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女戦士大地に立つ・3.0
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うぬ。
しかし、まさかのエンリケ君の発言。
これを認めるべきか。
なんと言っても、男の子らしい冒険心に満ち溢れた顔と感情です。
そりゃ、危険な猛獣が陸上と言わず水中と言わずに多数存在する上に、蛮族の戦士が国らしきを築いてブイブイ言わせているとあっては「どれどれ」と見てみたくなるのが少年的思考なのでしょう。
で、懇意の少年に聞いてみましょう。
と言っても、クリスおじさまは攻撃的な性格ではないので質問対象からは外します。
(ベテハリ君ベテハリ君。あなたなら首狩族や女戦士の国を見てみたいですか。ものすごい大きなヘビやワニや綺麗な蝶ですとか、色々といますよ)
(陛下。美しい虫は茸島にも南洋島にもいますけど、大きな蛇だけはちょっと遠慮させて下さい。実は南洋島にもいるのです…僕の身の丈の五倍くらいの長さで、本当に人を呑むものが…)
(えええええ、そんな度胸のない事を…)
(あのーべらこへいか、南洋島と須磨寅島には錦蛇とか申す種類、おりますよ…)
と、オリューレさんからも注意が入りましたので、本当にいるのでしょう。
(こら…ベラ子、アマゾンにいるのならアナコンダの事を言いたいんだろうがよ、うちらの近所にもインドニシキヘビとか亜種がいるのを忘れんな…あたしらが通りかかると怖がって隠れてるだけで、隙を見せたら人に巻き付いて襲う大きさのやつが生息してるんだからな…)
(で、実際に僕のいた村でも人が襲われた話がありまして、山狩りをして蛇を探したところ、腹を膨らませた蛇が…今は慈母寺が出来ておるとは聞きますので、人里に降りて人を襲うことはないと思うんですけど…)
ええー、ベテハリ君の根性なし、とか思いかけましたが…よく考えてみれば、以前お話した「全ての動物は姉を聖院金衣として認識し、逃げるか避けるかかしずくか」の習性を見せる件と同じことでしょう。
つまり、ある程度以上の強さの女官であれば、野生動物の方で勝手に避けてくれるのです。
痴女島でも同じで、象さんは荷役のために何匹も門前町界隈で飼われている…というよりも荷運びの用事があれば女官が心話で呼ぶのです。
で、門前町付近の密林に住んでいる象さんは普通の象よりも賢くされていて報酬の野菜を餌に貰えるのを知っているので、はいはいと輸送手段の提供に応じてくれたりします。
ですから、泰拳仏象国の象さんのように聖獣認定を貰っているのにあぐらをかいて荷車の荷物を万引きするような事はありません。
https://twitter.com/725578cc/status/1643900829722898432?s=20
というか象さん、砂糖きびが美味しいのを知ってるんですね…。
しかし、象のような生き物でも女官は簡単に倒せてしまうので…人間の男性の能力、ついつい忘れてしまいそうになるのですよ、痴女種化すると…。
(それが、上級女官や騎士では一般のだんせいをおあいてできなかったりゆうのひとつなのです)
(マリアヴェッラ…下級女官ですら、大抵の生物は敵にならないのだが…だが人間は別だぞ。痴女島ですら北部を中心に虎や…そして草食ではあるが、連邦世界では死滅したとされる恐竜というのか、大型爬虫類が存在している。まぁ、その恐竜とやらは我々が使役する方向で保護しているのだが…)
ありゃ。
で、アルトさんとアレーゼおばさまに言われた件で改めて思い出しましたよ。
そうです、ベテハリ君は元々、南洋島で暮らしていましたので、日常生活で危険な生物に遭遇する可能性は割と高かったようなのですよね…。
ですから、周囲から記憶や知識を引き継いでいる「だけ」のエンリケ君・ピオ君・カルロス君は実際に危険動物と遭遇した事はもちろん、そもそもそうした危ない生き物と相対した経験すらない女官からの知識で判断している可能性があるでしょう。
(僕は既にノヴゴロドという北の街に赴任していますけど、少し森に入れば狼なる大型の山犬というのですか、獰猛で賢い上に群れを成して家畜や人すら襲いかねない生き物が棲んでいるそうです。北の寒い国ですらこうなのですから、もっと暖かいところでは危険な生き物が沢山いてもおかしくはないと思います)
と、エンリケ君を説き伏せるでもなく自分の経験を淡々と思い出しては語るベテハリ君ですが。
(それに、痴女島や南洋島と同じくらい暑い国だから人もお尻を出す格好なのでしょう。ただ…うかつに肌を出していると虫に刺されますよ。幸いにして僕のいた島などでは聖院の方々が危険な病を移す虫、街にはいられないようになさったそうですけど…)
(あー、マラリア蚊か…尻出国の辺りはやべーかも知れねぇな…まぁ、聖環の反応じゃエンリケ君たち、伝染病対策はある程度済んでる体になってるから伝染病はさほど恐れなくてもいいわ。ただ、食い物と危険動物には注意な。特に有毒生物)
えええええ、ねーさん、エンリケ君たちの視察を認めるんですか…?
(でなベラ子。今、アークロイヤル…偵察機材積んでるか聞いてみ?)
「マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下…本艦はAAF-200エクスカリバー一個飛行隊分を搭載して派遣されておりますが…」
「哨戒機や偵察機のようなものはお積みでしょうか。可能なら複座以上の機材が有り難いのですが…」
「申し訳ありません…早期警戒機と通常型輸送機は各2機を搭載しておりますが、偵察や哨戒任務には戦闘機の兵装ベイに収納可能なポッド類で対応しているのです…」
(あっちゃあ…艦長、マリアリーゼです。AAF-200って確か単座機でしたよね…)
「はい陛下、ですので…恐らくマリアヴェッラ陛下はアマゾン川流域の偵察行動をお考えと思いますが、複数人員を乗せてそうした任務に従事する機材は今回、搭載していないのです…」
(よっしゃわかりました。こっちで機材は何とかします。あと、貴艦はスキージャンプ装備施工済ですよね? ベラ子、今からエマ子にドゥブルヴェと交換する機材を持って行かせる。エンリケ君にアマゾンを見せて諦めさせたいんだろうけど、いきなり戦闘機…それもバンシーならまだしもドゥブルヴェはまずいって判断、あたしも支持しよう。とりあえず今から5分以内にアークロイヤルの船上に着くように行くそうだから、対応頼む)
あー…あれか、あれが来るのか…。
で。
マルグリット艦長の指示で浮き上がったアークロイヤル、時速100km程度で空中を進み始めます…風上に向かって。
そして、風下方向から双発機のDA-62が飛んで来ました。
ええ、翼にでかでかと書かれたJA1919という識別番号を見なくてもわかります、痴女皇国保有機…というか、テンプレス・セキュリティ日本法人所有扱いだそうですけど、うちの飛行機です。
この日本語がわかる人にはかなりの確率で笑うか呆れるか怒るかの反応が返ってくるプロペラ飛行機、格好は良いのですよ。
あ、姉が描かせようとする痴女皇国の国章だけは、あたしが全力で阻止しましたから。
あんなもん描かれた機体、絶対に飛ばしたくないと強硬に主張しましたよ。
で、今は痴女皇国ピンクに赤と青の識別帯を派手に描かれた状態です。
https://twitter.com/725578cc/status/1644010425800069122?s=20
内装も高級車っぽい柔らかめのベージュ色の革で張られたレザーシートですとか、足回りの毛足の長い内張りとか、いかにもプライベート用風味なのですけどねぇ…。
問題は、あたしが座る席…機長と副操縦士席の後ろに、2列目以降の人が操作する軍用タブレット風味のごっついモニタ兼タッチパネル装置が付いてたり、操縦席の前に目立ちませんけどヘッドアップディスプレイが装備されてたりですね、更に外観には赤外線アイやレーザー照射部が一体化された光学監視装置のターレットですとか、流石に普段は外していますけど外部兵装や索敵ポッドを吊り下げるためのパイロンですとか。
要はビジネスジェット風味の内装の個人所有機に、無理やり軍用装備に近い機器を追加して痴女皇国で使いやすいようにしてしまった物件なのは、昨年夏のお化け作戦の際に話が出てたと思うのですよ。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/151/
で、アークロイヤルが浮いて飛んでるのは、この民間機丸出しの飛行機…それも航空母艦に離着陸するために強化された車輪とか、甲板に張られた着艦用のロープを引っ掛けるフックとかを持ってないこのDA-62を安全に着艦させるためです。
要は、相対速度差を縮めておいて、DA-62側で脚を下げて高度を落とすだけであとはブレーキを踏めば綺麗に降りられるようにしてくれるためです。
でまぁ、飛行甲板に降りたDA62、着艦機拘束装置でがっつりと固定されるとそのままエレベーターで格納庫に運ばれてしまいます。
そして待ち受ける我々の前に現れるエマ助ですが。
あの…エマちゃん?
まさか、そのド○タスタイルでドゥブルヴェ、乗って帰るつもりじゃないわよね?
「普通に出来ますけどな。それより、これから後の行程どないしますん。いつまでもアークロイヤル、借りっぱに出来んでしょ…」
「とりあえずエンリケ君の知的好奇心を満たすのと…現地状況を下見しておこうと思います。今からなら日没前には亀頭、いえ帰投可能でしょう」
「え…陛下とエンリケだけで行かれるのですか?」
早速、ティアラちゃんが息子にいらん事教えないでという顔でこちらを見ますが。
「もちろん、希望者を募ります。ただ…あたしとエンリケ君・ピオ君・カルロス君を乗せると残り3名しかあの飛行機には乗れませんので…」
「ふむ。で…マリアヴェッラ陛下、余も是非にその、女戦士の国とやらを拝見しとうございまするが」と、臣下の礼を取って申される女性が。
いえ、ポルトガル国王のジョアン4世陛下ですよ。
ただ、陛下はこの後の尻出国植民に際して、女戦士族との交渉を予想されておられます。
で、あえて偽女種に変わった姿のままでおられるのです。
そして、現地の女戦士族の姿…いわゆるTバックの元祖となった形態の下着は北欧などでもあったそうですけど、人喰いドジョウのカンジールから股間の穴を守るためにアマゾンの人々が身につけていた貞操帯を基本にした服装を鑑みて、姉に依頼して偽女種用に手直しした白薔薇騎士団の制服…高級そうに見えるものをお渡ししております。
で、陛下は若返った上にまずまずの美青年であったことから、それなりの美形のお姿でもありまして、まぁこれならば身分の高い貴人に見て頂けるだろう状態ですよ、今。
「エンリケくん。あなたの好奇心もわかるのですけど、ジョアン4世へいかはあたくしたちのおすすめもあって、おしりを出してくらしているくににうつりすむ話をすすめておられる身。いわば、しょうらいの領地をごらんになりたいのです。ですが、えんりけくんもいずれはこのあたりにおふねを差し向けるたちばになるでしょうから、もしよければあたくしと実際にたんけんしてみますか」
えええええ、アルトさん、何を言い出すんですか。
「あたくしはあくまでも、女せんしたちにおねがいをしに行くたちばです。かわいいおとこのこが使者になれば、さすがに気のあらい女せんしたちでも、あたくしたちがいくさをしにきたとはおもわないでしょう」
「なるほど、アルトリーゼ閣下のお話にも一理あるな…だがエンリケ殿、若い少年の貴君に聞くのも何だが、かの地に降り立てば人を食うか襲う何某かが数歩歩むだけで襲って来ると聞く。諸君ら少年は、いずれイスパニアや海賊の国を背負って立つ気概があるとは思うが、余が伝え聞いた限りでは危うい場所だと思えるのだ…意地を張るのではなく、冷静に考えて答えを出す方が良き計らいに思うが、いかが」
と、王様らしい発言をなさるジョアン4世陛下。
「正直を言えば余も気は向かぬ。だが、国民を移り住ませる交渉の一つも出来ねば何の王であるか。もしくは、大国を標榜するならば信のおける使者を立てるも国の力を示す機会であろう。もしもアルトリーゼ閣下にお守り頂けるならば、後で余が挨拶に伺う程度で良いので、彼の地の民に我らの来訪の意志を告げて来て良いか尋ねて欲しいのだ。これならば、敵意を示された場合にも一旦は身を引くなり、痴女皇国の武威を示すなりの判断もしやすかろう。要は、相手にも考える機会と時間を与えるために、余がいきなり出向く事を避けたいのだ。これが…余の本音だ」
「つまり、おうさまは自分でこうしょうをすることじたいはやらなくてはならないと思っておいでなのですよ。ですが、いきなりおうさまが行かれたばあいに、女せんしや首かり族のれんちゅうが人のはなしを聞かないばあいは、すぐにおうさまを守るためのたたかいになってしまうでしょう。わかりますか」
と、エンリケ君たちを諭すアルトさんと陛下です。
要は、戦意のない使者を出す口実を作ってあげるから、そのついでにちょっと見てらっしゃい。危ない場合は守ってあげますよ、と言うのがアルトさんの狙いですね。
で。
「マリアヴェッラ。女戦士族はアマゾン川…と言われているそうだが、川の色が大きく違う2つの大河が交わる辺りに大きな村を築き、首狩り族の男たちを繁殖用の種付け男兼、食料としての芋や魚を獲るための労働力として保護使役しているのが、以前に私が見た姿だ。ポルトガルからの入植を考えるならばその…マナウスとかいう村を避けて海岸沿いから入植を進める方がよくはないか」
これは、アレーゼおばさまの意見です。
しかし、女戦士族はこのマナウスを根城にして、アマゾン川流域に人を植民し、海に出て海岸沿いに村を作っているとの分析も来ています。
ですから、海岸沿いの入植しやすい場所を押さえて行ったとしても、そこに住んでいるの、言ってみれば奥地に所在する都から人を送って国を広げて行っている最中の、いわば植民された方々。
話をしてみても「マナウスの族長に言いに行ってくれ」とか言われそうな気もします。
これが1人や2人ならともかく、ゆくゆくは何千人何万人と移り住むことを考えると先にマナウスの族長…と言っておくのが一番しっくりくる立場の指導者に対して、ポルトガル人に対する植民許可を形にした勅許状めいたものを作ってもらう方が良いかも知れません。
それと、我々が移り住む場合は、文化摩擦が確実に発生すると見られています。
アレーゼおばさまがおっしゃっておられた「狩猟民族から農耕民族への転換」に伴って、意識改革の必要性が生じるからです。
これを乗り越えないと、例えその気がなくとも、最終的にはどちらかを排除する大規模な戦争か、痴女皇国が介入した場合は…農作業に向いた思考へと誘導するように工作してしまうことになるでしょう。
でまぁ、とりあえずは見に行こうやということで。
べらこ● じょあん
あると てぃあら
えんりけ かるろ ぴお
という座席配置でDA62に人を乗せて行きます。
そして、本当ならばこのギアナ沖からマナウスは直線距離でも1,200kmを越す距離があります。
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つまり…人を満載したDA62なら、帰って来れません。
が、アークロイヤルで適当な場所まで行けば十分に行動半径内。
そして、スティックスドライブ・レベル4での転送処理を使えば一瞬で望む場所に浮いていられるのはテンプレス2世でもアークロイヤルでも同じ。
『Juliet-Alpha one-nine one-nine, take off』
エレベーターで飛行甲板に上げられた直後にDA62のスロットルを開けておきますと、着艦拘束装置が外された瞬間に較正対気速度100ノットで進むアークロイヤルから一気に飛び立つ事ができます。
ふわぁっ、とばかりに午後の空に浮いて行くDA62。
そして、アマゾン川の流れに沿って真東に進めばマナウスを目指せる位置で離陸しております。
「ほほう、川の色が違うのですな…」
「植物が腐った際の酸…物質によってこの色になっているそうです。そして、色が違う川と合流する辺りが魚が多く棲んでいるようですね」
これ、先ほどジョアン4世陛下にご説明した件ですけど、ネグロ川沿岸や洪水などで川に流されて河底に堆積した植物が腐食する際の酸が、このネグロ川の独特な黒色の水の原因だそうです。
そして、流域にはこの弱酸性の水の中で育つ魚しかいませんので、逆にプランクトンが繁殖しやすいのだとか。
で、茶色いアマゾン本流と合流する辺りで、茶色側から豊富な餌を目指してお魚さんが黒い水の方に来る上に、水鳥やイルカ…アマゾンカワイルカというのがいますよ…や、より大型の魚が襲って来ても茶色く濁った水に逃げ込めば逃げられることから、この辺り…ネグロ川とアマゾン川が合流する水がすぐには混ざり合わずに延々と2色のままで流れている辺ではお魚さんが特に多く繁殖しているようです。
で、漁師さんたちもそれを知っており、古くからわざわざこの辺りまで船を出して魚を捕る生活をしていたと、雅美さんから教えられます。
(ものすごくダイナミックな光景でしょ。そりゃ、連邦世界だとマナウスまで1万トン…けっこう大型のフェリーや貨物船が遡って来れる川幅なんだからねぇ)
ええ、水面高度百メートル程度にまで飛行機を降ろして飛ばしていますけど、幅数キロの川幅があるんです、この一帯。
そして、連邦世界では分岐をネグロ川の黒い水の方に向けて曲がればすぐ、マナウスの大きな街が広がっているのも予習済みです。
もっとも、この時代では密林をなんとか切り開いた集落があるだけのようですが。
(ただ、注意して欲しい事があるのよ。どうもペルー側…イキトスの方から川を下って来た淫化人が鉄器をもたらしている可能性が指摘されてるわ。アンデス山脈が隆起していなかったほどの古代だとアマゾン川は太平洋に長れていたようなんだけど、その時代に人類が住んでいて鉄を利用できたかは疑問だし…)
なぜ、雅美さんは鉄を使うのを恐れているのでしょうか。
(もちろん、武器として利用できるからよ。連邦世界だとアマゾン川を最初に探検したのはスペイン、続いて入植や開拓に手をつけたのはポルトガルという歴史があります。そして、スペインとポルトガルは南米における植民地を取り合うのではなく何度かの条約を結んでどちらがどちらのものにするかを決めたんだけど…最終的には1700年代後半のマドリード条約でブラジルはポルトガルのもの、とされました)
そして、なぜ、ポルトガルはブラジルに遷都したのか。
(ナポレオン時代にポルトガルはスペイン独立戦争に巻き込まれました。で、イベリア半島の覇権を巡ってスペイン・ポルトガル・イギリス連合軍とフランスが戦ったんだけど、戦乱を恐れたポルトガル王家はブラジルに逃れたのよ。ただ…この件が尾を引いて、のちのちに現地にいたポルトガル王太子を君主に抱くブラジル帝国を建国する動きに繋がっちゃったけどね)
はぁ…揉めてたんですね。しかも、スペインってナポレオンの前までイギリスと戦争してたんじゃないですか。
それが、手を結んでいるのですからまさに欧州事情は複雑怪奇といったところでしょう。
そして、連邦世界では南米に押し寄せた欧州各国が持ち込んだ伝染病、そして一部の征服者による絶滅侵攻のせいで、原住民の皆様は大きく数を減らしています。
その代わりにアフリカから持って来られたのが黒人奴隷。
連邦世界のブラジルやカリブ諸国、そして南米北部に黒人系の住民がいらっしゃる理由はこれだそうですね。
で、痴女皇国の政策…もっと言うと、姉の構想では重罪人に対する刑罰として、あえて被差別人種を作ろうとしています。
そう…痴女種に続く第四の性別とでも言うべき、偽女種族です。
(で、偽女種については変更がある。人類女性を妊娠させた場合、偽女種か女が生まれるようにした)
はぁ…ってねーさん! それ、偽女種の方が繁殖する…あるいは出来るということでは?
(もちろん、そのためだ。ジョアン陛下に今、お伝えしておくけど…ポルトガル王国は偽女種の国として、スペイン王国に従属して欲しい。これは、諸子宦官国とバスク州にも伝えている。種族絶滅を行わない代わりに、スペイン…ひいては痴女皇国に逆らう者がいれば偽女種化する尖兵になってもらうことで独自の文化や自治を安堵させてもらおう。それと…聖母教会での助修士は修練士を経て修道士を目指させているけど、全てが修道士になれない可能性がある)
ああ、落ちこぼれる人が出る可能性、シェヘラザード神学部長も申しておられましたね。
(で、男性修道士への道を進めなかった助修士たちは今、偽女種状態のままだろう。彼らはこのままだと難しい立場に追い込まれるだろうから、聖母教会に仕える用人として生活を安堵してやろうというのが、毒盛りの兄貴から出してもらう予定の勅令だ。ああそうだ…用人と言えど聖職者だからね。で、ポルトガルの立場を、偽女種化した罪人を植民奴隷または聖職奴隷化する聖列国家として認めることで聖母教会がその存在を安堵しようって筋書きだよ。ジョアン陛下、どうだい?)
しかし、まさかのエンリケ君の発言。
これを認めるべきか。
なんと言っても、男の子らしい冒険心に満ち溢れた顔と感情です。
そりゃ、危険な猛獣が陸上と言わず水中と言わずに多数存在する上に、蛮族の戦士が国らしきを築いてブイブイ言わせているとあっては「どれどれ」と見てみたくなるのが少年的思考なのでしょう。
で、懇意の少年に聞いてみましょう。
と言っても、クリスおじさまは攻撃的な性格ではないので質問対象からは外します。
(ベテハリ君ベテハリ君。あなたなら首狩族や女戦士の国を見てみたいですか。ものすごい大きなヘビやワニや綺麗な蝶ですとか、色々といますよ)
(陛下。美しい虫は茸島にも南洋島にもいますけど、大きな蛇だけはちょっと遠慮させて下さい。実は南洋島にもいるのです…僕の身の丈の五倍くらいの長さで、本当に人を呑むものが…)
(えええええ、そんな度胸のない事を…)
(あのーべらこへいか、南洋島と須磨寅島には錦蛇とか申す種類、おりますよ…)
と、オリューレさんからも注意が入りましたので、本当にいるのでしょう。
(こら…ベラ子、アマゾンにいるのならアナコンダの事を言いたいんだろうがよ、うちらの近所にもインドニシキヘビとか亜種がいるのを忘れんな…あたしらが通りかかると怖がって隠れてるだけで、隙を見せたら人に巻き付いて襲う大きさのやつが生息してるんだからな…)
(で、実際に僕のいた村でも人が襲われた話がありまして、山狩りをして蛇を探したところ、腹を膨らませた蛇が…今は慈母寺が出来ておるとは聞きますので、人里に降りて人を襲うことはないと思うんですけど…)
ええー、ベテハリ君の根性なし、とか思いかけましたが…よく考えてみれば、以前お話した「全ての動物は姉を聖院金衣として認識し、逃げるか避けるかかしずくか」の習性を見せる件と同じことでしょう。
つまり、ある程度以上の強さの女官であれば、野生動物の方で勝手に避けてくれるのです。
痴女島でも同じで、象さんは荷役のために何匹も門前町界隈で飼われている…というよりも荷運びの用事があれば女官が心話で呼ぶのです。
で、門前町付近の密林に住んでいる象さんは普通の象よりも賢くされていて報酬の野菜を餌に貰えるのを知っているので、はいはいと輸送手段の提供に応じてくれたりします。
ですから、泰拳仏象国の象さんのように聖獣認定を貰っているのにあぐらをかいて荷車の荷物を万引きするような事はありません。
https://twitter.com/725578cc/status/1643900829722898432?s=20
というか象さん、砂糖きびが美味しいのを知ってるんですね…。
しかし、象のような生き物でも女官は簡単に倒せてしまうので…人間の男性の能力、ついつい忘れてしまいそうになるのですよ、痴女種化すると…。
(それが、上級女官や騎士では一般のだんせいをおあいてできなかったりゆうのひとつなのです)
(マリアヴェッラ…下級女官ですら、大抵の生物は敵にならないのだが…だが人間は別だぞ。痴女島ですら北部を中心に虎や…そして草食ではあるが、連邦世界では死滅したとされる恐竜というのか、大型爬虫類が存在している。まぁ、その恐竜とやらは我々が使役する方向で保護しているのだが…)
ありゃ。
で、アルトさんとアレーゼおばさまに言われた件で改めて思い出しましたよ。
そうです、ベテハリ君は元々、南洋島で暮らしていましたので、日常生活で危険な生物に遭遇する可能性は割と高かったようなのですよね…。
ですから、周囲から記憶や知識を引き継いでいる「だけ」のエンリケ君・ピオ君・カルロス君は実際に危険動物と遭遇した事はもちろん、そもそもそうした危ない生き物と相対した経験すらない女官からの知識で判断している可能性があるでしょう。
(僕は既にノヴゴロドという北の街に赴任していますけど、少し森に入れば狼なる大型の山犬というのですか、獰猛で賢い上に群れを成して家畜や人すら襲いかねない生き物が棲んでいるそうです。北の寒い国ですらこうなのですから、もっと暖かいところでは危険な生き物が沢山いてもおかしくはないと思います)
と、エンリケ君を説き伏せるでもなく自分の経験を淡々と思い出しては語るベテハリ君ですが。
(それに、痴女島や南洋島と同じくらい暑い国だから人もお尻を出す格好なのでしょう。ただ…うかつに肌を出していると虫に刺されますよ。幸いにして僕のいた島などでは聖院の方々が危険な病を移す虫、街にはいられないようになさったそうですけど…)
(あー、マラリア蚊か…尻出国の辺りはやべーかも知れねぇな…まぁ、聖環の反応じゃエンリケ君たち、伝染病対策はある程度済んでる体になってるから伝染病はさほど恐れなくてもいいわ。ただ、食い物と危険動物には注意な。特に有毒生物)
えええええ、ねーさん、エンリケ君たちの視察を認めるんですか…?
(でなベラ子。今、アークロイヤル…偵察機材積んでるか聞いてみ?)
「マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下…本艦はAAF-200エクスカリバー一個飛行隊分を搭載して派遣されておりますが…」
「哨戒機や偵察機のようなものはお積みでしょうか。可能なら複座以上の機材が有り難いのですが…」
「申し訳ありません…早期警戒機と通常型輸送機は各2機を搭載しておりますが、偵察や哨戒任務には戦闘機の兵装ベイに収納可能なポッド類で対応しているのです…」
(あっちゃあ…艦長、マリアリーゼです。AAF-200って確か単座機でしたよね…)
「はい陛下、ですので…恐らくマリアヴェッラ陛下はアマゾン川流域の偵察行動をお考えと思いますが、複数人員を乗せてそうした任務に従事する機材は今回、搭載していないのです…」
(よっしゃわかりました。こっちで機材は何とかします。あと、貴艦はスキージャンプ装備施工済ですよね? ベラ子、今からエマ子にドゥブルヴェと交換する機材を持って行かせる。エンリケ君にアマゾンを見せて諦めさせたいんだろうけど、いきなり戦闘機…それもバンシーならまだしもドゥブルヴェはまずいって判断、あたしも支持しよう。とりあえず今から5分以内にアークロイヤルの船上に着くように行くそうだから、対応頼む)
あー…あれか、あれが来るのか…。
で。
マルグリット艦長の指示で浮き上がったアークロイヤル、時速100km程度で空中を進み始めます…風上に向かって。
そして、風下方向から双発機のDA-62が飛んで来ました。
ええ、翼にでかでかと書かれたJA1919という識別番号を見なくてもわかります、痴女皇国保有機…というか、テンプレス・セキュリティ日本法人所有扱いだそうですけど、うちの飛行機です。
この日本語がわかる人にはかなりの確率で笑うか呆れるか怒るかの反応が返ってくるプロペラ飛行機、格好は良いのですよ。
あ、姉が描かせようとする痴女皇国の国章だけは、あたしが全力で阻止しましたから。
あんなもん描かれた機体、絶対に飛ばしたくないと強硬に主張しましたよ。
で、今は痴女皇国ピンクに赤と青の識別帯を派手に描かれた状態です。
https://twitter.com/725578cc/status/1644010425800069122?s=20
内装も高級車っぽい柔らかめのベージュ色の革で張られたレザーシートですとか、足回りの毛足の長い内張りとか、いかにもプライベート用風味なのですけどねぇ…。
問題は、あたしが座る席…機長と副操縦士席の後ろに、2列目以降の人が操作する軍用タブレット風味のごっついモニタ兼タッチパネル装置が付いてたり、操縦席の前に目立ちませんけどヘッドアップディスプレイが装備されてたりですね、更に外観には赤外線アイやレーザー照射部が一体化された光学監視装置のターレットですとか、流石に普段は外していますけど外部兵装や索敵ポッドを吊り下げるためのパイロンですとか。
要はビジネスジェット風味の内装の個人所有機に、無理やり軍用装備に近い機器を追加して痴女皇国で使いやすいようにしてしまった物件なのは、昨年夏のお化け作戦の際に話が出てたと思うのですよ。
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で、アークロイヤルが浮いて飛んでるのは、この民間機丸出しの飛行機…それも航空母艦に離着陸するために強化された車輪とか、甲板に張られた着艦用のロープを引っ掛けるフックとかを持ってないこのDA-62を安全に着艦させるためです。
要は、相対速度差を縮めておいて、DA-62側で脚を下げて高度を落とすだけであとはブレーキを踏めば綺麗に降りられるようにしてくれるためです。
でまぁ、飛行甲板に降りたDA62、着艦機拘束装置でがっつりと固定されるとそのままエレベーターで格納庫に運ばれてしまいます。
そして待ち受ける我々の前に現れるエマ助ですが。
あの…エマちゃん?
まさか、そのド○タスタイルでドゥブルヴェ、乗って帰るつもりじゃないわよね?
「普通に出来ますけどな。それより、これから後の行程どないしますん。いつまでもアークロイヤル、借りっぱに出来んでしょ…」
「とりあえずエンリケ君の知的好奇心を満たすのと…現地状況を下見しておこうと思います。今からなら日没前には亀頭、いえ帰投可能でしょう」
「え…陛下とエンリケだけで行かれるのですか?」
早速、ティアラちゃんが息子にいらん事教えないでという顔でこちらを見ますが。
「もちろん、希望者を募ります。ただ…あたしとエンリケ君・ピオ君・カルロス君を乗せると残り3名しかあの飛行機には乗れませんので…」
「ふむ。で…マリアヴェッラ陛下、余も是非にその、女戦士の国とやらを拝見しとうございまするが」と、臣下の礼を取って申される女性が。
いえ、ポルトガル国王のジョアン4世陛下ですよ。
ただ、陛下はこの後の尻出国植民に際して、女戦士族との交渉を予想されておられます。
で、あえて偽女種に変わった姿のままでおられるのです。
そして、現地の女戦士族の姿…いわゆるTバックの元祖となった形態の下着は北欧などでもあったそうですけど、人喰いドジョウのカンジールから股間の穴を守るためにアマゾンの人々が身につけていた貞操帯を基本にした服装を鑑みて、姉に依頼して偽女種用に手直しした白薔薇騎士団の制服…高級そうに見えるものをお渡ししております。
で、陛下は若返った上にまずまずの美青年であったことから、それなりの美形のお姿でもありまして、まぁこれならば身分の高い貴人に見て頂けるだろう状態ですよ、今。
「エンリケくん。あなたの好奇心もわかるのですけど、ジョアン4世へいかはあたくしたちのおすすめもあって、おしりを出してくらしているくににうつりすむ話をすすめておられる身。いわば、しょうらいの領地をごらんになりたいのです。ですが、えんりけくんもいずれはこのあたりにおふねを差し向けるたちばになるでしょうから、もしよければあたくしと実際にたんけんしてみますか」
えええええ、アルトさん、何を言い出すんですか。
「あたくしはあくまでも、女せんしたちにおねがいをしに行くたちばです。かわいいおとこのこが使者になれば、さすがに気のあらい女せんしたちでも、あたくしたちがいくさをしにきたとはおもわないでしょう」
「なるほど、アルトリーゼ閣下のお話にも一理あるな…だがエンリケ殿、若い少年の貴君に聞くのも何だが、かの地に降り立てば人を食うか襲う何某かが数歩歩むだけで襲って来ると聞く。諸君ら少年は、いずれイスパニアや海賊の国を背負って立つ気概があるとは思うが、余が伝え聞いた限りでは危うい場所だと思えるのだ…意地を張るのではなく、冷静に考えて答えを出す方が良き計らいに思うが、いかが」
と、王様らしい発言をなさるジョアン4世陛下。
「正直を言えば余も気は向かぬ。だが、国民を移り住ませる交渉の一つも出来ねば何の王であるか。もしくは、大国を標榜するならば信のおける使者を立てるも国の力を示す機会であろう。もしもアルトリーゼ閣下にお守り頂けるならば、後で余が挨拶に伺う程度で良いので、彼の地の民に我らの来訪の意志を告げて来て良いか尋ねて欲しいのだ。これならば、敵意を示された場合にも一旦は身を引くなり、痴女皇国の武威を示すなりの判断もしやすかろう。要は、相手にも考える機会と時間を与えるために、余がいきなり出向く事を避けたいのだ。これが…余の本音だ」
「つまり、おうさまは自分でこうしょうをすることじたいはやらなくてはならないと思っておいでなのですよ。ですが、いきなりおうさまが行かれたばあいに、女せんしや首かり族のれんちゅうが人のはなしを聞かないばあいは、すぐにおうさまを守るためのたたかいになってしまうでしょう。わかりますか」
と、エンリケ君たちを諭すアルトさんと陛下です。
要は、戦意のない使者を出す口実を作ってあげるから、そのついでにちょっと見てらっしゃい。危ない場合は守ってあげますよ、と言うのがアルトさんの狙いですね。
で。
「マリアヴェッラ。女戦士族はアマゾン川…と言われているそうだが、川の色が大きく違う2つの大河が交わる辺りに大きな村を築き、首狩り族の男たちを繁殖用の種付け男兼、食料としての芋や魚を獲るための労働力として保護使役しているのが、以前に私が見た姿だ。ポルトガルからの入植を考えるならばその…マナウスとかいう村を避けて海岸沿いから入植を進める方がよくはないか」
これは、アレーゼおばさまの意見です。
しかし、女戦士族はこのマナウスを根城にして、アマゾン川流域に人を植民し、海に出て海岸沿いに村を作っているとの分析も来ています。
ですから、海岸沿いの入植しやすい場所を押さえて行ったとしても、そこに住んでいるの、言ってみれば奥地に所在する都から人を送って国を広げて行っている最中の、いわば植民された方々。
話をしてみても「マナウスの族長に言いに行ってくれ」とか言われそうな気もします。
これが1人や2人ならともかく、ゆくゆくは何千人何万人と移り住むことを考えると先にマナウスの族長…と言っておくのが一番しっくりくる立場の指導者に対して、ポルトガル人に対する植民許可を形にした勅許状めいたものを作ってもらう方が良いかも知れません。
それと、我々が移り住む場合は、文化摩擦が確実に発生すると見られています。
アレーゼおばさまがおっしゃっておられた「狩猟民族から農耕民族への転換」に伴って、意識改革の必要性が生じるからです。
これを乗り越えないと、例えその気がなくとも、最終的にはどちらかを排除する大規模な戦争か、痴女皇国が介入した場合は…農作業に向いた思考へと誘導するように工作してしまうことになるでしょう。
でまぁ、とりあえずは見に行こうやということで。
べらこ● じょあん
あると てぃあら
えんりけ かるろ ぴお
という座席配置でDA62に人を乗せて行きます。
そして、本当ならばこのギアナ沖からマナウスは直線距離でも1,200kmを越す距離があります。
<i731389|38087>
つまり…人を満載したDA62なら、帰って来れません。
が、アークロイヤルで適当な場所まで行けば十分に行動半径内。
そして、スティックスドライブ・レベル4での転送処理を使えば一瞬で望む場所に浮いていられるのはテンプレス2世でもアークロイヤルでも同じ。
『Juliet-Alpha one-nine one-nine, take off』
エレベーターで飛行甲板に上げられた直後にDA62のスロットルを開けておきますと、着艦拘束装置が外された瞬間に較正対気速度100ノットで進むアークロイヤルから一気に飛び立つ事ができます。
ふわぁっ、とばかりに午後の空に浮いて行くDA62。
そして、アマゾン川の流れに沿って真東に進めばマナウスを目指せる位置で離陸しております。
「ほほう、川の色が違うのですな…」
「植物が腐った際の酸…物質によってこの色になっているそうです。そして、色が違う川と合流する辺りが魚が多く棲んでいるようですね」
これ、先ほどジョアン4世陛下にご説明した件ですけど、ネグロ川沿岸や洪水などで川に流されて河底に堆積した植物が腐食する際の酸が、このネグロ川の独特な黒色の水の原因だそうです。
そして、流域にはこの弱酸性の水の中で育つ魚しかいませんので、逆にプランクトンが繁殖しやすいのだとか。
で、茶色いアマゾン本流と合流する辺りで、茶色側から豊富な餌を目指してお魚さんが黒い水の方に来る上に、水鳥やイルカ…アマゾンカワイルカというのがいますよ…や、より大型の魚が襲って来ても茶色く濁った水に逃げ込めば逃げられることから、この辺り…ネグロ川とアマゾン川が合流する水がすぐには混ざり合わずに延々と2色のままで流れている辺ではお魚さんが特に多く繁殖しているようです。
で、漁師さんたちもそれを知っており、古くからわざわざこの辺りまで船を出して魚を捕る生活をしていたと、雅美さんから教えられます。
(ものすごくダイナミックな光景でしょ。そりゃ、連邦世界だとマナウスまで1万トン…けっこう大型のフェリーや貨物船が遡って来れる川幅なんだからねぇ)
ええ、水面高度百メートル程度にまで飛行機を降ろして飛ばしていますけど、幅数キロの川幅があるんです、この一帯。
そして、連邦世界では分岐をネグロ川の黒い水の方に向けて曲がればすぐ、マナウスの大きな街が広がっているのも予習済みです。
もっとも、この時代では密林をなんとか切り開いた集落があるだけのようですが。
(ただ、注意して欲しい事があるのよ。どうもペルー側…イキトスの方から川を下って来た淫化人が鉄器をもたらしている可能性が指摘されてるわ。アンデス山脈が隆起していなかったほどの古代だとアマゾン川は太平洋に長れていたようなんだけど、その時代に人類が住んでいて鉄を利用できたかは疑問だし…)
なぜ、雅美さんは鉄を使うのを恐れているのでしょうか。
(もちろん、武器として利用できるからよ。連邦世界だとアマゾン川を最初に探検したのはスペイン、続いて入植や開拓に手をつけたのはポルトガルという歴史があります。そして、スペインとポルトガルは南米における植民地を取り合うのではなく何度かの条約を結んでどちらがどちらのものにするかを決めたんだけど…最終的には1700年代後半のマドリード条約でブラジルはポルトガルのもの、とされました)
そして、なぜ、ポルトガルはブラジルに遷都したのか。
(ナポレオン時代にポルトガルはスペイン独立戦争に巻き込まれました。で、イベリア半島の覇権を巡ってスペイン・ポルトガル・イギリス連合軍とフランスが戦ったんだけど、戦乱を恐れたポルトガル王家はブラジルに逃れたのよ。ただ…この件が尾を引いて、のちのちに現地にいたポルトガル王太子を君主に抱くブラジル帝国を建国する動きに繋がっちゃったけどね)
はぁ…揉めてたんですね。しかも、スペインってナポレオンの前までイギリスと戦争してたんじゃないですか。
それが、手を結んでいるのですからまさに欧州事情は複雑怪奇といったところでしょう。
そして、連邦世界では南米に押し寄せた欧州各国が持ち込んだ伝染病、そして一部の征服者による絶滅侵攻のせいで、原住民の皆様は大きく数を減らしています。
その代わりにアフリカから持って来られたのが黒人奴隷。
連邦世界のブラジルやカリブ諸国、そして南米北部に黒人系の住民がいらっしゃる理由はこれだそうですね。
で、痴女皇国の政策…もっと言うと、姉の構想では重罪人に対する刑罰として、あえて被差別人種を作ろうとしています。
そう…痴女種に続く第四の性別とでも言うべき、偽女種族です。
(で、偽女種については変更がある。人類女性を妊娠させた場合、偽女種か女が生まれるようにした)
はぁ…ってねーさん! それ、偽女種の方が繁殖する…あるいは出来るということでは?
(もちろん、そのためだ。ジョアン陛下に今、お伝えしておくけど…ポルトガル王国は偽女種の国として、スペイン王国に従属して欲しい。これは、諸子宦官国とバスク州にも伝えている。種族絶滅を行わない代わりに、スペイン…ひいては痴女皇国に逆らう者がいれば偽女種化する尖兵になってもらうことで独自の文化や自治を安堵させてもらおう。それと…聖母教会での助修士は修練士を経て修道士を目指させているけど、全てが修道士になれない可能性がある)
ああ、落ちこぼれる人が出る可能性、シェヘラザード神学部長も申しておられましたね。
(で、男性修道士への道を進めなかった助修士たちは今、偽女種状態のままだろう。彼らはこのままだと難しい立場に追い込まれるだろうから、聖母教会に仕える用人として生活を安堵してやろうというのが、毒盛りの兄貴から出してもらう予定の勅令だ。ああそうだ…用人と言えど聖職者だからね。で、ポルトガルの立場を、偽女種化した罪人を植民奴隷または聖職奴隷化する聖列国家として認めることで聖母教会がその存在を安堵しようって筋書きだよ。ジョアン陛下、どうだい?)
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