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ザ・レイプウーマン 炸裂!ヨコ8ムゲンダイ・10

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「やれやれ、こないだ比丘尼国から回収してきたばかりだってのにさ、また持って行かれるのかよと文教局から苦情が来てさぁ…」と、黒薔薇の残りの面子が手分けしてスケアクロウのお尻のハッチから出た坂道を使って降ろしている自動車を見る姉。

ええ、文教局のダンケ号は○えーすがまたしても駆り出されました。しかも今回は4台全部。

「いや、今週中には追加のダンケ号が12台届くんだけどさ、うち8台は欧州に配置するから。えっと、東欧支部に1台、中東支部に1台、んでスペインに2台、スイスに4台の割り当てだな。んでこの虎運送仕様はここに4台置くけど、ゆくゆくはストラスブールの支部に最低1台は持って行くぞ」

いえ、何でまたダンケ号を…。

「バーデン=バーデン領内の住民支援だよ。聖母教会の名前で炊き出しをやるから」

食料を配った方がいい気がしますけど。

「いや、それの配分どうすんのよ。代官とか地主とか荘園領主とかに渡したら絶対に民衆にちゃんと行き渡らせねぇだろ…まず確実に横流しを企むと思うよ」

ふむ。

「だからまずはバーデン=バーデンの街中で昼食なら昼食を炊き出すんだよ。それを2月なら2月の間続けるだけでも、保存食糧を節約できるだろ?」

歩けない人とかどうします?

「それがために黒薔薇を飛び回らせたんだ。傷病疾病持ちは片端から治療して聖母の奇跡アピールをさせているんだよ」

善意に受け取ってくれればいいんですけどね…。

「ふっ。何のために女官種細胞や痴女種化抗体細胞をまき散らしたと思っているのかねベラ子君。あたしらへの依存性を持たせるためだよっ」

やっぱりそれやるんですか…。

「そりゃそうだよ。聖母教会に通わないと生命維持ができないようにしてしまうんだ。物理的に信仰を持たないと…いや、信じなくてもいいから教会には月イチでもいいから来てくれって状態にしたいわけよ。可能ならいえめん宗教みたいに日曜日には礼拝に来るのがベストだけどなぁ」

じゃ、炊き出しって…。ただのごはんじゃありませんよねぇ…。

「ま、そういう事だよベラ子君。どのみち炊き出しに来ないとしても手はあるんだわ。かーさんたちが何でドゥブルヴェに乗って来たかわかるかねっ」

悪人顔で言うねーさんですが。

そーいえば、朝方にライン川を水冷式のロケット発射台よろしく使って飛び上がったドゥブルヴェ、妙に動きがよかったような気も…。

「さらにさらに、ベラ子のバンシーよりはるかに先行させてたよなぁ。ふふふふふ」

あー…、あのですね、ねーさん。

よもやまさかですけど、駄洒落菌か鬼細胞の類、テリブルミサイルの弾頭に詰め込んで撒かせましたね?

「今回はインポタケ胞子だな。駄洒落菌変種の苗床化したインポタケの胞子をたっぷりとだな、ライン川流域の森一帯にだなっ」

ねーさん。今は冬ですよ。あれ繁殖するんですか。そもそもインポタケってむちゃくちゃ特殊なキノコじゃないですかっ。

「クリス父様が寒冷地仕様に仕立てたやつだから、春になれば結果が出るよ。それと今回、ドラメを温存させてるだろ。あれは雪解け以降に使うためだからな?」

ああ、それでドゥブルヴェを持って来たんですね…。

「ちなみに今回、テンプレス2世のドラメに載せる予定のMIRV弾頭には麦角菌変種を詰め込んでるからな。ベラ子、麦角菌ってわかるか」

「あのー、それ確か、麦を有毒化してしまうんじゃ…」

「普通はな。だが今回撒く奴は違う。むしろ寒さに強い麦にしてしまう強化変質触媒みたいな効果を発揮するんだよ」

話だけ聞いているとものすごく良いことをしている風に聞こえます。

しかし…それにしては姉の顔がこの上なく悪人な顔なんですけど。

「それと大豆な。ヨーロッパへ大豆が伝わるのは本当ならもっと後なんだけど、豆類全般に作用する窒素固定微生物を撒き散らそうと思う。言ってみりゃ天然の肥料生成菌だよ」

でも、それにも何か悪い仕掛けしてるでしょ?

「疑り深いなぁベラ子はっ。ちょっと性欲を増進させたり、女官種や痴女種のフェロモンに敏感に反応するようにするだけだってば」

そうなるように人類を変質させているのに、マリアねーさんに千点。

「…あたしに賭ける点数と倍率が低くないか…」

あたしの中で今、ねーさんは◯沢教授枠に分類しましたから。

「はらた◯ら枠に分類してくれよっ!」

まぁともかく叙任式です。



痴女皇国ドレス姿のフローレシェーネさんを祝福する叔父チェーザレ

そして典礼用執務服姿のマイレーネさんから南独支部長推薦状を受け取って一瞥するふりをするあたくしマリアヴェッラ。それを姉に渡します。

で、今回は流石に尼僧服の姉が、推薦状の代わりに南欧支部長任命通知書を側の女官から受け取ってあたしに寄越して来ます。

そして南欧支部長の証明となる通知書をフローレシェーネさんに渡します。これだけならまだ良いのですが。

姉が、一通の書状をあたしに渡して来ます。

広げて見るふりをして、今度はフローレシェーネさんに渡します。

そしてフローレシェーネさんも読むふりをして、今度はマイレーネさん…直属上司になりますからね…に渡します。

で、マイレーネさんはそれを受け取るとですね、この叙任式に無理やり参列させられていた辺境伯に見せます。

「バーデン=バーデン辺境伯の私有資産譲渡要請と、居宅…この新宮殿の接収要請です。お受け頂けない場合、辺境伯の滞納負債と資産担保分の融資を肩代わりした分の返済を只今より求める事になりますが、いかが」

飲むしかないですよね…。

ええ、前領主の散財に起因する借金を調べ上げて肩代わり。

更に領地も明け渡せと言ってるに等しい、先程の叙任式。

更にこの叙任式の映像、ウィーンの皇帝宮殿上空や、周辺諸公領にも空中投影しているそうです。

「で、神聖ローマ帝国皇帝陛下並びに選帝侯を筆頭とする諸侯にお伝えしたい事がある。痴女皇国南欧支部をこのバーデン=バーデンに設置する決定は天命である。この天の命に逆らった場合はどうなるか。逆らう意思を示したものはただ単に死んで終わるものではない。唯一我らが信仰すべき聖母様の御使みつかいが地獄の業火の中に投げ込むべき者たちとされるだろう。初代聖母ジーナ閣下、二代目聖母マリアヴェッラ陛下」

「カエサル猊下。聖母教会への叛意に対して我々がいかな対応を取るか。バーデン=バーデン辺境伯のみならず、皆様にご覧頂きます。そこの時を告げる仕掛けが残り0になりました時、天をご覧になられますように」

と、あたしが棒読みな台詞を宣言します。そして、いつの間にか空中に投影されたデジタルストップウォッチの数字を一瞥し、指差してこれよこの数字が00:00になる時よとお教えします。現在は残り5分。

「辺境伯。聖母教会教皇の申されます神の母たる聖母の逆鱗に触れた場合、どのような悲劇となりますかを実際に示させて頂きます。ただ、今回は脅しですけど」と、領地上空を見上げられる窓の側に行くか邸外に出ていいよと申し付けます。

神聖ローマ帝国全領土の領民、そして周辺住民で目撃できそうな地域の人たちにも、エマちゃんが広域心話で警告し、カウントダウンを始めます。

残り2分を切りました。

残り00:10。09、08、07…ゼロ。


どごおおおおおおおん。

上空で壮絶な大爆発が起きます。結構おっきい火球が産まれてますよ。

ただ、高度1万メートル以上ですから、地表への被害は軽微で済むはずすけどね。

「な、な、な」

「あの火球は…あれが大いなるものの怒りでございましょうか…」

「ひぃ、ひいいいいい!」と、辺境伯ご一家はもちろん、ご覧になられた宮殿騎士様や侍女の皆様が一様に恐怖されます。

…あのー。実際にはサーモバリック弾ですよ。

それも火球を炸裂させることに特化したもの。

それを高高度で炸裂させただけです。

破片もほとんどないはず。

衝撃波は、少し来たかなぁ。


で、種を明かしますと、この話のシリーズでは何度か発射しているSSBM-20ドラメという対地弾道ミサイル、これをたった2発、テンプレス2世から発射してもらいまして。

で、撃ち込んだドラメ、MIRV子弾頭に燃料気化爆弾を装着したものですけど、神聖ローマ帝国領内の主要都市めがけて子弾頭を親弾頭1発につき10発、ばら撒いただけです。

合計、20発。

あ…誰ですか、1発、パリ上空で炸裂させたの…!

(なぜこの段階でパリを焼こうとしたのですか!)

(あーすまんジョスリン、それのリクエスト、マリーだから文句はマリーに言って。バーデン=バーデンに手を出したらしばくぞって実家ロレーヌ公国とルーブル宮殿に言っといた方がいいからってさ)

(うう…マリーさんの要望なら仕方ないですね…)

「今回のバーデン=バーデン辺境伯領接収と痴女皇国の支部化を聖母教会は全面支援するものとする。庶子であるのみならず、政治利用のためだけに養女同然に引き取られ、一旦は聖院に出家させた三女を呼び戻し、あまつさえ虐待の果てに婚姻外交の道具となる事を強要した辺境伯一家の罪は重い!」

と、芝居っ気たっぷりに怒ってみせる叔父。

「しかし、聖母様の寛大なる御心により、聖母教会の職員として引き続き所領統治に寄与し旧悪を改めればお許しになるとの仰せである…辺境伯、この聖母様のお申し出をお受けになられない場合、今の火の玉…次は地面のすぐ上で起きましょうぞ…何をすべきかはお分かりですな?」と、叔父が意地の悪そうな笑みを浮かべて辺境伯に宣言なさいます。

ええ、悪役顔がここにも。

もちろん叔父はあの火の玉が何かを知っています。

そしてかつて実施されたトリエステ港壊滅作戦など、痴女皇国のミサイル兵器を使用した場合、非殺傷型弾頭弾ですら使用方法によっては「単に人が死なないだけ」で国家に壊滅的な打撃を与えることが可能であることも。

(ま、実際には麦角菌変種を撒いてるんだけどね。今年の春以降の麦の生育が楽しみだなぁっと)

ねーさん…鬼ですかあんた。

(だから麦の種を炊き出しついでにばら撒くんだよ…従来型の麦をそのまま畑でいつものように育てた場合、耐寒品種として変質成長して、小麦粉に脱穀製粉できる実をつけるの、今年は諦めてもらう必要があんだよね。で、あらかじめ耐寒品種化してある種を律儀に撒いてくれたなら普通に収穫できるって訳さ)

(それで南北アメリゴやらで麦の生産を急がせておった訳ですか…いやはや上皇陛下、備えておくに越した事はございませんな…はっはっはっ!)

(それより兄貴ぃ。あんた、ちゃんとロドリーゴさんに小麦の買い付けさせてるだろうね?いやぁ、今年の秋以降の小麦相場が怖いと思うよ。ふふふふふ)

ああ、悪党二人の高笑い、心話だけで済ませて欲しいものです。

リアルでこんなの聞かされたら悪印象しか持ちませんよっ。

(もちろんバーデン=バーデンの農民は誠実だから、あたしたちが配った種を素直に撒いてくれると思うよ。でも…他はどうだかなぁ)

(マリアヴェッラ…連邦世界のローマ教皇庁は天変地異や生物災害…と言うのかな、細菌とやらの害を天変地異として神の怒りだとでっち上げていたそうじゃないか。それに比べたら我々は善人だと思うぞ。何せ、困った民を救うのに必要な何がしかは既に準備されているのだからな。昔のピサやフィレンツェのような悲劇は起こさせないよ。それは心配しなくても良いのだ)

まぁ、確かにそれはそうですけどねぇ…。

しかし、確かにこんなお芝居でもしなくては、この時代の人はなかなか信じないでしょう。

特にこの時代、痴女皇国のテコ入れが入って識字率を大幅にカイゼンしているイタリア・スペイン・スイス・トランシルバニアはまだしも…他の国の識字率って5~60%ならいい方じゃないでしょうか。

なにせこの間行って来たルルド。

あそこに現れた聖母ベルナデット。

あの人も、聖書を読めなかったのが逆に聖母の奇跡を実証した証拠になったくらいでしたから。

つまり、文盲がまだまだ多いのですよ、この時代…。

(ゆくゆくは人に文字と数字、そして知恵が行き渡らねばならないだろう。だが今はまだ時期尚早なのだ。こうした露骨な演劇めいた舞台の演し物が効果を発揮することもあるのだよ…)

まぁ、今回は叔父と姉が正しいとしておきましょう。それに叔父も教皇に就任してからこちら、剃刀のような冷酷さと剣呑さを引っ込めてなるべく人間臭く見えるように努力しているようですから。

「辺境伯。あの炎は単なる火球ではありませぬ。あの炎は奢る人々を罰する懲戒の炎。今年の春以降の領内の麦の出来、例年並みを期待したいのであれば…必ず、聖母教会の炊き出しに合わせて配る種を撒けと指導願いたい。さもなくば、あの炎で汚れた土地には普通の麦は育ちませぬぞ…」と脅しを重ねる叔父。

「は…はっ、なにとぞお許しを…お救いを…」跪いて平伏し、赦しを乞う辺境伯ですが、やけに素直ですね…。

(あたしが麦の黒死病を教えた。今年、うちの配った種を撒かずに普通の麦を撒いたら最後、黒く変色して普通より更に酸っぱくなって食うのが困難な麦しか収穫できねぇぞってな。むしろこの助言は我ながら過ぎた親切だと思うぞ、あたし)

まぁ…痛い目に遭わせた方がわかる事もありますからねぇ…。

(ついでに言っとく。今回の麦角菌は北海道で発見された小麦に感染する麦角菌がベースだ。ライ麦以外にも感染するんだよなぁ…。で、南北米大陸で栽培している麦はこれの耐性種なんだよ)

えええええ。

それって小麦の栽培エリアにも打撃を与えるって話ですよねぇ?

(もちろんフランスもきっちり標的にさせて頂く。パンがないならお菓子を食べろってどころの話じゃなくなるんだよなぁ)

あ、皆さんはご存知でしょうか。

麦角菌という菌がどういう被害をもたらすか。

具体的には感染した麦、マイコトキシンという有毒物質を実に含むようになります。

そして製粉してもその毒は残留します。

で、その麦の粉でパンを焼いても、毒は残るんです…。

中世ヨーロッパで、ペストに次いで死者を生産する食中毒公害を撒き散らした実績のある、ほんっとに恐ろしい菌なんですよ…。

(これも安心しろ。今回撒き散らす麦角菌変種は致死性猛毒を出す原種じゃねぇ。ただなぁ…お前はまた、あたしの悪い癖が出たとか言い出すだろうけどよ、LSDってわかるか。リゼルギン酸ジエチルアミドの略だ)

(えーと、確かインポタケ原種のマッシュルームを食べたような幻覚作用がある、人間をダメにするお薬ですよね)

(正解。で、今回の麦角菌はLSDの生成に必要な成分や真菌性毒を産生する代わりに…効果淫こかいんと同じ性欲昂進効果があるんだわ。ただ、原種ライ麦よりも更にものっすごく酸っぱくなる。ほれ、母様がロシアの黒いパンとか嫌がってるだろ。あの独特の酸味がきついパン。あれが更に酸っぱくなるパンが出来ると思ってくれ…)

えー。それはそれで嫌ですよ…。

ですが我慢すれば…例えばワインやビールで無理やり流し込むとか、あるいはオートミールのようなお粥にしてしまう食べ方ならなんとかなるかも知れませんね。

(ただ、食ったが最後…効果淫コースだ…わかるな…)

ねーさん。

つくづくそういう色々なことをやって逃げ道塞ぐの、ほんっと得意ですよね…。

(三十年も戦争してさ、がさっと人口減らされるよりマシだろ…それに人が余ったら余ったで僻地開発に投入出来ると思わないか?)

あ…北方帝国攻略…あの後の事に使うつもりですね? 各国から溢れた余剰人口…。

(もちろん。他にどこに回すんだって話になるだろ? 無駄なことはしちゃいけないんだよ。食糧生産可能な土地は限られてんだし、連作障害を発生させやすいんだぞ、麦の栽培…)

まぁ、可能なら米の生産を推奨してるのもそれですか。連作障害対策。

(まぁ、米の生産には大量の水が不可欠だ。特に水稲にはな。生産性が高いにも関わらず、欧州じゃイタリアとか一部地域以外での栽培が流行らなかったのはそのせいもあんだよ)

確か、土地も新生代期でしたか、川の水が軟水となっている地域で栽培する方がいいって。

(まぁ、土壌改良すんのはあたしらなら不可能じゃねぇさ。とりあえず叙任式を締めて、その後の話に移そうや)

へいへい。

「でまぁ、辺境伯は摂政として地位を安堵あんど。奥様も引き続き辺境伯を支えて頂きたい。ただし…ミケロット、この地に派遣する聖母教会司祭、すぐに都合が付くものか」

と、叔父の傍らに控えていた修道士服の男性に尋ねる叔父。

で、この男性を知らない出席者から、ただならぬ雰囲気で密かに注目を集めています。悪い意味で。

ドン・ミケロット枢機卿ことバチカン治安警護団指揮官、ミケーレ・ダ・コレーラ。

これがその男性の名前です。

ちなみにルクレツィア母様はもちろん、あたしとも顔馴染みでして。

(何で暗殺頭ころしがしらのミケーレさんがここにー?)

(いやいや陛下、猊下の護衛ですよ。今回は物騒な指示なぞ受けてはおりませんから…)

とまぁ、こうして普通に密かに挨拶させて頂く仲ですが…名前でお察しになった方もいらっしゃるかも知れませんが、スペイン系です。

そしてピサ大学時代からの叔父の取り巻き兼親衛隊たる、スペイン団の指揮官を務めています。

つまり、本当ならここにいるだけで翌日に誰かが行方不明になるとか、はたまた「何か」がライン川に浮かんでいる類のお仕事があると想像がついちゃう部類の物騒なお方です。

一般の方々にとっては。

(あまりに逆らうようであれば、姉妹二人の首を広間に飾っても良いとは言われておりますが…)

(飾ろうとする事に執心なさいませぬように。花を飾る新しい場所も出来るのですから…)

と、お貴族様ちっくにお返しなんかしてみたりします。

これを翻訳しますとですね。

ミケーレ「見せしめに生意気そうな上の姉妹二人の首を切って飾っても良いでしょうか」

ベラ子「あなたの趣味はわかってますけど、残酷な死刑にするのはここでは我慢してください。痴女宮研修後に娯楽館配属も決まってますし、売春させる事で溜飲を下げてくださいね」

って具合になります。

ええ。ミケーレさん、鬼族細胞を少しだけ入れています。目的は読心させるため。

でないとこの人の職務上、過剰に人を疑ったり、無闇に血を見る展開に持って行きかねませんから。

イタリア人が単なるヘタリアでないのはマフィアの行動てお分かりになるかと思います。

更にミケーレさん、叔父以上に血の気の多いスペイン出身らしい性格の方です。女の色香に惑わない部類ですし…ですし…。

(恐れながら陛下は別格にございます。凡百の男では太刀打ち出来ませんからな。確かにお飾りなどとあらぬ中傷を申す阿呆もおるようですが、他を圧する上に世界にただ一つの美しさであれば、飾りの価値も代え難き物にございましょう。更に、悪口を言う者の誰が陛下を倒せるか。私なら飾りを守れと言われれば全力で守る所存)

ええ、惚れられてます。ただ、あたしが強化されまくって洒落にならない強さに成長して行った過程をご存じなんですよ、この人。

おまけに、北欧いけにえ村作戦以前にあたしが強いってのを何度かお見せする羽目になってますしね…。ぶっちゃけ、夜の爛れ会で腰を立たなくして「しまった」やっちゃった案件になる事数度でして…。

ま、惚れるとは言っても君主と臣下の線引きはしてくれる方です。慶次郎さんの臣下で言うと金悟洞さんに近い性格ですかね。

で、その女性を見る目に厳しいミケーレさんが叔父の振った話にどう返すか。

「辺境伯。確かルイーザ夫人、サヴォイア家のお生まれでしたな。貴領を脅かす者が仮に現れたとして、聖母教会の司祭がイタリア連合公国ゆかりの出身であれば、猊下やデステ様の動き、変わりますかと。猊下。女性が聖母教会司祭を務める禁忌の有りや無きや」

「男子が望ましいが、特に性別は問わない。ましてサヴォイアの生まれであれば私も話はしやすいしな。正規司祭着任までの代行を依頼したいし、評判よろしければ継続してお願いする事もあろう。領民への奉仕の姿勢を示すにも良い。伯爵、この人選はいかがだろうか」

「辺境伯。奥様を聖母教会バーデン支部教会司祭として任じたいという猊下の意向、これは伯に対するこれ以上の弾劾や断罪を防ぐための救済策として教皇猊下が案じた一計でもある点、よくお考えになって頂きたい」

「聖母教会運営に伯爵家が注力する。そして教会は領民の生活安定に向けて働く、この邪魔をする者あらば痴女皇国が相手を致します。辺境伯、それでよろしいでしょうか」と、あたしがダメ押しさせて頂きましょう。

実際に今、マイレーネさんや姉は言うに及ばず、あたし一人でも神聖ローマ帝国どころかフランスもまとめて一瞬でしばけますから。

「伯爵閣下。あなたの妻として、伯爵夫人として進言します。これは辺境伯領を安堵するための聖母教会からの最大限のご協力、受けぬ道理はないと思われます。更にはこの流れに乗れば、閣下あなたの名声に寄与しましょう。さ、ご決断を」

夫の手を取る奥様。

私たちは一緒ですよ、と目が語っておられます。

用意される調印台に載った司祭就任要請書。

ルイーザ夫人がためらう事なくサイン。

そしてバーデン=バーデン辺境伯領を聖母教会の管理下に一時的に置き、改めて租借地の管理者として辺境伯を指名し地位を安堵する内容が書かれた領地租借証書が用意されます。

期間、5年。

その後に領地は辺境伯に返却され、独立国家を名乗りたい場合、租借中の辺境伯一家の働きによっては支援やぶさかにあらずとの文言も入っています。

普通ならこんな揚げ足を取られるような文章にしないでしょう、特にこの時代には。

ですが、姉は入れさせました。

「辺境伯が王様になりたいならならせてやるよ。あたしら誰だと思ってんのさ。ただ…5年の間はきっちりあたしらのために働け。それ以降も助けて欲しいならちゃんと助けてやるから頑張ってくれ。当たり前の要求だよな?」

広間に響く姉の声。

これだけなら真っ当な話でしょう。

ですがねぇ。

この話、正直…闇堕ちマリアの枠で話した方が良かったんじゃないかと、天の声には一言申し上げたいんですよ…何故か。


聖母教会司祭って事はですね。

痴女皇国の拠点でもあります。特に聖母記念銀行を併設したら確実に女官、常駐します。

更に今回のバーデン=バーデンでは娯楽館という名の売春施設も併設。

じゃ、配属女官の精気管理は誰がするのか。

これが、どちらかと言うと女嫌いな叔父が女司祭を認めた背景です。

あ、叔父チェーザレは女嫌いなだけですよ。ほもじゃありませんよ。…めんどくさい付き合いやら男女の駆け引きが嫌いなだけですから。


そして、一連の儀式が終わった控えの間で。

「ルイーザ伯爵夫人。娘さん二人は痴女宮で研修を受けて頂かざるを得ません。期間は…短縮はさせて頂きますが約1ヶ月間は見て頂きたいところです」

「どうしても娯楽館での実務に従事して貰わざるを得ないからな…いや、即戦力だったなら別に行かせなくてもいいんだけどさ…」と、涙顔のお姉さん二人…アタランデさんとディートリンデさんを何とかして納得させようと姉が言ってますけど。

まぁ…どちらかというとこうしたいようですけどね。
https://pbs.twimg.com/media/FL8lRowVgAIdr5f?format=jpg&name=small

「私もフロレンシアから話を聞いてはおります。聖院時代と変わらぬのであれば痴女宮で女官としての教育を受けた方が今後は何かと有利でしょう。貴方達も悲嘆にばかりくれておっては何となさいます。今より五年後に王女と呼ばれるやも知れないのですよ?厳しめの作法教育を受けると思えば良いのですよ」

と、奥様も言い切ります。

(まぁでも、正直言っちゃうと現地研修で済むもんなら済ませたいんだよね。娯楽館の建屋自体はヴァンセンヌに設置した中世風石造洋館モジュールをここ用に水回り変更して聖母教会と聖母記念銀行設備も併設した代物、エマ子が準備してるから今日からでも開業できるっちゃ出来んのよ)

手回しのいいこって、と姉を煽ろうかと思いましたが、箱だけあっても仕方がないのはあたしも認識しています。聖母教会司祭としての職務についてはドン=ジョバンニ枢機卿が後で来て教えてくれるそうですけどねぇ。

「何やらお困りのようで。それとですねぇ、この際だからストラスブール占領も早め着手とかお伺いしたので呼ばれましたのですけど…崩御予定状態ではございますが、女官研修でしたらちゃっちゃとここで出来ますわよ…このマリアンヌ・ド・ロレーヌがおりますならば、ですが」

え。

誰ですかマリー先生呼んだのは!

いや…確かにマリーさんなら設備さえあれば女官教育はできるでしょうけど…。
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