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聖院アルトくん痴女宮へ行く・3
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えーと。
知らない間に乱暴ルギーニの自動車税や固定資産税を脱税していたかのごとく言われたマリアヴェッラです。
正直腹が立つので、たのきちに誤魔化させようと思うんです。
あと…今回は他にもいろんな隠し事が出て来るんですよね…。
--------------------------------
「あ…あ…」
ええ、オリューレさんの胸の十字架、赤い点滅光を発しはじめました。
その光の意味するのは…懲罰動議対象者。
つまり、これから裁かれる必要がある事を示しているそうです。
で、同時にあたしの聖環に送信されてきた懲罰検討内容を見てみましょう。
・長年の部下虐待
・同僚部下からの金銭搾取
・昇格処理に際する売官嫌疑
・当人親派への猟官嫌疑
・上長欺瞞並びに籠絡試行
・皇族昇格を含む買官嫌疑
…えええええ!部下虐待はわかりますよ?
そしてあたしのお尻を舐め回すわラスプーチンちんおねだりするわの、どすけべ牝豚ざんまい。
隙あらばあたしのお部屋当番に入ろう入ろうとしてたのも分かってますし、下心見え見えでしたけど…まさか、お金が絡むとは…。
「ベラちゃん…オリューレさんの報償金口座支出と入金記録よ…」雅美さんに続いて、部屋に入って来たのは…デルフィリーゼお祖母様、クレーゼ叔母様…たのきち。
「旧聖環時代の報償金は現金支給だったからな…その時代の記録、なるべく復元してはおいたが流石に完全に明確にはできぬ。今も当時も下級女官の還俗は割と発生していたからな。還俗した生存者もよくは覚えておらぬだろう」
デルフィリーゼお祖母様が正直、どうしたものかと悩んでおられます。
「なるほど…おせんたくをおかねでうけおっていたのですか…たしかに、あたくしが下級のときの聖院はすべてのふくをせんたくしてくれませんでしたからね…」
アルトさん、当時を振り返って懐かしそうな目になってますね。
(ベラちゃん。何をかくそうオリューレならアルトくんとほぼ同じ時期に聖院入りしてましてよ…つまり二人は最低でもおないどしでおばちゃ…)
(くくくくくクレーゼさまなにをばらすのですか!オリューレは確かにいま、罪環のちからでしゃべれなくなっていますけど、それをよいことにべらこへいかにうそをおしえるのも懲罰だとおもいます!)
(はいはい。アルトさんはとりあえず話を聞きましょうよ…それとクレーゼおばさまも無用な火の粉を撒かないでくださいよ…)まったくもー。
「それも、罪人にお洗濯のあるばいとをもちかけることからはじめて…本宮にお勤めでひまそうな女官がいたら一刻ばかり早退させ、忙しい女官のぶんのせんたくをかわりにやらせていたと」
で、オリューレさんが下足処を管理していた当時の聖院最高責任者だったクレーゼおばさま…ものすごく難しい顔になっています。
「当時、聖院の中のお金は現金、それも硬貨ですよね…大量の硬貨を貯めていて、なぜ発覚しなかったのでしょうか…」ええ、経理屋財務屋たるたのきち、バレなかった理由について悩んでいます。
「オリューレ。ちょっと覗かせてもらいますわよ」クレーゼおばさま、オリューレさんの頭に顔を近づけられますと…。
「簡単でしたわね。女官用下足処で追加のお布施を一時だけ預かってる金庫ございましたでしょ。あそこの中に皆から徴収した買い置きお菓子代を入れておく袋を入れる習慣がありましたわよね、あの中に隠してたからですわ。で、ちまちまと金貨や銀貨に替えてかさを減らしていたのですわね。あそこのお金はとくに管理にうるさいというのは女官がみんな認識しておりましたから、手を触れる女官は限られておりましたわ。マイレーネでも昇格後のオリューレに任せていたはずですわよ、お母様…」
と、あっさりと裏金の保管場所のからくりを暴いておしまいに。
(そりゃクレーゼ母様、腐っても金衣だからな。決して無能じゃないんだよ。ただ…性格と下半身がわがままでちゃらんぽらんで、アレーゼおばさまが黒金剛の持ち出しを図るくらいにだな…)
(マリア!まだ横のお部屋の件を根に持っていますの?)
(かーさま。あれで皇族階の騒音基準が厳しくなるわ、いらん内規を作るハメになるわで散々だったんですよ…)
(まぁ、私と同室になる限りは大人しくさせておく。マリアリーゼ、それより本題だ)
「で、菓子代袋か…確かにあれならば出納帳は一応はつけてあった筈だが、自主管理という事でマイレーネすら任せていた筈だな…女官下足処であれば両替処ではないから、財政役…今で言う出納部の管理下ではないし…なるほど、よく考えたものだ」おばーさま、これには一本取られたって顔されてますけど、感心してる場合ではないでしょう…。
「いやいやベラちゃん、職場で裏金を貯めるってのは結構考えたと思うわよ、この時代なら。確かに風俗店と同じで個室で延長って話になるならさ、その現金はどこに持ち込まれるかっていうと風俗嬢を管理してる場所を経由するのが一番自然よね、うちの本宮の人の動きだとさ」と、これまた感心していやがるたのきち先生…。
「その延長やチップのお布施って、どんな流れで戻って来るのでしょうか」雅美さんが先輩たちに聞いておりますが、これまたクレーゼおばさま、即答。
「えっとですねぇ、各階の女官詰所のかんとく役の女官がお部屋から回収。これは申告通りの金額で支払われたかをかくにんするためでもありますわね。そして、その詰所役女官の交代時に女官下足処に持ち込まれます。その際に交代する女官同士で詰所の付け帳と持って降りるお金の額を確認して、まさみさんの世界で言う通い袋を交換。で、先に心話で下足処監督役の女官に持って下りる金額を連絡してから戻る。この手順でやっておりましたのですわよね、お母様にオリューレと…アルトくんも女官番の時に下足処を経験しておりますからご存知でしょ?」
「うむ。私の代でも上で頂いた追加のお布施は女官下足処での扱いの後、両替処持ち込みだった。クレーゼの説明した手順で間違いないな、アルト」
「は、はい…もうずいぶん前の事ですが、クレーゼさまのもうされるてじゅんで間違いはなかったかと…」なお、アルトさんも金衣相当のはずなんですけど…見てると、やはりクレーゼおばさまやデルフィリーゼお祖母様には弱い模様。
それと、アルトさんも本宮女官をやっていた経験「も」あるから知ってますよね、お布施の流れ。
(あたくしはおばちゃんあたくしはおばちゃん)
そして、この辺のすね具合もやはり、アルトさんはアルトさんだと再確認できますね…。
「まー、きゃっしゅれすにしちゃうとその辺が全部聖環とぱそこんのやりとりで終わっちゃいますものねー。こぜにじゃらじゃらがなくなっちゃっただけでも下足処はもんのすっごく楽なはずですわよ」
っていうかそういう細かい手順を金衣が把握していたのですか…あ、あたしも今の下足処の払い込みのやり方とか一応知ってはいますね、うん。
(うちの業務の根幹の手順だろうが…たのは言うに及ばずだし、博子さんやアルトは知ってると思うけど、あそこらあたりの金の流れは金衣が把握してなきゃならん必須事項だぞー。ついでに言うと当時の両替処は厳しい情報規制がかかってたから、なおさらあたしはおろかクレーゼ母様やデルフィリーゼお祖母様…そして、更にその前の代の金衣がきちんと知っておかないとさ、女官の引き継ぎとか業務手順を正しく伝えられない可能性があったんだよ。そしてベラ子もたのも、当時の両替処の仕事内容が密室作業で、部外者は手順すらわからないようにほぼ全て隠されていた件を覚えてるだろ?)
「うんうん、マリアが手をつけ出しておりましたけど、たのちゃんが着任してから、きゃっしゅれすが進んだんですのよねぇ…」
「まぁ、あの頃なら女官が個人で大金を隠し持とうにも定期的な部屋替えに清掃にマイレーネ他の点検。普通ならまず確実に見つかってこれは何だと騒がれたであろうな」
「まぁ、キャッシュレスにした際に裏金作りにくいようにしちゃったからなぁ…」申し訳なさそうに言うたのきち。あんたか、あんたが犯人かという顔でオリューレさんに見られてるわよ。
「オリューレ。それはいくら何でもたのちゃんへの逆うらみですわよ…あの時にあちこちの詰所の金庫から、そういうしと不明金が出て来て大変だったのですからね…ねえたのちゃん」
「そうですよ…初代様もいてるならご存知でしょ?あれ結局誰が誰に払ったのかとか誰が徴収してたのよとか色々調べてもわかんなかったり、当事者が既に還俗して痴女宮にいないのはまだしもこの世にいないとかですね…」
「ああ、あれな…私はまだその時は墓所だったが、田野瀬さんにはご苦労だったな…」
「あれ一旦は財務で預かって、年末の臨時報奨金にしたんですのよね…」
ええ、お金を預かったり扱う方々が揃っていたのがまずかったです。
財務組はオリューレさんを庇う方向のふいんき。
「ところでその集めたお菓子代やクリーニング代って、ちゃんと女官や罪人に還元されていたのでしょうか。どの程度オリューレさんがポッポナイナイしていたかで話は変わると思いますよ」
と、ちょっとだけ突っ込みを入れてみましょう。私腹を肥やすにも程度がありますし、みんなの福利を第一に考えていたか、自分のおさいふだけ膨らませようとしていたのかで罰も変わるでしょう。
「えっとねぇ。そのときによって変わってますわね…まぁ、オリューレが下足番に入って下足役を授かって…これ…あなた確か、ほとんど自分のおこづかい、手付かずで残しておりましたわね?」
げ。
クレーゼおばさま…それ、オリューレさんが自分の私腹を肥やしていたという話になるのでは…。
(ただ、あたくしも知っておりますけど、オリューレはそもそもお金を使わないぶるいの子でしてよ。ですからマイレーネも信じていたか、少々のことには目をつぶっていたかと)
なるほど…その辺の経済観念自体はあったと。
ただ、クレーゼおばさまが当のマイレーネさんに心話をつないで訊ねたらはっきりする話だと思うんですけどぉっ。ねぇ、たのきちにねーさん!
(あたしそれやめた方がいいと思う。なんか話が変なとこに行く気がするわよ…)
(ベラ子。それしたらマイレーネさんの性格上、話を膨らませはしないと思うけど、ただ…オリューレに厳罰を科す事を主張するはずだぞ…デルフィリーゼお祖母様が敢えてマイレーネさんに聞こうとしてない時点で空気を読むんだっ)
へいへい。
ええ、確かにマイレーネさんの性格だと絶対、当時の金衣…それから家族会でこの辺の取り決めに関わった方を糾弾しかねないと思いました…。
(マリアリーゼ姫様、マリアヴェッラ姫様。一応はお話を聞いておりますが、私は聞かなかった方向で。なるべくならば本宮の方々で解決して頂き、私にはこんな話があった程度の連絡でお済ませ頂くように…)
あらら。
マイレーネさんは聞いておら…聞いておられませんでしたねっ。
(これが人の優しさだというのはともかくだな、まぁ、それでも貯めた報奨金の金額がさ…ぶっちゃけインセンティブが多かった年のあたしやベラ子の皇帝報酬合計の年額より少ないんだからな…)
そうです。邦貨換算で億は貯めていましたけど、ねぇ…。
(この時代だと株とか保険とか、バクチで増やすのは難しいしなぁ。そんなでかい金が動く相場はなかなかないし、ならばと商人に投資するとか考えたが、発覚を恐れて貯め込むばかり、か…)
ねーさんも頭を抱えているふいんきが伝わって来ます。ちなみに姉の本体はまだ、比丘尼国にいますよ。
「オリューレさんが貯め込んでたその裏金の方、キャッシュレス化に際してはどうなさったのでしょうか」と聞いてみまひょ。
「半額をお菓子代として、とりあえず下足処扱いで女官管理室口座を作成。後に聖母記念銀行を開設した際には業務口座としてそっちに移管してるわね。あと半額はオリューレさんとメル子さんに管理手当て名目で個人口座に入金。この際にお菓子代は篤志入金として、女官からの徴収を義務化しないように指導が入ってるはずよ…って、まりりにもベラちゃんにも口頭と文書で報告した記憶があるわよ…」
ああ、日本の公務員経験者だけに、こういう話はうるさいし処理にも慣れてるよね、たのきちは…。
「うっさいわい。あたしもどうしようかってまりりとベラちゃんに頭抱えて相談したじゃん。その時はクレーゼさんも出納責任者だから話は聞いておられた筈ですよ…」
「ええ。オリューレもメルトリューレも、そのお金のとうめい性はともかく、長年の女官管理室勤務の功労ほうしょうという事で半分はあなたたちに渡すけど、今後は無理矢理集めてはなりませんよって話にしましたわね」
(母様も言ってみれば、当時のメル子やオリューレの上司だからな…。お菓子代を集めてたのは知ってたけど、まさかこんな大金…うん、女官管理室の分だけで、ぶっちゃけアルトの年収くらい溜まってたんだよな…あの時のそういう各部署の裏金、合計したら二桁億円くらいになってたっけ…だから年末のボーナスや罪人や子どもたちへのお年玉の原資に組み込んで還元しようとしたんだわ…)
いったい、何年分溜め込んでたのよ…。
「マリアヴェッラ。発覚を恐れた各部署の責任者が次の代に引き継ぐのを何代も繰り返していたのだ…。両替処に持ち込んで個人の小遣いに入金しようにも難しい時代だったからな…」
「で、仕方ないから死亡女官の報奨金口座処理と同じ扱いにして、女官や罪人への報償と修学宮学生庶費原資にしたのよ…」
あ、これ説明しておきます。
昔の上級女官、今で言う千人卒以上が寿命で死亡した際、貯めていた報償金は聖院なら聖院、痴女皇国なら痴女皇国が没収します。ボッシュートなのです…。
(人聞きの悪い表現すんなよ…そもそも女官は私財蓄財禁止だぞ、本当は…)
(ただ、子に引き継ぐ必要がある金衣や銀衣の場合は相続が認められておったのだよ)
(おかーさまからは相続させて頂けまもごもご)
「クレーゼさま。その話を言い出すとデルフィリーゼさまとけんかになりますからとめますよっ」よし、アルトさんブォーノでグッジョブ。
で、没収の件に話を戻しますとですね。
このお話…私金蓄財禁止の件、どっひゃあと思った方、いらっしゃいますか。
ええ、連邦やNBから来た人には驚かれるのですが、一種の宗教施設だった聖院では、基本的人権は剥奪されます。そして、権利を奪うからには女官の財産権、本当はないのですよ…。
そして、おこづかい、つまり業務報償金については生活の不便をなくすための日常品購入や、後輩部下を労ったり祝ったり見舞うお金として支払っている建前があったりするんです…。
(これをマリアちゃんから聞かされた時の私の顔を想像してね、ベラちゃん…確かに聖娼神殿だけの事はあるって思ったわよ…修道院もかくやの運営っぷり、NBで志願者を募る際にどう説明しようか頭を抱えたわ…)
はい、アグネスおばさまには無理もない話でしょう。あたしもそれ知った時の顔、なんやねんそれでしたから。
ですからあたしの乱暴ルギーニやベスパに火事場のオフロードバイク、本当は痴女皇国の持ち物であたしに専任貸与されている「皇帝専用の痴女皇国の国事遂行用機材」という扱いらしいんです!
(ベラちゃん。金衣と銀衣は私財、本当は持てますわよ…ただ、マリアやあなた…そしてにほんで高木クレーゼになっておりましたあたくしとか、にほんじんとしてのぜいきんが、ほら)
(ベラちゃん。あんたの持ち物にすると自動車税とか固定資産税、毎年払うハメになるのよあれ…)
(だから英国領事館所轄の外交官車両という扱いだ。ベラ子の連邦での立場が宙兵隊軍籍でラッツィオーニのおじさんの秘書官扱いなのはともかく、あの乱暴ルギーニを英国領事館駐在武官マリアヴェッラ・ワーズワースさんの私物というものすごく苦しい言い訳めいた扱いにして外交官ナンバーにしているのは税金問題があるからでな…日本国民の高木マリアヴェッラさんが、あんなオプションマシマシで総額五千万円超えの車を名目所得額二千八百万円で買って自分の名義にしているとだな、罪務省にまだ籍があるにはある田野瀬麻里子さんの元々の職場がうるさくてな…)
「まりり、あたしが悪いように言うな。確かにあの乱暴ルギーニ、あたしでも調べる。追加徴税するかは別にして絶対にあれの取得経緯、一応は調べるわね…」
ええい罪務屋どもめっ。
脱税疑惑事案の一つやふたつ、イタリア政府やフランス政府みたいに見て見ぬふりを一つというわけにはいかないのですかぁっ。
「日本人を雇うとこうなるのよベラちゃん。諦めてあたしの査察に応じなさい…」
「たのきち…あんたの身体の隅々まで査察するわよ…」
「それ今でも週1回はやられてるじゃないの…アグネスさん、いい機会だから言っておきますが、ベラちゃんは本当に寝かせてくれませんよ…」おだまりっ。
まぁ、おこづかいを貯める権利に話を戻しましょう。
確かに、女官が尼さんやお坊さんのような立場とあらば、財産を貯める権利を持てないのも無理はないかも知れません。
特に聖母教では、聖母の産んだ救世主や聖女の系譜に連なったり、あるいは聖母教に仕える女官の立場では人の欲とは一歩離れる教義を定めていたはずです。
ですが、聖院時代からこうした建前は建前として、還俗する女官が何も持ってないのもかわいそうだとされています。そして、報償金は財産権の復元ということで還俗時に持たせてもらえます。
ですがねぇ…では聖院では、死ぬまで在籍していた女官の貯めてたおこづかいをどうしていたのか。
「老齢院入りした女官の報償金は女官死亡後に聖院に寄進される掟だ。で、罪人の報償金や、修学宮学生の奨学補助金の原資になる決まりであるな」
デルフィリーゼお祖母様の申されるこの寄進原則が、あたしが言った「聖院在籍時に死亡した女官の報償金預金は死後ボッシュート」という規則そのものです。
そして、聖院旧区分の上級女官の大多数や、そしてこれからの痴女皇国の千人卒は還俗を申し出ずに独身で…痴女種の子は痴女種の上に、千人卒以上は出生児から千人卒以上の痴女種を出産してしまう危険がありますから出産が許可制という点も思い出して下さいね…生涯を終えた女官の報償金は聖院または痴女皇国に自動で寄進されてしまう掟が継続して適用されるのですよ。
「老齢院の運営原資でもありますわね」
「で、痴女皇国も聖院のそうした報償金規定を踏襲しています。これはあたしが財務局時代…初代様が局長してるときに決めたお話ですからねっ」
(そーですわねー。たのちゃんにあれこれ聞いたり、クレーゼやデルフィリーゼだけでなく、家族会にちゃんとはかって決まりをまとめておりますわよ)
(一応、老齢院の説明もしておきますよ…えっとな、ジーナ母様のお母様…つまりあたしから見たら祖母になる高木アレサンドラさんって人がいたの覚えてくれてるかな、読者の方。あの人の死亡時にもそこの話が出たけどさ、俗世の民間人の安楽死も請け負ってる養老施設があるんだわ。で、痴女皇国の代…つまりあたしが皇帝になって一旦は廃止したけど、聖母教会の関連施設として復活させた。現在は智秋記念牧場の更に上の辺りにあるのと、欧州地区本部の付随施設が前からスイスにある。あとイタリアの聖母教会の施設としてイタリアの領土のどっかで運営開始してるぞ)
あそこに出来てるんですよね…あそこは不便だし、やめましょうよ…。
(他にいいとこがねぇんだよ…お前も知ってるだろ、女官の死亡時に起きる現象…まぁぶっちゃけて言うと女官は死ぬ際に自己発熱して焼けてしまうから、自力火葬の際に周囲が火事になる可能性があるんだ。で、火災の被害が及ばないようにするための隔離施設だな。いわば聖炎宮やかつての地下処断室のような火葬場だと思って欲しい)
「で、正直、オリューレ…あなたの貯めてきた小金はきゃっしゅれす化のせいで、今後はためることも増やすことも使うことも難しくなった。で、上司に取り入ってためこむ手段を作ってもらおうと考えたのですわよね…マリア…あなたこれ、罪に問いますの?」
ああ、クレーゼおばさまは特に、オリューレさんが聖院入りした時からの究極上司ですから責任がある立場といえば立場ですよね…。
(まあ、厚労局長を降りてもらう程度で。あたしはむしろ、その取り入ろうとした相手にベラ子を狙ったのと、長年のあっちの方を問題にしたいですね)
「ああ、虐待ね…」
で、オリューレさんがつけた十字架は既に罪環モードとやらで作動しているらしく、当のオリューレさんは身体の自由を奪われています。
つまり、発言が許されていません。
(これ、ディードリアーネさんにはまだ行き渡ってないんですよねぇ…あの人にこそ付けさせてくださいよ…)
(あれ黒薔薇だから、今はお前かアルト扱いだ。聖環は黒薔薇モードで動いてるからいつでもお前が束縛できるぞ。ま…ディードリアーネの性格なら、ちょっと脅したら頼まなくてもお前の尻だの足だのすぐ舐めるから、行動監視程度でいいだろ。気になるならディードリアーネの聖環の罪状監視レベルを上げておいてやるよ)
(ベラちゃん…ブラックローズナイツって、本当にあなたの好きにできるの?)
(あまりやりたくはありませんが、可能は可能ですよ…おばさま、何かいらんこと考えましたね!)
というか…姉曰く、実は聖環の内部アップデートはあらかた終わっているそうです…。
で、今回配っている十字架なんですが、聖環機能の補完や代替作動も可能な拡張装置という説明。
それ自体は間違いじゃありません。
ただし…聖環改良の真打ちがですね…女官を始めとする皆さんには「十字架が懲罰装置」であるかのように伝わっています。オリューレさんも、そう説明しておられました。
そしてここまで読まれた方も、そうお考えですよね。
ですが、この十字架の中身の結晶生命体、「もしかしたら異星人が製造したかも知れない古代文明系オーパーツ」なのに注意頂きたいんですよ。
ほら…以前、エマちゃんが比丘尼国に聖環を導入する際に在庫が足らないから連邦世界技術を使った簡易版にするよって話をしていましたよね。
で、今回の十字架型聖環補助装置を製造するのに必要な技術ということで、その技術と結晶そのものを確実に持っているであろうサン=ジェルマンさんを月に尋ねて脅しなだめすかして、結晶生命体とその増殖技術を奪い吐き出さ…いえもとい、快く提供頂けたのは我が娘、エマちゃんことインマヌエルのお手柄です。
(僕はこの件でインマヌエルとベラちゃんを恨む、一生恨んでやるっ)
(恨みがあるなら安井金刀比羅宮で縁切り請願してください。何でしたら月のルナテックスの施設の中に安井神社の分院を作りましょうか?)
(ベラちゃん。それ、僕の会社を潰そうというワナだろ?)
ちっ、勘の鋭いおっさんですね…安井金刀比羅宮…つまり崇徳上皇陛下の恐るべき祟りの力が月にまで及ぶかは検証しておりませんが、痴女皇国世界の地球はもとより連邦世界でもその猛威を一度ならず目にしたあたしとしては、ルナテックスの技術と生産設備をそーーーっくり頂けると痴女皇国とNBにとってはものすごく美味しい話に思えるのですよねぇ。ひひひ。
(あたしもあそこの諸々はおもっきし欲しいんだけどよ。まぁ、いざとなったら別ルートで手に入れるか月にカチコミかけて無理やりとか色々と手はあるからなぁ。くくくくく)
(なおサン=ジェルマンさんはあたしたちのMIDI仕様マテリアルボディと少し違いますけど人工身体にしておられる上にですね、研究の邪魔とか言って性欲を封印しているわ精気を発生させないわで、あたしたちが重用する女の武器、いやもとい痴女種の武器が使えないんですよ…ですからルナテックスの生産品なり技術なり何がしかが必要になった場合、頭を下げるか暴力または恫喝で奪うかの二択になっちゃうんですよ。ほほほほほ)
(もしくはデジタルデータならうちが無理やり抜いてくるとかですね。ちなみに今回は月面工場と本社を物理的には破壊せずに済ませとりますよ。一升瓶片手に○ヶ崎のおっちゃん状態で月面本社の警備員さんからあらかた吸い取って無力化した上で、サン=ジェルマンのおっちゃんとうち、つまりエマちゃんが大変親しいお話をさせて頂きまして、ベラ子かー様に久々のラスプーチンちんでお褒めを頂きますた。うぇー、はっはっは)
まぁともかく、実は聖環、アップデートと称して一時的に女官から順次回収、そして果物印の板電話よろしく更新品をその場で女官に装着してもらう流れで変えていっております。
…で、板電話みたいな機能があるメディアウォッチやその互換機能を備えている聖環なら、ソフトウェアアップデートで行けるんじゃないかと思った方へ。
あなたのような勘の鋭い読者様、嫌いですよ。
ええ。
懲罰や服従機能自体は…十字架にも入っていますが、今回のアップデートで「聖環それ自体が完全な罪環や隷環としても機能する」ようになったんですよ。
つまり、その気になれば聖環本体だけでも拘束や懲罰、更には服従も可能。
(エマ子ですけどね、罪環の懲罰用ドレインはともかく、なんで罪人をロボット化できるのかですけどね、あれ実は女官種や鬼なんかの神種族眷属にそもそも備わっている主君にして生みの親…神様への隷属能力を活性化さしとるだけやと解析で判明してますねんわ。ついでに言うときますと、堕天使の皆様が悪魔状態でいる時に契約交わして縛れるんも全く同じ理屈ですねん。人体の性感機能をインポタケ他の淫乱性物質で極端に引き上げてるんと同じ操作ですからね)
知らない間に乱暴ルギーニの自動車税や固定資産税を脱税していたかのごとく言われたマリアヴェッラです。
正直腹が立つので、たのきちに誤魔化させようと思うんです。
あと…今回は他にもいろんな隠し事が出て来るんですよね…。
--------------------------------
「あ…あ…」
ええ、オリューレさんの胸の十字架、赤い点滅光を発しはじめました。
その光の意味するのは…懲罰動議対象者。
つまり、これから裁かれる必要がある事を示しているそうです。
で、同時にあたしの聖環に送信されてきた懲罰検討内容を見てみましょう。
・長年の部下虐待
・同僚部下からの金銭搾取
・昇格処理に際する売官嫌疑
・当人親派への猟官嫌疑
・上長欺瞞並びに籠絡試行
・皇族昇格を含む買官嫌疑
…えええええ!部下虐待はわかりますよ?
そしてあたしのお尻を舐め回すわラスプーチンちんおねだりするわの、どすけべ牝豚ざんまい。
隙あらばあたしのお部屋当番に入ろう入ろうとしてたのも分かってますし、下心見え見えでしたけど…まさか、お金が絡むとは…。
「ベラちゃん…オリューレさんの報償金口座支出と入金記録よ…」雅美さんに続いて、部屋に入って来たのは…デルフィリーゼお祖母様、クレーゼ叔母様…たのきち。
「旧聖環時代の報償金は現金支給だったからな…その時代の記録、なるべく復元してはおいたが流石に完全に明確にはできぬ。今も当時も下級女官の還俗は割と発生していたからな。還俗した生存者もよくは覚えておらぬだろう」
デルフィリーゼお祖母様が正直、どうしたものかと悩んでおられます。
「なるほど…おせんたくをおかねでうけおっていたのですか…たしかに、あたくしが下級のときの聖院はすべてのふくをせんたくしてくれませんでしたからね…」
アルトさん、当時を振り返って懐かしそうな目になってますね。
(ベラちゃん。何をかくそうオリューレならアルトくんとほぼ同じ時期に聖院入りしてましてよ…つまり二人は最低でもおないどしでおばちゃ…)
(くくくくくクレーゼさまなにをばらすのですか!オリューレは確かにいま、罪環のちからでしゃべれなくなっていますけど、それをよいことにべらこへいかにうそをおしえるのも懲罰だとおもいます!)
(はいはい。アルトさんはとりあえず話を聞きましょうよ…それとクレーゼおばさまも無用な火の粉を撒かないでくださいよ…)まったくもー。
「それも、罪人にお洗濯のあるばいとをもちかけることからはじめて…本宮にお勤めでひまそうな女官がいたら一刻ばかり早退させ、忙しい女官のぶんのせんたくをかわりにやらせていたと」
で、オリューレさんが下足処を管理していた当時の聖院最高責任者だったクレーゼおばさま…ものすごく難しい顔になっています。
「当時、聖院の中のお金は現金、それも硬貨ですよね…大量の硬貨を貯めていて、なぜ発覚しなかったのでしょうか…」ええ、経理屋財務屋たるたのきち、バレなかった理由について悩んでいます。
「オリューレ。ちょっと覗かせてもらいますわよ」クレーゼおばさま、オリューレさんの頭に顔を近づけられますと…。
「簡単でしたわね。女官用下足処で追加のお布施を一時だけ預かってる金庫ございましたでしょ。あそこの中に皆から徴収した買い置きお菓子代を入れておく袋を入れる習慣がありましたわよね、あの中に隠してたからですわ。で、ちまちまと金貨や銀貨に替えてかさを減らしていたのですわね。あそこのお金はとくに管理にうるさいというのは女官がみんな認識しておりましたから、手を触れる女官は限られておりましたわ。マイレーネでも昇格後のオリューレに任せていたはずですわよ、お母様…」
と、あっさりと裏金の保管場所のからくりを暴いておしまいに。
(そりゃクレーゼ母様、腐っても金衣だからな。決して無能じゃないんだよ。ただ…性格と下半身がわがままでちゃらんぽらんで、アレーゼおばさまが黒金剛の持ち出しを図るくらいにだな…)
(マリア!まだ横のお部屋の件を根に持っていますの?)
(かーさま。あれで皇族階の騒音基準が厳しくなるわ、いらん内規を作るハメになるわで散々だったんですよ…)
(まぁ、私と同室になる限りは大人しくさせておく。マリアリーゼ、それより本題だ)
「で、菓子代袋か…確かにあれならば出納帳は一応はつけてあった筈だが、自主管理という事でマイレーネすら任せていた筈だな…女官下足処であれば両替処ではないから、財政役…今で言う出納部の管理下ではないし…なるほど、よく考えたものだ」おばーさま、これには一本取られたって顔されてますけど、感心してる場合ではないでしょう…。
「いやいやベラちゃん、職場で裏金を貯めるってのは結構考えたと思うわよ、この時代なら。確かに風俗店と同じで個室で延長って話になるならさ、その現金はどこに持ち込まれるかっていうと風俗嬢を管理してる場所を経由するのが一番自然よね、うちの本宮の人の動きだとさ」と、これまた感心していやがるたのきち先生…。
「その延長やチップのお布施って、どんな流れで戻って来るのでしょうか」雅美さんが先輩たちに聞いておりますが、これまたクレーゼおばさま、即答。
「えっとですねぇ、各階の女官詰所のかんとく役の女官がお部屋から回収。これは申告通りの金額で支払われたかをかくにんするためでもありますわね。そして、その詰所役女官の交代時に女官下足処に持ち込まれます。その際に交代する女官同士で詰所の付け帳と持って降りるお金の額を確認して、まさみさんの世界で言う通い袋を交換。で、先に心話で下足処監督役の女官に持って下りる金額を連絡してから戻る。この手順でやっておりましたのですわよね、お母様にオリューレと…アルトくんも女官番の時に下足処を経験しておりますからご存知でしょ?」
「うむ。私の代でも上で頂いた追加のお布施は女官下足処での扱いの後、両替処持ち込みだった。クレーゼの説明した手順で間違いないな、アルト」
「は、はい…もうずいぶん前の事ですが、クレーゼさまのもうされるてじゅんで間違いはなかったかと…」なお、アルトさんも金衣相当のはずなんですけど…見てると、やはりクレーゼおばさまやデルフィリーゼお祖母様には弱い模様。
それと、アルトさんも本宮女官をやっていた経験「も」あるから知ってますよね、お布施の流れ。
(あたくしはおばちゃんあたくしはおばちゃん)
そして、この辺のすね具合もやはり、アルトさんはアルトさんだと再確認できますね…。
「まー、きゃっしゅれすにしちゃうとその辺が全部聖環とぱそこんのやりとりで終わっちゃいますものねー。こぜにじゃらじゃらがなくなっちゃっただけでも下足処はもんのすっごく楽なはずですわよ」
っていうかそういう細かい手順を金衣が把握していたのですか…あ、あたしも今の下足処の払い込みのやり方とか一応知ってはいますね、うん。
(うちの業務の根幹の手順だろうが…たのは言うに及ばずだし、博子さんやアルトは知ってると思うけど、あそこらあたりの金の流れは金衣が把握してなきゃならん必須事項だぞー。ついでに言うと当時の両替処は厳しい情報規制がかかってたから、なおさらあたしはおろかクレーゼ母様やデルフィリーゼお祖母様…そして、更にその前の代の金衣がきちんと知っておかないとさ、女官の引き継ぎとか業務手順を正しく伝えられない可能性があったんだよ。そしてベラ子もたのも、当時の両替処の仕事内容が密室作業で、部外者は手順すらわからないようにほぼ全て隠されていた件を覚えてるだろ?)
「うんうん、マリアが手をつけ出しておりましたけど、たのちゃんが着任してから、きゃっしゅれすが進んだんですのよねぇ…」
「まぁ、あの頃なら女官が個人で大金を隠し持とうにも定期的な部屋替えに清掃にマイレーネ他の点検。普通ならまず確実に見つかってこれは何だと騒がれたであろうな」
「まぁ、キャッシュレスにした際に裏金作りにくいようにしちゃったからなぁ…」申し訳なさそうに言うたのきち。あんたか、あんたが犯人かという顔でオリューレさんに見られてるわよ。
「オリューレ。それはいくら何でもたのちゃんへの逆うらみですわよ…あの時にあちこちの詰所の金庫から、そういうしと不明金が出て来て大変だったのですからね…ねえたのちゃん」
「そうですよ…初代様もいてるならご存知でしょ?あれ結局誰が誰に払ったのかとか誰が徴収してたのよとか色々調べてもわかんなかったり、当事者が既に還俗して痴女宮にいないのはまだしもこの世にいないとかですね…」
「ああ、あれな…私はまだその時は墓所だったが、田野瀬さんにはご苦労だったな…」
「あれ一旦は財務で預かって、年末の臨時報奨金にしたんですのよね…」
ええ、お金を預かったり扱う方々が揃っていたのがまずかったです。
財務組はオリューレさんを庇う方向のふいんき。
「ところでその集めたお菓子代やクリーニング代って、ちゃんと女官や罪人に還元されていたのでしょうか。どの程度オリューレさんがポッポナイナイしていたかで話は変わると思いますよ」
と、ちょっとだけ突っ込みを入れてみましょう。私腹を肥やすにも程度がありますし、みんなの福利を第一に考えていたか、自分のおさいふだけ膨らませようとしていたのかで罰も変わるでしょう。
「えっとねぇ。そのときによって変わってますわね…まぁ、オリューレが下足番に入って下足役を授かって…これ…あなた確か、ほとんど自分のおこづかい、手付かずで残しておりましたわね?」
げ。
クレーゼおばさま…それ、オリューレさんが自分の私腹を肥やしていたという話になるのでは…。
(ただ、あたくしも知っておりますけど、オリューレはそもそもお金を使わないぶるいの子でしてよ。ですからマイレーネも信じていたか、少々のことには目をつぶっていたかと)
なるほど…その辺の経済観念自体はあったと。
ただ、クレーゼおばさまが当のマイレーネさんに心話をつないで訊ねたらはっきりする話だと思うんですけどぉっ。ねぇ、たのきちにねーさん!
(あたしそれやめた方がいいと思う。なんか話が変なとこに行く気がするわよ…)
(ベラ子。それしたらマイレーネさんの性格上、話を膨らませはしないと思うけど、ただ…オリューレに厳罰を科す事を主張するはずだぞ…デルフィリーゼお祖母様が敢えてマイレーネさんに聞こうとしてない時点で空気を読むんだっ)
へいへい。
ええ、確かにマイレーネさんの性格だと絶対、当時の金衣…それから家族会でこの辺の取り決めに関わった方を糾弾しかねないと思いました…。
(マリアリーゼ姫様、マリアヴェッラ姫様。一応はお話を聞いておりますが、私は聞かなかった方向で。なるべくならば本宮の方々で解決して頂き、私にはこんな話があった程度の連絡でお済ませ頂くように…)
あらら。
マイレーネさんは聞いておら…聞いておられませんでしたねっ。
(これが人の優しさだというのはともかくだな、まぁ、それでも貯めた報奨金の金額がさ…ぶっちゃけインセンティブが多かった年のあたしやベラ子の皇帝報酬合計の年額より少ないんだからな…)
そうです。邦貨換算で億は貯めていましたけど、ねぇ…。
(この時代だと株とか保険とか、バクチで増やすのは難しいしなぁ。そんなでかい金が動く相場はなかなかないし、ならばと商人に投資するとか考えたが、発覚を恐れて貯め込むばかり、か…)
ねーさんも頭を抱えているふいんきが伝わって来ます。ちなみに姉の本体はまだ、比丘尼国にいますよ。
「オリューレさんが貯め込んでたその裏金の方、キャッシュレス化に際してはどうなさったのでしょうか」と聞いてみまひょ。
「半額をお菓子代として、とりあえず下足処扱いで女官管理室口座を作成。後に聖母記念銀行を開設した際には業務口座としてそっちに移管してるわね。あと半額はオリューレさんとメル子さんに管理手当て名目で個人口座に入金。この際にお菓子代は篤志入金として、女官からの徴収を義務化しないように指導が入ってるはずよ…って、まりりにもベラちゃんにも口頭と文書で報告した記憶があるわよ…」
ああ、日本の公務員経験者だけに、こういう話はうるさいし処理にも慣れてるよね、たのきちは…。
「うっさいわい。あたしもどうしようかってまりりとベラちゃんに頭抱えて相談したじゃん。その時はクレーゼさんも出納責任者だから話は聞いておられた筈ですよ…」
「ええ。オリューレもメルトリューレも、そのお金のとうめい性はともかく、長年の女官管理室勤務の功労ほうしょうという事で半分はあなたたちに渡すけど、今後は無理矢理集めてはなりませんよって話にしましたわね」
(母様も言ってみれば、当時のメル子やオリューレの上司だからな…。お菓子代を集めてたのは知ってたけど、まさかこんな大金…うん、女官管理室の分だけで、ぶっちゃけアルトの年収くらい溜まってたんだよな…あの時のそういう各部署の裏金、合計したら二桁億円くらいになってたっけ…だから年末のボーナスや罪人や子どもたちへのお年玉の原資に組み込んで還元しようとしたんだわ…)
いったい、何年分溜め込んでたのよ…。
「マリアヴェッラ。発覚を恐れた各部署の責任者が次の代に引き継ぐのを何代も繰り返していたのだ…。両替処に持ち込んで個人の小遣いに入金しようにも難しい時代だったからな…」
「で、仕方ないから死亡女官の報奨金口座処理と同じ扱いにして、女官や罪人への報償と修学宮学生庶費原資にしたのよ…」
あ、これ説明しておきます。
昔の上級女官、今で言う千人卒以上が寿命で死亡した際、貯めていた報償金は聖院なら聖院、痴女皇国なら痴女皇国が没収します。ボッシュートなのです…。
(人聞きの悪い表現すんなよ…そもそも女官は私財蓄財禁止だぞ、本当は…)
(ただ、子に引き継ぐ必要がある金衣や銀衣の場合は相続が認められておったのだよ)
(おかーさまからは相続させて頂けまもごもご)
「クレーゼさま。その話を言い出すとデルフィリーゼさまとけんかになりますからとめますよっ」よし、アルトさんブォーノでグッジョブ。
で、没収の件に話を戻しますとですね。
このお話…私金蓄財禁止の件、どっひゃあと思った方、いらっしゃいますか。
ええ、連邦やNBから来た人には驚かれるのですが、一種の宗教施設だった聖院では、基本的人権は剥奪されます。そして、権利を奪うからには女官の財産権、本当はないのですよ…。
そして、おこづかい、つまり業務報償金については生活の不便をなくすための日常品購入や、後輩部下を労ったり祝ったり見舞うお金として支払っている建前があったりするんです…。
(これをマリアちゃんから聞かされた時の私の顔を想像してね、ベラちゃん…確かに聖娼神殿だけの事はあるって思ったわよ…修道院もかくやの運営っぷり、NBで志願者を募る際にどう説明しようか頭を抱えたわ…)
はい、アグネスおばさまには無理もない話でしょう。あたしもそれ知った時の顔、なんやねんそれでしたから。
ですからあたしの乱暴ルギーニやベスパに火事場のオフロードバイク、本当は痴女皇国の持ち物であたしに専任貸与されている「皇帝専用の痴女皇国の国事遂行用機材」という扱いらしいんです!
(ベラちゃん。金衣と銀衣は私財、本当は持てますわよ…ただ、マリアやあなた…そしてにほんで高木クレーゼになっておりましたあたくしとか、にほんじんとしてのぜいきんが、ほら)
(ベラちゃん。あんたの持ち物にすると自動車税とか固定資産税、毎年払うハメになるのよあれ…)
(だから英国領事館所轄の外交官車両という扱いだ。ベラ子の連邦での立場が宙兵隊軍籍でラッツィオーニのおじさんの秘書官扱いなのはともかく、あの乱暴ルギーニを英国領事館駐在武官マリアヴェッラ・ワーズワースさんの私物というものすごく苦しい言い訳めいた扱いにして外交官ナンバーにしているのは税金問題があるからでな…日本国民の高木マリアヴェッラさんが、あんなオプションマシマシで総額五千万円超えの車を名目所得額二千八百万円で買って自分の名義にしているとだな、罪務省にまだ籍があるにはある田野瀬麻里子さんの元々の職場がうるさくてな…)
「まりり、あたしが悪いように言うな。確かにあの乱暴ルギーニ、あたしでも調べる。追加徴税するかは別にして絶対にあれの取得経緯、一応は調べるわね…」
ええい罪務屋どもめっ。
脱税疑惑事案の一つやふたつ、イタリア政府やフランス政府みたいに見て見ぬふりを一つというわけにはいかないのですかぁっ。
「日本人を雇うとこうなるのよベラちゃん。諦めてあたしの査察に応じなさい…」
「たのきち…あんたの身体の隅々まで査察するわよ…」
「それ今でも週1回はやられてるじゃないの…アグネスさん、いい機会だから言っておきますが、ベラちゃんは本当に寝かせてくれませんよ…」おだまりっ。
まぁ、おこづかいを貯める権利に話を戻しましょう。
確かに、女官が尼さんやお坊さんのような立場とあらば、財産を貯める権利を持てないのも無理はないかも知れません。
特に聖母教では、聖母の産んだ救世主や聖女の系譜に連なったり、あるいは聖母教に仕える女官の立場では人の欲とは一歩離れる教義を定めていたはずです。
ですが、聖院時代からこうした建前は建前として、還俗する女官が何も持ってないのもかわいそうだとされています。そして、報償金は財産権の復元ということで還俗時に持たせてもらえます。
ですがねぇ…では聖院では、死ぬまで在籍していた女官の貯めてたおこづかいをどうしていたのか。
「老齢院入りした女官の報償金は女官死亡後に聖院に寄進される掟だ。で、罪人の報償金や、修学宮学生の奨学補助金の原資になる決まりであるな」
デルフィリーゼお祖母様の申されるこの寄進原則が、あたしが言った「聖院在籍時に死亡した女官の報償金預金は死後ボッシュート」という規則そのものです。
そして、聖院旧区分の上級女官の大多数や、そしてこれからの痴女皇国の千人卒は還俗を申し出ずに独身で…痴女種の子は痴女種の上に、千人卒以上は出生児から千人卒以上の痴女種を出産してしまう危険がありますから出産が許可制という点も思い出して下さいね…生涯を終えた女官の報償金は聖院または痴女皇国に自動で寄進されてしまう掟が継続して適用されるのですよ。
「老齢院の運営原資でもありますわね」
「で、痴女皇国も聖院のそうした報償金規定を踏襲しています。これはあたしが財務局時代…初代様が局長してるときに決めたお話ですからねっ」
(そーですわねー。たのちゃんにあれこれ聞いたり、クレーゼやデルフィリーゼだけでなく、家族会にちゃんとはかって決まりをまとめておりますわよ)
(一応、老齢院の説明もしておきますよ…えっとな、ジーナ母様のお母様…つまりあたしから見たら祖母になる高木アレサンドラさんって人がいたの覚えてくれてるかな、読者の方。あの人の死亡時にもそこの話が出たけどさ、俗世の民間人の安楽死も請け負ってる養老施設があるんだわ。で、痴女皇国の代…つまりあたしが皇帝になって一旦は廃止したけど、聖母教会の関連施設として復活させた。現在は智秋記念牧場の更に上の辺りにあるのと、欧州地区本部の付随施設が前からスイスにある。あとイタリアの聖母教会の施設としてイタリアの領土のどっかで運営開始してるぞ)
あそこに出来てるんですよね…あそこは不便だし、やめましょうよ…。
(他にいいとこがねぇんだよ…お前も知ってるだろ、女官の死亡時に起きる現象…まぁぶっちゃけて言うと女官は死ぬ際に自己発熱して焼けてしまうから、自力火葬の際に周囲が火事になる可能性があるんだ。で、火災の被害が及ばないようにするための隔離施設だな。いわば聖炎宮やかつての地下処断室のような火葬場だと思って欲しい)
「で、正直、オリューレ…あなたの貯めてきた小金はきゃっしゅれす化のせいで、今後はためることも増やすことも使うことも難しくなった。で、上司に取り入ってためこむ手段を作ってもらおうと考えたのですわよね…マリア…あなたこれ、罪に問いますの?」
ああ、クレーゼおばさまは特に、オリューレさんが聖院入りした時からの究極上司ですから責任がある立場といえば立場ですよね…。
(まあ、厚労局長を降りてもらう程度で。あたしはむしろ、その取り入ろうとした相手にベラ子を狙ったのと、長年のあっちの方を問題にしたいですね)
「ああ、虐待ね…」
で、オリューレさんがつけた十字架は既に罪環モードとやらで作動しているらしく、当のオリューレさんは身体の自由を奪われています。
つまり、発言が許されていません。
(これ、ディードリアーネさんにはまだ行き渡ってないんですよねぇ…あの人にこそ付けさせてくださいよ…)
(あれ黒薔薇だから、今はお前かアルト扱いだ。聖環は黒薔薇モードで動いてるからいつでもお前が束縛できるぞ。ま…ディードリアーネの性格なら、ちょっと脅したら頼まなくてもお前の尻だの足だのすぐ舐めるから、行動監視程度でいいだろ。気になるならディードリアーネの聖環の罪状監視レベルを上げておいてやるよ)
(ベラちゃん…ブラックローズナイツって、本当にあなたの好きにできるの?)
(あまりやりたくはありませんが、可能は可能ですよ…おばさま、何かいらんこと考えましたね!)
というか…姉曰く、実は聖環の内部アップデートはあらかた終わっているそうです…。
で、今回配っている十字架なんですが、聖環機能の補完や代替作動も可能な拡張装置という説明。
それ自体は間違いじゃありません。
ただし…聖環改良の真打ちがですね…女官を始めとする皆さんには「十字架が懲罰装置」であるかのように伝わっています。オリューレさんも、そう説明しておられました。
そしてここまで読まれた方も、そうお考えですよね。
ですが、この十字架の中身の結晶生命体、「もしかしたら異星人が製造したかも知れない古代文明系オーパーツ」なのに注意頂きたいんですよ。
ほら…以前、エマちゃんが比丘尼国に聖環を導入する際に在庫が足らないから連邦世界技術を使った簡易版にするよって話をしていましたよね。
で、今回の十字架型聖環補助装置を製造するのに必要な技術ということで、その技術と結晶そのものを確実に持っているであろうサン=ジェルマンさんを月に尋ねて脅しなだめすかして、結晶生命体とその増殖技術を奪い吐き出さ…いえもとい、快く提供頂けたのは我が娘、エマちゃんことインマヌエルのお手柄です。
(僕はこの件でインマヌエルとベラちゃんを恨む、一生恨んでやるっ)
(恨みがあるなら安井金刀比羅宮で縁切り請願してください。何でしたら月のルナテックスの施設の中に安井神社の分院を作りましょうか?)
(ベラちゃん。それ、僕の会社を潰そうというワナだろ?)
ちっ、勘の鋭いおっさんですね…安井金刀比羅宮…つまり崇徳上皇陛下の恐るべき祟りの力が月にまで及ぶかは検証しておりませんが、痴女皇国世界の地球はもとより連邦世界でもその猛威を一度ならず目にしたあたしとしては、ルナテックスの技術と生産設備をそーーーっくり頂けると痴女皇国とNBにとってはものすごく美味しい話に思えるのですよねぇ。ひひひ。
(あたしもあそこの諸々はおもっきし欲しいんだけどよ。まぁ、いざとなったら別ルートで手に入れるか月にカチコミかけて無理やりとか色々と手はあるからなぁ。くくくくく)
(なおサン=ジェルマンさんはあたしたちのMIDI仕様マテリアルボディと少し違いますけど人工身体にしておられる上にですね、研究の邪魔とか言って性欲を封印しているわ精気を発生させないわで、あたしたちが重用する女の武器、いやもとい痴女種の武器が使えないんですよ…ですからルナテックスの生産品なり技術なり何がしかが必要になった場合、頭を下げるか暴力または恫喝で奪うかの二択になっちゃうんですよ。ほほほほほ)
(もしくはデジタルデータならうちが無理やり抜いてくるとかですね。ちなみに今回は月面工場と本社を物理的には破壊せずに済ませとりますよ。一升瓶片手に○ヶ崎のおっちゃん状態で月面本社の警備員さんからあらかた吸い取って無力化した上で、サン=ジェルマンのおっちゃんとうち、つまりエマちゃんが大変親しいお話をさせて頂きまして、ベラ子かー様に久々のラスプーチンちんでお褒めを頂きますた。うぇー、はっはっは)
まぁともかく、実は聖環、アップデートと称して一時的に女官から順次回収、そして果物印の板電話よろしく更新品をその場で女官に装着してもらう流れで変えていっております。
…で、板電話みたいな機能があるメディアウォッチやその互換機能を備えている聖環なら、ソフトウェアアップデートで行けるんじゃないかと思った方へ。
あなたのような勘の鋭い読者様、嫌いですよ。
ええ。
懲罰や服従機能自体は…十字架にも入っていますが、今回のアップデートで「聖環それ自体が完全な罪環や隷環としても機能する」ようになったんですよ。
つまり、その気になれば聖環本体だけでも拘束や懲罰、更には服従も可能。
(エマ子ですけどね、罪環の懲罰用ドレインはともかく、なんで罪人をロボット化できるのかですけどね、あれ実は女官種や鬼なんかの神種族眷属にそもそも備わっている主君にして生みの親…神様への隷属能力を活性化さしとるだけやと解析で判明してますねんわ。ついでに言うときますと、堕天使の皆様が悪魔状態でいる時に契約交わして縛れるんも全く同じ理屈ですねん。人体の性感機能をインポタケ他の淫乱性物質で極端に引き上げてるんと同じ操作ですからね)
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