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アルトリーネの祟られ屋さん・祇園の夜はええとこだっせ
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えーと、マリアヴェッラです。
こちらの話の続きなんですが、アルトさんが絡むのと…
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R18な話題が出るのでアルトさん枠だそうです。
はい、普通の話じゃないと思われた方…正解でございます…。
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「しかし案の定、ホントにぎりぎりだったな」
「うちの車でもタイヤこすりかけたからな…」
「ところで…社務所というのはどちらに」
「あっこの鳥居くぐって左側…待て」姉が制止する理由。
後から来たおじさん二人。ただ、一人はビシッとした姿ですが、一人はよれよれのくたびれた印象です。
「皇宮警察の八十川です。おかみ様、マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下。何卒よろしくお願いしたいと言伝を預かって参りました。それと…」
「外事課の加藤です。桜田君からは諸々聞かされていますよ。よろしく、皆様方」一礼するおじさんですが、骨と皮だけ…でもありませんが、顔の長い骸骨みたいな印象の人です。ついでに身長、かなり高めですね。
「さて、参りましょうか…の前に、あそこで揉めたり待ってる一団を何とかしましょうか八十川さん。皆様…マリアリーゼ陛下、この場で「普段のお姿」になって頂くことって、可能ですかね?」
「加藤さん…あなたが指揮官なのかい?」
「はてさて、皇宮警察の偉いお方には逆らえませんよ、私ごときが」はっはっはっと笑うおじさんですが、その笑いだけでもかなり不気味です。
「まぁ、いいよ。とりあえず不満たらたらで文句言ってるおねーちゃんたちを帰らせた方がいいって事だな?」私たちの会話を聞いていたらしい、まだ残っている集団が文句を言いそうになりますが、黙ってます。
そりゃそうですよ。後から到着したパトカーから降りて来た、完全武装して短機関銃ぶら下げーの、防弾ベストやプロテクターを着込んだ物騒な人が合計十人以上、私たちを取り囲むように配置されているんですから。
「いいでしょ。おかみ様も協力お願いします。あ、エマ子。目隠し頼むわ」
と、一瞬だけ周りが光に包まれた次の瞬間。
周りにいた私たち以外の全員が目を剥く姿に。いや、痴女皇国以外でこの姿って、流石にあたしも若干は躊躇しますよ?
「うわこれ、がんつ服じゃないですか、しかも白薔薇仕様…」
「ダメかよ。本当は昔、マリーがこれ着て正規の殴り込み部隊を率いるはずだったんだぜ、乳上と二人で」
「その面子だけでねーさんが昔、あの人達に何をさせようとしたかよく分かるのですが」
「おい、わしにはないんかいっ」
「おかみ様はいつもの巫女服でいいでしょう…何でしたら元の姿に戻られますか?」
「そうしたいのは山々じゃがな。んー。茨木!」いきなり出現した久しぶりのプラウファーネさんに皆様びっくりされていますが、まぁ、おかみ様はともかく、プラウファーネさんがいかにもな神職姿なので「急にここが封鎖された理由」に関わりがありそうな一団だと皆様には認識頂けたようです。
「おープラウファーネさんおっひさー。出世したのかよ」ちなみにプラウファーネさん、巫女服姿ですが、袴が紫色ですね。で、白紋。
「ええ、お陰様で…ところでマリア様、おかみ様。あの方々でよろしいので?」と、示す先には、ここで待つと言って聞かない女性陣が数十名。
あたしが見ても覗いてもわかります。割と真剣な目的の人たちですね。縁結びしたい人は…うん、たのきちみたいなタイプ数名。他は全て怨念系です。あまり真剣そうじゃない女性は帰ったか、遠巻きにこちらを見ていますけど。
(何あのHな服装の女の人たち…外人ばっかじゃん)
(でも巫女さんみたいな人もいるよ?)とか小声で囁き合っていますね。
(ねーさんどうしますー?来訪目的告げて、できれば離れて頂いた方がいいんじゃないですかー?)と、半径500メートルくらいの全員に問答無用の無差別な心話をぶちこんでみましょう。やはり皆さんギョッとされますね。
(あほ!いきなりやるな!ま、今からプラウファーネさんが、真剣組の目的に対応してくれるから。ちょっとだけ見てな)
「では…おかみ様。警備の方、ちょっと私とおかみ様で、あの方々に近づきますが、手は触れません。静観願いますよ?」と、毎度毎度美貌のイケメンニューハーフな姿のプラウファーネさんが笑顔でおっしゃいます。
普段はこの人、かなり無表情な方なんですけどね。
(そりゃあ、あそこの人たちは真剣に悩んでおられますからね。まずは安心して頂きませんと)
(まぁ見ておれ。茨木が伊達や酔狂で外道の弟ではないこと、今から見せてくれるぞ)
「さて、お集まりの女性方。皆さんはそれなりに真剣にお願いに来られているのは、私とこちらの上司…そしてあちらの皆様にはよくわかります。詳細は省きますが、私たちは皆さんの心の中を隅々まで見通せるとお考えください。…この神社の由来と、祀られている神様の事は…ある程度はご存知ですね。で、今、中の方…こうです」
瞬間。
その一団の女性全員が恐怖に顔を引きつらせます。そして、遠巻き組も。
「ね…ですので、今から私たちがこうならないように、この場所の周りをお守りします。それと、特別サービスです。この方、中の方の上司でもありますので、今回だけは代わりをしてもらいます。と言ってもややこしいお作法抜き。して欲しい事を心の中でお願いして、一礼して黙ってお帰りなさい。でないと…お分かり頂けますよね?」
(まわりの連中もじゃ。なるべくはなれとれ。素直に帰るやつにはみやげ持たせたるけどな、のこる奴に何が起きたかて、わしはしらん。わかったか)おかみ様も心話で取り巻いてる人にまで言い聞かせてますね。
と、そんな中。
制服姿の四人と若様、登場。箱型の警察車両が駐車場に入ってきましたので、あれで北野から来たのでしょう。なんちゃって。
「あー、皆様。今からちょっと困ったことが起きるかも知れませんので、対策済みのメディアウォッチをお持ちでない民間の方々は離れて頂いた方がいいですよ? 内部データが損傷する危険があります。はいそこで撮っておられる方、正常に再生できるか試してみてください」と、拡声器片手に若様が呼びかけてくれます。
ええ、言うまでもなくエマちゃんの仕業。カメラの撮影機能にことごとく干渉しています。
(はっはっはっ撮影機能が働いているブツには全て干渉中。ついでに撮ってる方の個人情報、こちらに全て丸わかりですからねっ。どこかに上げたり流したりつぶやくの、一切禁止させて頂きますからっ)
「さて、行きましょうか」
「え、若様大丈夫なんですか?」
「ははは、対策は一応してもらってますよ」で、神社入り口を通せんぼして貰ってる警察の方…カラビニエリみたいな重装備の方に道をあけてもらいます。
「あ、八十川さん加藤さん、ちょっと悪いのですが中まで同行願いますよ」
「やれやれ、智秋さんには敵いませんな」
「全くで。…エマニエルさんにお調べ頂きましたが、とりあえず外事の手柄になりそうなの、この周囲にはいないようですわ。ただ…近い将来に刑事事件を起こしそうなのはいるみたいですがね」と、周りを見渡す不気味おじさん。
(要は日本とあまり仲良しじゃないとか、あるいは今の連邦の対NB協調路線に反対したり、はたまた痴女皇国や聖院と良くない付き合い方をお考えの方々がいらっしゃると困りますからね。ただ、直接じゃありませんけど、繋がりそうな方については八十川さんや加藤さんの公務腕章宛に、どこの誰かお伝えしていますよ)なるほどなるほど。さすがはエマちゃん。普段から仕事の手際はこうするように。
(えー!あたし最近真面目にやってまっせかーさま!)はいはい。差し当たって手洗い場とやらに行きますが。
「えーと…で、あれがアレですか、噂のお札ベタベタ貼られたもの…」はいそうです、件のとんでもない姿の石門、画像で見た以上の禍々しさで目に入ってきました。
ああ、もうここでUターンして帰りたくなります。
ローマのカタコンベでもここまで陰鬱な感じではありません。
(うわーきっつー。昔うち来た時よりなんかヤバいふいんき、みなぎっとるがな)
(さすがにこれは…痴女種化して頂いた理由、よくわかりました…)
(これ本当に普通の人には危険すぎますよ…)と、同級生が怯えています。
「全く…祀ってくれとる神職まで祟るやつがあるか。おい崇徳!阿波!わしじゃ!」
(そう騒ぎ立てられますな。阿波、本殿にご案内なさい)
(は。主上。皆様、どうぞお上がり下さいまし)
ええ、全員が一瞬、固まりました。
束帯というのですか。
男性のつける昔の日本の衣装らしい姿のおじさんと、尼さん姿のおば…お姉さん。
現れた二人の顔を見た瞬間に、この世の人ではないと一瞬で知覚できましたから。
能面というお面を見た記憶がありますが、あれです。
少なくともベネチアのカルネヴァーレのような陽気な感じではありません。
このお二方、表情が全くないのです。
ですが、怒気や怨念と言うべきものを周囲に放ちまくっています。
(よっしゃ、とりあえず皆、履物を脱いで上がってやってくれ。ちと狭いが致し方あるまい。…崇徳、白峯のほうがよかったかの?)
(いえいえ、ご所望のものがございます方が、おかみさまには都合がよろしいでしょう。ただ…左様でございますかとお渡しするのもいかがなものかと)
(ま、そうじゃろうな。差し当たって、白湯か茶でももらおうかの)
(ぶぶ漬けならお出し致しまする)この阿波と呼ばれてるお姉さんも大概な方ですよねぇ…。
(阿波内侍。崇徳の愛妾じゃ。元々はここは寺でな。こやつがさぬきに流された際に同行出来なくてな、出家してその寺に入りよったのよ)と、おかみ様解説。
とりあえず本殿とやらに上がらせて頂きます。
姉…かしこまらなくていいんですか。
(本来なら十月親睦会に出た場合のあたしの立ち位置、神宮居住者クラスなんだよ。あ、ベラ子、おめーもだからな?神社には格式があってな、痴女宮は神階なしの本荘って扱いなんだわ。で、崇徳天皇は本来なら白峯神宮って官幣大社に祀られてるんだが、この方はうどん県で暗殺された関係で、もともと金刀比羅宮に祀られてたんだよ。で、明治天皇の即位直前に皇族として祀れという話が進んでて建築されていた白峯神宮に移されたのさ)
(じゃあなんでここに)
(もともと、この安井金刀比羅宮は藤寺ってお寺だったんだよ。で、崇徳天皇…上皇が好んでいた場所だったけど、政争の果てに追放された上皇の崩御を嘆き悲しんだそこのおねーさんが来た関係で、崇徳上皇を慰霊するようになった。そして、明治維新の際に神仏分離って政策を推進した事で神社に変更されたんだ。だから、上皇陛下を公式に慰霊する場所じゃないんだけど、縁が深いにも程があるからお祀りしてると考えときな。言ってみりゃ、そこな上皇陛下の愛人さんが住んでる別宅に入り浸ってるようなもんだよ)
(ものすごく失礼な説明ですがよくわかりました)
(ふむ…初顔じゃな。お主は…そうか、小童の妹者か。ま、朕とはこの世の滅ぶまで、何度も会いたい仲ではなかろうが、とりあえずだな。朕よりも、ここな阿波内侍をよしなに頼む。して小童。正直、朕は讃岐に今すぐ戻るか暴れたいのだが、おかみ様の用向き、そちの頼みであろう。なれば朕の前に来るがよい)
ええ、無表情に言っておられますが、マリア姉と顔を合わせるのが嫌で嫌で仕方ないという空気を周囲に漲らせています。エマちゃんや姉やあたしはいいとして、他の人は大丈夫なんでしょうか…。
(マリアヴェッラ、あたくしがおりますよ)ああ、初代様が青い髪の毛で、すっぽんぽん直前のお姿に。つまり、この上皇陛下様とやら、そこまでする相手なんですね。…おかみ様もいつの間にか元の姿ですし、エマちゃんも羽根出してるし。
…うちの面子、全員やる気満々じゃないですか!
(ベラ子、あたしはやる気ちゃうぞ…)ああ、母様がおられましたね。
「内侍様、陛下。その節はお世話になりまして」と、母様がご挨拶。
(ん?…聖母とやらか…はて、朕に縁が…)
(主上。この方、まえにここにお参りでございます。母者様と弟者様との縁切りを祈願なさいましたので、妾が決済の儀にまわしております。お内侍様、その後は如何でしょうか?)と、阿波内侍のお姉さんに聞かれる母ですがっ。
「まぁ、如何にも噂通りと言うか…そちら様らしい結果でしたねぇ。とりあえずお願いした事は叶いましたので御礼をと。あと、うちの娘どもや提携先が無茶言うてますけど、よろしければ穏便に取り計い下さると助かります」
「ほほ、これはご丁寧に。…まぁ、お宅様の場合、機会がございましたらお話させて頂きますが、この星…と申しますのですか。日の本の理だけで納まらないお方には、良かれ悪かれ私共の描いた絵の如くとは参りませなんで。ご満足頂きましたら何よりでございます」一見、丁寧な挨拶に聞こえますが、一瞬バチバチと火花が飛び交っていたようにも見えました。
(いや、気のせいじゃねーよ。かーさんが地球を離れる類の左遷をされてなきゃ、もっとエグい結果渡す気満々だったって言ってんだぜ。更に、かーさんがあたしを産んだじゃんか。敢えて人扱いすっけど、この二人な、かーさんを祟り殺せなかった事、心底後悔してるよ、今)うげぇ…本当ですね。
(ほほほほほ。さすがに邪魔な童女を一人ならず二人三人とお孕みになられますと。まぁ、ようもお越し下さりました。お内侍様が我らと同格でなくば万難を排し黄泉平坂にお送りして差し上げましてございますが…)
「なぁ、内侍様。讃岐院様」陛下呼称、外しましたね、姉。
「やる気かや?童女風情が小癪な」
「あたしゃ寛大で慈愛に満ちた聖院の路線に回帰してそれなりにやらせて頂いてんですがね。あまり堪忍袋の緒の強度を試されるようなことをして頂きたくはないんですよ。はいベラ子、これ使いな」姉があたしに何やら雑草の束を渡します。渡されましたが。
「それで内侍様と讃岐院様を打ち据えてみな」ふむ。この草束、あれですね。
「ほほ、玉串ならまだしも、そのような雑草ごとき…おのれ貴様、何を使いよった!」
「内侍、何をされた!…ぐ、ぐぉあああ!その草は何じゃ!」あたしが光速でその草束を振って二人を打ち据えた瞬間、めちゃくちゃに苦しみ始めました。確かに、こう使うってのは満更知らないわけじゃなかったんですけど、こうも効くとは。
「一応は讃岐院様の家系直系の子孫に当たる裕仁って陛下がいらっしゃったんですがね。その方曰く、世に雑草などという蔑むべき草はないそうでしてね」
「戯言を抜かしおって!がぁ!」
「ぐぬぅ、おのれ婢女どもがっ!」
「そりゃ苦しかろうさ。あんたらだけがその手の技を使えるわけじゃないんだよ。種明かしをするとさ、ベラ子に使わせたの、茴香」
「マリアリーゼ、確かにマリアヴェッラでなくては使えませんわね、それ…」
「ええ。ベナンダンティ、ご存知ですね…初代様」
「なーるほどー。ベラ子母様なら…お祖母様、マントヴァの生まれですね。フリウーリの血が混ざっていても不思議じゃないっすねーはっはっはー」
「何じゃそのべなん団地とかいうのは。子供が化けて出たりだんち群が走ってきそうなんじゃが」
「おかみ様、黒いユリの咲く団地じゃないんですから…イタリアのベネチア州にね、農家の収穫を台無しにする魔女の一団と夜中に戦う風習がありましてね。人側の戦士をベナンダンティ、魔女の集団をマランダンティって称してたんですよ。で、もろこしの束振り回して来る魔女をしばき倒す武器がこのウイキョウの束って具合でしてね。普通の人間なら無理難題ですけど、MIDI化されたベラ子なら、魔女を打ち倒す効果を実現してしまえるんですよ」はっはっはと笑う姉。
「あたしら人間舐めんなよ。こう見えてもあんたらと同じ、もとは人間なんだからな。感情を押し殺した振りしても無駄さ。あんたらの呪うとか祟るとか、人間時代をもろに引きずってる類の怨念ならこちらも楽なもんなんだよ。で…アルトさん!やっておしまいなさい!」
「えーなんであたくしがー。かいぞくの時とおなじで、最近はばっちいのおおくていやなのですがっ」
「ぬぐうっ、穢れ扱いしよるとは不敬にもほどがあるぞよ!この腐れ婢女どもがぁっ」
「ぐふぅ!おのれ!身体さえ動けばここな腐れ婢女風情、祟り殺してくれようものを!」
「祟れば?」
「へ?」
「な、何を…」
「だから祟ってみろって言ってんの。あたしの旦那役なんだから、このアルト。で、縁切り成功したら、あんたらの拘束を解いてやるし、あたしも祟っていーよ。嘘だと思うならやったんさい」と、二人の歩く怨念を煽りまくってますが、いいんですか。何ならあたしが祟られてみますが。
この方々の実力、ういきょうでしばいた瞬間に理解しましたし、あたし一人でもバベーネです。
「ふっふっふっベラ子くん、久々にアルト節をさせてあげようというあたしの内助の功がわからないかねっ」
(心配すんな。アルトが伊達にアルトじゃないことがわかるよ)本当でしょうね。
「その吐いた一言、もはや無しには出来ぬ筋合いぞえ。後悔するが良いわ!…え?待ちやれお主ら!恋文とか睦言とか交わす仲ではないのか!」
「だからアルトは旦那じゃなくて旦那役なの。都合であたしらくっついてるだけなんだから。ほれ、讃岐院様にも他の女がいるのと同じ理屈じゃねぇか」
「き、貴様、謀りよったな!ぐぬぅっ!」
「で、アルトに入ろうとしたのが運の尽きだよ、内侍様。はい、かーさんー出番だよー。あんたもこの二人にしてやられたんだから、復讐する権利あるよ。だってこの人たちの理屈ならさ、恨んで呪って祟っていいわけじゃん。あたしらが逆に祟り返してもいいですよね、おかみ様」
「まりやー、確かに理屈は通っとるが、仮にも神やぞ、こやつらも…。全く、おのれも婢女のむすめやな…無茶する血筋なんかのう。まあええ、ためしてみい」
「で、許可が出たので…アルトくん。いつもの調子でうちの母親を調整して差し上げなさい」え。何をやらせるのですか姉!
「待てこらマリ公!この場でギャラリー何人おるんじゃ!やめさせんかい!」
「はっはっはっ青姦の代わりだよ。ハプニングバーに連れ込まれたと思うがよいわ!あたしもあの懲罰服で懲罰を受けた恥辱汚辱屈辱を甘んじてるんだからこれくらい我慢しやがれっ」
「…なあ童女…朕が言うのも何じゃが…親に恨みを買うのはやめた方がよいのでは…」
「こないだから色々ありましてね。八百萬神族とは基本、親しくお付き合いさせて頂いてますから内政干渉とか野暮は言いませんけど、うちの母親にはこれでもある意味ご褒美なんですからお構いなく。何でしたら怨念をお持ちいたしますが。ほれアルト、あたしが自由を奪っている間に完遂するのだっ」
「朕の家でも無茶な育て方はしておったが…」ええ、全員が呆れています。姉とアルトさん以外は。
「ジーナさま。ダリアかマリーにていぼうに連れて行かれるよりはマシとおかんがえください。それにさいきんは本当にあたくしと疎遠でしたからね! にがしませんっ!」
「ぎゃああああ!やめアルトまじやめてっ!」
「ふっふっふっ、アルトが空気を絶妙に読まない女なのをかーさんが一番よく知っているだろ!更にかーさんの快感は阿波内侍様に三千倍でお返しするのだよ!」
「あー、ひさしぶりのジーナさまのおけつでございます!」
「ぎひぃいいい!主上!申し訳ございませぬ!指一本触れておられぬがせめてもの…」あの…神様に泡とか潮、吹かせていいもんでしょうか…。着衣のままなので直接に危ない場所が見えないのはせめてもの救いですが。
「安心しやがれ。実は院様もアルトに繋いでるんだよ。はっはっはっ」痴女皇国開闢当時のノリがよくわかる姉に不安しか覚えません。やはりNBには母様を輸出すべきである。あたしにはそう強く思えます!
「ぬぐう!おのれ!不敬にも程があるわ!…おかみ様!此奴らの神をも恐れぬ狼藉!朕は許せ…」
(あのなぁ、崇徳…確かに、お前らが理不尽な願掛けの日々に不満があったのは朕も理解しておるわ。しかし、おのれらは民草を如何に扱っておったのじゃ。おもての婢女が何万何億、理不尽な結果で縁結び縁切りの恨みに憑かれて狂い死んでも眉ひとつ動かぬと申しておったであろう。おのれらが寺におった際の守役、ぱんちにいわせれば因果応報というやつではないのか。それに、まりやを恨む間にな…かとう)
「は。護法!」なんか小鬼のような感じの怪物が滑車を動かして引き寄せてるものがありますね。
「あー、それで加藤さんなのか…」姉、何納得してんですか。
(はっは。この加藤は鬼の孫子でな。普段は封じておるが、護法童子という小鬼を使えるんじゃよ)で、引き寄せられた、人の頭ほどの黒光りする塊を…。
「しかし、百年かからんとは…ほんに邪念雑念持ちが増えたんかのう。縁結びにしても生臭い願いが多々見受けられるようじゃ。崇徳…お主が素直にしておれば朕もここまではやらぬ。それに、朕がこの婢女を気に入っとる理由、ぬしや阿波も周知であろうが?」ああ、ジーナ母様がおかみ様をヒィヒィ言わせてるあれですね。あれ。あれ。
「べらこ。何度も言わんでよい。あと今で百戦二十勝じゃ。引き分けになるまでやめんからな」
「最低な戦いですね…」
「婢女がきゃんといわんからじゃっ。まぁ、我らが我が儘なのは仕方なしとしても…崇徳、阿波、おのれらも大概根に持ちすぎじゃ」
「まーまー、崇徳院様…あたしも何度か反乱起こされたし、今も、割と近しい場所に二人ほど隙があれば寝首掻きそうなの飼ってますけどね」ああ、うちの叔父と美男公ですね。どちらも、そうは見えませんが大概な野心家ですから。
「でもね院様。まず、国家って税収基準で成り立ってるじゃないですか。そちら様の時代で申し上げますと租庸調。これを安定させるためにはまず、労働力確保と農業他の食料生産技術の組織化近代化が必要不可欠なんですよ。つまり民草の生活安定と教養。それから衛生管理ですね。それをやらせるためには愚民のまま据え置いてちゃダメなんです。そちらに願掛けに来てる女の子達の程度と、ここの中にいてる女の子四人、頭の中を比べてみてくださいよ。今や世の中は、畑や田んぼから人が取れる時代じゃないんですから、恨みでご飯食べるだけじゃなくて、ここの神社の神職の方針にも協力したげましょうよ。少しでも信者増やした方が、おたく様が溜めたがってるものも結果的に溜まると思うのですがね」
「しかし…毎回毎回これを持ち去られては…」
「それは官幣大社に祀られてるのに義務を果たしてないからです。十月懇親会にもきちんと出席してあたしから逃げない。それと神階に応じた祈念結晶を上貢頂くこと。これしてたら他の神様も崇徳院様や阿波内侍様だけ不公平とか言いませんって」えー。仕事サボってたんですか…。ならダメじゃないですか!イタリア人でも近年は真面目に仕事しますよ!…わりと。
「一応祀られてるんですからお仕事してください。そこの茨木さんでも長年うちで貢献してくれた評価が、その袴に出てるじゃないですか。過去の事は…ご存知でしょ?」
「なんか…一気に崇徳院様の株がだだっと降下した気が…」
「ええ。はっきり言いますと、蝋燭の激しいチャートを見たと言いますか」
「うう、何か昔の上司を見るような気がする…あのドイツ人のおっさんとかポルトガルのおっさんとか…」
「はい。あわぶろのおかみさまですか。だんなさまにかまいすぎです。あまやかすからこうなるのです。じたくがべつにあるならちゃんとお家にかえしてあげてください。どこかにいりびたる人にろくなおとなはいませんよ。わたくしの純潔をうばいくさりやがったあのへんたい領主とか!」
「ひ、ひどい言われよう…貴女様に人の心はないのですか!」
「あるからもうしておるのです。これが痴女皇国ですと、何か言う前にまず、これかこれです。おせっきょうはそのあとなのです!」アルトさん、そのちんぽ剣と股間のそれが正義な人なんですか…。
「あー、アルト君、だいぶ俺の頭の中覗いてたからなー…」
「だいたい痴女皇国が脳筋なのって、絶対になおしちゃんの影響大だと思うよ…あんた未だに部隊長にたしなめられるくらいバキバキに帝国海軍人脳でしょ?」
「陸よりはマシだ!あと扶桑艦内の博徒な下士官連中みたく新兵をカタに嵌めるような兵隊やくざなことはしてないぞ俺。あれが沈んだ時、隊内どころかあちこちで、ありゃ天罰だってもっぱらの噂だったからなぁ…」
「何じゃ、さぶらいもおるのか…」
「上皇陛下、小官も多少は平安時代について学習させて頂きましたが、確かに当時は反乱やむなしとは申せ、千三百年はかれこれ経過しております故、お平かになられましても咎める者はおりますまい。それに、もっと反乱に熱心な方も後にいらっしゃいましたが、あの方よりは真っ当な理由かと不肖この菅野、教えられております。我ら陛下の赤子、天孫の御霊前に於きましては敬意をと刷り込まれております故、なるたけ尊敬を集める振る舞いを頂きますと…わたくしも今の連中に説教ぶちかますのが楽になるであります!特にマリアリーゼ陛下はともかく、実母のおばはんとか!」
「…あいわかった…精進は致す故、必ずかの婢女一族について手綱を引いてたもれ…さすれば朕も加護を約束しようぞ…」
「なに約束しとるんじゃこの腐れ破壊王!」
「やかましいおばはん!アルト君に聞いたが最近はめちゃくちゃたるんでるらしいじゃねぇか!焼き鳥製造機か人殺し長屋に1ヶ月くらい乗ってくるか?」
「うう、直にまで言われた…」
「諦めろかーさん。菅野さんを引っ張って来たのが運の尽きだ。菅野さんの帝国軍人脳は多分、そこの上皇陛下の改心くらい難易度が高い作業だからな…」
「つまり、治せますけど特徴も喪失します。上皇陛下と阿波内侍様の祟り気質も、日本の現状を鑑みますと治療を試行しない方が世のためになると判断いたしますが、おかみ様」
「ふじんの言う通りじゃな。今回はそちの怨恨についてあまりとやかくは申さぬ。ただ…仕事はしてくれ。何も自分の血で経典書かなくても良いから、白峯の方を疎かにせんでくれよ。頼むぞ」
「御意。従いたくはございませんが、力比べでは敵わぬのも解り候…勤めは致しますので、なにとぞ婢女の国の者だけはここに連れて来てくださるな…」
「そちの働き次第ぞ」
「えー、うち、これ貼りたかったんやけど…」
「なんや婢女。なになに…不肖の長女マリアリーゼと生意気な教え子菅野直と縁切りさせて下さい? 内侍…とりあえず渡すぞ」
「どさくさまぎれに何書いてやがるババァ!ちょっと待てや!」
「おばはんてめぇ何してやがる!」
ところが、おかみ様から貼り紙を受け取った内侍様。くしゃくしゃにして手から火を出して燃やしておしまいに。
「反故にさせて頂きまする。婢女様のお願いは我らの手に余ります故、お家や身内のあらそいはそちらで采配下さいまし。…ええ、この際ですから皆様にも。今後は婢女様のお国の方の願い事、国が滅ぶまで当所で扱いませぬ故、よそで願うて下さりませ!…あると様は密かにお迎え致しますが…ぼそぼそ」無表情は維持しておられますが、めちゃくちゃ怒ってるのはよくわかります。
「何じゃそれは!神様が助平は所望するわ、挙句願掛けの選り好みしてええのですか!」
「私共は理不尽で構わぬのです!それにあんな辱めを受けてはいそうですかと願掛けを受け付けられましょうや!」
「こればかりは阿波内侍様が正しいと思います、母様…」むぐむぐもがもが喚く母親を羽交い締めにして黙らせます。流石にこれ以上口プロレスを重ねて互いに恨み恨まれもよくはないと思いますから、ここは皇帝として敢えて制止させて頂きます。ついでに乳揉んどいたろ。
「まぁそうじゃな、内侍…朕が婢女に事あらばいくさを挑む理由、わかったか」
「この身で承知を致しました。次になされる時は必ずお呼びを。必ずや祟ります!いえ、崩御するほどに気を遣って頂きます!」
「やり甲斐が出来て何よりじゃ…では宜しくな」
はい、見送りもありませんでした。死ぬほどムカツいておられるのはよくわかりましたから。とりあえず疲れた憑かれたと騒ぎながら車に戻りますとですね。
「何やねんこの鳩の糞は!ぎゃああああ!ガラスルーフにまで爆撃がーっ!」
「エマ子!堤防備品にしてたケ◯ヒャー、テンプレス2世の清掃用具倉庫かどこかに入れてただろ!あれ引き寄せてくれ!パトカーまで片端からフンまみれにされてる!」
「乱暴ルギーニにクリスタルコーティングしておいてよかったと思える一瞬…」
「とりあえずあたしが水で流します!」
「…なんちゅう陰険な嫌がらせをしよるのか…婢女、お前らを祟りとうても祟れぬから嫌がらせしたんじゃろうな…ん?べらこ、何をしやる…」
ええ。身体が勝手に動きました。
一瞬でさっきの本殿に移動。
神域検知モードにして入り口で塩撒いてるお二方の頭、はりせんでしばかせて頂きます。
「痛いではないか!」
「あれくらい笑って許されよ!」
「あきません!あれ、赤いのはあたしの車なんですよ? 皇帝歳費貯めて姉からも支援してもらって買ったんですから!」ついでにトラクターも買わされたせいで支出がかさんだのは内緒で。それなりにお金使ったのは事実ですからねっ。
「やるなら白いのだけにしといて下さい!あと、はりせんで殴ったのも聖母の慈悲ですよ…ムチに変えてやり直しましょうか?」
ええ、流石にあの乱暴ルギーニを鳩フンだらけにされて黙ってるほど、あたしも人間というか痴女ができていません。怨恨は勝手ですが、実行された場合は血の掟をもって償わせますよ。
「とにかく、祟るのは結構ですけど相手間違わないでください。重ねて言いますけど、あたしは手荒なことが嫌いだから手加減してるんですからね?」確かにあたしも理不尽かも知れません。ですが、嫌がらせをされたり面従腹背を実行されたら罰を与えてもいいと思うんです。
そこらの鳩全部シメて境内に放り込んだりするようなマフィア的大人げない行為は祖国のイメージダウンになるからやめておきますが、次やったらゴッドファーザーのテーマを流しながら「あたしは平和が大好きだ」と言いつつバット片手に訪問させて頂きますからね。
…アルカトラズ刑務所や祟りが怖くては痴女皇国皇帝が務まらないと思い知りましたから!
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すとく「頼むからもう金輪際来んといてくれ。真剣に。いや、白峯にも来んでいいから」
マリア「おかみ様次第です。今回、本編の通りであたしらも陛下に用事がありましたけど、おかみ様はおかみ様で陛下や内侍様にも言いたい事色々溜めてらしたでしょ? お願いですから、互いにこじらせる前に十月の出雲でちゃんと解消しといて下さいよ…」
ないじ「童女様も酷すぎますえ!乳繰り合うなら繰り合うで、場所と刻をでございますね…」
マリア「おかみ様に依頼して下さい。痴女皇国は貴賓利用者を歓迎しております。…アルトでしたらね、一晩好きにして頂く値段、そうですね…おまけしてだいたいこれくらいで如何でしょうか」
ないじ「もう少し負かりませぬか」
アルト「よめがぜげん…というかあたくしをかしだして商売しようとしております」
すとく「先程ああは申したが…あると殿。悪妻と縁切りをお考えならば是非にお越しなされよ。朕も内侍も歓待致す」
マリア「ううううう、せっかくのビジネスチャンスを!」
おかみ「そういううりこみは出雲でやれ。平等に世話してやるならわしも口利いたるわい。…あとな、あると…おまえ、来てかめへんぞ。おまえならもう資格あるわ」
アルト「なにかこう、剣のわざ以外でおよばれされた気がいたします」
マリア「たのきちと同じ理由だな。つまりイタリア夜の爛れ会、秋の出雲で夜の運動会版参加要請だ」
ないじ「童女様。そなたの母様、必ずや出雲にお呼び立てなさいますよう切にお願い致します。さすればお国の方の当社出禁、解くにやぶさかではございません」
マリア「あー、あのおばはん一人差し出して話がすむなら、ぜひぜひ積極的に協力させて下さい。少しは痛い目見させた方が薬になりますから」
おかみ「うむ。内侍、そなたもさんかせい。あの婢女風情にでかい顔させるのは我らのこけんに関わる。かならずや今年はあへがおだぶぴーを決めさせてやるのや。よいなっ」
ないじ「ははぁっ。このうらみはらさでおくべきかあっ」
すとく(なぁ…童女…阿波、何やらお前らに染まってはおらぬか…)
マリア(ですから、陛下のそばにいるだけで弱ければ祟られるのと同じなんですよ。何の亀頭、いや祈祷もなくわたしら痴女種に近づいたら普通のちんちんで満足出来なくなるんですよ…)
ベラ子(陛下…エマ子が入れ物作りますから、いっそご夫婦で痴女宮来られませんか? 値段は勉強させて頂きましてだいたいこれくらいで)
すとく(むぅ、もう少し何とかならぬか、最近は景気のせいで賽銭の集まりが)
マリア「ちなみにあたしが通学で使ってた電車の会社、最初に生駒山に穴を掘った際に予想外に増えた工事費用で首が回らなくなり、生駒山にある宝山寺に泣きついたところ、事情を聞いた住職が快くお賽銭を貸し付けたので首がつながった過去があるのは本当だよっ」
ないじ「すけべいな濡れごとを司る象様をお祀りですから、ご縁以前にむつみ事の願掛けにはそちらもどうぞ。あと石切神社はうちの商売敵です。縁切りをお考えの方、是々非々にも信頼と実績の崇徳じるしの弊社にお越し下さいまし。その縁、必ずや断ち切って差し上げまする」
マリア「まぁ、京◯四条からも近いし祇園のそばだから、とりあえずご挨拶みたいな感じで参拝してあげてください。よほどの事がなければ24時間開いてるはずですので、敬って頂きますと喜ばれるかと」
すとく「ただ、おなご数名で来て騒ぐ、これだけはやめてくれ。ただでも疫病が流行っておるのだから、静かに参って下さると内侍の仕事もはかどるからの」
ないじ「とにかくうちの陛下、豪快な仕事を好みますので、他所様に差し障りがないように、札に書かれる願掛けの文面はよう吟味してくださりませ。何とぞよろしくお願いいたしまする」
全員「安井金刀比羅宮に限りませんが、神社仏閣にはお作法を守ってお参り下さいませ」
2021.9.10追記
べらこ「えー、この話の続きですが、R15版の方に書かれているそうです」
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/47/
マリア「表現的に未成年に見せてよいのかという気がすんだけどな」
ジーナ「それ以前に子供が食べていいもんやないやろ、あれ…酒が必要な部類の食べ物やぞ…」
えまこ「何を食べに行ったのかは向こうでわかりますよ」
マリア「…あれさぁ、値段も未成年お断りだろ…2021年の時点でもお一人様三万円近くは見といた方がいいぞ…」
べらこ「ちなみに天の声の周囲でも二人くらいしかあそこで食べた人、いないそうです」
マリア「一心寺のそばにある料亭…いつぞやの外相会談の宴席会場になったところもたいがい安い店じゃないけどさ、あそこのざっと二倍は取られるからなぁ」
ないじ「それと皆様、大事な事をお忘れですえ。あそこで食事を呼ばれますとな、力が漲って来る気がするとか、自信がつきますよ女としてのという効能がございますことを!」
べらこ「内侍様があたしの股間を見る目が真剣に怖いです!」
ないじ「にがしまへんえ。ほっほっほっ」
こちらの話の続きなんですが、アルトさんが絡むのと…
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/46/
R18な話題が出るのでアルトさん枠だそうです。
はい、普通の話じゃないと思われた方…正解でございます…。
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「しかし案の定、ホントにぎりぎりだったな」
「うちの車でもタイヤこすりかけたからな…」
「ところで…社務所というのはどちらに」
「あっこの鳥居くぐって左側…待て」姉が制止する理由。
後から来たおじさん二人。ただ、一人はビシッとした姿ですが、一人はよれよれのくたびれた印象です。
「皇宮警察の八十川です。おかみ様、マリアリーゼ陛下、マリアヴェッラ陛下。何卒よろしくお願いしたいと言伝を預かって参りました。それと…」
「外事課の加藤です。桜田君からは諸々聞かされていますよ。よろしく、皆様方」一礼するおじさんですが、骨と皮だけ…でもありませんが、顔の長い骸骨みたいな印象の人です。ついでに身長、かなり高めですね。
「さて、参りましょうか…の前に、あそこで揉めたり待ってる一団を何とかしましょうか八十川さん。皆様…マリアリーゼ陛下、この場で「普段のお姿」になって頂くことって、可能ですかね?」
「加藤さん…あなたが指揮官なのかい?」
「はてさて、皇宮警察の偉いお方には逆らえませんよ、私ごときが」はっはっはっと笑うおじさんですが、その笑いだけでもかなり不気味です。
「まぁ、いいよ。とりあえず不満たらたらで文句言ってるおねーちゃんたちを帰らせた方がいいって事だな?」私たちの会話を聞いていたらしい、まだ残っている集団が文句を言いそうになりますが、黙ってます。
そりゃそうですよ。後から到着したパトカーから降りて来た、完全武装して短機関銃ぶら下げーの、防弾ベストやプロテクターを着込んだ物騒な人が合計十人以上、私たちを取り囲むように配置されているんですから。
「いいでしょ。おかみ様も協力お願いします。あ、エマ子。目隠し頼むわ」
と、一瞬だけ周りが光に包まれた次の瞬間。
周りにいた私たち以外の全員が目を剥く姿に。いや、痴女皇国以外でこの姿って、流石にあたしも若干は躊躇しますよ?
「うわこれ、がんつ服じゃないですか、しかも白薔薇仕様…」
「ダメかよ。本当は昔、マリーがこれ着て正規の殴り込み部隊を率いるはずだったんだぜ、乳上と二人で」
「その面子だけでねーさんが昔、あの人達に何をさせようとしたかよく分かるのですが」
「おい、わしにはないんかいっ」
「おかみ様はいつもの巫女服でいいでしょう…何でしたら元の姿に戻られますか?」
「そうしたいのは山々じゃがな。んー。茨木!」いきなり出現した久しぶりのプラウファーネさんに皆様びっくりされていますが、まぁ、おかみ様はともかく、プラウファーネさんがいかにもな神職姿なので「急にここが封鎖された理由」に関わりがありそうな一団だと皆様には認識頂けたようです。
「おープラウファーネさんおっひさー。出世したのかよ」ちなみにプラウファーネさん、巫女服姿ですが、袴が紫色ですね。で、白紋。
「ええ、お陰様で…ところでマリア様、おかみ様。あの方々でよろしいので?」と、示す先には、ここで待つと言って聞かない女性陣が数十名。
あたしが見ても覗いてもわかります。割と真剣な目的の人たちですね。縁結びしたい人は…うん、たのきちみたいなタイプ数名。他は全て怨念系です。あまり真剣そうじゃない女性は帰ったか、遠巻きにこちらを見ていますけど。
(何あのHな服装の女の人たち…外人ばっかじゃん)
(でも巫女さんみたいな人もいるよ?)とか小声で囁き合っていますね。
(ねーさんどうしますー?来訪目的告げて、できれば離れて頂いた方がいいんじゃないですかー?)と、半径500メートルくらいの全員に問答無用の無差別な心話をぶちこんでみましょう。やはり皆さんギョッとされますね。
(あほ!いきなりやるな!ま、今からプラウファーネさんが、真剣組の目的に対応してくれるから。ちょっとだけ見てな)
「では…おかみ様。警備の方、ちょっと私とおかみ様で、あの方々に近づきますが、手は触れません。静観願いますよ?」と、毎度毎度美貌のイケメンニューハーフな姿のプラウファーネさんが笑顔でおっしゃいます。
普段はこの人、かなり無表情な方なんですけどね。
(そりゃあ、あそこの人たちは真剣に悩んでおられますからね。まずは安心して頂きませんと)
(まぁ見ておれ。茨木が伊達や酔狂で外道の弟ではないこと、今から見せてくれるぞ)
「さて、お集まりの女性方。皆さんはそれなりに真剣にお願いに来られているのは、私とこちらの上司…そしてあちらの皆様にはよくわかります。詳細は省きますが、私たちは皆さんの心の中を隅々まで見通せるとお考えください。…この神社の由来と、祀られている神様の事は…ある程度はご存知ですね。で、今、中の方…こうです」
瞬間。
その一団の女性全員が恐怖に顔を引きつらせます。そして、遠巻き組も。
「ね…ですので、今から私たちがこうならないように、この場所の周りをお守りします。それと、特別サービスです。この方、中の方の上司でもありますので、今回だけは代わりをしてもらいます。と言ってもややこしいお作法抜き。して欲しい事を心の中でお願いして、一礼して黙ってお帰りなさい。でないと…お分かり頂けますよね?」
(まわりの連中もじゃ。なるべくはなれとれ。素直に帰るやつにはみやげ持たせたるけどな、のこる奴に何が起きたかて、わしはしらん。わかったか)おかみ様も心話で取り巻いてる人にまで言い聞かせてますね。
と、そんな中。
制服姿の四人と若様、登場。箱型の警察車両が駐車場に入ってきましたので、あれで北野から来たのでしょう。なんちゃって。
「あー、皆様。今からちょっと困ったことが起きるかも知れませんので、対策済みのメディアウォッチをお持ちでない民間の方々は離れて頂いた方がいいですよ? 内部データが損傷する危険があります。はいそこで撮っておられる方、正常に再生できるか試してみてください」と、拡声器片手に若様が呼びかけてくれます。
ええ、言うまでもなくエマちゃんの仕業。カメラの撮影機能にことごとく干渉しています。
(はっはっはっ撮影機能が働いているブツには全て干渉中。ついでに撮ってる方の個人情報、こちらに全て丸わかりですからねっ。どこかに上げたり流したりつぶやくの、一切禁止させて頂きますからっ)
「さて、行きましょうか」
「え、若様大丈夫なんですか?」
「ははは、対策は一応してもらってますよ」で、神社入り口を通せんぼして貰ってる警察の方…カラビニエリみたいな重装備の方に道をあけてもらいます。
「あ、八十川さん加藤さん、ちょっと悪いのですが中まで同行願いますよ」
「やれやれ、智秋さんには敵いませんな」
「全くで。…エマニエルさんにお調べ頂きましたが、とりあえず外事の手柄になりそうなの、この周囲にはいないようですわ。ただ…近い将来に刑事事件を起こしそうなのはいるみたいですがね」と、周りを見渡す不気味おじさん。
(要は日本とあまり仲良しじゃないとか、あるいは今の連邦の対NB協調路線に反対したり、はたまた痴女皇国や聖院と良くない付き合い方をお考えの方々がいらっしゃると困りますからね。ただ、直接じゃありませんけど、繋がりそうな方については八十川さんや加藤さんの公務腕章宛に、どこの誰かお伝えしていますよ)なるほどなるほど。さすがはエマちゃん。普段から仕事の手際はこうするように。
(えー!あたし最近真面目にやってまっせかーさま!)はいはい。差し当たって手洗い場とやらに行きますが。
「えーと…で、あれがアレですか、噂のお札ベタベタ貼られたもの…」はいそうです、件のとんでもない姿の石門、画像で見た以上の禍々しさで目に入ってきました。
ああ、もうここでUターンして帰りたくなります。
ローマのカタコンベでもここまで陰鬱な感じではありません。
(うわーきっつー。昔うち来た時よりなんかヤバいふいんき、みなぎっとるがな)
(さすがにこれは…痴女種化して頂いた理由、よくわかりました…)
(これ本当に普通の人には危険すぎますよ…)と、同級生が怯えています。
「全く…祀ってくれとる神職まで祟るやつがあるか。おい崇徳!阿波!わしじゃ!」
(そう騒ぎ立てられますな。阿波、本殿にご案内なさい)
(は。主上。皆様、どうぞお上がり下さいまし)
ええ、全員が一瞬、固まりました。
束帯というのですか。
男性のつける昔の日本の衣装らしい姿のおじさんと、尼さん姿のおば…お姉さん。
現れた二人の顔を見た瞬間に、この世の人ではないと一瞬で知覚できましたから。
能面というお面を見た記憶がありますが、あれです。
少なくともベネチアのカルネヴァーレのような陽気な感じではありません。
このお二方、表情が全くないのです。
ですが、怒気や怨念と言うべきものを周囲に放ちまくっています。
(よっしゃ、とりあえず皆、履物を脱いで上がってやってくれ。ちと狭いが致し方あるまい。…崇徳、白峯のほうがよかったかの?)
(いえいえ、ご所望のものがございます方が、おかみさまには都合がよろしいでしょう。ただ…左様でございますかとお渡しするのもいかがなものかと)
(ま、そうじゃろうな。差し当たって、白湯か茶でももらおうかの)
(ぶぶ漬けならお出し致しまする)この阿波と呼ばれてるお姉さんも大概な方ですよねぇ…。
(阿波内侍。崇徳の愛妾じゃ。元々はここは寺でな。こやつがさぬきに流された際に同行出来なくてな、出家してその寺に入りよったのよ)と、おかみ様解説。
とりあえず本殿とやらに上がらせて頂きます。
姉…かしこまらなくていいんですか。
(本来なら十月親睦会に出た場合のあたしの立ち位置、神宮居住者クラスなんだよ。あ、ベラ子、おめーもだからな?神社には格式があってな、痴女宮は神階なしの本荘って扱いなんだわ。で、崇徳天皇は本来なら白峯神宮って官幣大社に祀られてるんだが、この方はうどん県で暗殺された関係で、もともと金刀比羅宮に祀られてたんだよ。で、明治天皇の即位直前に皇族として祀れという話が進んでて建築されていた白峯神宮に移されたのさ)
(じゃあなんでここに)
(もともと、この安井金刀比羅宮は藤寺ってお寺だったんだよ。で、崇徳天皇…上皇が好んでいた場所だったけど、政争の果てに追放された上皇の崩御を嘆き悲しんだそこのおねーさんが来た関係で、崇徳上皇を慰霊するようになった。そして、明治維新の際に神仏分離って政策を推進した事で神社に変更されたんだ。だから、上皇陛下を公式に慰霊する場所じゃないんだけど、縁が深いにも程があるからお祀りしてると考えときな。言ってみりゃ、そこな上皇陛下の愛人さんが住んでる別宅に入り浸ってるようなもんだよ)
(ものすごく失礼な説明ですがよくわかりました)
(ふむ…初顔じゃな。お主は…そうか、小童の妹者か。ま、朕とはこの世の滅ぶまで、何度も会いたい仲ではなかろうが、とりあえずだな。朕よりも、ここな阿波内侍をよしなに頼む。して小童。正直、朕は讃岐に今すぐ戻るか暴れたいのだが、おかみ様の用向き、そちの頼みであろう。なれば朕の前に来るがよい)
ええ、無表情に言っておられますが、マリア姉と顔を合わせるのが嫌で嫌で仕方ないという空気を周囲に漲らせています。エマちゃんや姉やあたしはいいとして、他の人は大丈夫なんでしょうか…。
(マリアヴェッラ、あたくしがおりますよ)ああ、初代様が青い髪の毛で、すっぽんぽん直前のお姿に。つまり、この上皇陛下様とやら、そこまでする相手なんですね。…おかみ様もいつの間にか元の姿ですし、エマちゃんも羽根出してるし。
…うちの面子、全員やる気満々じゃないですか!
(ベラ子、あたしはやる気ちゃうぞ…)ああ、母様がおられましたね。
「内侍様、陛下。その節はお世話になりまして」と、母様がご挨拶。
(ん?…聖母とやらか…はて、朕に縁が…)
(主上。この方、まえにここにお参りでございます。母者様と弟者様との縁切りを祈願なさいましたので、妾が決済の儀にまわしております。お内侍様、その後は如何でしょうか?)と、阿波内侍のお姉さんに聞かれる母ですがっ。
「まぁ、如何にも噂通りと言うか…そちら様らしい結果でしたねぇ。とりあえずお願いした事は叶いましたので御礼をと。あと、うちの娘どもや提携先が無茶言うてますけど、よろしければ穏便に取り計い下さると助かります」
「ほほ、これはご丁寧に。…まぁ、お宅様の場合、機会がございましたらお話させて頂きますが、この星…と申しますのですか。日の本の理だけで納まらないお方には、良かれ悪かれ私共の描いた絵の如くとは参りませなんで。ご満足頂きましたら何よりでございます」一見、丁寧な挨拶に聞こえますが、一瞬バチバチと火花が飛び交っていたようにも見えました。
(いや、気のせいじゃねーよ。かーさんが地球を離れる類の左遷をされてなきゃ、もっとエグい結果渡す気満々だったって言ってんだぜ。更に、かーさんがあたしを産んだじゃんか。敢えて人扱いすっけど、この二人な、かーさんを祟り殺せなかった事、心底後悔してるよ、今)うげぇ…本当ですね。
(ほほほほほ。さすがに邪魔な童女を一人ならず二人三人とお孕みになられますと。まぁ、ようもお越し下さりました。お内侍様が我らと同格でなくば万難を排し黄泉平坂にお送りして差し上げましてございますが…)
「なぁ、内侍様。讃岐院様」陛下呼称、外しましたね、姉。
「やる気かや?童女風情が小癪な」
「あたしゃ寛大で慈愛に満ちた聖院の路線に回帰してそれなりにやらせて頂いてんですがね。あまり堪忍袋の緒の強度を試されるようなことをして頂きたくはないんですよ。はいベラ子、これ使いな」姉があたしに何やら雑草の束を渡します。渡されましたが。
「それで内侍様と讃岐院様を打ち据えてみな」ふむ。この草束、あれですね。
「ほほ、玉串ならまだしも、そのような雑草ごとき…おのれ貴様、何を使いよった!」
「内侍、何をされた!…ぐ、ぐぉあああ!その草は何じゃ!」あたしが光速でその草束を振って二人を打ち据えた瞬間、めちゃくちゃに苦しみ始めました。確かに、こう使うってのは満更知らないわけじゃなかったんですけど、こうも効くとは。
「一応は讃岐院様の家系直系の子孫に当たる裕仁って陛下がいらっしゃったんですがね。その方曰く、世に雑草などという蔑むべき草はないそうでしてね」
「戯言を抜かしおって!がぁ!」
「ぐぬぅ、おのれ婢女どもがっ!」
「そりゃ苦しかろうさ。あんたらだけがその手の技を使えるわけじゃないんだよ。種明かしをするとさ、ベラ子に使わせたの、茴香」
「マリアリーゼ、確かにマリアヴェッラでなくては使えませんわね、それ…」
「ええ。ベナンダンティ、ご存知ですね…初代様」
「なーるほどー。ベラ子母様なら…お祖母様、マントヴァの生まれですね。フリウーリの血が混ざっていても不思議じゃないっすねーはっはっはー」
「何じゃそのべなん団地とかいうのは。子供が化けて出たりだんち群が走ってきそうなんじゃが」
「おかみ様、黒いユリの咲く団地じゃないんですから…イタリアのベネチア州にね、農家の収穫を台無しにする魔女の一団と夜中に戦う風習がありましてね。人側の戦士をベナンダンティ、魔女の集団をマランダンティって称してたんですよ。で、もろこしの束振り回して来る魔女をしばき倒す武器がこのウイキョウの束って具合でしてね。普通の人間なら無理難題ですけど、MIDI化されたベラ子なら、魔女を打ち倒す効果を実現してしまえるんですよ」はっはっはと笑う姉。
「あたしら人間舐めんなよ。こう見えてもあんたらと同じ、もとは人間なんだからな。感情を押し殺した振りしても無駄さ。あんたらの呪うとか祟るとか、人間時代をもろに引きずってる類の怨念ならこちらも楽なもんなんだよ。で…アルトさん!やっておしまいなさい!」
「えーなんであたくしがー。かいぞくの時とおなじで、最近はばっちいのおおくていやなのですがっ」
「ぬぐうっ、穢れ扱いしよるとは不敬にもほどがあるぞよ!この腐れ婢女どもがぁっ」
「ぐふぅ!おのれ!身体さえ動けばここな腐れ婢女風情、祟り殺してくれようものを!」
「祟れば?」
「へ?」
「な、何を…」
「だから祟ってみろって言ってんの。あたしの旦那役なんだから、このアルト。で、縁切り成功したら、あんたらの拘束を解いてやるし、あたしも祟っていーよ。嘘だと思うならやったんさい」と、二人の歩く怨念を煽りまくってますが、いいんですか。何ならあたしが祟られてみますが。
この方々の実力、ういきょうでしばいた瞬間に理解しましたし、あたし一人でもバベーネです。
「ふっふっふっベラ子くん、久々にアルト節をさせてあげようというあたしの内助の功がわからないかねっ」
(心配すんな。アルトが伊達にアルトじゃないことがわかるよ)本当でしょうね。
「その吐いた一言、もはや無しには出来ぬ筋合いぞえ。後悔するが良いわ!…え?待ちやれお主ら!恋文とか睦言とか交わす仲ではないのか!」
「だからアルトは旦那じゃなくて旦那役なの。都合であたしらくっついてるだけなんだから。ほれ、讃岐院様にも他の女がいるのと同じ理屈じゃねぇか」
「き、貴様、謀りよったな!ぐぬぅっ!」
「で、アルトに入ろうとしたのが運の尽きだよ、内侍様。はい、かーさんー出番だよー。あんたもこの二人にしてやられたんだから、復讐する権利あるよ。だってこの人たちの理屈ならさ、恨んで呪って祟っていいわけじゃん。あたしらが逆に祟り返してもいいですよね、おかみ様」
「まりやー、確かに理屈は通っとるが、仮にも神やぞ、こやつらも…。全く、おのれも婢女のむすめやな…無茶する血筋なんかのう。まあええ、ためしてみい」
「で、許可が出たので…アルトくん。いつもの調子でうちの母親を調整して差し上げなさい」え。何をやらせるのですか姉!
「待てこらマリ公!この場でギャラリー何人おるんじゃ!やめさせんかい!」
「はっはっはっ青姦の代わりだよ。ハプニングバーに連れ込まれたと思うがよいわ!あたしもあの懲罰服で懲罰を受けた恥辱汚辱屈辱を甘んじてるんだからこれくらい我慢しやがれっ」
「…なあ童女…朕が言うのも何じゃが…親に恨みを買うのはやめた方がよいのでは…」
「こないだから色々ありましてね。八百萬神族とは基本、親しくお付き合いさせて頂いてますから内政干渉とか野暮は言いませんけど、うちの母親にはこれでもある意味ご褒美なんですからお構いなく。何でしたら怨念をお持ちいたしますが。ほれアルト、あたしが自由を奪っている間に完遂するのだっ」
「朕の家でも無茶な育て方はしておったが…」ええ、全員が呆れています。姉とアルトさん以外は。
「ジーナさま。ダリアかマリーにていぼうに連れて行かれるよりはマシとおかんがえください。それにさいきんは本当にあたくしと疎遠でしたからね! にがしませんっ!」
「ぎゃああああ!やめアルトまじやめてっ!」
「ふっふっふっ、アルトが空気を絶妙に読まない女なのをかーさんが一番よく知っているだろ!更にかーさんの快感は阿波内侍様に三千倍でお返しするのだよ!」
「あー、ひさしぶりのジーナさまのおけつでございます!」
「ぎひぃいいい!主上!申し訳ございませぬ!指一本触れておられぬがせめてもの…」あの…神様に泡とか潮、吹かせていいもんでしょうか…。着衣のままなので直接に危ない場所が見えないのはせめてもの救いですが。
「安心しやがれ。実は院様もアルトに繋いでるんだよ。はっはっはっ」痴女皇国開闢当時のノリがよくわかる姉に不安しか覚えません。やはりNBには母様を輸出すべきである。あたしにはそう強く思えます!
「ぬぐう!おのれ!不敬にも程があるわ!…おかみ様!此奴らの神をも恐れぬ狼藉!朕は許せ…」
(あのなぁ、崇徳…確かに、お前らが理不尽な願掛けの日々に不満があったのは朕も理解しておるわ。しかし、おのれらは民草を如何に扱っておったのじゃ。おもての婢女が何万何億、理不尽な結果で縁結び縁切りの恨みに憑かれて狂い死んでも眉ひとつ動かぬと申しておったであろう。おのれらが寺におった際の守役、ぱんちにいわせれば因果応報というやつではないのか。それに、まりやを恨む間にな…かとう)
「は。護法!」なんか小鬼のような感じの怪物が滑車を動かして引き寄せてるものがありますね。
「あー、それで加藤さんなのか…」姉、何納得してんですか。
(はっは。この加藤は鬼の孫子でな。普段は封じておるが、護法童子という小鬼を使えるんじゃよ)で、引き寄せられた、人の頭ほどの黒光りする塊を…。
「しかし、百年かからんとは…ほんに邪念雑念持ちが増えたんかのう。縁結びにしても生臭い願いが多々見受けられるようじゃ。崇徳…お主が素直にしておれば朕もここまではやらぬ。それに、朕がこの婢女を気に入っとる理由、ぬしや阿波も周知であろうが?」ああ、ジーナ母様がおかみ様をヒィヒィ言わせてるあれですね。あれ。あれ。
「べらこ。何度も言わんでよい。あと今で百戦二十勝じゃ。引き分けになるまでやめんからな」
「最低な戦いですね…」
「婢女がきゃんといわんからじゃっ。まぁ、我らが我が儘なのは仕方なしとしても…崇徳、阿波、おのれらも大概根に持ちすぎじゃ」
「まーまー、崇徳院様…あたしも何度か反乱起こされたし、今も、割と近しい場所に二人ほど隙があれば寝首掻きそうなの飼ってますけどね」ああ、うちの叔父と美男公ですね。どちらも、そうは見えませんが大概な野心家ですから。
「でもね院様。まず、国家って税収基準で成り立ってるじゃないですか。そちら様の時代で申し上げますと租庸調。これを安定させるためにはまず、労働力確保と農業他の食料生産技術の組織化近代化が必要不可欠なんですよ。つまり民草の生活安定と教養。それから衛生管理ですね。それをやらせるためには愚民のまま据え置いてちゃダメなんです。そちらに願掛けに来てる女の子達の程度と、ここの中にいてる女の子四人、頭の中を比べてみてくださいよ。今や世の中は、畑や田んぼから人が取れる時代じゃないんですから、恨みでご飯食べるだけじゃなくて、ここの神社の神職の方針にも協力したげましょうよ。少しでも信者増やした方が、おたく様が溜めたがってるものも結果的に溜まると思うのですがね」
「しかし…毎回毎回これを持ち去られては…」
「それは官幣大社に祀られてるのに義務を果たしてないからです。十月懇親会にもきちんと出席してあたしから逃げない。それと神階に応じた祈念結晶を上貢頂くこと。これしてたら他の神様も崇徳院様や阿波内侍様だけ不公平とか言いませんって」えー。仕事サボってたんですか…。ならダメじゃないですか!イタリア人でも近年は真面目に仕事しますよ!…わりと。
「一応祀られてるんですからお仕事してください。そこの茨木さんでも長年うちで貢献してくれた評価が、その袴に出てるじゃないですか。過去の事は…ご存知でしょ?」
「なんか…一気に崇徳院様の株がだだっと降下した気が…」
「ええ。はっきり言いますと、蝋燭の激しいチャートを見たと言いますか」
「うう、何か昔の上司を見るような気がする…あのドイツ人のおっさんとかポルトガルのおっさんとか…」
「はい。あわぶろのおかみさまですか。だんなさまにかまいすぎです。あまやかすからこうなるのです。じたくがべつにあるならちゃんとお家にかえしてあげてください。どこかにいりびたる人にろくなおとなはいませんよ。わたくしの純潔をうばいくさりやがったあのへんたい領主とか!」
「ひ、ひどい言われよう…貴女様に人の心はないのですか!」
「あるからもうしておるのです。これが痴女皇国ですと、何か言う前にまず、これかこれです。おせっきょうはそのあとなのです!」アルトさん、そのちんぽ剣と股間のそれが正義な人なんですか…。
「あー、アルト君、だいぶ俺の頭の中覗いてたからなー…」
「だいたい痴女皇国が脳筋なのって、絶対になおしちゃんの影響大だと思うよ…あんた未だに部隊長にたしなめられるくらいバキバキに帝国海軍人脳でしょ?」
「陸よりはマシだ!あと扶桑艦内の博徒な下士官連中みたく新兵をカタに嵌めるような兵隊やくざなことはしてないぞ俺。あれが沈んだ時、隊内どころかあちこちで、ありゃ天罰だってもっぱらの噂だったからなぁ…」
「何じゃ、さぶらいもおるのか…」
「上皇陛下、小官も多少は平安時代について学習させて頂きましたが、確かに当時は反乱やむなしとは申せ、千三百年はかれこれ経過しております故、お平かになられましても咎める者はおりますまい。それに、もっと反乱に熱心な方も後にいらっしゃいましたが、あの方よりは真っ当な理由かと不肖この菅野、教えられております。我ら陛下の赤子、天孫の御霊前に於きましては敬意をと刷り込まれております故、なるたけ尊敬を集める振る舞いを頂きますと…わたくしも今の連中に説教ぶちかますのが楽になるであります!特にマリアリーゼ陛下はともかく、実母のおばはんとか!」
「…あいわかった…精進は致す故、必ずかの婢女一族について手綱を引いてたもれ…さすれば朕も加護を約束しようぞ…」
「なに約束しとるんじゃこの腐れ破壊王!」
「やかましいおばはん!アルト君に聞いたが最近はめちゃくちゃたるんでるらしいじゃねぇか!焼き鳥製造機か人殺し長屋に1ヶ月くらい乗ってくるか?」
「うう、直にまで言われた…」
「諦めろかーさん。菅野さんを引っ張って来たのが運の尽きだ。菅野さんの帝国軍人脳は多分、そこの上皇陛下の改心くらい難易度が高い作業だからな…」
「つまり、治せますけど特徴も喪失します。上皇陛下と阿波内侍様の祟り気質も、日本の現状を鑑みますと治療を試行しない方が世のためになると判断いたしますが、おかみ様」
「ふじんの言う通りじゃな。今回はそちの怨恨についてあまりとやかくは申さぬ。ただ…仕事はしてくれ。何も自分の血で経典書かなくても良いから、白峯の方を疎かにせんでくれよ。頼むぞ」
「御意。従いたくはございませんが、力比べでは敵わぬのも解り候…勤めは致しますので、なにとぞ婢女の国の者だけはここに連れて来てくださるな…」
「そちの働き次第ぞ」
「えー、うち、これ貼りたかったんやけど…」
「なんや婢女。なになに…不肖の長女マリアリーゼと生意気な教え子菅野直と縁切りさせて下さい? 内侍…とりあえず渡すぞ」
「どさくさまぎれに何書いてやがるババァ!ちょっと待てや!」
「おばはんてめぇ何してやがる!」
ところが、おかみ様から貼り紙を受け取った内侍様。くしゃくしゃにして手から火を出して燃やしておしまいに。
「反故にさせて頂きまする。婢女様のお願いは我らの手に余ります故、お家や身内のあらそいはそちらで采配下さいまし。…ええ、この際ですから皆様にも。今後は婢女様のお国の方の願い事、国が滅ぶまで当所で扱いませぬ故、よそで願うて下さりませ!…あると様は密かにお迎え致しますが…ぼそぼそ」無表情は維持しておられますが、めちゃくちゃ怒ってるのはよくわかります。
「何じゃそれは!神様が助平は所望するわ、挙句願掛けの選り好みしてええのですか!」
「私共は理不尽で構わぬのです!それにあんな辱めを受けてはいそうですかと願掛けを受け付けられましょうや!」
「こればかりは阿波内侍様が正しいと思います、母様…」むぐむぐもがもが喚く母親を羽交い締めにして黙らせます。流石にこれ以上口プロレスを重ねて互いに恨み恨まれもよくはないと思いますから、ここは皇帝として敢えて制止させて頂きます。ついでに乳揉んどいたろ。
「まぁそうじゃな、内侍…朕が婢女に事あらばいくさを挑む理由、わかったか」
「この身で承知を致しました。次になされる時は必ずお呼びを。必ずや祟ります!いえ、崩御するほどに気を遣って頂きます!」
「やり甲斐が出来て何よりじゃ…では宜しくな」
はい、見送りもありませんでした。死ぬほどムカツいておられるのはよくわかりましたから。とりあえず疲れた憑かれたと騒ぎながら車に戻りますとですね。
「何やねんこの鳩の糞は!ぎゃああああ!ガラスルーフにまで爆撃がーっ!」
「エマ子!堤防備品にしてたケ◯ヒャー、テンプレス2世の清掃用具倉庫かどこかに入れてただろ!あれ引き寄せてくれ!パトカーまで片端からフンまみれにされてる!」
「乱暴ルギーニにクリスタルコーティングしておいてよかったと思える一瞬…」
「とりあえずあたしが水で流します!」
「…なんちゅう陰険な嫌がらせをしよるのか…婢女、お前らを祟りとうても祟れぬから嫌がらせしたんじゃろうな…ん?べらこ、何をしやる…」
ええ。身体が勝手に動きました。
一瞬でさっきの本殿に移動。
神域検知モードにして入り口で塩撒いてるお二方の頭、はりせんでしばかせて頂きます。
「痛いではないか!」
「あれくらい笑って許されよ!」
「あきません!あれ、赤いのはあたしの車なんですよ? 皇帝歳費貯めて姉からも支援してもらって買ったんですから!」ついでにトラクターも買わされたせいで支出がかさんだのは内緒で。それなりにお金使ったのは事実ですからねっ。
「やるなら白いのだけにしといて下さい!あと、はりせんで殴ったのも聖母の慈悲ですよ…ムチに変えてやり直しましょうか?」
ええ、流石にあの乱暴ルギーニを鳩フンだらけにされて黙ってるほど、あたしも人間というか痴女ができていません。怨恨は勝手ですが、実行された場合は血の掟をもって償わせますよ。
「とにかく、祟るのは結構ですけど相手間違わないでください。重ねて言いますけど、あたしは手荒なことが嫌いだから手加減してるんですからね?」確かにあたしも理不尽かも知れません。ですが、嫌がらせをされたり面従腹背を実行されたら罰を与えてもいいと思うんです。
そこらの鳩全部シメて境内に放り込んだりするようなマフィア的大人げない行為は祖国のイメージダウンになるからやめておきますが、次やったらゴッドファーザーのテーマを流しながら「あたしは平和が大好きだ」と言いつつバット片手に訪問させて頂きますからね。
…アルカトラズ刑務所や祟りが怖くては痴女皇国皇帝が務まらないと思い知りましたから!
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すとく「頼むからもう金輪際来んといてくれ。真剣に。いや、白峯にも来んでいいから」
マリア「おかみ様次第です。今回、本編の通りであたしらも陛下に用事がありましたけど、おかみ様はおかみ様で陛下や内侍様にも言いたい事色々溜めてらしたでしょ? お願いですから、互いにこじらせる前に十月の出雲でちゃんと解消しといて下さいよ…」
ないじ「童女様も酷すぎますえ!乳繰り合うなら繰り合うで、場所と刻をでございますね…」
マリア「おかみ様に依頼して下さい。痴女皇国は貴賓利用者を歓迎しております。…アルトでしたらね、一晩好きにして頂く値段、そうですね…おまけしてだいたいこれくらいで如何でしょうか」
ないじ「もう少し負かりませぬか」
アルト「よめがぜげん…というかあたくしをかしだして商売しようとしております」
すとく「先程ああは申したが…あると殿。悪妻と縁切りをお考えならば是非にお越しなされよ。朕も内侍も歓待致す」
マリア「ううううう、せっかくのビジネスチャンスを!」
おかみ「そういううりこみは出雲でやれ。平等に世話してやるならわしも口利いたるわい。…あとな、あると…おまえ、来てかめへんぞ。おまえならもう資格あるわ」
アルト「なにかこう、剣のわざ以外でおよばれされた気がいたします」
マリア「たのきちと同じ理由だな。つまりイタリア夜の爛れ会、秋の出雲で夜の運動会版参加要請だ」
ないじ「童女様。そなたの母様、必ずや出雲にお呼び立てなさいますよう切にお願い致します。さすればお国の方の当社出禁、解くにやぶさかではございません」
マリア「あー、あのおばはん一人差し出して話がすむなら、ぜひぜひ積極的に協力させて下さい。少しは痛い目見させた方が薬になりますから」
おかみ「うむ。内侍、そなたもさんかせい。あの婢女風情にでかい顔させるのは我らのこけんに関わる。かならずや今年はあへがおだぶぴーを決めさせてやるのや。よいなっ」
ないじ「ははぁっ。このうらみはらさでおくべきかあっ」
すとく(なぁ…童女…阿波、何やらお前らに染まってはおらぬか…)
マリア(ですから、陛下のそばにいるだけで弱ければ祟られるのと同じなんですよ。何の亀頭、いや祈祷もなくわたしら痴女種に近づいたら普通のちんちんで満足出来なくなるんですよ…)
ベラ子(陛下…エマ子が入れ物作りますから、いっそご夫婦で痴女宮来られませんか? 値段は勉強させて頂きましてだいたいこれくらいで)
すとく(むぅ、もう少し何とかならぬか、最近は景気のせいで賽銭の集まりが)
マリア「ちなみにあたしが通学で使ってた電車の会社、最初に生駒山に穴を掘った際に予想外に増えた工事費用で首が回らなくなり、生駒山にある宝山寺に泣きついたところ、事情を聞いた住職が快くお賽銭を貸し付けたので首がつながった過去があるのは本当だよっ」
ないじ「すけべいな濡れごとを司る象様をお祀りですから、ご縁以前にむつみ事の願掛けにはそちらもどうぞ。あと石切神社はうちの商売敵です。縁切りをお考えの方、是々非々にも信頼と実績の崇徳じるしの弊社にお越し下さいまし。その縁、必ずや断ち切って差し上げまする」
マリア「まぁ、京◯四条からも近いし祇園のそばだから、とりあえずご挨拶みたいな感じで参拝してあげてください。よほどの事がなければ24時間開いてるはずですので、敬って頂きますと喜ばれるかと」
すとく「ただ、おなご数名で来て騒ぐ、これだけはやめてくれ。ただでも疫病が流行っておるのだから、静かに参って下さると内侍の仕事もはかどるからの」
ないじ「とにかくうちの陛下、豪快な仕事を好みますので、他所様に差し障りがないように、札に書かれる願掛けの文面はよう吟味してくださりませ。何とぞよろしくお願いいたしまする」
全員「安井金刀比羅宮に限りませんが、神社仏閣にはお作法を守ってお参り下さいませ」
2021.9.10追記
べらこ「えー、この話の続きですが、R15版の方に書かれているそうです」
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/47/
マリア「表現的に未成年に見せてよいのかという気がすんだけどな」
ジーナ「それ以前に子供が食べていいもんやないやろ、あれ…酒が必要な部類の食べ物やぞ…」
えまこ「何を食べに行ったのかは向こうでわかりますよ」
マリア「…あれさぁ、値段も未成年お断りだろ…2021年の時点でもお一人様三万円近くは見といた方がいいぞ…」
べらこ「ちなみに天の声の周囲でも二人くらいしかあそこで食べた人、いないそうです」
マリア「一心寺のそばにある料亭…いつぞやの外相会談の宴席会場になったところもたいがい安い店じゃないけどさ、あそこのざっと二倍は取られるからなぁ」
ないじ「それと皆様、大事な事をお忘れですえ。あそこで食事を呼ばれますとな、力が漲って来る気がするとか、自信がつきますよ女としてのという効能がございますことを!」
べらこ「内侍様があたしの股間を見る目が真剣に怖いです!」
ないじ「にがしまへんえ。ほっほっほっ」
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