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夏の仮装肝試し祭り!・6
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あのー、おかみさま。
あたしに何をやらせたい訳ですか。
事と次第によっては、美男公から預かっている短刀、使いますよ。
この前田藤四郎という短刀、名前からも分かる通り、前田慶次郎さんの実家の前田家に伝わる刀です。
そしてこの刀の由来ですが、慶次郎さんのお父さんの利政さんが持っておられたのと、鎌倉時代の粟田口藤四郎吉光という有名な職人さんが打たれたのでこのお名前になったそうです。
更にこの刀、とんでもないお値打ち物だそうですけど、なぜ美男公の手に渡ったのかは闇堕ちマリアのこのお話と、その前後で書かれています。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/60/
要は野に降って自分の力で身を立てるなら、この刀に匹敵する名品を自分で手に入れられるくらいになれ、そして返しに来いという約束めいた事をさせた訳です、慶次郎さん。
そして刀の由来と日本の武士の習慣や作法を姉とあたしから聞かされた美男公、さすがに紛失させるとあまりにまずいと焦った挙句、毛皮商人としての目処が立つまで預かって欲しいとあたしに頼み込んで来まして。
普通なら男の約束でしょうがと蹴り飛ばす話ですけど、今回の短刀、紛失させるとあまりにまずい代物です。
で、仕方なくあたしが預かることになりまして…聖院金衣保有宝物扱いとして、普段は懲罰具倉庫の中に入れて外道ちゃんの管理下に置いてもらっています。
(しかし、さすがに藤四郎の作だけはありますなぁ。普通やったら一月もあったら、あそこに入れたもんなら瘴気にやられて魔剣とか妖刀になるもんですけど、これはびくともしまへんで)と、こないだ銘品であることを聞かされたばかりなんですよ。
で、幽霊さんとおかみ様が地下墓所から出て来る際に外道ちゃんが気を利かせて「万が一ばけもんが出た際にはこれ使うてくださいと、べらこ陛下に」とおかみ様に預けてくれまして。
そして現在、あたしの右太腿部のホルスターに鞘ごと取り付けています。
試してはいませんが、おそらくこの刀、おかみ様やスクルドさんを切ったり刺したりすると、普通の人を針でつつく程度には痛がってもらえると思います。
つまり、神種族への懲罰に使えると思いますから。
「あちゃー、しもた…べらこにわたすんやなかった…」何でそう抜けてるんですか。
これ、初代様ならあたしがいらん事に使わないように、絶対に何かを仕掛けるとは思うんですけど。
(ほほほほほ。マリアヴェッラが持つと勃起が収まらなくなるとか程度しか出来ませんわよ…今の貴女は最低でも金衣血統同等、なまじの呪詛や呪縛は仕掛けた者に跳ね返りましてよ)はあ。
まぁともかく、高度一万メートルを対地速度時速900キロ以上で飛び抜けた結果、茸島の夕方のお食事時には間に合いそうです。
島の北側の痴女皇国茸島領にある保養所や聖院学院茸島分校、そして茸島自治領庁舎上空を飛び抜ける際に、連れて帰れだの左遷解除だのと言った心話が届いた気もしますが無視しました。
いえ、この後の作戦内容によっては痴女宮に戻すどころか、茸島行政「分局」ではなく、茸島「行政局」の局長への昇格すら有り得る話です。
つまり、茸島の女王。
(キノコの女王とかやめてください!…まぁ確かに陛下やマリアリーゼ陛下が言われた通りで、懲罰左遷ではなく一種の昇格だというのは赴任して一週間と経たずに理解いたしましたけど…)
(我々が今回来ているのは茸島を掌握するための作戦を立案するための偵察でもあります。今日来て顔も出さずにはいさようならという訳じゃありませんよ…早ければ数日中に再訪する事になりかねません。オリューレさん、そしてディードリアーネさんには既にお話の通り、茸島住民からの情報収集と…幽霊目撃の噂を島の南側に広める工作の指揮を引き続きお願いします)
へっへっへっ。
ええ、幽霊目撃の話、茸島では沈静化させるのではなく、逆に広めております。
流石に妖怪さんが来てもらうと、人の生き血を求めてうろつくのが分り切っていますからご遠慮願いましたが、もはや我々の忠実な協力者となった幽霊さんには一芝居打ってもらいましょう。
そして…場合によっては幽霊さんの補助が必要と考えています。
あたしが副操縦士席で悪人笑いをしている理由もお分かりでしょう。
あたしや姉からすると痴女島の騒ぎは確かに困るけど、同じことが痴女皇国の影響範囲外で起きた場合に介入するきっかけになります。
なーに、痴女島で幽霊狩りをしたせいでいられなくなった幽霊が茸島に化けて出た事にすればよいのです。
ただ、本物がいたらそれはそれであたしたちが介入して退治の名の下に捕獲する口実になります。
非協力的なら積極的にしばいてしまえばよい。
(ベラ子陛下が悪人に見えますね)
(確かに、うちのサリーちゃんやしほ子ちゃんも割とこういう無茶が好きです。しほちゃんなんてお父さんが墜落してたどり着いた島で俺は日本の王子だとかやった話を知ってますから、こちらの茸島には自分が行きたがってんですよ。わたしが日本の王女ですとやりたいようです)
(瞳さん…確かにうちらは悪者に見えるか知らんけどな、考えてもみなさい。今、下で暮らしている人らはなんで早々と夕飯作って食べるんか。そしていずれは地上に降りて見ることになると思うけど、日本の弥生時代レベルの暮らしをしとる者が大多数なんや)
(聖院のジーナさんが言われる意味はなんとなくわかります。痴女皇国が統治すれば暮らしは近代化され、農作物の出来不出来に生活を左右されたり伝染病や有毒生物に悩まされる事もなくなる、こうでしょうか)
(それだけじゃないわよ。ベトナム辺りでもそうだけど、連邦世界の東南アジアの鉄道って窓に金網をつけて走っていた時期があるところが多かったの)パイセンが瞳さんに対してお説教に入りましたけど。
(なんでそんな事を…)
(無賃乗車して窓から降りるのはまだマシよ。沿線の子供がいたずらで石を投げてくるの。つまり、そういう民度と治安から脱却するまで、独立から一世紀以上を要したり…未だにカイゼンできていない国すらあるのよ…)
(痴女皇国なら…あ、そうか。聖院学院がありますね。あそこなら文明的文化的な暮らしに必要な知識を否応なく覚えますし)
(そーゆー事。南洋王国以外の国に痴女皇国流の政策を普及する助けにもなんのよ、特定国の文明化。理に聡い支配者なら恭順を願い出るはず。それに役立つのが…実は聖母教ではなくてパンチさん宗教を予定してるの。東南アジアの国土や各国の国民性を考えた場合、土着宗教として適しているのはパンチさん宗教って話になってね)
(確かにバリ島でも仏教寺院やヒンズー教寺院が少なくないとは聞きましたけど)
(インドからの漂着や交易の影響よ。茸島はもちろん、痴女島にも仏教伝来の痕跡はあるからね。そして…あたしたちに有利なのは、まさに仏教の教祖様が陣営にいてる訳じゃん。民衆の思想啓蒙については仏教を広めるのにやぶさかではないわよ)
(聖母教はどうするんですか)
(瞳さん。尼さんって、仏教にもいなかったっけ)指摘するパイセン。
(あああああ! います!)
(でしょー? ならお寺建てて尼さんがお寺仕切ってもいい訳じゃん。最終的には痴女宮に買春に来てもらうか、デンパサールに娯楽館を建てるかの話になると思うけど、この世界なら尼さんが好色尼さんでも問題はないと思うわよっ。むしろ民衆に治療を施すには売春が不可欠なんだから、衆生救済になるわよっ)
実は比丘尼国では、試験的に尼寺を開いています。
理由、いわでもがな。
そして巫女さんより、尼さんの方が採用条件、緩め。
何故ならば前田まつさんのように、ご主人の死亡後に出家するようなケースもあるからです。
そして連邦世界ならともかく、痴女皇国世界では若返りなど造作もありません。
即ち、おばちゃんでもリフレッシュしてしまえば以下略という訳です。
何でパイセンがここまで饒舌なのか。
パイセンの今の立場は痴女皇国国土局長。
つまり、茸島開発は将来、自分の仕事です。
そして通商局に行かれたクレーゼおばさまからも、茸島での農作物生産は強く要望されています。
(聖院時代から食べ物は茸島から買い付けることが多かったのですよ。ほらベラちゃん、門前町の市場やみなと…あれ、聖院でいただくごはんに使う食料を調達する商人をつのっていたなごりなのですよ)
今は痴女皇国直営に等しい水田や、米大陸からの輸入が多数ですからねぇ。
ただ、近場の上に水利さえ確保すれば茸島の農地化は魅力です。
精気提供のための人口確保にもうってつけ。
単なる植民地経営めいたものではなく、将来的に自治が可能な文明国家を築けるならば、住民に自治権を戻すのもやぶさかではありません。
ま、その辺りは業の深い内務局長様のお仕事ではあります。
という訳で雅美さん、頑張ってください。
(何を投げてるのよ!…確かにさ、茸島行政分局はあたしの管轄だけど、実際にはオリューレさんにやらせてみせる意味もあるから、割と任せてる所はあるわよ。クレーゼさんとか二代目様とかに門前町や痴女島統治の話を聞きながら進めてくれてるみたいだけど)
グギギと唸っている内務局長様ですが、実のところ雅美さん、全くノーチェックでオリューレさんのやりたい放題にさせていないのは確認済み。
それどころか行政分局と警備本部が合同庁舎で、現時点ではお部屋すらほぼ同じでディードリアーネさんと机を並べているのを良いことに、相互監視するよう仕向けています。
更には二人がつるんで内緒の事をしようとも無理なように、部下には紫薔薇経験者を混ぜて内偵させている模様。
(個人的には週一で顔を見に行ってるけど、紫薔薇をうまく使うならそれはそれで認められる話になるから頑張りなさいって励ましてるから)
こういう抜け目のなさが雅美さんなんですよね…。
これで少なくともオリューレさん、雅美さんを頼るしかなくなります。
そして警務局の管轄のはずのディードリアーネさんですが、これまた茸島警備本部は痴女島から遠いために何かあれば警務局ではなく、内務局が即応する話になっています。
そんな横割り行政がOKなのも、騎士団長兼副局長が娘さんだからでもあります。
更には離宮にいる黒薔薇も、場合によってはアルトさんかペルセポネーゼちゃんに一声かけたら指揮下に入れる事も可能。
つまり、今の雅美さん…投げられるだけの権力を与えられているんですよ。だから頑張って!
(鬼!悪魔!初代様!マリアちゃん!ベラちゃん!)
(雅美さんなんて事申されますの!マリアヴェッラと同列扱いなんて!)
(初代様に同じ!雅美さん、内務が意外に大変なのは分かるけどさぁ…そんだけの権限渡すの、あたしも苦労したんだよ?)
ええそうです。誰が雅美さんを庇っているか、これで分かりますよね。初代様と姉がぎゃーぎゃー喚いておりますけどねぇっ。
むろんあたしも口を挟んでいますけど、言うならば内務局長の権限範囲を決めたの、この2人です。
…1人、おばちゃんで神様がいますけど、若く美しいお姉さま呼ばわりされたくば、あたしに文句を言うなっ。
(雅美さん。マリアヴェッラがこの約束を守るとお思いかしら。賭けに勝てば先程の暴言を許して差し上げます)
ふっ、血の約束、つまりマフィアの誓いの国の血を半分は引くこのあたしに約束の価値を問うなどとは。
(同盟破ってノモンハンとか契約破ってサハリン2とかやった国の人間の血「も」引いているのを忘れている人間に賭ける価値はありますか、初代様)
(初代様。一応、痴女皇国のうちとこのうちはガチにそこの出身ですねんけど…)
(聖母様は除外。これで美しく解決するのでは?)
みんな無茶苦茶言うなぁ。
特に雅美さん、あたしが約束を破った事はあるんですかっ。いい加減な事を言うとアナルにラスプーチンちんですよっ。
(だからベラちゃん、痔主ネタはやめようって…それより茸島の偵察、ちゃんとやってよ?)
はいはい。
既にパイセンと聖院エマちゃんの分体が偵察席の操作を開始していますよ。
夕暮れの美しい空から見下ろす茸島、やはりデンパサールに該当する地域のあちこちから炊事の煙らしきが立ち昇っています。
(ベラちゃん、普通の人はさすがに肉眼で見えないって…とりあえず衛星データリンクでテンプレス2世に送ってるけど、これでいいのよね)
(室見さん、もしデータエラーがあったら警報が鳴りますから私が対処しますよ。偵察マップに出ているスクエアブロックで緑じゃないままの場所があったら教えて下さい)偵察漏れのあった場所はきっちりやり直して調べるようですね。
これが高度3万メートルをマックスリー…マッハ3以上で飛ぶバンシーであれば、ちょっとミスっただけでICDアシストマニューバを入れても数十キロから百キロの大きな旋回でやり直しになってしまうんですけど、スケアクロウが元来飛んでいる高さの半分から三分の一の高度であれば余裕、余裕。
あと、ガンシップという飛行機のように、地上をレールガンや光線砲で掃射する際の飛行コースがまさにこれでして、目標地域の回りをぐるぐる旋回するんですよ。
(ただ、昔のプロペラ機時代のように機体を大きくバンクさせんでも、水平状態を保ちながら旋回もできるからな。これの砲関係はファイアリングアームっちゅうて、左右両脇から生えてくる腕についてるから複葉機状態でもある程度の下方射界は確保できてるんや…聖院世界で使う事はまず、ないとは思うけどな)
しかし、今回の偵察で見て回る面積…単純な大きさで言うと和歌山県の下半分…飯島早苗さんのお勤めだった工場ですとか、ナディアさんの嫁ぎ先の九鬼家の鳥羽城があったりする辺りから下の紀伊半島をくるっと回るようなものです。
成層圏を飛ぶ飛行機で紀伊半島や高知県・日本海沿岸といった長い海岸線を持つ地域を飛び抜けた人なら、その大きさや高度1万メートルからの眺めを理解できると思うのですけど、よくこんな高さから人間がどこに住んでるかの目星をつけられると思った方へ。
この高さからでも、特定の相手を狙って吸い取るなんて事もできるんですよ、あたしたち…。
(いよっしゃ、茸島の現時点でのおおよその性別年齢別人口分布、取れましたで)
痴女皇国の方のエマちゃんから連絡が入ります。
ええ、あたしも実はセンサー役、やってました…。
これから分析に入るそうですけど、その分析理由。
(んなもん祭りをでっち上げるにしても、住民の由来とか信仰とか思考傾向とか色々調べる必要、あるやないですか…今、マリアねーさんの分体と雅美さんがテンプレス2世のCICに来てうちと一緒に取得データ、見てますからね?)
だそうです。
そして、滞空を続ける事1時間。
いよいよ日は沈み、今回の調査の目玉たる「夜のお楽しみタイムを上空から調査する」作業に移る訳ですが…。
ええ、スケアクロウのセンサー類と痴女種の知覚を総動員して、下の皆様の性行為を覗くという作業、正直言えば躊躇したい気もあり、覗きたい気もあり。
(この時代の現地住民やから単純にしてはるだけでしょ…それとも茸島行政支局の官舎覗いてオリューレさんとかディードリアーネさんの絡みも取得するんですか?)
それはやめようね、エマちゃん。今更だから。
あとね、クリスおじさま…あたしの分体がお相手してるか、アグネスおばさまがこっそり来て何かしてる場合、あるからね。保養所近辺の施設は武士の情けで見ちゃダメよっ。
パイセンもそっちにセンサー向けたら、しばきますからね。
(ベラちゃん。あたしでも保養所の中までは防諜措置があるからわかんないけど、何やってるか想像つくわよ。オリューレさんとかならあたしの能力でも普通に見れてしまうんだけど)
ええー。パイセンがそこまで痴女種能力を使えるとはっ。
(何年痴女宮で働いてるって思ってんの…いい加減覚えもするわよ…)
(とりあえず完全な日没後に向けて高度を落として行くで。山を避けて島の外周を回るコースで、CAS300ノットを維持。痴女宮エマ子、減速の必要があればCAS150ノットまでは余裕で落とせるから連絡してな)
(へいっ聖院母様、よろしくお願いしますっ)
そしてICD出力を絞ったスケアクロウ、割と素早く高度を落として行きます。
(沈下率3,000ft/minで下ろすからな)
(ひぃいいいいい、何か怖いからもっとゆっくり!)
後ろの席でスクルドさんがガタガタ震えていますが、実はこの降下速度…旅客機よりはかなり速いのです。
具体的に申しますと、毎分1,000メートル近い速さで高度を下げています。
つまり、高層ビル用の高速エレベーターで、皆様の世界で一番速い中国や台湾のビルの毎分1千メートル以上という速度、あれを全員が感じていると思って下さい。
むろん、ICD/Gが働いていますから、床に押し付けられるような感覚はほぼゼロに等しいのですが、スクルドさんは神様です。
普通の人間なら感じられない事でも感じてしまうのでしょう。
(緊急降下で1万フィート/毎分よりはマシなんですよ…何でしたら戦闘機に乗せて超音速降下…パワーダイブというんですけど、ちょっとやってみましょうか。あたしもやりたくないんですけど、緊急降下手順でもありますので一応できるんですよ)
(やらんでいい!)
キレてはりますね。
言っときますけど、それ以上にある意味で怖いもの、痴女皇国にありますからね。
痴女種の戦闘時の動きほどじゃありませんけど、普通の人は目を回すどころじゃない動きをするもの。
そう、あおかん号…二人乗りですが強化倍力防護装甲、いわゆる大型パワードスーツのTAPPS7です。
フランスとイスラエルの共同開発機のTAPPS6・アルルカンもそうですが、機体飛行やジャンプ用の小型ICD/G機関を積んでいますから、立体的な機動ができるんですよあれ。
痴女皇国ではジーナ母様が変態的な用途で使うか、音響兵器などを使って痴女種の戦闘を支援したり、はたまた指揮管制機能を使用するような事でしか使っていませんけど、元来は火器を手持ちまたは装着装備して地上の最前線で戦う、いわば空飛ぶ人型戦車です。
…そうだ、母様に頼んであれの後ろにスクルドさんを…。
(マリアヴェッラ…本当にあんた、マウントを取るって言うのかしら…主導権を握りたがるわね…伊藤瞳、こういう人物をどう思うか聞かせて欲しいわね)
えええええ!何という反則。
(ベラ子陛下、いえ…ベラちゃん、スクルドさんは真剣に飛行機が苦手みたいだからやめたげて下さい。あと、正直…あたしも普通の飛行機しか知らないから結構怖いのよ? 軍用機って派手に動くとは聞いていたし、宇賀神さんの車の運転知ってるからまだ平静は保てているけど…)
うう、これは盲点でした。
スクルドさん以外にも飛行機が苦手な人がいるとはぁっ。
これは瞳さん、あの母様の単発機の後ろでちょっと訓練ですね。
痴女皇国の幹部、何だかんだ言ってバンシーの後ろに乗せる可能性、ゼロではありません。
転送だけで何とかなる楽なお仕事でないのは、バーデン=バーデン作戦など過去のお話でお分かりでしょう。
あたしの身体が空き次第、慣れてもらうわよっ。
これは嫌がらせでも何でもありません。
あの雅美さんですら、スケアクロウの操縦体験まで至っているのです。
あたしだって本当は嫌なんですけど、スケアクロウの操縦資格を取らされました。
いいですね、とりあえず今から、比較的低い高度で乱気流の影響も考えられるのです。
みんな耐えて飛ぶのですから、頑張ってください。これは真剣にお願いしますよ。
(なんで人間って飛行機みたいなもの発明したのよ…ラケシス!アトロポス!クロト!あんたら何作らせてんの…)
(ううううう、こんなに揺れるなんて…何かこう、遊園地と違って派手じゃないんですけど微妙に揺れるのが…)
「なぁベラちゃん、痴女皇国のうちも言うてたけどさ、何で女ってこんなに飛行機、苦手なんやろ…聖院でも飛行適性のある女官が少なくてな…」
ああ、聖院側でも悩みのタネでしたね。
欧米では結構、パイロット職の女性も多いというのに。
しかも戦闘機とか攻撃機とか平気で飛ばしてますよ。
あたしもそれを知ってるから頑張って免許、取ったんです。
できる女は飛べる。飛べない女はただの女なのですっ。
(ただの女でいいです…)
(伊藤瞳に同じ。ただの女神様でいいから!)
あかん。
とりあえずスクルドさんは除外するとしてもですね、瞳さん、特訓ね。
乗って悲鳴を上げないようになってくれるだけでいいから。
あとね…テンプレス2世。
知ってると思いますけど、あれも浮いて飛ぶからね。
あんなでっかいものですけど、低空ではそれなりに乱流の影響、受けますからね。
日本海とか荒れた海を行く大型フェリー程度には揺れますよ。
ええ、もはや反論する気力を無くした日本人女性と女神様の消沈が伝わってきます。
しかし、そこに追い討ちが。
(スケアクロウからの空挺降下訓練って、痴女皇国でしてないんですか?)
言い出したのは篠村直美さん。
そう、お父様は陸上自衛軍出身者。
(何でしたら習志野の第一降下に頼んで降下訓練しましょうか。ほら、痴女皇国で開発したバックパック式の滑空翼。あれで飛ぶのって、聖院だと万卒以上の騎士資格者は必須技能項目ですよ。聖院山の上の方からの降下飛行、やらされま…あー、瞳さんのステータスだとあれ、やらされますね)
とうとう、後ろの方から、ぎゃあああああという泣き声がしました。
待って瞳さん。あれの免除、聖院母様に頼んであげますから、泣かないで。
その代わりにあたしの後ろで飛ぶこと。
これを交換条件に出しますから、それくらいは我慢してね。
(はい…おむつ付けていいですか…)
あー大丈夫、戦闘機用のゲストスーツと専用下着、手配します。
あれだと飛行中にトイレ行けるからね。うちの下着だと自動浄化機能もありますから、下半身は気持ち悪くなりませんよ。
…だから泣かないでください!
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ジーナ「なんでみんな飛行機、苦手なんや…」
マリア「聖院かーさん、そりゃ仕方ないよ。人間は元来、地面に足を付けて重力を感じるのが正常な生態だろ。祇園祭のお稚児さんみたいに指定期間中は足を地面につけちゃダメって掟があるとか、昔の航宙船とか宇宙施設みたいに無重力がデフォルトな場所で暮らしてるなら話は別だけどさ、そんな暮らししてるのは基本的に特殊な人たちだから…」
べらこ「月に行くだけで瞳さんが泣き叫びそうな予感」
ジーナ「そういえば天の声の知り合いの腐れ縁、ひょんなことで失踪した昔の男と香港で再会した後、何度か向こうに行って遠距離恋愛していたらしい」
べらこ「失踪したという時点で普通の職業じゃない気がします」
ジーナ「会社経営者だったそうやけどな。で、香港と大阪の間やったら当たり前やけど飛行機やろ」
べらこ「ですね」
ジーナ「ある時にエアポケットに落ちたせいで怖がり、隣の男性に事情を話してずっと手を握らせてもらっていたそうや」
べらこ「何かこう、ある意味でご褒美のようですごい迷惑という気が」
ジーナ「まぁ、その女性はそれなりの美人だが特徴的な外観なのであまり詳細を書けんらしいねんけど、一言で言うと極道の娘の女性教師役な外観らしい」
べらこ「ああ、あの百合疑惑の…かなりの美人ですね」
ジーナ「でなぁ。香港いうて何か閃くもん、あらへんか」
べらこ「香港までって何か怖いところ、飛ぶんですか」
どめき「ふっふっふっ、伊藤さんと名前が被るからちょっと旧姓で出ましたー。ベラちゃん。今度築城に来たら昔の香港の空港がどんな難しいか、シミュレータで体験さしたげるよ」
べらこ「百目鬼瞳さん改め菅野瞳さん、その空港とは」
マリア「あー、啓徳空港か…うん、あそこは怖いマジ怖いと思うぞ」
べらこ(啓徳空港への着陸動画や説明コンテンツを見る)
https://youtu.be/3PCOcyt7BPI
べらこ「ぎゃああああああ」
ジーナ「あれは当時、しゃあないとは言え世界トップ10に入る難しい空港やったからな…」
べらこ「これ、よくみんな着陸してましたね…降りてる飛行機が軒並み、カニさんみたいに真横向きかけてるじゃないですか。クラブ着陸はあたしも習いましたけど、ここまで横にするのってそうそうありませんよ…」
ジーナ「万一、スケアクロウで成田か伊丹に降りる時はこれに近いと思いなさい…。で、腐れ縁嬢の時はチュラップコク空港が出来てたから、このデンジャラスな着陸は経験せんですんだみたいやけどな」
べらこ「スクルドさんの訓練の時は複座型でやりましょう。横向けて降ろす着陸を隣で見てもらう方向で」
すくるど「あんたねぇ…」
べらこ「ですから、あの蟹さん姿勢の着陸は飛行機の操縦として正しい操作なんですってば…」
どめき「まー戦闘機の緊急着陸よりマシよ。ニンフェットの場合、緊急用着陸フックを降ろして空母の着艦よろしく強制的にアレスティングワイヤに引っ掛けて停めるからね。ドラッグシュート…減速用パラシュートだと熱核融合ジェットエンジンの排気で燃えてしまうから」
ジーナ「ちなみにバンシーの緊急着陸時も同じようにアレスティングフックを降ろしてやるからな」
すくるど(飛行機の発明だけは何としてもやめさせるべきね…)
ひとみ(たとえ人類の発展に影響があったとしても、あんなものが浮いて飛ぶのはできればやめてほしいです…)
マリア「ある意味で女らしい発想だが、瞳さん…残念だがその提案は却下だ…飛行機が発明されないと、もう一つ困ったことが起きるんだよ…」
ひとみ「何なのでしょうか…」
マリア「ずばり、船酔いだ。これの体験は難しくない。うちの実習船のエルトゥールル号に乗るか、茸島定期便のサンティシマ型帆船に乗れば体験できるんだよ…航海中に一度は絶対、例の水流ジェットエンジンを全開して全力航行するからな。あれが結構揺れんのよまた」
なであ「あれに慣れるのは海事部の必須項目です。船酔いくらいでだらしのない」
べらこ「男性の仕事もあたしたち女官がやりますからねぇ、痴女皇国では…」
ひとみ「男女差別があってもいいと思えて来ました…」
すくるど「女がふんぞり返る国にしなさいよ!痴女の国でしょ!」
他全員「ダメ!女だけで国を作った話の末路になるからダメ!」
マリア(いや実際、そうなるのが困るから男性の仕事もやらせてんだよね、女官には…)
あたしに何をやらせたい訳ですか。
事と次第によっては、美男公から預かっている短刀、使いますよ。
この前田藤四郎という短刀、名前からも分かる通り、前田慶次郎さんの実家の前田家に伝わる刀です。
そしてこの刀の由来ですが、慶次郎さんのお父さんの利政さんが持っておられたのと、鎌倉時代の粟田口藤四郎吉光という有名な職人さんが打たれたのでこのお名前になったそうです。
更にこの刀、とんでもないお値打ち物だそうですけど、なぜ美男公の手に渡ったのかは闇堕ちマリアのこのお話と、その前後で書かれています。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/60/
要は野に降って自分の力で身を立てるなら、この刀に匹敵する名品を自分で手に入れられるくらいになれ、そして返しに来いという約束めいた事をさせた訳です、慶次郎さん。
そして刀の由来と日本の武士の習慣や作法を姉とあたしから聞かされた美男公、さすがに紛失させるとあまりにまずいと焦った挙句、毛皮商人としての目処が立つまで預かって欲しいとあたしに頼み込んで来まして。
普通なら男の約束でしょうがと蹴り飛ばす話ですけど、今回の短刀、紛失させるとあまりにまずい代物です。
で、仕方なくあたしが預かることになりまして…聖院金衣保有宝物扱いとして、普段は懲罰具倉庫の中に入れて外道ちゃんの管理下に置いてもらっています。
(しかし、さすがに藤四郎の作だけはありますなぁ。普通やったら一月もあったら、あそこに入れたもんなら瘴気にやられて魔剣とか妖刀になるもんですけど、これはびくともしまへんで)と、こないだ銘品であることを聞かされたばかりなんですよ。
で、幽霊さんとおかみ様が地下墓所から出て来る際に外道ちゃんが気を利かせて「万が一ばけもんが出た際にはこれ使うてくださいと、べらこ陛下に」とおかみ様に預けてくれまして。
そして現在、あたしの右太腿部のホルスターに鞘ごと取り付けています。
試してはいませんが、おそらくこの刀、おかみ様やスクルドさんを切ったり刺したりすると、普通の人を針でつつく程度には痛がってもらえると思います。
つまり、神種族への懲罰に使えると思いますから。
「あちゃー、しもた…べらこにわたすんやなかった…」何でそう抜けてるんですか。
これ、初代様ならあたしがいらん事に使わないように、絶対に何かを仕掛けるとは思うんですけど。
(ほほほほほ。マリアヴェッラが持つと勃起が収まらなくなるとか程度しか出来ませんわよ…今の貴女は最低でも金衣血統同等、なまじの呪詛や呪縛は仕掛けた者に跳ね返りましてよ)はあ。
まぁともかく、高度一万メートルを対地速度時速900キロ以上で飛び抜けた結果、茸島の夕方のお食事時には間に合いそうです。
島の北側の痴女皇国茸島領にある保養所や聖院学院茸島分校、そして茸島自治領庁舎上空を飛び抜ける際に、連れて帰れだの左遷解除だのと言った心話が届いた気もしますが無視しました。
いえ、この後の作戦内容によっては痴女宮に戻すどころか、茸島行政「分局」ではなく、茸島「行政局」の局長への昇格すら有り得る話です。
つまり、茸島の女王。
(キノコの女王とかやめてください!…まぁ確かに陛下やマリアリーゼ陛下が言われた通りで、懲罰左遷ではなく一種の昇格だというのは赴任して一週間と経たずに理解いたしましたけど…)
(我々が今回来ているのは茸島を掌握するための作戦を立案するための偵察でもあります。今日来て顔も出さずにはいさようならという訳じゃありませんよ…早ければ数日中に再訪する事になりかねません。オリューレさん、そしてディードリアーネさんには既にお話の通り、茸島住民からの情報収集と…幽霊目撃の噂を島の南側に広める工作の指揮を引き続きお願いします)
へっへっへっ。
ええ、幽霊目撃の話、茸島では沈静化させるのではなく、逆に広めております。
流石に妖怪さんが来てもらうと、人の生き血を求めてうろつくのが分り切っていますからご遠慮願いましたが、もはや我々の忠実な協力者となった幽霊さんには一芝居打ってもらいましょう。
そして…場合によっては幽霊さんの補助が必要と考えています。
あたしが副操縦士席で悪人笑いをしている理由もお分かりでしょう。
あたしや姉からすると痴女島の騒ぎは確かに困るけど、同じことが痴女皇国の影響範囲外で起きた場合に介入するきっかけになります。
なーに、痴女島で幽霊狩りをしたせいでいられなくなった幽霊が茸島に化けて出た事にすればよいのです。
ただ、本物がいたらそれはそれであたしたちが介入して退治の名の下に捕獲する口実になります。
非協力的なら積極的にしばいてしまえばよい。
(ベラ子陛下が悪人に見えますね)
(確かに、うちのサリーちゃんやしほ子ちゃんも割とこういう無茶が好きです。しほちゃんなんてお父さんが墜落してたどり着いた島で俺は日本の王子だとかやった話を知ってますから、こちらの茸島には自分が行きたがってんですよ。わたしが日本の王女ですとやりたいようです)
(瞳さん…確かにうちらは悪者に見えるか知らんけどな、考えてもみなさい。今、下で暮らしている人らはなんで早々と夕飯作って食べるんか。そしていずれは地上に降りて見ることになると思うけど、日本の弥生時代レベルの暮らしをしとる者が大多数なんや)
(聖院のジーナさんが言われる意味はなんとなくわかります。痴女皇国が統治すれば暮らしは近代化され、農作物の出来不出来に生活を左右されたり伝染病や有毒生物に悩まされる事もなくなる、こうでしょうか)
(それだけじゃないわよ。ベトナム辺りでもそうだけど、連邦世界の東南アジアの鉄道って窓に金網をつけて走っていた時期があるところが多かったの)パイセンが瞳さんに対してお説教に入りましたけど。
(なんでそんな事を…)
(無賃乗車して窓から降りるのはまだマシよ。沿線の子供がいたずらで石を投げてくるの。つまり、そういう民度と治安から脱却するまで、独立から一世紀以上を要したり…未だにカイゼンできていない国すらあるのよ…)
(痴女皇国なら…あ、そうか。聖院学院がありますね。あそこなら文明的文化的な暮らしに必要な知識を否応なく覚えますし)
(そーゆー事。南洋王国以外の国に痴女皇国流の政策を普及する助けにもなんのよ、特定国の文明化。理に聡い支配者なら恭順を願い出るはず。それに役立つのが…実は聖母教ではなくてパンチさん宗教を予定してるの。東南アジアの国土や各国の国民性を考えた場合、土着宗教として適しているのはパンチさん宗教って話になってね)
(確かにバリ島でも仏教寺院やヒンズー教寺院が少なくないとは聞きましたけど)
(インドからの漂着や交易の影響よ。茸島はもちろん、痴女島にも仏教伝来の痕跡はあるからね。そして…あたしたちに有利なのは、まさに仏教の教祖様が陣営にいてる訳じゃん。民衆の思想啓蒙については仏教を広めるのにやぶさかではないわよ)
(聖母教はどうするんですか)
(瞳さん。尼さんって、仏教にもいなかったっけ)指摘するパイセン。
(あああああ! います!)
(でしょー? ならお寺建てて尼さんがお寺仕切ってもいい訳じゃん。最終的には痴女宮に買春に来てもらうか、デンパサールに娯楽館を建てるかの話になると思うけど、この世界なら尼さんが好色尼さんでも問題はないと思うわよっ。むしろ民衆に治療を施すには売春が不可欠なんだから、衆生救済になるわよっ)
実は比丘尼国では、試験的に尼寺を開いています。
理由、いわでもがな。
そして巫女さんより、尼さんの方が採用条件、緩め。
何故ならば前田まつさんのように、ご主人の死亡後に出家するようなケースもあるからです。
そして連邦世界ならともかく、痴女皇国世界では若返りなど造作もありません。
即ち、おばちゃんでもリフレッシュしてしまえば以下略という訳です。
何でパイセンがここまで饒舌なのか。
パイセンの今の立場は痴女皇国国土局長。
つまり、茸島開発は将来、自分の仕事です。
そして通商局に行かれたクレーゼおばさまからも、茸島での農作物生産は強く要望されています。
(聖院時代から食べ物は茸島から買い付けることが多かったのですよ。ほらベラちゃん、門前町の市場やみなと…あれ、聖院でいただくごはんに使う食料を調達する商人をつのっていたなごりなのですよ)
今は痴女皇国直営に等しい水田や、米大陸からの輸入が多数ですからねぇ。
ただ、近場の上に水利さえ確保すれば茸島の農地化は魅力です。
精気提供のための人口確保にもうってつけ。
単なる植民地経営めいたものではなく、将来的に自治が可能な文明国家を築けるならば、住民に自治権を戻すのもやぶさかではありません。
ま、その辺りは業の深い内務局長様のお仕事ではあります。
という訳で雅美さん、頑張ってください。
(何を投げてるのよ!…確かにさ、茸島行政分局はあたしの管轄だけど、実際にはオリューレさんにやらせてみせる意味もあるから、割と任せてる所はあるわよ。クレーゼさんとか二代目様とかに門前町や痴女島統治の話を聞きながら進めてくれてるみたいだけど)
グギギと唸っている内務局長様ですが、実のところ雅美さん、全くノーチェックでオリューレさんのやりたい放題にさせていないのは確認済み。
それどころか行政分局と警備本部が合同庁舎で、現時点ではお部屋すらほぼ同じでディードリアーネさんと机を並べているのを良いことに、相互監視するよう仕向けています。
更には二人がつるんで内緒の事をしようとも無理なように、部下には紫薔薇経験者を混ぜて内偵させている模様。
(個人的には週一で顔を見に行ってるけど、紫薔薇をうまく使うならそれはそれで認められる話になるから頑張りなさいって励ましてるから)
こういう抜け目のなさが雅美さんなんですよね…。
これで少なくともオリューレさん、雅美さんを頼るしかなくなります。
そして警務局の管轄のはずのディードリアーネさんですが、これまた茸島警備本部は痴女島から遠いために何かあれば警務局ではなく、内務局が即応する話になっています。
そんな横割り行政がOKなのも、騎士団長兼副局長が娘さんだからでもあります。
更には離宮にいる黒薔薇も、場合によってはアルトさんかペルセポネーゼちゃんに一声かけたら指揮下に入れる事も可能。
つまり、今の雅美さん…投げられるだけの権力を与えられているんですよ。だから頑張って!
(鬼!悪魔!初代様!マリアちゃん!ベラちゃん!)
(雅美さんなんて事申されますの!マリアヴェッラと同列扱いなんて!)
(初代様に同じ!雅美さん、内務が意外に大変なのは分かるけどさぁ…そんだけの権限渡すの、あたしも苦労したんだよ?)
ええそうです。誰が雅美さんを庇っているか、これで分かりますよね。初代様と姉がぎゃーぎゃー喚いておりますけどねぇっ。
むろんあたしも口を挟んでいますけど、言うならば内務局長の権限範囲を決めたの、この2人です。
…1人、おばちゃんで神様がいますけど、若く美しいお姉さま呼ばわりされたくば、あたしに文句を言うなっ。
(雅美さん。マリアヴェッラがこの約束を守るとお思いかしら。賭けに勝てば先程の暴言を許して差し上げます)
ふっ、血の約束、つまりマフィアの誓いの国の血を半分は引くこのあたしに約束の価値を問うなどとは。
(同盟破ってノモンハンとか契約破ってサハリン2とかやった国の人間の血「も」引いているのを忘れている人間に賭ける価値はありますか、初代様)
(初代様。一応、痴女皇国のうちとこのうちはガチにそこの出身ですねんけど…)
(聖母様は除外。これで美しく解決するのでは?)
みんな無茶苦茶言うなぁ。
特に雅美さん、あたしが約束を破った事はあるんですかっ。いい加減な事を言うとアナルにラスプーチンちんですよっ。
(だからベラちゃん、痔主ネタはやめようって…それより茸島の偵察、ちゃんとやってよ?)
はいはい。
既にパイセンと聖院エマちゃんの分体が偵察席の操作を開始していますよ。
夕暮れの美しい空から見下ろす茸島、やはりデンパサールに該当する地域のあちこちから炊事の煙らしきが立ち昇っています。
(ベラちゃん、普通の人はさすがに肉眼で見えないって…とりあえず衛星データリンクでテンプレス2世に送ってるけど、これでいいのよね)
(室見さん、もしデータエラーがあったら警報が鳴りますから私が対処しますよ。偵察マップに出ているスクエアブロックで緑じゃないままの場所があったら教えて下さい)偵察漏れのあった場所はきっちりやり直して調べるようですね。
これが高度3万メートルをマックスリー…マッハ3以上で飛ぶバンシーであれば、ちょっとミスっただけでICDアシストマニューバを入れても数十キロから百キロの大きな旋回でやり直しになってしまうんですけど、スケアクロウが元来飛んでいる高さの半分から三分の一の高度であれば余裕、余裕。
あと、ガンシップという飛行機のように、地上をレールガンや光線砲で掃射する際の飛行コースがまさにこれでして、目標地域の回りをぐるぐる旋回するんですよ。
(ただ、昔のプロペラ機時代のように機体を大きくバンクさせんでも、水平状態を保ちながら旋回もできるからな。これの砲関係はファイアリングアームっちゅうて、左右両脇から生えてくる腕についてるから複葉機状態でもある程度の下方射界は確保できてるんや…聖院世界で使う事はまず、ないとは思うけどな)
しかし、今回の偵察で見て回る面積…単純な大きさで言うと和歌山県の下半分…飯島早苗さんのお勤めだった工場ですとか、ナディアさんの嫁ぎ先の九鬼家の鳥羽城があったりする辺りから下の紀伊半島をくるっと回るようなものです。
成層圏を飛ぶ飛行機で紀伊半島や高知県・日本海沿岸といった長い海岸線を持つ地域を飛び抜けた人なら、その大きさや高度1万メートルからの眺めを理解できると思うのですけど、よくこんな高さから人間がどこに住んでるかの目星をつけられると思った方へ。
この高さからでも、特定の相手を狙って吸い取るなんて事もできるんですよ、あたしたち…。
(いよっしゃ、茸島の現時点でのおおよその性別年齢別人口分布、取れましたで)
痴女皇国の方のエマちゃんから連絡が入ります。
ええ、あたしも実はセンサー役、やってました…。
これから分析に入るそうですけど、その分析理由。
(んなもん祭りをでっち上げるにしても、住民の由来とか信仰とか思考傾向とか色々調べる必要、あるやないですか…今、マリアねーさんの分体と雅美さんがテンプレス2世のCICに来てうちと一緒に取得データ、見てますからね?)
だそうです。
そして、滞空を続ける事1時間。
いよいよ日は沈み、今回の調査の目玉たる「夜のお楽しみタイムを上空から調査する」作業に移る訳ですが…。
ええ、スケアクロウのセンサー類と痴女種の知覚を総動員して、下の皆様の性行為を覗くという作業、正直言えば躊躇したい気もあり、覗きたい気もあり。
(この時代の現地住民やから単純にしてはるだけでしょ…それとも茸島行政支局の官舎覗いてオリューレさんとかディードリアーネさんの絡みも取得するんですか?)
それはやめようね、エマちゃん。今更だから。
あとね、クリスおじさま…あたしの分体がお相手してるか、アグネスおばさまがこっそり来て何かしてる場合、あるからね。保養所近辺の施設は武士の情けで見ちゃダメよっ。
パイセンもそっちにセンサー向けたら、しばきますからね。
(ベラちゃん。あたしでも保養所の中までは防諜措置があるからわかんないけど、何やってるか想像つくわよ。オリューレさんとかならあたしの能力でも普通に見れてしまうんだけど)
ええー。パイセンがそこまで痴女種能力を使えるとはっ。
(何年痴女宮で働いてるって思ってんの…いい加減覚えもするわよ…)
(とりあえず完全な日没後に向けて高度を落として行くで。山を避けて島の外周を回るコースで、CAS300ノットを維持。痴女宮エマ子、減速の必要があればCAS150ノットまでは余裕で落とせるから連絡してな)
(へいっ聖院母様、よろしくお願いしますっ)
そしてICD出力を絞ったスケアクロウ、割と素早く高度を落として行きます。
(沈下率3,000ft/minで下ろすからな)
(ひぃいいいいい、何か怖いからもっとゆっくり!)
後ろの席でスクルドさんがガタガタ震えていますが、実はこの降下速度…旅客機よりはかなり速いのです。
具体的に申しますと、毎分1,000メートル近い速さで高度を下げています。
つまり、高層ビル用の高速エレベーターで、皆様の世界で一番速い中国や台湾のビルの毎分1千メートル以上という速度、あれを全員が感じていると思って下さい。
むろん、ICD/Gが働いていますから、床に押し付けられるような感覚はほぼゼロに等しいのですが、スクルドさんは神様です。
普通の人間なら感じられない事でも感じてしまうのでしょう。
(緊急降下で1万フィート/毎分よりはマシなんですよ…何でしたら戦闘機に乗せて超音速降下…パワーダイブというんですけど、ちょっとやってみましょうか。あたしもやりたくないんですけど、緊急降下手順でもありますので一応できるんですよ)
(やらんでいい!)
キレてはりますね。
言っときますけど、それ以上にある意味で怖いもの、痴女皇国にありますからね。
痴女種の戦闘時の動きほどじゃありませんけど、普通の人は目を回すどころじゃない動きをするもの。
そう、あおかん号…二人乗りですが強化倍力防護装甲、いわゆる大型パワードスーツのTAPPS7です。
フランスとイスラエルの共同開発機のTAPPS6・アルルカンもそうですが、機体飛行やジャンプ用の小型ICD/G機関を積んでいますから、立体的な機動ができるんですよあれ。
痴女皇国ではジーナ母様が変態的な用途で使うか、音響兵器などを使って痴女種の戦闘を支援したり、はたまた指揮管制機能を使用するような事でしか使っていませんけど、元来は火器を手持ちまたは装着装備して地上の最前線で戦う、いわば空飛ぶ人型戦車です。
…そうだ、母様に頼んであれの後ろにスクルドさんを…。
(マリアヴェッラ…本当にあんた、マウントを取るって言うのかしら…主導権を握りたがるわね…伊藤瞳、こういう人物をどう思うか聞かせて欲しいわね)
えええええ!何という反則。
(ベラ子陛下、いえ…ベラちゃん、スクルドさんは真剣に飛行機が苦手みたいだからやめたげて下さい。あと、正直…あたしも普通の飛行機しか知らないから結構怖いのよ? 軍用機って派手に動くとは聞いていたし、宇賀神さんの車の運転知ってるからまだ平静は保てているけど…)
うう、これは盲点でした。
スクルドさん以外にも飛行機が苦手な人がいるとはぁっ。
これは瞳さん、あの母様の単発機の後ろでちょっと訓練ですね。
痴女皇国の幹部、何だかんだ言ってバンシーの後ろに乗せる可能性、ゼロではありません。
転送だけで何とかなる楽なお仕事でないのは、バーデン=バーデン作戦など過去のお話でお分かりでしょう。
あたしの身体が空き次第、慣れてもらうわよっ。
これは嫌がらせでも何でもありません。
あの雅美さんですら、スケアクロウの操縦体験まで至っているのです。
あたしだって本当は嫌なんですけど、スケアクロウの操縦資格を取らされました。
いいですね、とりあえず今から、比較的低い高度で乱気流の影響も考えられるのです。
みんな耐えて飛ぶのですから、頑張ってください。これは真剣にお願いしますよ。
(なんで人間って飛行機みたいなもの発明したのよ…ラケシス!アトロポス!クロト!あんたら何作らせてんの…)
(ううううう、こんなに揺れるなんて…何かこう、遊園地と違って派手じゃないんですけど微妙に揺れるのが…)
「なぁベラちゃん、痴女皇国のうちも言うてたけどさ、何で女ってこんなに飛行機、苦手なんやろ…聖院でも飛行適性のある女官が少なくてな…」
ああ、聖院側でも悩みのタネでしたね。
欧米では結構、パイロット職の女性も多いというのに。
しかも戦闘機とか攻撃機とか平気で飛ばしてますよ。
あたしもそれを知ってるから頑張って免許、取ったんです。
できる女は飛べる。飛べない女はただの女なのですっ。
(ただの女でいいです…)
(伊藤瞳に同じ。ただの女神様でいいから!)
あかん。
とりあえずスクルドさんは除外するとしてもですね、瞳さん、特訓ね。
乗って悲鳴を上げないようになってくれるだけでいいから。
あとね…テンプレス2世。
知ってると思いますけど、あれも浮いて飛ぶからね。
あんなでっかいものですけど、低空ではそれなりに乱流の影響、受けますからね。
日本海とか荒れた海を行く大型フェリー程度には揺れますよ。
ええ、もはや反論する気力を無くした日本人女性と女神様の消沈が伝わってきます。
しかし、そこに追い討ちが。
(スケアクロウからの空挺降下訓練って、痴女皇国でしてないんですか?)
言い出したのは篠村直美さん。
そう、お父様は陸上自衛軍出身者。
(何でしたら習志野の第一降下に頼んで降下訓練しましょうか。ほら、痴女皇国で開発したバックパック式の滑空翼。あれで飛ぶのって、聖院だと万卒以上の騎士資格者は必須技能項目ですよ。聖院山の上の方からの降下飛行、やらされま…あー、瞳さんのステータスだとあれ、やらされますね)
とうとう、後ろの方から、ぎゃあああああという泣き声がしました。
待って瞳さん。あれの免除、聖院母様に頼んであげますから、泣かないで。
その代わりにあたしの後ろで飛ぶこと。
これを交換条件に出しますから、それくらいは我慢してね。
(はい…おむつ付けていいですか…)
あー大丈夫、戦闘機用のゲストスーツと専用下着、手配します。
あれだと飛行中にトイレ行けるからね。うちの下着だと自動浄化機能もありますから、下半身は気持ち悪くなりませんよ。
…だから泣かないでください!
-------------------------------
ジーナ「なんでみんな飛行機、苦手なんや…」
マリア「聖院かーさん、そりゃ仕方ないよ。人間は元来、地面に足を付けて重力を感じるのが正常な生態だろ。祇園祭のお稚児さんみたいに指定期間中は足を地面につけちゃダメって掟があるとか、昔の航宙船とか宇宙施設みたいに無重力がデフォルトな場所で暮らしてるなら話は別だけどさ、そんな暮らししてるのは基本的に特殊な人たちだから…」
べらこ「月に行くだけで瞳さんが泣き叫びそうな予感」
ジーナ「そういえば天の声の知り合いの腐れ縁、ひょんなことで失踪した昔の男と香港で再会した後、何度か向こうに行って遠距離恋愛していたらしい」
べらこ「失踪したという時点で普通の職業じゃない気がします」
ジーナ「会社経営者だったそうやけどな。で、香港と大阪の間やったら当たり前やけど飛行機やろ」
べらこ「ですね」
ジーナ「ある時にエアポケットに落ちたせいで怖がり、隣の男性に事情を話してずっと手を握らせてもらっていたそうや」
べらこ「何かこう、ある意味でご褒美のようですごい迷惑という気が」
ジーナ「まぁ、その女性はそれなりの美人だが特徴的な外観なのであまり詳細を書けんらしいねんけど、一言で言うと極道の娘の女性教師役な外観らしい」
べらこ「ああ、あの百合疑惑の…かなりの美人ですね」
ジーナ「でなぁ。香港いうて何か閃くもん、あらへんか」
べらこ「香港までって何か怖いところ、飛ぶんですか」
どめき「ふっふっふっ、伊藤さんと名前が被るからちょっと旧姓で出ましたー。ベラちゃん。今度築城に来たら昔の香港の空港がどんな難しいか、シミュレータで体験さしたげるよ」
べらこ「百目鬼瞳さん改め菅野瞳さん、その空港とは」
マリア「あー、啓徳空港か…うん、あそこは怖いマジ怖いと思うぞ」
べらこ(啓徳空港への着陸動画や説明コンテンツを見る)
https://youtu.be/3PCOcyt7BPI
べらこ「ぎゃああああああ」
ジーナ「あれは当時、しゃあないとは言え世界トップ10に入る難しい空港やったからな…」
べらこ「これ、よくみんな着陸してましたね…降りてる飛行機が軒並み、カニさんみたいに真横向きかけてるじゃないですか。クラブ着陸はあたしも習いましたけど、ここまで横にするのってそうそうありませんよ…」
ジーナ「万一、スケアクロウで成田か伊丹に降りる時はこれに近いと思いなさい…。で、腐れ縁嬢の時はチュラップコク空港が出来てたから、このデンジャラスな着陸は経験せんですんだみたいやけどな」
べらこ「スクルドさんの訓練の時は複座型でやりましょう。横向けて降ろす着陸を隣で見てもらう方向で」
すくるど「あんたねぇ…」
べらこ「ですから、あの蟹さん姿勢の着陸は飛行機の操縦として正しい操作なんですってば…」
どめき「まー戦闘機の緊急着陸よりマシよ。ニンフェットの場合、緊急用着陸フックを降ろして空母の着艦よろしく強制的にアレスティングワイヤに引っ掛けて停めるからね。ドラッグシュート…減速用パラシュートだと熱核融合ジェットエンジンの排気で燃えてしまうから」
ジーナ「ちなみにバンシーの緊急着陸時も同じようにアレスティングフックを降ろしてやるからな」
すくるど(飛行機の発明だけは何としてもやめさせるべきね…)
ひとみ(たとえ人類の発展に影響があったとしても、あんなものが浮いて飛ぶのはできればやめてほしいです…)
マリア「ある意味で女らしい発想だが、瞳さん…残念だがその提案は却下だ…飛行機が発明されないと、もう一つ困ったことが起きるんだよ…」
ひとみ「何なのでしょうか…」
マリア「ずばり、船酔いだ。これの体験は難しくない。うちの実習船のエルトゥールル号に乗るか、茸島定期便のサンティシマ型帆船に乗れば体験できるんだよ…航海中に一度は絶対、例の水流ジェットエンジンを全開して全力航行するからな。あれが結構揺れんのよまた」
なであ「あれに慣れるのは海事部の必須項目です。船酔いくらいでだらしのない」
べらこ「男性の仕事もあたしたち女官がやりますからねぇ、痴女皇国では…」
ひとみ「男女差別があってもいいと思えて来ました…」
すくるど「女がふんぞり返る国にしなさいよ!痴女の国でしょ!」
他全員「ダメ!女だけで国を作った話の末路になるからダメ!」
マリア(いや実際、そうなるのが困るから男性の仕事もやらせてんだよね、女官には…)
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