68 / 366
警務部おしごと帖・アルトとダリアの多忙?な日・2
しおりを挟む
「ですからひとには苦手があるのです」
「アルトさん、それいうと苦手克服の特訓が入りますよ」
「確かに騎士が苦手ありありはまずいわね…あ、罪人は別よ。まず得意なことがないかを調べるから。出来ないことを無理にさせずにまず、何か一つでも得意な事をさせる作らせるの」
「これ、人づくりとして興味深いよね、てっしー」
「そそ。えーと、あたしと宇賀神さん、五百旗頭さん、四十洲さんはちょっと罪人さんたちと話が変わるのね」と、マリアンヌさまとスザンヌさまにおきぬさんが。
「ああ、受験ではなるべく苦手科目がないようにしておくのね」
「そりゃ落とすため、選び抜くための試験が待ち構えているのですから仕方ございませんわ」
「罪人さんたちにも色々な理由でここに来てるの知ってるけど、まず悪いことして捕まった人にしましょう」
「はいはい、つまり黒ひげや海賊のみなさん。まずだいたい、悪人という人の中には悪いことしかできない人がいます。これは受験には出ないわよっ」と、あたくしとダリアが申させていただきます。
「ぬぬっ、確かにあそこ高校通いなら人生で前科者に接触するなど、特定官庁勤務後よね…」
「田野瀬先輩は脱税犯をしばいていましたが」
「桜田商事の本店に行くより検察庁か法務省よね…うち高校だと」
「あたくしも、正直、母が雲介な若いものをジーナおばさま以上の強烈な色気と暴力で従えておりましたのを見ていましたからね…」
「で、悪い人の中には頭のいい悪い人もいるんだけど、まぁ大体は出来の悪い人ね。これは瀬戸組を見るとよくわかるわ」
「つまり…悪いこと以外にご飯食べる方法を見つけてあげる必要があるのよ。これは天の声さんも、ご親戚の工場で似た経験をされたらしいのですが。なんでも本社工場と工業団地の支店の間を走るトラックドライバーを募集していて、応募した人を雇った際に母が社長をしてた時と似た事件になりまして」スザンヌさまが暗い顔でおはなしになりますが。
「何が起きたんだろ」
「えーと、うちの場合、初出社の日に来ませんでした。何かあったのかと思ってたら平野こういき警察署から電話がありまして、◯◯◯◯というのはおたくの会社に在籍しておられますかと」
「えー…それって、けいさつに捕まったということでは…」
「事故よ!きっと事故に」
「残念だけどいおきべさん。あきすで捕まってどこの誰よとなりまして、先に労働ほけん手続きを進めていたせいで生年月日からどこの誰とかひもつきでだいたいわかりまして、つかまった翌日からろうさい保険が有効になってるから、勤務先のうちに電話確認してきたのね」
「なお天の声が経験した方の場合は平野警察に捕まったわけではない。ついでに車を盗んで捕まった模様…ふつうさあ、しごとが決まったら悪いことやめない?元海賊のみなさん、どう思う?」
「た…確かに…堅気に雇われてるのに、わざわざ捕り方に捕まるような事やらんよな…」
「あたしの思いつきだけどさ、普通、雇われたら給金がもらえるまでただ働きじゃん。金をもらうまでのつなぎに盗みをしたんじゃないかな」
「メアリーの考えが当たってっかも知れないねぇ…ほらほら陛下にティーチ、うちらも身一つで逃げ出して来たり、食い詰めてフラフラになってたのを拾い上げてただろ。あれよあれ」
「そうそう。うちの母…ジーナが沖縄で一緒に働いてた女の子に聞いたんだけど、サラリーマン…かたぎのつとめ人が金がないというのと、やくざ者の金がないというのは全く違う。身寄りもなくろくに定職についてないから、やくざの金がないというのは本当にないんだって」
「あー…なるほど…貧困は犯罪理由の九割っていうのを証明するような話よね…」
「だから元手を握らせた方がいいんだよ。あと、お嬢さん方の世の中じゃ、平民や庶民でも太ったのがいるだろ…あれな、うちらじゃデブはお貴族様の証みたいなもんなんだ。とにかくグズやのろまは嫌われる以前に生きていけねぇんだ。死にたくないなら何かしろってのが、身分の低い者の不文律だと思ってくれ。だがな…」と、ここで黒ひげのおじさん、ニヤリと笑われます。
「ちょっとこの掃夫に聞いてみよう。おいお前、今何時だ」床に水切りを走らせていた掃除役のおじさんを捕まえて聞いていますね。
「へい頭、11時です」
「あと1時間で昼飯だな。午前中の仕事は終わらせておけそうかい?」
「へい、大丈夫です。11時45分には終わって道具を片付けて、相方と二人で掃夫詰所に顔を出して…12時には飯に行けます」
「よしご苦労、もう少しで昼飯だ、よろしく頼むぜ…で、お嬢ちゃんたちの世界なら、あんな受け答えは当たり前だよな。そもそも俺がいちいち確かめなくても、黙って仕事を済ませて飯に行くような簡単なことだ…だけどな…」
「ああ、ティーチが言いたいのはわかる。甲板拭きでも、自分がどこまでやったかつかめてないのがいるんだよな」
「手を動かした目印になるマストなりロープなりがある船でさえそれができない奴がいるんだ。信じられるかい?」
「確かに今何時かわかるのはここに来て腕輪をもたされてからだけどさ…お天道様の上がり具合で自分の仕事の早い遅いくらいつかめよってのがいたからなぁ」
「だから縫い物一つ、縄の縛り方結び方一つ覚えさせるにも苦労すんだよ。そんな程度の野郎が一番手早いのが…盗むことなんだわ」
「仲間の持ち物に手を出した奴は島に置き去りとかしていた理由、わかってくれよ嬢ちゃんたち…本当に、俺たちでさえ頭を抱える奴がたまにいたんだよ。ただ、ここじゃ話は変わるんだわ。な、陛下」
「まず盗みはすぐバレるから不可能。しかもだれがやったまで。罪人に至っては盗むと決めた瞬間に私たちに伝わる上に…」と、かいぞく女王が黒ひげの聖環をちらり。
「そ。こいつが死なねぇ程度に締まる上に、暴れる気力を奪いやがる。おまけに賃金は減らされるわ懲罰作業を食らうわ、まるで割に合いやしねぇんだ」
「でさぁ、船の上ならあまりに出来が悪くてサメの餌な奴でも、ここなら何かできる仕事を作ってくれっだろ」
「んだんだ。読み書き算術は基本。これ、監督してるあたしらからしても、ものすごくありがたいんだよ。人に分かりやすい報告の仕方とかな」
「ここの方が何人かいてくれたら、わらわも統治がどれほど楽だったか…」
などなど、おはなししながら罪人寮の中を移動中。
(この階は夜働く罪人に割り振られています。今はほとんど寝ていますから音を立てないようにしたげて下さい)と、ダリアからご注意が。
(警備の方だけじゃなさそうですね)がくせいのかたがたがおへやの中を見ています。
(マリーが監獄国を視察した結果ですけど、工場は二交代または三交代でやってますよ。一番暑くなる時間帯を避ける形で2時から11時と16時から1時にしてますね。あと金属加工などは夜やる方がいいんですと)
(あー、手作業の鍛冶場はそうですよ。日中だと炎の色がわかりづらい…温度が読めないんです)あー、いおきべさんですか。実家がかじやさんのかた。どうりで鉄を打った事もないのにくわしいわけですね。
(そーいや、アルトさんのリトルクロウの解析って話が来てたよね、あずさんとこ)
(あれねー、謎も謎なのよ。現代日本でも頭捻るような不思議な刀なのね。平安時代の日本刀や釘にいくつか事例があるんだけど)
(へえ。あるとはんのその刀、たしかに日本刀やけど両刃なんですわな)
(では、もうそろそろ食事どきなので食後におみせしましょう)
そうそう、食堂ですけど、ベラ子へいかやたのせさんが見られた時とだいたいおなじです。ただ、罪人の数も増えていますから広げられていますよ。ぐたい的には罪人寮の一階と二階が食堂です。そして食堂から遠い工場・倉庫・波止場で働く人のためのはいたつ用のお食事やお弁当も作っていますよ。
あと、お仕事の種類が増えて、体力を使う罪人も多いことから罪人食堂ではお肉の食事が増えています。
少し前によめが学生さんを助けていた学校ありますでしょ。あの学校のえらい人で、だじゃれのとくいなお坊さまいわく「プロティンは正義です!蛋白質は秩序!肉食は当然なのです!体脂肪率6パーセントで銭湯に行くと戦闘しなくても衆生を先導できるのです!筋肉を鍛えれば争いもスルーできるのです!マッスルだけにまっ、スルー!」だそうです。おぼうさまがおにくを食べたらあかんと思うのですが、きんにくを付けないとおくさんのエロほんのねたにされるらしいので仕方なくきたえはじめたそうですね。じつはりじちょう先生の奥様、まさみさんとすけべい本の世界でのお尻愛じゃなくてお知り合いだそうで、しょうねんが大好きなのでだんなさんがきんにくをつけるとおこるそうです。普通はたくましい男のひとの方がいいと思うのですけど、ふしぎな趣味ですね。
…それと、うちのよめや初代様ももうしておりましたが、りじちょう先生とお話しすると3分に1回はあたまをはりせんでたたきたくなります。それとなぜか寒くなります。だじゃれ菌という菌のせいらしいのですが、なかなかにめいわくな菌ですね。
で、お昼を頂いたあとは罪人管理室に戻りまして、りくえすとにおこたえしてリトルクロウのげんぶつを抜いてみせます。
(うん、これこれ。これ、連邦だと日本の国立博物館に収蔵されてて、そう簡単に拝めるものじゃないから画像撮っとこう。で、小烏丸造とか切先両刃造と言われてて、いわゆる日本刀とはまた違った作りなのよね。ナディアさんの熊野三所権現長光と比べたらかなり違いがわかるんだけど)
(はいどうぞ)と、いもうとが自分のかたなを抜いてみせます。あたくしのよりちょっと長いのと、片側にしか刃がついていません。あと、そりというのですか、曲がりかたがあたくしのより更にすなおなカーブになっていますね。みぞもほられてませんし。
(ありがとうございます…で、長光と小烏丸を比べたらわかると思いますけど、小烏丸って刀身の紋も普通にカンカン打って鍛えた感じじゃないんですよ…ですけど強度や特性は鎌倉以降のいわゆる日本刀特有の作り方となんら遜色ないんです。むしろ頑丈なくらい)
(ほー。確かに俺らが使ってた海賊刀よりよく切れる感じだが…)
(あー、比丘尼国の刀は斬るのに適してんだよ。凛さんや静香さんに習ったけどよ、比丘尼国のさむらいの剣法に合わせて出来てんだわ)
(鉄のもとの石が大量に取れないから刀自体が貴重で、ポキポキ折れたら困るって話だよねぇ。あたいらは海賊刀が慣れてっけど、これはこれでいいんじゃねぇかな)
(実際にめちゃくちゃ切れるんですよ。ただ、製造工程にかかる時間は洋刀の数倍…小烏丸の時代の刀の一部は本当に特殊なんです。普通は鉄を頑丈にするために炭素…石炭やダイヤモンドと同じ素材を混ぜてバネのようにしなり、硬さもそれなりなるようにしていきます。その過程で鉄を高い温度で溶かしたり熱して、弱い刀になってしまう原因になる不純物を除去するんですけどね…リトルクロウがまさにそれなんですが、銅や金などの不純物が結構入ってるんですよ。古代の驚異的な超高純度炭素鋼、つまり玉鋼とも違うんです)
(見た目はそんなもん含んでなさそうだけど)
(ただ、逆にある程度不純物が入ってる方が錆びにくいとか、何かを切っても硬すぎて刃こぼれしにくいとか実験結果が出てましてね)
(そういや、エマちゃんが必死で再現しようとしてたな…黒ひげ、恐らく鍛造工程で釘とかネジ作ってるラインに回す鋼材が少し変わると思う。あと旋盤とか加工機材を変えるか、ブレード交換の話が来ると思うから、螺鈿工場の担当に回す書類か指示メール来てないか注意してね)
(了解。見落としたらマリーの姉御激怒案件だな)
(あと釘は比丘尼国で内製させるかも知れないけど、ネジはうちが持つ事になると思う。精密機械を扱えそうな奴のピックアップ頼むわよ)
(船関係の需要が期待出来るからな。ああ、俺も船がありゃあ一稼ぎを考えるんだが…ま、本業を覚えるのが先だ。アレーゼの師匠からも、あめりかで使うって農具の話が来てるしな。現地の連中に配って百姓やらせるらしいからよ)
(あー、あれか…そうなったら大西洋便の増量があるでしょ。あたしからも黒ひげが海運やりたいって言っといたげるわ)
(俺自身は農場ってのに興味もあるんだが、ま、百姓は百姓で専門家になるのが大変だって聞いてっからな。それに俺ばかりが欲をかいてあれもこれもと手を広げるより、稼ぎ話はみんなで分け合う事も必要だろ)
(黒ひげのおじさん、なんかインディアンみたいな原始共産制まがいの事言ってる…)
(おいおい、海賊ってそんなもんだぜ。頭目が何でもかんでも総取りしてたら一瞬で引き下ろされるんだ。お上の横暴に腹を立てたり命の危機にさらされる事すらあった奴ばかりだろ。金や物を使いこなすかは別として、いい目したいんだよ。だろ?アンにメアリー)
(獲物を皆で分け合うのは同意だ。だけど金を持って気が大きくなる奴は多い。言えてるね)
(あたしら仲間内での博打はご法度にしてたからねぇ。ただ、知っといて欲しいのはさ、うちらのしきたりは押し付けられて守らされるんじゃなくて、みんなで決めた事だからみんな守ろうぜって事なんだよね。体裁的に陛下に発布して頂くんだけど、こんな感じで決めたいんですがと陛下に持っていくわけよ)
(で、わらわが承認すると、黒ひげなり二人が広める段取りなのですよ。わらわから言わないとロッシュやロロネー辺りが従わないとかありましてね…)
(言うこと聞かないのなんの。決闘になりかけた事も一度や二度じゃなかったからねぇ)
(あいつらに人の話を聞く頭があればと何度思ったか…)
(あいつらなりに人に気は使ってはいやがったんだけどよ…)
(かいぞくの中も色々あったのですねぇ)
(まぁ、しばかなあかんのもおったいうことやね。…そう言うたら、田村っちゅう比丘尼国の将軍様がおるんですけどな、その方に下賜された騒速いう刀がおまんねん。これ、一本やのうて何本かまとめて上貢されとるそうで、そのうちの一本が村上経由でうちにも来てましてな)
(ええええええ!重要文化財ですよそれ!見たい見たい見たい!)あずさはんがさかってますね。
(いやアルトさん、その刀はそれはそれでものっっっっすごく貴重なんですって!直刀の他に太刀に近いこしらえのもあるんですけど、腐食が激しくて国立博物館で収蔵保管してるんですよ…確か大嶽丸さんですか、鈴鹿の山の鬼さん退治に使った由来があるそうで)
(ああ、それがたむらはんに行ってる奴です。うちのはそれと同じ鍛治のこさえたもんですねんけどな…もともとはよりみつ様のんですけど、今は外道さんの預かりになっとる鬼切丸ありまっしゃろ。あれとかよりみつはんの刀の童子切安綱と同じような効き目がありまして、人魚族に使っても、普通に鞘から抜かんとどつくだけでも痛み倍増)
(…つまりなんですか、凛ちゃんの組のやくざの人がいらんことした時におせっかんするための道具…)
(そういうことですわ。私ら人魚のもんも鬼さんらと同じで、普通のかたなやったら人を斬るほどに傷を負わせられへんのでね。血の気が多うて先走りよる身内のアホをどつく道具をいくつか元伊勢から預かってますねや)
(あー、うちらの黒グッズと同じ…)ダリアがうなっていますが、確かにクレーゼさまとか初代さま相手にはあれでないとだめですからね。つよい鬼さんたちにも同じようにおせっかんの道具がいるのでしょう。
なにせ、クレーゼさまとあれこれあったあたくし、痛いほどよくわかる話ですから…。
「んでよ、とりあえずアルトさんにダリアさん。ラドゥ厚労部長の方に回したけど、罪人寮と工場の月次報告と要望書…今ここで写し見とく?」
「うん。ちょい見せて」と、ダリアが黒ひげにわたされているたんまつを操作しています。
「えーとアルトさん、報告はともかく要望っすね。重点事項はやっぱり罪人寮の方も人が増えてるから監督騎士の増員希望。それと、修学寮から上がってきてこっちで住んで働く事が予定されてる子供の管理。大人じゃないからどうすんのって話なんで、これは今すぐじゃないですけど遅くとも1年以内には要対策。現時点では勤労年齢児童は修学寮から通わせてますけど、罪人寮の方で預かった方がええのかを含めて検討して欲しいとあります」
「ああ、俺の口から補完しとくと、やっぱり子供は子供だ。いずれは大人になるんだが、現状ではここに住んでる大人の8割は本来の意味での罪人だからな。ガキどもにいらん事を仕込む可能性も考えると、まだお上にとっつかまるような悪さをしてない奴はしてない奴で、悪さしたのとは分けとく方がいいんじゃねぇかとも思うんだわ」黒ひげがかなり真面目な顔をしてもうします。
たしかに、これも黒ひげの言いぶんはまちがってはいないでしょう。あたくしもけいけんがありますし、何よりこれをよくわかってるはずなのがダリア。
「確かに…日本の刑務所でも、収容分類級ってのがあったはずなんですよ、AとかBLとかで分けるやつ。あーこれだこれだ」と、よしこさんが自分の聖環でしらべものをして、わたくしたちに見せてくれます。
なるほど、おとこと女で分ける。それと罪の軽い重い…けいむしょに入れられる長さや、ぜんかものか、はたまたやくざ者かで行くけいむしょを分けるのですね。
「ほうほう。うちらは部屋割りや工場の仕事でこれに近い事やってっけどね。ね、陛下」
「まず人殺しをしたか。それと盗み。まぁ、この辺は罪人の罪環のでーたとやらを見ておすすめの組み合わせをたんまつが教えてくれますので、それほど難しいものではありませぬね」
「殺しにせよ盗みにせよ2回以上捕まったかで決めてるらしいね。最初だけの奴とは扱いを違えろとは騎士の教育の際に教えられたし…ま、うちに来たらあまり関係はなくなっちまうけどさ」
「あたしらですらロロネーとかロッシュみたいなの、下手すりゃ小指の先でチョイなんだもんなぁ。普通の女だった時分じゃ考えられねぇさ」
「犯罪一回目の人と、二回目以降の人は全然違うのよ、扱い。実はあたしがそーなんだけどねー。一度悪い事して捕まらないとなると二回目以降にためらいがなくなります。そして大事なこと。最初に見つかった時点で捕まるか否か。ここで捕まらないとまず確実に犯罪者への道が門を開きます。この辺は海賊さんたちの中にも本当に犯罪者として逃げて来た連中もいれば、他の船での扱いがひどくて逃げて来たのもいるから、誰でも彼でも犯罪者扱いはしてないけどね」
「ええ、ダリア様…ダリアさんのおっしゃる事はようわかります。海賊になる前から悪事をしてきた者と、わらわ達に厄介になるしかなかった者は全く違いますからね」
「ダリアさんには悪いが、ぶっちゃけ悪さして来たやつの方が手癖は悪りぃ。場慣れしてるやつほど、何かとあると犯罪自慢を始めるしな」
(にゃるほど、はんざいに歯止めが効かなくなってるのね)
(ああー、いましたわね。うちの学校でもね、おうちがおかね持ってるだけで、人のものを盗ったり人をなぐるのにためらいがないのが。そういうのが何かしたら、わたくしが探り出してマリアンヌがなぐる役目)
「ええ?あんたらが?」マリアンヌさまとスザンヌさまがうんうん言ってるのですが、かいぞく連中がおどろいていますね。そりゃ、みためはまだまだこどもの部類ですからね、おふたりとも。
「ええとね、くろひげさん…実はマリアンヌは普通の女の子だったんですけど、あたくしの母親は今、ざいむぶちょうのクレーゼでしょう。あたくしをうんだ時は人として暮らせるようにしていたのですけど、力自体はうけついでたんですの。で、母はもともと聖院の金衣…いちばんえらい人でしたから、他の女官にはない力をもっていて、娘がそれを引きつぐのですわ。姉のマリアリーゼとあたくしは当然、その力をひきついでいます。ただ…ひとの世界でその力を使うと大変なことになりますから、わざといろいろできないようにされていたんですよ。でも学校で困った事があったらって、こっそりとはずし方を教わってたりしてまして」ぺろっと舌をだされてますけど、そりゃ、金衣当時のクレーゼさまの力をすべて使えたらとんでもないことになりますね。
「そーそー。で、あたしがクリス・ワーズワースとジーナ・高木のむすめなんです。ですから母親のジーナのせいかくと腕力は受け継いだってわけでぇ」あー…じーなさま、気はみじかいですね。
「とどめ。金衣って、自分の力を他人にかしあたえたりできるんです。ですから、あたくしが本来の力が使えたら、マリアンヌを…そうねぇ、海賊女王さまとアンさんとメアリーさん、三人がかかってきてもたおせるくらいつよくできました。女王さまが千人そつ、アンさんとメアリーさんが百人そつでしょう。マリアンヌを一万人相手できるくらい強くしたら大丈夫ね!」
「ええ、クレーゼ様がそれをできるのはあたくしもされた事があるので知っております。ダリアも経験あるでしょ?」
「そーそー。女官種時代はそれ出来たのよ。今は痴女種として昇格時に限定処理かけて、普段は全力を出せないように出来るからあんまやらなくなったけどね」
「へー…って事は俺より強ぇと…」黒ひげがうーんとうなってますね。そりゃまぁ、こんなちっさい子が指もふれずに黒ひげよりももっと大きいのをふらふらにしてしまうなんて、げんばをみないと信じられないでしょう。
「あと、マリアンヌも痴女宮にいるときだけだけど、あたくしと同じにそろえられていますわよ」
「えええええ」
「いっときますけど、リーゼ姉の産まれた時はもっとすごかったわよ。なんせ本人、見た目赤ちゃん」
「で、誰よりも強いんでしたので…アルトさんは知ってるよね。リーゼ姉が産まれたとき」ええもちろん。よーくよーくよーくぞんじております。
「ふむふむ。お嬢様方、少しお聞きしますわね。えーと、仮にわらわがスザンヌ様を吸うとどうなりましょうや」
「単純に申します。吸いすぎ注意。食べすぎて動けなくなったりくるしくなるのとおなじになります。へたすると死んじゃうらしいので絶対やめてね!」なにかこう、かいぞく女王をおせっきょうしている姿がほんとクレーゼ様みたいで…。
「確かになぁ…力で従えておかないと言う事聞かねぇ奴は多いんだよなぁ…だがなお嬢ちゃんたち、これだけは注意してくれ。相手の面子を立てる事も大事だぜ。女の子は情け容赦なく言うかも知れないけどな、男に説教する際に逃げ道は作っておくんだ。でないとこいつらみたいに苦労するぜ」と、黒ひげがアンやリードのむかしを教えてくれます。
「そーそー。どんなにだらしねー男でも、女に注意されたら反発するとかな」
「だからあたしらを普段は男と思えってやってたんだよ。格好も男と同じにしてさ」
「今は女らしくしていて良いのですよ。そなたらももはや女官。無理に男勝りを演じる必要などないのです。むしろ、ティーチが言うように戦えば勝ち口喧嘩でも負けぬとなれば、表向きは従っても心の中ではどう思うか。得意を伸ばすのと同じで、男の顔も立てなされ」と、かいぞく女王が女王らしくおっさいます。
「実際に女らしくしてねぇと、客ウケが悪くてなぁ…」
「ああ、オリューレ様はまだいいんだが、マリーさんにべらんめぇをやってるのがバレたら…」
「その辺は気楽にやったんさい。あたしもこれだけどね、特に言われなかったよ」ダリアはその辺が上手いですからね。
「…ああそうか、おめーらも女官の時があるんだよな…」
「海賊仲間に笑われるからいやなんだよ…女官服でここの慰安の仕事があるんだからな…」
「アンの言う通り。あれ結構恥ずかしいから騎士服でさせてもらえませんかダリアさん!」
「あー、そういう理由ならいーよ。騎士服着ててもいいようにはしといたげるから」
そうです。このふたりも女官として本宮でせっきゃくのおしごとがあるのですよ…。百人卒ですから割とひんぱんに行く事になりますね。
「でもさー、アルトさんとダリアさんって何だかんだでいいコンビよね」罪人寮からの帰り道でマリアンヌさまから言われます。あ、マリアンヌさまのあたまのてっぺん、大体あたくしの首くらいですね。スザンヌさまも同じくらい。しょうがく六年生にしてはまぁまぁ大きめだそうですけど。
「そうねマリアンヌ。アルトさんはあなたぽじしょんよね」
「うぐぐぐぐぐ、何かこう、ほめられた気がしないのですが…」
「アルトさんと同じと言うのが何かこう…アルトさん、お互いつよく生きようね!」
「妹のわたくしが見てもそう思います。サレルフィール姉様、喋らない方がいいです」
「ナディアフィール。申したい事はわかるのですが気づかい気くばりも大事だと黒ひげがもうしておりましたでしょうに」
「あー、あるとはん怒っとる…ナディアはん。あまり挑発せん方が…」
「もうおそいです。ナディアフィール。前から申したい申したいと思っておりましたが、あなたはひとこと多いのです。ちょっとていぼうに行きましょう」
「ふん、お姉様に遅れは取りませんわよ」
え。
ちょっとおまちください。なんであたくしのがんつふくのいんちゅうが動いているのですか。
「えーとね、アルトさんが万一暴走した時の制御権限、ナディアさんに渡されてますね…」深刻そうな顔でダリアがもうします。いやな予感がするのですが。
(まりあさま。あたくしになんかいらんことしましたか)
(あー…ナディアさんからの強い強い強い要望でな…ダリアに言われるのはまだしもお前に言われんのは我慢ならんと。アルト…おめーも妹相手に大人気ないとこあるだろ…だからおめーら姉妹でやり合う場合はナディアさんに合わせて強制パワーダウンだ。銀衣相当の能力は残ってんだからたまにゃいーだろ。遠慮なく堤防で乳繰り合ってこい。あ、ナディアさん…あそこ使ったら絶対に掃除忘れないでくれな。掃除道具の場所はダリアが知ってるから)
「了解です。あー、学生さんたち。ついでです。堤防堤防って言ってるダムの一番てっぺんの船着場になってるとこ。あそこをどう使うか見るいい機会だから見学していきましょう。この二人なら決着つくまでに30分かからないと思うから。はい元海賊さんたちも来た来た」
「え…なんかまぐわいを見ると言うより、怪獣大決戦を見せられる気がするんだが」
「仕方がないでしょうティーチ。姉妹どんぶりとやらを拝見いたしましょう」
「そーだねー。上級騎士同士のやり合いって滅多に見ねーしなー」
「んだなメアリー。勉強させて頂こうぜ」
「え…私たちも…」
「けんしゅうです。あきらめさない。だいたいあたくしたちが見る必要あるんですかっ」
「まー確かにあたしもスザンヌも、頭じゃ理解はしてんだけどねー、痴女どうしのけんかがナニを使ってナニするかはさー」
「いつかは大人の階段をのぼるのです。見学いたしましょう」
「そうでっせ。いざそうなった時にも慌てんようにしとくのは大事でっせ」
「えええええ、まけたらはじさらしではないですか!」
「堤防とはそう言うところでしょう姉様!ダリアさん!姉が逃げないように転送願います!」
そういうのなら仕方ありません。
せいげんがあるのが痛いですが妹ごときに遅れはとりませんよ。
「堤防って…要するに屋上とか体育館の裏よね…」
「それで堤防堤防ってみんな言ってるのね…」
「あとお仕置き用なんだよ…正直あそこはあまり行きたくねぇんだけどよ…掃除道具にこうあつ洗浄機ってのか、あの黄色で水をえらい勢いで吹き出すやつ。あれを置いてる理由が今からわかると思うぜ…」
「もちろんです。ナディアフィール。あなたのために置かれたとお思いなさい」
「ふふふ姉様、後悔は先に立ちませんことよ。あたくしの足元にひれ伏させて差し上げますわ!」
ええみなさま。
なんだかんだ申し上げて痴女皇国、はなしあいだけでかいけつはしない事もあるのです。
そしてそういう時のためのていぼうです。
みなさまに勝利のほうこくをさせていただくためにもアルトリーネ、がんばってまいります!
「アルトさん、それいうと苦手克服の特訓が入りますよ」
「確かに騎士が苦手ありありはまずいわね…あ、罪人は別よ。まず得意なことがないかを調べるから。出来ないことを無理にさせずにまず、何か一つでも得意な事をさせる作らせるの」
「これ、人づくりとして興味深いよね、てっしー」
「そそ。えーと、あたしと宇賀神さん、五百旗頭さん、四十洲さんはちょっと罪人さんたちと話が変わるのね」と、マリアンヌさまとスザンヌさまにおきぬさんが。
「ああ、受験ではなるべく苦手科目がないようにしておくのね」
「そりゃ落とすため、選び抜くための試験が待ち構えているのですから仕方ございませんわ」
「罪人さんたちにも色々な理由でここに来てるの知ってるけど、まず悪いことして捕まった人にしましょう」
「はいはい、つまり黒ひげや海賊のみなさん。まずだいたい、悪人という人の中には悪いことしかできない人がいます。これは受験には出ないわよっ」と、あたくしとダリアが申させていただきます。
「ぬぬっ、確かにあそこ高校通いなら人生で前科者に接触するなど、特定官庁勤務後よね…」
「田野瀬先輩は脱税犯をしばいていましたが」
「桜田商事の本店に行くより検察庁か法務省よね…うち高校だと」
「あたくしも、正直、母が雲介な若いものをジーナおばさま以上の強烈な色気と暴力で従えておりましたのを見ていましたからね…」
「で、悪い人の中には頭のいい悪い人もいるんだけど、まぁ大体は出来の悪い人ね。これは瀬戸組を見るとよくわかるわ」
「つまり…悪いこと以外にご飯食べる方法を見つけてあげる必要があるのよ。これは天の声さんも、ご親戚の工場で似た経験をされたらしいのですが。なんでも本社工場と工業団地の支店の間を走るトラックドライバーを募集していて、応募した人を雇った際に母が社長をしてた時と似た事件になりまして」スザンヌさまが暗い顔でおはなしになりますが。
「何が起きたんだろ」
「えーと、うちの場合、初出社の日に来ませんでした。何かあったのかと思ってたら平野こういき警察署から電話がありまして、◯◯◯◯というのはおたくの会社に在籍しておられますかと」
「えー…それって、けいさつに捕まったということでは…」
「事故よ!きっと事故に」
「残念だけどいおきべさん。あきすで捕まってどこの誰よとなりまして、先に労働ほけん手続きを進めていたせいで生年月日からどこの誰とかひもつきでだいたいわかりまして、つかまった翌日からろうさい保険が有効になってるから、勤務先のうちに電話確認してきたのね」
「なお天の声が経験した方の場合は平野警察に捕まったわけではない。ついでに車を盗んで捕まった模様…ふつうさあ、しごとが決まったら悪いことやめない?元海賊のみなさん、どう思う?」
「た…確かに…堅気に雇われてるのに、わざわざ捕り方に捕まるような事やらんよな…」
「あたしの思いつきだけどさ、普通、雇われたら給金がもらえるまでただ働きじゃん。金をもらうまでのつなぎに盗みをしたんじゃないかな」
「メアリーの考えが当たってっかも知れないねぇ…ほらほら陛下にティーチ、うちらも身一つで逃げ出して来たり、食い詰めてフラフラになってたのを拾い上げてただろ。あれよあれ」
「そうそう。うちの母…ジーナが沖縄で一緒に働いてた女の子に聞いたんだけど、サラリーマン…かたぎのつとめ人が金がないというのと、やくざ者の金がないというのは全く違う。身寄りもなくろくに定職についてないから、やくざの金がないというのは本当にないんだって」
「あー…なるほど…貧困は犯罪理由の九割っていうのを証明するような話よね…」
「だから元手を握らせた方がいいんだよ。あと、お嬢さん方の世の中じゃ、平民や庶民でも太ったのがいるだろ…あれな、うちらじゃデブはお貴族様の証みたいなもんなんだ。とにかくグズやのろまは嫌われる以前に生きていけねぇんだ。死にたくないなら何かしろってのが、身分の低い者の不文律だと思ってくれ。だがな…」と、ここで黒ひげのおじさん、ニヤリと笑われます。
「ちょっとこの掃夫に聞いてみよう。おいお前、今何時だ」床に水切りを走らせていた掃除役のおじさんを捕まえて聞いていますね。
「へい頭、11時です」
「あと1時間で昼飯だな。午前中の仕事は終わらせておけそうかい?」
「へい、大丈夫です。11時45分には終わって道具を片付けて、相方と二人で掃夫詰所に顔を出して…12時には飯に行けます」
「よしご苦労、もう少しで昼飯だ、よろしく頼むぜ…で、お嬢ちゃんたちの世界なら、あんな受け答えは当たり前だよな。そもそも俺がいちいち確かめなくても、黙って仕事を済ませて飯に行くような簡単なことだ…だけどな…」
「ああ、ティーチが言いたいのはわかる。甲板拭きでも、自分がどこまでやったかつかめてないのがいるんだよな」
「手を動かした目印になるマストなりロープなりがある船でさえそれができない奴がいるんだ。信じられるかい?」
「確かに今何時かわかるのはここに来て腕輪をもたされてからだけどさ…お天道様の上がり具合で自分の仕事の早い遅いくらいつかめよってのがいたからなぁ」
「だから縫い物一つ、縄の縛り方結び方一つ覚えさせるにも苦労すんだよ。そんな程度の野郎が一番手早いのが…盗むことなんだわ」
「仲間の持ち物に手を出した奴は島に置き去りとかしていた理由、わかってくれよ嬢ちゃんたち…本当に、俺たちでさえ頭を抱える奴がたまにいたんだよ。ただ、ここじゃ話は変わるんだわ。な、陛下」
「まず盗みはすぐバレるから不可能。しかもだれがやったまで。罪人に至っては盗むと決めた瞬間に私たちに伝わる上に…」と、かいぞく女王が黒ひげの聖環をちらり。
「そ。こいつが死なねぇ程度に締まる上に、暴れる気力を奪いやがる。おまけに賃金は減らされるわ懲罰作業を食らうわ、まるで割に合いやしねぇんだ」
「でさぁ、船の上ならあまりに出来が悪くてサメの餌な奴でも、ここなら何かできる仕事を作ってくれっだろ」
「んだんだ。読み書き算術は基本。これ、監督してるあたしらからしても、ものすごくありがたいんだよ。人に分かりやすい報告の仕方とかな」
「ここの方が何人かいてくれたら、わらわも統治がどれほど楽だったか…」
などなど、おはなししながら罪人寮の中を移動中。
(この階は夜働く罪人に割り振られています。今はほとんど寝ていますから音を立てないようにしたげて下さい)と、ダリアからご注意が。
(警備の方だけじゃなさそうですね)がくせいのかたがたがおへやの中を見ています。
(マリーが監獄国を視察した結果ですけど、工場は二交代または三交代でやってますよ。一番暑くなる時間帯を避ける形で2時から11時と16時から1時にしてますね。あと金属加工などは夜やる方がいいんですと)
(あー、手作業の鍛冶場はそうですよ。日中だと炎の色がわかりづらい…温度が読めないんです)あー、いおきべさんですか。実家がかじやさんのかた。どうりで鉄を打った事もないのにくわしいわけですね。
(そーいや、アルトさんのリトルクロウの解析って話が来てたよね、あずさんとこ)
(あれねー、謎も謎なのよ。現代日本でも頭捻るような不思議な刀なのね。平安時代の日本刀や釘にいくつか事例があるんだけど)
(へえ。あるとはんのその刀、たしかに日本刀やけど両刃なんですわな)
(では、もうそろそろ食事どきなので食後におみせしましょう)
そうそう、食堂ですけど、ベラ子へいかやたのせさんが見られた時とだいたいおなじです。ただ、罪人の数も増えていますから広げられていますよ。ぐたい的には罪人寮の一階と二階が食堂です。そして食堂から遠い工場・倉庫・波止場で働く人のためのはいたつ用のお食事やお弁当も作っていますよ。
あと、お仕事の種類が増えて、体力を使う罪人も多いことから罪人食堂ではお肉の食事が増えています。
少し前によめが学生さんを助けていた学校ありますでしょ。あの学校のえらい人で、だじゃれのとくいなお坊さまいわく「プロティンは正義です!蛋白質は秩序!肉食は当然なのです!体脂肪率6パーセントで銭湯に行くと戦闘しなくても衆生を先導できるのです!筋肉を鍛えれば争いもスルーできるのです!マッスルだけにまっ、スルー!」だそうです。おぼうさまがおにくを食べたらあかんと思うのですが、きんにくを付けないとおくさんのエロほんのねたにされるらしいので仕方なくきたえはじめたそうですね。じつはりじちょう先生の奥様、まさみさんとすけべい本の世界でのお尻愛じゃなくてお知り合いだそうで、しょうねんが大好きなのでだんなさんがきんにくをつけるとおこるそうです。普通はたくましい男のひとの方がいいと思うのですけど、ふしぎな趣味ですね。
…それと、うちのよめや初代様ももうしておりましたが、りじちょう先生とお話しすると3分に1回はあたまをはりせんでたたきたくなります。それとなぜか寒くなります。だじゃれ菌という菌のせいらしいのですが、なかなかにめいわくな菌ですね。
で、お昼を頂いたあとは罪人管理室に戻りまして、りくえすとにおこたえしてリトルクロウのげんぶつを抜いてみせます。
(うん、これこれ。これ、連邦だと日本の国立博物館に収蔵されてて、そう簡単に拝めるものじゃないから画像撮っとこう。で、小烏丸造とか切先両刃造と言われてて、いわゆる日本刀とはまた違った作りなのよね。ナディアさんの熊野三所権現長光と比べたらかなり違いがわかるんだけど)
(はいどうぞ)と、いもうとが自分のかたなを抜いてみせます。あたくしのよりちょっと長いのと、片側にしか刃がついていません。あと、そりというのですか、曲がりかたがあたくしのより更にすなおなカーブになっていますね。みぞもほられてませんし。
(ありがとうございます…で、長光と小烏丸を比べたらわかると思いますけど、小烏丸って刀身の紋も普通にカンカン打って鍛えた感じじゃないんですよ…ですけど強度や特性は鎌倉以降のいわゆる日本刀特有の作り方となんら遜色ないんです。むしろ頑丈なくらい)
(ほー。確かに俺らが使ってた海賊刀よりよく切れる感じだが…)
(あー、比丘尼国の刀は斬るのに適してんだよ。凛さんや静香さんに習ったけどよ、比丘尼国のさむらいの剣法に合わせて出来てんだわ)
(鉄のもとの石が大量に取れないから刀自体が貴重で、ポキポキ折れたら困るって話だよねぇ。あたいらは海賊刀が慣れてっけど、これはこれでいいんじゃねぇかな)
(実際にめちゃくちゃ切れるんですよ。ただ、製造工程にかかる時間は洋刀の数倍…小烏丸の時代の刀の一部は本当に特殊なんです。普通は鉄を頑丈にするために炭素…石炭やダイヤモンドと同じ素材を混ぜてバネのようにしなり、硬さもそれなりなるようにしていきます。その過程で鉄を高い温度で溶かしたり熱して、弱い刀になってしまう原因になる不純物を除去するんですけどね…リトルクロウがまさにそれなんですが、銅や金などの不純物が結構入ってるんですよ。古代の驚異的な超高純度炭素鋼、つまり玉鋼とも違うんです)
(見た目はそんなもん含んでなさそうだけど)
(ただ、逆にある程度不純物が入ってる方が錆びにくいとか、何かを切っても硬すぎて刃こぼれしにくいとか実験結果が出てましてね)
(そういや、エマちゃんが必死で再現しようとしてたな…黒ひげ、恐らく鍛造工程で釘とかネジ作ってるラインに回す鋼材が少し変わると思う。あと旋盤とか加工機材を変えるか、ブレード交換の話が来ると思うから、螺鈿工場の担当に回す書類か指示メール来てないか注意してね)
(了解。見落としたらマリーの姉御激怒案件だな)
(あと釘は比丘尼国で内製させるかも知れないけど、ネジはうちが持つ事になると思う。精密機械を扱えそうな奴のピックアップ頼むわよ)
(船関係の需要が期待出来るからな。ああ、俺も船がありゃあ一稼ぎを考えるんだが…ま、本業を覚えるのが先だ。アレーゼの師匠からも、あめりかで使うって農具の話が来てるしな。現地の連中に配って百姓やらせるらしいからよ)
(あー、あれか…そうなったら大西洋便の増量があるでしょ。あたしからも黒ひげが海運やりたいって言っといたげるわ)
(俺自身は農場ってのに興味もあるんだが、ま、百姓は百姓で専門家になるのが大変だって聞いてっからな。それに俺ばかりが欲をかいてあれもこれもと手を広げるより、稼ぎ話はみんなで分け合う事も必要だろ)
(黒ひげのおじさん、なんかインディアンみたいな原始共産制まがいの事言ってる…)
(おいおい、海賊ってそんなもんだぜ。頭目が何でもかんでも総取りしてたら一瞬で引き下ろされるんだ。お上の横暴に腹を立てたり命の危機にさらされる事すらあった奴ばかりだろ。金や物を使いこなすかは別として、いい目したいんだよ。だろ?アンにメアリー)
(獲物を皆で分け合うのは同意だ。だけど金を持って気が大きくなる奴は多い。言えてるね)
(あたしら仲間内での博打はご法度にしてたからねぇ。ただ、知っといて欲しいのはさ、うちらのしきたりは押し付けられて守らされるんじゃなくて、みんなで決めた事だからみんな守ろうぜって事なんだよね。体裁的に陛下に発布して頂くんだけど、こんな感じで決めたいんですがと陛下に持っていくわけよ)
(で、わらわが承認すると、黒ひげなり二人が広める段取りなのですよ。わらわから言わないとロッシュやロロネー辺りが従わないとかありましてね…)
(言うこと聞かないのなんの。決闘になりかけた事も一度や二度じゃなかったからねぇ)
(あいつらに人の話を聞く頭があればと何度思ったか…)
(あいつらなりに人に気は使ってはいやがったんだけどよ…)
(かいぞくの中も色々あったのですねぇ)
(まぁ、しばかなあかんのもおったいうことやね。…そう言うたら、田村っちゅう比丘尼国の将軍様がおるんですけどな、その方に下賜された騒速いう刀がおまんねん。これ、一本やのうて何本かまとめて上貢されとるそうで、そのうちの一本が村上経由でうちにも来てましてな)
(ええええええ!重要文化財ですよそれ!見たい見たい見たい!)あずさはんがさかってますね。
(いやアルトさん、その刀はそれはそれでものっっっっすごく貴重なんですって!直刀の他に太刀に近いこしらえのもあるんですけど、腐食が激しくて国立博物館で収蔵保管してるんですよ…確か大嶽丸さんですか、鈴鹿の山の鬼さん退治に使った由来があるそうで)
(ああ、それがたむらはんに行ってる奴です。うちのはそれと同じ鍛治のこさえたもんですねんけどな…もともとはよりみつ様のんですけど、今は外道さんの預かりになっとる鬼切丸ありまっしゃろ。あれとかよりみつはんの刀の童子切安綱と同じような効き目がありまして、人魚族に使っても、普通に鞘から抜かんとどつくだけでも痛み倍増)
(…つまりなんですか、凛ちゃんの組のやくざの人がいらんことした時におせっかんするための道具…)
(そういうことですわ。私ら人魚のもんも鬼さんらと同じで、普通のかたなやったら人を斬るほどに傷を負わせられへんのでね。血の気が多うて先走りよる身内のアホをどつく道具をいくつか元伊勢から預かってますねや)
(あー、うちらの黒グッズと同じ…)ダリアがうなっていますが、確かにクレーゼさまとか初代さま相手にはあれでないとだめですからね。つよい鬼さんたちにも同じようにおせっかんの道具がいるのでしょう。
なにせ、クレーゼさまとあれこれあったあたくし、痛いほどよくわかる話ですから…。
「んでよ、とりあえずアルトさんにダリアさん。ラドゥ厚労部長の方に回したけど、罪人寮と工場の月次報告と要望書…今ここで写し見とく?」
「うん。ちょい見せて」と、ダリアが黒ひげにわたされているたんまつを操作しています。
「えーとアルトさん、報告はともかく要望っすね。重点事項はやっぱり罪人寮の方も人が増えてるから監督騎士の増員希望。それと、修学寮から上がってきてこっちで住んで働く事が予定されてる子供の管理。大人じゃないからどうすんのって話なんで、これは今すぐじゃないですけど遅くとも1年以内には要対策。現時点では勤労年齢児童は修学寮から通わせてますけど、罪人寮の方で預かった方がええのかを含めて検討して欲しいとあります」
「ああ、俺の口から補完しとくと、やっぱり子供は子供だ。いずれは大人になるんだが、現状ではここに住んでる大人の8割は本来の意味での罪人だからな。ガキどもにいらん事を仕込む可能性も考えると、まだお上にとっつかまるような悪さをしてない奴はしてない奴で、悪さしたのとは分けとく方がいいんじゃねぇかとも思うんだわ」黒ひげがかなり真面目な顔をしてもうします。
たしかに、これも黒ひげの言いぶんはまちがってはいないでしょう。あたくしもけいけんがありますし、何よりこれをよくわかってるはずなのがダリア。
「確かに…日本の刑務所でも、収容分類級ってのがあったはずなんですよ、AとかBLとかで分けるやつ。あーこれだこれだ」と、よしこさんが自分の聖環でしらべものをして、わたくしたちに見せてくれます。
なるほど、おとこと女で分ける。それと罪の軽い重い…けいむしょに入れられる長さや、ぜんかものか、はたまたやくざ者かで行くけいむしょを分けるのですね。
「ほうほう。うちらは部屋割りや工場の仕事でこれに近い事やってっけどね。ね、陛下」
「まず人殺しをしたか。それと盗み。まぁ、この辺は罪人の罪環のでーたとやらを見ておすすめの組み合わせをたんまつが教えてくれますので、それほど難しいものではありませぬね」
「殺しにせよ盗みにせよ2回以上捕まったかで決めてるらしいね。最初だけの奴とは扱いを違えろとは騎士の教育の際に教えられたし…ま、うちに来たらあまり関係はなくなっちまうけどさ」
「あたしらですらロロネーとかロッシュみたいなの、下手すりゃ小指の先でチョイなんだもんなぁ。普通の女だった時分じゃ考えられねぇさ」
「犯罪一回目の人と、二回目以降の人は全然違うのよ、扱い。実はあたしがそーなんだけどねー。一度悪い事して捕まらないとなると二回目以降にためらいがなくなります。そして大事なこと。最初に見つかった時点で捕まるか否か。ここで捕まらないとまず確実に犯罪者への道が門を開きます。この辺は海賊さんたちの中にも本当に犯罪者として逃げて来た連中もいれば、他の船での扱いがひどくて逃げて来たのもいるから、誰でも彼でも犯罪者扱いはしてないけどね」
「ええ、ダリア様…ダリアさんのおっしゃる事はようわかります。海賊になる前から悪事をしてきた者と、わらわ達に厄介になるしかなかった者は全く違いますからね」
「ダリアさんには悪いが、ぶっちゃけ悪さして来たやつの方が手癖は悪りぃ。場慣れしてるやつほど、何かとあると犯罪自慢を始めるしな」
(にゃるほど、はんざいに歯止めが効かなくなってるのね)
(ああー、いましたわね。うちの学校でもね、おうちがおかね持ってるだけで、人のものを盗ったり人をなぐるのにためらいがないのが。そういうのが何かしたら、わたくしが探り出してマリアンヌがなぐる役目)
「ええ?あんたらが?」マリアンヌさまとスザンヌさまがうんうん言ってるのですが、かいぞく連中がおどろいていますね。そりゃ、みためはまだまだこどもの部類ですからね、おふたりとも。
「ええとね、くろひげさん…実はマリアンヌは普通の女の子だったんですけど、あたくしの母親は今、ざいむぶちょうのクレーゼでしょう。あたくしをうんだ時は人として暮らせるようにしていたのですけど、力自体はうけついでたんですの。で、母はもともと聖院の金衣…いちばんえらい人でしたから、他の女官にはない力をもっていて、娘がそれを引きつぐのですわ。姉のマリアリーゼとあたくしは当然、その力をひきついでいます。ただ…ひとの世界でその力を使うと大変なことになりますから、わざといろいろできないようにされていたんですよ。でも学校で困った事があったらって、こっそりとはずし方を教わってたりしてまして」ぺろっと舌をだされてますけど、そりゃ、金衣当時のクレーゼさまの力をすべて使えたらとんでもないことになりますね。
「そーそー。で、あたしがクリス・ワーズワースとジーナ・高木のむすめなんです。ですから母親のジーナのせいかくと腕力は受け継いだってわけでぇ」あー…じーなさま、気はみじかいですね。
「とどめ。金衣って、自分の力を他人にかしあたえたりできるんです。ですから、あたくしが本来の力が使えたら、マリアンヌを…そうねぇ、海賊女王さまとアンさんとメアリーさん、三人がかかってきてもたおせるくらいつよくできました。女王さまが千人そつ、アンさんとメアリーさんが百人そつでしょう。マリアンヌを一万人相手できるくらい強くしたら大丈夫ね!」
「ええ、クレーゼ様がそれをできるのはあたくしもされた事があるので知っております。ダリアも経験あるでしょ?」
「そーそー。女官種時代はそれ出来たのよ。今は痴女種として昇格時に限定処理かけて、普段は全力を出せないように出来るからあんまやらなくなったけどね」
「へー…って事は俺より強ぇと…」黒ひげがうーんとうなってますね。そりゃまぁ、こんなちっさい子が指もふれずに黒ひげよりももっと大きいのをふらふらにしてしまうなんて、げんばをみないと信じられないでしょう。
「あと、マリアンヌも痴女宮にいるときだけだけど、あたくしと同じにそろえられていますわよ」
「えええええ」
「いっときますけど、リーゼ姉の産まれた時はもっとすごかったわよ。なんせ本人、見た目赤ちゃん」
「で、誰よりも強いんでしたので…アルトさんは知ってるよね。リーゼ姉が産まれたとき」ええもちろん。よーくよーくよーくぞんじております。
「ふむふむ。お嬢様方、少しお聞きしますわね。えーと、仮にわらわがスザンヌ様を吸うとどうなりましょうや」
「単純に申します。吸いすぎ注意。食べすぎて動けなくなったりくるしくなるのとおなじになります。へたすると死んじゃうらしいので絶対やめてね!」なにかこう、かいぞく女王をおせっきょうしている姿がほんとクレーゼ様みたいで…。
「確かになぁ…力で従えておかないと言う事聞かねぇ奴は多いんだよなぁ…だがなお嬢ちゃんたち、これだけは注意してくれ。相手の面子を立てる事も大事だぜ。女の子は情け容赦なく言うかも知れないけどな、男に説教する際に逃げ道は作っておくんだ。でないとこいつらみたいに苦労するぜ」と、黒ひげがアンやリードのむかしを教えてくれます。
「そーそー。どんなにだらしねー男でも、女に注意されたら反発するとかな」
「だからあたしらを普段は男と思えってやってたんだよ。格好も男と同じにしてさ」
「今は女らしくしていて良いのですよ。そなたらももはや女官。無理に男勝りを演じる必要などないのです。むしろ、ティーチが言うように戦えば勝ち口喧嘩でも負けぬとなれば、表向きは従っても心の中ではどう思うか。得意を伸ばすのと同じで、男の顔も立てなされ」と、かいぞく女王が女王らしくおっさいます。
「実際に女らしくしてねぇと、客ウケが悪くてなぁ…」
「ああ、オリューレ様はまだいいんだが、マリーさんにべらんめぇをやってるのがバレたら…」
「その辺は気楽にやったんさい。あたしもこれだけどね、特に言われなかったよ」ダリアはその辺が上手いですからね。
「…ああそうか、おめーらも女官の時があるんだよな…」
「海賊仲間に笑われるからいやなんだよ…女官服でここの慰安の仕事があるんだからな…」
「アンの言う通り。あれ結構恥ずかしいから騎士服でさせてもらえませんかダリアさん!」
「あー、そういう理由ならいーよ。騎士服着ててもいいようにはしといたげるから」
そうです。このふたりも女官として本宮でせっきゃくのおしごとがあるのですよ…。百人卒ですから割とひんぱんに行く事になりますね。
「でもさー、アルトさんとダリアさんって何だかんだでいいコンビよね」罪人寮からの帰り道でマリアンヌさまから言われます。あ、マリアンヌさまのあたまのてっぺん、大体あたくしの首くらいですね。スザンヌさまも同じくらい。しょうがく六年生にしてはまぁまぁ大きめだそうですけど。
「そうねマリアンヌ。アルトさんはあなたぽじしょんよね」
「うぐぐぐぐぐ、何かこう、ほめられた気がしないのですが…」
「アルトさんと同じと言うのが何かこう…アルトさん、お互いつよく生きようね!」
「妹のわたくしが見てもそう思います。サレルフィール姉様、喋らない方がいいです」
「ナディアフィール。申したい事はわかるのですが気づかい気くばりも大事だと黒ひげがもうしておりましたでしょうに」
「あー、あるとはん怒っとる…ナディアはん。あまり挑発せん方が…」
「もうおそいです。ナディアフィール。前から申したい申したいと思っておりましたが、あなたはひとこと多いのです。ちょっとていぼうに行きましょう」
「ふん、お姉様に遅れは取りませんわよ」
え。
ちょっとおまちください。なんであたくしのがんつふくのいんちゅうが動いているのですか。
「えーとね、アルトさんが万一暴走した時の制御権限、ナディアさんに渡されてますね…」深刻そうな顔でダリアがもうします。いやな予感がするのですが。
(まりあさま。あたくしになんかいらんことしましたか)
(あー…ナディアさんからの強い強い強い要望でな…ダリアに言われるのはまだしもお前に言われんのは我慢ならんと。アルト…おめーも妹相手に大人気ないとこあるだろ…だからおめーら姉妹でやり合う場合はナディアさんに合わせて強制パワーダウンだ。銀衣相当の能力は残ってんだからたまにゃいーだろ。遠慮なく堤防で乳繰り合ってこい。あ、ナディアさん…あそこ使ったら絶対に掃除忘れないでくれな。掃除道具の場所はダリアが知ってるから)
「了解です。あー、学生さんたち。ついでです。堤防堤防って言ってるダムの一番てっぺんの船着場になってるとこ。あそこをどう使うか見るいい機会だから見学していきましょう。この二人なら決着つくまでに30分かからないと思うから。はい元海賊さんたちも来た来た」
「え…なんかまぐわいを見ると言うより、怪獣大決戦を見せられる気がするんだが」
「仕方がないでしょうティーチ。姉妹どんぶりとやらを拝見いたしましょう」
「そーだねー。上級騎士同士のやり合いって滅多に見ねーしなー」
「んだなメアリー。勉強させて頂こうぜ」
「え…私たちも…」
「けんしゅうです。あきらめさない。だいたいあたくしたちが見る必要あるんですかっ」
「まー確かにあたしもスザンヌも、頭じゃ理解はしてんだけどねー、痴女どうしのけんかがナニを使ってナニするかはさー」
「いつかは大人の階段をのぼるのです。見学いたしましょう」
「そうでっせ。いざそうなった時にも慌てんようにしとくのは大事でっせ」
「えええええ、まけたらはじさらしではないですか!」
「堤防とはそう言うところでしょう姉様!ダリアさん!姉が逃げないように転送願います!」
そういうのなら仕方ありません。
せいげんがあるのが痛いですが妹ごときに遅れはとりませんよ。
「堤防って…要するに屋上とか体育館の裏よね…」
「それで堤防堤防ってみんな言ってるのね…」
「あとお仕置き用なんだよ…正直あそこはあまり行きたくねぇんだけどよ…掃除道具にこうあつ洗浄機ってのか、あの黄色で水をえらい勢いで吹き出すやつ。あれを置いてる理由が今からわかると思うぜ…」
「もちろんです。ナディアフィール。あなたのために置かれたとお思いなさい」
「ふふふ姉様、後悔は先に立ちませんことよ。あたくしの足元にひれ伏させて差し上げますわ!」
ええみなさま。
なんだかんだ申し上げて痴女皇国、はなしあいだけでかいけつはしない事もあるのです。
そしてそういう時のためのていぼうです。
みなさまに勝利のほうこくをさせていただくためにもアルトリーネ、がんばってまいります!
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる