上 下
159 / 276

狂気の新年式・聖母教会あけおめこ とよろ編・2.5

しおりを挟む
「いいですかオリューレ。あなたののぞみをせいりしてみましょう。まず、あなたはより権力とおかね…色々するためのひようをこころおきなくつかえる立場になるのをのぞんでいましたね」

あたくしは、オリューレにいいきかせるようにおしえていきます。

「そして、いちばんてっとりばやい方法は、うちのよめマリアかべらこ陛下のこどもをうむかうませるかして、皇族にんていをもらうこととけつろん結論を出しましたね。これ自体はまぁ、痴女皇国ではまちがってはおりません」

実際に、よめもべらこ陛下もめちゃくちゃに強い上に、このふたりのどちらを敵にまわしても、もっとこわいひとが加勢にきます。それも、なんにんも。

ですから、さからうよりはうまくごきげんをとって、ちからなりお金なりをおすそわけしてもらうのがよいと考えてもむりはないと、あたくしも思いますよ。

それにオリューレ、あなたは色々とわるいこともしていますが、つきつめると聖院時代から、聖院にきたおんなのこを女官にそだててよのなかにおくりだすためにいろいろしていたわけでしょう。

さらには、おとこのこたちもよのなかに送りだすためにいろいろ考えて、じっこうしておりましたよね。

そのために、みなからあつめたおこづかいを使ったり、あるいは、あなたの言いたいことがとおりやすいように女官を出世させてもいましたね。

その考えのおおもと…すなわち、おやをなくしたりそだててもらえなくなったこどもたちをたすけること、それじたいににまちがいはないとおもいます。

つまり、べらこ陛下やよめがオリューレをかばうのは、ある意味ではすじがとおっているのです。

ひとびとのくらしで突然にこまることがないようにいろいろしてあげて、われわれが精気をもらえるあいてをふやすことをやめようとして悪いことを考えていたわけではないのですから。

むしろ、痴女皇国をはってんさせるためにものごとをかんがえていたのです。

そのためにも、よりえらくなって、使えるおかねや人が増えるたちばをめざしたのも、あながち、まちがってはいないでしょう。

ただ、その方法がいろいろとまちがっていたり、あるいは女官からもんくをいわれるようなことだったのです。

ですからオリューレ、かりにあたくしがあなたをはらませたり、あるいは黒薔薇騎士団入りできるようにしかくをあたえろとめいれいされたならば、あたくしはそれをこばまずにじっこうしてさしあげようとおもっています。

せっかく、あなたのしていたことがぜんぶ悪いことじゃないから、やりなおすためにもきのこじまでいろいろやってみろといわれたのでしょう。

そして、前むきになってがんばるあなたの足をひっぱるような女官、あたくしとしてもぶかとして使いたくはありませんよ。

ですから、かげぐちをおそれずにがんばってほしいのです。

それに、ですねぇ…。

お師匠さまがここにおられますが、シェヘラザードさま、すなわち先代アルトリーネさまは、あなたにとってもお師匠さまではないですか。

お師匠さまは、痴女皇国のあたくしと子作りをなさいました。

そして、皇族に準拠したおかたとしてみとめられています。

今はあなたがけんむ兼務でやっておられる聖院がくいんのきのこじま分校の校長せんせい。

このおしごとにつかれるというのも聞いております。

「そ、それは何ですかアルト、私にお師匠さまの子供でも産めということですか…」

「もちろん、そうにきまっております。ですがオリューレ、そんなだいじなことはさあしろ今しろすぐにしろといわれてもこまる話でしょう。ですから、いつでもそうできるように、お師匠さまにはここに住んでもらうのです。そして、あなたもここでせいかつしてもらいますよ」

「オリューレ。アルトリーゼは今、ここに皇配騎士として来ております。すなわち、アルトリーゼの言葉は全て、痴女皇国皇帝名代としての言葉。今、この子が言った言葉は全て、勅令としてあなたに絶対に守らせる意味で言おうとすれば出来るのですよ…」

お師匠さまのことばに、ぜっくするオリューレですが。

「聖院時代でも金衣や銀衣の指示は絶対でした。すなわち、先代金衣の配偶者にして自身も今や金衣相当のアルトリーゼは、本当ならばあなたが逆らえない命令を与えてしまえる立場です。しかし」

と、ここで、あたくしをちらりとみるお師匠さま。

「しかし、あたくしはあえて、あなたの意志をそんちょうしようと思います。今、白金衣を着ているあたくしならば、あなたに黒薔薇資格をあたえるのもかんたんです」 と、あたくしのよそおいをみせておきます。

ここで、オリューレはものほしそうな顔をするか。

しませんでした。

あたくしの話に続きがあって、しかもしんけんにきかないと今度こそまずい。そう思ってくれています。

よしよし。

「けれども、あなたじしんが今でもそれをのぞむのか。そして、お師匠さまがいらっしゃるのに、あたくしがそうそうにでしゃばるわけにはまいりません。あたくしとおなじで、あなたもお師匠さまにそだててもらったみのうえ。のぞむことがあれば、お師匠さまにのぞまれるほうがよいでしょう。もちろん、お師匠さまに頼まれるか、あたくしがかせい加勢すべきであれば、あたくしの力をつかうのにためらいはありません。こまったひとをたすけるのは全ての聖院女官にも騎士にもおしえられたことです。そのきまり、うらみやにくしみでねじまげてよいものではありませんよね?」

「え、ええ…聖院女官規範は痴女皇国においても有効ですが…」

「それとですねぇ、お師匠さまがあなたとすむのはとてもだいじなことなのですよ? お師匠さまが聖院のときは何をなさり、どのようなくらいを与えられていたか。おもいだしてごらんなさい」

そうです。お師匠さまは、アレーゼさまからみると、先代銀衣騎士。

ほんとうならばこどもをつくっていんたいするはずでした。

おわかりでしょうか。

「オリューレ…あなたがお師匠さまのだんなさまかおくさまあつかいされるということは、すなわち、皇族にひとしいたちばとなることでもあるのです。これだけでも、あなたにはとてもよいと思うのです。ですが、それならばべらこへいかでもよい話。では、なぜ初代さまはあたくしやお師匠さまをおすすめしているのか」

「アルト…アルトリーゼ閣下、それは金衣や銀衣の血統のことでしょうか」

「アルトでいいです。あたくしとあなたは同期のさくらではありませんが、にたようなもの。そしてお師匠様をおすすめしているりゆうは、あなたが言ったとおりです」

「ジーナさまとるっきー…ルクレツィアさまのこどものべらこ陛下ではなく、初代さまのちすじをひくあたくしやお師匠さまをつがいにしたほうがよいというのは、まさに初代さまのちすじにつながるほうが、あなたのためになるとおもっておっしゃられているのですよ」

「ほんっとーにびしばし言うわね…確かに、アルトの話の通りです。そして、今後の茸島分校の規模を考えますと、お師匠様に分校長の昇格内示…そして、リンジーさんへの教務長内示が出されていることに反論はありません。むしろ、そうしなければ巨大化する茸島分校の体制は維持できないでしょう。お師匠さまの南洋行政局管轄への赴任、謹んで受けさせて頂きます」

いよっしゃあ。

あたくしはひそかに、くぁんたむりんくと言うのですか、べらこへいかやよめにだけつうじる方法で心話をおくります。

(これで一安心ですよ…オリューレさんの出世は、ある意味ではアルトさんの出世以上にいい事なんですから…ダリアさんもそうですけど、言うなればあまりよろしくない出自の人であっても、ちゃんと働いて才覚を示すならば、ここまで出世できますよって見本になるんですよね…)

そう。

これが、よめがダリアをかばったり、べらこ陛下やみんながオリューレをかばっていたりゆうなのです。

(アルトくん…ジーナや。スザンヌとマリアンヌに雑煮食わす件があったから池尻大橋に来てるけどな。オリューレさんとシェヘラザードさんに繋いでくれるか)

へい。

というかじーなさま、えぬびーにいらっしゃるのでは。

(正月くらい戻さしてぇや…モチ以前に米のご飯が食べたいねん…)

はいはい。みためもなかみものはずなのに、こまったひとなのはあいかわらずですね。

(シェヘラザードさん、ジーナです。この度は何か、アルトと子作りしたり等々諸々あったようで…うちもそっちに年賀の挨拶に伺いたいんですけど、こちらはこちらで諸々ありまして…娘どもが色々お願いしていて大変かとは存じますが、よろしくお願い申し上げます)

(あら聖母様。いえいえ…それに、わたくしの担当には東方聖母教会の教義授業も入りますし、何よりも娘たち…痴女皇国の方の高木サリーとシェリーは東方聖母教会の教育担当者として、まずは東欧支部管内のメテオラとアトスを任される予定となっております。この件はお伝わりでしょうか)

(ええ、マリアリーゼとマリアヴェッラから聞いてますわ。あと…オリューレさんな、あんた茸島どころか南洋王国担当の大臣扱いになったそうやね。とりあえずおめでとうと言うとくわ。それからな、あの辺の人らと話をしたりして悟っとるかもわからんけどな、熱帯の人らあるあるで、男がサボりがちや。そして、約束という概念にイマイチなところがあるから、厳しくすべきはせなあかんかもわからん。その辺はマリアリーゼが詳しいから話聞いとき。で、シェヘラザードさん…)

(聖母様、過ぎた施しは人のためにはならぬかと存じますが…)

(ああ、構いまへん。それに、今の皇帝室秘書課長の伊藤さんやと、ちょっとややこしい話を仕切り切れんところもありますんでね。ちょっとお節介焼いてくれてマリアリーゼから頼まれましたんや)

ああ、やっぱりそうですか。

よめかべらこへいかがたのまないと、じーなさまは動けませんからね。

(シェヘラザードさんのお立場ですけど、アルトと同じで皇配扱いとなります。ただ、そもそも聖院銀衣直系なんで皇族復帰という処遇となりますね。そして、ステータス処理の変更もかかってるはずですわ。アルト、確認したり)

へいへい。

Šahrzād Takagi. (1st Altliene, Cyreien Abdoolue) 高木シェヘラザード Million Suction(Limited Hundred million)百万卒(限定一億卒) Slut Visual. 痴女外観 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 President of the Faculty of Theology, Holy temple Academy, Imperial of Temptress. 聖院学院神学部長

Aurieune(Aurieule) オリューネ Ten million Suction 一千万卒 Slut Visual. 痴女外観 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 Governor, South ocean administrative bureau. Imperial of Temptress. 南洋行政局長

あらまぁ。

なんということでしょう。

げんていとはいえ、いちおくそつはむかしのダリアとおなじ。

つまり、ひつようにおうじてオリューレのうえにもなれるということですね。

それとですね、かくにんをしたいことがあります。

(じーなさま。これ、もしかしますと、お師匠さまがそのきになれば、あたくしがいなくても…)

(うちに聞くよりマリ公かベラ子に聞きなさいな…多分やけどな、オリューレさんの黒薔薇昇格処理、シェヘラザードさん単独でも下ろせるで。ただ…キツいアレがいるやろとは思う。んで、今のオリューレさんの千万卒から下手に上に上げんようにな。スクルドさんから言われたけど、例の誰でも彼でも昇格バンバン入れすぎたら仕切りが入るいう干渉の話があるやろ。あれマリ公が知ってるから…まぁ、アルトやったら白金衣着てあれこれせんかったら無闇やたらな昇格はかからんからいけるか。とにかくマリ公に聞き。ええなっ)

じーなさまが言いたいことは分かりましたが、なんかもぐもぐしてはりますね。

(今うちは正月番組を見ながらマリアンヌやスザンヌに宇賀神さんご夫婦とか阿波内侍さんらと餅を食うておるんじゃ。あ…お前ら女官やったらいけるか…まぁとりあえず言うとこか…シェヘラザードさん、しばらく中東支部に行ってはりましたやろ。で、あっち行ってはる間にうちの本宮で罪人に餅つきさせて作らせて流行らせとるモチ、あれ日本では相変わらず毎年何人も死んでる殺人食品ですさかいにな、扱い注意して食え言うてください。特に茸島分校の食堂やったら、どういう食いもんかを馴染んでる女官はまだまだ少数派のはずですからな…)

(は、はいっ…確かにあの粘り具合は危ない代物ですわね…)

(ジーナ様も相変わらずですよね…)

(オリューレさん…悪いけどな、うちをおだてても何も出ぇへんで。あ、そうや。オリューレさんにもういっこ、土産というか贈り物がある。そしてこれはアルトとシェヘラザードさんへの付与装備でもあるようや。アルト。あんたの珍珍を見てみい)

へ。

なにがおきたのでしょうか。

で、ちんぽをだしてみますとですね。

(こ、これはじーなさまやべらこへいかのぴーたーのーすというちんぽ…)

(え。わたくしの逸物も何やら更に大きうに…)

(シェヘラザード様、私もです…前のあれも大概大きめだったんですが、確かにベラ子陛下のアレと同じに見えますね…)

(これやったらオリューレさんも扱い慣れてるはずや。あと、アルトくんには凶器になるからあかんけど、シェヘラザードさんが億卒リミッター解除された際はラスプーチンちん使ってもらえるようにしたからな。目的は言うまでもあらへん、オリューレさんに黒薔薇資格を与える時のためや)

えー。なんちゅうことを。

(これ決めたんマリ公やから、文句はマリ公にゆえ)

ううう、よめはほんまにいらんことをしますね…。

(アルト。お前にはあたしが特に雑煮を作ってやることにした。有り難さに涙を流して食え…)

ええ、痴女皇国の方のよめがなんかいうとります。ふつうに考えれば、ちゃんとごちそうしてくれるように思いますよね。

(まりあさまがそういう場合、ぜったいに何かしかけていますね)

(まともな雑煮だぞ。うどん県…香川なら割とメジャーな食いもんだ。あと、熊本とかでもこれだな)

(マリ公、お前何を…あー、あれかい…)

(かーさん、前に会社フットワークであそこ出身の女の子が正月の出初めにあれ作って大パニック起こしたあれよアレ。クレーゼ母様が社長してた時だったけどよ、あの母様ですら死にそうな顔して食ってたアレだよ…きなこ飯より食う奴選ぶぜ…)

(マリア。あれはかいしゃにお金がなかったときのお話ですわよ…みどりちゃんがご実家におはなしをしてくれて送ってもらえたおもちでしたからね…)

おや、クレーゼさまですね。

(母様。あれ、もっかい食べたいですか)

(できればえんりょしたいですわね)

(あの…クレーゼ様にマリア様、一体、アルトリーゼに何を…)

(待てマリ公にクレーゼさん。うちが説明する。うちも神條みどりちゃん…武内取締役指揮下のレディース引越軍団員やった子の実家界隈の風習は知っておる。山内博子さんのガサ入れの時とか早苗の引っ越しの時もあの子来てたから、アルトもベラ子も面識あるはずやけどな、まぁええ)

ふむふむ、じーなさまのご実家がむかし、てんのうじにかいしゃをかまえていたうんそうやさんの方ですね。

たけうちさんはあたくしも知っております。いえ、知っておりましたというべきですね。

(でな、みどりんの実家は正にドンピシャで、その特殊な雑煮を食うエリアのご一家やったんや…シェヘラザードさん、餅の中に何がしかの詰め物を入れる風習、ご理解頂けますやろか)

(ああ、聖母様のご記憶でなんとなくは)

(で、そちらやアルトくんのふるさとで、ナツメヤシの実を干したデーツを食べる習慣は)

(ございます。そして、珈琲の苦味を和らげるためにもいただくことが)

(で、あのくっそ甘ったるいあれに似たようなモンを餅の中に詰めましてな。更には味噌仕立てのスープに入れて食べるという、人によっては味覚が破綻したように感じる雑煮を食べる風習があるんですわ、その香川のあたり…)

(身体はロシア人の割に甘いもん食わねぇからな、おばはんは…かーさん、ロシアのケーキよりはマシだぞ…)

(やかましいわ、うちは日本育ちやから舌も胃袋も日本仕様じゃ。ペリメニはまだしも、あたしにサーロとかウォッカ差し出されたかて苦手やねんからな…)

まぁ、くいいじがはっているわりにたべるものにいろいろと制約がありそうなじーなさまはほっときましょう。

(マリアちゃん、そのあんころ餅、いらないならあたしの部屋持って来てよ…うちなら善哉ぜんざいの材料あるからさ)

おや、まさみさんですね。

ぜんざいとはなんなのでしょう。

(食べると夫婦仲良くなれる意味もあるんだけど…お餅入りの甘い小豆スープと言うとわかるかな。まぁ、甘いっちゃ甘いんだけど、お菓子やデザートの分類になるのよ。デーツの甘さが苦にならないなら食べられるはずね)

ほうほう。

まぁ、まさみさんがだしてくれるならまちがいはないでしょう。

そして、お師匠さまとオリューレはだいじなおはなしをしたそうです。

ですので、あたくしはそろりとおへやをぬけだします。

(ま、待ってよアルト!)

(だめです。これはオリューレじしんのみのふりかたを決めるためのしれんなのです)で、オリューレもいちおうは、はりせんを持っていますが、それをこちらからであやつって、もちぬしをしばってしまいます。

(アルトリーゼ、気を遣わせますわね…)

ええ、お師匠さまもそれなりにおすきなのはぞんじておりますので、ごぞんぶんに。

それとですねぇ。あたくしははくじょうもののべらこへいかをどうにかしたいのです。

あるいみで痴女皇国の未来にもかかわるこういうおはなしのときに、なにをしておられるのですか。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/169/

(りょ、寮を視察しているだけじゃ…)

あのですね。

あたくしがひゃく億卒になったということは、べらこへいかのやってること、ぜんぶつつぬけなのです。

おわかりですね。

まったくもう。ひとみさんがないてますよ…。

(分体が対応しています。流石に、このお正月に何もしないのもよろしくありませんので…)

まぁ、痴女皇国の皇帝へいかですから、多少えろえろなのはしかたありませんね。

(わかりました!わかりましたからこっち来て下さい! あたしの方も助太刀が欲しいんです!)

およばれとあれば仕方おまへん。

あ、このつづきはやみおちマリアでお話しするほうがよさそうですね…。

ええ、あたくしが語るにはあまりにあぶなそうですから。

(助けてアルトぉおおおおお!)

(オリューレさん! 皇帝勅命です! アルトさんはこっちでもらいますから!)

(そんなぁあああああああ横暴ですよぉおおおおおお!)

----------------

さて、よくあさの茸島ですが。

めのまえの海にうかぶ、りっぱなおふね。

ひだりがイタリアのおふね、右がスペインのおふねだそうですけど、あさもはやくからおふねがつながれたさんばし、人やものがいそがしくいきかっています。

そして、少しはなれた場所にあるもういっぽんのさんばしにも、これまた、金色のかざりをあちこちにつけた、りっぱなおふねがとまっています。

…ああ、サンティシマという、もとはスペインのおふねですね。

こちらのおふねのまえではなにをしているか、べらこへいかがやみおちマリアのほうでくわしくお話していましたから、あたくしはもうしません。

ええ、おふねのかげにかくれておりますから、ふつうのひとには見えませんが、みえなくてよいのです。

おふねのかげからあらわれたのは、いそいそとおとこのこの手をひいて、すなはまのむこうの絶林檎のもりにきえていく女官。

それがなんくみもおりますから。

あたくしたち上級女官になりますと、ものをすかしてみることができますので、おふねからおりた女官たちが、おでむかえのおとこのこに何をしているかまるみえですけどね…。

で、あたくしもよーろっぱに向かうおんなのこたちが、おふねにのりこむのをみおくるれつにつきます。

(うう、昨日は散々でした…)

(いくらなんでも欧州に送り出す子だけじゃなくて他の優秀な子にまで精気を下賜するからですわよ…)

(そりゃ、ベラ子陛下がアルトさんも呼んで正解ですわ…)

えーと、べらこへいかもダリアもマリーちゃんもしにそうな顔をしていますね。

しかし、よーろっぱに赴任するおんなのこたちのまえですよ。

がんばっていいかおをして、おくりだしてあげましょう。

そして、しにそうな顔をしているのはオリューレとディードリアーネもです。

あなたたちは一千万卒にしょうかくしたのでしょう。

なんでそんなにつかれたかおをしているのですか。

(アルトさん…私は警備の騎士の精気授受だけで大変なのに、なんで茸島分校寮まで面倒見なきゃなんないんですか…請願入れていいですか…)

(アルト。あんたね、お師匠様と一晩あれしてごらんなさい…)

そして、べらこ陛下までもが。

べらこへいかは特に、つかれないはずですが。

(いえ、突かれたり突いたりでもう、散々なお正月ですよ…)

おかわいそうに。

よこにいるクリスさまになぐさめてもらってください。

というか、なぜクリスさままでがおみおくりに。

(成り行きです…ベラちゃんに連れて来られました…)

おかわいそうに。

そして、なぜかジョスリーヌさんがいます。

なんでまた。

(プロフェスール・マリーとマドモアゼル・フローレシェーネが使う車を持ち帰るためです…うう、Le jour de l'An…オショウガツからなんで私が一人でアトランティック2飛ばしてここまで来なきゃいけないんですかぁっ)

(アトランティック2の回航人員がいないせいです。スケアクロウを出せと言われても困るのです、今)

(オニですね…)

見れば、絶林檎林の向こうに、黒に近いはい色のひこうきがいます。

(車の2台くらい、船積みで処理してくださいよ…)

(ほう。ジョスリン…盗まれ号とジーナ母様の車の荷台と…そして聖院空港で積み込んでもらった463Lマスターパレットに今、何が積まれているか理解していますか)

(フラウ・ジョスリーヌ…あれを持ち帰らないとバーデン支部の皆が怒ります…私でも抑えられません…)

(フローレシェーネさんの言う通りでしてよ。あれに支部関係者全員に配るオモチとオショウユを積んでるのです、ジョスリン…事故は許されませんわよっ)

(フラウ・マリー…それに今回の航海は欧州の要人はもちろん、配属される少女女官の輸送が最優先です。マルセイユもアメリゴ・ヴェスプッチも船内を全て旅客優先にしておりますよね…)

どうも、おもちとくるまだけを先にもちかえるためによばれたようですね、ジョスリーヌさん。

(普通はオオミソカまでに用意するものではないのですか…いくら小官でも、モチを食する風習についての内容はある程度、理解してはいますよ…)

かわいそうに。

しかし、女官のみなさまにひごろのかんしゃを伝えるのもえらいひとのやくめなのです。

がんばりましょう。

(ものには程度があるのです!)

「わかりました。ジョスリン…あなたには精気を特別支給しましょう。ちょっと貴賓コテージに来てもらえますか」

えーと。

はんにゃのかお、というのですか。

むちをもってたつ、べらこへいか。

あーあ、というかおでマリーちゃんがジョスリーヌさんをみていますね。

-----

…そして、どらがならされます。

おふねをがんぺきにつなぎ止めていたなわはすでにはずされ、かんぱんからてをふるマリーちゃんたち。

まずは、スペインのおふねから先に出ていくようです。

「この段階ではまだ帆は下ろしませんね」と、べらこ陛下に教えていただきます。

「マルセイユ…オセアン型帆船の次に、アメリゴ・ヴェスプッチが出ていきますよ。発電装置の音が甲高くなったら岸壁を離れます」

そして、まよこにむけてすこしだけ動いたイタリアのおふねのおしりから、水がふきだしはじめます。

イタリアのひとたちをちゅうしんに、がんぺきのあたくしたちにむかっててをふる人々にこたえるべらこ陛下。

さらには、むこうのがんぺきからも、サンティシマというおふねが南洋島にむかってでていくようです。

あの、小山のようにおおきなあーくろいやるや、テンプレスにくらべればずっと小さいおふねですけど、それだけでみればりっぱなおふねです。

その、りっぱなおふねたちは沖に出ると、次々とほをおろしてそれぞれのもくてきちに向かいます。

「はぁ…やっと終わりましたよ…もう、あたしはお正月くらいのんびりしたいのに…」言うなり、ジョスリーヌさんをよっこらしょとかつぐべらこ陛下。

「いいですねジョスリン。重ねて申しますが、お餅をバーデン空港に持って行くのは重大な任務なのです。今からあたしがするのは、そのご褒美の前渡しを兼ねた激励ですからね…」

「もごーっ!もがもごごーっ!」

(アルト閣下!オリューレ局長!ショダイサマ!請願します!このエロ皇帝の暴虐については今年こそ懲罰で!)

(ジョスリン…あたくしが加減させますから、おもちは持ち帰って差し上げてくださいな…ええ、ジョスリンをはげまさないとマリアヴェッラはあたくしにおもちをくれないそうなので…)

(ショダイサマが賄賂に転んでどうするのですか!)

(ジョスリン。人誰しも弱みがあるのです。あなただって、貴腐ワインやトリュフにフォアグラ、そしてエスカルゴやラーナ…カエルに無縁な人生、送りたいものでしょうか?)

(へーか!それとこれとは話が別です!このアバズレエロ皇帝!)

(あたしは激務で気が立っているのです。せめてこれくらいのストレス発散はいいじゃないですか!)

まぁ、べらこへいかのおしごとに口をさしはさむのはひかえておきましょう。

あたくしはあくまでも将軍。

そして、聖院では警備局…痴女皇国では警務局をあずかるたちばなのです。

それにですねぇ、みんながたべるおもちをまもるたちばでもあるのです。

わかりますか、ジョスリーヌさん。

(小官の身の安全も守って下さい…さすがの小官もこの暴力女には負けるのです…)

「ジョスリーヌ母様、ヤブヘビという言葉があります」

おや。

みれば、アンヌマリーちゃん…こんかいは茸島いのこりですね…が、べらこ陛下のうしろから陛下のこかんをなでまわしています。

「ストラスブール到着後に転送で私を戻してもらえる許可を頂ければ、母様の乗ってきた飛行機に便乗も可能かと」

「そ、そうですね…アンヌマリーちゃんは飛行機の訓練も始めていましたね…」

と、急にしおしおとなってジョスリーヌさんをおろすべらこ陛下。

(ジョスリーヌ母様…ですからベラ子陛下を怒らせないようにしましょうよ…マリアンヌ母様を見習って…)

(しかし、べらこ陛下。アンヌマリーちゃんはにがてなのですか)

陛下がアンヌマリーちゃんにあちこちさわられているのに、なすがままです。

おめずらしい。

(マリーちゃんの娘さんだけはあるんですよ…あたしのごきげんのツボを突くのがうまいんです…)

なるほど、しょうらい有望ですね。

(アンヌマリーちゃん…機会があったらアルトさんのご機嫌も取るようにしてあげてくださいね…皇族や幹部に可愛がられるのも処世術ですからね…)

どうも、ほかの少女騎士のこたちとおなじで、べらこ陛下がおしえた子には特にあいじょうがわくようですね。

ですからジョスリーヌさんも、むすめさんの親こうこうだとおもって。

(姉様。それはいいんですけどね。ちょっとの間でいいから中東支部長、代わって頂けませんか)

ナディア。あなたの生まれこきょうは一応はあのあたりでしょうが。なにをわがまま言ってるのですか。

(あのですねぇ。わたくしは痴女皇国の方ですから物心ついた時は既に答志島だったんですよ?)

えええええ。

(それに中東支部はシェヘラザード様とアルテローゼ様が汎用女官を量産してまで人手不足を解消しようとしていた場所ですからね…結構広いんですよ?ペルシャやパキスタンあたりまで受け持ちですしっ)

(ふむ。ナディアフィール。アルトリーゼの出張要請ならば、マリアヴェッラ陛下にお願いしてみましょう。陛下、いかがなさいます)

と、今度はお師匠さまがべらこ陛下のちんぽを取り出してごそごそといじりはじめます。

(うう、アルトさん…シェヘラザードさんってアルトさんを更に熟女にした感じで攻めがすごいんですけど…例えて申し上げますと、アルトさんとハリティリーネさんを悪魔合体させたような)

ちょ、ちょっとまってくださいよべらこへいか。

いくらお師匠さまのおねがいでも、あたくしも警務局のおしごとがあるのですよ?

そして、あたくしはかくしん確信しました。

べらこ陛下は、こういう、いろじかけ込みのおねがいによわいおかただと。

(うん…ベラちゃんって、正面切って喧嘩を売ると怒るけど、こういう風に色仕掛け込みの泣き落としには結構弱いんだよね…こう言う所はジーナさんの娘さんだって思うよ…)

ええ、くりすさまがあきれてはります。

そして、あたくしは痴女皇国のあたくしがいつぞや、いぎりすにいかされてリバプールとやらであばれたり、ろんどんであばれたようなことと同じやらかしはさけたいのです。

(でも、ジョスリンを庇うアンヌマリーちゃんとか、ナディアさんを気遣うシェヘラザードさんのことを考えますとですねぇ…)

ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ。

…あたくしこそ、せいがんをしたくなりました。

べらこへいかにわがままをいうのはともかく、あたくしにいらんおしごとをおしつけるのに陛下を使うの、禁止してほしいのです。

いくらお師匠さまやいもうとのたのみでも、こればかりは。

(姉様。今、わたくしの横で乳上が言ってますよ。中東支部手伝う気がないのなら、こっち…東欧支部来て欲しいって。春先の雪解けで泥だらけになってる時期に向けて北方帝国をいじる準備があるし、ただでもアトス山とメテオラの教育環境整備とか色々あるからと)

(アルト閣下、いえアルトさん…私もそこの皇帝陛下に色々言われて大変なんですからね。本来は新年式で食べるはずだったお雑煮も味わう暇すらないかも知れないのですよ…? お船の食堂で振る舞って頂けるのがせめてもの救いもぐもぐ)

(ナディアちゃん…マリアだけどさ、アルトは北方帝国攻略まで短期間だけど体が空くはずだから、ベラ子に頼んでそっち行かせるように手配しとくよ。…アルト。そんな訳でお前、今から茸島の分校の食堂で生徒さんに振る舞うお雑煮、お前も食って来い。んで食ったら貴賓コテージの転送ゲートで痴女島戻って荷造りしろ。終わったらアメリゴ・ヴェスプッチの船上に飛ばすからな。今すぐ飛ばされるのが嫌ならさっさと食いに行け。以上だ)

えええええ。

なんちゅうことをいきなりいいだすのですか、よめは。

(アルトさん…アルトさんものほほんとは出来ない立場なのですよ…あたしのこき使われっぷりを体験してくださいよ…)

そ、そんな。

とつぜんのべらこ陛下のつきはなしに、がくぜんとします。

(いいですか…百億卒にされたということは、それだけの仕事をさせられるってことですよ…あたしは去年、それを思い知らされましたからね…)

なんということでしょうか。

あたくしのほうこそ、べらこ陛下にすがりつきたくなりました。

そんなあたくしの手を引いて、がっこうのほうへ行こうとするくりすさま。

(アルトさん…とりあえず、お雑煮を食べに行きましょう…あれ、ファインテックの食堂だと出しづらいみたいなので、僕も食べるなら分校の食堂に行ってくれってマリアがね)

ううううう。

こうなったら、べらこ陛下やお師匠さまの分まであたくしがたべておきましょう。

なんだかむかつきますので。

たべもののうらみは怖いそうですが、いきなりへんな出張のおしごとをおしつけられてもうらみはこわいのです。

(なんかオリューレさんにお説教してたことと、今言ってることが違うじゃないですかアルトさん!)

ふんっ。

お師匠さまとアンヌマリーちゃんにちんぽをいじられてあへあへしているあいだに、あたくしははらいせをするのです。

それに、くりすさまをほったらかしてなにをいろじかけに負けておられるのですか。

おぞうにをたべるついでに、くりすさまをたべますよ。

(鬼や、鬼がおる…)

(マリアヴェッラ陛下…あの、わたくしもやめてお雑煮を頂きたいのですが、何やら体がうずいて)

(シェヘラザード様…これ、風向きのせいです…このビーチの絶林檎、強毒種でよく効くのですよ…その絶林檎の毒の瘴気を吸ったせいだと思います…私も体がうずくのです…)

ええ、どうもさんにんとも、ぜつりんごの毒にやられたようす。

しかし、これはふくしゅうにはつごうのいい話でしょう。

べらこ陛下、げどくざいをおもとめであればあたくしの中東出張、とりけしてください。

きのうのばん、えろえろ行為ざんまいにふけるからと、ぜつりんごの解毒を切っておられたへいかが悪いのです。

(あたしを板挟みにしないでくださいぃいいいいいい)

ふんっ。それに、お師匠さまもお師匠さまですよ。

ここのぜつりんごは売春のためにきょうれつなものにされていると、きのこじまに赴任する女官には注意があったはずです。

そしてアンヌマリーちゃんも。あなたがそれをしらないわけはないでしょう。

おとこのこたちがおめこしたくなるように、きついやつを植えているはずですよ…。

おやオリューレ、あなたまで…。

(ううううう、昨日、お師匠様にお付き合いするために解毒処理を切ってたのよ…助けてアルト!)

みれば、ディードリアーネにおそわれています。

あんたらみんな、なにやってんですか。

あたくしがひとり白金衣を着て、おめこしたくなりすぎないようにしていたのがばかみたいではないですかっ。

(うぐぐぐぐぐ…アルトさんが正論すぎて言い返せない…)

ええ。ここは、さんばしでおめこをはじめかねないみんなをほったらかす場面です。

おしょうがつだからこそ、気をひきしめましょうよ。

(シェヘラザードさん!アルトさんを説き伏せてくださいよ…)

(へ、陛下、この場合はアルトリーゼが正しく思えます…むしろ陛下が理不尽に振る舞って頂く方が…)

(それが昨日、分体を出しまくるわで精製精気の供給が追いつかないんですよ…MIDIボディなのに妙な機能制限が…はっ、まさか!)

(エマ子です。かーさま、はっちゃけすぎなので機能制限入ってますよ…それにアルトさんが百億卒に上がったせいで、痴女種全体のステータスランク制限処理変更の最中みたいです…諦めて今すがりつかれている人から精気抜きしてください…それでおさまるはずです…)

えええええ殺生なとか、べらこへいかがいうてはりますが、じごうじとく自業自得

おぞうにがほしければ、さっさとおめこ終わらせておいかけてください。

あたくしはあさひを背にして、くりすさまとあるきだしました。

しんねんのさいしょの日にふさわしいふうけいにおもえます。

…うしろで、あんあん言ってるこえがしなければ!

---------------------

べらこ「アルトさんのはくじょうもの」

お師匠「陛下、これはアルトリーゼも怒るとは思います…確かにナディアフィールの泣き付きも処理せねばならぬとは言えど…」

あると「で、ほんとうにあたくしはさばさんど国にいかされるのですか」

べらこ「あるとさんおこってる…」

あると「あたりまえです。しんねん早々にっ」

なであ「困っておるのは本当なのですよ?」

お師匠「ナディアフィール…アルトリーゼをよろしくお願いしますよ」

あると「ええええええおししょうさまぁああああ」

なであ「とりあえずひとつきくらいでいいのです」

あると「ではナディアをひと突きで」

他全員(その一突きじゃねぇえええええええええええええ!)
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔女のなりそこない。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,218pt お気に入り:776

限界社畜は癒されたいだけなのに

BL / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:13

美少女な妹と地味な私、ちょっといろいろ拗らせています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:60

意味が分かると怖い話まとめ【解説付き】

ホラー / 連載中 24h.ポイント:809pt お気に入り:5

スイカの種を遠くまで飛ばす小説

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,506pt お気に入り:0

内気な私に悪役令嬢は務まりません!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:511pt お気に入り:520

毎日更新 【神とも魔神とも呼ばれた男】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:313pt お気に入り:8

処理中です...