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痴女宮人事秘話・騎士訓練おもてうら

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皆様こんにちわ。
マリアヴェッラです。

アルトさんがすねてるのはともかく…。



聖院の方の姉がなんか無茶を言います!
とりあえず聞いてください!

----------------------------------------------

えーとですね。

なんであたしが騎士の試験に突き合う、いえ付き合うねん。

こういうのはアルトさんにやってもらうべきではないのでしょうかっ。

「アルトさんがすねました」

それは毎度の事ではないでしょうか、ダリア先生。

「いや、それはともかくとしてですね。実は例の騎士制度カイゼンが問題になってるんですよ…」

なにゆえに。

で、ダリアさんにお聞きした話の要約。

姉が言い出してる千人卒以上の昇格厳格化。
これに伴う条件の厳しさが女官の間で噂になっていて困惑が広がっているのだとか。

・痴女宮本宮のポスト数問題(ぶっちゃけ人件費)
・騎士勤務実績の重要視化
・欧州作戦騎士・女官の多数配転の可能性

こうした皇族内で問題だとして対策を考えている段階の話が女官に広まっており、ダリアさんの下にも不安を訴える声が多数。

誰や、おもらししたのはぁっ。

(アルトさんが怪しいですねぇ…)

まぁ、その可能性は高いでしょう。
しかし、それならばアルトさんに尋ねたらよいものを、何でまた騎士団長たるダリアさんに聞くのでしょうか。

「理恵さんとツーツーだからでしょう。裏話や噂話の暴露を期待されているのです」

「まぁそのー…ダリアさん相手だからバラすけど、具体的に言っちゃうと財務局から4月以降の人件費増大について文句を言われてるのよ。何らかのリストラ措置を期待すると」

「なるほど、それで騎士兼務手当を…」

「それとアルトさんを直撃する話なんですよねぇ…ダリアさんも無傷じゃいられないんだけど…」

そう。

あの「実際に吸った人数でお手当を決める」という案です。
あれが採用された暁にはアルトさんもダリアさんも多少はおこづかいの額が減る可能性があります。

確かにアルトさんもダリアさんも、普段は痴女宮内の騎士勤務者から吸い上げています。

ただ…大きな作戦があると出っ放しになることも多いこの二人、必然的にそういう事が多い月は吸い取り人数が減ってしまうのです。

更にこの問題、交際費にもつながっています。

騎士のモチベーションを保つために騎士当番女官に対して行っている経費外支出。
これに影響してくるのです。

更には女官寮の喫茶室と門前町の茶店はおろか、クラブジュネスの売上にも影響が出る話とあっては捨ておけぬ。ちょっとジュネス常連の噂も高い財務局関係者に無理やり心話制限をぶち破ってでも聞いてみましょう。それにこれ、業務での問い合わせですからね、業務。

(クレーゼおばさまー。今、女官や騎士のお茶代菓子代の経費承認基準ってどうなってますー? )

(ベラちゃんの方が詳しいでしょうに…えーとね、今は前ほど門前町にテコ入れしなくても良くなってますし、個人消費拡大の方向からお菓子お茶代は一人500ルピーとして管理数分を女官管理室扱いで毎月給付。騎士については騎士当番者会合支出認可を女官管理室から受ける決まりですわね)

つまり、騎士と女官で重複支給がないようにされています…。ダリアさんが結構もらってる理由、この会合支出認可が降りないことがあるのを見越しているからだそうなんですよね…。

(通常は月の半ばに配置転換とかはありませんが、緊急対応で騎士業務に入ってそのままジュネスで打ち上げ会とかあるの、聞いてますからねぇ)

(本当は経費支出適用できるんですけど、たまたまその日の参加面子記録取ってないとか…ジュネスの売上記録から領収書は起こせますけど、対内対策慰労費申請なら会合記録はいりますからねぇ)

(マリアヴェッラ…厳しくしたのはたのちゃんですからね? 文句はご自身のお部屋でたのちゃんに申してくださいませ…)

あのたのきちわぁっ。

(あんたねぇ。ジーナさんと二人で100万ルピー近い申請書出すからよ…あれで1人か2人でいいから聖母教会関係者が混ざってたら外交経費で落とせたんだけどさぁ…あたしも混ぜられてたし初代様もいたから個室借り切りで忘年会兼初代様のお別れ会やったって釈明したけどね…そりゃ正規料金で淋の森店の個室2つ繋いで暴れたら100万くらい飛ぶのわかるけどさ…)

と、当のたのきちからちょっと待てやと文句が来ました。

(クレーゼおばさまもあの時にいたわよね…)
(あの時は悲惨だったのよねぇ…店の酒で高いのはあらかじめ隠してくれって純子さんに頼んどいて)
(えーと、あん時誰がいたっけ…ジーナ母様にクリスおじさまにおかみ様にねーさんにあたしにアルトさんダリアさん理恵パイセンにたのきちにクレーゼおばさまに雅美さん初代様、結局一人あたま5万ルピーで割り勘したっけ…)

(ほとんど飲み食いしてないのに10万円払わされたあたしの身にもなってよ!)

(その恨みで対内経費申請を通したたのきちであった。まる)

(他人事みたいに言うんじゃねぇっ…)

とりあえずたのきちと言い合うのは後でもできますので、ここで一つ、当のアルトさんとダリアさん、二人がいくら貰ってるのか明細を拝見してみましょう。

以前、アルトさんが部下がいないからお給料も少ないダリアさんに負けるとかぼやいていましたけど、実際はどうなのか。

今、目の前にあるのは警務局の茶筒端末ですが、あたしの聖環をかざしてログインしてみましょう。

Altliese Takagi(Sarelfil Shahbandar)高木アルトリーゼ Billion Suction 十億卒 Slut Visual(ogre mode). 痴女外観 General, Imperial of Temptress. 痴女皇国将軍 Police Department Manager. Imperial of Temptress. 警務局長

Altliese Takagi 高木アルトリーゼ H.A.1047 12er.

基本報奨金額 SOKR  90,000-
政務報酬初級 SOKR 400,000-
騎士職級俸額 SOKR 10,000-
被服管理費用 SOKR -2,500-

小計       497,500-

特別管理手当 SOKR 10,000,000-
女官慰労寄進 SOKR -9,000,000-

合計       1,497,500-

(300万円未満というところですね)

(もらってないって言ってますけど結構もらってますよね…)

Dahlialiese Takagi 高木ダリアリーゼ Hundred-Million Suction 一億卒 Slut Visual(ogre mode). 痴女外観 Commendatore, Order of knights, Imperial of Temptress. 痴女皇国統括騎士団長

Dahlialiese Takagi 高木ダリアリーゼ H.A.1047 12er.

基本報奨金額 SOKR  80,000-
政務報酬初級 SOKR 200,000-
騎士職級俸額 SOKR 10,000-
被服管理費用 SOKR -2,500-

小計       287,500-

特別管理手当 SOKR  20,000,000-
女官慰労寄進 SOKR -10,000,000-

合計       1,287,500-

(257万円ちょい。アルトさんを追い越してませんけど肉薄しています)

「ベラ子陛下が500万円として…まぁ、妥当と言えば妥当ですよね。マリアさんでどれくらいですかね」

「あたしが見れるかな…まぁちょっとやってみましょう」

Marialiese Wordsworth Takagi 高木マリアリーゼ Ten billion Suction. 百億卒 Slut Visual 痴女外観  Empress Emerita, Imperial of Temptress. 痴女皇国上皇 Saint. 聖女

Marialiese Wordsworth Takagi 高木マリアリーゼ H.A.1047 12er.

基本報奨金額 SOKR  100,000-
皇族執務報奨 SOKR  500,000-
騎士職級俸額 SOKR  10,000-
被服管理費用 SOKR  -10,000-

小計        600,000-

特別管理手当 SOKR 100,000,000-
女官慰労寄進 SOKR -95,000,000-

合計        5,600,000-

「ベラ子陛下と同じですね…」

「どうしよう。突っ込みどころがないわね…」

うむ…まさかあたしと全く同じとは…。

「聖院の方のマリアさんはどうなんでしょ。うちと給与体系は似てるそうですけど」

Marialiese Takagi Wordsworth 高木マリアリーゼ Ten billion Suction. 百億卒 Slut Visual 痴女外観  High Priestess, Holy Temple. 聖院金衣女聖 Saint. 聖女

Marialiese Takagi Wordsworth 高木マリアリーゼ H.A.1047 12er.

基本報奨金額 SOKR  100,000-
女官執務報奨 SOKR  500,000-
騎士職級俸額 SOKR  10,000-
被服管理費用 SOKR  -10,000-

小計        600,000-

特別管理手当 SOKR 100,000,000-
女官慰労寄進 SOKR -95,000,000-

合計        5,600,000-

Dahlialiese Lorraine Takagi 高木ダリアリーゼ Hundred-Million Suction 一億卒 Slut Visual(ogre mode). 痴女外観 Commendatore, Order of knights, Holy Temple. 聖院騎士団長

Dahlialiese Lorraine Takagi 高木ダリアリーゼ  H.A.1047 12er.

基本報奨金額 SOKR  80,000-
政務報酬初級 SOKR 200,000-
騎士職級俸額 SOKR 10,000-
被服管理費用 SOKR -2,500-

小計       287,500-

特別管理手当 SOKR  20,000,000-
女官慰労寄進 SOKR -10,000,000-

合計       1,287,500-

「全く同じですね…」

「向こうの経理はどうなってんのかしら…」

(誰よあたしの明細勝手に見て…ってベラちゃん何してんのよっ)

「実はかくかくしかじか(脳内記憶共有中)」

(んーとね、実を言うとですねぇ。うち、経理専任ってまだいないのよ。両替処を拡大対応してるだけなんで、その辺の整備は今年に入ってからやろうと思ってたの)

「ってことは…まーさーかー」

(うーんとね、すごく言いにくいんだけどね…うちの経理とか人事業務の一部、そっちに投げてんのよ)

「そっちでちゃんとやってくださいよ!」

「うちには田野瀬さんがいないのよ! おっさんに頼んでもサンジェルミさんに頼んでも天の声に頼んでも修正難しいって言うし…こっちの世界から繋がる連邦世界にたのちゃんがいないのがおかしいんだけど…恐らく、たのちゃんって出雲年次会議兼懇親会に呼ばれてるでしょ。あれで神種族眷属認定受けたから、阿波内侍さんと同じで遍在するようになった可能性があるのよねぇ」

たまりかねたのでしょう。

聖院の方の姉、こっちに来ました。

「ああ、時間軸分岐の余波でおかしくなってる件ですね…」

「そもそもたのは痴女皇国側の高木まりあの学友のはずなのよ。つまり痴女皇国の時間軸の子。で、当時の痴女皇国を日本側に見せるのはあまりにもあまりなので、聖院研究会の研究対象はうちにした経緯があるわけよ」

「その時点で頭がぐっちゃぐっちゃになりそうな」

「だから若様にしてもぶっちーにしても理恵ちゃんにしても、元来はそっちのあたし…黒マリが担当で間違いないはずなんだけどね。まぁ、認識矛盾とかは今後もありえるから直させる限りは直させるとして、ですねぇ」

「それはともかく経理の話ですよ。いくらなんでもそんなことして大丈夫なんでしょうか…」

「まぁ、トップがいないと言うより、こっちとそっちの財務のトップが事実上同じだからこそできる荒技なんだけどね…」

「ああ、なるほど。デルフィリーゼ様とクレーゼ様さえ共通知識があれば、触る端末とか同じならできますね」

「あとはたのちゃん役。こればかりはどうしようもないので、初代様に来てもらってます。あの人だけは遍在してんのよ、八百萬神種族と同じで…」

「え? うち…というか痴女皇国にいるのでは?」

「あの方々…神種族ってちょっと特殊でね。崇徳上皇陛下もそうでしょ。連邦世界にいるのが基本みたいだけど。要はある程度時間や空間関係なくなんのよ。あたしらが分体出してるのとは違う理屈であっちこっちにいられるの。というかあっちこっちにいてる人…とあえて言うけど、その意識を共有してると思う方がわかりやすいわね」

「んじゃ内侍さんはどうなのでしょう」

「初代様や崇徳陛下…本物の神様になった人とか、神様由来の人よりは意識できる存在がもうちょっと曖昧なのよ。で、本人がそこにいたいって思った場所に集約されるって考えるといいかな。崇徳上皇陛下が痴女皇国に行けって指示されたから痴女皇国に行ったというより、義体に集約憑依してるって思ってたらいいわよ」

「ふむふむ。なーんかよくわかったようなわからんようなっ」

「まぁ、ベラちゃんは特殊にもほどがある生まれだし、生まれた時から一種の固有存在…神様じゃないけど神様に近くなる事が予定された特殊個体と思いなさい。ダリアはもともと人間だから人間としての歴史と存在があるので聖院にも痴女宮にも別個体が存在すると思っときゃいーわよ」

「それより痴女皇国も久々よねぇ。うちはまだ離宮を作ってお茶立てるまでには至ってないけど、正直うちだと離宮いらないのよねぇ」

「そのお顔と声では見学をしたいようですね」

と、言う訳で聖院の姉を離宮に案内することに。その騎士試験というのも後宮でやるからちょうどいいでしょう。

「まぁね。とりあえずはインセンティブの話だったっけ。黒マリが比丘尼国に行ってるし、問題が出てるのはわかるしいずれは聖院側でも問題になることだからちょっと考えてみましょう。騎士の訓練とか試験ってのはそもそもどういう目的でやるのよ」と、離宮への道すがら聖院姉が聞いてきます。

「えーとですね。百人卒を誰でも彼でもちんちん生やす訳じゃなくします。具体的には百人卒で千人卒昇格希望者について試験を実施。例えば昇格希望者が10名いたとするじゃないですか。その10名を交互に模擬戦させて、今の時点の基準では5名に勝てばよしって採点基準にしてます」まぁ、騎士の話なのでダリアさんが主に答えることになります。

「ふむふむ。つまり千人卒は騎士能力も見ると。でもさぁ、それって騎士能力が低い人…つまり勤務ローテーションであまり騎士当番が回って来ないとか、そもそも騎士能力の低い女官を早くから見つけて努力させてないと、いきなり戦えって言っても不公平な気もするのよね。勤務のローテーションの中で苦手を克服できればいいんだけどね」

「ああそうか、女官資質だけで千人卒昇格詮議にかかってたような騎士経験の浅い女官いますからねぇ…そういう女官には一夜漬けを強要しかねない話になりますね」

「それと騎士訓練の際に教える側。聖院はまだしも、痴女皇国のエリート部隊は潜入偵察や破壊・誘拐工作などをしている、いわば汚れ部隊でしょう。正規戦闘員じゃないから、どうしても戦い方は実戦向きになるじゃない。いわば剣道なら剣道の模範試合を得意としない人が教えることになるでしょ?」

「あー、黒薔薇が教えたらちょっと実戦剣術とかになっちゃいますね…」

「聖院時代はアレーゼおばさまが教えてたからねぇ。うちはアルトかしほちゃんが担当だから、言ってみれば正統派の聖院剣術を教えられるけど…そっちはダリアはまだしも、アルトくらいでしょ…アレーゼおばさまに直接剣を習ってる上級幹部」

「黒薔薇って一応は聖院経験者ですよね」と、あたしは助け舟というか確認を入れてみます。

「ですよ。ただ、アレーゼ様に代わってアルトさんが騎士団長になったのは聖院と同じなんです。で、アルトさんの時代に習ってる子なんですよ…つまりアレーゼ様直伝じゃないんですよねぇ…はっはっはっ」

ダリアさん、なぜか滝のように汗をかき始めました。

「うん。ダリアの言いたいことはわかる。アルトは基本、力で押す。ダリアならよーくわかるわよね」

「ええもう、あの人は叩きのめすというか叩き伏せるのが大好きですからっ」

聖院時代の暗い…というか恥ずかしい思い出が蘇ったのでしょう。嫌な顔をしていますね。

「どうしても変な癖をつけたくないなら、聖院に来てる間に教えた方がいいかもねぇ」

「そうですね。一応十人卒から百人卒昇格の際の詮議要件、聖院勤務半期必須にしようかって話もありますし」

「その時に騎士要件入れないの?」

「勤務実績は入れてますよ。ただ、騎士研修をあまりに重くし過ぎると騎士系統ばかりが増えることになりかねませんからねぇ」

ここで少し注釈を。

鬼作戦のあたりで女官の数を増やすとか云々の時もありましたけど、聖院に1週間なら1週間行かせて向こうのやり方やらを習う制度、期間や内容はともかく継続はしてるんですよ。

聖院の人手不足の場合は痴女皇国から応援する。

逆に、痴女皇国が大変なら聖院が応援する。

この際の作業を円滑にするために、普段からお互いに慣れておく。

この考えに基づいて、女官の研修計画を組んではいるのですよ。女官寮の女官、特に百人卒未満の女官入れ替えが頻繁な理由の一つがこの「聖院業務研修生を送り出す、あるいは聖院からの研修女官をその時の規定期間の間受け入れている」からなんですよね。

で、今年4月からの千人卒昇格要件として、女官半期・財務半期・騎士半期・聖院半期という勤務実績基準が考えられています。つまり、痴女宮本宮勤務または女官勤務を含めると、出家してからちんちん生やす試験の受験資格を満たす勤務実績を作るためには最短でも2年を要することになります。

「そっちの要件資格を満たせば聖院は1週間から1ヶ月くらいでもいいんじゃないかな。逆もしかり。まぁ、黒マリには痴女宮なら痴女宮でしっかり習ってたら聖院業務は最長1ヶ月くらいでいいと思うよって今、言ったから」

「助かります。しかし…この制度ってやっぱり300年後のあれを見据えてるんですかねぇ」

「それはあるわね。でも、もっと重要な事は…痴女皇国はあたしのいる聖院世界の5~6年後を先行しているでしょう。だからプローブ役…もっと言うと地雷除去車両役なのよ…」

「うわーマリアさん言い過ぎそれ言い過ぎっ」

「確かにうちが率先して色々やらかしてるのは否定できませんけど…」

「例えばね」

と、離宮の入り口をくぐって中庭に出る手前で止まり、キッとこちらを振り向く聖院の姉。

「この光景を見て、これに右ならえして聖院も騎士研修をこの内容でするかというと疑問があるわけよ!」


えーと。どんな光景かって言うの、一応説明しますね。
というかあたしも今、説明されました…ジョスリーヌさんから。

「えー、まず模擬試験内容ですが、ここな女騎士2名が訓練用模造刀で戦います。そして勝者には千人卒昇格能力者が褒美を授けるという趣旨にしております。そして敗者は…ええ。黒薔薇と紫薔薇のストレス解消いやもとい、指導を受ける事になります。という訳でマリアリーゼ陛下またはマリアヴェッラ陛下。いえ、ダリア団長にお願いすべきでしょうか…」

「ジョスリーヌさん…いちおーお聞きしますけど、この子、昇格許可者ですよね…?」
「陛下。ここな団長の許可も頂いております」と、電子書類を見せるジョスリーヌさん。あ、そーか…そりゃダリアさんが昇格予定者を知らん訳、ないよね…。

そして背後に展開される堤防の儀式ライトバージョン。

上がる悲鳴と水音。全てを克明に解説はしません。したくありませんっ。

(えっとですね。ジョスリーヌさん。ダリア。お聞きしますけど聖院からの研修受入対象、これ必須じゃないよね?)

絶対にそれは許さんぞという顔で皆をめまわす聖院姉。

そのド迫力に思わず全員がたじろぎます。一種の懲罰中の全員すら。

「ま、ま、まぁとりあえず…ちょっと別室へ…ダリア団長、この子の昇格措置をお願いします…」

ええ、ここは黙ってジョスリーヌさんがあたしと聖院姉、つまり白マリと言われている人を離宮に連れて行こうとするのに従います。

あたしが昇格処理する場合は、絶対に昇格時に便器として使えと言われるに決まってますから、その子。


んで、3階のあたしの部屋。
部屋付き女官にコーシーを依頼してジョスリーヌさんの言い訳、いや説明を聞きます。

「そもそもあの強烈な昇格試験の内容だとさ、勝った方も負けた方も昇格されてしまわない?」じっとりじとじとと疑わしそうな目で我々を一瞥されますが。

(それは流石に防がれるとはうちのマリアさんから聞いてますけど…ジョスリーヌさんもほら、何か言ってあげてくださいよ…)

そうそう、ダリアさんがジョスリーヌさんに対して腰が低い理由。

えっとですね。
実はダリアさん、出家して聖院登院したの10代前半のはずなんですよね。

うん。そこからの経過年数とか考えたらリアルだとアラサー。
アルトさんのすね具合が深まるといけませんから密かに言いますけど、アルトさんよりは年下です。

確実に。

少なくともナディアさんより微妙に上なのは確実です。

そして確かアルトさんとジョスリーヌさんを比べるとですねぇ。

どっちもアラフォーでジョスリーヌさんの方がう


もがもごごごごご。

「ベラ子陛下。年齢に関しては誰のデータであろうと痴女皇国の重要機密事項です。ステータスに年齢を記載していない理由、小官は迅速に察しましたが」

わかったから口から手を離して。
あと左手であたしの穴いじろうとするのやめて。

「まー。年齢の話については色々危険だから、これはベラちゃんが悪いわねっ」

ううううう。

「んでさぁ、その…インセンティブについてだけど、ゆくゆくはこちらにも影響が出る話だし、まず確実にそっちで採用したらおっつけ採用するかどーかの検討事案として必ず来るから、今のうちに意見を言っておくわね。で、あたしが口を挟みたい事は現段階で2点」

どんなんでしょう。

「まず一点め。しくじった際の対応。今まで面接で試験してただけのようなもんをいきなり実技を含む厳しい試験にします。これで何の反発も軋轢あつれきも起きないわけがない。実際起きてるよね?」

はい。
これにはジョスリーヌさんもあたしも頷かざるを得ません。

「なので、試験的に今年1年それで通してみて様子を見ればいいのよ。で、本年度に試験に落ちた場合も翌年に同様の試験をするのかはともかく、来年は面接とデータ選考だけで診断したげるとかね。確か試験内容は女官実技と騎士成績と筆記試験だったわよね。このうち合格項目については翌年も合格として扱ってあげるって感じでもいいわよ」

「ああなるほど、不合格科目についてだけ再審査してあげると」

「そしてインセンティブ制度についても同様。予備導入期間を設けて、その時の得失や実際の経費節減効果を観察して1049年から本導入するか決めるって言えばいいのよ」

確かにそれは盲点でした。試験導入という考えに至らなかったのはうかつ、うかつ。

「で、昇格制度や一部手当てのインセンティブ化に対しては試験導入で結果を見極める事を提案したいのが一つ目なの。そしてあたしの提案、第二弾め。むしろこっちの方が本命っちゃ本命よ。ちょっと覚悟して聞いてね?」

なななな何なのでしょう。
この上何を言われるのでしょうか。

「断っとくけど一応、うちの方せいいんの家族会にかけて承認もらってるにはもらってんのよ、提案。聖院側じゃそこまで逼迫ひっぱくしてないから痴女皇国そっち持ってけって言われてもいるんだけどね」

うーむ。勿体をつけられるのも嫌ですよぉ。
はよいうてくださいよぉ。

「ふふふふふ。で、そもそも財源不足ってのは何を根拠に財源が不足しているのか。予算の根拠は一体何かなんだけど…これはまぁ、田野瀬さんかデルフィリーゼおばさまに聞いてもらいましょう。そして単純な物的財…金銀や他の金属資源とか物理的に存在している有価資源がまずあるでしょ。それが不足しているのか、はたまた紙のお金的な相場変動などなどで価値が左右される、いわば数値的資源。ここまでは人間の社会と同じよね」

ですねぇ。

「だから人間社会の高齢者の預金が動かない対策と同じで、固定資産税めいたものを創設するだけで女官の貯金が貯まりすぎて困るということはないはずなのよ。百人卒未満ならどう頑張っても300万円切るんだから、預貯金額。むしろ千人卒以上にどういう風にお金を使わせるか、これも課題っちゃ課題よね」

あーなるほど、貯めてるものを出せ。これは理解しやすいです。

「ベーラーちゃーん、なんか変な事考えてないよね…で、我々女官種または痴女種の場合、もう一つ無視ができない資源があります。精気が正にそれよね。これこそ貯めてるものを出せって話じゃないかな」

「しかし女官は基本的に吸い上げ吸い取りがありますから貯めるのは一時的なものですよ、報奨金の貯金と違って…」

「いえ、精気が人間には目視も測定もできないだけで有価値資産と考えるのよ。そして精気はあることで生産されるわよねぇ」

ええ、人間の性交というか性的欲求、特に男性のそれですね。

「だから未掘の鉱物資源と同じでさ、鉱脈…というより、痴女皇国流に言うとリンゴの木よね。果樹園を増やせばさ、あたしたちが刈り取るかどうかは別にして精気の供給源は増えるわけでしょう。つまり人間、特に男の人口を増やす方向で政治的干渉を行うってのはどうかしら?」
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