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番外編・吉原よいとこ一度はおいで 6

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「いや、しかしお阿喜あき…」

「しかしもカカシもありませんっ。品川色里はもちろんのこと、天下の吉原で遊ぶのには武家でも簡単にほいほいと出せぬ大金を積む必要がございます件、私とて知っておりまするっ。元来ならばそんな大金、遊び金としてどぶに捨てる振る舞いなんぞ、仮にも国主の妻として到底許せるものではありません…ですけどね、あなた…直孝様。国主旗本色里奉賛令、お目通しされましたでしょうに…」

「あー、あれか…しかし、近江彦根三十万石で吉原通いもどうかと躊躇しとったんだよ…」

「まぁ、お家や近江国の懐事情を鑑みておなご遊びをためらうのはわかりますし、元来なれば亭主の身の堅さを讃え誇るべき話。しかし、参勤交代を免除されて浮いた費用もありますし、何より私が奥方会で白い目で見られるのですっ。うちの亭主は月に三回なら三回、太夫を買えと言われたとか云々。黙って聞いておれば幕府からおなご遊びを押し付けられた恨みつらみや愚痴にしか聞こえませんけどね、ようよう耳を澄ませば、国の禄高石高自慢となるのですよ? 八十両は確かに大金ですけど、豪商や私どもであれば捻出できぬ金子の額でもありませんでしょ…うちのお家はそんな金くらいはほいっと亭主に与えられますねんという取り合戦かつ、所得自慢となっておるのです!」

「いや、女房の集まりで肩身が狭いからやゆうて…」

「おなご遊びと思うから財布の紐が固うなるのですっ!良いですかあなた。過日の虎の吉事、ご存知でしょ?そして虎を吉獣吉祥と崇め奉り、お寅様の召し上がる馳走を献上する穢多の皆様の禄高加増のために、畜生の肉を滋養薬として食するを奨励するお話も出ましたよね?これ自体は近江牛を扱う我が近江が高級なお肉を売りに出せるからと、品川の肉市場からも高い値付けで買って頂いてますから、これだけでも穢多の皆様には感謝すべき話ですわよ…」

「ま、まぁ…せやけど…」

「で、品川の肉工場で日々、畜生の血にまみれておる穢多の子たちを憐れんだ上様が、偽女種の病が穢多の若いおのこに広まっておるのを良いことに、穢多のおのこたちへのご褒美と、こないだの坊主ほすと事件のような事を防ぐために金のかからぬおなご遊びを発案なすったのもご存知でしょ?あの夜間外出禁令、実際には私どもを取り締まるためではなくて、穢多の子達へ私どものような武家の女や富商富農のおなごが奉仕して差し上げるための方便ですわよ?」

「ま、まぁ、それも上様と松平殿よりこんこんと説いて聞かせられたが…」

「更にはあなた、これは神事に関わる話でもあるのです。先の色里奉賛令、こないだの国主奥方説明会の席上で主旨を聞かされましたが、要はおのこの精気を吸い上げておかみ様に献上するための仕掛けの一つであり、かつ、吉原や品川の色里が穢多の領分、すなわち神職範囲と認定された上に、更には穢多の皆様や夜鷹も精気献上のために働かされる立場と認められましたよね? 即ち、世の女はなべて神事に協力すべし。加えて亭主やおのこの子供を持つ奥の衆は家計や身上を潰さぬ範囲で男どもの利用を認めよという事でしょう。それに、さっきも申し上げましたが国の石高から算出された色里利用のとやらを押し付けられておるのですよ?」

「なぁ、お阿喜あき…しかし、だからと言うてお前な、わしならわしが女遊びに耽るの、女心として心情で認める気になるんか?」

「公儀公務なら仕方ございませんでしょ。それにですね、逆にあなた、私こそがあなたにお断りをせねばならぬ立場でしてよ。亭主のおなご代の工面で四苦八苦するというならば、をしてよしとされましたでしょ…要はお家や身上潰しの源となる不義密通は従来通りに厳しく取り締まられますが、我ら武家の奥や、商家に町人の奥については夕刻より遊女の副業に就いてよしとされたのですよ?」

「いやな、お前らの器量をとやかく申す気はないが、うちの細君や側女を買う者など…はっ!」

「だから申しておるじゃないですか…奥方会の席上で、南蛮渡来の秘薬を混ぜ込まれた菓子を食べたおかげで、あの場に出ておった者…即ち、私も遠藤も春光院もおぼこ娘の年かさに若返らされたのです…これ、我ら奥方会の名簿に載った奥全てへの実質的な春売りの強要なのですよ? 亭主以外のおのこと御目子した回数と、吸い上げ精気の成績が悪くば、一気に年を取って早死にするとまで言われておるのです。あなた、もし私や側女を大事に思うなら、悪いこたぁ申しませんから春を売るを認めて下さいな…そしてよその女を買って差し上げて下さいまし…よその旦那と御目子せねば寿命が縮まるのは、何も私や遠藤たちだけじゃありませんのですよ?」

「阿喜姫殿、お話の最中に済まぬが…」

「あ、これはこれは私めとしたことが上様や老中様相手に、粗相の上にも粗相を…」

「いやいや、余はあくまでも偽女種の陰間11号とやらなので気にせぬように」

「同じく、わし…いや、おれも偽女種の陰間12号とやらでござる、奥方様におかれてはは気をつかわずに…」

「でなぁ直孝、阿喜姫の申す事、仮に余が公方の家光であったならば、全くもって正しいとしか言えんわ、うん」

「えええええ、上様いやさ陰間様…」

「それ見なされ…ふみは読まねば文にあらず、しかも公儀の発布した文を読んでません知りませんとか、ましてや蜂須賀家みたいに偏諱を貰うてはおりますが外様ならいざ知らず、井伊家は譜代家臣でしょ…江戸城の武家叱詮議で怒られる対象となっても知りませんわよ…」

「しかも、重ねて申すが、よりによって大老のそなたが幕府の法度や法令の発布を知らなんだとかいうの、わが父が公方の代なら、抜刀して怒ってたぞ…まぁ、お主の不始末をとがめる前にだな、この一連の女性にょしょうの扱い、先の智泉院事件が大きく関わっておるのだ…あれで智泉院を利用した武家の奥、かなりの数に上っておったことが判明しておる…そして、連中全てを不義密通のかどで非人の位に落とせば、猪熊事件同様に連座するもの多数となるのが、信綱や宗矩、更には半蔵の調べで判明しておる…のぅ、12号」

「陰間のおれが大老様にあれこれ申すも何なのですが、智泉院事件こそは猪熊事件の武家版のようなものなのでございます…そして、智泉院事件の大きな問題点は、せめて精気献上の仕掛けをこしらえておけば、京の神社庁や大江山への申し訳が立ったと思えまするが、それすらも配慮になかったのです…」

「よいか直孝、吉原も品川も、おかみ様の求むるおのこの精気を余すところなく吸い上げるが施された、言わば郭の形をしたご神域なのじゃ…そして、この武家屋敷街も、なぜに江戸の城の側に建てられ、あまつさえ譜代と外様は日枝神社近隣に固められておるのか…その理由については、そなたもちぃと、その頭を働かせてはくれまいか…」

「直孝様、親藩屋敷は東の丸方に固められておりまして、神田明神が日枝同様に精気集めの拠点となってございますでしょう…」

「まぁ、巫女様方の守護の範囲に置くという意味合いもあるのだがな…」

「で、色気を持て余したおなごの風紀の乱れ、何も武家ばかりではないのですよ…おま…陰間7号様…あれはございませぬか。敢えて不肖の亭主に見せとうございます…」

「えええ…お阿喜様、大丈夫ですの…?」

「これくらいやらねば、うちの亭主の頭の硬さはほぐれませぬ。7号様、手の者、お借りしますよ…お願い致します」

瞬間、ある…陰間2号さんのはりせんムチが動いて、あっという間に直孝さんを拘束してしまいます。

…ええ、ここは江戸城下西の丸の先にある武家屋敷街の一角、近江彦根兜猫国国主屋敷の邸内です。

で、何をやってんのかと申しますと。

「失礼。うちの亭主自身が幕府から石高に応じた年間の利用を申し渡されてんのに、吉原や品川に通うこと、果てはその費用捻出のための近江米生産増加や近江牛の牧畜頭数増量に同意しません。更には女房たる私や側室の巫女だの遊女だのをするも、半ば義務化されとんのに合意しやがりません。そもそも他のお武家に率先して幕府が発令したことを守る必要がある大老のおうちで何やっとんのか。あんた改易お取り潰しの対象にされたいんかい」

「さ、流石はあの蜂須賀小六の孫子まごこであるな…」

「いやはや全く」

と、先程からもう亭主の井伊直孝さんが何か1つ言えば10で返すかのような猛然たるまくしたてで圧倒しておられる正室おくさまの阿喜姫さんですが、雅美さ…自称・偽女種陰間3号さんによりますと、おサルさんに仕えて戦国武将として名を挙げた蜂須賀小六という方のお孫さんに当たる女性だそうですね。

「2号様、その腰の提げもの、ちょいと拝借を…」

「へい。どうぞ」

え。

陰間なのに、なぜかぶら下げている2号さんの愛刀、リトルクロウが渡されます。

「あ、阿喜姫殿、ここで抜刀は…」

「うえさ、いえ陰間11号様…ここは井伊家の屋敷の中、即ち刀を抜いたところで井伊家家中の騒動にございます…」

「そ、そうであったな…ところであると殿、あとでその提げ物、ちと拝見する訳には参りませぬか」

「はいはい。とりあえずおくさまにつかってもらいましょう。あ、おくさま、そのかたなは峰のほうにも刃がついてますからみねうちはできませんよ…」

(やはり…12号…あれ、洋刀拵えであるが、その刀身は確かに小烏丸造…)

(業物も業物でございますな、まらと覚しき柄の作りが残念至極でございますが)

(って、べ…1号様のはりせんとやらの柄も、よう見れば、その…まら柄で…)

(うちの国の伝統らしいのです。ええ加減やめようよという気もしますが、女官のお仕置き用として柄の方を使うこともありますから…)

で、見事な技で抜刀した阿喜姫さん、旦那様を脅しています。

「あなた。なぜ私が若返りを果たしたか、その理由は見るも恥、語るも恥ですが敢えてご覧頂きます。目を据えて見ねば…これですよ」と、リトルクロウをちらつかせておられますが。

「ひいいっ、お阿喜、頼むから刃傷沙汰、それも上様の前でだけはぁっ」

「ここにおわすはあくまでも、見目麗しき偽女種の陰間様方であって畏れ多くも上様や老中様にあらずでございます。それに、この刀のサビになるのが嫌ならその素っ首を前に向けて見るのです!」

(ねぇ1号ちゃん、あの奥様ってさ、うちだとマリーのキャラよね)

(ですね。乳上は実力行使に至るにしてももうちょっと絡め技を使いますし、カエル女なら更に過激で今頃は二、三発発砲してますでしょうしね)

で。

「だからと言って何で小官を呼びつけるのですか。しかもトキオならまだしも、ここはエドではないですか。とどめに陛下、小官に少年趣味はありませんよ」

「まぁまぁジョスリン、申請のあった中欧支部の新制服のお披露目にもいいじゃないですか」

ええ、カエル女を呼んでみました。

「っとねぇへーか、これ、完璧にジョスリンの趣味でしょ…」

「そうですわよジョスリン、こんな野暮ったいもの…もうちょっと貴人風にならなかったのですかぁっ」

「元・ブルゴーニュ王国の王女様たるブリュントレーネさんがいかってるのは仕方ないとしても、一応はロレーヌ公女の顔も維持しているマリーちゃんはどうなのですか」

「似合えばなんでもよろしいのですわ。まぁ、ジョスリンがれんぽう世界の軍人出身ですからねぇ…あ、申し遅れました。Général,Capitaine(将軍様、指揮官様)わたくし痴女皇国中欧広域支部長兼ロレーヌ王国公女、マリアンヌ・ド・ロレーヌと申します、ごきげんよう。これは私のおもちゃ兼下僕の…痛いですわよっ」

「失礼。Je m'appelle Joslyne Merlant…Direction générale de la Sécurité extérieure, République française(フランス共和国対外治安総局所属のジョスリーヌ・メルランと申します)お見知り置きを」

「な、何やら物々しい紅毛人の御三方ですな…お二方については貴人の出であろうとお見受け致しましたが、その童顔の日焼けした方…尋常の眼ではございませんな…」

うぉっ、いえみ…11号さん、鋭いですね…。

「で、その暗い色のへそから上が物々しいお姿、どうやらいくさ装束であろうというのは理解申したが…その背中の何か、よもや短筒か鉄砲で?」

ええ、流石にのぶつ…12号さんも、一瞬で中欧支部の三人の武装を確認、してますね…。

「12号…入り鉄砲とか無粋は申すなよ…」

で、マリーちゃんとカエル女の格好ですけど、どんな感じか。

一言で言うと、銃器を擬人化女性化したかのようなゲームに出てくる軍服に近い制服なのです…つまり、上半身はがっちがちの軍服ですけど、下半身はお尻むき出しTバック+ブーツ状態なのです…。

(某まぎれもない漫画にもそういうキャラが出るし、ナチの女看守風ハイレグ女王様とも言えるけどね…今の流行なら、めがにけ らぴって検索すると近いそうよ…ただ、お尻のスカートが完全にない状態だから、下半身だけはどっちかというと格闘ゲーの英国人の女の子に近いわね)

(この、赤と黒のベレー帽と…それから制服の飾り赤線がアクセントですわね)

(なお、小官ですけどね…今、持ってる銃がF88 AUGなのはちょっと…せめてFA MASで…)

(ええー、ジョスリン…共和国陸軍の制式小銃、HK416に交代したでしょ…欠陥が多くて…だから絶対に文句言うと思って、せめてステアーにしたんだけど…)

(マサミサン…FA-MASは確かにク○銃な面はありますがね、あのど腐れジョンブル風情の棍棒L85よりはマシなのですよ? まぁ、シュタイアAUGと派生品、GIGNで使っておりますから私も馴染みがない訳じゃないんですが…)

(ご飯のまずい国の物品を全力でdisるのは見上げた愛国心としてもさ…国家憲兵隊きってのヨゴレ部隊にも関わったのね、ジョスリン…)

(たな…3号様、新たにおいでになられた方々では一番の童顔のその御仁、一体何者で…)

(まぁぶっちゃけ申しますと、痴女皇国に来るべくして来たような人物です。すこぶるつきに物騒な殺し技や忍びの技に精通した細作さいさくとお考え下さい。越中の辺りの佐々家の残党他が結成していた仏教系の破壊工作集団、ありましたでしょう…大江の鬼さんたちが退治したという…)

(おお、飛騨の山中に潜んでいたというあれですな…鬼よりも鬼のような振る舞いをしておったとは伺いましたが…)

(あの一党のと似たような内容で、兵士や忍者を養成していた一団が、砂漠の国にいたんですよ…彼女はそこの出身です…)

(ジェネラール…私は神もホトケも信じてはおりませんでしたが、生きるための知恵は回りましたよ。で、その私兵集団…とジャポンの方には一番わかりやすいですかね)

(蜂須賀小六さんが率いていた土豪が、お金次第で誰にでも付くって言うと理解してもらえそうね。傭兵という概念、日本ではあまり一般的じゃないのよ)

(ああ…なるほど…銭で転ぶ浪人を集めたようなものですかな)

(まぁ、そんなところですわジェネラール。で、そんな連中ですから戦闘地域の法律どころか国際法なんぞ無視。騎士道精神とかサムライの流儀めいたものは期待しない方がいい連中の中で、私は育ったのですが…まぁ、やり過ぎたと言いますか、あまりに危険な汚れ仕事を押し付けられた挙句、口封じに滅ぼされる前に寝返ったのですよ)

(ぶっちゃけ、痴女皇国の現役女官の中での殺害人数、人間出身者基準だとワーストワンよ、ジョスリン…)

(その汚名は返上したいのですが…と言っても、Nucléairesかくへいき…火山の炎のようなもので殺した人数なんぞを誇りましても勲章にはなりません。やはり可能ならば相手が死ぬのを確認したいところですね…Ça fait mal!…痛いじゃないですかプロフェスール! )

ええ、カエル女が物騒な殺しの顔とやらをした時のどつき回し要員が、またしても指導を入れたのです…。

(ですからジョスリン、かように物騒な事を考えるより、ドレイン1発で収めなさいなと常日頃から申しておるでしょうに…)

と、このやり取りが日常茶飯事であるかのように、はりせんをばしばしとやるマリーちゃん。

(プロフェスール・マリー…これは小官の仕事の美学ですよ…ま、今、それをやったら怒られるくらいは自制心はありますよ…)

(ところでジョスリン、女性が女性の武器を駆使する事を嫌がる男性がいたとしましょう。カエル女としてはどうしますか)

(陛下と書いて腐れパスタ女と読む上司に、小官の有能さを見せつけておくとしますと、事情はとっくにこの面々の心中を読心して推測していますよ。要は今、アルト閣下に縛られておる、農耕地に恵まれている割には生産性の低い地方領主に、その奥様の心情を骨の髄まで理解させれば良いのでしょう? お任せを)

(とりあえず傷害や器物破損の罪に問われないように…あと、この後におしおきですよ…)

「でまぁ、呼ばれたついでに小官の得意技でも披露して帰りましょうか。えっと、マダム…この縛られておるカピタンに、女が副業をすることの必要性を理解して頂くばかりか、その副業のために協力頂く必要にも合意して貰えば良いのですね?」

言うなり、腰の拳銃を引き抜いて3発ほど、直孝さんの周囲に撃ち込むカエル女。

「ひぎぃっっっ」

「な、なんか全く躊躇がないというか…」

(抜いてスライド引いてセイフティ外すまでに1秒かかってなかったわよ…)

(ふっ、リボルバーでファニングアクションをお望みであれば、実演致しますが)

「いや…いくら何でもここで鉄砲は…」

「ジェネラール、キャピタン、ご安心を。これは一種の空砲のようなもの。ほら、床に穴は開いてませんでしょ?…ですが、次の1発がドレイン弾か、はたまた実弾かは弾倉を引き抜いて調べないと小官にも不明なのです…」

で、畳に穴が空いていないのを確かめさせてますけど。

(というかその短筒、火縄がないのに撃てておりましたな…3号様、この御仁の今の振る舞いを不問にする代償と申しては何でございますが、後で拝見させて頂ければ)

(ふりんとろっくとか申す火打ち石のからくりともまた違う様子、わしも是非見とうございます)

(うむ、あの連発のからくり、長銃ながつつに仕込まれたら火縄の早込めですら間に合わんではないか)

(ふむ…ジェネラール、この拳銃ですがFN57と申しまして、20発または30発の特殊小銃弾を発射するのです。小官が携帯しておるメインアーム…主武装と弾丸が共通なのですが、ジャポネの鎧くらいは簡単に貫通しますよ)

言うなり、拳銃を仕舞ったその手でP90という変態銃…それも駄洒落菌弾丸仕様を示すピンク色のを構えると、斜め上の夜空に向けてぽぽぽぽぽぽと連射しやがるカエル女ですが。

「訓練弾ですから殺傷力はございません。それに、黒色火薬を使うヒナワ・ピストレよりは遥かに音が小さいでしょう?」

(ぬぬぬぬぬ…こうも鉄砲を使うのに躊躇いがないのを怖がるべきであろうが、一方でその短筒を見たがるのも武家の習性よな…)

(確かに、このようなものを撒かれますと、いくさの様相は全く変わりますな。火縄の時分ですら、いちいち名乗りを上げるも時代遅れとなっておりましたというに…)

(更にはこの消音器を付けますと、撃った際の音はおろか炎すら周りからは容易に視認できません。暗殺者にはうってつけの銃でもあるのですよ…もっとも、小官、可能ならばいきなり射殺するよりは自分の人生について反省と後悔を反芻はんすうさせながら神の元に送ってやる方が職務としては多かったのですし、正直申しますと、小官、射殺よりももっと優雅な方法を好んでおりまして…いかがでしょうかセニャールりょうしゅさま、奥方の売春プチブル、お認め頂ければ、今後の人生はまた目新しい女性とのお付き合いも期待出来て素敵なものとなるかと)

と、まだ煙がそこはかとなく漂う銃を突きつけてニコニコと宣言するカエル女です。

ほんっと、こういうことをやると目を輝かせやがるんですよね…。

(言葉は上品ですけど、内容はどうやら、やくざ者の恫喝に近いものがございますわね、この赤毛の可愛らしい見た目の方…むしろ、上司とか申されるきつい顔の方の方が武家の習わしや義理人情にご理解がありそうな風)

(マダム、正解でしてよ…このマリーは一応、ロレーヌ公の娘でして、騎士の作法はそれなりに存じておりますが…ジョスリンは肌の黒い男とフランス女が砂漠の国で密通してこしらえた女でして、大っぴらに正規の軍兵を使えない場所で雇われ兵士をして糊口を凌いでおった、いわば女の兵隊やくざなのです…)

(11号様、12号様…ジョスリンはこういう女でして、人を殺すことすら全く躊躇いがない西洋くのいち部隊に所属して、拷問や暗殺にも関わっていたのです…)

(お美…13号をこの女性にょしょうの下に送って、生きて帰ってくるならば凄腕のくのいちとなって戻りそうな気も致しますが)

(いや12号…ここまで物騒な忍び、今の日の本に必要と思うか?)

(というより上様ものぶつ…11号様も12号様も、私の心根に聞いては下さらぬのですか!)

(13号…お主に選択肢、あると思うか? 伝馬町の揚屋かんごくに行かされなんだだけ温情と思ってくれよ…)

(4号はこの一見、可愛らしき女子おなご様を知っているようであるな)

(もちろん、ジェネラル。フラウ・ジョスリーヌは有名人でしたから…痴女皇国最強のSchwarze Rosenritter、即ち黒薔薇騎士団の団長として登用されるまでの期間、私が痴女皇国に厄介になって千人卒昇格するより短かったのでは…)

(マドモアゼル・リンドリアーネ…その代わりに私は学校に行く代わりに傭兵になった上に、共和国政府下で長年、工作員アジョンを務めておりましたよ…)

(ただ、言っておきますと、さっきみたいにこのジョスリンを泣かせてるのが、その後ろにいる上司のマリーなんです…)

(あのー…小官を暴力女まりーちゃんのように申されても。小官は目的達成のための最短距離を進むように訓練されているだけなのですよ?)

(これこれジョスリン…それに、ブリュントレーネはあたくしより、もっと手が早いですわよ…?)

(マリーさん、私は臨戦態勢を取るのが早いだけですわよ…)

(あのきかんほう機関砲をのっけたくるまで嬉々としてフランス陸軍をしばいておる姿、皆に見て頂きましょうか…それとリンドリアーネ、あなたはわたくしの管轄じゃございませんけど、欧州地域にも影響の出る話ですし、まかり間違えばマドモアゼル・フローレシェーネやマドモアゼル・メーテヒルデの領分にも関わっておりましたわよね? ええ、このあとで5分ばかり、その辺りのお説教、させてもらってもよろしいかしら…)

(ひ、ひぃいいいいい!)

(な、なんか4号さんが怯えに怯えてますけど…)

(痴女宮暴力女の歴代ワースト10のうちの2人がここにいるからね…)

(マダム・マサミ…あなたもじゃないですか…)

(そうですわよ雅美さん。陛下と雅美さんを入れたら暴力女序列の4名はここにおります事になりましてよ?)

(何であたしが…)

(暴君べらこちゃんを自称しているパスタ女、頭巾で変装してここにいる気がするのですが、きっと小官の気のせいですね)

(ぐぬぬぬぬぬ、この腐れカエル女…)

(あの…1号様、そちらのお国のおなご衆、こう言う方ばかりで…)

(7号様は痴女宮をご存知です。お尋ね下さい…)

(一言で申しますと巴御前とか北条政子様とかの集まりですわね。べらこ様もあちらでは、言葉より先にお手が…)

(あの…あたしやマリーちゃんより、もっと手が早い子、ここにいますよ…)

え。

雅美さん、何を。

(な、な…なんでそこであたくしをみるのですか!)

(アルト閣下。黒薔薇騎士団員以上でないと回避できない速さでハリセンを繰り出してどつき回しておったの、小官も痴女宮勤務時代に目撃しておりますが)

た、確かに…ええ、どうも自身に火の粉がかからないように黙っていたようですけど、よく考えたらカエル女を更に上回る物騒な存在でしたよね、特に痴女皇国の方のアルトさん…。

(聖院のあたくしもぶっそうさではまけておりませんって!)

(あたくしも騎士訓練の際の教官、ダリアさんかアルトさんでしたわね…)

(わかるか13号…お主、1号様の宮殿に行けば、あれなのだぞ…)

(13号様。ぶっちゃけ、大奥でもびんた祭りですけど、恐らく1号様のお宮、大奥より厳しいと思いますわよ…)

(ちなみに私、田中の場合はアルトくんと、それから今は統括騎士団長のダリアと、あと乳上だったわね、訓練相手…)

(私の時はマリーさんと、あと黒薔薇の方でした…手加減はありましたけど…アルト閣下…フラウ・マリーのお説教を回避できる対策を講じて頂けるならば、強姦作戦の際にうちの故郷へヴァレンシュタインの徴税軍が来た際の活躍を披露しますが…)

(マリーちゃん…リンドリアーネさんは、あたくしがいいきかせるとします。マリーちゃんがしかると、こんどこそせいがんがとおってしまいますよ…)

(何ですのアルトさん!将軍様が買収されていいのですか!ベラ子陛下も何か口添えを!)

(ふっ、私とて上司を籠絡するくらいの知恵は身についたのです…フラウ・オミヨもこれくらいは出来ないとなりませんよ…)

(なんかこう、日の本の女とは根本的に色々違う気がするんですけど…)

(まぁ13号さんの見立ては合ってるっちゃ合ってるわね。けれど、それならこの子達とおおむね同格か上のあたしの存在が説明つかないでしょ? 13号さんと同じ日本人よ?この不肖・田中雅美…)

(まぁたしかに、まさみさんにもんくを言うひと、いまやあまりいませんね)

(そこはそれ、雅美さんは人を籠絡するのもお上手ですから…力だけでごり押しはなさいませんし…)

(中欧支部の予算担当者として申しておきますと、普通に財務局や欧州地区本部に予算請求するよりも、雅美さんに一報入れてから連絡する方が話が通りやすいのは事実ですね)

(で、井伊直孝様。奥様は、何も欲望だけで幕府の通達を守らせようとしてる訳でもないのですよ…アルトくん、ちょっと直孝様の拘束、解いたげて…)

でまぁ、いつの間にか例の時間進行が遅くなるアレ、初代様と図って有効にしていたようです。

今は24時間制で申しますと、ようやく午後11時になったくらい。

で、今度は吉原の監督業務が一段落したらしい偽女種5号さんと6号さんが呼ばれます。

「まぁ、直孝様のお気持ちもわからなくはございませぬ。ええと、彦根招猫国の租税帳に載った者の数、今はおいくらくらいでござりまするか」

つまり、甚右衛門さ…偽女種5号さんは彦根藩の人口を知りたいようです。

で、奥様は即答。

「およそ18万でございますわね」

「今の比丘尼国の人口が三千万、江戸がそろそろ百万人超えする時期で18万人はまずまずですね…」

「で、比丘尼国の今の納税制度が…二公八民でしたわね、11号様に12号様」

「左様でございますな、3号様」

「今はたのちゃんが三河監獄国を視察した当時とは物価が変わってるから…一万石イコール1万両で、一両を4万円とすると、三十万石はざっと百二十億円ね…」
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/39/

(ぶっちゃけ米相場が低め安定しちゃったから、たのきちが試算した時よりもはるかに1万石の価値が下がってんのよ…)

(雅美さん…その相場でも八十両って320万円になりますよ…ホストクラブのイベントはともかく、銀座や六本木辺りで高級なお酒を入れるか…ラッッィオーニさんがニューヨークで使ってた高級コールガールクラブでも利用したような金額ですよ…)

(江戸時代の人口を考えるとさ、当時の吉原、訪問者の割に登楼するお客が少なかった可能性もあるでしょそれに、遊郭じゃまだお客が取れない年齢の少女も引き取ってた訳だから…だから、本当に太夫は稼ぎ頭だったのよ…)

「ただ、太夫はおいそれと太夫として座敷に出す訳には参りませぬ。島原の吉野太夫、そして吉原の高尾太夫を名乗らせるためには…そうですな、元来なれば数え十二でおなごを預かったと致しましょう。よわい十八になるまでに太夫としての教育を終えねばなりませんでした…少なくとも、我らも参考に致した京は傾城里けいせいさとの揚屋はそうしておったのですよ…」

(経済新聞を毎日読むどころじゃないのよ…囲碁将棋に様々な芸事に精通させる必要、あったの…)

「ふむ。確かに太夫を仕込むには大変な金子と年月を要したであろう。然るに5号、その年月…短縮可能ではなかったか?」

「は、11号様の申される通りと言えば申される通り。まら持ち巫女とならば、太夫となるには旧来の仕込みより遥かに早う出来まする」

(つまりだな…皆、余としても太夫を揚げる一晩の値を下げられぬか、試算させたい訳なのよ…今や神社や朝廷に、更には幕府の助けもあるから、着物の類はそうそう仕入れ値を下げられぬとしても、太夫として仕込むための習い事に使う銭金を節約できれば、その分を客に還元も出来るし、更には器量のよい遊女、より多くを太夫に登用する事もできるであろう…5号も6号も、今よりも更に多くの大尽が太夫を指名した際の混乱を考えてみてくれ…なにせ、ほぼ全ての国主におなご遊びを義務付けたのだぞ…)

えええええっ。

それ、将軍様が考えたにしては驚く内容です…。

「むぅ…確かに…それに、格子でも構わぬものを、面子や見栄で太夫を指名する客も多くなるでしょうな…」

「左様、先ほど阿喜殿が、奥方同士での取り合いとやらをやっておると申されたが、金を出せる者が見栄を張り合って、銭の飛び交う合戦など始めてみよ…そもそも、貧しき家の出のおなごや穢多の出の偽女種に対し、世間の者共が慈悲の心で奉仕させる意味もあって、敢えて無料に近い遊びをさせようとしておるのに、贔屓ひいきや推しとやらを見初めて歌舞伎演者のごとく、おひねりを飛び交わせてみよ…身上を潰すまで銭を使いよる阿呆、必ずや出よるぞ…」

ふむふむ。

11号さんの予想を現代風に翻訳するとですね。

「今の穢多少年売春を仮に有料化すれば、お気に入りの偽女種さんにお金を貢ぐ奥様が続出して人気ホストのようになってしまうだろう。そして、男性相手に吉原でやってる売春も同じで、お金持ち自慢やマウントの取り合い合戦のために一番高額な太夫に指名が集中してしまうのではないか。そもそも福祉目的で売春や実質ゆきずり匿名仮面おめこをさせているのに、小判が飛び交うような蕩尽とうじん自慢は幕府の意図するものではないぞ」

どうですか。

「1号様の申される通り。ただ…太夫は元来、公家や大名を相手にするほどのおなごを出す必要があったのです。そして…じんえ…5号」

「で、河原人は芸事にも携わっておりましたでしょう。で、売春の歴史としてですな、例えばどこかの上様も観劇のご趣味がござる能楽や歌舞伎、あの役者を呼んで色事を為すのが貴人の密かな楽しみであったこともございましたとか」

なるほど…芸能人とセッソおめこするなら、それは高額な売春料金を取るのもやむを得ないかも知れません。

「言うなれば…例えば、3号様が若い散楽さんがくの踊り手を気に入ったとしましょうぞ。その際にまらを陰部ほと、即ち御目子に突っ込まれるだけではなく、己の為に歌え舞えと要望するわけでございますよ…」

(要は1号ちゃんならガゼ○ボが自分のためだけに歌ってくれて、そして御目子してくれるっていうようなのが、平安あたりから応仁の乱の時代までの貴族向け高級売春の形態だってことよ…)

(鉄腕村のイケメンがやって来るならお金を貢ぐ人が続出しそうですね…)

(1号ちゃん、それに近いのが正にホストやボーイズバーなの…イケてる男の子との独占タイム、そして珍宝を餌に女の子からお金を吸い上げるのよ…)

(かーさまがアレを忌み嫌う理由を散々に語ってました…)

(うん、ジーナちゃんの性格なら、ああいう人種との相性は壊滅的に悪いわね…)

「逆にお伺いしたいのですがな、未来の吉原、揚屋の相場はいかがなもので」

「あ、それはあたしたちが某ソー○ランド系列店と提携してますから即答できますよ。そうですね…高級店とされるお店では二刻で総額1両です」と、ざっくりしたところをお伝えします。実際には受付で渡す入浴料金と、お部屋で女性に渡す「自由恋愛料金」に分かれているのですが、ここは一括前払い制度になっている中洲泡風呂国の流儀に合わせて、総額でお答えしておきましょう。

「なんか…安くはござら…あ!中洲泡風呂国の風呂屋!あれの相場とほぼ、変わりませんな…」

「なるほど…床を共にしたり芸事の披露どころか、御目子するためだけに逢瀬の中身を絞っておるのですか…」

と、現代のお風呂屋さんの相場を聞いた5号さんと6号さん、風俗業に対する考えの違いもあってか、ちょっとばかりカルチャーショックを受けているようですね。

で、ここは一つと雅美さんが「水商売」と「射精産業」に分化した連邦世界での現代日本の風俗業や、他の諸国の売春事情を軽くさらっと江戸の皆様に知識伝授して、文化ディバリオ・相違クルトラーレを埋めようとなさいます。

「マサミ=サン他のジャポンの皆様に質問が。オペラ座の個室席…ああいったものは日本にはなかったのですか?」

などと、カエル女が申しよります。

「ふむ…かぶりつきや桟敷席は存在いたしますが…」

と、今ひとつ現物が想像できなさそうな11号さん。

「11号様、向こうの歌劇場は石造りの頑丈かつ立派なものなので、劇場内の構造からもそうした貴賓席が設けやすいのですよ…ほら1号ちゃん、イタリアでもローマ歌劇場なんかにもあるじゃない、ボックスシート!」

あー…雅美さんはさすがと言うべきか、一瞬で日本と向こうの違いに気付かれましたね。

で、ここでも、オペラ座のその個室席の実物画像をお見せしながら皆様にご説明。

「地揺れが滅多とないから、かような城のような石造りで華美壮大な建物が作りやすいと言う事でございますか…劇場内の観衆を座らせる椅子席が三階四階とまであるとは…」

「なるほど…貴族や富豪とかいう大尽が年間で借り切る事もあると…」

「借り切るためのお金を出せるのが一種の階級自慢になるのですよ」

「で、部屋に入れば鍵を閉められると…」

「観劇を名目に、密談や逢い引きにも使われるのですか…」

「しかし、我らの演芸場でそのようなものを作るにはいささかに不向きやも…」

「にしても、ようも考えつきよるもの…」

などなどと感想が飛び交いますが。

「でまぁ、ああいう場所は旧来、実質的に王様ですとか由緒ある貴族しか使えませんでしたが、貴族の没落や王族への世間の目もあって、新興の富裕層…日本では豪商が一番近いと思うんですけど、お金はある層が借り切ることもありました。ただ、今は他にもダンスホール…舞踏会場に該当するような施設にも、こうした富裕層向けの快適な個室が作られる例もあり、空いている事も多いのです」

(クラブの個室よ…ママの店のニューヨークの支店にも作ってるでしょ…)

(あれ、本当にその用途にも使ってるのは内緒で…)

「そうですね、小官は正にここでナリキンの相手をした事が何度かありますよ。どこの国のどういう人間とは申し上げられませんが、共和国以外のオノボリサンだったとだけは」

えー…エッフェル塔の展望台や、セーヌ側沿いの橋の上でとかは聞いた事、ありますけどね…。

「正に、金と暴力にあかせた暴挙を好んだ顧客が少なくなかったのですよ…。そうですね、ジェネラールに想像しやすいよう申し上げますと、平日の白昼堂々、シャトーのてんしゅかくの展望室てっぺんであくせく働く大衆を眼下に眺め優越感に浸りながらオメコするような良い趣味を持ったナリキンが世間には存在するのです」

「それ…日の本の侍では出てこぬ発想ですぞ…」

「貴族でもまぁ、よほどの阿呆でなくば考えつきませんわよ…」

「ああ、これは日本人とフランス人やイタリア人他の考え方の差ね…日本以上に身分格差を傲慢にひけらかす傾向があったのですよ…ですから、革命と言われた身分格差解消運動は、身分差の解消どころか、下手するとそれまでの支配階級との逆転すら企図して暴力的かつ大規模に行われ、複数国を巻き込んだ戦争にもなったことがあるのです…」

すらすら答える雅美さんに、比丘尼国の皆様から尊敬の視線が寄せられます。

「ほれほれロシア革命やフランス革命、そして英国の清教徒革命、ベラちゃんなら世界史の授業でも出たでしょ…」

あい…。

「ちなみに小官は正規の教育を完全に受け切ってはいないのですが、軍人生活も含めて日本の皆様に断言できることがありますよ…世界の大半の国家では、支配とは対話ではなく暴力で行うものであって、いかなる犠牲を払おうとも強硬に支配を主張することも少なくないのです。アフリカでも部族間抗争は、まさに血で血を洗う内容も少なくないのは、マダム=マサミであれば実際の例をご存じでしょう」

「まぁねぇ…敵対する政敵を殺害するどころか、その肉を料理させて食べた支配者もいるくらいだから…」

この発言には、腰を抜かす日本勢。

「中原龍皇国にはそのような残酷な輩がおったようですが…」

「ジャポンでも犯罪者は首を斬っておったでしょう。あれをもっと大規模にやるのです。痴女皇国世界ではレーヌ女王・オリューレの統治地域に組み込まれましたが、南アジアでフランスが支配していた地域では部族間紛争で討ち取った敵の首の数を自慢する部族も存在したのです」

と、干し首の画像を見せるカエル女。

「あー、確かに日本でも水利権を巡って村対村で○し合いとかやってたけど、アフリカやアジアほど大規模にやることは滅多にないわね…ちなみにそれ、おサルさんの時代にも能勢の山奥で起きて、相互の首謀者全員斬首刑にされてるわね…」

(祖父や親父殿に聞き申した…あの太閤殿下、巷では陽気で好色で気前がよいように伝えられておりますが、それは細作が流した虚像であると…)

(うむ、11号様…まさに6号殿と私は小田原を経験しておりましたから…北条側も相応の兵力を有しており兵糧の備蓄もございましたし、何より酸鼻を極める前に降伏しましたから大事に至っておりませんが…)

(ええ、一歩間違えれば三木や鳥取に続き、小田原の餓鬼殺しとか言われておりましたでしょうな…)

(味方の死骸を食するなど、正に酸鼻の極み…さしもの関白殿下も、備中高松で多少は戦略を変えたようですが、水責めにしたところで兵糧を食い尽くせば結局は同じ事…箱根を追われた恨み、秀頼殿にまで述べ立てる気はございませんが、かと申して忘るるには今少しの時を要しますな…)

(お主らは慶次郎殿に同道しておったのであったな…風魔の助命、猿飛からも書状が届いておったと宗矩が明かしてくれたが、風魔一族を密かに箱根より逃していたのは正に僥倖であったろう…)

(は、おかげを持ちまして庄司家のみならず風魔一族、北条に殉じたる者以外は皆生き延び、徳川とくせん家に忠誠を誓うに至りまして末代までの感謝の極みにございまする…)

(で、このお話での風魔一族は漫画版花の○次に近い状況でしたが、タヌキさんに密かにくみして逃してもらった後、庄司甚右衛門さんの一族と協力して関東平野の開発に従事してタヌキさんの信頼を得たそうです)

(伊賀者甲賀者より、風魔は根絶やしにするには惜しまれるとの嘆願を受けた祖父が手を打った件、正に英断であった…お陰で余も、助くらるること数多あまた…)

(ふふふふふ、実は、骨殿が上杉の佐渡攻めで確保しておりました孤児たち、ああした子供たちは河原にて預かり、見込みある者は三ツ者武田流忍者としておりましてね…慶次郎殿は行き先を一瞬で看破なさったそうですが、後に骨殿がからくりを明らかになさいまして…)

(関白殿下が病死なさった事で未遂に終わり申したが、唐攻めの膠着が続けば本当に、骨殿の目論見…殿下の暗殺、三ツ者の手によって為されておったやも…)

(甲斐武田残党は勿論…未だ関白様に恨みを抱く者、関八州かんとうちほうには結構おりまして…真田の残党もおります故、大人しくはしておりまするが…)

と、おっそろしい事を6号さんと5号さんが暴露なさいます。

(なにせ、美人だった我が姉、北条に嫁いでおりましたが、関白殿下どすけべざるが狙うておったらしく、亭主殿の自害の前に味方に斬られておりましてね…よほど関白様の手に落としたくはなかったようですが…)

5号さんも結構、豊臣政権に対して思うところある人のようではあります。

ま、この時代の日本の方、特に恨みつらみを溜め込むような出来事を経験した人多数と申し上げておきましょうか。

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「ですがムッシュ・ジンナイ…あまり恨みつらみを溜め込むのも良くはありませんわよ…うっ、アクメ…」

ええと、マリーちゃん…何やってんですか…。

「ほれ、あたくしが外道ちゃんからもらったオニ細胞、あれをジンナイさんに」

「渡すにしても、もうちょっとやり方があるでしょ…」

ええ、マリーちゃんのでか珍、5号さんが咥えてんです…。

「それに、あのパリでのをかま作戦の時にムッシュとは縁が出来ましたからね…」

「まりー殿はあまり恨みを溜め込まない性分のようで…羨ましいと言えば羨ましい話ですな…」

あ、そうですね…マリーちゃんと甚右衛門さんはあの時にヴァンセンヌの森で、をかま狩りの地上班に従事していましたね…。

「で、カエル女も何を晒してやがるのですか…」

「ふふふ、マドモアゼル状態のコタロウ様と互いの経験を共有したのです…コタロウ殿には小官の特殊作戦従事の知識と経験を。そして小官はニンジャのテクニークを。これでパスタ女を泣かせる目処も立とうというもの…痛いですよ、陛下」

「何を教え込みくさっておるのですか、このど腐れメスカエル…」

「ま、まぁ1号様…余が依頼したのですから…」

ええと、なんで11号さん、あたしのちんぽを咥えておられるんですか…それも、ほも仕様じゃなくてぴーたーのーすですよ…。

「あたしと交代する? 12号さんは偽女種状態よ?」

「まーさみさーん、この状況を素直に受け入れてる方が怖いんですがぁっ」

ええ、まさ…3号さんは12号さんに咥えられてます。

そればかりじゃありませんよ…今度は奥様の阿喜さんが旦那さんを昏倒させた後で、側室の方と二人してご自身の息子さんの息子を…。

「しかし、穢多の方の偽女種化、続けておれば問題も出そうですね…」

「ところが8号様に9号様、ちゃんと策は打たれておるそうでしてよ…」

「ええとですね、ぶっちゃけ比丘尼国の偽女種の方…痴女皇国の罪人偽女種と同じで、何の対策もしないと寿命、かなり早いですよ…」と、大奥の方々と並んで井伊家の女中さんたちから奉仕を受けておられるブリュントレーネさんが平然とばらしよります。

「ちょっと、ブリュントレーネさん…」

「陛下。中欧支部でも今年度中には同様に偽女種の活用を始めますでしょ…偽女種に関する制限の統一も企画されている事もあって、私の方にも資料、来ているのですよ…」

「この場にも偽女種になれる方が何名もおられるんですから…」

「えーっとね。ぶっちゃけ今この場にいてる人で、偽女種特有の異様に短い寿命問題で困る人、いないわよベラちゃん…ほら、5号さんと6号さん、それから11号さんと12号さんは鬼の元締めの鬼細胞の効果で偽女種になれるから…だから、小太ろ…6号さんがそうだけど、5号さんや11号さん12号さんも、制限がかかってなかったら巫女種状態を選べるのよ…ニョタ化も可能なの…」

その瞬間、嫌そうな顔をした人、3名。

「拙者、おなごになることは避けたいのですが…偽女種は受け入れましたが、流石におなごは…」

「余もそればかりは…それだけは…」

「わしも万一、おなごになってくれと言われては腹を切ってようございますか…」

えーと、御三方…それ、もったいない話に思いますけど。

「ベラちゃん。それをクリスくんにやろうとしてスクルドさんやマリアちゃんに思いっきり怒られたの、忘れたの…? 男の尊厳を失うのよ…?」

「でも、6号さんはできるじゃないですか…」

「このパスタ女は男性心理を理解しているようでしておりませんね…良いですか、ムッシュ・コタロウはニンジャとしての精神鍛錬を突き詰めた人物ですから、明確な目的が存在する場合は女性化もやむなしと受け入れられるのです…そこまで割り切れる人物なのですよ」

と、6号さんを突きながら言うカエル女ですがねぇっ。あんた、ちゃんとパワーダウンしてるんでしょうね…。

「勿論、比丘尼国のニンジャの方に黒薔薇騎士としてのあれこれを迂闊に移植する愚は避けていますよ。黒薔薇服の階級服従機能を使用して、コタロウ氏とは対等関係に設定した上でオメコをしておりますから」

と、冷静に言いやがるカエル女ですが。

その時、客間の向こうで「お待ちなされ…直滋、確かにそなたも直澄も、私とは血が繋がっておりませぬ…しかし、若きそなたの時分でそのような恐ろしいことを考えるのは…」などと声がしています。

「いや母上、兄二人が夭逝した後、残る僕と直澄が家督を継ぐ話となるでしょう…なればまだ若き直澄に井伊家の未来を託せるならば、僕は家を出ても良いと思うのです…」
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