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てるちゃん奮戦記 -Hôtel de Atlantide- 6
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「わだつみがみ様…であらせられますか」おまつ様が初代様の由来を聞いて絶句しておられます。
はい、立ったままも何なので、外道丸ちゃんが気を利かせて墓所の備品の葬儀参列者用の椅子を用意してくれました。
…なんか日本のお葬式会場めいた物品が懲罰具倉庫の片隅に置かれていた気もしますが、深く気にしないようにしましょう。母様の葬儀の時に使われたものはもちろん、毎年のお盆とやらの夏の一時期に出てくるお香を焚く台もありましたし、きっと母様か姉様の趣味に違いありません。
(趣味にすんなっ。あれ持ち込んだの、かーさんだからなっ)
(まぁ、わたくしもそうでしたが、墓所の皆様には好評なのでよしとしましょう)
(私もクレーゼも、ついこの間まで祀られる立場だったしな…あれはなかなか気分が良い。クレーゼに香を焚かれる以外はっ)ああ、いまだ続く母娘の確執というやつですね。
(それはもう…マリアヴェッラ…クレーゼがそなたやエマニエルのような子なら私はどれだけ楽ができたか!)
「その確執に近いものがございましてね、神族同士で…」
「神様というのが実在したのはともかく、天照大神様とそちら様が姉妹の関係とは…」
「実は姉も私も、今の地位はある意味懲罰めいたものなのですよ。姉を例にとりますと、中原龍皇大陸で昔、失敗しています。後にニオオフラーネの故郷の学者様が見つけられる古の都や、聖母様の故郷の東のしべりあにございます石造などはその名残とお考えください。伽耶国の興亡にも関わりがあるのですよ…伽姫様に日本の方の血がお入りなのもその時のあれこれです。そして私、ナンムですが…」
「ああ、アトランティス大陸を沈めた…」
「そして私をナンムやイシュタルとして信仰した人々や、えじぷとに北欧にあすてかと言ったいにしえの神々が何故絶滅、あるいは滅亡寸前なのか。これは理由が二つあります。まず一つは、神を信仰する者が絶えたか、信者の数が減りすぎた。これが一つめです」
「そして、もう一つは…生贄ですか」
「ええ、マリアリーゼ。必要以上に生贄を求めた神の側も誅される事態となりました。特にニオオフラーネが生まれた北の国。で、マリアリーゼにマリアヴェッラ。あなた方が生まれた世界と、聖院並びに痴女皇国世界が色々と違う理由も、懲罰ややり直しが絡んでおります。もっと言うと、神は神の都合でやり直しや試行錯誤を繰り返しております。慶次郎様をはじめ、人の身の方には神々の横暴に映るかも知れませんが…」
「大和国も、天津神が外から来て国津神と争うたと聞きますな」
「ええ。あれも姉の起こした騒動です。そして、神のみならず人も人同士で争いました。異なる神の下についた者同士の事もあれば、神を抱かず自らの欲に任せ滅んだ事も」あー、ソドムとゴモラとかバベルの塔とかですね、この映像。
「ここなニオオフラーネの故郷もそうです。人を多量に生贄とし、神同士の最終戦争に備えるとか無駄な事をしたが為に衰退したのです」
「しかし、わだつみ様…といたしますが、女神様のお話で腑に落ちぬことが一つございます。何故にかみさまは人を必要とするのでしょう」
「前田まつ様。かなり厳しい話になりますよ。よろしいですか」
「はい、おおよその見当、ついてはおりますが…」
「おまつ様。人はめしを食わねば死ぬ。しかして神様はどうじゃ。霧やかすみを食うておられるわけではありますまい」
「前田慶次郎様、本当に鋭いお方ですわねぇ。ええ、文字通り人は神の家畜、皆様で言う鳥や獣や魚の扱いでした。過去の言い回しにしております事に注意願いますね」
「わたしら鬼もかつて、まさにその立場でしてな。しかし…欲のままに人を食い散らかしておれば、いずれ人はおらんようになります。ではどうすればよいか。わたしらは人やおかみ様と相談いたしました」と、外道丸ちゃんが。
「人そのものを食わぬように自らを変えたのです。ただ…代わりは必要」
「ここの上、聖院と同じく遊郭なんですよ…遊郭でする事、日本の方々にはわかりますよね?」姉が申します。
「なるほど、あれを致す時には気を遣る。男はまさに気をやられる訳ですな?」
「その通りです。更に、吸い上げた気を溜めて神や女官に分配する仕掛けの一つが、この子達…この金庫室にいる方々ではデルフィリーゼ、クレーゼ、二人のマリアリーゼ、そしてマリアヴェッラが該当します。この仕掛け自体は悪くありませんでした」
「聖院は痴女皇国も含めて千年以上続いていますから」
「ただ…わたくしの辺りで雲行きが変わりました。そうですわね、初代様」クレーゼ叔母様の顔色、かなり深刻です。
「あなたとアレーゼの確執はともかく、結果的に聖母様が我らの世界に遣わされ、マリアリーゼが生まれた事は正に天啓でした。この子達やマリアヴェッラがいなければ…地球のやり直しはかなり早まったでしょう」
え。
やり直し?
「皆様。落ち着いてお聞き下さい。この星…人間の方はこの後、日本を経て北欧に向かう前にマリアリーゼの船で地球という、我らの立つ大地がどのような球かを見せて頂いた方がよいでしょう」と、聖環を操作して地球の姿を皆様に見せる初代様。神様なのに慣れていらっしゃいますね…。
(それはマリアヴェッラ、言わぬが花です。私も姉ほど口には出しませんが、身体がありますと色々はかどりますからね?)
はーい。
「そしてこの球自体が、もし生きていて何らかの意志や本能を持つ生き物としました場合…自らの表面にいる諸々の活動の影響を受けます。例えば…汗をかけば身体を洗うなり水に浸かるなり、あるいは布で拭くなりしますよね」
「致しますな…よもや、大地そのものが生きておられると?」
「ええ。そして虫に食われた鹿が泥の中で暴れて虫を振り払うように、大地が虫…いや、我々や人を振り払おうとしましたら我々に為す術はありませぬ。いえ、正確にはございます」
「ただ、それは神様はともかく人には極めて都合が悪い話…ですわね」聖院の姉。
「ええ、マリアリーゼ。日本の方々、NB…違う星に移り住んだ人々の中で賢い学者様や、何よりこの子達が指摘していますが…今まさに私どもがいる大地ですけど、この子達が元来生きていた大地より遥かに若いのです。そして若いという事は成長、もしくは老いるという事でもあります」
「でねぇ…日本に富士山ってあるでしょ。あとティーチの旦那とか美男公には近くの火山。この辺の火を吹く山の動きやら、あと世界が一度雪と氷に覆われて冷え切りかけた事があるかないかを調べた事があるんですよ、わたしたち」
「冷える必要ってあんのかよ?」
「黒ひげ…それが起きないと金が出来ねぇんだよ。いや、実際にはもう少しややこしい事が起きた結果、金銀宝石は地面の中に作られたんだけどな」
「金銀だけじゃないのよ。鉄を作る時や暖房に使うところもある石炭。そして将来必ず必要になる石油という燃える水ね。こうした物が地中にないまま、人が自らの力で走る泳ぐ飛ぶ道具を発明した場合…早ければ300年程度でそうした資源が枯れ果てます」聖院の姉が自動車や飛行機、船といった内燃機関で動くものを見せ…何であたしの乱暴ルギーニまで。
(だってベラちゃんが乗ってるせいで、聖院でもあんなの買おうよってうるさいのよ…特にサリーとアンジェリーナが!)すみません。あれ半分イタリア政府に押し付けられたようなものなんです。
「で、あえて黒ひげを指名して聞くよ。あんた大英帝国のカティサーク知ってるだろ。あの無茶苦茶な帆船」うちの姉が質問。
「ああ…ありゃ掛け値なしにすげぇ船だ。荷運びでも人運びでもいい、真剣にあれがあると色々捗ること間違いねぇ」
「うん。ただ…あれ、帆を取っ払ってないの、不思議に思わないかい?」
「言われてみりゃ確かにな。だが見当はつく。あんだけの速力を出すと無くなるものも早い。だから普段は風の助けもある方がいい。なんせ風は無料だからな。ってところでどうだい」
「ラム酒1本差し入れだね」
「ウィスキーってのにしてくれ。最近あれの味に目覚めたんだ。で、三河監獄国か…あそこの連中の話を聞いても、普通に木を燃やせば済むものをやたら変な手間をかけて火に代わる熱を求めてるそうじゃねぇか。うちの厨房でも煮炊き全てに薪を使ってるかい? これをを良しとするか悪しとするかは別だが…あんたらは木や他の燃やすものをやたら節約したがってる。理由は…将来、足らなくなるか、もしくは絶対に必要になる時のために取っときたいか。陛下に水割りをお作り頂けるくらいの答えにはなったかい?」
「仕方ねぇな。おかんの山崎20年物か、マッカラン17年物をかっぱらって来るか…まぁ、あのクソ高い部類の酒をガメる算段を考え出したのがあたしの反応だ。ありゃ、とっておきだからね」
「ティーチ。私が奢りましょう。グレイン・フィデック17年物。本当なら宇賀神様の奥様が快癒した時のために取っておきたかったのですが…あと一本ありますからね」
「こいつは光栄の極みだ。そして…さっき、冷えるって話があったんで気になったんだが。マリア陛下、やたらと芋やら米やら麦やらトウモロコシの生産試験をやってねぇか?」
「んーっとね。日本…こちらのおさむらいさんの国みたいに冬場は雪で身動きが取れなくなる国で植えてもちゃんと採れるものは作ろうとしてるね。厳密に言えば既にそれはある。あとはこっちに持ってきて在来種…元から植わってるのと掛け合わせるだけさ」
「鯖挟国でもやたらに灌漑や食糧生産をさせたがっておられましたな。更に申し上げると、イザベル陛下の方でも」
「…即ち、幾百年かは知らぬが、人は寒さに苦しみ、飢える時が来ると申されるか…」
「あ、喫煙特認。旦那、キセル使っていーよ」
「ではわたくしも…ってナンムの姿では何も持てませんではないですか!おっぱい剥き出しだし!」
「初代様、今頃気づかないで下さいよ。ほいハイライト」
「ああ、これですわこれ、肉体労働の味とやらが効きますわっ」…その煙草…宇賀神さんに聞きましたが、お父様は自分が肉体労働者に限りなく近い仕事だったから好んでいたと。つまり労働者の味ということで、初代様には甚だ似つかわしくないというか、DQNの臭いが…。
「ベラ子。このクソ甘ったるいのは何だよ…学校で絶対に吸うなよっ」
「何であたしのイタリアンアニス持ってんですかねーさん」
「ふむふむ。なんか吸い味がガラムみたいよね」と、聖院の姉が味見の感想を。
「私は葉巻を嗜んでおりましたな。あと陛下は水煙草」
「海賊連中は素焼きパイプか、金属細工のだったなぁ。そっちの剣士の旦那がお使いのようなやつ」
「何気に喫煙者が多い聖院関係者でございますわね。まつ様は?」
「えー、日の本できせるを使うおなごは殿方勝りの稼業…つまり自分の体で稼ぐとかしております者の嗜みだったのですよ。即ち、わたくしが嗜もうにも加奈はもちろんのこと、利家様から遊女に見られるからやめてくれと」
(クレーゼ母様…江戸時代だと農家や商家にも広まって野良仕事で一服とかあったんですけど、おまつ様の時代はまだまだ高級品だったんですよ、たばこ…)
「ちなみに某課金げーむとかでうちがキセル使ってるように描いてる絵があるけどな、うちが現役で鬼さんやっとった時代にはキセルどころか煙草自体がまだ伝わっとらんわいっ。うちは酒や、酒持ってこんかいの鬼やから注意してや!」
(外道ちゃんまでが誰かに言う癖を…)
(よほど言いたかったようだ。暖かい目で見てあげよう)
「でねぇ、実際にこっち…ジーナ母様の方の世界の徳川幕府の時代には実際に冷害といって不作による大飢饉が発生してるんだ。ちなみにティーチや美男公、この冷害はヨーロッパでも起きるからな」
「ふむ。それで芋を…」
「ああ、寒冷種って言って米が出来ない場所でも作れるのがあるんだよ」
「琉球でも芋を育てておったな。薩摩にも送ったようだが」
「しかしケイジロウの旦那、あんたは将来を気にしてるようだが、この嬢ちゃん、失礼。陛下の世界だと乗り切ってんだよな、その冷える害」
「ただ…犠牲者多数だよ。それに、わざとそれを起こす奴もいるんだ。北欧の神様がそれだよ。いけにえよこせって催促のためにやるんだ。だから討伐されんのによ…」
「ひっでぇ神様だな…」
「ますます成敗したくなるではないか」
「まぁまぁ、同じ北国の神様でもさ、実のところ、蝦夷の神様はそこまで苦労を強いていないんだわ。まぁ、あの地の人々は割とつつましく暮らしてるのもあるんだけどね」
「でまぁ、慶次郎の旦那の疑問に先に答えておこう。そんな天変地異の起きる可能性があるからこそあたしたちは人の世界にちょっかいを出すんじゃないか?って話ね。これは正解さ。もっと言うと、あの空飛べる船あるじゃん。あんなの作れるまで人が生き延びれるようにするためだよ。あれ、人が作るからな?」
「ふっふっふっ、それどころか人が住める星をかろうじて見つけて移り住みます。んで、そこの領主様の息子さんが…私たちマリアリーゼの父親、つまりこの人」と、聖院マリア姉がクリス叔父様を前に出します。
「ついでに申し上げますと、クリス様は人の住めない大地を住めるように研究している専門家です。この子達の服の形が変わるとかするのはその研究の副産物ですよ」と初代様がフォローなさいます。
「で、僕が父…ヘンリー・ワーズワースから聞いている話です。最悪の場合、こちらの星で空きがあるから、移り住む事を希望するなら受け入れる。ただ、開拓者としての仕事は必ずして頂く、と」
「実際に聖院や痴女皇国から人を送り込んで開拓の補助をやってもらってるよ。ただ、こちらも人手は欲しいんで、逆に向こうから受け入れてるのもあるけどね」
「なるほど…最悪の時の事はお考え頂いておられる訳ですわね」
(これは私が北欧や欧州で痴女皇国の方にお世話になった際に教えて頂いた話ですが、この方々は人を林檎の木のようにお考えです。つまり、木そのものを枯らさずに実だけお持ちになると。その逆で、木そのものを欲するのが我らが従来信じていた神々であるという事だそうです。これには納得できますね)
「すると皆様にとって、我らは柿の木のようなものであるか」
「栗扱いとも言えますな」
「なつめの木だなぁ、俺に馴染みが深いのは」
「まぁ、剪定はされても切り倒すのはなし、と」人の皆様はこの説明で納得を頂けたようです。ま、姉やあたしも元をただせば人間なのですがねぇ。しかもあたしは完全に人間…痴女種ですが。
「で…外道ちゃん、えりちゃんが預かってたあれ持って来てよ」
「へい。熊を崇めぬ者許すまじとアイヌラックルが言うとったので貸した。本来は門外不出の宝剣なので絶対に絶対に壊さないでくれとケマコシネカムイが懇願していたそうですわ」
「おう、これよこれこれ。これが借りたかったのよっ」と姉が宝飾のついた直刀の鞘を抜いて刀身を検分します。
「で…これの能力と性能をエミュレートして…と。おっけー。外道ちゃんに返すっ」
「え、ねーさん、それを使わせて頂くのでは…」
「ダメなのだよベラ子くん。この剣を本来の威力で行使するためには雷神カンナカムイの息子または血族である事が第一条件なのだっ。息子アイヌラックルの危機にあたり、カンナカムイが自分の力を宿して使わせた宝剣がまさにこれなのだよっ」ほうほう、そういう剣であれば人を選びますね。
「アイヌラックルはアイヌの神様で、名前には人間くさい神という意味があるのね。だからこの剣を使える者として必要な条件を備えているのは…まず人間であること。そしてカンナカムイの血縁者であることが条件。ただ、黒マリがさっき分析していたけど、アイヌの血縁でなくても使えるようにするための方法を探していたわけなのよ」
「アイヌラックルいわく、勇猛果敢な戦士が必要に迫られて使わざるを得ないのなら使え。そして人界をみだりに騒がせる邪神魔神の類が相手であればなおよし。ただ、加勢は一度と言うとります。…けいじろうの旦那ならいけますなぁ。いや、この方ならわしの鬼切貸した方が話が早いんちゃうんですか」
「それがねー外道ちゃん、相手は鬼じゃなくて神様だからね。だから鬼切ではダメージを与えられるけど致命傷ではなくなるのだよ…全く、うちのカリバーン見習ってくれよ。最近じゃクリス父様以外でもしゃーねーなと操縦認めるようになって来たからな」
「たのきちが犠牲者第一号ですね。二度と乗りたくないと言ってましたよっ」
「あれはパーソナルオフィスボックス閉じ込めの刑だから仕方ないじゃない。で、慶次郎さん。痴女皇国のマリアリーゼ…黒マリがあなたの槍にその力を移植したいと。大丈夫ですか」
「大将殿の仰せじゃ。それにせっかく秀康殿から借りた業物、武勲を上げてお返ししてやりたいしな。槍だけに」
(父様。わかってるよね)
(…あれ?駄洒落菌反応は出ていないよ?…まさか変種な訳はないよね。マリアたちが見ても反応ないだろ?)
(とりあえず慶次郎さんは要観察だ…)
(確かにあの人に駄洒落菌を移すのは人として避けたい気がします)
「で、その剣…いかな威力があるのじゃ。神様の剣だけに迂闊に使うて要らぬ害を与えては迷惑じゃろうし」
「…っとねー、悪魔や魔物が制御不能になって暴れ回る地獄の暗黒帝国を焼き尽くした上、12日に渡って燃え続けた模様」
「マリアリーゼ…あたくしがカンナカムイに掛け合います。つきでもかせいでも良いからしうんてんして来てください。良いですね」初代様の顔色が悪いのですが。はっはーん、なんか似た事やらかしましたね?
(あとらんてぃすで昔。というかマリアヴェッラ、最近辛辣ではありませんか)
(たのきちの一件がなければ私は聞き分けの良いヘタリア娘ですが、あの件がありますとボルジアの血が騒ぐのです)
(わかりました。マリアリーゼの定めた掟ですが、痴女皇国では堤防で決着をつけるが習わし。ちんぽを洗ってまいりなさい)
(初代様、私もMIDI化を果たしております事お忘れなく。更に母様のように機能を使いこなせていない事はありません)
(くらぁベラ子、お前らが南海怪獣大決戦やらかしてどうする!初代様もあまり本気にならないように。やるならシベリア辺りで。隕石落ちた事にしてごまかしますから)
(仕方ありませんわね。金衣状態のハンデは付けて差し上げましょう。ただ、白金衣は持ち出しますよ)
(あーだめそれダメ!余計ダメ!白マリ!お前とこの白金衣、お前の部屋のクローゼットだろ!今すぐアルト飛ばして確保させろ!こっちの白金衣は黒グッズ化してあたしが機能権限掌握してるけどよ…)
(マリアリーゼもケチですわねっ)
(つーか痴女宮ごと聖院湖吹き飛ばす気ですか)
(そうですわよ初代様。あれクレーゼ母様が着てすら島ひとつ消し飛ばす威力あるんです!着た人をマイレーネおばさま化する代物なの、わかっておられますよね?)
(ちなみに娘だが、決して金衣最弱ではない。舐めプとやらをしたがるだけだ。なお私デルフィリーゼは白金衣を着たクレーゼを殴り倒して持ち出しを咎めた事があるんだが)
(墓所の時間限定加勢がなければお母様を地に伏せておりましたのに!)
(マイレーネ様の名前で威力が読める俺も染まったな、ここに…)
(ティーチ。私が謀反など考えたくない理由、わかってくれ。ここの手前の部屋、使う者こそ選ぶがそういう物品の封印倉庫だ。)
「皆様方。女性らしからぬ振る舞いは信者がおりました場合に厳しい目で見られますかと。わたくしも加奈に黙って薙刀持ち出しましょうかと思いました!あの亭主が佐々成政如きに震え上がって援軍出さないから末森に加勢に行きましたわよっ」
「この世界の前田まつさんは実際に末森城で暴れていたりする。なお、慶次郎の旦那や助右衛門に加わり小便鉄砲に参加したかは謎だっ」
で。
姉がまたぞろ誰に向けたかわからない解説をし始めたのを引きずり、テンプレスに戻ります。
「しかし大将殿。部屋も拝見させて頂いたが、甚だしく質素であるな。なぜこれほどの城を己のために使わぬ。あの金蔵の金にしても、我らが無駄遣いせずに預かるためだとは悟り申したが」
「旦那…どうやらあたしゃ政治家気質みたいなんだよ。もちろん、かつては学生としてそれなりにお嬢さんしてたし、物や金に困ったことは基本的にないから逆にあれ欲しいこれ欲しいがないみたいでさ。あたし個人としちゃ、必要十二分ってとこだね」
「慶次郎さん、ここの学校の講師…いわゆるお釈迦様が言われた事なんですが、お金が欲しいとお金が必要なのは別だろうって。あなたはどちらだってのを、かつてお金に目がくらんだ女官にお説教されたことがありまして。欲しいものと、本当に必要なものをまず区別してみだりに消費するのを抑えようという内容でした。これはあの方ならではの名言として痴女皇国全員に知識共有で広まっています」と、不肖あたくしは姉をフォロー。
「ふむ。必要…か」
「ま、必要なものについては贅沢というか、それなりの買い物をしてるよ。例えばあの船。あたしたちが買い取ってるんじゃなくて、借りてるのさ。ただ…借り賃は実質的にタダに近くなってるけどね。その代わりになるべく多くの人間が、あたしの国絡みの仕事でめしにありつけるようにする。それが条件。それと、うちの祖父の国はあたしらが生まれた事になってる日本を含むでっかい国と仲があまり良くなくてね。その仲を仲介するのも私らの仕事のうちなんだよ」
「けいじろう様。うちのよめはぜいたくをしないのはよいのですが、ここだけのはなし、おかしやお酒やたばこに使うお金はけっこうな金額ですよ」
「はっは、まぁそれくらいは多めに見てやれ」
(まりあさま。わたくしはこの方よりはるかに強いはずなのですが、なぜかかんろく負けします)
(そりゃあアルト、この人は当時の日本で一番えらいおさるさんが家来を勢揃いさせた上でだな、しかも本人はサル扱いされてるのをめっちゃ気にしてるのに、よりによってその前でサルの踊りをやった上に自分の生き方を押し通す宣言して、斬り殺されずに生きて帰った人なんだぞ? 肝っ玉が違うよ)
(すごいどきょうのあるかたですね。かみさまやわたくしたちをみても全く落ち着いておられるだけのことはあります。あとかんのなおしさま。あの人といい、まりあさまのタイプですねっ)
(そうか、黒マリの好みだから入れ込んでるのね!うかつだったわ!気づいてたけどね!ほほほほっ)
(聖院のねーさん。バレバレじゃないですか。もう本人めっちゃ嬉しそうなのに気づかない人いるんですか)
(いやもう、いかにもまりあはんらしいなーと)
(更に申しますと、慶次郎様は自由に生きる事が信条です。他人に抑圧されたり、責務が重い人に同情する癖がございます。ええ。まりや様、もろに的にはまってますね)
「そうそう。おまつさんがいるのに更にあたしまでってなって困惑している伽子さんにあたしからの贈り物だ。っていうか、北欧でこれを弾いて欲しいんだよ。これ探すの苦労したんだぜ」と、かなり大きな箱を開梱しています。
「これは…伽耶琴ではございませんか」日本のハープとは少し違いますね。
「そう、あなたの得意なあれだ。ただ、あなたがお持ちの伽耶国代々の貴重な奴が本当はいいんだが、今回はちょっと音を四方八方に響かせて欲しくてね」と、傍のTAPPS7…通称あおかん号を示す姉。一見すると陸戦用迷彩塗装になっていて勇ましそうですが、主な用途を教えたが最後、絶対にかーさまの株が下がる気がします。
「ちょい試してみよう。まず、ここを押して緑に光るのを確かめる。で…短距離ワイヤレススピーカーとして認識…っと。TAPPS側のボリュームはテスト用最小にしておかねーとな」TAPPSの背中からソニックブラスターとかいう音波兵器のスピーカーが展開されてきましたね。
「で、さっきの電源ボタンの横のここが青く光ると、この伽耶琴で鳴らした音があそこから出るって寸法さ」姉がフィンガーピックをつけずに琴の弦を軽くポロン。
瞬間。
格納庫内に琴の音が響き渡ります。
「なるほど…この琴を奏でるとあそこから音が出るというからくりか。伽子、いつもの伽耶琴とは癖が変わるかも知れぬ。馴染んでおいた方が良いかも知れぬな」
「はい、慶郎。わざわざこのようなものをご用意頂くからには、これを聞かせる必要があるかと存じます。その、いけにえの村で」
「んで、普段の練習用にはこれ使ってよ」と無線接続のスピーカーを差し出す姉。伽姫様って痴女化してるんですか? こういうデジタルデバイスが一般的な時代の人じゃないんですからちゃんと教えなさいよ。
「安心しろ。無線がつながんない場合のケーブルも同梱されているぞっ」
「そういう問題じゃないでしょうが…はいはい行きますよ。あと、あのスピーカーしまっとかないとかーさまが怒りますからね」
「しかし、これは何じゃ、具足か甲冑の部類かね」
「っとね、うちらの世界のよろい。こんな感じで乗り込む…というか着込むんすわ。すると中にいるやつの手足の動きをからくりが真似するって塩梅でね」姉がTAPPSのコクピットハッチを開けて説明します。
「で、狭いけど後ろにもう一人乗っかって、物見に使うめがねを操作したり、さっきみたいな楽器を助ける仕掛けを操作するんですよ。ついでに言うとあの背中から出てたの、本来は人には聞こえないけどものすごく気分が悪くなる音を出して、家の中とかに隠れてるやつを追い出したり殺さないけど倒すための武器なんですね」
「かぁーっ、隠れててもだめなのか…」
「捨丸さん、だからあたしらの時代の物見忍者みたいなのはあれ対策で、直接耳で外の音を聞かないようにする耳当てや兜をかぶるんだよ。ついでに暗闇でも物が見えるようなの。ほら、米沢で慶次郎さん探してたちょっと色の黒い女の子がそれつけてたでしょ」
「ああ、ああ、あのやたら色気のある御仁!」
「あの子そういう物見専門の部隊の頭目してたことがあってね。ちなみに同じ装備はあたしの旦那も持ってるよ。ほれ」と、アルトさんをがんつ服に着替えさせる姉。
「黒薔薇騎士団といいまして、よそのおくにに密かに忍び込んでいろいろするお仕事がとくいな女の人ばかりあつめたぶたいがあるのです。あと、ダリア…その子が背負っていたつばさは、紫薔薇騎士団といって調べ物をするのが主なおしごとの女のひとに与えているものですよ」
「色々とすげぇな」
「あ、捨丸さん骨さん悟洞さん。いけにえ村に行く時はこれじゃないんだけど、似た仕掛けをつけてもらうかも知れないから。後で準備しとくよ」
そして航海船橋に戻りますと。
「えー、日本直行やないん? ああ、その剣のテストか…ほな痴女宮のマリア、月の裏側とかどないよ。あそこならクレーターだらけやし、今更一つや二つ増えても気にせぇへんやろ。この時代やったら月の裏側を見る方法はあらへんし」
「初代様、これ、月そのものを壊す事はあり得ませんよね?」
「大丈夫と思いますわ。かせいなら大気がありますからかみなりが起きて被害甚大と思いますけど」
「じゃ、抜錨してっと…黒マリ、月の周回軌道に載せるわよ」
え。
いきなり宇宙空間に行くんですか。
皆さん驚きますからやめましょうよ、聖院の姉っ。
「ほほほほほ、カルチャーインパクトってものよ!」
「なななな何でございましょうか、あの穴ぼこだらけの珠が月でございますか…」
「おまつ様、これが月と申されるからには月なのでしょうな…」
「んじゃちょっくら行ってくらぁ。よっと」エマちゃんがよく来てるド○タスタイルに変わった姉、黄色いヘルメットを被って、その宝剣を持ちますが。
「あんた何でそう言う格好を…いや、イオと金星で金を掘ったときはあたしもその姿だったけどさあ」
「はっはっはっ白マリ、これが正しい肉体労働者の姿だよ」
「ブリッジは元来禁煙だ!…って…禁煙プレートないじゃん…」
「おい。この船どこ製造だ」
「NB…ああそうか、パイプくゆらしたいからか…」
「全く懐古趣味にも困ったもんだな。あ、あたしがこんな格好だからって真似しないでくれよ。元来は月を歩く時は専用の服がないと30秒かからずにミイラになって死ぬからな?」
「誰も真似できないわよっ。はよ行ってこいっ」
そして30秒後。
月の周回軌道上からも明らかに確認できる、ど派手な閃光。
山一つ、吹き飛んでますね…。
(あっちゃー、粉塵撒き散らしすぎた…艦内に戻る時はエアロック経由で戻るわ。エアシャワー使わねぇと船内にあの月の粉塵持ち込んじまうからな…)
(ちゃんと服の隅々まで吹き飛ばしといてよ?それかそこで着替えてから来てよっ)
(へいへい。ま、威力はわかった…これ、状況によって出力制限しねぇと、マジに大気圏内で使用したら焼くとかいうレベルじゃねーぞ…小型核弾頭くらいはあるわっ)
「こっちの測定センサでも結果出ました。弾頭出力10キロトンの核弾頭をP2爆発させたくらいの収束出力を確認。そのいけにえ村の面積にもよりますが、確実に村ごと吹き飛びますよ」サリーちゃんが観測結果を船橋上部のディスプレイに出しています。
「初代様、これちょっと出力制限かけた方がいいんじゃないでしょうか…」
「明らかにテリブルのF2弾頭並みの熱量を観測しとるからなぁ…」
「いていていててて!グラスファイバー繊維被ったように痛てぇっ!」姉が戻って来ましたが、なんか苦しんでますね。
「マリア…お前なぁ、月の表面の粉塵が珪素主体でダイヤモンドヤスリレベルにやばいの知っとるやろが…身体再構成して来た方がええぞ…」白母様が呆れています。
ええ、月の表面の粉塵、ものすごく危ないからTAPPSや宇宙服で降り立つ際には専用コーティングや粉塵侵入防止処理された装備が必要だそうです。更に、場合によっては空気やガスで付着した粉塵を確実に吹き飛ばしてから基地や船の中に戻る必要があると…。
「ねーさん何か間が抜けてるからなぁ…」
「重ねて申し上げておきますが、人間ではない方以外は黒マリの行動を真似しないでください。そもそも今、船の外は空気がない上にマイナス273度、数秒で身体の中の水気が沸騰蒸発して即身仏になります。最低でも専用の服を着た上で格納庫にあった甲冑とか着込んで動く必要がありますからね?」と、聖院の姉が自分用のパイロットスーツを着てみせます。
「うちはまだ痴女皇国のうちと違うて生体インターフェイス残した状態でマテリアルボディ化しとるけどな、あのTAPPS、うちは普通に着込めるで。ベラちゃん。スケアクロウ要員、うちらは13号機ならこっちのマリアとあと一人おったら最低の事はできるからな。万一ソニックブラスタ攻撃要員がおらん場合うちに言い。痴女宮のクリスとうちがおったらあれは運用可能や」
ありがとうございます。万一の際はお願いいたします。
「…甘えるんは出来たらそっちのうちに頼む」えーけちー。
(いや、うちらもあんたみたいな子供欲しい欲しいという話をしてたん知っとるやろ…ただ、これ以上変な由来の子供作ると後でマリアに怒られるしさ…それに、知っとるやろけどうちもあんたも妊娠、今はさすのも孕むのも無理やろ…まぁ、密かにあたしの子種とあんたの子種預かり合いしてエマ子に頼むなら協力はするから、後でな…)はーい。
「やれやれ、えらい目にあったぜ…とりあえず現地の状況見ながら出力制御するしかねぇな…初代様、それで構いませんよね」
「ええ、いくらなんでもあれはおーばーきるになりそうですわね。現場判断に任せます」
「大変じゃったのう大将殿。…ところで、今聞く話ではないとは思うが…そなた、あると殿とめおとと申しておったが、二人ともおなごであろう。何故にめおとに」
瞬間、ブリッジの全員が固まりました。
ええ、どうやら誰一人、慶次郎様に説明しておられなかったようなのです。
そうです。私たち痴女種は両性特徴種。つまり皆様がふたなりとか言ったり、生やし屋は族滅と申されたり、◯娘に生やした絵を描かれてそれで抜いた人と一緒に吊るされる部類です。
まずい。
これはまずい状況です。
しかし、黙っているわけにも…。
「ああ、慶次郎さん知らなかったのね。あたしたちは昔は女官種と言って女ばかりの集団だったんですよ。しかし、今後を考え私たちだけで子供を作れるよう身体を作り替えました。もっとも、私たちばかりが増えるとまずいから色々な制限はしていますよ。アルト、ベラちゃん。ちょっとこっちきて」と、聖院の姉があたしを呼びます。
「黒マリ…あんたこれちゃんと言っとかないとみんな驚くからさ、ちょっと提督室行ってくる。アルトとベラちゃん借りるわよっ」ああ、姉が言い出しにくそうだから聖院姉が気を利かせているのですね。
しかし、黙っている方がよいのでは…。
「黒ひげや美男公は知ってるし、見ない方がいいわよ。慶次郎さん、おまつさん、伽姫さん。あと捨丸さん悟洞さん骨さん。見ていいもんじゃないけど見といて。はい、こっちこっち」と、提督室付随の会議室に転送されます。
「でぇ、私たちだけど、例えばベラちゃんとアルトくん。見た目は女の子ですよね」皆がうなずきます。
「ただ、制限はある上に許可制なんですけど、私マリアリーゼなら私で、妊娠はできなくもないのです。そもそも無茶苦茶な長生きができますから子供作る必要、あまりないんですけどね。で、問題は作る場合」
この一言で、皆が悟りました。
「衝撃的な絵図を防ぐために脱がさず穴を開けずにやります。はいアルト。わかってるよね?」
「うう、聖院のまりあさまがうちのよめより強引です…みなさま驚かないでくださいね」
次の瞬間。
アルトさんのがんつ服の変化で皆が声を上げました。慶次郎さんだけは目は剥きましたが辛うじて平静を保っておられます。
「ちと、まりや様に聞きたい。このアルトというお子は陰間ではあるまいな?」あ、わかります。ほもではなくをかまですね。
「それがですね、けいじろうさま。さきほどあの部屋にいたサリーという子。実はわたくしのむすめなのです…つまり、お、もごもごもご」
「ええ、アルトさんは女性としての機能もちゃんとありますよ…」何故か滝のような汗がだばだばと出ますが、アルトさんの口を押さえます。その先を言わせてはいけない、本能がそう言いました。
「ということは、べらこ様も…」
「あー、あたしの母親、二人いましてね。一人はイタリア貴族夫人のルクレツィア・ボルジア。あたしを懐妊した人物です。で…旦那というか子種提供役が痴女宮の方のジーナ・高木…テンプレスの舵を握っていた人が少しばかり未来にもいまして、別人扱いですがそれが父親役」
うげっと皆様が絶句されます。
「あ、母親はもともとは人間ですからちゃんと父親といたす時は女性状態ですよ。ただですねぇ」えい、こうなったら。
「えー、ベラちゃんあれはやめた方が…しかも乳上服だから透けて見えるわよ…」
「べらこ陛下。あたくしもあれはやめた方がいいと思います…さいずが、その」
「いや、ただでも驚く話であろう。それにあれじゃ、今見ておく方が後々聞かされるより驚かずに済む。話からするといちもつが大きい話ではないかな。ほれ」
で。逆にあたしたちがびっくり。
えっと。
あたしも自分のラスプーちんちんを出してみますが、それと比べて少し小さいくらいですね。
慶次郎様…これ、相手を選びませんか…あたしでも普段はぴーたーのーすに切り替えてますよ…。
「まぁ、伽子様はもちろん、おまもごもご」
「捨丸。加賀藩に知られて良い話ではありません。助右衛門がまた頭を悩ませまする」顔を真っ赤にしながらおまつさんが捨丸さんの口を封じています。…あー、慶次郎さんとおまつさん、デキてたな…。
「しかしべらこ陛下もご立派であるな。さすがは帝だけはある」
「慶次郎様。ちょいと」と、あたしは母親譲りのラスプーちんちんの由来を話して聞かせます。
「つまり、おろしあにいた坊主が道鏡まがいの膝三つ持ちで、まらが未だに保存されていると…」
「ええ、あたしも精気授受という、女官同士のごはんのやり取りがありますから普段はこうしてます」と、ぴーたーのーすに戻してみせます。
「あ…ベラちゃん…精気授受の件も言わないと理解、得られないよね…」聖院姉が真っ青になってます。そうですね。あたしたち痴女種、というか女官が何でちんちん装備してるか。
「あの…殿方から頂いた精、実はこういう感じで皇帝であるあたしか、聖院だとマリアリーゼ姉まで吸い上げていくんです。で、あたしやマリアリーゼが、部下のみんなが食料として使えるようにした精気を逆に下ろしていく必要がありましてですね…」
もう説明めんどくさいので提督室のベッドにアルトさん押し倒します。ごめん姉、アルトさん借ります。ちょっとだけだから。
(それなら初代様使えっ。今行ってもらう。いや実際、今は初代様の方が内務局長で精気還元の頂点役の事が多いんだぞ?)はいはい。
「というわけで参りました。あたくしも痴女皇国内務大臣の顔がありますので、髪の毛の色を戻しまして。で、マリアヴェッラは痴女皇国の皇帝なのですが、さすがにみんなの食事を管理するのが一人だけだと何かあれば危機的状況が生じます。従って精気を吸い上げる頂点はマリアリーゼ、マリアヴェッラ、このアルトリーゼと…そしてマリアヴェッラの母親の聖母ジーナ様、そしてわたくしテルナリーゼの誰かが精製下賜役を務められるようにしております。即ち」
「初代様…何も皆様が見てる前で逆レイプしなくとも…」
「おだまりなさいマリアヴェッラ。あたくしにはラスプーちんちん使用可能でしてよ」
「な、なるほど…確かに百聞は一見にしかずではあるが…」
「いや、何かこう、色気というより闘気を感じるのですが」
「あの…男性の皆様。これ、あくまで皇帝執務ですからね。これしないとうちの女官、飢えて死にますからやむを得ずする事なんですよ…」と、初代様相手に腰を使いながら嫌々感満々にお教えします。
「…あると殿…という事は…大将様も…」
「けいじろうさま。うちのよめはさいきんこれをさぼりまくっておりますが、むかしは部下をばっする時はいかりゃく。しかし、いまはおんなのこをしたいのです。おんなのことしてみてあげてくださいっ」慶次郎様の手を取って反論は許さんとばかりに懇願するアルトさん。
「まぁ気持ちはわかる。あとな、おまつさまなんじゃが、まさか…」
「あー、おまつさんと伽子さん、若返り措置の際に痴女種化してるわよね…うん、一見二人卒くらいで制限はかかってるわ。ただ、黒マリはあとであたしが殴っておきます。お二人とも本来は千人卒。つまり機能制限を外せるものが外したら生えるものが生えます…」
はい、今度こそ皆が絶叫しました。慶次郎様ですら茫然とされています。
(あの…ねーさん…今からでも遅くないからお二人を百人卒未満にしなさいっ!)
「マリアヴェッラ…お二人の希望もあります。それに貴女とわたくしでも、還俗や格下げ措置は行えますよ…」と、喘ぎながら器用に申される初代様。わかりましたからはよいってください。
(やです。生意気なマリアヴェッラから吸い取るまでは!)
(だから公務優先してくださいよ!)
皆様。
これでも神様です。
そして我々痴女種は、あくまで人類保護と善導のために生きる女官なのです!なのですから誤解しないでくださいね!
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おかみ「べらこ…そりゃ、てるこをかみさんあつかいしろ言うてもこれではむりやろ…」
てるこ「姉様に言われたくはありませんわねっ」
おかみ「おまえらが今年、出雲を欠席した理由、皆に言うとるのやが…たのむからまじめにぽるのくにでしごとしてきてくれよ」
黒マリ「まぁ、これで討伐しくじったら恥ずかしいレベルの布陣ですからねぇ…」
白マリ「しかも聖院側でも同時進行作戦。まさに失敗は恥ずかしくて穴があれば」
べらこ「突っ込む発言禁止っ」
てるこ「しかしマリアヴェッラが最近冷たくて」
べらこ「たのきちに手を出しすぎです」
たのの「書かれてませんが、文教局は文教局で忙しいのです…ちなみにかなり痩せました…」
べらこ「なお現状はダリア以上アルトさん未満」
てるこ「で、不憫に思い修学寮食堂に連れて行く他してるうちに」
黒マリ「職場不倫あるあるだな」
白マリ「美男公と玄奘さんはホモってるのかしら」
黒マリ「いきなり何を言うの白マリちゃん!」
白マリ「いや、尻…知りたくなったからよ」
ベラ子「確かに玄奘さんはニューハーフモードがあるわね」
らどう「ネタにされるのは恐ろしいから先に申します。現状では玄奘様の中の人…つまりパンチ氏の要望があり、性別転換に時間がかかるため痴女状態でお過ごしです。ただ…皆様が興味を示されたほも行為に必要な凹凸、痴女種なら備わりますよね」
ベラ子「え」
白マリ「づまり」
黒マリ「まさかの美男公受け!」
まさみ「マリアちゃん。国内広報誌掲載はしないわよ…あ、月報痴女宮って電子雑誌を広報で作ってまして、人事異動や行事報告などを毎月全女官に送信しています。いわゆる社内報ですね。ちなみに聖院側でも月々聖院という似たものを出していますよ。なお両紙の掲載漫画を担当してる聖院同人部という薄い本サークルがありまして…ええ、18禁内容OKにしています。内容検閲は入りますが局部は無修正」
べらこ「なぜかあたしもひきずりこまれました」
白マリ「でぇ。内容的にほもなのもありまして」
黒マリ「どう見ても美男公だろこれな作品とかな!」
白マリ「そろそろ娯楽誌と本来の社内報、いえ国内広報誌を分けようかと…掲載作をしぼるのもあまりやりたくないしねー」
まさみ「やっぱり現代地球やNB経験者はどうしても同人を描けるような絵柄が基本になってるから、話さえ思いつけば描けるのよ…」
黒マリ「ただ、厳選はしてくれよ。バ◯チやハ◯タあたりの凶器雑誌はいくら電子版でも少し辛いぞ…」
おまつ「ここここここれわあっ」
黒マリ「ちなみにおまつ様と慶次郎さんとか、絡み話の二次創作はな…」
白マリ「原作でやってるし、漫画描いてるのがあの特徴的すぎる人だから…島◯作ですらあれにした人だからね…」
黒ひげ「ちなみに海賊仲間でほもはほぼ、いねぇ。出身国で禁じていたのもあるが、女に不自由はあまりないんだよな」
黒マリ「海賊の出入りする港に行けばなんかあったからな…」
ごどう「倭寇も事情は同じだ。更に男と女の間柄にうるさくなるのは徳川幕府以降だからな」
おまつ「あたくしも旦那が利家だから騒がれかけただけで、農家や町衆では割と自由げほげほっ」
まさみ「やはり鉄棒はぬらぬらさせるべきよね!」
黒マリ「あたしらが何かしなくても江戸時代で既に暴走するんだよな…」
白マリ「ちなみに前田利家のただれた掛け算ライフは書きたくないそうよ」
おまつ「ええ、あれ、美少年好きでしてねぇ…」
クリス「この時代の日本へ僕が行くと危険な気が」
白マリ「父様…わかりきった話よ…」
黒マリ「なお父様が積極的に同級生とつるんだり、水着女性方面に手を出したのも実は掛け算方向のセクハラがひどかったせいもあるらしい」
ジーナ「マジにクリスは男の娘として通用するからな…」
クリス「ほもの輪の中に入れないで欲しいのです」
まさみ「ではショタの輪に」
他全員「あんたはそこに行き着くかー!」(乱れ飛ぶはりせん)
はい、立ったままも何なので、外道丸ちゃんが気を利かせて墓所の備品の葬儀参列者用の椅子を用意してくれました。
…なんか日本のお葬式会場めいた物品が懲罰具倉庫の片隅に置かれていた気もしますが、深く気にしないようにしましょう。母様の葬儀の時に使われたものはもちろん、毎年のお盆とやらの夏の一時期に出てくるお香を焚く台もありましたし、きっと母様か姉様の趣味に違いありません。
(趣味にすんなっ。あれ持ち込んだの、かーさんだからなっ)
(まぁ、わたくしもそうでしたが、墓所の皆様には好評なのでよしとしましょう)
(私もクレーゼも、ついこの間まで祀られる立場だったしな…あれはなかなか気分が良い。クレーゼに香を焚かれる以外はっ)ああ、いまだ続く母娘の確執というやつですね。
(それはもう…マリアヴェッラ…クレーゼがそなたやエマニエルのような子なら私はどれだけ楽ができたか!)
「その確執に近いものがございましてね、神族同士で…」
「神様というのが実在したのはともかく、天照大神様とそちら様が姉妹の関係とは…」
「実は姉も私も、今の地位はある意味懲罰めいたものなのですよ。姉を例にとりますと、中原龍皇大陸で昔、失敗しています。後にニオオフラーネの故郷の学者様が見つけられる古の都や、聖母様の故郷の東のしべりあにございます石造などはその名残とお考えください。伽耶国の興亡にも関わりがあるのですよ…伽姫様に日本の方の血がお入りなのもその時のあれこれです。そして私、ナンムですが…」
「ああ、アトランティス大陸を沈めた…」
「そして私をナンムやイシュタルとして信仰した人々や、えじぷとに北欧にあすてかと言ったいにしえの神々が何故絶滅、あるいは滅亡寸前なのか。これは理由が二つあります。まず一つは、神を信仰する者が絶えたか、信者の数が減りすぎた。これが一つめです」
「そして、もう一つは…生贄ですか」
「ええ、マリアリーゼ。必要以上に生贄を求めた神の側も誅される事態となりました。特にニオオフラーネが生まれた北の国。で、マリアリーゼにマリアヴェッラ。あなた方が生まれた世界と、聖院並びに痴女皇国世界が色々と違う理由も、懲罰ややり直しが絡んでおります。もっと言うと、神は神の都合でやり直しや試行錯誤を繰り返しております。慶次郎様をはじめ、人の身の方には神々の横暴に映るかも知れませんが…」
「大和国も、天津神が外から来て国津神と争うたと聞きますな」
「ええ。あれも姉の起こした騒動です。そして、神のみならず人も人同士で争いました。異なる神の下についた者同士の事もあれば、神を抱かず自らの欲に任せ滅んだ事も」あー、ソドムとゴモラとかバベルの塔とかですね、この映像。
「ここなニオオフラーネの故郷もそうです。人を多量に生贄とし、神同士の最終戦争に備えるとか無駄な事をしたが為に衰退したのです」
「しかし、わだつみ様…といたしますが、女神様のお話で腑に落ちぬことが一つございます。何故にかみさまは人を必要とするのでしょう」
「前田まつ様。かなり厳しい話になりますよ。よろしいですか」
「はい、おおよその見当、ついてはおりますが…」
「おまつ様。人はめしを食わねば死ぬ。しかして神様はどうじゃ。霧やかすみを食うておられるわけではありますまい」
「前田慶次郎様、本当に鋭いお方ですわねぇ。ええ、文字通り人は神の家畜、皆様で言う鳥や獣や魚の扱いでした。過去の言い回しにしております事に注意願いますね」
「わたしら鬼もかつて、まさにその立場でしてな。しかし…欲のままに人を食い散らかしておれば、いずれ人はおらんようになります。ではどうすればよいか。わたしらは人やおかみ様と相談いたしました」と、外道丸ちゃんが。
「人そのものを食わぬように自らを変えたのです。ただ…代わりは必要」
「ここの上、聖院と同じく遊郭なんですよ…遊郭でする事、日本の方々にはわかりますよね?」姉が申します。
「なるほど、あれを致す時には気を遣る。男はまさに気をやられる訳ですな?」
「その通りです。更に、吸い上げた気を溜めて神や女官に分配する仕掛けの一つが、この子達…この金庫室にいる方々ではデルフィリーゼ、クレーゼ、二人のマリアリーゼ、そしてマリアヴェッラが該当します。この仕掛け自体は悪くありませんでした」
「聖院は痴女皇国も含めて千年以上続いていますから」
「ただ…わたくしの辺りで雲行きが変わりました。そうですわね、初代様」クレーゼ叔母様の顔色、かなり深刻です。
「あなたとアレーゼの確執はともかく、結果的に聖母様が我らの世界に遣わされ、マリアリーゼが生まれた事は正に天啓でした。この子達やマリアヴェッラがいなければ…地球のやり直しはかなり早まったでしょう」
え。
やり直し?
「皆様。落ち着いてお聞き下さい。この星…人間の方はこの後、日本を経て北欧に向かう前にマリアリーゼの船で地球という、我らの立つ大地がどのような球かを見せて頂いた方がよいでしょう」と、聖環を操作して地球の姿を皆様に見せる初代様。神様なのに慣れていらっしゃいますね…。
(それはマリアヴェッラ、言わぬが花です。私も姉ほど口には出しませんが、身体がありますと色々はかどりますからね?)
はーい。
「そしてこの球自体が、もし生きていて何らかの意志や本能を持つ生き物としました場合…自らの表面にいる諸々の活動の影響を受けます。例えば…汗をかけば身体を洗うなり水に浸かるなり、あるいは布で拭くなりしますよね」
「致しますな…よもや、大地そのものが生きておられると?」
「ええ。そして虫に食われた鹿が泥の中で暴れて虫を振り払うように、大地が虫…いや、我々や人を振り払おうとしましたら我々に為す術はありませぬ。いえ、正確にはございます」
「ただ、それは神様はともかく人には極めて都合が悪い話…ですわね」聖院の姉。
「ええ、マリアリーゼ。日本の方々、NB…違う星に移り住んだ人々の中で賢い学者様や、何よりこの子達が指摘していますが…今まさに私どもがいる大地ですけど、この子達が元来生きていた大地より遥かに若いのです。そして若いという事は成長、もしくは老いるという事でもあります」
「でねぇ…日本に富士山ってあるでしょ。あとティーチの旦那とか美男公には近くの火山。この辺の火を吹く山の動きやら、あと世界が一度雪と氷に覆われて冷え切りかけた事があるかないかを調べた事があるんですよ、わたしたち」
「冷える必要ってあんのかよ?」
「黒ひげ…それが起きないと金が出来ねぇんだよ。いや、実際にはもう少しややこしい事が起きた結果、金銀宝石は地面の中に作られたんだけどな」
「金銀だけじゃないのよ。鉄を作る時や暖房に使うところもある石炭。そして将来必ず必要になる石油という燃える水ね。こうした物が地中にないまま、人が自らの力で走る泳ぐ飛ぶ道具を発明した場合…早ければ300年程度でそうした資源が枯れ果てます」聖院の姉が自動車や飛行機、船といった内燃機関で動くものを見せ…何であたしの乱暴ルギーニまで。
(だってベラちゃんが乗ってるせいで、聖院でもあんなの買おうよってうるさいのよ…特にサリーとアンジェリーナが!)すみません。あれ半分イタリア政府に押し付けられたようなものなんです。
「で、あえて黒ひげを指名して聞くよ。あんた大英帝国のカティサーク知ってるだろ。あの無茶苦茶な帆船」うちの姉が質問。
「ああ…ありゃ掛け値なしにすげぇ船だ。荷運びでも人運びでもいい、真剣にあれがあると色々捗ること間違いねぇ」
「うん。ただ…あれ、帆を取っ払ってないの、不思議に思わないかい?」
「言われてみりゃ確かにな。だが見当はつく。あんだけの速力を出すと無くなるものも早い。だから普段は風の助けもある方がいい。なんせ風は無料だからな。ってところでどうだい」
「ラム酒1本差し入れだね」
「ウィスキーってのにしてくれ。最近あれの味に目覚めたんだ。で、三河監獄国か…あそこの連中の話を聞いても、普通に木を燃やせば済むものをやたら変な手間をかけて火に代わる熱を求めてるそうじゃねぇか。うちの厨房でも煮炊き全てに薪を使ってるかい? これをを良しとするか悪しとするかは別だが…あんたらは木や他の燃やすものをやたら節約したがってる。理由は…将来、足らなくなるか、もしくは絶対に必要になる時のために取っときたいか。陛下に水割りをお作り頂けるくらいの答えにはなったかい?」
「仕方ねぇな。おかんの山崎20年物か、マッカラン17年物をかっぱらって来るか…まぁ、あのクソ高い部類の酒をガメる算段を考え出したのがあたしの反応だ。ありゃ、とっておきだからね」
「ティーチ。私が奢りましょう。グレイン・フィデック17年物。本当なら宇賀神様の奥様が快癒した時のために取っておきたかったのですが…あと一本ありますからね」
「こいつは光栄の極みだ。そして…さっき、冷えるって話があったんで気になったんだが。マリア陛下、やたらと芋やら米やら麦やらトウモロコシの生産試験をやってねぇか?」
「んーっとね。日本…こちらのおさむらいさんの国みたいに冬場は雪で身動きが取れなくなる国で植えてもちゃんと採れるものは作ろうとしてるね。厳密に言えば既にそれはある。あとはこっちに持ってきて在来種…元から植わってるのと掛け合わせるだけさ」
「鯖挟国でもやたらに灌漑や食糧生産をさせたがっておられましたな。更に申し上げると、イザベル陛下の方でも」
「…即ち、幾百年かは知らぬが、人は寒さに苦しみ、飢える時が来ると申されるか…」
「あ、喫煙特認。旦那、キセル使っていーよ」
「ではわたくしも…ってナンムの姿では何も持てませんではないですか!おっぱい剥き出しだし!」
「初代様、今頃気づかないで下さいよ。ほいハイライト」
「ああ、これですわこれ、肉体労働の味とやらが効きますわっ」…その煙草…宇賀神さんに聞きましたが、お父様は自分が肉体労働者に限りなく近い仕事だったから好んでいたと。つまり労働者の味ということで、初代様には甚だ似つかわしくないというか、DQNの臭いが…。
「ベラ子。このクソ甘ったるいのは何だよ…学校で絶対に吸うなよっ」
「何であたしのイタリアンアニス持ってんですかねーさん」
「ふむふむ。なんか吸い味がガラムみたいよね」と、聖院の姉が味見の感想を。
「私は葉巻を嗜んでおりましたな。あと陛下は水煙草」
「海賊連中は素焼きパイプか、金属細工のだったなぁ。そっちの剣士の旦那がお使いのようなやつ」
「何気に喫煙者が多い聖院関係者でございますわね。まつ様は?」
「えー、日の本できせるを使うおなごは殿方勝りの稼業…つまり自分の体で稼ぐとかしております者の嗜みだったのですよ。即ち、わたくしが嗜もうにも加奈はもちろんのこと、利家様から遊女に見られるからやめてくれと」
(クレーゼ母様…江戸時代だと農家や商家にも広まって野良仕事で一服とかあったんですけど、おまつ様の時代はまだまだ高級品だったんですよ、たばこ…)
「ちなみに某課金げーむとかでうちがキセル使ってるように描いてる絵があるけどな、うちが現役で鬼さんやっとった時代にはキセルどころか煙草自体がまだ伝わっとらんわいっ。うちは酒や、酒持ってこんかいの鬼やから注意してや!」
(外道ちゃんまでが誰かに言う癖を…)
(よほど言いたかったようだ。暖かい目で見てあげよう)
「でねぇ、実際にこっち…ジーナ母様の方の世界の徳川幕府の時代には実際に冷害といって不作による大飢饉が発生してるんだ。ちなみにティーチや美男公、この冷害はヨーロッパでも起きるからな」
「ふむ。それで芋を…」
「ああ、寒冷種って言って米が出来ない場所でも作れるのがあるんだよ」
「琉球でも芋を育てておったな。薩摩にも送ったようだが」
「しかしケイジロウの旦那、あんたは将来を気にしてるようだが、この嬢ちゃん、失礼。陛下の世界だと乗り切ってんだよな、その冷える害」
「ただ…犠牲者多数だよ。それに、わざとそれを起こす奴もいるんだ。北欧の神様がそれだよ。いけにえよこせって催促のためにやるんだ。だから討伐されんのによ…」
「ひっでぇ神様だな…」
「ますます成敗したくなるではないか」
「まぁまぁ、同じ北国の神様でもさ、実のところ、蝦夷の神様はそこまで苦労を強いていないんだわ。まぁ、あの地の人々は割とつつましく暮らしてるのもあるんだけどね」
「でまぁ、慶次郎の旦那の疑問に先に答えておこう。そんな天変地異の起きる可能性があるからこそあたしたちは人の世界にちょっかいを出すんじゃないか?って話ね。これは正解さ。もっと言うと、あの空飛べる船あるじゃん。あんなの作れるまで人が生き延びれるようにするためだよ。あれ、人が作るからな?」
「ふっふっふっ、それどころか人が住める星をかろうじて見つけて移り住みます。んで、そこの領主様の息子さんが…私たちマリアリーゼの父親、つまりこの人」と、聖院マリア姉がクリス叔父様を前に出します。
「ついでに申し上げますと、クリス様は人の住めない大地を住めるように研究している専門家です。この子達の服の形が変わるとかするのはその研究の副産物ですよ」と初代様がフォローなさいます。
「で、僕が父…ヘンリー・ワーズワースから聞いている話です。最悪の場合、こちらの星で空きがあるから、移り住む事を希望するなら受け入れる。ただ、開拓者としての仕事は必ずして頂く、と」
「実際に聖院や痴女皇国から人を送り込んで開拓の補助をやってもらってるよ。ただ、こちらも人手は欲しいんで、逆に向こうから受け入れてるのもあるけどね」
「なるほど…最悪の時の事はお考え頂いておられる訳ですわね」
(これは私が北欧や欧州で痴女皇国の方にお世話になった際に教えて頂いた話ですが、この方々は人を林檎の木のようにお考えです。つまり、木そのものを枯らさずに実だけお持ちになると。その逆で、木そのものを欲するのが我らが従来信じていた神々であるという事だそうです。これには納得できますね)
「すると皆様にとって、我らは柿の木のようなものであるか」
「栗扱いとも言えますな」
「なつめの木だなぁ、俺に馴染みが深いのは」
「まぁ、剪定はされても切り倒すのはなし、と」人の皆様はこの説明で納得を頂けたようです。ま、姉やあたしも元をただせば人間なのですがねぇ。しかもあたしは完全に人間…痴女種ですが。
「で…外道ちゃん、えりちゃんが預かってたあれ持って来てよ」
「へい。熊を崇めぬ者許すまじとアイヌラックルが言うとったので貸した。本来は門外不出の宝剣なので絶対に絶対に壊さないでくれとケマコシネカムイが懇願していたそうですわ」
「おう、これよこれこれ。これが借りたかったのよっ」と姉が宝飾のついた直刀の鞘を抜いて刀身を検分します。
「で…これの能力と性能をエミュレートして…と。おっけー。外道ちゃんに返すっ」
「え、ねーさん、それを使わせて頂くのでは…」
「ダメなのだよベラ子くん。この剣を本来の威力で行使するためには雷神カンナカムイの息子または血族である事が第一条件なのだっ。息子アイヌラックルの危機にあたり、カンナカムイが自分の力を宿して使わせた宝剣がまさにこれなのだよっ」ほうほう、そういう剣であれば人を選びますね。
「アイヌラックルはアイヌの神様で、名前には人間くさい神という意味があるのね。だからこの剣を使える者として必要な条件を備えているのは…まず人間であること。そしてカンナカムイの血縁者であることが条件。ただ、黒マリがさっき分析していたけど、アイヌの血縁でなくても使えるようにするための方法を探していたわけなのよ」
「アイヌラックルいわく、勇猛果敢な戦士が必要に迫られて使わざるを得ないのなら使え。そして人界をみだりに騒がせる邪神魔神の類が相手であればなおよし。ただ、加勢は一度と言うとります。…けいじろうの旦那ならいけますなぁ。いや、この方ならわしの鬼切貸した方が話が早いんちゃうんですか」
「それがねー外道ちゃん、相手は鬼じゃなくて神様だからね。だから鬼切ではダメージを与えられるけど致命傷ではなくなるのだよ…全く、うちのカリバーン見習ってくれよ。最近じゃクリス父様以外でもしゃーねーなと操縦認めるようになって来たからな」
「たのきちが犠牲者第一号ですね。二度と乗りたくないと言ってましたよっ」
「あれはパーソナルオフィスボックス閉じ込めの刑だから仕方ないじゃない。で、慶次郎さん。痴女皇国のマリアリーゼ…黒マリがあなたの槍にその力を移植したいと。大丈夫ですか」
「大将殿の仰せじゃ。それにせっかく秀康殿から借りた業物、武勲を上げてお返ししてやりたいしな。槍だけに」
(父様。わかってるよね)
(…あれ?駄洒落菌反応は出ていないよ?…まさか変種な訳はないよね。マリアたちが見ても反応ないだろ?)
(とりあえず慶次郎さんは要観察だ…)
(確かにあの人に駄洒落菌を移すのは人として避けたい気がします)
「で、その剣…いかな威力があるのじゃ。神様の剣だけに迂闊に使うて要らぬ害を与えては迷惑じゃろうし」
「…っとねー、悪魔や魔物が制御不能になって暴れ回る地獄の暗黒帝国を焼き尽くした上、12日に渡って燃え続けた模様」
「マリアリーゼ…あたくしがカンナカムイに掛け合います。つきでもかせいでも良いからしうんてんして来てください。良いですね」初代様の顔色が悪いのですが。はっはーん、なんか似た事やらかしましたね?
(あとらんてぃすで昔。というかマリアヴェッラ、最近辛辣ではありませんか)
(たのきちの一件がなければ私は聞き分けの良いヘタリア娘ですが、あの件がありますとボルジアの血が騒ぐのです)
(わかりました。マリアリーゼの定めた掟ですが、痴女皇国では堤防で決着をつけるが習わし。ちんぽを洗ってまいりなさい)
(初代様、私もMIDI化を果たしております事お忘れなく。更に母様のように機能を使いこなせていない事はありません)
(くらぁベラ子、お前らが南海怪獣大決戦やらかしてどうする!初代様もあまり本気にならないように。やるならシベリア辺りで。隕石落ちた事にしてごまかしますから)
(仕方ありませんわね。金衣状態のハンデは付けて差し上げましょう。ただ、白金衣は持ち出しますよ)
(あーだめそれダメ!余計ダメ!白マリ!お前とこの白金衣、お前の部屋のクローゼットだろ!今すぐアルト飛ばして確保させろ!こっちの白金衣は黒グッズ化してあたしが機能権限掌握してるけどよ…)
(マリアリーゼもケチですわねっ)
(つーか痴女宮ごと聖院湖吹き飛ばす気ですか)
(そうですわよ初代様。あれクレーゼ母様が着てすら島ひとつ消し飛ばす威力あるんです!着た人をマイレーネおばさま化する代物なの、わかっておられますよね?)
(ちなみに娘だが、決して金衣最弱ではない。舐めプとやらをしたがるだけだ。なお私デルフィリーゼは白金衣を着たクレーゼを殴り倒して持ち出しを咎めた事があるんだが)
(墓所の時間限定加勢がなければお母様を地に伏せておりましたのに!)
(マイレーネ様の名前で威力が読める俺も染まったな、ここに…)
(ティーチ。私が謀反など考えたくない理由、わかってくれ。ここの手前の部屋、使う者こそ選ぶがそういう物品の封印倉庫だ。)
「皆様方。女性らしからぬ振る舞いは信者がおりました場合に厳しい目で見られますかと。わたくしも加奈に黙って薙刀持ち出しましょうかと思いました!あの亭主が佐々成政如きに震え上がって援軍出さないから末森に加勢に行きましたわよっ」
「この世界の前田まつさんは実際に末森城で暴れていたりする。なお、慶次郎の旦那や助右衛門に加わり小便鉄砲に参加したかは謎だっ」
で。
姉がまたぞろ誰に向けたかわからない解説をし始めたのを引きずり、テンプレスに戻ります。
「しかし大将殿。部屋も拝見させて頂いたが、甚だしく質素であるな。なぜこれほどの城を己のために使わぬ。あの金蔵の金にしても、我らが無駄遣いせずに預かるためだとは悟り申したが」
「旦那…どうやらあたしゃ政治家気質みたいなんだよ。もちろん、かつては学生としてそれなりにお嬢さんしてたし、物や金に困ったことは基本的にないから逆にあれ欲しいこれ欲しいがないみたいでさ。あたし個人としちゃ、必要十二分ってとこだね」
「慶次郎さん、ここの学校の講師…いわゆるお釈迦様が言われた事なんですが、お金が欲しいとお金が必要なのは別だろうって。あなたはどちらだってのを、かつてお金に目がくらんだ女官にお説教されたことがありまして。欲しいものと、本当に必要なものをまず区別してみだりに消費するのを抑えようという内容でした。これはあの方ならではの名言として痴女皇国全員に知識共有で広まっています」と、不肖あたくしは姉をフォロー。
「ふむ。必要…か」
「ま、必要なものについては贅沢というか、それなりの買い物をしてるよ。例えばあの船。あたしたちが買い取ってるんじゃなくて、借りてるのさ。ただ…借り賃は実質的にタダに近くなってるけどね。その代わりになるべく多くの人間が、あたしの国絡みの仕事でめしにありつけるようにする。それが条件。それと、うちの祖父の国はあたしらが生まれた事になってる日本を含むでっかい国と仲があまり良くなくてね。その仲を仲介するのも私らの仕事のうちなんだよ」
「けいじろう様。うちのよめはぜいたくをしないのはよいのですが、ここだけのはなし、おかしやお酒やたばこに使うお金はけっこうな金額ですよ」
「はっは、まぁそれくらいは多めに見てやれ」
(まりあさま。わたくしはこの方よりはるかに強いはずなのですが、なぜかかんろく負けします)
(そりゃあアルト、この人は当時の日本で一番えらいおさるさんが家来を勢揃いさせた上でだな、しかも本人はサル扱いされてるのをめっちゃ気にしてるのに、よりによってその前でサルの踊りをやった上に自分の生き方を押し通す宣言して、斬り殺されずに生きて帰った人なんだぞ? 肝っ玉が違うよ)
(すごいどきょうのあるかたですね。かみさまやわたくしたちをみても全く落ち着いておられるだけのことはあります。あとかんのなおしさま。あの人といい、まりあさまのタイプですねっ)
(そうか、黒マリの好みだから入れ込んでるのね!うかつだったわ!気づいてたけどね!ほほほほっ)
(聖院のねーさん。バレバレじゃないですか。もう本人めっちゃ嬉しそうなのに気づかない人いるんですか)
(いやもう、いかにもまりあはんらしいなーと)
(更に申しますと、慶次郎様は自由に生きる事が信条です。他人に抑圧されたり、責務が重い人に同情する癖がございます。ええ。まりや様、もろに的にはまってますね)
「そうそう。おまつさんがいるのに更にあたしまでってなって困惑している伽子さんにあたしからの贈り物だ。っていうか、北欧でこれを弾いて欲しいんだよ。これ探すの苦労したんだぜ」と、かなり大きな箱を開梱しています。
「これは…伽耶琴ではございませんか」日本のハープとは少し違いますね。
「そう、あなたの得意なあれだ。ただ、あなたがお持ちの伽耶国代々の貴重な奴が本当はいいんだが、今回はちょっと音を四方八方に響かせて欲しくてね」と、傍のTAPPS7…通称あおかん号を示す姉。一見すると陸戦用迷彩塗装になっていて勇ましそうですが、主な用途を教えたが最後、絶対にかーさまの株が下がる気がします。
「ちょい試してみよう。まず、ここを押して緑に光るのを確かめる。で…短距離ワイヤレススピーカーとして認識…っと。TAPPS側のボリュームはテスト用最小にしておかねーとな」TAPPSの背中からソニックブラスターとかいう音波兵器のスピーカーが展開されてきましたね。
「で、さっきの電源ボタンの横のここが青く光ると、この伽耶琴で鳴らした音があそこから出るって寸法さ」姉がフィンガーピックをつけずに琴の弦を軽くポロン。
瞬間。
格納庫内に琴の音が響き渡ります。
「なるほど…この琴を奏でるとあそこから音が出るというからくりか。伽子、いつもの伽耶琴とは癖が変わるかも知れぬ。馴染んでおいた方が良いかも知れぬな」
「はい、慶郎。わざわざこのようなものをご用意頂くからには、これを聞かせる必要があるかと存じます。その、いけにえの村で」
「んで、普段の練習用にはこれ使ってよ」と無線接続のスピーカーを差し出す姉。伽姫様って痴女化してるんですか? こういうデジタルデバイスが一般的な時代の人じゃないんですからちゃんと教えなさいよ。
「安心しろ。無線がつながんない場合のケーブルも同梱されているぞっ」
「そういう問題じゃないでしょうが…はいはい行きますよ。あと、あのスピーカーしまっとかないとかーさまが怒りますからね」
「しかし、これは何じゃ、具足か甲冑の部類かね」
「っとね、うちらの世界のよろい。こんな感じで乗り込む…というか着込むんすわ。すると中にいるやつの手足の動きをからくりが真似するって塩梅でね」姉がTAPPSのコクピットハッチを開けて説明します。
「で、狭いけど後ろにもう一人乗っかって、物見に使うめがねを操作したり、さっきみたいな楽器を助ける仕掛けを操作するんですよ。ついでに言うとあの背中から出てたの、本来は人には聞こえないけどものすごく気分が悪くなる音を出して、家の中とかに隠れてるやつを追い出したり殺さないけど倒すための武器なんですね」
「かぁーっ、隠れててもだめなのか…」
「捨丸さん、だからあたしらの時代の物見忍者みたいなのはあれ対策で、直接耳で外の音を聞かないようにする耳当てや兜をかぶるんだよ。ついでに暗闇でも物が見えるようなの。ほら、米沢で慶次郎さん探してたちょっと色の黒い女の子がそれつけてたでしょ」
「ああ、ああ、あのやたら色気のある御仁!」
「あの子そういう物見専門の部隊の頭目してたことがあってね。ちなみに同じ装備はあたしの旦那も持ってるよ。ほれ」と、アルトさんをがんつ服に着替えさせる姉。
「黒薔薇騎士団といいまして、よそのおくにに密かに忍び込んでいろいろするお仕事がとくいな女の人ばかりあつめたぶたいがあるのです。あと、ダリア…その子が背負っていたつばさは、紫薔薇騎士団といって調べ物をするのが主なおしごとの女のひとに与えているものですよ」
「色々とすげぇな」
「あ、捨丸さん骨さん悟洞さん。いけにえ村に行く時はこれじゃないんだけど、似た仕掛けをつけてもらうかも知れないから。後で準備しとくよ」
そして航海船橋に戻りますと。
「えー、日本直行やないん? ああ、その剣のテストか…ほな痴女宮のマリア、月の裏側とかどないよ。あそこならクレーターだらけやし、今更一つや二つ増えても気にせぇへんやろ。この時代やったら月の裏側を見る方法はあらへんし」
「初代様、これ、月そのものを壊す事はあり得ませんよね?」
「大丈夫と思いますわ。かせいなら大気がありますからかみなりが起きて被害甚大と思いますけど」
「じゃ、抜錨してっと…黒マリ、月の周回軌道に載せるわよ」
え。
いきなり宇宙空間に行くんですか。
皆さん驚きますからやめましょうよ、聖院の姉っ。
「ほほほほほ、カルチャーインパクトってものよ!」
「なななな何でございましょうか、あの穴ぼこだらけの珠が月でございますか…」
「おまつ様、これが月と申されるからには月なのでしょうな…」
「んじゃちょっくら行ってくらぁ。よっと」エマちゃんがよく来てるド○タスタイルに変わった姉、黄色いヘルメットを被って、その宝剣を持ちますが。
「あんた何でそう言う格好を…いや、イオと金星で金を掘ったときはあたしもその姿だったけどさあ」
「はっはっはっ白マリ、これが正しい肉体労働者の姿だよ」
「ブリッジは元来禁煙だ!…って…禁煙プレートないじゃん…」
「おい。この船どこ製造だ」
「NB…ああそうか、パイプくゆらしたいからか…」
「全く懐古趣味にも困ったもんだな。あ、あたしがこんな格好だからって真似しないでくれよ。元来は月を歩く時は専用の服がないと30秒かからずにミイラになって死ぬからな?」
「誰も真似できないわよっ。はよ行ってこいっ」
そして30秒後。
月の周回軌道上からも明らかに確認できる、ど派手な閃光。
山一つ、吹き飛んでますね…。
(あっちゃー、粉塵撒き散らしすぎた…艦内に戻る時はエアロック経由で戻るわ。エアシャワー使わねぇと船内にあの月の粉塵持ち込んじまうからな…)
(ちゃんと服の隅々まで吹き飛ばしといてよ?それかそこで着替えてから来てよっ)
(へいへい。ま、威力はわかった…これ、状況によって出力制限しねぇと、マジに大気圏内で使用したら焼くとかいうレベルじゃねーぞ…小型核弾頭くらいはあるわっ)
「こっちの測定センサでも結果出ました。弾頭出力10キロトンの核弾頭をP2爆発させたくらいの収束出力を確認。そのいけにえ村の面積にもよりますが、確実に村ごと吹き飛びますよ」サリーちゃんが観測結果を船橋上部のディスプレイに出しています。
「初代様、これちょっと出力制限かけた方がいいんじゃないでしょうか…」
「明らかにテリブルのF2弾頭並みの熱量を観測しとるからなぁ…」
「いていていててて!グラスファイバー繊維被ったように痛てぇっ!」姉が戻って来ましたが、なんか苦しんでますね。
「マリア…お前なぁ、月の表面の粉塵が珪素主体でダイヤモンドヤスリレベルにやばいの知っとるやろが…身体再構成して来た方がええぞ…」白母様が呆れています。
ええ、月の表面の粉塵、ものすごく危ないからTAPPSや宇宙服で降り立つ際には専用コーティングや粉塵侵入防止処理された装備が必要だそうです。更に、場合によっては空気やガスで付着した粉塵を確実に吹き飛ばしてから基地や船の中に戻る必要があると…。
「ねーさん何か間が抜けてるからなぁ…」
「重ねて申し上げておきますが、人間ではない方以外は黒マリの行動を真似しないでください。そもそも今、船の外は空気がない上にマイナス273度、数秒で身体の中の水気が沸騰蒸発して即身仏になります。最低でも専用の服を着た上で格納庫にあった甲冑とか着込んで動く必要がありますからね?」と、聖院の姉が自分用のパイロットスーツを着てみせます。
「うちはまだ痴女皇国のうちと違うて生体インターフェイス残した状態でマテリアルボディ化しとるけどな、あのTAPPS、うちは普通に着込めるで。ベラちゃん。スケアクロウ要員、うちらは13号機ならこっちのマリアとあと一人おったら最低の事はできるからな。万一ソニックブラスタ攻撃要員がおらん場合うちに言い。痴女宮のクリスとうちがおったらあれは運用可能や」
ありがとうございます。万一の際はお願いいたします。
「…甘えるんは出来たらそっちのうちに頼む」えーけちー。
(いや、うちらもあんたみたいな子供欲しい欲しいという話をしてたん知っとるやろ…ただ、これ以上変な由来の子供作ると後でマリアに怒られるしさ…それに、知っとるやろけどうちもあんたも妊娠、今はさすのも孕むのも無理やろ…まぁ、密かにあたしの子種とあんたの子種預かり合いしてエマ子に頼むなら協力はするから、後でな…)はーい。
「やれやれ、えらい目にあったぜ…とりあえず現地の状況見ながら出力制御するしかねぇな…初代様、それで構いませんよね」
「ええ、いくらなんでもあれはおーばーきるになりそうですわね。現場判断に任せます」
「大変じゃったのう大将殿。…ところで、今聞く話ではないとは思うが…そなた、あると殿とめおとと申しておったが、二人ともおなごであろう。何故にめおとに」
瞬間、ブリッジの全員が固まりました。
ええ、どうやら誰一人、慶次郎様に説明しておられなかったようなのです。
そうです。私たち痴女種は両性特徴種。つまり皆様がふたなりとか言ったり、生やし屋は族滅と申されたり、◯娘に生やした絵を描かれてそれで抜いた人と一緒に吊るされる部類です。
まずい。
これはまずい状況です。
しかし、黙っているわけにも…。
「ああ、慶次郎さん知らなかったのね。あたしたちは昔は女官種と言って女ばかりの集団だったんですよ。しかし、今後を考え私たちだけで子供を作れるよう身体を作り替えました。もっとも、私たちばかりが増えるとまずいから色々な制限はしていますよ。アルト、ベラちゃん。ちょっとこっちきて」と、聖院の姉があたしを呼びます。
「黒マリ…あんたこれちゃんと言っとかないとみんな驚くからさ、ちょっと提督室行ってくる。アルトとベラちゃん借りるわよっ」ああ、姉が言い出しにくそうだから聖院姉が気を利かせているのですね。
しかし、黙っている方がよいのでは…。
「黒ひげや美男公は知ってるし、見ない方がいいわよ。慶次郎さん、おまつさん、伽姫さん。あと捨丸さん悟洞さん骨さん。見ていいもんじゃないけど見といて。はい、こっちこっち」と、提督室付随の会議室に転送されます。
「でぇ、私たちだけど、例えばベラちゃんとアルトくん。見た目は女の子ですよね」皆がうなずきます。
「ただ、制限はある上に許可制なんですけど、私マリアリーゼなら私で、妊娠はできなくもないのです。そもそも無茶苦茶な長生きができますから子供作る必要、あまりないんですけどね。で、問題は作る場合」
この一言で、皆が悟りました。
「衝撃的な絵図を防ぐために脱がさず穴を開けずにやります。はいアルト。わかってるよね?」
「うう、聖院のまりあさまがうちのよめより強引です…みなさま驚かないでくださいね」
次の瞬間。
アルトさんのがんつ服の変化で皆が声を上げました。慶次郎さんだけは目は剥きましたが辛うじて平静を保っておられます。
「ちと、まりや様に聞きたい。このアルトというお子は陰間ではあるまいな?」あ、わかります。ほもではなくをかまですね。
「それがですね、けいじろうさま。さきほどあの部屋にいたサリーという子。実はわたくしのむすめなのです…つまり、お、もごもごもご」
「ええ、アルトさんは女性としての機能もちゃんとありますよ…」何故か滝のような汗がだばだばと出ますが、アルトさんの口を押さえます。その先を言わせてはいけない、本能がそう言いました。
「ということは、べらこ様も…」
「あー、あたしの母親、二人いましてね。一人はイタリア貴族夫人のルクレツィア・ボルジア。あたしを懐妊した人物です。で…旦那というか子種提供役が痴女宮の方のジーナ・高木…テンプレスの舵を握っていた人が少しばかり未来にもいまして、別人扱いですがそれが父親役」
うげっと皆様が絶句されます。
「あ、母親はもともとは人間ですからちゃんと父親といたす時は女性状態ですよ。ただですねぇ」えい、こうなったら。
「えー、ベラちゃんあれはやめた方が…しかも乳上服だから透けて見えるわよ…」
「べらこ陛下。あたくしもあれはやめた方がいいと思います…さいずが、その」
「いや、ただでも驚く話であろう。それにあれじゃ、今見ておく方が後々聞かされるより驚かずに済む。話からするといちもつが大きい話ではないかな。ほれ」
で。逆にあたしたちがびっくり。
えっと。
あたしも自分のラスプーちんちんを出してみますが、それと比べて少し小さいくらいですね。
慶次郎様…これ、相手を選びませんか…あたしでも普段はぴーたーのーすに切り替えてますよ…。
「まぁ、伽子様はもちろん、おまもごもご」
「捨丸。加賀藩に知られて良い話ではありません。助右衛門がまた頭を悩ませまする」顔を真っ赤にしながらおまつさんが捨丸さんの口を封じています。…あー、慶次郎さんとおまつさん、デキてたな…。
「しかしべらこ陛下もご立派であるな。さすがは帝だけはある」
「慶次郎様。ちょいと」と、あたしは母親譲りのラスプーちんちんの由来を話して聞かせます。
「つまり、おろしあにいた坊主が道鏡まがいの膝三つ持ちで、まらが未だに保存されていると…」
「ええ、あたしも精気授受という、女官同士のごはんのやり取りがありますから普段はこうしてます」と、ぴーたーのーすに戻してみせます。
「あ…ベラちゃん…精気授受の件も言わないと理解、得られないよね…」聖院姉が真っ青になってます。そうですね。あたしたち痴女種、というか女官が何でちんちん装備してるか。
「あの…殿方から頂いた精、実はこういう感じで皇帝であるあたしか、聖院だとマリアリーゼ姉まで吸い上げていくんです。で、あたしやマリアリーゼが、部下のみんなが食料として使えるようにした精気を逆に下ろしていく必要がありましてですね…」
もう説明めんどくさいので提督室のベッドにアルトさん押し倒します。ごめん姉、アルトさん借ります。ちょっとだけだから。
(それなら初代様使えっ。今行ってもらう。いや実際、今は初代様の方が内務局長で精気還元の頂点役の事が多いんだぞ?)はいはい。
「というわけで参りました。あたくしも痴女皇国内務大臣の顔がありますので、髪の毛の色を戻しまして。で、マリアヴェッラは痴女皇国の皇帝なのですが、さすがにみんなの食事を管理するのが一人だけだと何かあれば危機的状況が生じます。従って精気を吸い上げる頂点はマリアリーゼ、マリアヴェッラ、このアルトリーゼと…そしてマリアヴェッラの母親の聖母ジーナ様、そしてわたくしテルナリーゼの誰かが精製下賜役を務められるようにしております。即ち」
「初代様…何も皆様が見てる前で逆レイプしなくとも…」
「おだまりなさいマリアヴェッラ。あたくしにはラスプーちんちん使用可能でしてよ」
「な、なるほど…確かに百聞は一見にしかずではあるが…」
「いや、何かこう、色気というより闘気を感じるのですが」
「あの…男性の皆様。これ、あくまで皇帝執務ですからね。これしないとうちの女官、飢えて死にますからやむを得ずする事なんですよ…」と、初代様相手に腰を使いながら嫌々感満々にお教えします。
「…あると殿…という事は…大将様も…」
「けいじろうさま。うちのよめはさいきんこれをさぼりまくっておりますが、むかしは部下をばっする時はいかりゃく。しかし、いまはおんなのこをしたいのです。おんなのことしてみてあげてくださいっ」慶次郎様の手を取って反論は許さんとばかりに懇願するアルトさん。
「まぁ気持ちはわかる。あとな、おまつさまなんじゃが、まさか…」
「あー、おまつさんと伽子さん、若返り措置の際に痴女種化してるわよね…うん、一見二人卒くらいで制限はかかってるわ。ただ、黒マリはあとであたしが殴っておきます。お二人とも本来は千人卒。つまり機能制限を外せるものが外したら生えるものが生えます…」
はい、今度こそ皆が絶叫しました。慶次郎様ですら茫然とされています。
(あの…ねーさん…今からでも遅くないからお二人を百人卒未満にしなさいっ!)
「マリアヴェッラ…お二人の希望もあります。それに貴女とわたくしでも、還俗や格下げ措置は行えますよ…」と、喘ぎながら器用に申される初代様。わかりましたからはよいってください。
(やです。生意気なマリアヴェッラから吸い取るまでは!)
(だから公務優先してくださいよ!)
皆様。
これでも神様です。
そして我々痴女種は、あくまで人類保護と善導のために生きる女官なのです!なのですから誤解しないでくださいね!
-------------------------------------------------
おかみ「べらこ…そりゃ、てるこをかみさんあつかいしろ言うてもこれではむりやろ…」
てるこ「姉様に言われたくはありませんわねっ」
おかみ「おまえらが今年、出雲を欠席した理由、皆に言うとるのやが…たのむからまじめにぽるのくにでしごとしてきてくれよ」
黒マリ「まぁ、これで討伐しくじったら恥ずかしいレベルの布陣ですからねぇ…」
白マリ「しかも聖院側でも同時進行作戦。まさに失敗は恥ずかしくて穴があれば」
べらこ「突っ込む発言禁止っ」
てるこ「しかしマリアヴェッラが最近冷たくて」
べらこ「たのきちに手を出しすぎです」
たのの「書かれてませんが、文教局は文教局で忙しいのです…ちなみにかなり痩せました…」
べらこ「なお現状はダリア以上アルトさん未満」
てるこ「で、不憫に思い修学寮食堂に連れて行く他してるうちに」
黒マリ「職場不倫あるあるだな」
白マリ「美男公と玄奘さんはホモってるのかしら」
黒マリ「いきなり何を言うの白マリちゃん!」
白マリ「いや、尻…知りたくなったからよ」
ベラ子「確かに玄奘さんはニューハーフモードがあるわね」
らどう「ネタにされるのは恐ろしいから先に申します。現状では玄奘様の中の人…つまりパンチ氏の要望があり、性別転換に時間がかかるため痴女状態でお過ごしです。ただ…皆様が興味を示されたほも行為に必要な凹凸、痴女種なら備わりますよね」
ベラ子「え」
白マリ「づまり」
黒マリ「まさかの美男公受け!」
まさみ「マリアちゃん。国内広報誌掲載はしないわよ…あ、月報痴女宮って電子雑誌を広報で作ってまして、人事異動や行事報告などを毎月全女官に送信しています。いわゆる社内報ですね。ちなみに聖院側でも月々聖院という似たものを出していますよ。なお両紙の掲載漫画を担当してる聖院同人部という薄い本サークルがありまして…ええ、18禁内容OKにしています。内容検閲は入りますが局部は無修正」
べらこ「なぜかあたしもひきずりこまれました」
白マリ「でぇ。内容的にほもなのもありまして」
黒マリ「どう見ても美男公だろこれな作品とかな!」
白マリ「そろそろ娯楽誌と本来の社内報、いえ国内広報誌を分けようかと…掲載作をしぼるのもあまりやりたくないしねー」
まさみ「やっぱり現代地球やNB経験者はどうしても同人を描けるような絵柄が基本になってるから、話さえ思いつけば描けるのよ…」
黒マリ「ただ、厳選はしてくれよ。バ◯チやハ◯タあたりの凶器雑誌はいくら電子版でも少し辛いぞ…」
おまつ「ここここここれわあっ」
黒マリ「ちなみにおまつ様と慶次郎さんとか、絡み話の二次創作はな…」
白マリ「原作でやってるし、漫画描いてるのがあの特徴的すぎる人だから…島◯作ですらあれにした人だからね…」
黒ひげ「ちなみに海賊仲間でほもはほぼ、いねぇ。出身国で禁じていたのもあるが、女に不自由はあまりないんだよな」
黒マリ「海賊の出入りする港に行けばなんかあったからな…」
ごどう「倭寇も事情は同じだ。更に男と女の間柄にうるさくなるのは徳川幕府以降だからな」
おまつ「あたくしも旦那が利家だから騒がれかけただけで、農家や町衆では割と自由げほげほっ」
まさみ「やはり鉄棒はぬらぬらさせるべきよね!」
黒マリ「あたしらが何かしなくても江戸時代で既に暴走するんだよな…」
白マリ「ちなみに前田利家のただれた掛け算ライフは書きたくないそうよ」
おまつ「ええ、あれ、美少年好きでしてねぇ…」
クリス「この時代の日本へ僕が行くと危険な気が」
白マリ「父様…わかりきった話よ…」
黒マリ「なお父様が積極的に同級生とつるんだり、水着女性方面に手を出したのも実は掛け算方向のセクハラがひどかったせいもあるらしい」
ジーナ「マジにクリスは男の娘として通用するからな…」
クリス「ほもの輪の中に入れないで欲しいのです」
まさみ「ではショタの輪に」
他全員「あんたはそこに行き着くかー!」(乱れ飛ぶはりせん)
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