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アメリカ縦断ウルトラ耐久研修ツアー・6
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まだ暗い未明の海…闇と言っていい海原に乗り出すスケアクロウ。
副操縦席の窓から手を振るマリアリーゼ陛下に応える我々。
少しだけ浮き上がったスケアクロウ、高空に舞い上がる為の準備らしいのですが、しゅしゅっと翼を動かしているのがうっすらと見えます。
そして、翼が上下2枚ずつの組になった地上での姿から、細長い翼を広げた独特の形に変わったスケアクロウが、これまた特徴的な甲高い音をかすかに響かせて上昇して行きます。
ここは、ナッソー港の外れに近い波止場…海上に着水したスケアクロウが、海との行き来の為に使う坂道と、その先にある駐車場…みたいな場所の近くです。
我々は今日、ハバナの港に向かい、その足でキューバ島を視察します。
と言っても、なかなかに大きい…日本の本州の半分くらいはあるキューバ島。視察にはそれなりの時間を要するとあって、現地滞在はおおむね1週間を予定しています。
ではここで、痴女島そのものの面積は痴女皇国の機密事項らしいので、代わりに連邦世界ではほぼ同じ位置にあるボルネオ島とキューバ島、そして他の場所との面積を比べてみましょう。
ボルネオ島 743,300 km²
茸島 5,780 km²
四国 18,800 km²
北海道 83,450 km²
本州 228,000 km²
キューバ島 110,900 km²
グリーンランド 2,166,000 km²
イベリア半島 583,300 km²
フランス本土 544,000 km²
グリーンランドの大きさは桁違いにしても、なんと、キューバは日本の本州の半分程度の面積があるそうです。
連邦世界では1,100万人程度の人口が住むのもうなずけます。
しかも、もっと大きいけれど、北極圏に存在していて厳しい土地で人口増加を拒んでいるグリーンランドよりもキューバは気候的には安定しています。
北極圏の森林限界より上の緯度にあるグリーンランドよりも、はるかに住みやすいのは間違いない赤道地帯に近い場所にありますから、産業や資源、人口の条件が揃えば日本の1/3~1/2くらいの国力があっても不思議ではないでしょう。
つまり、まだまだ増える可能性があるのです…。
それと、ボルネオ島って結構、大きいんですね。
この大きさの大部分が未開発というのが何かこう、もったいない気もします。
(確かに大きいんだけど、島の大半が山と密林だろ。そして痴女島はボルネオより少し小さい上に、島のど真ん中に聖院湖が存在するからな…人が利用可能な土地の面積は茸島のそれと大差はないんだ…おまけにあの雨だろ…良かれ悪かれ雨で地面に積もったり溜まった栄養分の一切合切が海に流されるから案外、土地が痩せてるんだよな…)
ええ、茸島開発に注力している理由でもあるそうですね、痴女島またはボルネオのとんでもない年間降雨量…。
なにせマリアリーゼ陛下いわく「痴女島切り開いて水田作るよりもさ、茸島で米作る方がはるかに手っ取り早いのよ」だそうですから…。
さて、昨晩は色々とありましたが、サリーさんとシェリーちゃんには、ベラ子陛下と親子三人で過ごしてもらいました。
うちの父が作ったパエリアの大鍋を、皆で分け合う夕食の後、我々は我々で親子の時間を取る必要があると私が強硬に主張。
(ティアラちゃんがあたしを避ける口実にしている気が)
(うちの父母の親睦を深めたいところですし、更には今後は事実上の養子として海賊共和国に預けられるうちの子たちを養母役に引き合わせる必要もありましたから…)
(ベラ子陛下いやベラ子ねーさん。私とシェリーを避けているのはねーさんのほーでは? いくらシェリーが聖院の子だと言っても痴女皇国皇帝の実子でしょーがぁっ)
(あひぃいいいいいいい)
で、一旦は聖院世界に帰投することになった菅野しほ子さんと入れ違いに着任したサリーさんが、キューバの精気授受事情、私たちと共同でまとめた後で聖院に報告する立場になるそうです。
そして、茸島から呼びつけられたリンジー局長や、同じく本宮から呼びつけられた田中局長を乗せたスケアクロウ、しほ子さんを聖院に送りのリンジー局長を茸島に送りのした後で、マリアリーゼ陛下とベラ子陛下、そして田中局長が痴女島の聖院空港に戻すとか。
転送で行けばいい気もしますが、スケアクロウだと精気を消費しないという利点があるそうです。
あと、あの飛行機は一定期間の間、飛ばした実績がないと免許取り消しになるとかいう恐ろしい制度が存在するそうでして、関係者の飛行時間とかいうものを稼いで免許失効を防ぐためにもちょうどよいらしいのです。
で、本当ならばキューバに送ってもらおうかという話があったのですが、私が主張して船での移動となりました。
なぜならば、昨日話題に出たナッソーの聖母教会、そして建築を予定されている娯楽館の集客問題。
ナッソーへの集客を考えるためにも、現状の交通機関とその利用実態を把握したい。
確かにアレーゼ様のお馬のこともありますし、スケアクロウで行けば早いというのは私にもわかります。
ですが、ここは現状のナッソー利用者の視線でものが見たい。
私のこの主張が、マリアリーゼ陛下と田中局長の同意を得ました。
で、ベラ子陛下に現状の中米支部の抱える諸問題を直接全て見て頂く事は困難になりましたが、そもそもこの辺り一帯はアレーゼ本部長の所轄。
その本部長が傍にいらっしゃるのに、殊更陛下のご臨席が必要あるかと言われますと、その。
(マリアヴェッラには昨夕のあれで充分だろう。それに、私とアルトで島の集落を巡った分の報告があるから、それと併せてティアラの課題を仕上げれば良いと思うぞ?)
こうまで言われては、ベラ子陛下もスケアクロウの乗員問題もあって、痴女島に戻らざるを得なかったようです。
それに、スケアクロウは北方帝国攻略戦に向けて稼働する予定らしいですから…。
では、キューバに向かう我々はどうやって行けばよいのか。
その答えとなるお船、目の前にあります。
帆を張るためのマストがいち…に…さん…。
(3本マストの第一級戦列艦改装船ですわね。もっともこのロイヤル・フォーチュン二世号は貨客船として新造されたもの。そして海賊共和国の旗艦ですが運航はバーソロミュー&ロバーツ商会と合同で行い、ナッソーとハバナ、そしてフロリダを結ぶ用途で主に使用しております)
すらすらとお答えになるジャンヌさん、さすが。
で、このRoyal Fortune 2nd…ロイヤル・ソブリン級という量産された汎用貨客船の一隻だそうですが、この船名、実はティーチさんの先輩海賊で人生の師匠…とまでは言い過ぎかも知れませんが、ティーチさんの海賊人生や思想に多大な影響を及ぼしたバーソロミュー・ロバーツさんが海賊行為で船ごと戦利品として分捕って乗っていたお船から取ったお名前だとか。
あと、汎用貨客船という名前になってますが、実際には船体左右一箇所ずつに隠してある収納式の機関砲というのですか、結構強力な武装が積まれてます。
これは、本来ならこのロイヤル・フォーチュンと一緒に航行する輸送船団を護衛する目的で積んだ砲だそうですね。
「この砲1門だけで百門級戦列艦に匹敵する火力が見込まれるのは、試射の際にこの目で拝見いたしました…。しかも射程は遥かに長い上に、狙いが正確とあっては、仮に海賊どころか他国の艦隊が襲ったところで返り討ちは必至でしょう」
引き続き、中米支部視察に同行頂けるという復讐公女ジャンヌさんの解説を頂きます。
そうそう、ジャンヌさんの制服について。
痴女皇国海事部または紺碧騎士団に所属する方は、元来は水中活動を考慮したセパレート型ウェットスーツか本格的な潜水用のドライスーツを着るようですが、ジャンヌさんは海賊騎士団長。
で…乗船時の服装ですけどねぇっ。
ええ。ベッタベタの海賊っぽいお姿。
天の声という人に解説を頂くならば「ほろらいぶのまりんちゃんというよりもぐらぶるのくりすてぃーなからみにすかーとはずしたようなかんじ」だとか。
はい…まぁ、痴女皇国の制服ですから、お尻は剥き出し、これは仕方がないでしょう。
そして、ちんぽ柄のカットラスという短めのサーベルを腰に提げておいで。
あと、べれったM92Fとかいう拳銃を2丁。
これは吸引銃ですね。痴女皇国の騎士であればあまり必要性を感じませんが、お洒落装備と思えばよいでしょう。
ええ。
そのもへもへっとした豊富な金髪といい、もうこれでもかと言わんばかりのベタな女海賊姿であると、私ですら思いますよ。こんな海賊はゴム人間のお話ですら貴重品ではないでしょうか。
しかも紺碧騎士団のスーツが海賊服のジャケットの下の姿ですよ。
(あれ? これはあたくしのとちがいますね…)と申されるのはアルトさん。
今回も我々に随伴して、南米視察の際の補助護衛役という名のアレーゼ様による特訓指導をお受けになる模様。
まぁそれは良いとして、アルトさんも紺碧騎士団の服に瞬間更衣なさいます。
で、アルトさんのはセパレートスーツ。
このセパレートスーツ、海中での視認性を上げるためにちょっとした仕掛けがいくつか備わっているのを知っております。
逆に、秘匿行動を助ける装備もあるようですが、とりあえず夜間は裁断のゴム部分のパイピングが蛍光色に発光します。
更には、襟のところから海中限定で夜光虫のような微生物を分泌して着用者の体にまとわりつかせてくるのです。
実際にこれ、茸島分校の全員と、聖院学院本校の生徒でキノコ狩り実習班に抜擢される場合は必ず水上・海洋活動研修と言う名の水泳授業を受けるんですけど…その際に教員役の紺碧騎士がどこにいるか、生徒に発見されやすくするための装備なのです。
はい…水泳は本校生徒でも最終的には全員、やらされます。
ええ、私たち白薔薇三銃士も経験しました。
特に、痴女島の本校から実習船のエルトゥールル号で渡って来る生徒たちは、万一の沈没に備えた訓練として浮き輪や救命具を使っての漂流も実習内容に含まれます。
で…紺碧騎士団の方が救助員として活動なさるのですけど、その際にこの蛍光機能を使うんですよね…。
今、正にアルトさんのセパレートスーツも名前のところや…そう、ビキニボトムとフロントのブラ部と背面部に蛍光色で名前が浮かぶようになっています…青地のスーツ生地のところどころにあしらわれた白いアクセントラインですとかパイピング部が光っています。
(海賊騎士団の制服の中に着込んでる水着はハイレグTバックワンピース競泳水着風オープンホールタイプだ…かつて原宿に存在した水着屋オリジナルの22007というモデルが一番近いらしい…)
まぁ、マリアリーゼ陛下の説明はともかくとしまして。
この制服は、息子のエンリケ他にも好評でした。
なぜ、好評なのがわかるのか。
昨晩、養母役の3名と引き合わせた後の一部始終、知っとるからです。
(こちらも精気を渡して回復に努めさせて頂きましたが、それにしても何回致したのでしょうか)
ああ、強制絶倫状態にしたのですね。
うちの息子の息子を気に入って頂いたようで何よりとは思いますが、そんな思考を私の年齢で出してしまうことに恐怖を覚えもします。ああ、恐るべきは痴女種の知識共有。
そして、昨晩の頑張りを見せていたのはエンリケだけではありません。
ええ、残り二人も。
あまりの性欲の発散ぶりに、私もついカルロータとカルメンシータの穴を借りたくらい…何を言わせんですか。
ともかく。
ピオ君もカルロ君も、エンリケと共に海賊共和国で育つ予定です。
すなわち、海の男として聖院学院中米支部ナッソー分校と名付けられた学校の初等海洋部に入学する措置となるようです…ここの教師の方々、本校の福祉女官経験者かつ海洋生活慣れしているか、元・海賊関係者が選ばれています…。
そして、将来を嘱望された少年として、他の男の子たちと同様に島の女と仲良くする事が義務付けられました。
(言ってみればクラブジュネスで修練士少年が踊ったり女官の相手をしてるだろ、あれよあれ。聖院学院の特色でもあるけど、初等部または福祉部入学と同時に童貞は捨てる事になるからな…)
そうですね…聖院学院の男子生徒は「せんずりのやり方は知っているけど、女官に指示されない限りは勝手にやってはならない」立場です。
いえ、もっと明確に言いましょう。
せんずりする必要なんてないんです。
毎日、最低一発は絶対にまんこしますから。
普通なら不純異性交遊ですが、そもそも聖院学院自体が修学宮の福祉部門として孤児たちを集めて少年の元気なチンポから精気を余さず頂くための施設を発展させたものです(と、教わっています)。
その分校でも、精通を終えた年齢まで即成栽培させてでも成長させた少年たちを女と席を同じくせずに置いておくのか。
んな訳はありません。
もう、まんこの機会がない方にはその詳細をお伝えするのが不憫に思えるほどのまんこ漬けの毎日なのは、茸島分校や本校福祉部のエピソードでも明らかでしょう。
そして、ピオ君もカルロ君も、更にはエンリケもですが、中米支部の男性幹部として将来を嘱望され、それなりに育ててくれとオマリー陛下に依頼されている身の上です。
専属の女騎士を指導役につけるそうです。
そう、日焼けお姉さんと同居。
もう一度申し上げます。
日焼けお姉さんと、同居。
で、ジャンヌ団長。
隣のエンリケはいかがですか。
(過ぎた馳走ですわね。しかも、海賊共和国を中米支部として充実させる前提でオマリー陛下の許可を頂けるのであれば、汎用卵子とやらに限られはするものの、エンリケ様の子種で孕めとも…)
(で、それは良いとして必ずエンリケ「君」でお願いしますよ…増長させちゃダメですからね…ちょっと不良な剛腕女海賊お姉さんの役柄で)
我々は何を打ち合わせておるのでしょうか。
そう、ジャンヌ様はエンリケの乳母…というよりは同居お姉さん役なのです。
そして、これは私もオマリー陛下も、更にはイザベル陛下も納得の処置です。
と申しますのも。女であろうと男勝りを要求された海賊の世界です。
お色気には疎い部類の方々が揃ってるのです…。
で、この辺のカイゼン、将来のエロリゾート化には絶対に必要と言う事で、海賊騎士団きってのエロエロお姉さんとして知られたジャンヌさんに白羽の矢が立ったそうでして…。
アン・ボニーさんやメアリー・リードさんが陸に上がって行政公舎勤務中心の立場になったのもありますけど、アアンさんやメアリーさんではなく、ジャンヌさんが騎士団長をお勤めになる必要性が今の海賊共和国にはあるのです。
ですから、海賊騎士団の制服は紺碧騎士団ほど頻繁な水中活動を想定していないこともあって、見た目を優先したすけべデザインにしたと、考案者のマリアリーゼ陛下にお教え頂きます。
(でな…ジャンヌさんの襟元とか水着の胸元にびっみょーにレースとかあしらってるじゃん…気づいた?)
(もちろんです。一般の海賊騎士団員との差別化は明確に理解可能です)
(よし…どうしても、海に入る可能性も考えてあんまりレースとかフリルとか露骨に採用できなかったんだよね。男の子たちの反応もいいけど、もし色気のカイゼンが必要なら言ってよ。あ、これあたしだけじゃなくて雅美さんもデザイン案出したり決定仕様に噛んでるからな…)
(それで、股間部の裏張りがないんですね…普通は水着縫製ならつきますよ…濡れてなくても下手したらまんこ透けたり形まるわかりじゃないですか…)
(雅美さん曰く、それがいいらしい。あと海賊騎士団だけに強そうなのばかりだろ。如何にエロくても、迂闊に口説けばカットラスか鉛弾でお話が出来るようなコワモテっぽい雰囲気も欲しいと強硬に主張されてな…)
(まぁ、私を口説く男がいればそれはそれで貴重な存在ですわね。半殺しや全殺しという意味ではありませんが、教会送りにいたしますけど)
この教会送りというのはナッソー特有の懲罰でして、かつて、女にうつつを抜かしすぎた男はドレインで死ぬ直前まで吸われた処置の名残りだそうです。
つまり、教会送りという罰。
文字通り教会に送られ奉仕活動としてこき使われた挙句に、これまた言葉通りに搾り取られることになるのです。
(今は以前よりはこの島の女不足も多少は改善されましたので、そこまで過激な罰に走らずとも問題がないようにはなっております)
ええ、どっちかと言うと女の人、少なかったのです。
海賊全盛期時代はそれはもう、売春宿に酒場にと色々な店が開かれていたそうですけど、
(ただ…ティアラ様、エンリケさま…エンリケ君は従順で私をジャンヌ先生と思ってくれておる様子。なるべく変な癖をつけぬようには致しますが、ついついちんぽを貪ってしまいますのは何卒ご勘弁を…)
ええ、昨晩は敢えて男児三人とも、担当の「海賊のお姉さんたち」と過ごさせました。
このお姉さんたちの愛玩用ショタチンポとしてまずは認められよ。
私の茸島実習生活の記憶経験知識から動員した、向こうのショタホストとしての優等生たちの姿を余すところなく学習させた上で、私たちは海賊騎士お姉さん3名に我が子たちを預けたのです。
そのこころは、この海賊島にエロの空気を徐々に醸成させるため。
いわば、茸島状態に持って行きたいのです。
もっとも、急にやると絶対に反発が出る話でしょう。
ですので、ショタを連れ回しデレてる姿を目撃させて野郎どもの羨望の視線を集める。
そして、罪人寮居住者に対する女官の接し方が標準であるように、時間をかけて島をエロくしていこう。
私はそう、考えております。
それとですね、茸島での本宮女官による買春実績と実態、この中井ティアラは余すところなく知る立場です。
すなわち、ショタ買春の極意も。
おわかりでしょうか。
エンリケたちの実質的な筆下ろし役は海の女に頼みたい。
海の王子としての未来を嘱望された子たちなのですから。
そして、騎士と並んで、男よりも男らしい海の世界とは存じますが、世の一部女性と男性をやきもきさせるショタ展開。
これを海賊島のみならず、船による往来が不可欠な中米地域での海事担当女官のお楽しみとして提供したいのですっ。
(聖院でそういうことをするかはともかく、そのモチベーションは見習いたいわね…)
(サリーおかーさま。それ以前に聖院は痴女皇国ほど海運に積極的に介入してはおりません…)
まぁともかく、乗船の準備が出来たというので、まずはアレーゼ様から…と思ったのですが。
(マツカゼを乗せるには私が手綱を引く方が良いだろう。アルト、君から乗ってもらえ)
(まぁ、このなかではわたくしがにばんめにえらいさんですねぇ、つかれるほうで)
アルトさん…。
よほど昼間の駆け足視察がこたえたのでしょうか。
いえ、白金衣を着ておられましたし、島の周りを巡る道の通行も皆無ではありませんから、無茶はしていないはずなのです…。
(いや、以前に痴女宮で見せた余興の賭け事でアルトはマツカゼに負けたんだよ…で、アルトが再戦を申し出て、海賊酒場に昼食を摂りに来ていた連中も乗り気になって、島の中央にある湖の水を汲んでくると言う話になってな…)
(その様子では、途中でこけたか桶を落としましたね)
(大当たりだ。で、居合わせた全員の昼食代をアルトが持つ事になって…)
ここのお昼、確か…豪華な方でも300円から400円くらいのはずですよ。億単位の貯金があるとはお聞きしていますし、何よりこう言う時に気前よく払うための特別報奨金でしょう…。
(あああああ、てぃあらちゃんがきびしいのです…)
(まぁ、アルトが聖院時代ならそもそも厳しかったが、ここは海賊共和国だからな…アルト、経費で落とせるかどうかはマリアに相談しろ…)
ええ、アルトさんが持ちかけた話らしいので、自業自得でしょう。
とりあえず、今からお船に乗る面子ですが。
あれーぜ
まつかぜ
あると
じゃんぬ
ろーた
しーた
えんりけ
かるろ
ぴお
てぃあら
以上、8名と1頭になります。
(あたくしたちの名前が…)
(あたくしはうまいかあたくしはうまいか)
では、馬以上なのをキューバで証明頂ければ。
本当は私が一番に末席を務めようと思っていたのですが、仕方ありません。
皆を先導するジャンヌさんに続いて、アルトさんを引きず…いえ、手を取ってエスコートしながら板の坂道を登ります。
この板、ダンケ号を甲板に積み込む時にも使うの、別のお船で見ていますから、それなりに頑丈な作りのはずですが…お馬さん、大丈夫ですかね。
(心配いらんよ。私が側にいる時は重力軽減の技を使うしな)
おお、凄い。
確かに、先に上がらせて頂いた身で船上から見ておりますと、どう見ても2トンくらいはありそうなお馬さんなのに、板の道を上がる時にきしみ音がしません。いえ、足音すらも。
この板…高級フローリングと同じで、木材の向きがーーーじゃなくて|||で張り合わせられてますけど、それでも凄いですよ。
(この技、アルトやダリアもちろん…マリアヴェッラも使えるはずなんだよ。ダリアは特に黒薔薇騎士団での活動があるから得意なようだがな)
えええええ。何か、使っておられるような使っておられないような。
ベラ子陛下、確かに動きはめちゃくちゃに早いんですよ。ただ、茸島での戦闘演習や例の通勤マラソン片道2時間のあれの時、地面に足跡がついてるんですよね。
(苦手なもんは苦手なのですっ)
(陛下。差し出でがましいようですけど、操縦に専念なさった方がいいと思います。それと、アレーゼ様がさっきおっしゃった件ですね、なぜ広大な米大陸を侍従お一人と馬1頭だけで制覇制圧なさったのか、その件について伏線とやらがあるようなのです…だから今はちょっとお静かに。なさらないと、去年の健康診断は時間ないからって茸島分校でお受けになられましたよね。あの時の基準体型の身長と体重のデータ、流出しますよっ)
(えええええ)
(いくら痴女種が体型変更できるって言っても、不摂政や訓練鍛錬不足を指摘するためにも基準体型での測定はきっちりやられるじゃないですか…私も受けたんですから。それと、逆脅迫を防止するために敢えて私は自分の身長が162cmで体重48kgというのをバラしておきますっ)
(ちょっと待ったティアラちゃん…確かベラ子のデータ、健康診断でイエローかレッドシグナルが出てたな…罪人も含めてイエローシグナルやレッドシグナル、つまり持病や疾患などで注意や警報が出た人物の健康診断カルテは黄色や赤のタグがついて、名前がリスト化されて厚労局と所轄部局の上長に送られるんだよ…ベラ子、何で12月の健康診断でBMI20超えしてやがる! まだモチ食ったデータ載ってねぇ時期だろ!180の69で20超えしてるじゃねぇか…)
(ねーさん、何をバラすのですか!)
(あたし擬態解いたら180の60だったからな。で、ババ…ジーナかーさんもこの数字にこだわってるからNBで受けてもらった健診だと同じ数字が出てる。ちなみにあたしは普段の擬態じゃ165の50が基準値だ。読者の方はこれで適正体重値を計算すると大体の体型を想像してもらえると思うんだけど、ベラ子…おめー、今度はイタリア料理抜きどころか3食和食だな…)
(ちなみに私は…本当は190の70なんだが、マリアの女らしく見せるという話を受けて180の61を保つようにしている。まぁ、婢女やマリアヴェッラの被服製造データを流用するためでもあるようだが…)
(で、ここだけのおはなしですが、マイレーネさまはアレーゼさまよりさらにおおきいのです…かつて聖院で女官ちょうをしていたとき、ぬいだら女官がおそろしさのあまりにたおれただけはあ…もごごごご)
(アルト。お前…これ以上マイレーネさんに睨まれたくなかったらそれ以上はやめとけ…おばさま、マイレーネさんの身体データ漏洩防止、感謝します)
え。
何かあったのですか…まさか、脱いだだけで目撃した女官が死んだとかいうお話なら聞いた事、あるんですけど。
(伝説の脱ぎ殺しだな…ちなみにアルトは銀衣騎士時代に書類を読まれただけで気絶した。で、読み殺しってのをマイレーネさん伝説に1ページ追加してやがんだよ)
はぁ。
まぁともかく、船長や乗組員の半数が交代されたり、我々の後にも何かしら乗り込んだり積み込まれたり降ろしたりとやっていたロイヤル・フォーチュンですが、1時間ほどの寄港の後で係船索を外して岸壁から離れる模様。
貴賓室の使用を断って、お馬さんの側におられるアレーゼ様ですが、男の子3名はさっそく、ちょっとしたお仕事があります。
それは、いわゆるロープワークといわれる、縄を扱う作業。
この縄さばきや結び方が船乗りにとって重要だと言うのは私にもわかります。
で、ジャンヌさんの監督の下で船員さんたちについて教わるそうです。
この縄仕事を覚えないと、船員として次の重要ステップ…手動での伸帆・縮帆作業に関われないそうですから。
おまけに、このお仕事は簡単にズルをして手助けする事が出来ません。
あくまでもエンリケならエンリケが、自分の頭と身体で覚えなくてはならないのです。
(ひもになるのはかんたんでも、ひもをむすぶのはたいへんなのですね)
アルトさん…それ、ひもの意味が違います。
あと、痴女皇国関係者でヒモって飼ってるような人、いましたっけ。
(それが面白いものでな。クレーゼの代ですら、女に養われる男はいなかったんだよ)
ふむふむ。というと、アナ様のような事をするのはダメダメだったのでしょうか。
(いや、完全に女官なら女官の稼ぎに依存するような男は存在しない。これも聖院規範に基づくのだが、働かざるものは食うべからずという日本のことわざと同じ意味の記述があるんだ。聖院は不労を求める者を欲せず、ということだな。アルト)
(はい。アレーゼさまが言われるとおりで、聖院ではどんなひとでもはたらかされたのです。こどもは大きくしますし、てあしをなくしたり目がみえないかたやみみが聞こえない方、しゃべれない方はちりょうします。もともとのせいがんしょはまさに、そういうこまったかたが来たときにおなおしするためのうけつけだったのですよ)
(更に言うと、働く意志をあまりに見せない場合は性根を入れ替える…痴女皇国流の言い方だと人格抹消だな。これをすることは殆どなかったが、聖院一千年の歴史上、全く皆無でもなかったんだよ)
(え。と言う事は)
(せいいんにきて、からだをなおしてくれという場合、わたくしたちはだいしょうをもとめたのです。ただ…それはおかねではなく、おしごとをてつだうこと。そして、罪人としてはたらいてもらうことになりました)
(ただし、事情で罪人の道を選んだのだから、本当の意味での罪人の扱いではないよ。私が銀衣の時は…そうだな、事情罪環の色は鉄または銅で始まっていたな)
要は、皆さんのお話では全く働かない男はダメ。
それどころか矯正の対象になると。
まぁ…女官でもそうなのですよね。
今更申し上げるまでもなく、寿命が近づいた時以外に、女官の健康を害するものは存在しないと言ってよいでしょう。
せいぜい、百人卒未満だと年に1~2回、通常の人類女性同様の女の子の日を経験するくらいなのです。
(女官になると身体機能の維持目的以外で生理が来なくなりますからね…生理休暇を与える必要も取る必要も極めて少なくなってしまうんですよ…)
ちなみに聖院学院でも同じく、無断欠席はもとより病気やケガによる欠席や休学は基本、ありえません。
治されるか、はたまた「そもそも病原菌に犯されない」のです。
(ちんぽでおかされることはあってもびょうきに侵されることはないのです…)
で、ここで私はアルトさんをじろ、と見ます。
ええ。駄洒落菌ではなく、根本的にこの人は下ネタ大好き。
はるかに上位の方なので思考こそ読めませんが、私の脳が確定的に判断を下すのです。
この人の不真面目さも、可能なら視察中に治療しておく方が痴女皇国のためになる気がします。
(それを罰すると、痴女皇国のほぼ全員を罰する気がします…)
(ベラ子へーか。私は敢えて提案します。アルトリーゼ閣下は仮にも将軍。例え皇帝陛下と同じでお飾りと言われようと閑職と陰口を叩かれようと、皇帝は皇帝で将軍は将軍。おのおのの官位役位にふさわしい振る舞いをしなくては、臣下がついてこない可能性があります)
(えええええ!)
(あたくしは真面目にやっております!)
(ほんまやろなソレと関西弁に毒されつつある私の脳はまだしも、うちの息子たちが必死で真剣に縄使ってるのに皇帝はエロ会話で将軍は下ネタ。いくら痴女皇国とは言っても、そんなことばかりしていてはしまいに聖院体制に戻されても知りませんよっ)
この瞬間、あちこちでやめろとかやめてとかあんぎゃあああとか、阿鼻叫喚が渦巻く状態になりました。
…皆さん、どんだけぬるま湯に浸かってるんですか…。
アレーゼ様。今、反対の叫び声を上げた方々、リストアップしてよろしいでしょうか。私では全員を追い切れません。
(私が出来ますよ。というか、叫んでない人から数えた方が早いですね)
冷ややかな顔と目をアルトさんに向けるサリーさん。
(ティアラさん。敢えて言いますが、初代様が叫びました。それと…二代目様と田野瀬さんと玄奘さんとハリティリーネさん…要は文教局の方々ですね。あと、本宮ではアフロディーネ女官長とペルセポネーゼ黒薔薇騎士団長くらいです、叫ばなかったの…)
(聖院マリアです。ティアラさん…気持ちはわかる、わかるのよ。特にあなたは今、母親の自覚を持ちつつあるから人の不真面目な姿を子供たちに見せたくないのはわかるわ…けれど、痴女皇国を矯正するのはあたしでも骨の折れる仕事なのよ…)
(エマニエルですけどね…聖院マリアさん、ええ、うちのマリアねーさんも矯正対象っすね…)
(白マリだって矯正されるべきだろ! お前もなんだかんだで駄洒落や下ネタ会話大好きじゃねぇか!)
で。あちこちで醜い争いの心話が飛び交う中、アレーゼ様から密かに話が。
「ティアラ…君の気持ちは分からなくもない…これがあるから、しほ子の教育は私も注意を払っていたんだ…だが、マイレーネですら「痴女皇国についてあまり干渉すると、もはや潰瘍や胃炎とは無縁なはずの私の胃が痛みを覚える気がするのです」と言うんだ…ああ、私だって人の希望の芽を摘みたくはないから、ティアラの頑張り次第だとは言っておく…」
ええ、とても大きな悲しみを湛えた視線を向けられました。
アレーゼ様であっても矯正は困難である、と。
しかし、私は諦めたくはありません。
真面目な話をしてんのに茶化すな。
この、単純な要求すら聞き入れてもらえないならば私は真剣に怒ります。
更に言うならば、うちの息子たちが真面目に縄で縛ってんのに。
縛りますよ、厳粛路線に反対した皆さんを。
(一部で喜ぶ人が出そうな気がします)
そういうところですよ、陛下ぁっ。
ともあれ、私には遠大な課題が出来ました。
真面目にやるときはちゃんと真面目にやろうよ。後継や後輩のためにも。
こんな当たり前のことを、ちゃんとできる人と国にする。
この誓い、容易く折れてはならないでしょう。
特にベラ子陛下。私も縛り方を覚えますからね。頑張って皇帝の威厳を維持できるように努力なさってください。
…でないと本当に亀甲縛りにして痴女宮の正面玄関前に飾りますからね!
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べらこ「名指しはやめてください!」
てぃあら「お言葉ですが陛下。脳内で駄洒落菌が増殖した回数、カウントしましょうか?」
べらこ「ううううう」
てぃあら「とりあえず、私が米大陸周辺にいる間だけでも努力してくださいよ…」
黒マリ(なぁ白マリ…ティアラちゃんって、もしかしてオリューレより真面目な部類…)
白マリ(マイレーネさんと言うよりは、学級委員長タイプになりそうな予感がするわね)
黒マリ(白マリ、あんたもあたしも出どころは同じだ。つまり、関西人思考に脳をやられたロシア人と、ノリと欲望と力技で聖院統治をやってきた金衣の娘だろ、お互い…綱紀粛正にも程度があると思わねぇのかよ…)
白マリ(聖院は真面目にやろうと思えばできるわよ!痴女皇国が努力すべきなのよ!)
黒マリ(そっちのジーナかーさんがいなきゃあたしは合意した。あんたとこのおばはん、一時的に痴女宮で預かって本宮24階のペントハウスに住んでもらったことあったろ…)
白マリ(それの何がダメなのよ…あー…)
黒マリ(痴女宮への順応性は異常に高かった。つまり、かーさんから矯正しないと聖院でも同じ事が起きると思うぞ。あと初代様はそっちもこっちも共通だろうがよ…)
白マリ(初代様の矯正は…確かに難しいわよね)
黒マリ(加えておかみ様だ。あの人こそどうすんのさ…)
白マリ(とにかく、この問題提起は痴女皇国世界でティアラちゃんが始めた事でしょっ。黒マリサイドでなんとかしてよ!)
黒マリ(こらぁっ逃げんなぁああああああ!)
さりー「ティアラさん。気持ちはわかるんだけど、本気でやるなら百年はかかる。私もそう思います」
てぃあら「忍びに忍んででも目的は果たします。ネタ根性や関西芸人の受け狙い精神は死すべきなのです…」
べらこ(ねーさん…何とかしないと我々もふざけてられません…)
黒マリ(ふざけるのが正義かどうかはともかく、ティアラちゃんを大人しくさせる方法はある。要はエンリケ君たちが親の心配を跳ね返すほどちゃんと自立してくれれば、自然に教育ママとか毒親思考は止まると思うんだがよ…)
べらこ(やはりあたしは米大陸視察に同行すべき。スケアクロウをハバナに向けようと思います)
他全員(…それこそが一番のヤブヘビ行為や!)
副操縦席の窓から手を振るマリアリーゼ陛下に応える我々。
少しだけ浮き上がったスケアクロウ、高空に舞い上がる為の準備らしいのですが、しゅしゅっと翼を動かしているのがうっすらと見えます。
そして、翼が上下2枚ずつの組になった地上での姿から、細長い翼を広げた独特の形に変わったスケアクロウが、これまた特徴的な甲高い音をかすかに響かせて上昇して行きます。
ここは、ナッソー港の外れに近い波止場…海上に着水したスケアクロウが、海との行き来の為に使う坂道と、その先にある駐車場…みたいな場所の近くです。
我々は今日、ハバナの港に向かい、その足でキューバ島を視察します。
と言っても、なかなかに大きい…日本の本州の半分くらいはあるキューバ島。視察にはそれなりの時間を要するとあって、現地滞在はおおむね1週間を予定しています。
ではここで、痴女島そのものの面積は痴女皇国の機密事項らしいので、代わりに連邦世界ではほぼ同じ位置にあるボルネオ島とキューバ島、そして他の場所との面積を比べてみましょう。
ボルネオ島 743,300 km²
茸島 5,780 km²
四国 18,800 km²
北海道 83,450 km²
本州 228,000 km²
キューバ島 110,900 km²
グリーンランド 2,166,000 km²
イベリア半島 583,300 km²
フランス本土 544,000 km²
グリーンランドの大きさは桁違いにしても、なんと、キューバは日本の本州の半分程度の面積があるそうです。
連邦世界では1,100万人程度の人口が住むのもうなずけます。
しかも、もっと大きいけれど、北極圏に存在していて厳しい土地で人口増加を拒んでいるグリーンランドよりもキューバは気候的には安定しています。
北極圏の森林限界より上の緯度にあるグリーンランドよりも、はるかに住みやすいのは間違いない赤道地帯に近い場所にありますから、産業や資源、人口の条件が揃えば日本の1/3~1/2くらいの国力があっても不思議ではないでしょう。
つまり、まだまだ増える可能性があるのです…。
それと、ボルネオ島って結構、大きいんですね。
この大きさの大部分が未開発というのが何かこう、もったいない気もします。
(確かに大きいんだけど、島の大半が山と密林だろ。そして痴女島はボルネオより少し小さい上に、島のど真ん中に聖院湖が存在するからな…人が利用可能な土地の面積は茸島のそれと大差はないんだ…おまけにあの雨だろ…良かれ悪かれ雨で地面に積もったり溜まった栄養分の一切合切が海に流されるから案外、土地が痩せてるんだよな…)
ええ、茸島開発に注力している理由でもあるそうですね、痴女島またはボルネオのとんでもない年間降雨量…。
なにせマリアリーゼ陛下いわく「痴女島切り開いて水田作るよりもさ、茸島で米作る方がはるかに手っ取り早いのよ」だそうですから…。
さて、昨晩は色々とありましたが、サリーさんとシェリーちゃんには、ベラ子陛下と親子三人で過ごしてもらいました。
うちの父が作ったパエリアの大鍋を、皆で分け合う夕食の後、我々は我々で親子の時間を取る必要があると私が強硬に主張。
(ティアラちゃんがあたしを避ける口実にしている気が)
(うちの父母の親睦を深めたいところですし、更には今後は事実上の養子として海賊共和国に預けられるうちの子たちを養母役に引き合わせる必要もありましたから…)
(ベラ子陛下いやベラ子ねーさん。私とシェリーを避けているのはねーさんのほーでは? いくらシェリーが聖院の子だと言っても痴女皇国皇帝の実子でしょーがぁっ)
(あひぃいいいいいいい)
で、一旦は聖院世界に帰投することになった菅野しほ子さんと入れ違いに着任したサリーさんが、キューバの精気授受事情、私たちと共同でまとめた後で聖院に報告する立場になるそうです。
そして、茸島から呼びつけられたリンジー局長や、同じく本宮から呼びつけられた田中局長を乗せたスケアクロウ、しほ子さんを聖院に送りのリンジー局長を茸島に送りのした後で、マリアリーゼ陛下とベラ子陛下、そして田中局長が痴女島の聖院空港に戻すとか。
転送で行けばいい気もしますが、スケアクロウだと精気を消費しないという利点があるそうです。
あと、あの飛行機は一定期間の間、飛ばした実績がないと免許取り消しになるとかいう恐ろしい制度が存在するそうでして、関係者の飛行時間とかいうものを稼いで免許失効を防ぐためにもちょうどよいらしいのです。
で、本当ならばキューバに送ってもらおうかという話があったのですが、私が主張して船での移動となりました。
なぜならば、昨日話題に出たナッソーの聖母教会、そして建築を予定されている娯楽館の集客問題。
ナッソーへの集客を考えるためにも、現状の交通機関とその利用実態を把握したい。
確かにアレーゼ様のお馬のこともありますし、スケアクロウで行けば早いというのは私にもわかります。
ですが、ここは現状のナッソー利用者の視線でものが見たい。
私のこの主張が、マリアリーゼ陛下と田中局長の同意を得ました。
で、ベラ子陛下に現状の中米支部の抱える諸問題を直接全て見て頂く事は困難になりましたが、そもそもこの辺り一帯はアレーゼ本部長の所轄。
その本部長が傍にいらっしゃるのに、殊更陛下のご臨席が必要あるかと言われますと、その。
(マリアヴェッラには昨夕のあれで充分だろう。それに、私とアルトで島の集落を巡った分の報告があるから、それと併せてティアラの課題を仕上げれば良いと思うぞ?)
こうまで言われては、ベラ子陛下もスケアクロウの乗員問題もあって、痴女島に戻らざるを得なかったようです。
それに、スケアクロウは北方帝国攻略戦に向けて稼働する予定らしいですから…。
では、キューバに向かう我々はどうやって行けばよいのか。
その答えとなるお船、目の前にあります。
帆を張るためのマストがいち…に…さん…。
(3本マストの第一級戦列艦改装船ですわね。もっともこのロイヤル・フォーチュン二世号は貨客船として新造されたもの。そして海賊共和国の旗艦ですが運航はバーソロミュー&ロバーツ商会と合同で行い、ナッソーとハバナ、そしてフロリダを結ぶ用途で主に使用しております)
すらすらとお答えになるジャンヌさん、さすが。
で、このRoyal Fortune 2nd…ロイヤル・ソブリン級という量産された汎用貨客船の一隻だそうですが、この船名、実はティーチさんの先輩海賊で人生の師匠…とまでは言い過ぎかも知れませんが、ティーチさんの海賊人生や思想に多大な影響を及ぼしたバーソロミュー・ロバーツさんが海賊行為で船ごと戦利品として分捕って乗っていたお船から取ったお名前だとか。
あと、汎用貨客船という名前になってますが、実際には船体左右一箇所ずつに隠してある収納式の機関砲というのですか、結構強力な武装が積まれてます。
これは、本来ならこのロイヤル・フォーチュンと一緒に航行する輸送船団を護衛する目的で積んだ砲だそうですね。
「この砲1門だけで百門級戦列艦に匹敵する火力が見込まれるのは、試射の際にこの目で拝見いたしました…。しかも射程は遥かに長い上に、狙いが正確とあっては、仮に海賊どころか他国の艦隊が襲ったところで返り討ちは必至でしょう」
引き続き、中米支部視察に同行頂けるという復讐公女ジャンヌさんの解説を頂きます。
そうそう、ジャンヌさんの制服について。
痴女皇国海事部または紺碧騎士団に所属する方は、元来は水中活動を考慮したセパレート型ウェットスーツか本格的な潜水用のドライスーツを着るようですが、ジャンヌさんは海賊騎士団長。
で…乗船時の服装ですけどねぇっ。
ええ。ベッタベタの海賊っぽいお姿。
天の声という人に解説を頂くならば「ほろらいぶのまりんちゃんというよりもぐらぶるのくりすてぃーなからみにすかーとはずしたようなかんじ」だとか。
はい…まぁ、痴女皇国の制服ですから、お尻は剥き出し、これは仕方がないでしょう。
そして、ちんぽ柄のカットラスという短めのサーベルを腰に提げておいで。
あと、べれったM92Fとかいう拳銃を2丁。
これは吸引銃ですね。痴女皇国の騎士であればあまり必要性を感じませんが、お洒落装備と思えばよいでしょう。
ええ。
そのもへもへっとした豊富な金髪といい、もうこれでもかと言わんばかりのベタな女海賊姿であると、私ですら思いますよ。こんな海賊はゴム人間のお話ですら貴重品ではないでしょうか。
しかも紺碧騎士団のスーツが海賊服のジャケットの下の姿ですよ。
(あれ? これはあたくしのとちがいますね…)と申されるのはアルトさん。
今回も我々に随伴して、南米視察の際の補助護衛役という名のアレーゼ様による特訓指導をお受けになる模様。
まぁそれは良いとして、アルトさんも紺碧騎士団の服に瞬間更衣なさいます。
で、アルトさんのはセパレートスーツ。
このセパレートスーツ、海中での視認性を上げるためにちょっとした仕掛けがいくつか備わっているのを知っております。
逆に、秘匿行動を助ける装備もあるようですが、とりあえず夜間は裁断のゴム部分のパイピングが蛍光色に発光します。
更には、襟のところから海中限定で夜光虫のような微生物を分泌して着用者の体にまとわりつかせてくるのです。
実際にこれ、茸島分校の全員と、聖院学院本校の生徒でキノコ狩り実習班に抜擢される場合は必ず水上・海洋活動研修と言う名の水泳授業を受けるんですけど…その際に教員役の紺碧騎士がどこにいるか、生徒に発見されやすくするための装備なのです。
はい…水泳は本校生徒でも最終的には全員、やらされます。
ええ、私たち白薔薇三銃士も経験しました。
特に、痴女島の本校から実習船のエルトゥールル号で渡って来る生徒たちは、万一の沈没に備えた訓練として浮き輪や救命具を使っての漂流も実習内容に含まれます。
で…紺碧騎士団の方が救助員として活動なさるのですけど、その際にこの蛍光機能を使うんですよね…。
今、正にアルトさんのセパレートスーツも名前のところや…そう、ビキニボトムとフロントのブラ部と背面部に蛍光色で名前が浮かぶようになっています…青地のスーツ生地のところどころにあしらわれた白いアクセントラインですとかパイピング部が光っています。
(海賊騎士団の制服の中に着込んでる水着はハイレグTバックワンピース競泳水着風オープンホールタイプだ…かつて原宿に存在した水着屋オリジナルの22007というモデルが一番近いらしい…)
まぁ、マリアリーゼ陛下の説明はともかくとしまして。
この制服は、息子のエンリケ他にも好評でした。
なぜ、好評なのがわかるのか。
昨晩、養母役の3名と引き合わせた後の一部始終、知っとるからです。
(こちらも精気を渡して回復に努めさせて頂きましたが、それにしても何回致したのでしょうか)
ああ、強制絶倫状態にしたのですね。
うちの息子の息子を気に入って頂いたようで何よりとは思いますが、そんな思考を私の年齢で出してしまうことに恐怖を覚えもします。ああ、恐るべきは痴女種の知識共有。
そして、昨晩の頑張りを見せていたのはエンリケだけではありません。
ええ、残り二人も。
あまりの性欲の発散ぶりに、私もついカルロータとカルメンシータの穴を借りたくらい…何を言わせんですか。
ともかく。
ピオ君もカルロ君も、エンリケと共に海賊共和国で育つ予定です。
すなわち、海の男として聖院学院中米支部ナッソー分校と名付けられた学校の初等海洋部に入学する措置となるようです…ここの教師の方々、本校の福祉女官経験者かつ海洋生活慣れしているか、元・海賊関係者が選ばれています…。
そして、将来を嘱望された少年として、他の男の子たちと同様に島の女と仲良くする事が義務付けられました。
(言ってみればクラブジュネスで修練士少年が踊ったり女官の相手をしてるだろ、あれよあれ。聖院学院の特色でもあるけど、初等部または福祉部入学と同時に童貞は捨てる事になるからな…)
そうですね…聖院学院の男子生徒は「せんずりのやり方は知っているけど、女官に指示されない限りは勝手にやってはならない」立場です。
いえ、もっと明確に言いましょう。
せんずりする必要なんてないんです。
毎日、最低一発は絶対にまんこしますから。
普通なら不純異性交遊ですが、そもそも聖院学院自体が修学宮の福祉部門として孤児たちを集めて少年の元気なチンポから精気を余さず頂くための施設を発展させたものです(と、教わっています)。
その分校でも、精通を終えた年齢まで即成栽培させてでも成長させた少年たちを女と席を同じくせずに置いておくのか。
んな訳はありません。
もう、まんこの機会がない方にはその詳細をお伝えするのが不憫に思えるほどのまんこ漬けの毎日なのは、茸島分校や本校福祉部のエピソードでも明らかでしょう。
そして、ピオ君もカルロ君も、更にはエンリケもですが、中米支部の男性幹部として将来を嘱望され、それなりに育ててくれとオマリー陛下に依頼されている身の上です。
専属の女騎士を指導役につけるそうです。
そう、日焼けお姉さんと同居。
もう一度申し上げます。
日焼けお姉さんと、同居。
で、ジャンヌ団長。
隣のエンリケはいかがですか。
(過ぎた馳走ですわね。しかも、海賊共和国を中米支部として充実させる前提でオマリー陛下の許可を頂けるのであれば、汎用卵子とやらに限られはするものの、エンリケ様の子種で孕めとも…)
(で、それは良いとして必ずエンリケ「君」でお願いしますよ…増長させちゃダメですからね…ちょっと不良な剛腕女海賊お姉さんの役柄で)
我々は何を打ち合わせておるのでしょうか。
そう、ジャンヌ様はエンリケの乳母…というよりは同居お姉さん役なのです。
そして、これは私もオマリー陛下も、更にはイザベル陛下も納得の処置です。
と申しますのも。女であろうと男勝りを要求された海賊の世界です。
お色気には疎い部類の方々が揃ってるのです…。
で、この辺のカイゼン、将来のエロリゾート化には絶対に必要と言う事で、海賊騎士団きってのエロエロお姉さんとして知られたジャンヌさんに白羽の矢が立ったそうでして…。
アン・ボニーさんやメアリー・リードさんが陸に上がって行政公舎勤務中心の立場になったのもありますけど、アアンさんやメアリーさんではなく、ジャンヌさんが騎士団長をお勤めになる必要性が今の海賊共和国にはあるのです。
ですから、海賊騎士団の制服は紺碧騎士団ほど頻繁な水中活動を想定していないこともあって、見た目を優先したすけべデザインにしたと、考案者のマリアリーゼ陛下にお教え頂きます。
(でな…ジャンヌさんの襟元とか水着の胸元にびっみょーにレースとかあしらってるじゃん…気づいた?)
(もちろんです。一般の海賊騎士団員との差別化は明確に理解可能です)
(よし…どうしても、海に入る可能性も考えてあんまりレースとかフリルとか露骨に採用できなかったんだよね。男の子たちの反応もいいけど、もし色気のカイゼンが必要なら言ってよ。あ、これあたしだけじゃなくて雅美さんもデザイン案出したり決定仕様に噛んでるからな…)
(それで、股間部の裏張りがないんですね…普通は水着縫製ならつきますよ…濡れてなくても下手したらまんこ透けたり形まるわかりじゃないですか…)
(雅美さん曰く、それがいいらしい。あと海賊騎士団だけに強そうなのばかりだろ。如何にエロくても、迂闊に口説けばカットラスか鉛弾でお話が出来るようなコワモテっぽい雰囲気も欲しいと強硬に主張されてな…)
(まぁ、私を口説く男がいればそれはそれで貴重な存在ですわね。半殺しや全殺しという意味ではありませんが、教会送りにいたしますけど)
この教会送りというのはナッソー特有の懲罰でして、かつて、女にうつつを抜かしすぎた男はドレインで死ぬ直前まで吸われた処置の名残りだそうです。
つまり、教会送りという罰。
文字通り教会に送られ奉仕活動としてこき使われた挙句に、これまた言葉通りに搾り取られることになるのです。
(今は以前よりはこの島の女不足も多少は改善されましたので、そこまで過激な罰に走らずとも問題がないようにはなっております)
ええ、どっちかと言うと女の人、少なかったのです。
海賊全盛期時代はそれはもう、売春宿に酒場にと色々な店が開かれていたそうですけど、
(ただ…ティアラ様、エンリケさま…エンリケ君は従順で私をジャンヌ先生と思ってくれておる様子。なるべく変な癖をつけぬようには致しますが、ついついちんぽを貪ってしまいますのは何卒ご勘弁を…)
ええ、昨晩は敢えて男児三人とも、担当の「海賊のお姉さんたち」と過ごさせました。
このお姉さんたちの愛玩用ショタチンポとしてまずは認められよ。
私の茸島実習生活の記憶経験知識から動員した、向こうのショタホストとしての優等生たちの姿を余すところなく学習させた上で、私たちは海賊騎士お姉さん3名に我が子たちを預けたのです。
そのこころは、この海賊島にエロの空気を徐々に醸成させるため。
いわば、茸島状態に持って行きたいのです。
もっとも、急にやると絶対に反発が出る話でしょう。
ですので、ショタを連れ回しデレてる姿を目撃させて野郎どもの羨望の視線を集める。
そして、罪人寮居住者に対する女官の接し方が標準であるように、時間をかけて島をエロくしていこう。
私はそう、考えております。
それとですね、茸島での本宮女官による買春実績と実態、この中井ティアラは余すところなく知る立場です。
すなわち、ショタ買春の極意も。
おわかりでしょうか。
エンリケたちの実質的な筆下ろし役は海の女に頼みたい。
海の王子としての未来を嘱望された子たちなのですから。
そして、騎士と並んで、男よりも男らしい海の世界とは存じますが、世の一部女性と男性をやきもきさせるショタ展開。
これを海賊島のみならず、船による往来が不可欠な中米地域での海事担当女官のお楽しみとして提供したいのですっ。
(聖院でそういうことをするかはともかく、そのモチベーションは見習いたいわね…)
(サリーおかーさま。それ以前に聖院は痴女皇国ほど海運に積極的に介入してはおりません…)
まぁともかく、乗船の準備が出来たというので、まずはアレーゼ様から…と思ったのですが。
(マツカゼを乗せるには私が手綱を引く方が良いだろう。アルト、君から乗ってもらえ)
(まぁ、このなかではわたくしがにばんめにえらいさんですねぇ、つかれるほうで)
アルトさん…。
よほど昼間の駆け足視察がこたえたのでしょうか。
いえ、白金衣を着ておられましたし、島の周りを巡る道の通行も皆無ではありませんから、無茶はしていないはずなのです…。
(いや、以前に痴女宮で見せた余興の賭け事でアルトはマツカゼに負けたんだよ…で、アルトが再戦を申し出て、海賊酒場に昼食を摂りに来ていた連中も乗り気になって、島の中央にある湖の水を汲んでくると言う話になってな…)
(その様子では、途中でこけたか桶を落としましたね)
(大当たりだ。で、居合わせた全員の昼食代をアルトが持つ事になって…)
ここのお昼、確か…豪華な方でも300円から400円くらいのはずですよ。億単位の貯金があるとはお聞きしていますし、何よりこう言う時に気前よく払うための特別報奨金でしょう…。
(あああああ、てぃあらちゃんがきびしいのです…)
(まぁ、アルトが聖院時代ならそもそも厳しかったが、ここは海賊共和国だからな…アルト、経費で落とせるかどうかはマリアに相談しろ…)
ええ、アルトさんが持ちかけた話らしいので、自業自得でしょう。
とりあえず、今からお船に乗る面子ですが。
あれーぜ
まつかぜ
あると
じゃんぬ
ろーた
しーた
えんりけ
かるろ
ぴお
てぃあら
以上、8名と1頭になります。
(あたくしたちの名前が…)
(あたくしはうまいかあたくしはうまいか)
では、馬以上なのをキューバで証明頂ければ。
本当は私が一番に末席を務めようと思っていたのですが、仕方ありません。
皆を先導するジャンヌさんに続いて、アルトさんを引きず…いえ、手を取ってエスコートしながら板の坂道を登ります。
この板、ダンケ号を甲板に積み込む時にも使うの、別のお船で見ていますから、それなりに頑丈な作りのはずですが…お馬さん、大丈夫ですかね。
(心配いらんよ。私が側にいる時は重力軽減の技を使うしな)
おお、凄い。
確かに、先に上がらせて頂いた身で船上から見ておりますと、どう見ても2トンくらいはありそうなお馬さんなのに、板の道を上がる時にきしみ音がしません。いえ、足音すらも。
この板…高級フローリングと同じで、木材の向きがーーーじゃなくて|||で張り合わせられてますけど、それでも凄いですよ。
(この技、アルトやダリアもちろん…マリアヴェッラも使えるはずなんだよ。ダリアは特に黒薔薇騎士団での活動があるから得意なようだがな)
えええええ。何か、使っておられるような使っておられないような。
ベラ子陛下、確かに動きはめちゃくちゃに早いんですよ。ただ、茸島での戦闘演習や例の通勤マラソン片道2時間のあれの時、地面に足跡がついてるんですよね。
(苦手なもんは苦手なのですっ)
(陛下。差し出でがましいようですけど、操縦に専念なさった方がいいと思います。それと、アレーゼ様がさっきおっしゃった件ですね、なぜ広大な米大陸を侍従お一人と馬1頭だけで制覇制圧なさったのか、その件について伏線とやらがあるようなのです…だから今はちょっとお静かに。なさらないと、去年の健康診断は時間ないからって茸島分校でお受けになられましたよね。あの時の基準体型の身長と体重のデータ、流出しますよっ)
(えええええ)
(いくら痴女種が体型変更できるって言っても、不摂政や訓練鍛錬不足を指摘するためにも基準体型での測定はきっちりやられるじゃないですか…私も受けたんですから。それと、逆脅迫を防止するために敢えて私は自分の身長が162cmで体重48kgというのをバラしておきますっ)
(ちょっと待ったティアラちゃん…確かベラ子のデータ、健康診断でイエローかレッドシグナルが出てたな…罪人も含めてイエローシグナルやレッドシグナル、つまり持病や疾患などで注意や警報が出た人物の健康診断カルテは黄色や赤のタグがついて、名前がリスト化されて厚労局と所轄部局の上長に送られるんだよ…ベラ子、何で12月の健康診断でBMI20超えしてやがる! まだモチ食ったデータ載ってねぇ時期だろ!180の69で20超えしてるじゃねぇか…)
(ねーさん、何をバラすのですか!)
(あたし擬態解いたら180の60だったからな。で、ババ…ジーナかーさんもこの数字にこだわってるからNBで受けてもらった健診だと同じ数字が出てる。ちなみにあたしは普段の擬態じゃ165の50が基準値だ。読者の方はこれで適正体重値を計算すると大体の体型を想像してもらえると思うんだけど、ベラ子…おめー、今度はイタリア料理抜きどころか3食和食だな…)
(ちなみに私は…本当は190の70なんだが、マリアの女らしく見せるという話を受けて180の61を保つようにしている。まぁ、婢女やマリアヴェッラの被服製造データを流用するためでもあるようだが…)
(で、ここだけのおはなしですが、マイレーネさまはアレーゼさまよりさらにおおきいのです…かつて聖院で女官ちょうをしていたとき、ぬいだら女官がおそろしさのあまりにたおれただけはあ…もごごごご)
(アルト。お前…これ以上マイレーネさんに睨まれたくなかったらそれ以上はやめとけ…おばさま、マイレーネさんの身体データ漏洩防止、感謝します)
え。
何かあったのですか…まさか、脱いだだけで目撃した女官が死んだとかいうお話なら聞いた事、あるんですけど。
(伝説の脱ぎ殺しだな…ちなみにアルトは銀衣騎士時代に書類を読まれただけで気絶した。で、読み殺しってのをマイレーネさん伝説に1ページ追加してやがんだよ)
はぁ。
まぁともかく、船長や乗組員の半数が交代されたり、我々の後にも何かしら乗り込んだり積み込まれたり降ろしたりとやっていたロイヤル・フォーチュンですが、1時間ほどの寄港の後で係船索を外して岸壁から離れる模様。
貴賓室の使用を断って、お馬さんの側におられるアレーゼ様ですが、男の子3名はさっそく、ちょっとしたお仕事があります。
それは、いわゆるロープワークといわれる、縄を扱う作業。
この縄さばきや結び方が船乗りにとって重要だと言うのは私にもわかります。
で、ジャンヌさんの監督の下で船員さんたちについて教わるそうです。
この縄仕事を覚えないと、船員として次の重要ステップ…手動での伸帆・縮帆作業に関われないそうですから。
おまけに、このお仕事は簡単にズルをして手助けする事が出来ません。
あくまでもエンリケならエンリケが、自分の頭と身体で覚えなくてはならないのです。
(ひもになるのはかんたんでも、ひもをむすぶのはたいへんなのですね)
アルトさん…それ、ひもの意味が違います。
あと、痴女皇国関係者でヒモって飼ってるような人、いましたっけ。
(それが面白いものでな。クレーゼの代ですら、女に養われる男はいなかったんだよ)
ふむふむ。というと、アナ様のような事をするのはダメダメだったのでしょうか。
(いや、完全に女官なら女官の稼ぎに依存するような男は存在しない。これも聖院規範に基づくのだが、働かざるものは食うべからずという日本のことわざと同じ意味の記述があるんだ。聖院は不労を求める者を欲せず、ということだな。アルト)
(はい。アレーゼさまが言われるとおりで、聖院ではどんなひとでもはたらかされたのです。こどもは大きくしますし、てあしをなくしたり目がみえないかたやみみが聞こえない方、しゃべれない方はちりょうします。もともとのせいがんしょはまさに、そういうこまったかたが来たときにおなおしするためのうけつけだったのですよ)
(更に言うと、働く意志をあまりに見せない場合は性根を入れ替える…痴女皇国流の言い方だと人格抹消だな。これをすることは殆どなかったが、聖院一千年の歴史上、全く皆無でもなかったんだよ)
(え。と言う事は)
(せいいんにきて、からだをなおしてくれという場合、わたくしたちはだいしょうをもとめたのです。ただ…それはおかねではなく、おしごとをてつだうこと。そして、罪人としてはたらいてもらうことになりました)
(ただし、事情で罪人の道を選んだのだから、本当の意味での罪人の扱いではないよ。私が銀衣の時は…そうだな、事情罪環の色は鉄または銅で始まっていたな)
要は、皆さんのお話では全く働かない男はダメ。
それどころか矯正の対象になると。
まぁ…女官でもそうなのですよね。
今更申し上げるまでもなく、寿命が近づいた時以外に、女官の健康を害するものは存在しないと言ってよいでしょう。
せいぜい、百人卒未満だと年に1~2回、通常の人類女性同様の女の子の日を経験するくらいなのです。
(女官になると身体機能の維持目的以外で生理が来なくなりますからね…生理休暇を与える必要も取る必要も極めて少なくなってしまうんですよ…)
ちなみに聖院学院でも同じく、無断欠席はもとより病気やケガによる欠席や休学は基本、ありえません。
治されるか、はたまた「そもそも病原菌に犯されない」のです。
(ちんぽでおかされることはあってもびょうきに侵されることはないのです…)
で、ここで私はアルトさんをじろ、と見ます。
ええ。駄洒落菌ではなく、根本的にこの人は下ネタ大好き。
はるかに上位の方なので思考こそ読めませんが、私の脳が確定的に判断を下すのです。
この人の不真面目さも、可能なら視察中に治療しておく方が痴女皇国のためになる気がします。
(それを罰すると、痴女皇国のほぼ全員を罰する気がします…)
(ベラ子へーか。私は敢えて提案します。アルトリーゼ閣下は仮にも将軍。例え皇帝陛下と同じでお飾りと言われようと閑職と陰口を叩かれようと、皇帝は皇帝で将軍は将軍。おのおのの官位役位にふさわしい振る舞いをしなくては、臣下がついてこない可能性があります)
(えええええ!)
(あたくしは真面目にやっております!)
(ほんまやろなソレと関西弁に毒されつつある私の脳はまだしも、うちの息子たちが必死で真剣に縄使ってるのに皇帝はエロ会話で将軍は下ネタ。いくら痴女皇国とは言っても、そんなことばかりしていてはしまいに聖院体制に戻されても知りませんよっ)
この瞬間、あちこちでやめろとかやめてとかあんぎゃあああとか、阿鼻叫喚が渦巻く状態になりました。
…皆さん、どんだけぬるま湯に浸かってるんですか…。
アレーゼ様。今、反対の叫び声を上げた方々、リストアップしてよろしいでしょうか。私では全員を追い切れません。
(私が出来ますよ。というか、叫んでない人から数えた方が早いですね)
冷ややかな顔と目をアルトさんに向けるサリーさん。
(ティアラさん。敢えて言いますが、初代様が叫びました。それと…二代目様と田野瀬さんと玄奘さんとハリティリーネさん…要は文教局の方々ですね。あと、本宮ではアフロディーネ女官長とペルセポネーゼ黒薔薇騎士団長くらいです、叫ばなかったの…)
(聖院マリアです。ティアラさん…気持ちはわかる、わかるのよ。特にあなたは今、母親の自覚を持ちつつあるから人の不真面目な姿を子供たちに見せたくないのはわかるわ…けれど、痴女皇国を矯正するのはあたしでも骨の折れる仕事なのよ…)
(エマニエルですけどね…聖院マリアさん、ええ、うちのマリアねーさんも矯正対象っすね…)
(白マリだって矯正されるべきだろ! お前もなんだかんだで駄洒落や下ネタ会話大好きじゃねぇか!)
で。あちこちで醜い争いの心話が飛び交う中、アレーゼ様から密かに話が。
「ティアラ…君の気持ちは分からなくもない…これがあるから、しほ子の教育は私も注意を払っていたんだ…だが、マイレーネですら「痴女皇国についてあまり干渉すると、もはや潰瘍や胃炎とは無縁なはずの私の胃が痛みを覚える気がするのです」と言うんだ…ああ、私だって人の希望の芽を摘みたくはないから、ティアラの頑張り次第だとは言っておく…」
ええ、とても大きな悲しみを湛えた視線を向けられました。
アレーゼ様であっても矯正は困難である、と。
しかし、私は諦めたくはありません。
真面目な話をしてんのに茶化すな。
この、単純な要求すら聞き入れてもらえないならば私は真剣に怒ります。
更に言うならば、うちの息子たちが真面目に縄で縛ってんのに。
縛りますよ、厳粛路線に反対した皆さんを。
(一部で喜ぶ人が出そうな気がします)
そういうところですよ、陛下ぁっ。
ともあれ、私には遠大な課題が出来ました。
真面目にやるときはちゃんと真面目にやろうよ。後継や後輩のためにも。
こんな当たり前のことを、ちゃんとできる人と国にする。
この誓い、容易く折れてはならないでしょう。
特にベラ子陛下。私も縛り方を覚えますからね。頑張って皇帝の威厳を維持できるように努力なさってください。
…でないと本当に亀甲縛りにして痴女宮の正面玄関前に飾りますからね!
---------------
べらこ「名指しはやめてください!」
てぃあら「お言葉ですが陛下。脳内で駄洒落菌が増殖した回数、カウントしましょうか?」
べらこ「ううううう」
てぃあら「とりあえず、私が米大陸周辺にいる間だけでも努力してくださいよ…」
黒マリ(なぁ白マリ…ティアラちゃんって、もしかしてオリューレより真面目な部類…)
白マリ(マイレーネさんと言うよりは、学級委員長タイプになりそうな予感がするわね)
黒マリ(白マリ、あんたもあたしも出どころは同じだ。つまり、関西人思考に脳をやられたロシア人と、ノリと欲望と力技で聖院統治をやってきた金衣の娘だろ、お互い…綱紀粛正にも程度があると思わねぇのかよ…)
白マリ(聖院は真面目にやろうと思えばできるわよ!痴女皇国が努力すべきなのよ!)
黒マリ(そっちのジーナかーさんがいなきゃあたしは合意した。あんたとこのおばはん、一時的に痴女宮で預かって本宮24階のペントハウスに住んでもらったことあったろ…)
白マリ(それの何がダメなのよ…あー…)
黒マリ(痴女宮への順応性は異常に高かった。つまり、かーさんから矯正しないと聖院でも同じ事が起きると思うぞ。あと初代様はそっちもこっちも共通だろうがよ…)
白マリ(初代様の矯正は…確かに難しいわよね)
黒マリ(加えておかみ様だ。あの人こそどうすんのさ…)
白マリ(とにかく、この問題提起は痴女皇国世界でティアラちゃんが始めた事でしょっ。黒マリサイドでなんとかしてよ!)
黒マリ(こらぁっ逃げんなぁああああああ!)
さりー「ティアラさん。気持ちはわかるんだけど、本気でやるなら百年はかかる。私もそう思います」
てぃあら「忍びに忍んででも目的は果たします。ネタ根性や関西芸人の受け狙い精神は死すべきなのです…」
べらこ(ねーさん…何とかしないと我々もふざけてられません…)
黒マリ(ふざけるのが正義かどうかはともかく、ティアラちゃんを大人しくさせる方法はある。要はエンリケ君たちが親の心配を跳ね返すほどちゃんと自立してくれれば、自然に教育ママとか毒親思考は止まると思うんだがよ…)
べらこ(やはりあたしは米大陸視察に同行すべき。スケアクロウをハバナに向けようと思います)
他全員(…それこそが一番のヤブヘビ行為や!)
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