213 / 366
番外編:淫化帝国姫騎士ものがたり・2
しおりを挟む
そもそも、私たちはなぜ淫化帝国にお邪魔しているのか。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/182/
南米尻出国の視察中、淫化由来の文明流入の痕跡が発見されたため、これを疑問に思った田中雅美・痴女皇国内務局長から調査依頼が出ていたためです。
ですので、田中局長…雅美さんの依頼による該当調査の渦中でこの事件が起きたことはむしろ僥倖であったと言うべきでしょう。
そして、鉄を精錬できる技術を持っていたとされる淫化帝国の成立由来。
これは淫化に文字が存在しなかったために、淫化に伝わる太陽神話として口頭での伝承となっていました。
本来ならば伝説や伝来を知る者から聞き取りで情報を収集する手間が予想されていましたが、アレーゼ本部長の強力な遠隔読心能力で、かなりのところまで調査が進んでいます。
(しかし、やはりと言うべきかしら…連邦世界のインカ帝国の歴史とかなり違うところがあるわね…時代考証で考えると、連邦世界のインカ帝国なら少なくともアタワルパ帝の時代のはずなのよね…)
と、疑問を口にされる田中局長からの心話ですが、まぁ、歴史が違うとかいう話自体は他でもある事ですから、この際あまり深く気にしないようにしましょう。
と申しますのも、淫化帝国の前身たる挿入器具王国の統治者として王や皇帝の歴史を鑑みると、どうやらマンコ・カパック皇帝は淫化独自の延命術で寿命を伸ばしていたようなのです。
すなわち、痴女皇国女官と類似かどうかはともかく、寿命を大幅に伸ばす何かを持っているのが予想されています。
更には、意識を取り戻して来られた剣聖なる女騎士の方と、従者で勇者らしい日本人少年。
この方々は、痴女皇国世界からしても異世界人らしいのです。
聞けば、王城を敵に奇襲され、劣勢になったところで転移門だか魔法陣をくぐらされたところ、いきなり痴女皇国世界に現れるハメになったとか。
(そうです…かつてない魔王軍の猛攻に城が落とされかけていた際に、私とフユキ様は味方軍勢によって無理からに転移魔法陣に放り込まれたのです…)
これが、剣聖様と冬樹君が淫化に現れた直接の原因だそうです。
そして重要事項がありまして、その転移設備、どうやら到着地を好きな場所に出来るわけでもなさそうなのです。
(転移陣が存在しない場所にも行くことは不可能ではありませんが、陣を制御する魔術を習得する必要があります。私たちがリュネ王国を離れた際ですと、王宮神官または聖神殿神官でなくば転移陣のない場所への移動はまず不可能でした…)
即ち、この剣聖様とやらの話では、淫化側にその転移陣なる仕掛けの受け皿めいた何かがあるからこそ、明らかに痴女皇国世界由来でもない方々がこの淫化に出て来れたようなのです。
実は、その辺の事情をご存知の可能性がある方がいらっしゃるようです。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/185/
で、ベラ子陛下と田中局長。
初代様にご質問があれば、どうぞ。
(な、なぜに…ティアラちゃんが聞いて下さいよっ)
(いやぁ、パチャママが初代様だってのはかんぽ平原の視察時にお聞きしたけどさぁ…)
(だって田中局長もご覧になったでしょ?あの変な化け物軍団。あんなのどう見たって痴女皇国世界にいて良いものじゃありませんよっ)
(ティアラちゃん…その件について、雅美さんや初代様を経由して事の経緯が伝わったのですが、比丘尼国の鬼さんたちやもののけ族の皆様が吹き上がっておられるのです…我々に対して侵略を企てるとは不届な、逆に魔王とやらの国に乗り込んでちょっと痛い目に遭わせようかなどなど)
げ。
ベラ子陛下がとんでもない内情話をバラします。
そう言えば比丘尼国の人外の皆様、割と血の気の多い人が揃っているらしいですね…。
(何を隠そうおかみ様がその筆頭格なんだけどさ、元来は性格的に危ない方々が多いのよ…)
しかしですね、とりあえず我々はまだ、紫肌の方の側からも通称剣聖様の側からも、宣戦布告をされた訳ではありませんからね。
そして現地の我々としては、この方々にはなるべく、このまま黙ってお帰り願いたいのです。
むろん、面倒ごとを嫌う私だけの意志ではありません。
米大陸視察団の長めいた立場のアレーゼ様からして、こうなのですから。
「フユキ君とか言ったな。我々は決して人助けを嫌がっている訳ではない。だが、我ら女官が異なる世界にあらぬ干渉をしてしまえば、そちら様に迷惑をかけるどころか、そっちの世界を破壊してしまう事にもなりかねないのだよ…かつて私の妹の暴虐が目に余った際に異なる世界の船を呼び込んだ私が言える話ではないのだがな、かつては我々も、危急の際に異なる理が支配する世界とを繋げる技術を自らで有していたのだ…」
そうです、逃げて来た側の勇者なる待遇の日本人少年、私のいた日本とは違うようですが、とにもかくにも日本と名のつく国から、全く異なる世界に呼び込まれた立場らしいのです。
で、この人物…山田冬樹君が私たちに何かを依頼すれば、私たち痴女皇国は聖院規範に従って処理する必要が生じます。
(これは剣聖の方でも、魔物の方でも同じです。私たちに困った事を何とかして欲しいというお願いをなされた場合、請願として受け付ける決まりが存在するのです)
(ただ…我々に何かを頼めば、何かで返してもらうのが決まりだ。マリアヴェッラ)
(はい、おばさま…皆さんには改めてよくお考えになって欲しいのですが、私たちがお助けした場合には必ず対価を求めることも決まりとなっています。その対価は必ずしも金品や貴重品である必要はありませんが、労働力や知識や技術、何でも構いません。あたしたちが施した分、助けられた方には施し返して頂きたいのですよ)
で、この件を聞いてはいはいと手を挙げたのは何と、魔物サイドの紫の肌の人。
「ふむ…つまり、私が仮に請願とやらをそなたらにさせて頂いたとしよう。私が配下を元の世に返してくれと願うだけでも代償を支払う必要はあるのだろうか」
(まぁそれくらいなら、正直言って厄介払いをしたいので無償でやって差し上げます。エマちゃん、帰ってもらう事はできますね?)
(できますけどな、かーさま、それやると冬樹君の側の請願に引っかかる可能性がありますやん)
(なのですよねぇ…)
痴女皇国サイドが内心で頭を抱えているのがこれ、この件なのです。
「アスタロッテ…お前の配下だけでも王国に戻れば、魔王軍の戦力に戻ってしまうよね…」
従って、冬樹君の請願は…。
「最低でも僕と剣聖を元の場所に戻して欲しいのです。そして、できれば王国から魔王軍を出て行かせる手助けを頂ければありがたいです。でなければリュネ王国に戻っても、僕たちの居場所は恐らくないでしょう…」
「おいおい、と言いたいが、確かにお前たちも私たちも元の世に戻りたい事に変わりはないからな…」
睨み合いつつも、どないしたもんかという顔をする紫の人。
確かにもっともな話ではあります。
しかしこの請願、完全にあちらの世界の内政干渉になるのが明白です。
「しかも、あたしたちがその、リュネ王国とやらに手助けをする場合、魔王軍の力を削ぐためにはおそらく、向こうの世界で魔法や魔術の類を使えなくしてしまう作業が必須となるでしょう…それ、皆さんたちにしてみれば、今まで吸ってきた空気が吸えなくなるに等しい事になりはしませんか」
と、紫の人と剣聖に向かって問いかけるベラ子陛下。
「それは我々魔族にとっては確かに困るが、しかし私たちだけでなく、人どもも困る話になるのではないか…おい勇者、お前はどうだ…この者たちの話が本当であれば、私の魔力だけではなく、剣聖の力すら失われてしまうのだぞ…いや、人どもの日常でも、火を起こしたり水を清めるなど、何かしら魔法を使って生きておろう。あれすら出来なくなるのではないか…」
「えええ…それは困ります…」
「皇帝陛下と申されるお方、アスタロッテの懸念に間違いはございませんか…」
「残念ながら事実です…。あたしたちが聖院規範に従っての処理を遂行するための下地は作らせて欲しいのです…これも、あたしたちに請願をする際に承認を頂く条件となります…」
「ぬぬぬ…確かに、アスタロッテが悩むのもわかりどころ…」
剣聖の女性も頭を抱えておられます。
「アスタロッテ…貴君も部下を従えていた魔術の一切合切、使えなくなるとすればどうする…」
「いや剣聖、そなたも聖剣が使えぬようになるのだぞ…少なくともいくさは長引き、無用の死や怪我を負う兵が続出しようぞ…」
ええ、早期にこのお二方がこの件に気付かれたの、後々の不幸を避けるためにも必要な事だったとは思います。
しかし、突きつけられた条件はあまりにも過酷であろうことも察する事ができます。
ええ、そりゃ、喧嘩両成敗どころじゃなくなる話ですよね。
で、我々としてもこれは対処に困るとなって、呼ばれたのが…。
「何だよ忙しいのに…」
で、蟹服を着込んでいるマリアリーゼ陛下…マリア様がそこに。
「まぁまぁ、これはマリアの方が仲裁に向いていると思ってな…」
不機嫌の極みのような表情のマリア様ですが、アレーゼ様にとりなされては黙らざるを得ないようです。
「アレーゼおばさまにそう言われちゃ仕方ないよな…おい、魔族とかっての、あんたら…おばさまがここにいる事で命拾いしたと思ってくれ。おばさまを通さずにあたしがここに来てたらさ、それこそ短気を起こしてあんたらの世界ごと何もなかったようにしちまってたかも知れねぇからな…うん、この服着てたらどういう事が出来るか、ベラ子に見せてもらっただろ?」
ええ、拘束を解かれた魔物や剣聖様を含めて他の全員が、ガクガクと首を縦に振って合意してますね…。
(何者なのだ…間抜けな姿にしか思えぬが…襲いかかる気すら起こせぬ…)
(人の目では感じぬであろうが、闘気が壮絶すぎる…魔王様と同等、いやさそれ以上か…)
「はいはい。とりあえず聖院第二十四代金衣ってことにしとこうか。そこのマリアヴェッラの姉で痴女皇国上皇の立場のマリアリーゼ・ワーズワースだ。で、魔族の皆さんにお聞きしたいんだけどさ、あんたたちってどうしても人、食べなきゃダメなのかな」
「魔族の中の部族による。私はあまり必要がないのだが、主食が人間というのもいてな…」と、深刻そうな顔で回答されるのはアスタロッテと呼ばれた女性型の魔物…紫色の皮膚の人が申されます。
ちなみにこの方、髪の毛は真っ赤ですよ。
更に申し上げますと、背中にコウモリのような羽根が存在します。
そして、どんな素材かは知りませんが痴女皇国の露出度の高い騎士服と同等以上の「服の意味があまりない」服装です。
それと、勇者とされる日本人少年の冬樹くんはともかく、剣聖様も紫の人並…白薔薇騎士団の通常戦闘服くらいにはお尻もおっぱいも剥き出しで肌色面積過多のお姿です。
「魔族との戦いはもちろんですが、人同士での争いであっても魔術で防御を行う必要があります。魔剣術を用いて戦いますと、通常の鎧では防げない攻撃が来ますので…」
「で、我らの側でも同じ理由で、いくさに出る者であれば、衣は少なければ少ないほど良いのだ。剣聖の火炎剣など使われては、逆に火が付いてしまうのでな…」
(なるほど…どうも昔のスパルタ兵のような姿で戦うのが基本で、むしろ着込んでいるのは一般の市民だという事ですか…)
「そうですね。それと魔族は基本的に男女を問わず、アスタロッテのような姿が基本です。ただ…」
「戦闘や捕食に特化した兵族がいる。これは魔王様が取り仕切る兵舎地で産まれ育つのだ…兵族の寿命は短く、正にいくさの時に使われるだけの生き物と思って欲しい」
「こんな連中ですね」と、剣聖様が思い浮かべている過去の戦闘の記憶を拝見しますと。
(何やらアリとかハチみたいな役割分担があるような…)
(きしょくわるいいきものなのはまちがいありませんね…)
(魔族というものは非常に興味深い生い立ちなのは理解出来るが…それとマンコ殿、この者たち、過去にも淫化の歴史に登場した可能性もなくはないだろう…マリア、後で事情をこの者たちに聞いてみたくはある)
(おばさまもやはりそう思いますか…あとさぁ、ティアラちゃん…なんでこんなテンプレみたいなのがこんなとこにいるのよ…あまりにも色々出来すぎてんじゃねぇか?)
(私に言われましても…)
マリアリーゼ陛下の密かな嘆きはともかくとしまして。
「アスタロッテ様…そもそも我ら、当代の魔王様に至るまでの人との拮抗の歴史がございますことをこの方々にお教えしておきませぬと…」と、連れて来られた配下の魔物の中から声が。
「待て、お前たちの都合の良いように話をするならばこの場で…」
と、剣を抜きかける剣聖様。
「あーあーちょい待ちちょい待ち。とりあえず話をしてもらってからだ。それに…あんたら全員、今、魔法が使えないどころか、体力を無駄にするだけでも危ないんじゃないの?」
「うぐぐぐぐぐ…」
ええ、マリアリーゼ陛下が言われる通り。
(この連中は、元来ならあたしたちが呼吸してる大気と完全に同じものを吸ってないみたいだ。魔法が使えるための要素元素が大気中に漂ってる世界から来てるからな…言うなれば今、こいつらが魔法を使えないのは、宇宙空間で爆弾を爆発させたようなもんなんだよ。マジェスティック・キャンセラーを使うまでもなく、相手に影響を与える媒介物質が存在しないからなんだ)
と、密かに教えてもらいましたし。
(ただ、放っとけば日本人の山田君以外は死に絶える。酸素を絶たれた人間ほど即座に死ぬわけじゃないけど、いずれは窒息死に近い死に方をするみたいだな)
そう…この方々は決断を迫られている立場でもあるのです…。
(何で我らまでもが、このような悪疫猖獗の地に…)
(お前たちが私とフユキ様を追いかけてくるからでしょうに…)
額に青筋を立てて言われる剣聖様ですが、その通りだと思います。
「あのなぁ、我々とてやりたくてやっている訳ではないのだぞ…」
「これこれ。ふつうならおたがいのおはなしをきくところですが、みなさんはとりあえず、なるべく早くもとのせかいにもどるひつようがあるのでしょう。それに…なかたがいをする余裕はあるのですか?」
じろーり、と二人を睨むアレーゼ様とアルトさん。
「ま、ちょいと皆さんの記憶を覗かせて貰ったけどさ、実は…あたしたちの方の世界にもこと、ここに至るまでの歴史ってもんがそれなりにあってね…こっちの世界にもさ、人をいけにえにしたり、あるいは人を食う種族がいたんだよ」
「ほほう…」
「即ち、貴方様方にはそれに対処なすった歴史がおあり、と」
「まぁそういうこった。んでさぁ、とりあえずは人とさ、魔物ってのか魔族っていうのか、とにかく肌の色が違う方々の両方からあまり察知されない場所っての、あんたたちの世界にないかな。なんせあたしたちがいきなりそっちに乗り込んだ李、それが魔王か何かにバレて速攻で戦闘になるとさ、とりあえずあたしたちも喧嘩を買わざるを得ない。そうなりゃやる事は一つになっちまうだろ…」
ええ、マリアリーゼ陛下は一旦、異世界組をそっくり丸ごと向こうの世界に移しての救命行動を優先されるようです。
「なるほど…ならば、剣聖…お前にそのような場所、心当たりはないか。私がマリアリーゼ様と申される方にお教えしても良いが、ここは中立を考えたい。となると、劣勢に立たされているであろうリュネ王国の側のお前たちが案内する方が良いのではないだろうか…」
「確かにアスタロッテの言う通り…」
ええ、とにもかくにも戻らないとまずい、という事では敵対する双方も合意があるようです。
「後の事は協議を図るとしたい。それに正直、魔王様がお怒りであろう事は想像に難くないのでな…」
ほら、うちの魔王様、どんなのかある程度知ってるだろと言わんばかりの顔で勇者様と剣聖様を見やる、紫の人。
「叛逆は死であるとはかねて伝わっておりますね…」
「ああ、だから…貴君らと交渉する事それ自体が、元来なれば我々には非常な譲歩なのだ…これがまだ、私に交渉を許可するとの魔王様の指示を受けておれば良かったのだがな」
(何やら世知辛い話ですね…ねーさん)
(このアスタロッテって方、元来なら黒薔薇連中並の権限を持っているようだけどさ、うちの黒薔薇でももう少し裁量の余裕与えてるぜ…痴女皇国はホワイトな職場環境を目指す優良国家だけど)
…えーとぉ、マリア様の発言に自画自賛やめてくださいという突っ込み、各地の幹部から入ってたのはとりあえず内緒にしておきましょうか。
------
さて、そんなこんなでこの方々を…仮に魔法世界としましょうか、元いた世界にお送りするに当たって、用意されたもの。
テンプレス級航空母艦ですが、フランス共和国海軍・航空宇宙軍の合同運用艦だそうです。
Porte-avions PAS-01 Richelieu(リシュリュー)
「ねーさん、なんでまたフランスの船をっ」
「連邦政府経由で派遣艦を打診したら配船されたんだって…」
「でまぁ、monde différent…即ち異世界とやらへの派遣とあっては、元来ならテンプレス2世をお使いになる方が有効なのは小官とて理解しておりますが…まぁ、共和国の艦船を使うならばと小官が派遣されるのも致し方なし、でしょうか」
ええ、ジョスリーヌさんが乗っておられます。
それも、マリア様がどこかに連絡を取ってから10分も経たないうちに、そのリシュリューという船が灰色の巨大な船体をクスコの街の上に浮かべている状態です。
(実際には空間と時間差を利用してるからすぐ来てくれたように思えるだけでさ、連邦世界では派遣部隊を編成してこっちに転移するまでに半日くらいかかってるんだよ…)
そしてこのリシュリューという船、女性の艦長が指揮を取っておられます。
「comment vas-tu. Je m'appelle Mérien Panhard, capitaine de la marine française.…共和国海軍のマリエン・パナールと申します。マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下、アレーゼ様他皆様を本船にお迎え出来るのは光栄の極み」
短髪のいかにも、なフランス系の女性ですが、艦長という役職からは想像もつかない若々しいお姿です。
で、ジョスリーヌさんに密かに聞いてみますと。
(むろん痴女種化されている。何を隠そう、我が共和国では順次、国家公務員の要職を痴女種に入れ替えている最中でね…)
はぁ、やはりですか…。
(これはポワカール閣下とカルメン夫人の意向だよ。共和国を痴女種が支配する傀儡国家に作り変えるのはマリアリーゼ陛下の承認も得た既定路線だ。共和国の軍事力や産業能力を痴女皇国が好きに出来るというのはかなり融通の効く話にもなる。現に、こうして主力戦闘艦を迅速に派遣できているだろう?)
ですねぇ…。
(本当は日本の自衛軍の「かが」「あかぎ」がこの役目だったんだけど、日本の兵力を痴女皇国向けに振り向けるのは今、難しくなっててね…)
(英国本国もNBや痴女皇国向けの産業振興で息を繋いでいる現状、痴女皇国の要望に応えられる国力を有する国家は連邦政府内にも限られるのだよ…世論を黙らせるまではな)
とりあえずは、艦内に入った私たち、航空機格納甲板にいて欲しいと言われます。
(あたしら由来の病原体をなるべく持ち込ませないためだよ…特に駄洒落菌な…)
「でさぁ、転移先では一旦…もしもあたしらの世界の惑星の表面にあるような構造の世界だったら、一旦リシュリューは大気圏外に転移して、剣聖さんの指定する目的地を目指そうと思う。あと、ちょっと悪いんだけど、あんたらの使ってる文字、これに書いてみてくれないかな」
と、どこからかタブレット端末を取り出すマリアリーゼ陛下。
そしてペンを取り外すと、タブレットを剣聖様に渡されます。
「そうそう、この筆で白いところに字を書いてみてよ…うん、あたしが予想した通り、これルーン文字の系統だな…おばさま、エマ子…ベラ子、リュネ王国ってので気になったんだけど、ルーン=runeってことで気づかないか。それと、恐らくインカじゃなく淫化の太陽神や月神信仰の過程でさ、サクサイワマン神殿などの転移設備のある場所で、この世界の人たちを呼んで太陽の子や月の子を授かっていた可能性がある」
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/182/
南米尻出国の視察中、淫化由来の文明流入の痕跡が発見されたため、これを疑問に思った田中雅美・痴女皇国内務局長から調査依頼が出ていたためです。
ですので、田中局長…雅美さんの依頼による該当調査の渦中でこの事件が起きたことはむしろ僥倖であったと言うべきでしょう。
そして、鉄を精錬できる技術を持っていたとされる淫化帝国の成立由来。
これは淫化に文字が存在しなかったために、淫化に伝わる太陽神話として口頭での伝承となっていました。
本来ならば伝説や伝来を知る者から聞き取りで情報を収集する手間が予想されていましたが、アレーゼ本部長の強力な遠隔読心能力で、かなりのところまで調査が進んでいます。
(しかし、やはりと言うべきかしら…連邦世界のインカ帝国の歴史とかなり違うところがあるわね…時代考証で考えると、連邦世界のインカ帝国なら少なくともアタワルパ帝の時代のはずなのよね…)
と、疑問を口にされる田中局長からの心話ですが、まぁ、歴史が違うとかいう話自体は他でもある事ですから、この際あまり深く気にしないようにしましょう。
と申しますのも、淫化帝国の前身たる挿入器具王国の統治者として王や皇帝の歴史を鑑みると、どうやらマンコ・カパック皇帝は淫化独自の延命術で寿命を伸ばしていたようなのです。
すなわち、痴女皇国女官と類似かどうかはともかく、寿命を大幅に伸ばす何かを持っているのが予想されています。
更には、意識を取り戻して来られた剣聖なる女騎士の方と、従者で勇者らしい日本人少年。
この方々は、痴女皇国世界からしても異世界人らしいのです。
聞けば、王城を敵に奇襲され、劣勢になったところで転移門だか魔法陣をくぐらされたところ、いきなり痴女皇国世界に現れるハメになったとか。
(そうです…かつてない魔王軍の猛攻に城が落とされかけていた際に、私とフユキ様は味方軍勢によって無理からに転移魔法陣に放り込まれたのです…)
これが、剣聖様と冬樹君が淫化に現れた直接の原因だそうです。
そして重要事項がありまして、その転移設備、どうやら到着地を好きな場所に出来るわけでもなさそうなのです。
(転移陣が存在しない場所にも行くことは不可能ではありませんが、陣を制御する魔術を習得する必要があります。私たちがリュネ王国を離れた際ですと、王宮神官または聖神殿神官でなくば転移陣のない場所への移動はまず不可能でした…)
即ち、この剣聖様とやらの話では、淫化側にその転移陣なる仕掛けの受け皿めいた何かがあるからこそ、明らかに痴女皇国世界由来でもない方々がこの淫化に出て来れたようなのです。
実は、その辺の事情をご存知の可能性がある方がいらっしゃるようです。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/185/
で、ベラ子陛下と田中局長。
初代様にご質問があれば、どうぞ。
(な、なぜに…ティアラちゃんが聞いて下さいよっ)
(いやぁ、パチャママが初代様だってのはかんぽ平原の視察時にお聞きしたけどさぁ…)
(だって田中局長もご覧になったでしょ?あの変な化け物軍団。あんなのどう見たって痴女皇国世界にいて良いものじゃありませんよっ)
(ティアラちゃん…その件について、雅美さんや初代様を経由して事の経緯が伝わったのですが、比丘尼国の鬼さんたちやもののけ族の皆様が吹き上がっておられるのです…我々に対して侵略を企てるとは不届な、逆に魔王とやらの国に乗り込んでちょっと痛い目に遭わせようかなどなど)
げ。
ベラ子陛下がとんでもない内情話をバラします。
そう言えば比丘尼国の人外の皆様、割と血の気の多い人が揃っているらしいですね…。
(何を隠そうおかみ様がその筆頭格なんだけどさ、元来は性格的に危ない方々が多いのよ…)
しかしですね、とりあえず我々はまだ、紫肌の方の側からも通称剣聖様の側からも、宣戦布告をされた訳ではありませんからね。
そして現地の我々としては、この方々にはなるべく、このまま黙ってお帰り願いたいのです。
むろん、面倒ごとを嫌う私だけの意志ではありません。
米大陸視察団の長めいた立場のアレーゼ様からして、こうなのですから。
「フユキ君とか言ったな。我々は決して人助けを嫌がっている訳ではない。だが、我ら女官が異なる世界にあらぬ干渉をしてしまえば、そちら様に迷惑をかけるどころか、そっちの世界を破壊してしまう事にもなりかねないのだよ…かつて私の妹の暴虐が目に余った際に異なる世界の船を呼び込んだ私が言える話ではないのだがな、かつては我々も、危急の際に異なる理が支配する世界とを繋げる技術を自らで有していたのだ…」
そうです、逃げて来た側の勇者なる待遇の日本人少年、私のいた日本とは違うようですが、とにもかくにも日本と名のつく国から、全く異なる世界に呼び込まれた立場らしいのです。
で、この人物…山田冬樹君が私たちに何かを依頼すれば、私たち痴女皇国は聖院規範に従って処理する必要が生じます。
(これは剣聖の方でも、魔物の方でも同じです。私たちに困った事を何とかして欲しいというお願いをなされた場合、請願として受け付ける決まりが存在するのです)
(ただ…我々に何かを頼めば、何かで返してもらうのが決まりだ。マリアヴェッラ)
(はい、おばさま…皆さんには改めてよくお考えになって欲しいのですが、私たちがお助けした場合には必ず対価を求めることも決まりとなっています。その対価は必ずしも金品や貴重品である必要はありませんが、労働力や知識や技術、何でも構いません。あたしたちが施した分、助けられた方には施し返して頂きたいのですよ)
で、この件を聞いてはいはいと手を挙げたのは何と、魔物サイドの紫の肌の人。
「ふむ…つまり、私が仮に請願とやらをそなたらにさせて頂いたとしよう。私が配下を元の世に返してくれと願うだけでも代償を支払う必要はあるのだろうか」
(まぁそれくらいなら、正直言って厄介払いをしたいので無償でやって差し上げます。エマちゃん、帰ってもらう事はできますね?)
(できますけどな、かーさま、それやると冬樹君の側の請願に引っかかる可能性がありますやん)
(なのですよねぇ…)
痴女皇国サイドが内心で頭を抱えているのがこれ、この件なのです。
「アスタロッテ…お前の配下だけでも王国に戻れば、魔王軍の戦力に戻ってしまうよね…」
従って、冬樹君の請願は…。
「最低でも僕と剣聖を元の場所に戻して欲しいのです。そして、できれば王国から魔王軍を出て行かせる手助けを頂ければありがたいです。でなければリュネ王国に戻っても、僕たちの居場所は恐らくないでしょう…」
「おいおい、と言いたいが、確かにお前たちも私たちも元の世に戻りたい事に変わりはないからな…」
睨み合いつつも、どないしたもんかという顔をする紫の人。
確かにもっともな話ではあります。
しかしこの請願、完全にあちらの世界の内政干渉になるのが明白です。
「しかも、あたしたちがその、リュネ王国とやらに手助けをする場合、魔王軍の力を削ぐためにはおそらく、向こうの世界で魔法や魔術の類を使えなくしてしまう作業が必須となるでしょう…それ、皆さんたちにしてみれば、今まで吸ってきた空気が吸えなくなるに等しい事になりはしませんか」
と、紫の人と剣聖に向かって問いかけるベラ子陛下。
「それは我々魔族にとっては確かに困るが、しかし私たちだけでなく、人どもも困る話になるのではないか…おい勇者、お前はどうだ…この者たちの話が本当であれば、私の魔力だけではなく、剣聖の力すら失われてしまうのだぞ…いや、人どもの日常でも、火を起こしたり水を清めるなど、何かしら魔法を使って生きておろう。あれすら出来なくなるのではないか…」
「えええ…それは困ります…」
「皇帝陛下と申されるお方、アスタロッテの懸念に間違いはございませんか…」
「残念ながら事実です…。あたしたちが聖院規範に従っての処理を遂行するための下地は作らせて欲しいのです…これも、あたしたちに請願をする際に承認を頂く条件となります…」
「ぬぬぬ…確かに、アスタロッテが悩むのもわかりどころ…」
剣聖の女性も頭を抱えておられます。
「アスタロッテ…貴君も部下を従えていた魔術の一切合切、使えなくなるとすればどうする…」
「いや剣聖、そなたも聖剣が使えぬようになるのだぞ…少なくともいくさは長引き、無用の死や怪我を負う兵が続出しようぞ…」
ええ、早期にこのお二方がこの件に気付かれたの、後々の不幸を避けるためにも必要な事だったとは思います。
しかし、突きつけられた条件はあまりにも過酷であろうことも察する事ができます。
ええ、そりゃ、喧嘩両成敗どころじゃなくなる話ですよね。
で、我々としてもこれは対処に困るとなって、呼ばれたのが…。
「何だよ忙しいのに…」
で、蟹服を着込んでいるマリアリーゼ陛下…マリア様がそこに。
「まぁまぁ、これはマリアの方が仲裁に向いていると思ってな…」
不機嫌の極みのような表情のマリア様ですが、アレーゼ様にとりなされては黙らざるを得ないようです。
「アレーゼおばさまにそう言われちゃ仕方ないよな…おい、魔族とかっての、あんたら…おばさまがここにいる事で命拾いしたと思ってくれ。おばさまを通さずにあたしがここに来てたらさ、それこそ短気を起こしてあんたらの世界ごと何もなかったようにしちまってたかも知れねぇからな…うん、この服着てたらどういう事が出来るか、ベラ子に見せてもらっただろ?」
ええ、拘束を解かれた魔物や剣聖様を含めて他の全員が、ガクガクと首を縦に振って合意してますね…。
(何者なのだ…間抜けな姿にしか思えぬが…襲いかかる気すら起こせぬ…)
(人の目では感じぬであろうが、闘気が壮絶すぎる…魔王様と同等、いやさそれ以上か…)
「はいはい。とりあえず聖院第二十四代金衣ってことにしとこうか。そこのマリアヴェッラの姉で痴女皇国上皇の立場のマリアリーゼ・ワーズワースだ。で、魔族の皆さんにお聞きしたいんだけどさ、あんたたちってどうしても人、食べなきゃダメなのかな」
「魔族の中の部族による。私はあまり必要がないのだが、主食が人間というのもいてな…」と、深刻そうな顔で回答されるのはアスタロッテと呼ばれた女性型の魔物…紫色の皮膚の人が申されます。
ちなみにこの方、髪の毛は真っ赤ですよ。
更に申し上げますと、背中にコウモリのような羽根が存在します。
そして、どんな素材かは知りませんが痴女皇国の露出度の高い騎士服と同等以上の「服の意味があまりない」服装です。
それと、勇者とされる日本人少年の冬樹くんはともかく、剣聖様も紫の人並…白薔薇騎士団の通常戦闘服くらいにはお尻もおっぱいも剥き出しで肌色面積過多のお姿です。
「魔族との戦いはもちろんですが、人同士での争いであっても魔術で防御を行う必要があります。魔剣術を用いて戦いますと、通常の鎧では防げない攻撃が来ますので…」
「で、我らの側でも同じ理由で、いくさに出る者であれば、衣は少なければ少ないほど良いのだ。剣聖の火炎剣など使われては、逆に火が付いてしまうのでな…」
(なるほど…どうも昔のスパルタ兵のような姿で戦うのが基本で、むしろ着込んでいるのは一般の市民だという事ですか…)
「そうですね。それと魔族は基本的に男女を問わず、アスタロッテのような姿が基本です。ただ…」
「戦闘や捕食に特化した兵族がいる。これは魔王様が取り仕切る兵舎地で産まれ育つのだ…兵族の寿命は短く、正にいくさの時に使われるだけの生き物と思って欲しい」
「こんな連中ですね」と、剣聖様が思い浮かべている過去の戦闘の記憶を拝見しますと。
(何やらアリとかハチみたいな役割分担があるような…)
(きしょくわるいいきものなのはまちがいありませんね…)
(魔族というものは非常に興味深い生い立ちなのは理解出来るが…それとマンコ殿、この者たち、過去にも淫化の歴史に登場した可能性もなくはないだろう…マリア、後で事情をこの者たちに聞いてみたくはある)
(おばさまもやはりそう思いますか…あとさぁ、ティアラちゃん…なんでこんなテンプレみたいなのがこんなとこにいるのよ…あまりにも色々出来すぎてんじゃねぇか?)
(私に言われましても…)
マリアリーゼ陛下の密かな嘆きはともかくとしまして。
「アスタロッテ様…そもそも我ら、当代の魔王様に至るまでの人との拮抗の歴史がございますことをこの方々にお教えしておきませぬと…」と、連れて来られた配下の魔物の中から声が。
「待て、お前たちの都合の良いように話をするならばこの場で…」
と、剣を抜きかける剣聖様。
「あーあーちょい待ちちょい待ち。とりあえず話をしてもらってからだ。それに…あんたら全員、今、魔法が使えないどころか、体力を無駄にするだけでも危ないんじゃないの?」
「うぐぐぐぐぐ…」
ええ、マリアリーゼ陛下が言われる通り。
(この連中は、元来ならあたしたちが呼吸してる大気と完全に同じものを吸ってないみたいだ。魔法が使えるための要素元素が大気中に漂ってる世界から来てるからな…言うなれば今、こいつらが魔法を使えないのは、宇宙空間で爆弾を爆発させたようなもんなんだよ。マジェスティック・キャンセラーを使うまでもなく、相手に影響を与える媒介物質が存在しないからなんだ)
と、密かに教えてもらいましたし。
(ただ、放っとけば日本人の山田君以外は死に絶える。酸素を絶たれた人間ほど即座に死ぬわけじゃないけど、いずれは窒息死に近い死に方をするみたいだな)
そう…この方々は決断を迫られている立場でもあるのです…。
(何で我らまでもが、このような悪疫猖獗の地に…)
(お前たちが私とフユキ様を追いかけてくるからでしょうに…)
額に青筋を立てて言われる剣聖様ですが、その通りだと思います。
「あのなぁ、我々とてやりたくてやっている訳ではないのだぞ…」
「これこれ。ふつうならおたがいのおはなしをきくところですが、みなさんはとりあえず、なるべく早くもとのせかいにもどるひつようがあるのでしょう。それに…なかたがいをする余裕はあるのですか?」
じろーり、と二人を睨むアレーゼ様とアルトさん。
「ま、ちょいと皆さんの記憶を覗かせて貰ったけどさ、実は…あたしたちの方の世界にもこと、ここに至るまでの歴史ってもんがそれなりにあってね…こっちの世界にもさ、人をいけにえにしたり、あるいは人を食う種族がいたんだよ」
「ほほう…」
「即ち、貴方様方にはそれに対処なすった歴史がおあり、と」
「まぁそういうこった。んでさぁ、とりあえずは人とさ、魔物ってのか魔族っていうのか、とにかく肌の色が違う方々の両方からあまり察知されない場所っての、あんたたちの世界にないかな。なんせあたしたちがいきなりそっちに乗り込んだ李、それが魔王か何かにバレて速攻で戦闘になるとさ、とりあえずあたしたちも喧嘩を買わざるを得ない。そうなりゃやる事は一つになっちまうだろ…」
ええ、マリアリーゼ陛下は一旦、異世界組をそっくり丸ごと向こうの世界に移しての救命行動を優先されるようです。
「なるほど…ならば、剣聖…お前にそのような場所、心当たりはないか。私がマリアリーゼ様と申される方にお教えしても良いが、ここは中立を考えたい。となると、劣勢に立たされているであろうリュネ王国の側のお前たちが案内する方が良いのではないだろうか…」
「確かにアスタロッテの言う通り…」
ええ、とにもかくにも戻らないとまずい、という事では敵対する双方も合意があるようです。
「後の事は協議を図るとしたい。それに正直、魔王様がお怒りであろう事は想像に難くないのでな…」
ほら、うちの魔王様、どんなのかある程度知ってるだろと言わんばかりの顔で勇者様と剣聖様を見やる、紫の人。
「叛逆は死であるとはかねて伝わっておりますね…」
「ああ、だから…貴君らと交渉する事それ自体が、元来なれば我々には非常な譲歩なのだ…これがまだ、私に交渉を許可するとの魔王様の指示を受けておれば良かったのだがな」
(何やら世知辛い話ですね…ねーさん)
(このアスタロッテって方、元来なら黒薔薇連中並の権限を持っているようだけどさ、うちの黒薔薇でももう少し裁量の余裕与えてるぜ…痴女皇国はホワイトな職場環境を目指す優良国家だけど)
…えーとぉ、マリア様の発言に自画自賛やめてくださいという突っ込み、各地の幹部から入ってたのはとりあえず内緒にしておきましょうか。
------
さて、そんなこんなでこの方々を…仮に魔法世界としましょうか、元いた世界にお送りするに当たって、用意されたもの。
テンプレス級航空母艦ですが、フランス共和国海軍・航空宇宙軍の合同運用艦だそうです。
Porte-avions PAS-01 Richelieu(リシュリュー)
「ねーさん、なんでまたフランスの船をっ」
「連邦政府経由で派遣艦を打診したら配船されたんだって…」
「でまぁ、monde différent…即ち異世界とやらへの派遣とあっては、元来ならテンプレス2世をお使いになる方が有効なのは小官とて理解しておりますが…まぁ、共和国の艦船を使うならばと小官が派遣されるのも致し方なし、でしょうか」
ええ、ジョスリーヌさんが乗っておられます。
それも、マリア様がどこかに連絡を取ってから10分も経たないうちに、そのリシュリューという船が灰色の巨大な船体をクスコの街の上に浮かべている状態です。
(実際には空間と時間差を利用してるからすぐ来てくれたように思えるだけでさ、連邦世界では派遣部隊を編成してこっちに転移するまでに半日くらいかかってるんだよ…)
そしてこのリシュリューという船、女性の艦長が指揮を取っておられます。
「comment vas-tu. Je m'appelle Mérien Panhard, capitaine de la marine française.…共和国海軍のマリエン・パナールと申します。マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下、アレーゼ様他皆様を本船にお迎え出来るのは光栄の極み」
短髪のいかにも、なフランス系の女性ですが、艦長という役職からは想像もつかない若々しいお姿です。
で、ジョスリーヌさんに密かに聞いてみますと。
(むろん痴女種化されている。何を隠そう、我が共和国では順次、国家公務員の要職を痴女種に入れ替えている最中でね…)
はぁ、やはりですか…。
(これはポワカール閣下とカルメン夫人の意向だよ。共和国を痴女種が支配する傀儡国家に作り変えるのはマリアリーゼ陛下の承認も得た既定路線だ。共和国の軍事力や産業能力を痴女皇国が好きに出来るというのはかなり融通の効く話にもなる。現に、こうして主力戦闘艦を迅速に派遣できているだろう?)
ですねぇ…。
(本当は日本の自衛軍の「かが」「あかぎ」がこの役目だったんだけど、日本の兵力を痴女皇国向けに振り向けるのは今、難しくなっててね…)
(英国本国もNBや痴女皇国向けの産業振興で息を繋いでいる現状、痴女皇国の要望に応えられる国力を有する国家は連邦政府内にも限られるのだよ…世論を黙らせるまではな)
とりあえずは、艦内に入った私たち、航空機格納甲板にいて欲しいと言われます。
(あたしら由来の病原体をなるべく持ち込ませないためだよ…特に駄洒落菌な…)
「でさぁ、転移先では一旦…もしもあたしらの世界の惑星の表面にあるような構造の世界だったら、一旦リシュリューは大気圏外に転移して、剣聖さんの指定する目的地を目指そうと思う。あと、ちょっと悪いんだけど、あんたらの使ってる文字、これに書いてみてくれないかな」
と、どこからかタブレット端末を取り出すマリアリーゼ陛下。
そしてペンを取り外すと、タブレットを剣聖様に渡されます。
「そうそう、この筆で白いところに字を書いてみてよ…うん、あたしが予想した通り、これルーン文字の系統だな…おばさま、エマ子…ベラ子、リュネ王国ってので気になったんだけど、ルーン=runeってことで気づかないか。それと、恐らくインカじゃなく淫化の太陽神や月神信仰の過程でさ、サクサイワマン神殿などの転移設備のある場所で、この世界の人たちを呼んで太陽の子や月の子を授かっていた可能性がある」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる