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番外編・吉原よいとこ一度はおいで 4
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皆様こんにちわ、最近は影が非常に薄いと言われているかも知れない、田中雅美です。
(エロメスカマキリとか女郎蜘蛛と呼ばれていた雅美さんは、どこに行ってしまったのでしょう)
(うっさいわねベラちゃん…ある意味であんたらの尻拭いみたいな仕事なのよ、今回「も」!)
さて、今回のお話。前回のアルトくんのお話から少しばかり時間が経過した江戸市中からお送りする事になります。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/188/
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で、江戸城の大広間。
実のところ、江戸城内は先代将軍たる徳川秀忠様の時代に大きく手を入れられ、近代化設備が導入されたとの話、あたしの傍にいるベラちゃんから聞かされます。
そして、北欧いけにえ村作戦当時の江戸城と大きく異なってしまったばかりでなく、連邦世界の史実…天守閣が焼け落ちて以降、再建されませんでした…とも異なる構造にされてしまったそうです…。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/71/
「後々に皇居の建物を作る準備工事も兼ねていると、エマ助から…」
「まぁいいんじゃない? おトイレの水洗化とかお風呂の洋風化とか、痴女皇国流の変態プレイに大奥を対応させるための工事とかやったのは聞いてるけど…」
でまぁ、私、田中雅美が留袖着用という、天の声を殴りたくなるような姿でこの江戸城にお邪魔しているのは、実は先立っての吉原狂犬騒動ですとか、その後の虎次郎くんの江戸城引き取りだの、痴女島に残っていた虎次郎くんのお相手のメスの虎…虎子さんという名前です…の江戸への移送とか、諸々の手続きのこともあったのですけどね、一番の理由は。
「江戸市中の夜間女性外出禁止令、ですか…」
「その草案作り、おかみ様とマリアちゃんから依頼されてさぁ…報酬は家光さんとか信綱さんとか、甚右衛門さんとか大奥でのショタ踊り食いと言われたら、受けざるを得ないわよね…」
「受諾理由があまりにひどすぎる気がするんですけど…」
「それに、痴女皇国の融資先でしょ? 大奥改築はもちろん、売春事業に関する出資金運用状況の監視、たのちゃんからも頼まれてんのよ…」
で、本日はその、外出禁止令の正式発布を前に、上級武士の夫人やお妾さん向けに開かれるという、法令案の内々お披露目式とやらへの出席を依頼されております。
で、このお披露目式の出席者ですが。
まず、この時代…連邦世界同様に徳川幕府の統治下にある八百比丘尼国、即ち日本ですけど、江戸城の近隣には大名屋敷に該当する国主屋敷が固まって建てられている高級住宅地が存在すると思ってください。
そして、そこには連邦世界同様に、国主の方々の奥さんや子供さんが住んでいます。
この妻子の方々の江戸居住ですが、まず徳川幕府によって江戸居住を義務とされたのは、いわゆる外様大名の奥様や側室の方々、そしてその子供さんたちです。
つまりは、江戸幕府に対する人質としての役割を背負わされた方達ですね。
で、親藩や譜代…つまり、関ヶ原の戦い以前から徳川家と仲良しだったり、あるいはタヌキさん一族の親戚だった方々の妻子の江戸居住は義務ではなく「推奨」とされています。
これは、この大広間で今から私と一緒に司会進行役を務める元・加賀藩主夫人の前田まつさんが、その昔に自発的に江戸城に来て城下にお住まいになられた事…つまり前田家は豊臣じゃなくて徳川家につきますよとばかりに、自ら進んで人質となったことに由来する風習だそうです。
で、その後は徳川幕府が安定した統治ができるようになったことから、徳川家と仲良しの国主様については、必ずしも人質を差し出さなくても良いだろうとされました。
しかし、今、国主をやっておられる大名の皆様のほぼ九割…よほど財政状況が辛いとみなされて人質免除の判定を受けた国主様のおうち以外は、皆さん競って奥様やお子様を江戸に送ろうとなさっておられるようです。
その理由とは。
(江戸の流行りを身につける風潮が女性の間で広まっておるからです…加賀藩内でも、農家や漁師はいざ知らず、ある程度の商家や武家、娘さんを前田家や家臣の家に女中奉公させてでも江戸生活を体験させようとしておるのですよ…)
(あと、女子学校なる公営寺子屋、男児向けのものに続き江戸に開校いたしますからな…幕府の勘定女中が読み書き算術試験の後に登用されるとあっては、目ざとい者が子女の教育を江戸にてと、流行りの匂いを嗅ぎ取っておりまする…)
(あれ、南蛮算術でしょう…あると様のお国で考えられたという洋数字の記述からまず、学ぶ必要がございますからねぇ…私は横濱勤めの際に洋暦と併せてぱーくす様やばーど様から教えて頂きましたけど、けたの多い数え算には、和算よりあれの方がよろしいかも知れませんわね…)
つまり、江戸の街に単なる学歴社会が到来するというだけでなく、西欧式の学問で使われる文字や単位・表記など…そして西欧式の文明や文化の産物を比丘尼国の標準としても導入する可能性を嗅ぎとっている目ざとい方々が、江戸での子女教育の流行をつかもうとしているようなのです…。
そして、上級の武士階級の奥様や娘さんなら、英国の上流階級同様、身の回りのお世話をする女中さんが雇われていることがステータスなのです。
そして、奥様が江戸住まいということは、当然、加賀藩なら加賀藩の江戸屋敷に女中さんが必要となります。
ですが、各国主の江戸屋敷ということは、その国の軍事や政治・経済の出張拠点でもあるわけです。
当然、お屋敷の中では、幕府や他国の方々、更には自国領民に聞かせたくないお話や見せたくないものがある可能性、予想されて然るべきでしょう。
しかし…江戸で女中さんを現地採用するということは、そんな重要施設のど真ん中に、無条件で他所の地域の女性をお屋敷に入れてしまうことになりかねません。
そうです…そういう機密漏洩を防ぐ必要性がある場合は、前田家の場合ですと、少なくとも地元の加賀で採用した女中さんを江戸に派遣した方が安全性が高まることになるでしょう…。
(そりゃあ、江戸で採用する例はなくもありません。けれども、それはよほど人がいないとか、地元でなり手がおられないなど、喫緊の時に限っておるはずですわ…)
(そうですな…幕府では特に国主屋敷で雇っておる女中の出身などを問うてはおりません。正直を申せば、好きにやってくれとしか…ただし、幕府自体が江戸城内、わけても大奥のために雇う女中については厳しく身分門地行状を調べ、実際に何かしらをやらせた上での雇用としておりますな、おまつ殿…)
(ですわね…わたくしも、その審査をさせていただく事がございますし…厳しさは存じております。むしろ見知った者や親類を雇う…縁故雇用の多い国主屋敷の女中方の方がのびのび働けるのではありませんかしら…)
(ただ、そこまでの狼藉を国主相手に企む阿呆はおらんとは思いまするが、盗みをする輩には手引きと称して手の内のおなごを女中としてあらかじめ目的の屋敷に忍ばせる手口がございまするとかで、各国主ともになるべく身分明らかな子女を女中にしておるとは思いまする)
と、この式典の見届け人代表として上座にお座りの、当代の征夷大将軍たる徳川家光様からおまつさん経由で中継心話が届きます。
(まぁ、現地で採用頂く方が国主の方々には方言や食事などで気を遣わずに済むでしょうなぁ…特に津軽や薩摩に南部など、他所の国かと思うような言葉を使うたり、芋など食うておる土地ですと…)
何か、芋とおっしゃる辺りに複雑な感情が見え隠れしておりますね。
(黒火山芋侍国に共通税制を導入する時に揉めたそうですわね…)
(ええ田中様、あのような人の話を聞かない連中には、あると様のような方が向いておると、余も島原で痛感致しましたので、ついでの薩摩派遣を戴けました事誠に重畳の極みでございまする…)
(あの子、まず殴ってから話をしますから、薩摩にはちょうどいいと思ったんですが、正にドンピシャでしたね…)
(まさみさん! あたくしはちぇすととかいわれるのをしっておりましたから、まず軽くなでただけなのです! さくらじまとかいもんだけがふんかしたのはぐうぜんです! たまたまなのです、たまたま!)
(あると様がたまに力を入れているのが気になりますが、まぁ、あると様とはちじょのお島で度々顔をあわせておりましたから、どういうお方かはよう存じております。そりゃ、薩摩をきゃんと鳴かせるにはうってつけでしょう…)
ちなみに前田まつさんですけど、芳春院という出家名義で江戸幕府の大奥顧問、そして日枝神社境内慈母観音堂住職ですとか江戸城詰慈母宗尼僧頭ですとか、幕府に関係する数種類の役職に就任しておられます。
つまり…家光様の正室の鷹司孝子さんや乳母の春日局さん、更には家光さんの実母たる崇源院様すら差し置いて、実質的には江戸幕府の女性役職者のナンバーワンになってしまっているのです…。
もちろん、この背後にはおかみ様や、マリアちゃんの強固な後押しがありますし、おまつさん自体も巫女種化…というよりは最低でも万卒級の可変ステータスランクを備えた痴女種互換モードつきの身体を与えられているためもあるのです…。
ですから、おまつさんは実質、痴女皇国の日本地区支部長、いえ、日本地区行政支局長として痴女皇国では扱われているとお考えください…。
Matu Maeda 芳春院 Thousand Suction. (Limit variables) 千人卒-可変能力制限者 Slut Visual 痴女外観 Kunoichi knights, Imperial of Japan court. 八百比丘尼国女性忍者騎士団 Governor, Imperial of Japan administrative bureau, Imperial of Temptress. 痴女皇国日本地区行政支局長
(で、くのいち騎士団の初代団長は風魔小太郎さんになってもらいましたけど、実のところは吉原の副町長役が忙しいから、実質的な団長を探しておられる最中だそうです)
(本当は加奈…奥村加奈がわたしより遥かに武術には長けておりまして、そういうお勤めには相応しいのですけど…あの子は加賀で縁談があって、加賀藩に返してしまったのですよねぇ…)
(まぁ、実質的に江戸城詰めのくのいちの皆さん、今はおまつさんの指揮で動いていて、おまつさんが臨時団長という感じになっているとしておきましょう…)
(実は、このくのいち達が、この後で発表する女性夜間外出禁令に関係してくるのですよ…江戸城下、わけても大名屋敷周辺の警備を充実させる必要がありました上に、こればかりは殿方の警備に任せてはおけぬ一大事がございまして…)
(ふふふふふ、まぁとりあえず、発表としましょう…)
で、大広間に次々と入室して来られる女性陣、大奥女中の方々の案内で指定されたお座布団に着席していかれます。
お座布団の前には、お茶とお菓子の載ったお膳も。
で、全員着席を確認の上で太鼓が打ち鳴らされたのを合図として、立ち上がられて会合の開始を告げる家光様。
「本日は国主奥方並びに側室、側女中の皆に於かれては、江戸城大広間への参集、誠にご苦労でござる。まずは喉の渇きもあろうから、余の正室たる孝子より皆への贈り物として、茶と南蛮菓子を用意させて頂き申した。差し支えなくば召し上がられよ」
で、このお膳の上のお茶とお菓子ですけどねぇ。
(ぐふふふふふ、おまつさん…南米淫花帝国特産の効果淫茶だとは絶対に申しませんように…)
ええ、隣でベラちゃんが澄まし顔してとんでもない心話を送っていますよ…。
(うふふふふふ、更には快感王でこしらえた「ちょくらあとかすてーりゃ」なる菓子ですものね…)
(ええ、議事の円滑な進行には絶対に不可欠なのです…更にはアルトさん率いるくのいちの皆様と、品川や吉原から派遣された選抜穢多偽女種の皆様が大広間の控えの間に待機中で、うるさく騒ぎそうな奥様を黙らせる細工はりゅうりゅうなのです…ほほほほほ)
(うふふふふ、偽女種は穢多非人身分となりましたが、穢多の方が都合が良い話。それに、穢多身分の方々でも必要があれば江戸城にお越し頂けるよう、石頭の大老や奥の女性陣を説き伏せる口実にできましたからね…)
な、なんという悪だくみの心話。
(左様左様。虎次郎の餌を献上させるための方便口実として偽女種を穢多非人身分と定めたことがこうも色々と捗りますとは…いやはや、まりや様から悪事を考えさせるならば是非に田中様をと勧められた理由、この家光とて心安らかに理解申した。田中様、この件の褒美、余の身体で相済みませぬが…)
ちょ、ちょっと家光様、今、それをバラされてはベラちゃんが調子に乗ってあたしを責めますから!
(まーさみさーん、何を変な入れ知恵してんですか~………)
(ま、まぁまぁべらこ様…そもそも矢野弾左衛門めに穢多非人の管理を任せたのも、狂い犬騒動を引き起こした遠因でございましょう…更には、弾左衛門のごときは死骸から指切りをして吉原や品川の遊女に売りつけるなど、死罪にした罪人の死骸を管理しておる山田浅右衛門の領分に手を出す不行届もございましたし、穢多の管理を小太郎や甚右衛門に移す企みの一環でございますれば、田中様がお考えなさりました諸々の調略、我が江戸幕府にとりましても好都合の極み、余がふたつ返事で了承してございますれば…何卒べらこ様はお騒ぎになりませぬように…)
(家光様のお庇いには、目から汁が)
(何かこう、家光さんが雅美さんを庇っているのがなんともかんともなのですが…)
うふふふふふ、ショタを籠絡することにかけてはこの田中雅美、一応はその道の達人を自認しております。
更には、家光様とは日本人同士の仲ですし、連邦世界の史実での家光様の人生のあれこれを既に知っている立場ですよ、私…これで家光様を籠絡できないとあれば、それは一代の恥というものでしょう…。
で、それはともかく、配られたお菓子を食べてお茶を飲まれた女性陣。
貴重そうな南蛮菓子ですから、懐紙に包んで持ち帰りそうな人もおられましたが、土産にするならまだあるから、後で相談なさいとおまつさんが心話で警告されたので、皆様はとりあえず完食なさいます。
それを確認するが如く、大広間正面に用意されたプレゼン用スクリーンに表示される、今回の女性外出禁止令の政令本文と付則各文。
そして、家光様のお招きで壇上に上がり、おまつさんと並んで立つ私ですが、プレゼン画面操作役はこの私が担当することになります。
では、今回の女性夜間外出禁止令、文章でご覧頂きましょう。
告「女性にあっては夜四つより明け七つの間、供の者なく独りで江戸市中を出歩くを禁ず」
一、破りし者に罰則は設けぬが、外出の途上にて女犯に遭うてもこれを罪として調べず。
一、危急火急を知らしむる為の止むなき外出はこの限りに非ず、普通の女性出歩きとして扱う也。
一、夜鷹はこの限りに非ず。江戸市中にて春を売る生業の者の扱いについては別途、夜鷹法度に則り定めるもの也。
一、陰間については男と看做す。
つまり、これを現代風に翻訳しますとですね。
「夜10時の町木戸を閉める時刻から、明朝5時頃の大名行列出発時刻まで江戸市内での女性の単独外出を禁止します」
「この掟を破る女性を積極的に取り締まる事はしないけど、だからといって男性のお供を付けずに強姦されても、殺されたり攫われたり重傷を負わない限り、奉行所は単純強姦罪としての捜査をしませんよ」
「地震火事急病犯罪遭遇他、どうしても知らせたり人を助けに呼ぶような緊急事態が発生した時はこの限りじゃないよ、普通の時刻に女性が外出したものとして扱うよ」
「立ちんぼ売春の女性はこの外出禁止令の適用範囲外です。ただし、路上売春については別の法律が定められているからそっちに従ってね」
「女装した男性、特に売春目的の偽女種さんは男性として扱うよ」
で、外出禁止が解除される時刻について。
江戸市中の住民居住区域の防犯用の門を開く時間…日の出に該当する時間から開く銭湯さんや一般商店開店時刻と同じに設定されているそうですけど、その前に解除されるのは早朝のお仕事のために女性が通勤することを鑑みてのものだそうです。
でまぁ…案の定というべきか、男尊女卑の観念が根強いこの時代の日本にあっても、女性の権利を侵害しそうな話には本能的・生理的に反対するのが女という生き物です。
「がおおお!」
何人かの奥様方が出そうとする反論の声を察して、吠える虎の虎次郎くん。
その猛威に、あわや失禁の粗相に陥りそうな女性、数名。
で、ですねぇ…女性の会合のみならず、およそ江戸城で将軍様が臨席する会議の席が荒れそうな時の黙らせ要員として、ボルネオ虎種の正真正銘の虎たる虎次郎くん、家光様の側に侍っていたのです…。
いわば、株主総会における総会屋のようなお役目もあるのです、虎次郎くんの江戸城お召し上げの理由…。
「皆様、静粛になさいませ。それと、よくお考えになられまして…?この掟、実のところは町民ならばいざ知らず、卑しくも武家、それも国主もしくは旗本以上の家柄の子女たる皆様の日頃に、何ほどの影響がございましょうや…田中様、春日殿」
「はいはい、で、この女性外出禁止令の案を考えた一員である私、田中雅美がご説明させて頂きます。まずですね…そもそも、夜中に良家の家柄の娘さんや奥方が出歩く必要はございますでしょうか、春日局様」
「年越しの寺参りや特別な夜祭見物などでもなくば、まずあり得ぬ話かと存じます」
実は、この特別な夜祭り…花火大会や吉原遊郭内の女禁解禁祭礼など、いくつかの該当例が存在しますが、ま、現状では普通は女性が単独で夜歩きをするのは非常識の範疇であるという常識が江戸の女性の多くを占めているとお考えください。
で、実のところ、この女性外出禁止令…例のボーズズバー事件が関係しています。
つまり、女性の出歩きを規制されると困ると色めき立っている奥様方が怒ってる真の理由…浮気に絡んだ逢い引きを規制されるため、なのです…。
更には、江戸市内に住む建設労働者の存在。
江戸市内開発のために、近年の江戸では男性労働者を大量に呼び寄せています。
この独身または単身出稼ぎ男性による強姦事件も起きておりまして、何もいちいち法律で規制しなくとも、ええとこの奥様やお嬢様がボディガードの随伴なしで夜、出歩くのは危険だという常識が江戸では一般的になってしまっているのですよ。
(で、浮気をする嫁はですね…供の者に、これで夜鷹でも買って来いと小銭を握らせておいて、その間に男と女の営みをするのが逢い引きの常のはずなのですよ…)
(そうそう、正直、品川宿までの間とか、先の中山宿までの間の逢引茶屋だの、屋形船を使うての逢い引き…奥にも噂が聞こえておったくらい、盛んと言えば盛んなのですよね…)
ええ、お江戸浮気事情。
ですから、性に奔放な奥様、別におまつさんだけじゃなかったのです…。
(ただ、逢い引きの口封じの金子の出費や、従者との交渉すら面倒臭がる奥がおるのが問題なのですよ…)
(坊主の寺に行くのも、真っ昼間から行ける一種の口実でございましたからね…)
(春日…正直、奥もそうであろう…こうした女のどろどろとした怨念や情欲を幼き頃から見せられておった余が男色に走ること、咎めてくれると余としても心に痛みが走るのだが…)
(上様…崇源院様もお体が思わしくございませぬ今、忠長様が酒色に耽り吉原通いを欠かさぬとの噂しきり。果ては秀頼様に成り代わり大坂探題を所望するとか、秀忠様にすら呆れられる現状、上様に期待されるのはお世継ぎ作りのみでございましょう…それさえ成せますれば、上様のご采配にけちをつける口うるさき者、この江戸城内にはそうそうおらぬ話となりますかと)
(そ、そうであるな…いやはや、父は身体弱き余より国千代に期待をかけておったようであるが、国千代の増長増慢を招き自ら自滅したかの如く…父の駿府入りに併せて駿河国主に任じた事すら不満に思うておるなど愚痴話の数々、とうに吉原より聞こえておる…)
前回でもお話が出ていましたが、家光様の弟さんである徳川忠長様との跡目争いめいたものがあるのです…。
で、家光様や忠長様の実母にして、徳川秀忠様の正室である崇源院さんが「美形イケメンであり無病息災健康児童の国千代の方が、長男だけど病弱でヒキニート傾向があった竹千代より将軍に相応しいんじゃ?」と思ってたんですよ。
ところが、元服前のある時、国千代さんは自分が鉄砲で猟をした成果という鴨のお吸い物を、秀忠様の食卓に献上しました。
それ自体は親孝行に加えて武術習得を怠りないとして喜んだ将軍様ですが。
(それ、江戸城の濠…それも、元服前の当時、余の住まいとされた西の丸の濠を泳いでいた鴨を討ち取ったのです…で、国千代めが自慢げにそれを父に伝えたところ、流石に祖父家康の築いた江戸城内にて、元服前の男児が無許可で気安く鉄砲を撃ったことが明るみになりますれば、入り鉄砲規制をしている幕府の面子が丸潰れとなりましょう…更には、いくら我が母のお江が贔屓にしておっても、一応は国千代より兄の立場ですからな、余は…)
(で、竹千代様…家光様の居宅めがけて鉄砲を撃つような兄を兄と思わぬ忠孝に背く有様とも見られておしまいになったのですよ…国千代様の鴨猟。更には無断で城内での発砲に激怒した秀忠様、その場で箸を投げ捨てて食膳の前から退出なさいまして…何だってあんなこと、お付きは押し止め諫めなかったのでしょうや…)
(春日…申すならば忠長は、母の贔屓目と過剰な期待に歪んだのじゃ…余がおなごの欲目を恐るる理由、かかって幼少期の扱いの差によること夥しいのじゃ…)
(上様…今からの事ども、おなごを恐れ穢れに思う上様の心の痛みを和らげ、琴線に響く光景となりましょうや…ふふふふふ)
(まつ殿、そうであったな…正に畏れはするが、男の心根にも響く田中様の沙汰、余も拝見致そうぞ…)
「で、街中の大店の娘どもが小姓や若侍との色事遊びだの、富裕な者共の嫁が男漁りだの坊主通いだのといった、股のゆるいおなごの振る舞いが江戸を騒がす話も出ておりまする、上様」
と、家光様の前に平伏して告げる春日局様。
「更には、こうした振る舞い、一体全体何のために吉原や品川の色里に御免状を発行し、更には一旦は取り締まった夜鷹、夜鷹切手持ちに絞ったとは申せど市中に女が立っての春売りを許した幕府の面子を虚仮にする話にはなりませぬか、皆様方…」と、今度は広間の中の女性陣に向かって申されます。
「で、お忘れ頂きたくないのは、そもそも殿方が盛れば、その精については神社…もしくは、この芳春院が仕切る慈母宗が崇め奉る慈母観音堂に赴いて捧げるべきであるというのが、比丘尼国の男に課された掟でございます。せめて逢い引きに神社境内を使い、精を捧げるならばまだしも、逢い引き旅籠や色事屋形にて不埒三昧では、公方様のみならず、おかみ様の怒りを買う話にもなりかねませぬ…」
おまつさんも、顔に青筋を立てて申されます。
「幸い、ここな上様の名前の発布にて、世の奥方は神社もしくは慈母観音堂での臨時神職または尼僧勤めを許された身の上でございましょう。もしも、亭主以外の殿方を求めて止まぬ女性、よもやこの中におらるるとあらば、最寄りの神社か観音堂に身を寄せなさいませ…」
ええ、これまた前回でおかみ様が言っておられた「聖母教会や慈母寺での女性の臨時アルバイト風俗嬢勤務を比丘尼国でも許可しようよ」という一件が形となったものなのです。
「そして、旦那様やお父上母上の頭が硬い、あるいは主人が認めないだろうという場合などに対する対処の方便が定められました。これは、江戸城周辺の国主屋敷など、治安が守られ警備が行き届いた場所に限られますが…今からそれをお伝えしますが、その前に皆様の前の茶菓子の膳を片付けさせて頂きます。女中や茶坊主が皆様の前にお邪魔しますこと、ご了承ください…」
と、私が宣言します。
そして、控えの間から女中に偽装した女忍者や、偽女種の皆さんが大広間に入って来られます。
(ベラちゃん、アルトさん…いいわね、今からこの大広間の音は絶対、外部に漏れないように遮断するのよ…覗きも禁止よ…)
(おまかせください、ふふふふふ)
(まさみさーん、こういう悪趣味なのはローマ帝国か、初代様が滅ぼしたソドムやゴモラだけにしときましょうよ…)
(わしがみとめとんねんからええやないか、べらこもすけべいな割に、あたまがかたいところがあるのう…)
(マリアヴェッラ…ここは比丘尼国ですよ…姉が認めておるのに、あなたやあたくしがやめやめというのも越権こういですわ…)
(おかみ様以上に、これから起きる事に期待しまくってるのはおばちゃんじゃないですか!)
で、エロカロイド成分を仕込んだお茶菓子を出した理由。
更には、千人卒以上相当の巫女さんたちや偽女種さんを吉原仕様の制服で広間に送り込んだ理由ですが。
…もちろん、今から浮気をさせるためです。
それも、奥様方から襲わせるため。
更には、浮気の実態を記録しておいて、いざという時に幕府に背きそうな国主様を強請るネタを押さえておく理由があったのです。
ですから、皇室から政略結婚で輿入りした家光様正妻の孝子さんはこの場から席を外して頂いております。
のみならず、側室の方々もこの場にはいらっしいません。
「ふふふ、案の定、まらを見せびらかした装束に気付いた奥方が我慢できず…」
「ではべらこ様、田中様…、後をお頼み申しまする…」と、虎次郎くんを連れて広間から退出する素振りを見せる家光様。
しかし、その足が向かう先は執務の間ではなく、大奥。
更には、その後に続くおまつさんと、春日局様。
(奥方に余のまぐわい、見せる訳にも行きませぬからな…)
ええ、いつの間にか横に並ぶおまつさんの右手が、家光様の股間に伸びているような気がしましたが、きっと気のせいでしょう…。
それとですね、この後の光景を私がつぶさに語るのも良いのですけど、この集いの後日談…はっきりと言えば奥方籠絡作戦が決行された結果、先にお教えする方が面白いと思えるのです。
(雅美さんが喋りたくないからでしょ…)
(お黙りベラちゃん…いえ、あんたが後日談を語ってよ!)
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で、この狂乱の乱交による婦人籠絡があった後のお話は、ほんっとうに嫌なんですけどね、あたしマリアヴェッラが引き継がせて頂きましょう…。
場所は、江戸城大奥。
そして、痴女皇国からは雅美さんとアルトさんとあたしが招かれております。
幕府と大奥からは、家光さん・信綱さん・おまつさん・孝子さん・春日局さんと…。
「良いか、くのいちの衆…我らはあくまでも、おまつ殿に頼まれて、江戸城下の国主屋敷町を見回るだけなのじゃ…」
「更には偽女種衆の同行は、くのいち衆だけでは女性外出禁令に触れるのを避ける為の口実。仮に夜鷹を見咎めたとしても、金のやりとりをするまでは夜鷹切手を改めてはならぬのだぞ…」
「そして、偽女種の中に見知った声や顔がいたとしても、決して、決して詮索はなりませぬ…」
「夜鷹の中に、屋敷や江戸城内に城下で見た顔がいても、素性を明らかにするのも禁じ手ですわよ…」
見れば、みなさんの服装は法被に玉付きTバック…いわゆる比丘尼国呼称「まぐわいふんどし」だけなのです…。
つまり、下着の上からでもちんぽが存在するのが丸わかり。
そして、頭や顔ですが、この時代には割と一般的な風呂敷風頭巾で隠しており、ぱっと見では誰が誰やらという状態。
ただ、人によっては、その頭巾の色が黄色なのです…。
(この黄色は夜鷹頭巾と申しまして、己が夜鷹であると無言で周囲に知らしめるためのもの…元来なれば夜鷹以外には許されるものではござらぬはず…いえ、別に付けておっても金を取って春を売りさえせねば良いのですが、春を売る気がなくとも夜鷹であると周りに言うも同じですからなぁ、結局は夜鷹以外は被ることなんぞありはせんでしょう…)
つまり、人によってはこれから、夜鷹をすると宣言したも同然なのです…。
あと、あたしのようなデカ女の場合ですがね。
(ベラ子陛下…いくら髪の毛をストレートにした上でアップになさったところでですね…痴女皇国関係者だっての、日焼け跡でバレバレですよ…)
(リンド…いえ偽女種4号さん、あたしは偽女種1号らしいのです…それに、暗いから分かりませんって!)
(偽女種1号さんの場合、金髪以前に身長でバレバレな気もするわね…六尺豊かな大女って、江戸じゃ目立ちまくんのよ…アルトく…偽女種2号さんでもいい加減目立つ部類なのよ…)
(おかま3号のまさ…さんでもたいがいなのですよ?)
(いいじゃない…この時代に信号はないから、立ちんぼさん、みんなで買えば怖くないのよ!)
(おまつさま…このために大奥の側室以上全て、まら持ちにしたのですか…)
(孝子さ…いえ偽女種8号様、わたしは7号ですよ…)
(なんで乳母役のわたくしまでもが!)
(春日さ…いえ偽女種9号様も、あの時わたしの後で上様にお手付きされておられたじゃありませんか!)
(りんど様と私はまら持ちで、女房衆を犯す側でしたが…)
(フラウ・オミヨ…ノブツナ様の愛人に拾われただけでなく、騎士扱いとは…)
(りんど様は、べらこ様の国の巫女の時にすでにさぶらい修行や読み書きそろばんを覚えなさったのでしたね…羨ましい…)
(羨ましがらない方がいいです。痴女宮本宮研修、受けさせられますよ…短縮なしの女官基礎教程だけでも半年間はFick漬けの毎日ですからね…ヨシワラのピンサロ勤務が半年ですよ…)
(その代わりに日曜とやらがあり、皆は別の島に船で渡り稚児を買うて御目子ざんまいとか…上様いえ11号様、うちの寺の再建、お認め頂けませんか? 今の私が当主なら父よりもっと上手くやって、幕府に冥加も納められそうな気も致しますが)
(三十ろ…いやさ12号に申せ…)
(おみ、いえ13号様。私語は慎みなさいまし。あと、坊主茶屋の話ですが、日枝神社の境内にまだまだ空き地がございますから、後でゆるりと話をしましょうか。12号様も、陰間茶屋を奥様が経営すれば、その上がりは国につきますわよ…)
(おま…7号様、そこは妾の悪企みを止めるところでは…)
(届出もなく色小僧茶屋なんぞなさるからお咎めがあるのです、勅状を賜りお許しを得ればそれは公認。少なくとも慈母観音堂につく小僧茶屋なら、わたしが勅許を出せますわよ)
(ななななな7号様、城下でそれは…)
(11号様、日枝神社境内は朝廷所轄。社寺奉行も苦情を申せるだけですわよっ)
(11号様…日枝神社の境内に陰間茶屋がございますと色々捗りませぬか…今から参る道を出ればそこは日枝の境内なのでございますぞ…)
(むうう…7号様、茶屋開きの際には、くれぐれも目立たぬように…)
ええ、皆様がどう言う話をしとるのやらというのはともかく、我々は江戸城本丸とは半ば独立した建物となっている大奥に設けられた地下区画への階段を下っております。
そして、この地下区画に設けられた扉を、通称・偽女種11号様の左腕の聖環で解錠頂きます。
(この扉は今、この場におる者か奥に属するものでなくば開かぬとのこと…)
(更には日枝神社の社務所の中に出て参りますので、そこで無言の誰何がございます…)
(で、天の声が江戸城と日枝神社の位置関係を理解してもらうために作った略図がこれだそうです…)
(大奥の位置は連邦世界の江戸城とかなり異なっていて、皇居長和殿から宮内庁にかけての位置に所在します)
(上様は大奥に住まい、この秘密の穴を経由して登城なさるのでございます…)
(この陰間服の集団の中に、この穴に詳しい男子が若干名おわす気が致しますが、気のせいなのでございます…)
□□□□□
□□江□□
◇◇◇◇◇◇□□戸□□
◇西吹皇※◇□□城□□
◇の上居大◇□□□□□
◇丸御予奥◇
◇◇苑定◇◇
◇◇◇地◇◇
◆◆ ◇◇◇◇◇◇
◆◆
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日枝神社(周囲は国主屋敷街)
(西の丸が、余が元服前に住んでおった居宅もあった場所でござる…この辺りの堀で国千代が鴨猟をしたのを咎められましてな…)
(連邦世界の史実だと、家光様のお父様は西の丸に隠居しても長く院政を敷いておられたのですが、痴女皇国世界ではマリアちゃんやあたしのお勧めもありまして、駿府城に隠居中です)
(駿府からですと鉄の道で二刻少々でございますしな…せいぜい利用せよとのお達しでございますし、ふふふ)
(長く親政を敷かれますると、却って幕政に悪影響が出るとの田中様のお達しを受け入れなすった模様…)
(ところで、この横穴でございますが、この乗り物に乗りまして…)
そこには、水平に掘られたトンネルと、痴女宮のダム…聖院開闢記念大堤の横手から酷道1号線に沿って伸びていく、牛乳運搬モノレールの類似品がぁっ。
(上様のご利用もあるのに、歩かせるわけにも行かずと…)
(操作自体は余も習わされましたが、至極簡便でございますな。何より、童心に返ったようで)
で、客車二両連結で水平線路であれば8名ほどが乗れるこのモノレール、数台が用意されておりますので、分乗して薄暗いトンネル内を走って行きます。
このトンネル、モノレールの上下の線路以外にも、人が二人、すれ違える程度の歩行者用通路が別に設けられています。
緩くカーブして何分か走った後で、日枝神社・一旦停止の看板が出た広場に来ます。
で、終点のストッパーまたは先行列車に当たると自動停止するのは、痴女島のモノレールと同じ。
ストッパーを外してから列車を動かすと、その先にある一周回る線路を経由して元来た方向に戻るのも同じですね。
で、広場の壁に光る非常口を示す案内板の下にある扉を開くと、階段が現れます。
この階段を登って行きますと、社務所の中に出るの、実は何度か経験しているんですよ、あたし…。
と申しますのも、将軍様に何かあった際の救出作戦も一応は考えとこうと発案した姉のせいで、短時間とはいえど江戸城内の視察を行わざるを得なかったのです。
で、逆に痴女宮で何かあった場合の比丘尼国の支援を受ける際のことですけど、こちらは大江山にプラウファーネさんがいますし、痴女宮にもポーランファーネこと外道丸ちゃんの鬼姉弟コンビのお姉さんの方が常駐しておられます。
そして、このお二人が痴女宮の構造に精通している立場ですから、救援行動の際の道順も理解してくれています。
何より、時々は痴女宮に来て地下の転送ルートから地上に上がっていらんことしてるおかみ様がいますからね…。
んで、日枝神社。
この神社自体も、連邦世界の同名神社と違いまして、もう少し江戸城寄りに建設されている上に、敷地も3倍はあるそうです。
天の声に言わせると「敷地面積は国会議事堂の前庭と井伊家屋敷跡が丸っと入るくらいで、場所自体も桜田濠のすぐ横と言っていいところ」だそうです…。
この大きさを確保している理由も、巫女教育のための巫女学校や寄宿舎が存在するためもありますが、江戸城に万一の何か…特に、明暦の大火に代表されるような大火事が発生した際の救援基地として機能させるためでもあるそうです。
(さっきの広場に、痴女宮と大江山からの緊急支援部隊のための転送ゲートが存在するからね…)
(緊急でなくても使ってそうな人が若干名)
(家光様や信綱様には痴女宮にお越し頂くための使用手順をお教えすべきよ…それも、ショタか偽女種状態でお使い頂くための…)
(雅美さんの欲望がだだ漏れです…)
ご自身の性欲を韜晦しようとしても隠しきれていないragno prostitutaはほっとくとして。
さて、あたしたちの前には、日枝神社から派遣された巫女さんが二名。
鉢巻をして、帯刀しておられますが…その格好は吉原神社の巫女さん同様、はかまの股間部分が大きくくり抜かれてふんどしが丸見えのエロ巫女装束です。
「芳春院様ご一行を屋敷街へとご案内仕ります…仰せの通りに、夜鷹が多く出没すると噂の場所を中心に巡ることとなります…」
(いやはや、国主屋敷の周囲に夜鷹とは…)
(三十ろ…いや12号、あれは夜鷹にあって夜鷹にあらず、しかし本人達が夜鷹を称する以上は夜鷹なのじゃ…)
(ははっ、11号様の仰せの通り…しかるに、春を売るにも関わらず、金を取らぬとあっては夜鷹とは申せず…)
(金を取らぬ以上は夜鷹切手を改める訳に参りませぬ…我らや屋敷街の夜の警備を受け持つくのいち達からすれば、あれは夜鷹として見過ごすしかないのです、ないのです…)
ええ、からくり、お分かりになりましたでしょうか。
では、実際にその夜鷹さんとやらがどんなのか、見てみましょう…。
(時刻は折りしも四つ、そろそろお城の鐘が町木戸の閉門を告げる頃合いにございます…)
ごぉん、ごぉん、ごぉん、ごぉん…。
江戸城だけでなく、お寺というお寺が一斉に鐘を鳴らしているようです。
更には、番小屋というのですか…江戸市中の交番に該当する施設でも、鐘を備え付けているところでは鳴らしているみたいですね。
そして、目の前の大きめの門も、今まさに閉められようとしています。
ですが、閉められる門の横の木戸から入ってくる人の姿が、焚かれている篝火…そして設置工事が順次進んでいる街灯に照らされて浮かび上がります。
その姿は、あたしたちと類似の陰間装束。
ですが、被っている頭巾が暗赤色です。
更には、痴女種モードの視覚でズームして見てみますと…金糸刺繍で描かれた牛のイラストが入ってるじゃないですか…。
「よし、風呂切手は…大丈夫ですね。通りなさい」
ええ、銭湯の入浴証明を門番の巫女さん…あたしたちを誘導している人と同じ服装の武装巫女さんに見せているようです。
そして、性別は…男性。外観は、顔こそ頭巾で隠されていますけど、未成年そのものです…。
まずまず日焼けもしていて、ふんどし風の淫蟲下着を着用していますが…この少年?たちは一体全体、どこの誰なのか。
(待ちなさい、お前たち…この方々は、さるやんごとなきお方の一団。そなたらが夜鷹目当てなのは承知しておられます…そなたらが夜鷹を相手するのを物陰から見ることを所望なさっておいでです…危害は加えませんし、そもそも、今より七つまでは夜鷹装束または陰間装束をする者、その素性詮索について、不問の掟が定められております…安心して夜鷹を探すのです…それに、うまく夜鷹を盛らせよがり泣かせてこの方々の興を引くなれば、褒美金を頂けるやも知れませんよ…頑張るのです…)
と、引率巫女さんの心話に、最初はぎょっとしたものの、黙って頷く二、三人の人影。
(お殿様の縁者のお忍びのお楽しみに間違いあるまい…)
(しっ、素性の詮索はお叱りのもとだぜ…)
(ああ、褒美金の話は口止め込みだろ…)
(漏らせば穢多部落からも追い払われ、所払いだからな…口の堅さが長生きの秘訣だぞ…)
などと小声で囁き話をしながら、国主屋敷の塀に沿って薄暗い道を歩く一団と、それを追跡するあたしたち。
そう、この少年たちは穢多身分の子たち。
そして、前方にお屋敷の通用口…木戸から出てくる人影が、3つ。
なんと、偽女種を示す陰間装束に黄色頭巾…そう、見た目は偽女種さんの夜鷹状態なのです。
そんな人たちがなぜ、通用口からとは言え、国主屋敷から出てくるのか。
しかも、あたしの聖環ですから、実際の身分や氏名はもちろん、性別もIFFステータス表示させることが可能です…可能なのですが…。
(ベ…1号さん…性別はもちろん、身分を暴露するのもご禁制なのよ…)
で、黄色頭巾の人は、黙ってお尻を向けます。
そして、そのお尻にちんぽをこすりつける赤頭巾の男子。
その、押し付けられたちんぽが黄色頭巾の手によって、そっと握られます。
そして、硬さを上げるように、しこしことしごかれます。
で、交渉が成立したのか、無言で…黄色頭巾に手を引かれて歩き出す赤頭巾たち。
(な、何という…)
(あり得ない…こんな破廉恥なことが国主屋敷のすぐ外で…)
(静かになさい…あれは、男が夜鷹を買ったも同然…そして、偽女種のなりをしておれば、あの赤頭巾たちはあくまでも偽女種の夜鷹であり、陰間なのです…)
(夜鷹が夜鷹を買うとは…本当ならあの全員、夜鷹切手改めでは…)
(だからこそ、金をやり取りするかどうかを判定しておるのです…今からあの者たちが御目子を致したとしても、別れるまでの間に夜鷹としての銭を貰い受けねば、それは田中様やべら子様のおくにでいう、じゆうれんあいとやら。即ち、逢い引きとして扱われてしまうのです…)
(ええ、夜鷹指南の通りにしておりますわね…)
(7号様…わたくしの聖環にも、くだんの夜鷹指南なる指南書がなぜか送られて来ましたが…)
(あれは先立つところの国主奥方外出禁止令説明会席上で、後に配るとの説明をしたもの…8号様が存じ上げないのも無理はございませんわ…)
(7号様、要はあのジプシー男児、政府から簡単に処罰される弱い立場であるがゆえに、かえって口が堅いと見込まれ、売春を装った名家の婦人や娘、果ては女中へFick奉仕をするために呼ばれておるのでしょう?それも…互いの匿名を絶対条件に売春名目でオメコして、お金を貰わないか、逆に女の方から褒美のお小遣いをもらう程度で、先の夜間外出禁止令や浮気防止法を回避してアイビキをしているのでは…)
(エロメスカマキリとか女郎蜘蛛と呼ばれていた雅美さんは、どこに行ってしまったのでしょう)
(うっさいわねベラちゃん…ある意味であんたらの尻拭いみたいな仕事なのよ、今回「も」!)
さて、今回のお話。前回のアルトくんのお話から少しばかり時間が経過した江戸市中からお送りする事になります。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/188/
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で、江戸城の大広間。
実のところ、江戸城内は先代将軍たる徳川秀忠様の時代に大きく手を入れられ、近代化設備が導入されたとの話、あたしの傍にいるベラちゃんから聞かされます。
そして、北欧いけにえ村作戦当時の江戸城と大きく異なってしまったばかりでなく、連邦世界の史実…天守閣が焼け落ちて以降、再建されませんでした…とも異なる構造にされてしまったそうです…。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/71/
「後々に皇居の建物を作る準備工事も兼ねていると、エマ助から…」
「まぁいいんじゃない? おトイレの水洗化とかお風呂の洋風化とか、痴女皇国流の変態プレイに大奥を対応させるための工事とかやったのは聞いてるけど…」
でまぁ、私、田中雅美が留袖着用という、天の声を殴りたくなるような姿でこの江戸城にお邪魔しているのは、実は先立っての吉原狂犬騒動ですとか、その後の虎次郎くんの江戸城引き取りだの、痴女島に残っていた虎次郎くんのお相手のメスの虎…虎子さんという名前です…の江戸への移送とか、諸々の手続きのこともあったのですけどね、一番の理由は。
「江戸市中の夜間女性外出禁止令、ですか…」
「その草案作り、おかみ様とマリアちゃんから依頼されてさぁ…報酬は家光さんとか信綱さんとか、甚右衛門さんとか大奥でのショタ踊り食いと言われたら、受けざるを得ないわよね…」
「受諾理由があまりにひどすぎる気がするんですけど…」
「それに、痴女皇国の融資先でしょ? 大奥改築はもちろん、売春事業に関する出資金運用状況の監視、たのちゃんからも頼まれてんのよ…」
で、本日はその、外出禁止令の正式発布を前に、上級武士の夫人やお妾さん向けに開かれるという、法令案の内々お披露目式とやらへの出席を依頼されております。
で、このお披露目式の出席者ですが。
まず、この時代…連邦世界同様に徳川幕府の統治下にある八百比丘尼国、即ち日本ですけど、江戸城の近隣には大名屋敷に該当する国主屋敷が固まって建てられている高級住宅地が存在すると思ってください。
そして、そこには連邦世界同様に、国主の方々の奥さんや子供さんが住んでいます。
この妻子の方々の江戸居住ですが、まず徳川幕府によって江戸居住を義務とされたのは、いわゆる外様大名の奥様や側室の方々、そしてその子供さんたちです。
つまりは、江戸幕府に対する人質としての役割を背負わされた方達ですね。
で、親藩や譜代…つまり、関ヶ原の戦い以前から徳川家と仲良しだったり、あるいはタヌキさん一族の親戚だった方々の妻子の江戸居住は義務ではなく「推奨」とされています。
これは、この大広間で今から私と一緒に司会進行役を務める元・加賀藩主夫人の前田まつさんが、その昔に自発的に江戸城に来て城下にお住まいになられた事…つまり前田家は豊臣じゃなくて徳川家につきますよとばかりに、自ら進んで人質となったことに由来する風習だそうです。
で、その後は徳川幕府が安定した統治ができるようになったことから、徳川家と仲良しの国主様については、必ずしも人質を差し出さなくても良いだろうとされました。
しかし、今、国主をやっておられる大名の皆様のほぼ九割…よほど財政状況が辛いとみなされて人質免除の判定を受けた国主様のおうち以外は、皆さん競って奥様やお子様を江戸に送ろうとなさっておられるようです。
その理由とは。
(江戸の流行りを身につける風潮が女性の間で広まっておるからです…加賀藩内でも、農家や漁師はいざ知らず、ある程度の商家や武家、娘さんを前田家や家臣の家に女中奉公させてでも江戸生活を体験させようとしておるのですよ…)
(あと、女子学校なる公営寺子屋、男児向けのものに続き江戸に開校いたしますからな…幕府の勘定女中が読み書き算術試験の後に登用されるとあっては、目ざとい者が子女の教育を江戸にてと、流行りの匂いを嗅ぎ取っておりまする…)
(あれ、南蛮算術でしょう…あると様のお国で考えられたという洋数字の記述からまず、学ぶ必要がございますからねぇ…私は横濱勤めの際に洋暦と併せてぱーくす様やばーど様から教えて頂きましたけど、けたの多い数え算には、和算よりあれの方がよろしいかも知れませんわね…)
つまり、江戸の街に単なる学歴社会が到来するというだけでなく、西欧式の学問で使われる文字や単位・表記など…そして西欧式の文明や文化の産物を比丘尼国の標準としても導入する可能性を嗅ぎとっている目ざとい方々が、江戸での子女教育の流行をつかもうとしているようなのです…。
そして、上級の武士階級の奥様や娘さんなら、英国の上流階級同様、身の回りのお世話をする女中さんが雇われていることがステータスなのです。
そして、奥様が江戸住まいということは、当然、加賀藩なら加賀藩の江戸屋敷に女中さんが必要となります。
ですが、各国主の江戸屋敷ということは、その国の軍事や政治・経済の出張拠点でもあるわけです。
当然、お屋敷の中では、幕府や他国の方々、更には自国領民に聞かせたくないお話や見せたくないものがある可能性、予想されて然るべきでしょう。
しかし…江戸で女中さんを現地採用するということは、そんな重要施設のど真ん中に、無条件で他所の地域の女性をお屋敷に入れてしまうことになりかねません。
そうです…そういう機密漏洩を防ぐ必要性がある場合は、前田家の場合ですと、少なくとも地元の加賀で採用した女中さんを江戸に派遣した方が安全性が高まることになるでしょう…。
(そりゃあ、江戸で採用する例はなくもありません。けれども、それはよほど人がいないとか、地元でなり手がおられないなど、喫緊の時に限っておるはずですわ…)
(そうですな…幕府では特に国主屋敷で雇っておる女中の出身などを問うてはおりません。正直を申せば、好きにやってくれとしか…ただし、幕府自体が江戸城内、わけても大奥のために雇う女中については厳しく身分門地行状を調べ、実際に何かしらをやらせた上での雇用としておりますな、おまつ殿…)
(ですわね…わたくしも、その審査をさせていただく事がございますし…厳しさは存じております。むしろ見知った者や親類を雇う…縁故雇用の多い国主屋敷の女中方の方がのびのび働けるのではありませんかしら…)
(ただ、そこまでの狼藉を国主相手に企む阿呆はおらんとは思いまするが、盗みをする輩には手引きと称して手の内のおなごを女中としてあらかじめ目的の屋敷に忍ばせる手口がございまするとかで、各国主ともになるべく身分明らかな子女を女中にしておるとは思いまする)
と、この式典の見届け人代表として上座にお座りの、当代の征夷大将軍たる徳川家光様からおまつさん経由で中継心話が届きます。
(まぁ、現地で採用頂く方が国主の方々には方言や食事などで気を遣わずに済むでしょうなぁ…特に津軽や薩摩に南部など、他所の国かと思うような言葉を使うたり、芋など食うておる土地ですと…)
何か、芋とおっしゃる辺りに複雑な感情が見え隠れしておりますね。
(黒火山芋侍国に共通税制を導入する時に揉めたそうですわね…)
(ええ田中様、あのような人の話を聞かない連中には、あると様のような方が向いておると、余も島原で痛感致しましたので、ついでの薩摩派遣を戴けました事誠に重畳の極みでございまする…)
(あの子、まず殴ってから話をしますから、薩摩にはちょうどいいと思ったんですが、正にドンピシャでしたね…)
(まさみさん! あたくしはちぇすととかいわれるのをしっておりましたから、まず軽くなでただけなのです! さくらじまとかいもんだけがふんかしたのはぐうぜんです! たまたまなのです、たまたま!)
(あると様がたまに力を入れているのが気になりますが、まぁ、あると様とはちじょのお島で度々顔をあわせておりましたから、どういうお方かはよう存じております。そりゃ、薩摩をきゃんと鳴かせるにはうってつけでしょう…)
ちなみに前田まつさんですけど、芳春院という出家名義で江戸幕府の大奥顧問、そして日枝神社境内慈母観音堂住職ですとか江戸城詰慈母宗尼僧頭ですとか、幕府に関係する数種類の役職に就任しておられます。
つまり…家光様の正室の鷹司孝子さんや乳母の春日局さん、更には家光さんの実母たる崇源院様すら差し置いて、実質的には江戸幕府の女性役職者のナンバーワンになってしまっているのです…。
もちろん、この背後にはおかみ様や、マリアちゃんの強固な後押しがありますし、おまつさん自体も巫女種化…というよりは最低でも万卒級の可変ステータスランクを備えた痴女種互換モードつきの身体を与えられているためもあるのです…。
ですから、おまつさんは実質、痴女皇国の日本地区支部長、いえ、日本地区行政支局長として痴女皇国では扱われているとお考えください…。
Matu Maeda 芳春院 Thousand Suction. (Limit variables) 千人卒-可変能力制限者 Slut Visual 痴女外観 Kunoichi knights, Imperial of Japan court. 八百比丘尼国女性忍者騎士団 Governor, Imperial of Japan administrative bureau, Imperial of Temptress. 痴女皇国日本地区行政支局長
(で、くのいち騎士団の初代団長は風魔小太郎さんになってもらいましたけど、実のところは吉原の副町長役が忙しいから、実質的な団長を探しておられる最中だそうです)
(本当は加奈…奥村加奈がわたしより遥かに武術には長けておりまして、そういうお勤めには相応しいのですけど…あの子は加賀で縁談があって、加賀藩に返してしまったのですよねぇ…)
(まぁ、実質的に江戸城詰めのくのいちの皆さん、今はおまつさんの指揮で動いていて、おまつさんが臨時団長という感じになっているとしておきましょう…)
(実は、このくのいち達が、この後で発表する女性夜間外出禁令に関係してくるのですよ…江戸城下、わけても大名屋敷周辺の警備を充実させる必要がありました上に、こればかりは殿方の警備に任せてはおけぬ一大事がございまして…)
(ふふふふふ、まぁとりあえず、発表としましょう…)
で、大広間に次々と入室して来られる女性陣、大奥女中の方々の案内で指定されたお座布団に着席していかれます。
お座布団の前には、お茶とお菓子の載ったお膳も。
で、全員着席を確認の上で太鼓が打ち鳴らされたのを合図として、立ち上がられて会合の開始を告げる家光様。
「本日は国主奥方並びに側室、側女中の皆に於かれては、江戸城大広間への参集、誠にご苦労でござる。まずは喉の渇きもあろうから、余の正室たる孝子より皆への贈り物として、茶と南蛮菓子を用意させて頂き申した。差し支えなくば召し上がられよ」
で、このお膳の上のお茶とお菓子ですけどねぇ。
(ぐふふふふふ、おまつさん…南米淫花帝国特産の効果淫茶だとは絶対に申しませんように…)
ええ、隣でベラちゃんが澄まし顔してとんでもない心話を送っていますよ…。
(うふふふふふ、更には快感王でこしらえた「ちょくらあとかすてーりゃ」なる菓子ですものね…)
(ええ、議事の円滑な進行には絶対に不可欠なのです…更にはアルトさん率いるくのいちの皆様と、品川や吉原から派遣された選抜穢多偽女種の皆様が大広間の控えの間に待機中で、うるさく騒ぎそうな奥様を黙らせる細工はりゅうりゅうなのです…ほほほほほ)
(うふふふふ、偽女種は穢多非人身分となりましたが、穢多の方が都合が良い話。それに、穢多身分の方々でも必要があれば江戸城にお越し頂けるよう、石頭の大老や奥の女性陣を説き伏せる口実にできましたからね…)
な、なんという悪だくみの心話。
(左様左様。虎次郎の餌を献上させるための方便口実として偽女種を穢多非人身分と定めたことがこうも色々と捗りますとは…いやはや、まりや様から悪事を考えさせるならば是非に田中様をと勧められた理由、この家光とて心安らかに理解申した。田中様、この件の褒美、余の身体で相済みませぬが…)
ちょ、ちょっと家光様、今、それをバラされてはベラちゃんが調子に乗ってあたしを責めますから!
(まーさみさーん、何を変な入れ知恵してんですか~………)
(ま、まぁまぁべらこ様…そもそも矢野弾左衛門めに穢多非人の管理を任せたのも、狂い犬騒動を引き起こした遠因でございましょう…更には、弾左衛門のごときは死骸から指切りをして吉原や品川の遊女に売りつけるなど、死罪にした罪人の死骸を管理しておる山田浅右衛門の領分に手を出す不行届もございましたし、穢多の管理を小太郎や甚右衛門に移す企みの一環でございますれば、田中様がお考えなさりました諸々の調略、我が江戸幕府にとりましても好都合の極み、余がふたつ返事で了承してございますれば…何卒べらこ様はお騒ぎになりませぬように…)
(家光様のお庇いには、目から汁が)
(何かこう、家光さんが雅美さんを庇っているのがなんともかんともなのですが…)
うふふふふふ、ショタを籠絡することにかけてはこの田中雅美、一応はその道の達人を自認しております。
更には、家光様とは日本人同士の仲ですし、連邦世界の史実での家光様の人生のあれこれを既に知っている立場ですよ、私…これで家光様を籠絡できないとあれば、それは一代の恥というものでしょう…。
で、それはともかく、配られたお菓子を食べてお茶を飲まれた女性陣。
貴重そうな南蛮菓子ですから、懐紙に包んで持ち帰りそうな人もおられましたが、土産にするならまだあるから、後で相談なさいとおまつさんが心話で警告されたので、皆様はとりあえず完食なさいます。
それを確認するが如く、大広間正面に用意されたプレゼン用スクリーンに表示される、今回の女性外出禁止令の政令本文と付則各文。
そして、家光様のお招きで壇上に上がり、おまつさんと並んで立つ私ですが、プレゼン画面操作役はこの私が担当することになります。
では、今回の女性夜間外出禁止令、文章でご覧頂きましょう。
告「女性にあっては夜四つより明け七つの間、供の者なく独りで江戸市中を出歩くを禁ず」
一、破りし者に罰則は設けぬが、外出の途上にて女犯に遭うてもこれを罪として調べず。
一、危急火急を知らしむる為の止むなき外出はこの限りに非ず、普通の女性出歩きとして扱う也。
一、夜鷹はこの限りに非ず。江戸市中にて春を売る生業の者の扱いについては別途、夜鷹法度に則り定めるもの也。
一、陰間については男と看做す。
つまり、これを現代風に翻訳しますとですね。
「夜10時の町木戸を閉める時刻から、明朝5時頃の大名行列出発時刻まで江戸市内での女性の単独外出を禁止します」
「この掟を破る女性を積極的に取り締まる事はしないけど、だからといって男性のお供を付けずに強姦されても、殺されたり攫われたり重傷を負わない限り、奉行所は単純強姦罪としての捜査をしませんよ」
「地震火事急病犯罪遭遇他、どうしても知らせたり人を助けに呼ぶような緊急事態が発生した時はこの限りじゃないよ、普通の時刻に女性が外出したものとして扱うよ」
「立ちんぼ売春の女性はこの外出禁止令の適用範囲外です。ただし、路上売春については別の法律が定められているからそっちに従ってね」
「女装した男性、特に売春目的の偽女種さんは男性として扱うよ」
で、外出禁止が解除される時刻について。
江戸市中の住民居住区域の防犯用の門を開く時間…日の出に該当する時間から開く銭湯さんや一般商店開店時刻と同じに設定されているそうですけど、その前に解除されるのは早朝のお仕事のために女性が通勤することを鑑みてのものだそうです。
でまぁ…案の定というべきか、男尊女卑の観念が根強いこの時代の日本にあっても、女性の権利を侵害しそうな話には本能的・生理的に反対するのが女という生き物です。
「がおおお!」
何人かの奥様方が出そうとする反論の声を察して、吠える虎の虎次郎くん。
その猛威に、あわや失禁の粗相に陥りそうな女性、数名。
で、ですねぇ…女性の会合のみならず、およそ江戸城で将軍様が臨席する会議の席が荒れそうな時の黙らせ要員として、ボルネオ虎種の正真正銘の虎たる虎次郎くん、家光様の側に侍っていたのです…。
いわば、株主総会における総会屋のようなお役目もあるのです、虎次郎くんの江戸城お召し上げの理由…。
「皆様、静粛になさいませ。それと、よくお考えになられまして…?この掟、実のところは町民ならばいざ知らず、卑しくも武家、それも国主もしくは旗本以上の家柄の子女たる皆様の日頃に、何ほどの影響がございましょうや…田中様、春日殿」
「はいはい、で、この女性外出禁止令の案を考えた一員である私、田中雅美がご説明させて頂きます。まずですね…そもそも、夜中に良家の家柄の娘さんや奥方が出歩く必要はございますでしょうか、春日局様」
「年越しの寺参りや特別な夜祭見物などでもなくば、まずあり得ぬ話かと存じます」
実は、この特別な夜祭り…花火大会や吉原遊郭内の女禁解禁祭礼など、いくつかの該当例が存在しますが、ま、現状では普通は女性が単独で夜歩きをするのは非常識の範疇であるという常識が江戸の女性の多くを占めているとお考えください。
で、実のところ、この女性外出禁止令…例のボーズズバー事件が関係しています。
つまり、女性の出歩きを規制されると困ると色めき立っている奥様方が怒ってる真の理由…浮気に絡んだ逢い引きを規制されるため、なのです…。
更には、江戸市内に住む建設労働者の存在。
江戸市内開発のために、近年の江戸では男性労働者を大量に呼び寄せています。
この独身または単身出稼ぎ男性による強姦事件も起きておりまして、何もいちいち法律で規制しなくとも、ええとこの奥様やお嬢様がボディガードの随伴なしで夜、出歩くのは危険だという常識が江戸では一般的になってしまっているのですよ。
(で、浮気をする嫁はですね…供の者に、これで夜鷹でも買って来いと小銭を握らせておいて、その間に男と女の営みをするのが逢い引きの常のはずなのですよ…)
(そうそう、正直、品川宿までの間とか、先の中山宿までの間の逢引茶屋だの、屋形船を使うての逢い引き…奥にも噂が聞こえておったくらい、盛んと言えば盛んなのですよね…)
ええ、お江戸浮気事情。
ですから、性に奔放な奥様、別におまつさんだけじゃなかったのです…。
(ただ、逢い引きの口封じの金子の出費や、従者との交渉すら面倒臭がる奥がおるのが問題なのですよ…)
(坊主の寺に行くのも、真っ昼間から行ける一種の口実でございましたからね…)
(春日…正直、奥もそうであろう…こうした女のどろどろとした怨念や情欲を幼き頃から見せられておった余が男色に走ること、咎めてくれると余としても心に痛みが走るのだが…)
(上様…崇源院様もお体が思わしくございませぬ今、忠長様が酒色に耽り吉原通いを欠かさぬとの噂しきり。果ては秀頼様に成り代わり大坂探題を所望するとか、秀忠様にすら呆れられる現状、上様に期待されるのはお世継ぎ作りのみでございましょう…それさえ成せますれば、上様のご采配にけちをつける口うるさき者、この江戸城内にはそうそうおらぬ話となりますかと)
(そ、そうであるな…いやはや、父は身体弱き余より国千代に期待をかけておったようであるが、国千代の増長増慢を招き自ら自滅したかの如く…父の駿府入りに併せて駿河国主に任じた事すら不満に思うておるなど愚痴話の数々、とうに吉原より聞こえておる…)
前回でもお話が出ていましたが、家光様の弟さんである徳川忠長様との跡目争いめいたものがあるのです…。
で、家光様や忠長様の実母にして、徳川秀忠様の正室である崇源院さんが「美形イケメンであり無病息災健康児童の国千代の方が、長男だけど病弱でヒキニート傾向があった竹千代より将軍に相応しいんじゃ?」と思ってたんですよ。
ところが、元服前のある時、国千代さんは自分が鉄砲で猟をした成果という鴨のお吸い物を、秀忠様の食卓に献上しました。
それ自体は親孝行に加えて武術習得を怠りないとして喜んだ将軍様ですが。
(それ、江戸城の濠…それも、元服前の当時、余の住まいとされた西の丸の濠を泳いでいた鴨を討ち取ったのです…で、国千代めが自慢げにそれを父に伝えたところ、流石に祖父家康の築いた江戸城内にて、元服前の男児が無許可で気安く鉄砲を撃ったことが明るみになりますれば、入り鉄砲規制をしている幕府の面子が丸潰れとなりましょう…更には、いくら我が母のお江が贔屓にしておっても、一応は国千代より兄の立場ですからな、余は…)
(で、竹千代様…家光様の居宅めがけて鉄砲を撃つような兄を兄と思わぬ忠孝に背く有様とも見られておしまいになったのですよ…国千代様の鴨猟。更には無断で城内での発砲に激怒した秀忠様、その場で箸を投げ捨てて食膳の前から退出なさいまして…何だってあんなこと、お付きは押し止め諫めなかったのでしょうや…)
(春日…申すならば忠長は、母の贔屓目と過剰な期待に歪んだのじゃ…余がおなごの欲目を恐るる理由、かかって幼少期の扱いの差によること夥しいのじゃ…)
(上様…今からの事ども、おなごを恐れ穢れに思う上様の心の痛みを和らげ、琴線に響く光景となりましょうや…ふふふふふ)
(まつ殿、そうであったな…正に畏れはするが、男の心根にも響く田中様の沙汰、余も拝見致そうぞ…)
「で、街中の大店の娘どもが小姓や若侍との色事遊びだの、富裕な者共の嫁が男漁りだの坊主通いだのといった、股のゆるいおなごの振る舞いが江戸を騒がす話も出ておりまする、上様」
と、家光様の前に平伏して告げる春日局様。
「更には、こうした振る舞い、一体全体何のために吉原や品川の色里に御免状を発行し、更には一旦は取り締まった夜鷹、夜鷹切手持ちに絞ったとは申せど市中に女が立っての春売りを許した幕府の面子を虚仮にする話にはなりませぬか、皆様方…」と、今度は広間の中の女性陣に向かって申されます。
「で、お忘れ頂きたくないのは、そもそも殿方が盛れば、その精については神社…もしくは、この芳春院が仕切る慈母宗が崇め奉る慈母観音堂に赴いて捧げるべきであるというのが、比丘尼国の男に課された掟でございます。せめて逢い引きに神社境内を使い、精を捧げるならばまだしも、逢い引き旅籠や色事屋形にて不埒三昧では、公方様のみならず、おかみ様の怒りを買う話にもなりかねませぬ…」
おまつさんも、顔に青筋を立てて申されます。
「幸い、ここな上様の名前の発布にて、世の奥方は神社もしくは慈母観音堂での臨時神職または尼僧勤めを許された身の上でございましょう。もしも、亭主以外の殿方を求めて止まぬ女性、よもやこの中におらるるとあらば、最寄りの神社か観音堂に身を寄せなさいませ…」
ええ、これまた前回でおかみ様が言っておられた「聖母教会や慈母寺での女性の臨時アルバイト風俗嬢勤務を比丘尼国でも許可しようよ」という一件が形となったものなのです。
「そして、旦那様やお父上母上の頭が硬い、あるいは主人が認めないだろうという場合などに対する対処の方便が定められました。これは、江戸城周辺の国主屋敷など、治安が守られ警備が行き届いた場所に限られますが…今からそれをお伝えしますが、その前に皆様の前の茶菓子の膳を片付けさせて頂きます。女中や茶坊主が皆様の前にお邪魔しますこと、ご了承ください…」
と、私が宣言します。
そして、控えの間から女中に偽装した女忍者や、偽女種の皆さんが大広間に入って来られます。
(ベラちゃん、アルトさん…いいわね、今からこの大広間の音は絶対、外部に漏れないように遮断するのよ…覗きも禁止よ…)
(おまかせください、ふふふふふ)
(まさみさーん、こういう悪趣味なのはローマ帝国か、初代様が滅ぼしたソドムやゴモラだけにしときましょうよ…)
(わしがみとめとんねんからええやないか、べらこもすけべいな割に、あたまがかたいところがあるのう…)
(マリアヴェッラ…ここは比丘尼国ですよ…姉が認めておるのに、あなたやあたくしがやめやめというのも越権こういですわ…)
(おかみ様以上に、これから起きる事に期待しまくってるのはおばちゃんじゃないですか!)
で、エロカロイド成分を仕込んだお茶菓子を出した理由。
更には、千人卒以上相当の巫女さんたちや偽女種さんを吉原仕様の制服で広間に送り込んだ理由ですが。
…もちろん、今から浮気をさせるためです。
それも、奥様方から襲わせるため。
更には、浮気の実態を記録しておいて、いざという時に幕府に背きそうな国主様を強請るネタを押さえておく理由があったのです。
ですから、皇室から政略結婚で輿入りした家光様正妻の孝子さんはこの場から席を外して頂いております。
のみならず、側室の方々もこの場にはいらっしいません。
「ふふふ、案の定、まらを見せびらかした装束に気付いた奥方が我慢できず…」
「ではべらこ様、田中様…、後をお頼み申しまする…」と、虎次郎くんを連れて広間から退出する素振りを見せる家光様。
しかし、その足が向かう先は執務の間ではなく、大奥。
更には、その後に続くおまつさんと、春日局様。
(奥方に余のまぐわい、見せる訳にも行きませぬからな…)
ええ、いつの間にか横に並ぶおまつさんの右手が、家光様の股間に伸びているような気がしましたが、きっと気のせいでしょう…。
それとですね、この後の光景を私がつぶさに語るのも良いのですけど、この集いの後日談…はっきりと言えば奥方籠絡作戦が決行された結果、先にお教えする方が面白いと思えるのです。
(雅美さんが喋りたくないからでしょ…)
(お黙りベラちゃん…いえ、あんたが後日談を語ってよ!)
----
で、この狂乱の乱交による婦人籠絡があった後のお話は、ほんっとうに嫌なんですけどね、あたしマリアヴェッラが引き継がせて頂きましょう…。
場所は、江戸城大奥。
そして、痴女皇国からは雅美さんとアルトさんとあたしが招かれております。
幕府と大奥からは、家光さん・信綱さん・おまつさん・孝子さん・春日局さんと…。
「良いか、くのいちの衆…我らはあくまでも、おまつ殿に頼まれて、江戸城下の国主屋敷町を見回るだけなのじゃ…」
「更には偽女種衆の同行は、くのいち衆だけでは女性外出禁令に触れるのを避ける為の口実。仮に夜鷹を見咎めたとしても、金のやりとりをするまでは夜鷹切手を改めてはならぬのだぞ…」
「そして、偽女種の中に見知った声や顔がいたとしても、決して、決して詮索はなりませぬ…」
「夜鷹の中に、屋敷や江戸城内に城下で見た顔がいても、素性を明らかにするのも禁じ手ですわよ…」
見れば、みなさんの服装は法被に玉付きTバック…いわゆる比丘尼国呼称「まぐわいふんどし」だけなのです…。
つまり、下着の上からでもちんぽが存在するのが丸わかり。
そして、頭や顔ですが、この時代には割と一般的な風呂敷風頭巾で隠しており、ぱっと見では誰が誰やらという状態。
ただ、人によっては、その頭巾の色が黄色なのです…。
(この黄色は夜鷹頭巾と申しまして、己が夜鷹であると無言で周囲に知らしめるためのもの…元来なれば夜鷹以外には許されるものではござらぬはず…いえ、別に付けておっても金を取って春を売りさえせねば良いのですが、春を売る気がなくとも夜鷹であると周りに言うも同じですからなぁ、結局は夜鷹以外は被ることなんぞありはせんでしょう…)
つまり、人によってはこれから、夜鷹をすると宣言したも同然なのです…。
あと、あたしのようなデカ女の場合ですがね。
(ベラ子陛下…いくら髪の毛をストレートにした上でアップになさったところでですね…痴女皇国関係者だっての、日焼け跡でバレバレですよ…)
(リンド…いえ偽女種4号さん、あたしは偽女種1号らしいのです…それに、暗いから分かりませんって!)
(偽女種1号さんの場合、金髪以前に身長でバレバレな気もするわね…六尺豊かな大女って、江戸じゃ目立ちまくんのよ…アルトく…偽女種2号さんでもいい加減目立つ部類なのよ…)
(おかま3号のまさ…さんでもたいがいなのですよ?)
(いいじゃない…この時代に信号はないから、立ちんぼさん、みんなで買えば怖くないのよ!)
(おまつさま…このために大奥の側室以上全て、まら持ちにしたのですか…)
(孝子さ…いえ偽女種8号様、わたしは7号ですよ…)
(なんで乳母役のわたくしまでもが!)
(春日さ…いえ偽女種9号様も、あの時わたしの後で上様にお手付きされておられたじゃありませんか!)
(りんど様と私はまら持ちで、女房衆を犯す側でしたが…)
(フラウ・オミヨ…ノブツナ様の愛人に拾われただけでなく、騎士扱いとは…)
(りんど様は、べらこ様の国の巫女の時にすでにさぶらい修行や読み書きそろばんを覚えなさったのでしたね…羨ましい…)
(羨ましがらない方がいいです。痴女宮本宮研修、受けさせられますよ…短縮なしの女官基礎教程だけでも半年間はFick漬けの毎日ですからね…ヨシワラのピンサロ勤務が半年ですよ…)
(その代わりに日曜とやらがあり、皆は別の島に船で渡り稚児を買うて御目子ざんまいとか…上様いえ11号様、うちの寺の再建、お認め頂けませんか? 今の私が当主なら父よりもっと上手くやって、幕府に冥加も納められそうな気も致しますが)
(三十ろ…いやさ12号に申せ…)
(おみ、いえ13号様。私語は慎みなさいまし。あと、坊主茶屋の話ですが、日枝神社の境内にまだまだ空き地がございますから、後でゆるりと話をしましょうか。12号様も、陰間茶屋を奥様が経営すれば、その上がりは国につきますわよ…)
(おま…7号様、そこは妾の悪企みを止めるところでは…)
(届出もなく色小僧茶屋なんぞなさるからお咎めがあるのです、勅状を賜りお許しを得ればそれは公認。少なくとも慈母観音堂につく小僧茶屋なら、わたしが勅許を出せますわよ)
(ななななな7号様、城下でそれは…)
(11号様、日枝神社境内は朝廷所轄。社寺奉行も苦情を申せるだけですわよっ)
(11号様…日枝神社の境内に陰間茶屋がございますと色々捗りませぬか…今から参る道を出ればそこは日枝の境内なのでございますぞ…)
(むうう…7号様、茶屋開きの際には、くれぐれも目立たぬように…)
ええ、皆様がどう言う話をしとるのやらというのはともかく、我々は江戸城本丸とは半ば独立した建物となっている大奥に設けられた地下区画への階段を下っております。
そして、この地下区画に設けられた扉を、通称・偽女種11号様の左腕の聖環で解錠頂きます。
(この扉は今、この場におる者か奥に属するものでなくば開かぬとのこと…)
(更には日枝神社の社務所の中に出て参りますので、そこで無言の誰何がございます…)
(で、天の声が江戸城と日枝神社の位置関係を理解してもらうために作った略図がこれだそうです…)
(大奥の位置は連邦世界の江戸城とかなり異なっていて、皇居長和殿から宮内庁にかけての位置に所在します)
(上様は大奥に住まい、この秘密の穴を経由して登城なさるのでございます…)
(この陰間服の集団の中に、この穴に詳しい男子が若干名おわす気が致しますが、気のせいなのでございます…)
□□□□□
□□江□□
◇◇◇◇◇◇□□戸□□
◇西吹皇※◇□□城□□
◇の上居大◇□□□□□
◇丸御予奥◇
◇◇苑定◇◇
◇◇◇地◇◇
◆◆ ◇◇◇◇◇◇
◆◆
↑
日枝神社(周囲は国主屋敷街)
(西の丸が、余が元服前に住んでおった居宅もあった場所でござる…この辺りの堀で国千代が鴨猟をしたのを咎められましてな…)
(連邦世界の史実だと、家光様のお父様は西の丸に隠居しても長く院政を敷いておられたのですが、痴女皇国世界ではマリアちゃんやあたしのお勧めもありまして、駿府城に隠居中です)
(駿府からですと鉄の道で二刻少々でございますしな…せいぜい利用せよとのお達しでございますし、ふふふ)
(長く親政を敷かれますると、却って幕政に悪影響が出るとの田中様のお達しを受け入れなすった模様…)
(ところで、この横穴でございますが、この乗り物に乗りまして…)
そこには、水平に掘られたトンネルと、痴女宮のダム…聖院開闢記念大堤の横手から酷道1号線に沿って伸びていく、牛乳運搬モノレールの類似品がぁっ。
(上様のご利用もあるのに、歩かせるわけにも行かずと…)
(操作自体は余も習わされましたが、至極簡便でございますな。何より、童心に返ったようで)
で、客車二両連結で水平線路であれば8名ほどが乗れるこのモノレール、数台が用意されておりますので、分乗して薄暗いトンネル内を走って行きます。
このトンネル、モノレールの上下の線路以外にも、人が二人、すれ違える程度の歩行者用通路が別に設けられています。
緩くカーブして何分か走った後で、日枝神社・一旦停止の看板が出た広場に来ます。
で、終点のストッパーまたは先行列車に当たると自動停止するのは、痴女島のモノレールと同じ。
ストッパーを外してから列車を動かすと、その先にある一周回る線路を経由して元来た方向に戻るのも同じですね。
で、広場の壁に光る非常口を示す案内板の下にある扉を開くと、階段が現れます。
この階段を登って行きますと、社務所の中に出るの、実は何度か経験しているんですよ、あたし…。
と申しますのも、将軍様に何かあった際の救出作戦も一応は考えとこうと発案した姉のせいで、短時間とはいえど江戸城内の視察を行わざるを得なかったのです。
で、逆に痴女宮で何かあった場合の比丘尼国の支援を受ける際のことですけど、こちらは大江山にプラウファーネさんがいますし、痴女宮にもポーランファーネこと外道丸ちゃんの鬼姉弟コンビのお姉さんの方が常駐しておられます。
そして、このお二人が痴女宮の構造に精通している立場ですから、救援行動の際の道順も理解してくれています。
何より、時々は痴女宮に来て地下の転送ルートから地上に上がっていらんことしてるおかみ様がいますからね…。
んで、日枝神社。
この神社自体も、連邦世界の同名神社と違いまして、もう少し江戸城寄りに建設されている上に、敷地も3倍はあるそうです。
天の声に言わせると「敷地面積は国会議事堂の前庭と井伊家屋敷跡が丸っと入るくらいで、場所自体も桜田濠のすぐ横と言っていいところ」だそうです…。
この大きさを確保している理由も、巫女教育のための巫女学校や寄宿舎が存在するためもありますが、江戸城に万一の何か…特に、明暦の大火に代表されるような大火事が発生した際の救援基地として機能させるためでもあるそうです。
(さっきの広場に、痴女宮と大江山からの緊急支援部隊のための転送ゲートが存在するからね…)
(緊急でなくても使ってそうな人が若干名)
(家光様や信綱様には痴女宮にお越し頂くための使用手順をお教えすべきよ…それも、ショタか偽女種状態でお使い頂くための…)
(雅美さんの欲望がだだ漏れです…)
ご自身の性欲を韜晦しようとしても隠しきれていないragno prostitutaはほっとくとして。
さて、あたしたちの前には、日枝神社から派遣された巫女さんが二名。
鉢巻をして、帯刀しておられますが…その格好は吉原神社の巫女さん同様、はかまの股間部分が大きくくり抜かれてふんどしが丸見えのエロ巫女装束です。
「芳春院様ご一行を屋敷街へとご案内仕ります…仰せの通りに、夜鷹が多く出没すると噂の場所を中心に巡ることとなります…」
(いやはや、国主屋敷の周囲に夜鷹とは…)
(三十ろ…いや12号、あれは夜鷹にあって夜鷹にあらず、しかし本人達が夜鷹を称する以上は夜鷹なのじゃ…)
(ははっ、11号様の仰せの通り…しかるに、春を売るにも関わらず、金を取らぬとあっては夜鷹とは申せず…)
(金を取らぬ以上は夜鷹切手を改める訳に参りませぬ…我らや屋敷街の夜の警備を受け持つくのいち達からすれば、あれは夜鷹として見過ごすしかないのです、ないのです…)
ええ、からくり、お分かりになりましたでしょうか。
では、実際にその夜鷹さんとやらがどんなのか、見てみましょう…。
(時刻は折りしも四つ、そろそろお城の鐘が町木戸の閉門を告げる頃合いにございます…)
ごぉん、ごぉん、ごぉん、ごぉん…。
江戸城だけでなく、お寺というお寺が一斉に鐘を鳴らしているようです。
更には、番小屋というのですか…江戸市中の交番に該当する施設でも、鐘を備え付けているところでは鳴らしているみたいですね。
そして、目の前の大きめの門も、今まさに閉められようとしています。
ですが、閉められる門の横の木戸から入ってくる人の姿が、焚かれている篝火…そして設置工事が順次進んでいる街灯に照らされて浮かび上がります。
その姿は、あたしたちと類似の陰間装束。
ですが、被っている頭巾が暗赤色です。
更には、痴女種モードの視覚でズームして見てみますと…金糸刺繍で描かれた牛のイラストが入ってるじゃないですか…。
「よし、風呂切手は…大丈夫ですね。通りなさい」
ええ、銭湯の入浴証明を門番の巫女さん…あたしたちを誘導している人と同じ服装の武装巫女さんに見せているようです。
そして、性別は…男性。外観は、顔こそ頭巾で隠されていますけど、未成年そのものです…。
まずまず日焼けもしていて、ふんどし風の淫蟲下着を着用していますが…この少年?たちは一体全体、どこの誰なのか。
(待ちなさい、お前たち…この方々は、さるやんごとなきお方の一団。そなたらが夜鷹目当てなのは承知しておられます…そなたらが夜鷹を相手するのを物陰から見ることを所望なさっておいでです…危害は加えませんし、そもそも、今より七つまでは夜鷹装束または陰間装束をする者、その素性詮索について、不問の掟が定められております…安心して夜鷹を探すのです…それに、うまく夜鷹を盛らせよがり泣かせてこの方々の興を引くなれば、褒美金を頂けるやも知れませんよ…頑張るのです…)
と、引率巫女さんの心話に、最初はぎょっとしたものの、黙って頷く二、三人の人影。
(お殿様の縁者のお忍びのお楽しみに間違いあるまい…)
(しっ、素性の詮索はお叱りのもとだぜ…)
(ああ、褒美金の話は口止め込みだろ…)
(漏らせば穢多部落からも追い払われ、所払いだからな…口の堅さが長生きの秘訣だぞ…)
などと小声で囁き話をしながら、国主屋敷の塀に沿って薄暗い道を歩く一団と、それを追跡するあたしたち。
そう、この少年たちは穢多身分の子たち。
そして、前方にお屋敷の通用口…木戸から出てくる人影が、3つ。
なんと、偽女種を示す陰間装束に黄色頭巾…そう、見た目は偽女種さんの夜鷹状態なのです。
そんな人たちがなぜ、通用口からとは言え、国主屋敷から出てくるのか。
しかも、あたしの聖環ですから、実際の身分や氏名はもちろん、性別もIFFステータス表示させることが可能です…可能なのですが…。
(ベ…1号さん…性別はもちろん、身分を暴露するのもご禁制なのよ…)
で、黄色頭巾の人は、黙ってお尻を向けます。
そして、そのお尻にちんぽをこすりつける赤頭巾の男子。
その、押し付けられたちんぽが黄色頭巾の手によって、そっと握られます。
そして、硬さを上げるように、しこしことしごかれます。
で、交渉が成立したのか、無言で…黄色頭巾に手を引かれて歩き出す赤頭巾たち。
(な、何という…)
(あり得ない…こんな破廉恥なことが国主屋敷のすぐ外で…)
(静かになさい…あれは、男が夜鷹を買ったも同然…そして、偽女種のなりをしておれば、あの赤頭巾たちはあくまでも偽女種の夜鷹であり、陰間なのです…)
(夜鷹が夜鷹を買うとは…本当ならあの全員、夜鷹切手改めでは…)
(だからこそ、金をやり取りするかどうかを判定しておるのです…今からあの者たちが御目子を致したとしても、別れるまでの間に夜鷹としての銭を貰い受けねば、それは田中様やべら子様のおくにでいう、じゆうれんあいとやら。即ち、逢い引きとして扱われてしまうのです…)
(ええ、夜鷹指南の通りにしておりますわね…)
(7号様…わたくしの聖環にも、くだんの夜鷹指南なる指南書がなぜか送られて来ましたが…)
(あれは先立つところの国主奥方外出禁止令説明会席上で、後に配るとの説明をしたもの…8号様が存じ上げないのも無理はございませんわ…)
(7号様、要はあのジプシー男児、政府から簡単に処罰される弱い立場であるがゆえに、かえって口が堅いと見込まれ、売春を装った名家の婦人や娘、果ては女中へFick奉仕をするために呼ばれておるのでしょう?それも…互いの匿名を絶対条件に売春名目でオメコして、お金を貰わないか、逆に女の方から褒美のお小遣いをもらう程度で、先の夜間外出禁止令や浮気防止法を回避してアイビキをしているのでは…)
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