昔の話になるんだけど、あれ、教えてあげてよ)
(ええー…ロッテはまだしも、私でなくレヴェンネの方が古リュネの歴史にはまだ詳しいかも知れませんよ…)
(まぁまぁ。んでぇ…ロッテさん、今しがた昔の淫化で起きた跡目争いの話が出たんだけど、リュネの王族でも昔々、似たような話がなかったかしら…)
「あった。そしてこれは、レヴェンネはまだしも、イリヤには衝撃かも知れん。心して聞いてくれ」
な…どのようなお話なのでしょうか。
「イリヤ。リュネ人族は一種のいけにえとして、人を我らに捧げて代わりに鉄器の製造技術の伝授を始めとした交流交易をしていた事実、前に少しだけ話しただろう…」
「何か言ってましたね」
「でな、リュネ側も苗床の性質や効能を知っていた者がいたのだ。すなわち、苗床は単純に放り込まれた者を溶かして食うのではなく、その覚えごとも吸い取り蓄えているのだよ。一度に大量の兵魔を産み出したり、私や魔王様の身体を再生できるのも、苗床のその性質があってこそ、なし得ることなのだ」
あー、なるほど…痴女種の身体復元や駄洒落菌の作用とは違った形で、人を再生できるのですね。
「それでな…レヴェンネ、王位を巡って、ある時に揉めた話、リュネ王家に伝わってなかったか…もし知らねば私が語るが…」
(後継がなかなか生まれ図、西方北国から迎えた姫との間の子を王にする話ならば)
「それだな…間違いない。で、その後にリュネ王家では本妻も子を出産したはずだ…」
げ。
それは…跡目争いの予感がします。
(もちろん、争いになりました。しかも後継候補を産むためにと寄越された姫を送り出した西方北国を始めとする、西方三国を巻き込んで…)
「で、困った当代のリュネ王と剣聖は、密かに我らに取引を持ちかけたのだ。というのも、実のところその西方の姫が産んだ子は容姿端麗にして剣聖の素質すらあったようだ。少なくとも聖剣を握っても大丈夫だったという苗床の記憶がある…つまりだな」
「ロッテ…まさか…」
イリヤ様の顔が凍りついています。
「ああ、そうだ。嫡男というのか…リュネ王室の正妻が産んだ子こそ正しい王の後継とする正妻派はその庶子を我々へのいけにえとして始末しようと陰謀を巡らせたのだ。だが、我々とてそんな身分の高い者をうかつに攫ってリュネと揉めては困るとなってな…最初は武人の才覚のあったその王子を指揮官に仕立て、魔族大陸に近い場所に陣を張らせて我らを挑発しようとしたようなのだ」
「ロッテ、それは真の話ですか…」
「そんな内紛、リュネ側が証拠を残すわけないだろ…ただ、さっきも言った通り、王の息子をさらったり食ってみろ。リュネと無用な戦争を始める事になるし、お前たちも困ったことになるだろ…だが王や剣聖は王妃一派の暴走を止められんかったようでな…」
(当時のリュネ王、確か魔毒のせいもありますが元々はあまり健康な方ではなく、魔法での延命にも限度があるとされておりましたね…)
「で、我々は王の子の軍勢を敢えて襲撃したが、その際に用意した兵魔はかなり弱い部類でな。そしてその指揮官は…私だ」
どえええええっ。
「そして現場に急行した剣聖によって我々は大損害をこうむって退却する羽目に陥ったが、その際に手傷を負った王子は海岸で行方知れずとなったとされたのだ…魔剣によって引き起こされた津波に流されたのだろうと、リュネ側では生死不明の扱いとなり国葬もされたんじゃなかったかな」
(ロッテ様のお話と大体の筋書きは同じのはずですよ。まぁ、ロッテ様から真相を聞いた時の私、呆れましたけどね…ただ、それ、仕方なかったと思いますよ、イリヤ様…)
「ええっ。確かロッテ、時のリュネ王と密約を交わしたと…」
「ああ。リュネの政治が乱れるのは我々にも都合が悪かったからな。小競り合いをしながら適度に人を頂くのが我らには良いのだ…それが内乱でリュネ側が弱体化したり、あまつさえ王族を奪われた仇とばかりに、こっちに攻め込まれてみろ…強い魔族を苗床から出せば迎撃は容易だが、無用な死者を累々積み上げるのは私たちだって本意じゃないんだから…」
「まぁ、ロッテの言うことをとりあえず信じておきましょう。で…その庶子の王子、波にさらわれたと見せかけ、あなたが苗床に保管したのですね?」
衝撃的なイリヤ様の発言。
「よくわかったな…一種のいけにえだが、そんな優秀有能な王子ならと私も応諾せざるを得なかったのだよ」
「そこまで言われたら私にも推測できますよ。それに、あの苗床の能力なら…その王子を復活させることはできますね?」
「うむ。リュネ王家の血筋が絶えた際にはその子をリュネに戻して欲しいとの王の懇願でな…それ故に立ち会った剣聖とも話がついていたのだ…その王子…クシー王子は出昼族に近い特徴も入ってしまうが、リュネの戦士としての適性を備えた状態で再生は可能だ…」
どうやら、痴女皇国の目指すところは聖母教会による他地域の支配を淫化神殿に置き換えた行政形態。
従って、純粋な淫化神話に基づいた教育をする…という訳でもなさそうです。
「生き神様がいるのに、我々の都合の良いようにせずしてどうしますか。それに、イリヤさんたちは純粋な淫化の神様ではないのです。ただ…古来からこの淫化の人々と接触交流していて、一種の貿易取引すらあった一族の子孫ではあるのですけどね」
ぬうっ。
そして、とりあえずは淫化神殿の階級制度や、神事などを学ぶことに。
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南米行政支局神殿神官階級・聖母教会階級対比
聖母教会 淫化神殿
(聖母) 太陽神(代理)淫化では聖イリヤ
(聖女) 月神(代理) 淫化では聖ロッテ
(教皇) 淫化皇帝 太陽神血統世襲
枢機卿 百万神官 百万卒以上
大司教 十万神官 十万卒以上
司教 万卒神官 一万卒以上
司祭 千卒神官 千人卒以上 ↑ちんぽ有
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助祭 百卒神官 百人卒以上 ↓ちんぽ無
修道司祭 ※ 十人卒以上
修道助祭 ※ 一人卒以上
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↓学生身分
修練士 太陽処女・侍従候補(男子・偽女種含む)
助修士 太陽処女・侍従候補(男子・偽女種含む)
※太陽乙女・月乙女・偽女種侍従
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で、この神職階級の違いは既に、痴女皇国と淫化側で協議して決定されたものであると。
そして、この階級の違い…更には性別の違いで、居住可能な場所が大幅に変わるようなのです。
何が言いたいのか、と申しますと、男子学校の場所をどこにするかで、通学経路の問題が出るのです。
元来は月乙女街区と俗人街区の境界に男子校舎を作る予定でした。
しかし、教育目標として、同世代である太陽乙女と組ませた方が良いのではとなったのです。
これには、試験的に集めた少年たちの面倒を積極的に見ているのが太陽乙女である件もさりながら、月乙女達は俗人区画のもう1種類の住人である成人俗人男性の生活を支援することが主任務であるのも影響しておるそうです。
ですので、現状ではサクサイワマン南神殿の聖院学院・淫化神学部校舎内に男子教室を設けるべきではないのか。
従来の淫化神殿の処女尊重傾向は痴女皇国との提携によって変更され、処女ではなく乙女と定義されおめこさせる事が正義となった今、南神殿に少年…それも成人すれば女神官の侍従となる立場の少年が出入りしても良いのではとなったのです。
が、しかし。
少年たちは現在、クスコ市街の外れたる俗人区画の男子寮に居住する立場。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/170/
https://x.com/725578cc/status/1724374427243344223?s=20
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淫化帝国挿入器具市帝都略図
←サクサイワマン神殿(黄金広場から2km程度)
ハナン・クスコ(北半街区)
クンティスーユ地区|チンチャイスーユ地区
太陽乙女神官候補寮|貴人居住区画
太陽乙女神官寮 |
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コリャスーユ地区 |アンティスーユ地区
月乙女神官寮 |俗人居住区画
乙女侍従官寮 |男子生徒寮もこの区画
フリン・クスコ(南半街区) →クスコ空港
○黄金広場・行政神殿
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淫化帝国炸砕岩満神殿略図
□□□□□□□←北神殿
□□□●□□□ 王居・中央塔
□□□□□□□ 転送ゲート他
中央広場 挿入器具市街地↘︎
□□□□□□□←南神殿・東西塔
□●□□□●□ 太陽処女学校
□□□□□□□ 黄金騎士修練所他
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お分かりでしょうか。
現状の男子生徒寮であれば、学校を南神殿に設けた場合の通学を徒歩とすると…最大、片道1時間近くかかるのです。
「今の行政宮殿そばに設けた男子の仮設校舎なら、30分かからないんだけどね…」
「男子生徒寮を乙女の花園たるクンティスーユ地区に新設すべきか。はたまた、往復1時間を我慢して通ってもらうか、通学用の交通機関を用意するか…」
で、ここでも問題があります。
サクサイワマン神殿、北と南に別れております。
<i795766|38087>
(連邦世界のサクサイワマン遺跡はこのような感じですが、私どもの隼神殿は南北の神殿外観と大きさが同じになっております。ただ、北神殿と南神殿では突き出た塔の数が違いますが…)
で、イリヤ様やチャスカ様に理由をご説明頂きましたが。南側は後宮扱いの乙女の園。
サクサイワマン神殿の朝と夕方の儀式は北神殿で行われますが、南神殿で行われる中天…午の儀式。
これはサクサイワマンの神官候補として選抜された処女が太陽乙女として認められる儀式となるそうです。
(この儀式はどすけべ内容かつ、チャスカの身体に精毒を流し込んで魔毒浄化を図るための重要な儀式なのですよ…だから私やロッテは避けてたんです…出席…)
(お言葉ですがイリヤ様。マチュピチュとワイナピチュの朝晩も大概)
(これチャスカ。しかもサクサイワマンの中天の儀式って本来は男人禁制でしょ…おまけにハルキは南の神殿長に伴われて行政宮殿に行くとか恐ろしい話になっていたではないですか、当初…私たちが強硬に反対して、やっとクイリョルがサクサイワマンの苗床の間に来る話になったではないですか…)
ええと、これは一体全体。
(丞相クイリョルは元来、月乙女の立場ですが、行政神官として太陽乙女の地位を与えられております。で、クイリョルは元々は太陽神殿であった行政神殿の長として、そこに起居する立場なのですよ…では、彼女の魔毒抜き、どうするのって話になりまして…)
で、サクサイワマンの転送ゲートの間と行政神殿地下を繋ぐことで、クイリョル様は毎日の昼食の代わりに、その…チャスカ様の伴侶兼皇配侍従のハルキ様から精毒を頂いていると…つまり、クイリョル様、まだ少年のハルキ様に犯される立場なのですね…。
更にはチャスカ様曰く。
(淫化の価値観だと、本当は淫化皇帝の所有物たるハルキに犯されるだけでも大変に栄誉となるのです。それに、ですねぇ…行政神殿よりはサクサイワマン居住者…つまりハルキの方が格上なんですよ、で、格下のクイリョルの住居でもある行政神殿にハルキが行ってオメコとやらをするだけでも畏れ多い話ではあります)
で、ではどこで精気授受…いえもとい魔毒抜きを。
(行政神殿の正面です。ハルキの訪問を出迎えたクイリョルがハルキをシャクハチして、その後で精毒を下賜されるのが本来の予定された儀式でした。これでも、本当なら神事なので黄金神殿か、さもなくば行政神殿にも一応は存在する黄金の間…小さいものですけど、そこですべき話なのですよ…ただ、時間的にも儀式的にも面倒な内容になってしまうので、略式で神殿前でやっちゃえというのが私の出した妥協案でしたっ)
確かに略式なのでしょう。
聖母教会の正式手順の洗礼や各種儀式、それに慈母寺の類似祭礼に通暁せざるを得なかった私としても、まぁ、どんな式にしたかったかは理解できますよ。
それに、たまにある痴女宮の重懲罰。
あの本宮正面玄関の前で、黒薔薇騎士か内務局長様か、はたまたアルト様かダリア団長に犯されるアレに比べたら。
(私ら、あの面子からいい加減外して欲しいのですけどな…ペルセちゃん含めて黒薔薇からも言われてますねん…もう時代も時代やし、滝壺か雅美さんのお墓の前で充分やんと…)
(ダリアはまだくろばら出身としてもですよ、あたくしまであんなことをやらせるのですか!)
(ダリアもアルトくんもメンツに入ってよ!でないと黒薔薇が出払ってたらあたしの役目なのよ!ブイブイ言わせてた昔ならいざ知らず、今、あれやれって言われてもね…あとダリア、お願いだからあたしのお墓の前で懲罰やめて…)
(あの穢れ具合が、悪さした連中には程よく恐ろしげに効きますねんがな…)
ええと。
田中局長のお墓のあの恐ろしい状況はともかくですね。
嫌な意見が殺到している事ならば、やめるべき、やめさせるべきでは。
仮にも痴女皇国の大幹部、百万卒どころでは効かない方々がこうもぼやきを致されるとは。
(世の中覆せない理不尽もあるんですわ…)
(れおのーるさんもいいかげん、りふじんを知ったとおもうのですが、せけんにはもっとりふじんな事がそんざいするのです…)
(マリ公。さすがにあの玄関はやめたれ…せやないと、懲罰写真の引き伸ばし版を本宮玄関に飾らすぞ…)
あら。
初代聖母様ですね、この心話。
しかし、皆様の件もさりながら、私の今の境遇について初代聖母様にちょこっと言ってみても…駄目ですかね。
(ええと、レオノールさんか。オリューレさんと缶詰ちゃんから今、概略を教えてもろたけど、淫化への配転が出た以上はそれに従っとくほうがこの場は無難やな…)
聖母様、缶詰…と言いかけていたマルハレータ陛下、どうやらジーナ様の矯正は諦めてしまわれたようですね。
(それにあんた。余程派手なミスをせぇへんかったら、これから制度を整えて国としてやっていこうという淫化やろ?はっきり言えば手柄立て放題やんか。あとは…悪い癖を矯正しとく事やな。こればかりは、うちにもどないにもならん)
なるほど…聖母様、元々は軍隊で専門的な分野を担当する軍人を養成する教官役だったそうですが、自助努力の線引きをきっちりされる癖がおありのようですね…。
(まぁ、うちの元来の仕事では甘やかそうにも甘やかされん職務の士官を養成しとったからな…マルハちゃんが今、教わっとるような事を更にきつくした教程が待ってると思うといて…)
(ううううう、聖母様からも「とりあえず輸送機のライセンスから始めなさい」と言われましてん…)
(さすがにバンシーの飛ばし方教えるんは大変やしな…うちも今、基本はNBやからマルハちゃんにべったり言う訳にもいかんのや…そのアトランティックIIのライセンス下りたら、痴女皇国とNBの大気圏内限定やけどスケアクロウの操縦試験受験資格は出せるよってな…)
(えええええ、許可やなしに受験の資格なんですか…)
(飛行機というものは厳しいのや…)
(そりゃそうだ…プランセス、軍隊で使っている乗り物はすべからく、生命に関わる危機的な状況での運用を前提にされているからな…アトランティックII輸送機ももちろんだが、あのVAB装甲車にしても、軍人が扱う前提で設計されている代物なんだよ…)
(あー、それであの装甲車、ひっくり返っても座席に身体を縛り付けとく紐がついてますのか…)
(ああ、ジョスリンから回してもろた装甲車か。あれはIED…簡易地雷なんかで吹っ飛ばされた時に車の中で体が変なとこに飛んで行ったりぶつかって負傷してまう二次災害防止のための椅子が兵員輸送室に入ってるやろな…メーカーや形式は違うけど、宙兵隊や日本の自衛軍やらでも似たような車は使っとるし、何より飛行機の操縦用の椅子がそうなっとるやろ?)
で、話の中身は分からねど、気付いた事があります。
聖母様の本来の考え自体が、甘やかすにも限界があるから自分で自分を何とかして行きなさい、というのが教え方の基本にあると思うのです。
(そらそやろ…人は普通、人の親になるんやで…今の痴女皇国やったら即成栽培かかるから、親になった実感が薄いとは思うけどな…)
う。
この、聖母様の一言がぶっすりと胸に刺さった気がします。
(人はいつか親と死に別れるんが通常やねんからな。それにあんた、男にしても女にしても、甘やかし過ぎはあかんと思うぞ…特に男の子相手。で、逆に女にはかなりきっつい部類ちゃうか)
う。
言われてみれば、昔は教えた男の子、結構甘やかしてたかも…。
(大方それで失意するような事があって、そっからドSに針が逆振りした部類やろあんた…うちは痴女種能力を完全に使えんようになっとるみたいやけど、それくらいは読めるぞ…)
ひぃいいいいいっ。
逆にそこまで読めるのも結構、恐ろしい気がします。
(人は便利さに溺れるんや…今更百人卒未満の痴女種どころか還俗とか言われてみい…あんたにしてみたら死刑宣告も同然の仕打ちにならんか…)
た、確かに…。
(これはうちも内務局皇帝室秘書課長をやっとったせいで娘どもの監督をやらなあかんかったが為に培ったスキルやけどな、まぁ、自分の能力を過信せんことと、他人の感情を把握することやな…)
うう、とんでもないところでとんでもない方にお説教を受けてしまったようです。
(それとこの場でついでに、レオノールにはあまりよろしうないお知らせとよろしいかもわからんお知らせがある…。マクシミリアンの淫化行きは却下された…ただ、ちょっとおもろい話をイリヤはんとかロッテはんから聞いてな。にやにや)
何やらニヤニヤしている上司…直接の主君ではありませんが、私の人生に多大な影響を及ぼせる人物です。
それと、マルハレータ陛下、あの気性の荒いマドゥラ族や、果てはカリブを席巻した荒くれ海賊たちからも一種の信用を得ているお方です。
その理由は…。
(簡単や。空手形を掴まさんこと。これに尽きる。翻ってれんぽう世界のスペイン、インカや他の南米で一体何をやったか知ったら、その真逆を行ったったら信じてもらえるやろ?)
ふむ…。
(ただ、ワイはいにしえの淫化の生贄の風習を聞きつけた時に思いついた事でな。これを実際に実行するかどうか、そしてワイの思うた通りに行くかどうかはわからんぞ…まぁとりあえず巡察の車の中で話しよか。チャスカ陛下も乗ってくるらしいし)
----
「実は、ワイナピチュに眠る先帝アヤから聞いた話です。この淫化を痴女皇国があわや誅滅しかけた理由として、国難を避け豊穣を祈るがために少年少女を高山に埋める生贄風習があったとか」
「ふむ…それは初耳ですね…」顔をしかめるオリューレ様。
で、クスコ市内をゆっくりと走る件の装甲車とやら、運転席のジョスリーヌ様は私たちからは見えませんが、車長席に座って誘導しておられるのはチャスカ様。
そしてオリューレ様、マルハレータ陛下、大臣のクイリョル様。そして私が装甲車の後ろにおりますが、そこに駆けつけて来られるイリヤ様とアスタロッテ様。
(田野瀬です。インカの歴史も絡むというので田中内務局長…雅美さんに心話参加を依頼しました…)
(えーと、カパコチャの儀式って奴でしょ。あたし専攻はアジア史だったからちゃんと説明できるかどうかわかんないけど、今の淫化には当時の風習を知ってる人が激減してしまった実情もあるからね…クイリョルさん、カパコチャについてどれくらいご存知ですか?)
「はい、マサミ様…古来の淫化では、神の世界に遣わす使者として選ばれし少年少女を育てておりました。ご承知かも知れませぬが、乳母の辺りの南淫化や離魔の辺りでは一帯を治める黄金神殿が存在致しますので、そこが独自にカパコチャをしておったとも伝わっております」
(その辺は連邦世界のインカとあまり変わらないわね。街道や飛脚便を整備してはいたけど、南米一帯を支配するインカ文明をもってしても中央集権国家の運営は難しかったようでね…アルゼンチンやチリの辺りは地方政府めいた組織に自治させてたの。それが、クイリョルさんが言う地方の黄金神殿ね。離魔の近所にも淫化とは別の古代文明国家が作ったピラミッドを改装した神殿があるはずよ)
「は。パチャカマックの事ですな」
(で…アカタマ砂漠…痴女皇国世界だとアルゼンチンチンの赤玉砂漠に聳えるジュジャイジャコっていう標高6,700メートルを超す成層火山が存在するんだけど、連邦世界の歴史では1999年にこの火山の山頂から三体の少年少女のミイラが発見されたの。ただ、この火山は周辺が乾燥した砂漠なので僅かな雪しか山頂に存在しないくらい乾いた土地にあります。で、ミイラ化してた子供たちと副葬品の保存状態が極めて良かったことで、カパコチャの儀式に関する詳細な研究が進んだ経緯があったのよ…なんせ淫化もそうだけど、インカ帝国に文字が存在しなかったからね…伝承は口頭か、現代に残ってる遺産遺跡を解析するしかなかったのよ、従来は)
「で、ここからは私が引き継がせて頂きます。挿入器具市近辺…即ち本国の黄金神殿が把握していた範囲ですが、天災など国難が生じた際は暗死の山々でなるべく高い山を選び、神の元に遣わすべく育てておった子供を埋めておったのです…」
重々しく語るクイリョル様。
マサミ様の話と合わせてお聞きしましたところ、その風習、地域によっては定期的にやっていた可能性もあるそうです。
で、カパコチャなる儀式の1年前から選抜されたいけにえ候補の子供たちには、ふんだんにコカの葉ととうもろこし酒、そして充実した食事が与えられていたそうです。
「理由は、神に遣わす使者は自らの足にて神の頂きに登る必要があるとされたからです。神官や用人が同行しますが、これは山の頂にて使者となる子と、その装いや用品を埋めて神に祈るがため。あくまでも使者が登らねばならなかったのです…」
(まぁ実際には大の大人でも後年、登頂に苦労するような山だから子供を背負って登るのも厳しかったんでしょう。アンデスで一番高いアコンカグアでも少年のミイラが見つかってるんだけど、これ、標高5,000メートルくらいで発見された上に頭を強く打った痕跡があったのよ…恐らく山頂に至る前に滑落して死んだ可能性があるって言われてるけどね…)
なるほど、しかし、そんな厳しい山にわざわざ登るとは。
(インカの神の世界は天上にあるとされたの。で、なるべく神に近い場所で人の要望を伝える代わりに、神の世界で暮らしなさいという風に子供たちを教育してたはず…ですね、クイリョルさん)
「マサミ様のお話の通り。で…その神への使者の中に、将来を嘱望された前淫化…淫化帝国となる前の皇朝の皇子クシがおられたはずなのです…クシはその才覚故に父王や兄に妬まれ、カパコチャの使者として指名されてしまったのです…」
ええっ。
それでは、既にお亡くなりなのでは。
(もちろん。ただねぇ…いけにえにされた場所によっては氷漬けか、はたまたジュジャイジャコのミイラみたいにうまく乾燥して保存状態が良好な可能性があるのよ。まぁ、エベレストの遭難者のご遺体が残ってるのと類似の状態なのね)
「マサミ様。皇子クシの登りし山、かなりの確度で知られております。このクスコから見て日の昇る方角よりやや南、ネバド・アウサンガト…雪に覆われし神界の門、との意がございます…淫化暦の冬には、神門が開かれて神が地に降臨する事を祝う祭りを致す山でございます…」
(そうそう、クスコから割と近い…50キロほどってのもあって、そこの山中にクシ皇子の遺体が残ってる可能性があるのよねぇ)
「で、マサミ殿…まさか、人を蘇らせるとか…そのような話でございますか…」
(そういう話でもあるし、そういう話じゃないかも知れません。で、お次はイリヤさんとロッテさん。リュネの昔の話になるんだけど、あれ、教えてあげてよ)
(ええー…ロッテはまだしも、私でなくレヴェンネの方が古リュネの歴史にはまだ詳しいかも知れませんよ…)
(まぁまぁ。んでぇ…ロッテさん、今しがた昔の淫化で起きた跡目争いの話が出たんだけど、リュネの王族でも昔々、似たような話がなかったかしら…)
「あった。そしてこれは、レヴェンネはまだしも、イリヤには衝撃かも知れん。心して聞いてくれ」
な…どのようなお話なのでしょうか。
「イリヤ。リュネ人族は一種のいけにえとして、人を我らに捧げて代わりに鉄器の製造技術の伝授を始めとした交流交易をしていた事実、前に少しだけ話しただろう…」
「何か言ってましたね」
「でな、リュネ側も苗床の性質や効能を知っていた者がいたのだ。すなわち、苗床は単純に放り込まれた者を溶かして食うのではなく、その覚えごとも吸い取り蓄えているのだよ。一度に大量の兵魔を産み出したり、私や魔王様の身体を再生できるのも、苗床のその性質があってこそ、なし得ることなのだ」
あー、なるほど…痴女種の身体復元や駄洒落菌の作用とは違った形で、人を再生できるのですね。
「それでな…レヴェンネ、王位を巡って、ある時に揉めた話、リュネ王家に伝わってなかったか…もし知らねば私が語るが…」
(後継がなかなか生まれ図、西方北国から迎えた姫との間の子を王にする話ならば)
「それだな…間違いない。で、その後にリュネ王家では本妻も子を出産したはずだ…」
げ。
それは…跡目争いの予感がします。
(もちろん、争いになりました。しかも後継候補を産むためにと寄越された姫を送り出した西方北国を始めとする、西方三国を巻き込んで…)
「で、困った当代のリュネ王と剣聖は、密かに我らに取引を持ちかけたのだ。というのも、実のところその西方の姫が産んだ子は容姿端麗にして剣聖の素質すらあったようだ。少なくとも聖剣を握っても大丈夫だったという苗床の記憶がある…つまりだな」
「ロッテ…まさか…」
イリヤ様の顔が凍りついています。
「ああ、そうだ。嫡男というのか…リュネ王室の正妻が産んだ子こそ正しい王の後継とする正妻派はその庶子を我々へのいけにえとして始末しようと陰謀を巡らせたのだ。だが、我々とてそんな身分の高い者をうかつに攫ってリュネと揉めては困るとなってな…最初は武人の才覚のあったその王子を指揮官に仕立て、魔族大陸に近い場所に陣を張らせて我らを挑発しようとしたようなのだ」
「ロッテ、それは真の話ですか…」
「そんな内紛、リュネ側が証拠を残すわけないだろ…ただ、さっきも言った通り、王の息子をさらったり食ってみろ。リュネと無用な戦争を始める事になるし、お前たちも困ったことになるだろ…だが王や剣聖は王妃一派の暴走を止められんかったようでな…」
(当時のリュネ王、確か魔毒のせいもありますが元々はあまり健康な方ではなく、魔法での延命にも限度があるとされておりましたね…)
「で、我々は王の子の軍勢を敢えて襲撃したが、その際に用意した兵魔はかなり弱い部類でな。そしてその指揮官は…私だ」
どえええええっ。
「そして現場に急行した剣聖によって我々は大損害をこうむって退却する羽目に陥ったが、その際に手傷を負った王子は海岸で行方知れずとなったとされたのだ…魔剣によって引き起こされた津波に流されたのだろうと、リュネ側では生死不明の扱いとなり国葬もされたんじゃなかったかな」
(ロッテ様のお話と大体の筋書きは同じのはずですよ。まぁ、ロッテ様から真相を聞いた時の私、呆れましたけどね…ただ、それ、仕方なかったと思いますよ、イリヤ様…)
「ええっ。確かロッテ、時のリュネ王と密約を交わしたと…」
「ああ。リュネの政治が乱れるのは我々にも都合が悪かったからな。小競り合いをしながら適度に人を頂くのが我らには良いのだ…それが内乱でリュネ側が弱体化したり、あまつさえ王族を奪われた仇とばかりに、こっちに攻め込まれてみろ…強い魔族を苗床から出せば迎撃は容易だが、無用な死者を累々積み上げるのは私たちだって本意じゃないんだから…」
「まぁ、ロッテの言うことをとりあえず信じておきましょう。で…その庶子の王子、波にさらわれたと見せかけ、あなたが苗床に保管したのですね?」
衝撃的なイリヤ様の発言。
「よくわかったな…一種のいけにえだが、そんな優秀有能な王子ならと私も応諾せざるを得なかったのだよ」
「そこまで言われたら私にも推測できますよ。それに、あの苗床の能力なら…その王子を復活させることはできますね?」
「うむ。リュネ王家の血筋が絶えた際にはその子をリュネに戻して欲しいとの王の懇願でな…それ故に立ち会った剣聖とも話がついていたのだ…その王子…クシー王子は出昼族に近い特徴も入ってしまうが、リュネの戦士としての適性を備えた状態で再生は可能だ…」
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