221 / 352
番外編:淫化帝国姫騎士ものがたり・10
しおりを挟む
皆様、ご機嫌よう。
この間から番外編とかいう括りで語られております件に関わるリュネ王国剣聖、イリヤ・ヤスニと申します。
で、わたくしの事を語る前に、ご注意をば。
例えば、わたくしの身分を示す肩書きの剣聖なる称号ですが。
或いは、今やここな淫化の地では太陽の化身とされた私、そして私と対を為す存在…月神として同じく淫化の地に居城を与えられておるアスタロッテの部族たる、魔族。
これらの文言は全て、お読みの皆様にわかりやすくご理解頂くための「意訳」であるそうです。
例えばアスタロッテの場合、リュネでは彼女らを赤肌の者と称するのが通常でした。
逆にアスタロッテに言わせるとリュネの民は白肌族、他後方三国は茶肌黄肌赤毛とかいう分類をしていたそうです。
で、そのかつての不倶戴天の仇敵たるアスタロッテに本音を言わせますと。
「お前たちは正直、そんな透けそうな白肌でよくも生きておれるものだ」となるそうです。
そりゃあ、魔毒を大量に吸っても生きておれる身の彼女らからすれば、我らは弱く見えるでしょう。
「しかし、お前たちが我らの側の陸に上がっても長くは立っておれなかったのと同じく、我らも人族側の陸にでは人を食わねば長くは生きておれなかったのだ…故に、我らとてリュネの更に奥には迂闊に攻め入ることは叶わなかったのだからな…」
ぶつくさと愚痴を述べ立てながら効果茶を啜るアスタロッテですが、あなた、人の食すもの、食べられるのですか。
「全く食べなくても良い訳でもないのだ…」
ええ、魔族の者どもはかつて、人族を主食としておりました。
ただ…アスタロッテに言わせますとですね。
「なるべくであれば苗床に放り込むのが流儀だったのだよ。でなくば魔王様に譴責を受けるのだ…皆で食物を分かち合う必要があったのでな…」
と、我ら人族を食物扱いしていた話にも言及してしまう事になるのですよねぇ。
まぁ、昔のことでアスタロッテをちくちくといじるのはやめておきましょう。
我らは今や、一応は仲良く机を並べて痴女皇国世界のあれこれを学習せねばならぬ身の上。
それにアスタロッテ、貴女も私も、あの大きな石造の王宮に研修とやらを受けに行かされた身の上でしょうが。
さすがに私やアスタロッテの身体の特殊性を鑑みて、売春と言うのですか、代価を頂戴する代わりに股を開く行為そのものは免除されましたけど…。
そして、宗教なる習わし。
これも、リュネ王国にも魔族にも「それっぽいもの」があった上にですね。
…私は存じ上げませんでしたけど、実はこの、淫化帝国なる山の中の人の国にその宗教とやらの概念をもたらしたのは、遥か昔のリュネの者…もっと申し上げますと、リュネを含むこの大地を築き上げた者たちの技だったらしいのです。
これは、復元されたリュネ王城の図書室にある文献に若干の記録が残っておりました。
そして、古のリュネ人は、淫化人に何かしらの知識を授ける代わりに、淫化の若い少年少女を頂戴しておったようなのです。
むろん、その目的は魔毒の影響が少ない仔を作るため。
そして、歴代剣聖を始めとする王宮戦士の身体から魔毒を抜くためでもあったようなのです。
で、私の代には戦士から魔毒を抜いて魔法を使えるようにするためのお役目の少年…淫化ではなく、ニホンなる場所から呼ばれた子供があてがわれたのです。
そう…どういう訳か、手違いで来てしまったのが、私の隣に座っているフユキなのです。
この子に事情を理解してもらい、定めに従って私と仲良くなってもらうまでの手間、本当に大変だったのですよ…。
そして、ようやっと心を開いてくれたフユキとねんごろの仲になったのもつかの間、魔王の乱心…であるそうですけど、とにもかくにも過去に例を見ない魔王軍の侵略によって、リュネ王国は壊滅の危機に瀕したのです。
この件、正直、今となってはあまり語りたくはないのです。
アスタロッテとも、あらぬ確執を再燃させてしまう話ともなりますし…。
ただ、被った被害だけをお教えしましょう。
王城や人々の居宅が吹き飛び焼け落ちただけではありませんでした。
少なくとも最初の襲来を伝える伝話が伝わってから1星刻の間に、数千の人々が命を落としてしまったのです…。
更には、リュネの大地を蹂躙した兵魔が飛び、あるいは歩いたが為に魔毒の源である地生え草…こちらでは苔とかいう草だそうですね…によって、魔毒汚染が生じていたのです。
そして、正に兵隊魔族が襲来した時、ちょうど私がフユキとの間で魔毒を抜く処理を行っていた最中だったのも間が悪かったのです…。
で、我々は今日の日課の一つをこなすため、神殿付き女官に呼ばれて別の部屋へと向かいます。
そうですね、今、私たちがおりますのは淫化の首都、挿入器具市の北にあって街並みを見下ろす炸砕岩満神殿なる石造の建物です。
淫化の人々には隼王宮としても通っているそうですが、ここに太陽神の子孫を名乗る淫化皇帝が住む他、今や喪失したインティとか申す太陽の神の新たなる化身または御使として、この私…イリヤが毎日のように日参しては神事に参加しなくてはならないのです。
ええ、普段の私とフユキはこのハヤブサ王宮なる神殿から十歩里…そちら様の単位ではごじゅっきろとかいう勘定になるようですが、結構離れた場所の山の頂にあるマチュピチュという神殿に居することを要請されています。
そして、アスタロッテは月の神の化身として祀られておるので、マチュピチュと対を為す形でそびえ立つ岩山の山頂に設けられたワイナピチュ神殿に居住して欲しいと申されております。
確かに水も風も清く緑豊かなこの、淫化の地は私のみならずアスタロッテにとっても魅力的なようですが、魔法を使えなくなるのが悩みの種とか申しております。
(例の呼吸具を使えば羽根で飛べるのだけど、あれは無粋でな…)
(事情は私とて同じです。生きておれるだけでも御の字と思わねば…更にはこうして、人の上に立つ地位も用意頂いたのですし、贅沢は言わぬが吉でしょう…)
そうなのですよねぇ、淫化にいる私たち、魔素や魔毒が無いに等しいこの場所に適合した身体にはされたのですが、リュネや魔大陸にいるように魔法、使い放題とは申せなくなったのです。
(使い放題でもなかろう。私とて使い過ぎれば苗床送りだし、お前だってフユキの精を貰い受けるか苗床入浴だぞ…)
(アスタロッテ、貴女もフユキの精で済ませる事も数多であったでしょ…)
私どもは何を申しておるのでしょうか。
ええ、魔毒抜きの手順について、言い合っておるだけなのです。だけ。
(いやその、私にもつがいめいたものの縁はないのだろうかと考える事もあってな…)
(何を隣の家の花を羨ましがっておるのですか。それに貴女は月神殿の神官を月替わりで派遣頂いている身でしょうが…私なんてフユキがいる上に、このサクサイワマンも一応は私の管轄ということで、マチュピチュに来ている方は数名の侍従だけなんですよっ)
いやはや何とも、醜い争いで申し訳ありません。
しかし、これでもまだ、私たちの仲としては大きく改善されておるのですよ。
ええ…リュネでは魔族を見かけたが最後、基本的には間髪を入れず即座に抜剣して退治る立場でしたからね…。
(はいはい、他の生徒さんたちはもう来てるから急いでよっ。あとはイリヤさんたちだけですからね…)
あら。
講師の方から早よ来いとのお叱りが。
まあ、今日の講師はちょっと怖い方なのを存じておりますので。
とりあえずはアスタロッテ、そしてフユキを伴って参るとしましょう。
----
で。
私たちは、淫化の神の代理としてだけではなく、痴女皇国の米大陸統括本部なる組織の下にある淫化支部の幹部職員として相応しい知識を身につける事を要請されており、こうして痴女皇国の本国などから来た知識者を講師として学問を教えられる立場でもあります。
そして、本日の講師には黄色肌の、淫化人に近い印象を受けますがきつめで長身の方がお越しです。
(ま、まぁ…先生っぽい服とメイクで来てるし…イリヤさん、化粧の話はなしでぇっ)と、心話とやらで密かに釘を刺されますが、一方で音声による講義は既に始まっております。
「過去、こうした民族間…そして宗教間の確執が招いた悲劇は痴女皇国世界ではある程度、回避されるに至りました」
奇しくも、本日は宗教とやらが招いた人たちの分断のお話。
我々に対する講師をお勤めなのは、マサミ・タナカと名乗られた方です。
聞けば、フユキのいたニホンという国のご出身であり、その国の優秀な学者を多く輩出する教育の場で学問を修められた方であるとか。
「ただし、痴女皇国世界では宗教なる人を啓蒙する教え、著しく制限をかけていたのです」
事例となる画像や映像を表示させながら、淡々とご説明に至るマサミさん。
我々の反応を窺いながら、講義をお進めになっておられます。
そして、疑問については都度、お尋ねするのではなく、ある程度の話を終えてからと申しつけられております。
さて、ここでリュネ世界と称される私の生まれ育った環境と、痴女皇国なる国家が存在する地球という丸い土の球の違いに、私の考えが至ります。
大きさの違いは歴然で、地球なる球の方が遥かに大きいのは現物を拝見してすぐに理解できました。
そして、人種という区分で示される、球の表面に住まう者たちの違いも。
ですが、この違いが数々の悲劇を引き起こしたのだとマサミさんは申されます。
これは、私にも容易に理解、可能。
なぜならば、私とフユキの更に向こうに座って教科書とやらを開いておるアスタロッテが、正にその種族とやらの違いで積年の争いを繰り広げて来た存在の幹部だったからです。
まぁ、ここは学習の場。
お互いの過去の過失…それも、私がこの世に出るはるか前から続いている確執と争乱を感情的に掘り起こすのはよろしくはない。
過去の私からすると大きな進歩を得たように思えるこの考え、今後の私は大事にしたいのです。
何せ、今やアスタロッテは不倶戴天の仇敵どころか、リュネの人族と協調融和を唱えてそれを臣下に強制できる立場…かつては敵対していた魔族を率いており、魔王の上に立つ皇帝なる地位に任じられております。
その頂点に立つ女が融合融和を唱えている上に、仲介者の痴女皇国がその姿勢を讃えて強く賛意を示している現在、アスタロッテと類似の立場に立ってリュネ王国の復興を考えねばならぬ身となってしまった私が、魔族にも劣るであろう、人様の話を聞かない頑固者では…おっと、お互いに競い争う思考をしてはいけませんね。
それに、私はもはや知ってしまった身の上なのです。
あのリュネ世界を切り拓いた当初の開拓者は魔族由来の者であったことを…。
そして、魔族から分かれた人々の末裔がリュネの民であり、痴女皇国世界の淫化帝国へと繋がる道が淫化側から作られておらなければ、リュネと西方三国は早期に滅んでいたことも…。
エマニエル部長と名乗る桃色の羽根をお持ちの方、もはや修復不可能かと思われた瓦礫の山と化したリュネ王城を過去に遡り調べ尽くした上で、なんと魔族の侵攻直前の状態に、寸分違わず王城を復元なさったのです。
そして、王城の中に保管されていた魔法指南や剣術・軍法指南書の数々を含む書庫の中も。
そうです…魔王城の図書室とリュネ王城の図書が両方揃って読み解ける歴史もあったようなのです…。
(あれは流石に人の側も秘すであろう…我らの側でもこれを知る者は魔王様と四天王のみだったのだ…ただ、時を追うごとに魔族も数を減らし、残っておったのは私を含む四天王と魔王様のみ、あとはその都度苗床に産ませる兵魔のみだったのだがな…)
(その数の減少に焦った魔王が強引な侵攻…人狩りを強行したのが原因でしたね…)
(しかし、おかげで損失は莫大なれど得るものもまた大。特に今やリュネをお前の一族で仕切れる利点や福利は大きいと思うぞ…そしてお前自身の幸福も…)
そうです、マリアリーゼ様にも指摘されましたが、あくまでも私は戦士身分から剣聖の適性ありと見なされて取り立てられた立場なのです。
リュネの王族とは血縁関係は全く皆無ではありませんでしたが、王や女王の立場に選ばれる可能性、剣聖となる以前ですら有り得なかったのです。
(剣聖に選ばれてしまえば、その地位は終生。死ぬまで続きますからね…)
(剣聖が王に選ばれても良かっただろうに…人の理に口を挟むのも無粋ではあるが…)
(恐らくは剣聖の暴走を恐れたのでしょう…王族の書いたと思しき日誌の中にも、王家の者が聖剣に選ばれないのは残念至極であるといった内容の繰言が発見されていましたから…)
ちなみに教室の壁にかけてある何本かの剣のうち、白い剣が聖剣です。そして、対を為す魔剣ともども、使う者を選ぶ剣ではあるのです。
(まぁ、意思統一が必要であったのは我らにしても同じだ。過去の指導魔族の暴走、我が方にも記録されていたからな…)
しかし、痴女皇国ではこうした問題をどのように解消し得たのでしょうか。
--
「単純よ。強さで決めてたの」
はぁ。
質疑応答の時間とやらにかこつけて、王族は剣聖となれない話をさせて頂いたところ。
まず、聖院…そして痴女皇国の階級制度を改めて説明されたのです。簡単に。
と申しましても、初めて痴女皇国の方と接触した際に我々には彼女たちの国の概要が伝えられておりましたので、理解は可能。
そして我らの言うところの王や帝に該当する金衣、そして剣聖に該当する銀衣は世襲制であると教わります。
「しかし、金衣は特に…貧民賎民から種付け男を選んで孕むべしと定められていたのよ」
リュネで申しますなら、西方三国より差し出された人足奴隷といったところでしょうか。
卑しい身分の者を取り立てる事自体には、取り立てて反論するような事もないとは思えますが。
「イリヤさんの駄洒落菌は順調に培養されているようね」
これ、嫌な名前なのですが、人族や魔族が吸っている魔素…魔毒と似たような大きさの目に見えぬ塵であるそうですね、その、駄洒落菌とやら。
「しかし…かつての連邦世界はもちろん、痴女皇国世界ですら卑しいとされた貧民は本当に卑しい暮らしを余儀なくされていた場合もあるのよ…」
「先生、明日輝では故意に奴隷階級を作っておりました…」
私の背後で手を挙げる気配が。
「フルールさんは明日輝担当でしたね。では、ゼパールさんの担当は」
「はい。魔屋でもかつては球技によって供犠を選出したと聞き及びました」
「ハルキさん、古代淫化のモチェ王国でも生贄文化があったという伝承がありましたが、聞かされていますか」
ええとですね、私たちの後ろの机、更に3つ以上あります。
で、私の後ろにいるのが、アスタロッテに孕まされて私が産んだ子のフルール。
そして、逆に私がアスタロッテを孕ませた結果の子が、ゼパール。
で、淫化に来てからフユキの子種で私が孕んだのがハルキ。
この3人の子たちの今の立場、マサミさんとの会話でお分かりになるかも知れませんね…。
そう、フルールはかつての明日輝帝国から失われた神に代わる存在として、淫化の太陽の御使の子という触れ込みで派遣されています。
で、ゼパールは月の御使の子として、魔屋に。
そしてハルキは、淫化の次期女帝たるチャスカの伴侶としてこの挿入器具市に住む立場です。
いわば、私たちの子供も、一緒になって教えを受けていたのです。
で、この授業を受けさせられているの、私たちと子供だけではありません。
(ううううう、なんであたくしまでもがぁっ)
(やかましいアルト、お前も淫化とリュネに関わった立場であろうが…)
(いんかのたんとうはいざべるさんではないですか、アレーゼさま…)
(アルトさん…もっと言うと海賊共和国…中米行政支局の暫定管轄です。ただ、広い南米大陸ですから、なるべく早急に南米の統括行政を行える組織作りの支援を要請されている立場なのですよ、本宮幹部も…)
(マリアヴェッラの話に加えるならば、海賊共和国も南欧支部も人手不足は相変わらずな上に、この淫化と魔屋、そして明日輝については聖母教会ではなく独自の信仰形態を採用せざるを得なかっただろう。だからアルト、欧州の聖母教会の展開をそのまま、この淫化の地で行わないという決定、お前も知ってるだろうに…)
(めんどくさいことをするのはあたくしのほんいではありません…)
(淫化と魔屋、明日輝の事情も考慮してやれ…そしてリュネ人と魔族の特殊事情も、な…)
ええ、痴女皇国で上位10位には絶対に入るであろう、お偉がたも後ろにお座りです。
そして、リュネ世界の復興に関わった方々でもあるのを、この教室におる皆が知っているのです…。
ただ、アルトリーゼ様。
この方は、要注意人物であると聞かされております。
なぜならば、先程の発言…ええ、私でも理解可能です。
そして、この方の思考、私と類友とか申す状態ではないかと密かに恐れておるのです。
その理由は…アルトリーゼ様は、大変にお強い方です。
ただ、ですねぇ。
私もリュネで剣聖やってた時はそうだったので大きな声では申せませんのですが、言う事を聞かない戦士を模擬戦でボッコボコのギッタギタにのしてしまう部類のわからせ、アルトリーゼ様も大変にお得意なようなのです。
で、このように腕っ節で物事を解決するのは頭が筋肉で出来ていると言う意味の、脳筋なる陰口を叩かれる立場であるとも。
(イリヤ…私に魔剣の稽古をつける時のお前が正にそれだろ…いくらなんでも、もう少し手加減してくれないか…)
(あのねぇアスタロッテ…あの魔剣、あなた以外に誰に預ければ良いのですか。あなたが持つのを苦手か嫌がるならば、他の魔族を推挙するのです…)
はい、魔剣の使い手に相応しい人物、実は今の魔大陸にはいないのです…。
かつては魔剣士とかいう存在もいたようなのですが、あまりに強かったせいで当代の魔王と大喧嘩になった挙句、哀れ魔剣士は苗床の餌にされて以来、魔剣を受け継ぐ者が永らく不在だったという笑えない笑い話、今や明らかになっておるのです…。
で、先だっての魔族大攻勢の際、とりあえずお前持っとけやと魔剣を押し付けられたのはここな、アスタロッテ。
しかし、魔剣の方も渋々ながらにアスタロッテに握られるのを同意したものの、いざ剣として使おうとすると暴走して周りに大雨や氷雪を降らせたり、はたまた、うんともすんとも言わないなど、魔剣としての働きを拒むような有様だったのです。
ええ、魔剣も聖剣同様、使い手を選びます。
ただ、聖剣の方は目下、私以外が握ると赤熱を放って手放さざるを得なくなる…あ、この場に、聖剣を握っても大丈夫なお方、あと二人いらっしゃいますね。
厳密には三名ですが。
と申しますのもアルトリーゼ様、苗床を前にした折、試しにと聖剣を手に取られた事がありまして。
で、先に聖剣を握ったアレーゼ様とマリアヴェッラ様の時は正常に刀身から炎を噴いたのですが、アルトリーゼ様が手に取られた際には赤熱こそしないものの、うんともすんとも言わない状態だったのです。
(あれ絶対、聖剣が拒否してたと思うのですよ、イリヤさん…)
(私もそう思う。聖剣元来の力をアルトが使うと、大地を焼き尽くしかねないと聖剣自らが恐れたとしか考えられぬ反応だったからな…)
そして更には、聖剣と対になる魔剣までもが同じ反応を示したのです…。
(なんであたくしをきらうのですか!けんのくせになまいきです!)
(ま、まぁアルト様、何も私どもの剣を無理に使おうとせずとも、そのお腰の業物があるではございませんか…)
(あすたろってさん…いりやさんはあたくしのリトルクロウをふつうに抜いてつかえておったのです…これはふこうへいというべきなのです!)
ええ、アルト様の腰のリトルクロウなる剣、私は気に入りました。
何せ、私の聖剣より軽いのです。魔力を込めないと単なる重い金棒でしかない聖剣より、使いやすそうでして…。
痴女皇国世界では取り替えませんかと正直思ってはおるのですが、我が聖剣がアルト様の使用を拒む有様では言い出し辛く。
(普通は聖剣に認められない場合、無理からに持ち続けますると、ついには炎に包まれて焼け死ぬはずなのですが…)
(イリヤさん…アルトなら癇癪を起こして聖剣を叩き折りかねんから、やめておく方が無難だぞ…)
そう言えば、マリアヴェッラ様とアレーゼ様、剣、お持ちじゃないのですね。
お二方の格から想像するに、帯剣を許されても不自然ではない気が。
(私はかつて銀衣騎士団長であった際には帯剣していたが、今では却って邪魔でな…代わりのものもマリアヴェッラに預けておるし)
(おばさまなら素手でも大抵の相手は相手にならぬのですよ…)
ええ、拝見しました。
抵抗した魔王が禁断の秘技とかいうもの…兵隊魔族を合体させたかのような魔人やら、はたまた魔獣とかいうものを繰り出した際、それらを一撃で倒す拳を放っておられましたから。
あと、マリアヴェッラ様の持つハリセンとやら。
これが、形状を変えて様々な攻撃に使えるのも見させて頂きました。
ハリセン状態では聖剣ともさほど差がないように思えますが、間合いを伸ばせるのですね。
しかし、そこまでお強いのになぜ、この淫化にしても、そちら様の流儀を強くお広めになろうとなさらぬのか。
魔大陸にしても、魔王を倒すことすら造作なくやってのけられそうなお力があるのは承知しておりますが、アスタロッテは元より、魔王までもが生かされておりますからね…。
(これも聖院規範が関係しているのだよ。我々は生命を尊重するし、個々の種族が育てた文明文化、著しく有害でなければ極力手をつけないようにしているのだ…ただ、生贄文化については不殺の掟に触る上に、実際に極めて有害な存在を過去に退治たことあまただったのだ…)
(いけにえ村は本当に危険でしたから…)
では、魔王の苗床、あれも生贄では…。
(あれは再生装置だと認識してるからね、あたしたち。それに一種の生命体保管設備であって、あの中に放り込んだとしても死んでる訳じゃないのは理解してるから)
(つまり、あたしたちの基準だと、魔族の方々が直接に人を食べてたなら征伐対象です。しかし、苗床でやっていることならゾナ・グリジア…処罰するか慎重に検討してからとなるのですよ)
なるほど、マサミさんとマリアヴェッラ様の説明で、この方々の行動基準がなんとなくわかりました。
それと、普段は剣を携帯していないのも、一瞬で相手を殺さないためなのでしょう。
アルトリーゼ様の腰の剣も、どちらかと言えば儀式用または将軍なる地位を示すために提げておられるようですし。
--
で。
私とアスタロッテは午前の課業…淫化皇帝から依頼された儀式への出席がなければ、毎日のようにこうしてどなたかが訪れ、学問を授けられたり質疑応答する時を終えます。
では、と魔屋…そして明日輝に向かう転送門に消えるゼパールとフルール、そしてアレーゼ様とマリアヴェッラ様、アルトリーゼ様をまずは見送ります。
(魔屋と明日輝はまだまだ目が離せぬのでな)
(まぁ、公式の訪問ではありませんし、軽く覗いてくるだけですよ)
(ふほほほほほ、あたくしがつよいことを…いたいですよっ)
まぁ、向こうで揉めないようにお願い致しますとしか。
そして、講師のマサミさんは我々に明日もよろしくとお告げになると、分体を解除なさったのか、その場で雲散霧消。
残るハルキは…。
「太陽使様、月使様、ハルキを迎えに上がりました」
侍女を引き連れた皇女チャスカが教室に現れます。
このチャスカこそが次期・淫化皇帝とされる立場であり、今でも実質的な摂政役であるのは私自身がよく存じております。
しかし、このチャスカは淫化人のようで淫化人らしくないというか…一言で申し上げますと、淫化人としては大柄なのです。
更に、顔立ちが従来の淫化人のようには見えません。
マリアヴェッラ様やアレーゼ様の血縁のようにも伺えます。
(ああ、それはそうだ。これは内緒だが、後継者に悩む皇帝アヤに子種を授けたのはマリアヴェッラなんだよ。ただ…聖院の初代様が前面に出てはいたようだが)
ええと、アレーゼ様からの心話、とんでもない話なのですが。
それで、マリアヴェッラ様やアルトリーゼ様…初代様の子孫に当たるとお聞きしました…がこの淫化まで時々、お越しになっておられたのですか…。
(まぁ、淫化の創造神は初代様の遍歴の一つだからな…それと、実は私とクレーゼの父親なんだが、聖院規範に則って市井の男の子種で産まれているのだけどな…イタリアというところにあるフィレンツェなる町の男から選んだらしい。つまり、私とクレーゼはマリアヴェッラ同様、半分はイタリア人ということだ)
せ、世界は広いようで狭いのですね…。
まぁ、深くは考えぬように致しましょう。
それに、すぐに忘れてしまいそうな話ではありますしっ。
さて、皇女チャスカ。
この子は実の所、産まれてからそれほどの年月を経過してはいないようです。
しかし…リュネの民が喫緊に人手を要したり、あるいはアスタロッテや魔王が孕んだ時と同じで、迅速に育ててしまう技とは理屈こそ違えど、結果的に同様類似となる技を痴女皇国では持っておるとか。
即ち、赤子を一気に大人にしてしまえるのです。
で、現在の時点ではこのチャスカが淫化皇帝…そして次期・淫化支部長となると見られております。
今の段階でも既に、皇帝たるアヤ・マンコに代わり神事を司っておる立場。
で、淫化の神官長を兼ねるこのチャスカが侍女を引き連れておりますが、その服装はいずれも淫化神殿にその身を捧げた神官を示す装いだそうです。
(なぁ、イリヤ…私もこちらの世界の風習や慣習はそれなりに学んだつもりなのだが、これが何かに仕える服装なのだろうか…)
(私に聞かないでください。それにアスタロッテ、あなたたち魔族はもちろん、私もあまりチャスカや女神官の装束をあれこれ言える身なりかどうか、今一度考えてみましょうよ…)
そうです。
頭部を縛るばんだななる布から、身体にまとった白布に至るまで白を基調とした装いなのはまだしも、透けた白布から見える姿は限りなく全裸に近いようです。
ふんどしとかてぃーばっくとかいうそうですけど、下帯は私やアスタロッテ、そして他ならぬフユキやハルキ同様にお尻がむき出しになるもの。
その白布、しかも透けておるものと下帯と…胸が揺れぬように巻いた布以外、何も身につけてはおらぬのです。
あ、草履は履いてますよ。
その、異様とも思える一団に案内されて私たちはどこへ向かうのか。
ちなみにこれ、基本的には日課です。
ですので、私やアスタロッテ、そしてフユキとハルキはこれから何が起きるのか知っております。
知っとるのですが…。
「では…午餐の儀式を始めさせて頂きます」おごそかに宣言するチャスカの指示で、太陽神の御使扱いの私から順番に、席に着く我々。
この席自体は、神殿の礼拝室なる場所に設けられております。
そして、目の前の机に、膳が置かれます。
むろん、我々が食べるものなのです。
まぁ大体は同じようなもので、野菜と豆と肉を煮た汁物に、トウモロコシなる実の多い野菜を粉にして焼いたパンという膨らんだ粉物、そして効果茶。
ただ…その汁物、出汁に干し茸を使っておるのですよね…。
そう、食べると股間の逸物が元気になるのです。
更には、効果茶。
言うまでもなく、この淫化地方一体に伝わる効果淫なる木の葉で淹れた茶です。
たまに、淫化コーラなる泡立つ飲み物が添えられたり、珈琲淫なる黒い液体であることもありますけど、基本的にはこの昼食の膳、食べたが最後、私たち4人の股間は元気になってしまうのです。
それとですねぇ、チャスカと女官、私たちが食事をしてる最中に、我々の足元に跪いております。
で、何かを咥えしゃぶる汁音が始まるのです。
むろん、私の股間の逸物、暖かい何かで包まれて濡れる感触を伝えて来るのですよ。
ええとですね。
皆様に、敢えてお伺いしますよ。
食事の最中に、ちんぽを咥える習慣、そちらでは一般的なのでしょうか。
確かに我がリュネ世界、文明文化という観点からは進んでおるかどうか、正直なところは疑わしい面があります。
ですが…ですがね、食事をしながら口でちんぽを咥えられるような習慣、間違っても存在しませんでした。
ですから、申し上げたいのです。
わかったから、まず食事は食事で分けましょう。
種付けおめこを要請されていても、食べてからでも遅くはないでしょうと!
----------------------
いりや「マリアリーゼ様、そしてマサミ様。誰ですかこんな、無茶な習わしを定めたのは」
マリア「なんでもかんでもあたしのせいよくない」
まさみ「なんでもかんでもあたしのせいよくない」
ろって「つまり、この破廉恥な習慣を定めたのは」
ちゃすか「神事です」
いりや「チャスカ…いくらなんでも」
ふゆき「それ以前にさ、イリヤ…このお話、ここで終わるの?」
ちゃすか「終わる訳はありません。第一、月使様が主役の月神殿の儀式が夜にあるというのにっ」
ろって「この、月神殿の儀式というのも大概なのだけど…」
いりや「しかも毎日ですからね」
ふゆき「あと、ぼくは普通ならこんなことしてたらいくら若くてもからだが…」
まさみ「という訳で、冬樹君の身体は痴女皇国のアレに耐えられるようにしました」
ふゆき「しょうげきだったのです…」
いりや「と言うわけで、もう1回くらいは続くらしいのです、淫化編」
ろって「何か、次回では私がひどい目に遭いそうなのだが…」
まさみ「それはとっても気持ちいいことなのよ」
マリア(わたしと一つになりそうな話の前振りみたいでヤだよ、雅美さん…)
まさみ(どんな風に一体になるのかは次回でぇっ)
この間から番外編とかいう括りで語られております件に関わるリュネ王国剣聖、イリヤ・ヤスニと申します。
で、わたくしの事を語る前に、ご注意をば。
例えば、わたくしの身分を示す肩書きの剣聖なる称号ですが。
或いは、今やここな淫化の地では太陽の化身とされた私、そして私と対を為す存在…月神として同じく淫化の地に居城を与えられておるアスタロッテの部族たる、魔族。
これらの文言は全て、お読みの皆様にわかりやすくご理解頂くための「意訳」であるそうです。
例えばアスタロッテの場合、リュネでは彼女らを赤肌の者と称するのが通常でした。
逆にアスタロッテに言わせるとリュネの民は白肌族、他後方三国は茶肌黄肌赤毛とかいう分類をしていたそうです。
で、そのかつての不倶戴天の仇敵たるアスタロッテに本音を言わせますと。
「お前たちは正直、そんな透けそうな白肌でよくも生きておれるものだ」となるそうです。
そりゃあ、魔毒を大量に吸っても生きておれる身の彼女らからすれば、我らは弱く見えるでしょう。
「しかし、お前たちが我らの側の陸に上がっても長くは立っておれなかったのと同じく、我らも人族側の陸にでは人を食わねば長くは生きておれなかったのだ…故に、我らとてリュネの更に奥には迂闊に攻め入ることは叶わなかったのだからな…」
ぶつくさと愚痴を述べ立てながら効果茶を啜るアスタロッテですが、あなた、人の食すもの、食べられるのですか。
「全く食べなくても良い訳でもないのだ…」
ええ、魔族の者どもはかつて、人族を主食としておりました。
ただ…アスタロッテに言わせますとですね。
「なるべくであれば苗床に放り込むのが流儀だったのだよ。でなくば魔王様に譴責を受けるのだ…皆で食物を分かち合う必要があったのでな…」
と、我ら人族を食物扱いしていた話にも言及してしまう事になるのですよねぇ。
まぁ、昔のことでアスタロッテをちくちくといじるのはやめておきましょう。
我らは今や、一応は仲良く机を並べて痴女皇国世界のあれこれを学習せねばならぬ身の上。
それにアスタロッテ、貴女も私も、あの大きな石造の王宮に研修とやらを受けに行かされた身の上でしょうが。
さすがに私やアスタロッテの身体の特殊性を鑑みて、売春と言うのですか、代価を頂戴する代わりに股を開く行為そのものは免除されましたけど…。
そして、宗教なる習わし。
これも、リュネ王国にも魔族にも「それっぽいもの」があった上にですね。
…私は存じ上げませんでしたけど、実はこの、淫化帝国なる山の中の人の国にその宗教とやらの概念をもたらしたのは、遥か昔のリュネの者…もっと申し上げますと、リュネを含むこの大地を築き上げた者たちの技だったらしいのです。
これは、復元されたリュネ王城の図書室にある文献に若干の記録が残っておりました。
そして、古のリュネ人は、淫化人に何かしらの知識を授ける代わりに、淫化の若い少年少女を頂戴しておったようなのです。
むろん、その目的は魔毒の影響が少ない仔を作るため。
そして、歴代剣聖を始めとする王宮戦士の身体から魔毒を抜くためでもあったようなのです。
で、私の代には戦士から魔毒を抜いて魔法を使えるようにするためのお役目の少年…淫化ではなく、ニホンなる場所から呼ばれた子供があてがわれたのです。
そう…どういう訳か、手違いで来てしまったのが、私の隣に座っているフユキなのです。
この子に事情を理解してもらい、定めに従って私と仲良くなってもらうまでの手間、本当に大変だったのですよ…。
そして、ようやっと心を開いてくれたフユキとねんごろの仲になったのもつかの間、魔王の乱心…であるそうですけど、とにもかくにも過去に例を見ない魔王軍の侵略によって、リュネ王国は壊滅の危機に瀕したのです。
この件、正直、今となってはあまり語りたくはないのです。
アスタロッテとも、あらぬ確執を再燃させてしまう話ともなりますし…。
ただ、被った被害だけをお教えしましょう。
王城や人々の居宅が吹き飛び焼け落ちただけではありませんでした。
少なくとも最初の襲来を伝える伝話が伝わってから1星刻の間に、数千の人々が命を落としてしまったのです…。
更には、リュネの大地を蹂躙した兵魔が飛び、あるいは歩いたが為に魔毒の源である地生え草…こちらでは苔とかいう草だそうですね…によって、魔毒汚染が生じていたのです。
そして、正に兵隊魔族が襲来した時、ちょうど私がフユキとの間で魔毒を抜く処理を行っていた最中だったのも間が悪かったのです…。
で、我々は今日の日課の一つをこなすため、神殿付き女官に呼ばれて別の部屋へと向かいます。
そうですね、今、私たちがおりますのは淫化の首都、挿入器具市の北にあって街並みを見下ろす炸砕岩満神殿なる石造の建物です。
淫化の人々には隼王宮としても通っているそうですが、ここに太陽神の子孫を名乗る淫化皇帝が住む他、今や喪失したインティとか申す太陽の神の新たなる化身または御使として、この私…イリヤが毎日のように日参しては神事に参加しなくてはならないのです。
ええ、普段の私とフユキはこのハヤブサ王宮なる神殿から十歩里…そちら様の単位ではごじゅっきろとかいう勘定になるようですが、結構離れた場所の山の頂にあるマチュピチュという神殿に居することを要請されています。
そして、アスタロッテは月の神の化身として祀られておるので、マチュピチュと対を為す形でそびえ立つ岩山の山頂に設けられたワイナピチュ神殿に居住して欲しいと申されております。
確かに水も風も清く緑豊かなこの、淫化の地は私のみならずアスタロッテにとっても魅力的なようですが、魔法を使えなくなるのが悩みの種とか申しております。
(例の呼吸具を使えば羽根で飛べるのだけど、あれは無粋でな…)
(事情は私とて同じです。生きておれるだけでも御の字と思わねば…更にはこうして、人の上に立つ地位も用意頂いたのですし、贅沢は言わぬが吉でしょう…)
そうなのですよねぇ、淫化にいる私たち、魔素や魔毒が無いに等しいこの場所に適合した身体にはされたのですが、リュネや魔大陸にいるように魔法、使い放題とは申せなくなったのです。
(使い放題でもなかろう。私とて使い過ぎれば苗床送りだし、お前だってフユキの精を貰い受けるか苗床入浴だぞ…)
(アスタロッテ、貴女もフユキの精で済ませる事も数多であったでしょ…)
私どもは何を申しておるのでしょうか。
ええ、魔毒抜きの手順について、言い合っておるだけなのです。だけ。
(いやその、私にもつがいめいたものの縁はないのだろうかと考える事もあってな…)
(何を隣の家の花を羨ましがっておるのですか。それに貴女は月神殿の神官を月替わりで派遣頂いている身でしょうが…私なんてフユキがいる上に、このサクサイワマンも一応は私の管轄ということで、マチュピチュに来ている方は数名の侍従だけなんですよっ)
いやはや何とも、醜い争いで申し訳ありません。
しかし、これでもまだ、私たちの仲としては大きく改善されておるのですよ。
ええ…リュネでは魔族を見かけたが最後、基本的には間髪を入れず即座に抜剣して退治る立場でしたからね…。
(はいはい、他の生徒さんたちはもう来てるから急いでよっ。あとはイリヤさんたちだけですからね…)
あら。
講師の方から早よ来いとのお叱りが。
まあ、今日の講師はちょっと怖い方なのを存じておりますので。
とりあえずはアスタロッテ、そしてフユキを伴って参るとしましょう。
----
で。
私たちは、淫化の神の代理としてだけではなく、痴女皇国の米大陸統括本部なる組織の下にある淫化支部の幹部職員として相応しい知識を身につける事を要請されており、こうして痴女皇国の本国などから来た知識者を講師として学問を教えられる立場でもあります。
そして、本日の講師には黄色肌の、淫化人に近い印象を受けますがきつめで長身の方がお越しです。
(ま、まぁ…先生っぽい服とメイクで来てるし…イリヤさん、化粧の話はなしでぇっ)と、心話とやらで密かに釘を刺されますが、一方で音声による講義は既に始まっております。
「過去、こうした民族間…そして宗教間の確執が招いた悲劇は痴女皇国世界ではある程度、回避されるに至りました」
奇しくも、本日は宗教とやらが招いた人たちの分断のお話。
我々に対する講師をお勤めなのは、マサミ・タナカと名乗られた方です。
聞けば、フユキのいたニホンという国のご出身であり、その国の優秀な学者を多く輩出する教育の場で学問を修められた方であるとか。
「ただし、痴女皇国世界では宗教なる人を啓蒙する教え、著しく制限をかけていたのです」
事例となる画像や映像を表示させながら、淡々とご説明に至るマサミさん。
我々の反応を窺いながら、講義をお進めになっておられます。
そして、疑問については都度、お尋ねするのではなく、ある程度の話を終えてからと申しつけられております。
さて、ここでリュネ世界と称される私の生まれ育った環境と、痴女皇国なる国家が存在する地球という丸い土の球の違いに、私の考えが至ります。
大きさの違いは歴然で、地球なる球の方が遥かに大きいのは現物を拝見してすぐに理解できました。
そして、人種という区分で示される、球の表面に住まう者たちの違いも。
ですが、この違いが数々の悲劇を引き起こしたのだとマサミさんは申されます。
これは、私にも容易に理解、可能。
なぜならば、私とフユキの更に向こうに座って教科書とやらを開いておるアスタロッテが、正にその種族とやらの違いで積年の争いを繰り広げて来た存在の幹部だったからです。
まぁ、ここは学習の場。
お互いの過去の過失…それも、私がこの世に出るはるか前から続いている確執と争乱を感情的に掘り起こすのはよろしくはない。
過去の私からすると大きな進歩を得たように思えるこの考え、今後の私は大事にしたいのです。
何せ、今やアスタロッテは不倶戴天の仇敵どころか、リュネの人族と協調融和を唱えてそれを臣下に強制できる立場…かつては敵対していた魔族を率いており、魔王の上に立つ皇帝なる地位に任じられております。
その頂点に立つ女が融合融和を唱えている上に、仲介者の痴女皇国がその姿勢を讃えて強く賛意を示している現在、アスタロッテと類似の立場に立ってリュネ王国の復興を考えねばならぬ身となってしまった私が、魔族にも劣るであろう、人様の話を聞かない頑固者では…おっと、お互いに競い争う思考をしてはいけませんね。
それに、私はもはや知ってしまった身の上なのです。
あのリュネ世界を切り拓いた当初の開拓者は魔族由来の者であったことを…。
そして、魔族から分かれた人々の末裔がリュネの民であり、痴女皇国世界の淫化帝国へと繋がる道が淫化側から作られておらなければ、リュネと西方三国は早期に滅んでいたことも…。
エマニエル部長と名乗る桃色の羽根をお持ちの方、もはや修復不可能かと思われた瓦礫の山と化したリュネ王城を過去に遡り調べ尽くした上で、なんと魔族の侵攻直前の状態に、寸分違わず王城を復元なさったのです。
そして、王城の中に保管されていた魔法指南や剣術・軍法指南書の数々を含む書庫の中も。
そうです…魔王城の図書室とリュネ王城の図書が両方揃って読み解ける歴史もあったようなのです…。
(あれは流石に人の側も秘すであろう…我らの側でもこれを知る者は魔王様と四天王のみだったのだ…ただ、時を追うごとに魔族も数を減らし、残っておったのは私を含む四天王と魔王様のみ、あとはその都度苗床に産ませる兵魔のみだったのだがな…)
(その数の減少に焦った魔王が強引な侵攻…人狩りを強行したのが原因でしたね…)
(しかし、おかげで損失は莫大なれど得るものもまた大。特に今やリュネをお前の一族で仕切れる利点や福利は大きいと思うぞ…そしてお前自身の幸福も…)
そうです、マリアリーゼ様にも指摘されましたが、あくまでも私は戦士身分から剣聖の適性ありと見なされて取り立てられた立場なのです。
リュネの王族とは血縁関係は全く皆無ではありませんでしたが、王や女王の立場に選ばれる可能性、剣聖となる以前ですら有り得なかったのです。
(剣聖に選ばれてしまえば、その地位は終生。死ぬまで続きますからね…)
(剣聖が王に選ばれても良かっただろうに…人の理に口を挟むのも無粋ではあるが…)
(恐らくは剣聖の暴走を恐れたのでしょう…王族の書いたと思しき日誌の中にも、王家の者が聖剣に選ばれないのは残念至極であるといった内容の繰言が発見されていましたから…)
ちなみに教室の壁にかけてある何本かの剣のうち、白い剣が聖剣です。そして、対を為す魔剣ともども、使う者を選ぶ剣ではあるのです。
(まぁ、意思統一が必要であったのは我らにしても同じだ。過去の指導魔族の暴走、我が方にも記録されていたからな…)
しかし、痴女皇国ではこうした問題をどのように解消し得たのでしょうか。
--
「単純よ。強さで決めてたの」
はぁ。
質疑応答の時間とやらにかこつけて、王族は剣聖となれない話をさせて頂いたところ。
まず、聖院…そして痴女皇国の階級制度を改めて説明されたのです。簡単に。
と申しましても、初めて痴女皇国の方と接触した際に我々には彼女たちの国の概要が伝えられておりましたので、理解は可能。
そして我らの言うところの王や帝に該当する金衣、そして剣聖に該当する銀衣は世襲制であると教わります。
「しかし、金衣は特に…貧民賎民から種付け男を選んで孕むべしと定められていたのよ」
リュネで申しますなら、西方三国より差し出された人足奴隷といったところでしょうか。
卑しい身分の者を取り立てる事自体には、取り立てて反論するような事もないとは思えますが。
「イリヤさんの駄洒落菌は順調に培養されているようね」
これ、嫌な名前なのですが、人族や魔族が吸っている魔素…魔毒と似たような大きさの目に見えぬ塵であるそうですね、その、駄洒落菌とやら。
「しかし…かつての連邦世界はもちろん、痴女皇国世界ですら卑しいとされた貧民は本当に卑しい暮らしを余儀なくされていた場合もあるのよ…」
「先生、明日輝では故意に奴隷階級を作っておりました…」
私の背後で手を挙げる気配が。
「フルールさんは明日輝担当でしたね。では、ゼパールさんの担当は」
「はい。魔屋でもかつては球技によって供犠を選出したと聞き及びました」
「ハルキさん、古代淫化のモチェ王国でも生贄文化があったという伝承がありましたが、聞かされていますか」
ええとですね、私たちの後ろの机、更に3つ以上あります。
で、私の後ろにいるのが、アスタロッテに孕まされて私が産んだ子のフルール。
そして、逆に私がアスタロッテを孕ませた結果の子が、ゼパール。
で、淫化に来てからフユキの子種で私が孕んだのがハルキ。
この3人の子たちの今の立場、マサミさんとの会話でお分かりになるかも知れませんね…。
そう、フルールはかつての明日輝帝国から失われた神に代わる存在として、淫化の太陽の御使の子という触れ込みで派遣されています。
で、ゼパールは月の御使の子として、魔屋に。
そしてハルキは、淫化の次期女帝たるチャスカの伴侶としてこの挿入器具市に住む立場です。
いわば、私たちの子供も、一緒になって教えを受けていたのです。
で、この授業を受けさせられているの、私たちと子供だけではありません。
(ううううう、なんであたくしまでもがぁっ)
(やかましいアルト、お前も淫化とリュネに関わった立場であろうが…)
(いんかのたんとうはいざべるさんではないですか、アレーゼさま…)
(アルトさん…もっと言うと海賊共和国…中米行政支局の暫定管轄です。ただ、広い南米大陸ですから、なるべく早急に南米の統括行政を行える組織作りの支援を要請されている立場なのですよ、本宮幹部も…)
(マリアヴェッラの話に加えるならば、海賊共和国も南欧支部も人手不足は相変わらずな上に、この淫化と魔屋、そして明日輝については聖母教会ではなく独自の信仰形態を採用せざるを得なかっただろう。だからアルト、欧州の聖母教会の展開をそのまま、この淫化の地で行わないという決定、お前も知ってるだろうに…)
(めんどくさいことをするのはあたくしのほんいではありません…)
(淫化と魔屋、明日輝の事情も考慮してやれ…そしてリュネ人と魔族の特殊事情も、な…)
ええ、痴女皇国で上位10位には絶対に入るであろう、お偉がたも後ろにお座りです。
そして、リュネ世界の復興に関わった方々でもあるのを、この教室におる皆が知っているのです…。
ただ、アルトリーゼ様。
この方は、要注意人物であると聞かされております。
なぜならば、先程の発言…ええ、私でも理解可能です。
そして、この方の思考、私と類友とか申す状態ではないかと密かに恐れておるのです。
その理由は…アルトリーゼ様は、大変にお強い方です。
ただ、ですねぇ。
私もリュネで剣聖やってた時はそうだったので大きな声では申せませんのですが、言う事を聞かない戦士を模擬戦でボッコボコのギッタギタにのしてしまう部類のわからせ、アルトリーゼ様も大変にお得意なようなのです。
で、このように腕っ節で物事を解決するのは頭が筋肉で出来ていると言う意味の、脳筋なる陰口を叩かれる立場であるとも。
(イリヤ…私に魔剣の稽古をつける時のお前が正にそれだろ…いくらなんでも、もう少し手加減してくれないか…)
(あのねぇアスタロッテ…あの魔剣、あなた以外に誰に預ければ良いのですか。あなたが持つのを苦手か嫌がるならば、他の魔族を推挙するのです…)
はい、魔剣の使い手に相応しい人物、実は今の魔大陸にはいないのです…。
かつては魔剣士とかいう存在もいたようなのですが、あまりに強かったせいで当代の魔王と大喧嘩になった挙句、哀れ魔剣士は苗床の餌にされて以来、魔剣を受け継ぐ者が永らく不在だったという笑えない笑い話、今や明らかになっておるのです…。
で、先だっての魔族大攻勢の際、とりあえずお前持っとけやと魔剣を押し付けられたのはここな、アスタロッテ。
しかし、魔剣の方も渋々ながらにアスタロッテに握られるのを同意したものの、いざ剣として使おうとすると暴走して周りに大雨や氷雪を降らせたり、はたまた、うんともすんとも言わないなど、魔剣としての働きを拒むような有様だったのです。
ええ、魔剣も聖剣同様、使い手を選びます。
ただ、聖剣の方は目下、私以外が握ると赤熱を放って手放さざるを得なくなる…あ、この場に、聖剣を握っても大丈夫なお方、あと二人いらっしゃいますね。
厳密には三名ですが。
と申しますのもアルトリーゼ様、苗床を前にした折、試しにと聖剣を手に取られた事がありまして。
で、先に聖剣を握ったアレーゼ様とマリアヴェッラ様の時は正常に刀身から炎を噴いたのですが、アルトリーゼ様が手に取られた際には赤熱こそしないものの、うんともすんとも言わない状態だったのです。
(あれ絶対、聖剣が拒否してたと思うのですよ、イリヤさん…)
(私もそう思う。聖剣元来の力をアルトが使うと、大地を焼き尽くしかねないと聖剣自らが恐れたとしか考えられぬ反応だったからな…)
そして更には、聖剣と対になる魔剣までもが同じ反応を示したのです…。
(なんであたくしをきらうのですか!けんのくせになまいきです!)
(ま、まぁアルト様、何も私どもの剣を無理に使おうとせずとも、そのお腰の業物があるではございませんか…)
(あすたろってさん…いりやさんはあたくしのリトルクロウをふつうに抜いてつかえておったのです…これはふこうへいというべきなのです!)
ええ、アルト様の腰のリトルクロウなる剣、私は気に入りました。
何せ、私の聖剣より軽いのです。魔力を込めないと単なる重い金棒でしかない聖剣より、使いやすそうでして…。
痴女皇国世界では取り替えませんかと正直思ってはおるのですが、我が聖剣がアルト様の使用を拒む有様では言い出し辛く。
(普通は聖剣に認められない場合、無理からに持ち続けますると、ついには炎に包まれて焼け死ぬはずなのですが…)
(イリヤさん…アルトなら癇癪を起こして聖剣を叩き折りかねんから、やめておく方が無難だぞ…)
そう言えば、マリアヴェッラ様とアレーゼ様、剣、お持ちじゃないのですね。
お二方の格から想像するに、帯剣を許されても不自然ではない気が。
(私はかつて銀衣騎士団長であった際には帯剣していたが、今では却って邪魔でな…代わりのものもマリアヴェッラに預けておるし)
(おばさまなら素手でも大抵の相手は相手にならぬのですよ…)
ええ、拝見しました。
抵抗した魔王が禁断の秘技とかいうもの…兵隊魔族を合体させたかのような魔人やら、はたまた魔獣とかいうものを繰り出した際、それらを一撃で倒す拳を放っておられましたから。
あと、マリアヴェッラ様の持つハリセンとやら。
これが、形状を変えて様々な攻撃に使えるのも見させて頂きました。
ハリセン状態では聖剣ともさほど差がないように思えますが、間合いを伸ばせるのですね。
しかし、そこまでお強いのになぜ、この淫化にしても、そちら様の流儀を強くお広めになろうとなさらぬのか。
魔大陸にしても、魔王を倒すことすら造作なくやってのけられそうなお力があるのは承知しておりますが、アスタロッテは元より、魔王までもが生かされておりますからね…。
(これも聖院規範が関係しているのだよ。我々は生命を尊重するし、個々の種族が育てた文明文化、著しく有害でなければ極力手をつけないようにしているのだ…ただ、生贄文化については不殺の掟に触る上に、実際に極めて有害な存在を過去に退治たことあまただったのだ…)
(いけにえ村は本当に危険でしたから…)
では、魔王の苗床、あれも生贄では…。
(あれは再生装置だと認識してるからね、あたしたち。それに一種の生命体保管設備であって、あの中に放り込んだとしても死んでる訳じゃないのは理解してるから)
(つまり、あたしたちの基準だと、魔族の方々が直接に人を食べてたなら征伐対象です。しかし、苗床でやっていることならゾナ・グリジア…処罰するか慎重に検討してからとなるのですよ)
なるほど、マサミさんとマリアヴェッラ様の説明で、この方々の行動基準がなんとなくわかりました。
それと、普段は剣を携帯していないのも、一瞬で相手を殺さないためなのでしょう。
アルトリーゼ様の腰の剣も、どちらかと言えば儀式用または将軍なる地位を示すために提げておられるようですし。
--
で。
私とアスタロッテは午前の課業…淫化皇帝から依頼された儀式への出席がなければ、毎日のようにこうしてどなたかが訪れ、学問を授けられたり質疑応答する時を終えます。
では、と魔屋…そして明日輝に向かう転送門に消えるゼパールとフルール、そしてアレーゼ様とマリアヴェッラ様、アルトリーゼ様をまずは見送ります。
(魔屋と明日輝はまだまだ目が離せぬのでな)
(まぁ、公式の訪問ではありませんし、軽く覗いてくるだけですよ)
(ふほほほほほ、あたくしがつよいことを…いたいですよっ)
まぁ、向こうで揉めないようにお願い致しますとしか。
そして、講師のマサミさんは我々に明日もよろしくとお告げになると、分体を解除なさったのか、その場で雲散霧消。
残るハルキは…。
「太陽使様、月使様、ハルキを迎えに上がりました」
侍女を引き連れた皇女チャスカが教室に現れます。
このチャスカこそが次期・淫化皇帝とされる立場であり、今でも実質的な摂政役であるのは私自身がよく存じております。
しかし、このチャスカは淫化人のようで淫化人らしくないというか…一言で申し上げますと、淫化人としては大柄なのです。
更に、顔立ちが従来の淫化人のようには見えません。
マリアヴェッラ様やアレーゼ様の血縁のようにも伺えます。
(ああ、それはそうだ。これは内緒だが、後継者に悩む皇帝アヤに子種を授けたのはマリアヴェッラなんだよ。ただ…聖院の初代様が前面に出てはいたようだが)
ええと、アレーゼ様からの心話、とんでもない話なのですが。
それで、マリアヴェッラ様やアルトリーゼ様…初代様の子孫に当たるとお聞きしました…がこの淫化まで時々、お越しになっておられたのですか…。
(まぁ、淫化の創造神は初代様の遍歴の一つだからな…それと、実は私とクレーゼの父親なんだが、聖院規範に則って市井の男の子種で産まれているのだけどな…イタリアというところにあるフィレンツェなる町の男から選んだらしい。つまり、私とクレーゼはマリアヴェッラ同様、半分はイタリア人ということだ)
せ、世界は広いようで狭いのですね…。
まぁ、深くは考えぬように致しましょう。
それに、すぐに忘れてしまいそうな話ではありますしっ。
さて、皇女チャスカ。
この子は実の所、産まれてからそれほどの年月を経過してはいないようです。
しかし…リュネの民が喫緊に人手を要したり、あるいはアスタロッテや魔王が孕んだ時と同じで、迅速に育ててしまう技とは理屈こそ違えど、結果的に同様類似となる技を痴女皇国では持っておるとか。
即ち、赤子を一気に大人にしてしまえるのです。
で、現在の時点ではこのチャスカが淫化皇帝…そして次期・淫化支部長となると見られております。
今の段階でも既に、皇帝たるアヤ・マンコに代わり神事を司っておる立場。
で、淫化の神官長を兼ねるこのチャスカが侍女を引き連れておりますが、その服装はいずれも淫化神殿にその身を捧げた神官を示す装いだそうです。
(なぁ、イリヤ…私もこちらの世界の風習や慣習はそれなりに学んだつもりなのだが、これが何かに仕える服装なのだろうか…)
(私に聞かないでください。それにアスタロッテ、あなたたち魔族はもちろん、私もあまりチャスカや女神官の装束をあれこれ言える身なりかどうか、今一度考えてみましょうよ…)
そうです。
頭部を縛るばんだななる布から、身体にまとった白布に至るまで白を基調とした装いなのはまだしも、透けた白布から見える姿は限りなく全裸に近いようです。
ふんどしとかてぃーばっくとかいうそうですけど、下帯は私やアスタロッテ、そして他ならぬフユキやハルキ同様にお尻がむき出しになるもの。
その白布、しかも透けておるものと下帯と…胸が揺れぬように巻いた布以外、何も身につけてはおらぬのです。
あ、草履は履いてますよ。
その、異様とも思える一団に案内されて私たちはどこへ向かうのか。
ちなみにこれ、基本的には日課です。
ですので、私やアスタロッテ、そしてフユキとハルキはこれから何が起きるのか知っております。
知っとるのですが…。
「では…午餐の儀式を始めさせて頂きます」おごそかに宣言するチャスカの指示で、太陽神の御使扱いの私から順番に、席に着く我々。
この席自体は、神殿の礼拝室なる場所に設けられております。
そして、目の前の机に、膳が置かれます。
むろん、我々が食べるものなのです。
まぁ大体は同じようなもので、野菜と豆と肉を煮た汁物に、トウモロコシなる実の多い野菜を粉にして焼いたパンという膨らんだ粉物、そして効果茶。
ただ…その汁物、出汁に干し茸を使っておるのですよね…。
そう、食べると股間の逸物が元気になるのです。
更には、効果茶。
言うまでもなく、この淫化地方一体に伝わる効果淫なる木の葉で淹れた茶です。
たまに、淫化コーラなる泡立つ飲み物が添えられたり、珈琲淫なる黒い液体であることもありますけど、基本的にはこの昼食の膳、食べたが最後、私たち4人の股間は元気になってしまうのです。
それとですねぇ、チャスカと女官、私たちが食事をしてる最中に、我々の足元に跪いております。
で、何かを咥えしゃぶる汁音が始まるのです。
むろん、私の股間の逸物、暖かい何かで包まれて濡れる感触を伝えて来るのですよ。
ええとですね。
皆様に、敢えてお伺いしますよ。
食事の最中に、ちんぽを咥える習慣、そちらでは一般的なのでしょうか。
確かに我がリュネ世界、文明文化という観点からは進んでおるかどうか、正直なところは疑わしい面があります。
ですが…ですがね、食事をしながら口でちんぽを咥えられるような習慣、間違っても存在しませんでした。
ですから、申し上げたいのです。
わかったから、まず食事は食事で分けましょう。
種付けおめこを要請されていても、食べてからでも遅くはないでしょうと!
----------------------
いりや「マリアリーゼ様、そしてマサミ様。誰ですかこんな、無茶な習わしを定めたのは」
マリア「なんでもかんでもあたしのせいよくない」
まさみ「なんでもかんでもあたしのせいよくない」
ろって「つまり、この破廉恥な習慣を定めたのは」
ちゃすか「神事です」
いりや「チャスカ…いくらなんでも」
ふゆき「それ以前にさ、イリヤ…このお話、ここで終わるの?」
ちゃすか「終わる訳はありません。第一、月使様が主役の月神殿の儀式が夜にあるというのにっ」
ろって「この、月神殿の儀式というのも大概なのだけど…」
いりや「しかも毎日ですからね」
ふゆき「あと、ぼくは普通ならこんなことしてたらいくら若くてもからだが…」
まさみ「という訳で、冬樹君の身体は痴女皇国のアレに耐えられるようにしました」
ふゆき「しょうげきだったのです…」
いりや「と言うわけで、もう1回くらいは続くらしいのです、淫化編」
ろって「何か、次回では私がひどい目に遭いそうなのだが…」
まさみ「それはとっても気持ちいいことなのよ」
マリア(わたしと一つになりそうな話の前振りみたいでヤだよ、雅美さん…)
まさみ(どんな風に一体になるのかは次回でぇっ)
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる