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アルトリーネの鬼退治・鬼法師を折伏せよ!
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「雅美さーん雅美さーん。こちらジーナー。西暦1600年代のダージリンの支配王朝の歴史関係についてざっとでええから教えて欲しいんやけどーいけるかー」
(へいへい。あの辺の頭痛のする複雑な状況を簡単にと申されますかー。えーとね、チベットの仏教系国家建国に伴って、ダライ・ラマ派と対立していた高僧一派がインドに亡命、で、伝説では4人の賢者が予言を受けて探し出したチベット人…にしとくわよ…を御神輿に担いで建国したのがシッキム王国。その後はチベットやネパールや中国などと国境を接していたせいで揉めに揉めまくり、最終的には何と1970年代までごたごたが続いた挙句、インドのシッキム州として今に至ってます。これが連邦側の歴史。まぁ、乱暴に言っちゃうとバスクのインド版と思ってね)
「あい了解ー。こっちゃ今ダージリン上空なんやけどさー、とりあえずいちいち敵の罠が仕掛けられてるのが解ってる地下要塞に押し入るのもめんどくっさいから、玄奘を転送で拉致してやろうかと横着かまそうかと画策中。エマ子、玄奘一味はここに王朝なり何なりがあったとして滅ぼしてるんかな)
(…チベット系の独自言語体系を持つ先住民族がいましたが、「飼育」されてる状態。更に、雅美さんが言ってらした亡命チベット人も同様です。茶畑ならぬ人畑状態ですよ、あの一帯)
(かーさん、気になるなら、あいつらが人質とかややっこしい事してねぇかエマ子に調べて貰いなよ)
「へいへい。エマ子、ちょっと悪いねんけど、奴らの砦っぽい場所の位置はわかるか?」
「ちょいお待ち。LNAV画面にマッピングデータ出してますけど、連邦世界で言うガントクってちょっと北の街ですね」
「おいっそこダージリンちゃうぞ…まぁ、飛んだらすぐやけどさぁ。エマ子、そのローカル線でも走ってるとか、駄洒落宗の隠れ寺がありそうな場所はテリブルの効果範囲に入ってたん?」
「入ってますよ。あとシッキムやネパールは一応ドラメの効果範囲ではありますね。念の為に弱体化光線撃っときます。完全女体化解除じゃないのでご安心を」
「うむ。更に言うとその砦の中の配置が知りたいのだが」
「だいたい20匹くらいですね。ただ、玄奘と藩王と…猿と、あと牛がいます。平天大聖とか言われてますね。ただこいつ、牛魔人ですよ…」
(え…えまこはん!そいつの情報うちに下さい!玉藻のおばちゃんが泡食って慌ててます!)
(はい…視覚情報これっす…なんか玄奘が進化させたのとは別部類ですかね…)
(…あれか…それ、間違いなく玉藻のおばはんの縁者ですわ。おばはんの前の旦那。で、今の嫁がそこで転がされてる羅刹。悦吏ちゃん…あいつかよ…これちょっとうち、元の姿に戻らんと危ないんちゃうか。そらこいつまでおったら玄奘か何かいう奴、強気にもなるわ)
(えー、前におばちゃん出します。…力は弱まってるし、外道さんが復帰せんでもええんちゃいますかと。わっちらもおるし、凛ちゃんもドス点検してますえ)
「ふむふむ、ほなその何か、牛野郎は鬼関係者。ザコ扱いしたらあかんのはその牛とエテ公と玄奘でええんかな。エマ子、どない攻めよ」
「案の定、罠仕掛けてます。全員転送かけて適当な場所に引っ張り出してそいつら以外全員捕縛。その三匹なら…うん、悦吏子さんと凛さんと外道さんで牛はしゃぶしゃぶでもすき焼きでもステーキでも丸焼きでも、はたまたお米の国の男が命を賭けて挑むバーベキューでもお好きに出来ます。新鮮なうちにホルモンも取り出しましょう。で、玄奘はベラ子かーさんとアルトさんで泣かすとして、猿は…にやぁ」
えまこはんがいやーな笑いを浮かべると…ええ。真っ赤な全身たいつ姿の上に、蟹のかぶりものを頭にかぶった人が。
「おい。何であたしだエマ子。どういう了見だよ!そもそもあたしを起こせるのかよ!起こせるんなら起こしといてくれよ!」いかりにいかってる、あたくしのよめが来ました。忘れてる方もいらっしゃるかもしれませんが、蟹のかぶりものしてるこの女の人、あたくしのよめですよ。
「…おい…マリ公!それは何や!わははははははは!マンモス哀れな格好やないか!エマ子すまんユーハブ!ちょっとあたし腹筋痛い…」
「…いや、確かにあたしが来たらさ、こんなアホな格好しててもさ、くそ猿どころか今いてる鬼ども全員殺れるよ?でもさぁ、何で猿を相手にさせるんだよ!役割分担間違ってねぇのかよ!」
「いや、マリ公。合ってる。あたしにはわかる。猿蟹合戦や。これでお前も、その格好な理由が理解できるやろ」
「…それでこの格好…しかも黄金の衣ですらない童話仕様…いや、正直あんな猿、この格好でも今ですら瞬殺だけどよ…それと、牛の糞は別にいらねぇけど、臼とか栗とか仲間もなしかよ!…まぁとりあえず積尸気冥界波っぽく見える何かを放てばいいのかよ」
「そうや。あの猿にあじゃぱーと言わせればよい。元の猿に戻して、日光でも地獄谷でも箕面でも高崎山でも野毛山でもいいから適当な場所に送り込んで猿生を全うさせてやろうではないか」
「カリマンタン島でいいんじゃね?あそこの猿はうちらの言うこと聞くし、根性の悪い新参者ならごるしとか象や恐竜と組んでしばき回す程度の知恵はあるぜ」
「了解。あとお前、体調大丈夫なん?」
「んー。まぁ2時間ありゃ余裕で片付くし、鬼を痴女宮まで飛ばすか、スケアクロウの対潜装備だけ外してテンプレスに戻して後ろの荷室空けるかできるっしょ。あとな、アルト。鬼切丸は外道ちゃんに戻すとして、だ。君の得物はこれを指定されたんだ。ベラ子お前もだ。いいな、これはここで使い切っていいからな」なんですかこれ。あたくしとベラ子はんが食べるのですか。
「ああ…鬼か…そうなるな…季節外れも甚だしいけどな…」
「あたしも正直、ここまでネタに走らんでも、MIDIで照射するか鬼切でどついたら終わる話だと思ったんだよ。しかしな、この通りにしないと戻ってから「墓所の」黒マジックで落書きさせるとクレーゼ母様に脅されてな。相手がうちらを舐めに舐め切ってた件で思い知らせる必要があるから、こっちも舐めプを極める必要があるとか言われてな…あのおばはん、どこで舐めプなんて言葉覚えたんだよ…天王寺か…」
「ああ、家族会指定戦闘手順を指示されたのか…アルト対ダリア戦の悪夢が蘇るのだが…」
あの思い出したくもない、おっぴろげてけっこうな勝ち方をさせられたあれですね。
「なぁマリ公。もしかしてあたしが火葬された時のオレンジ色の服とか呪いの人形も…」
「かーさん。皆まで言うな。確かにあたしも白マリもあんたの娘だ。つまり、沖縄のママの店でよくやるアホなノリを戦闘にまで持ち込む悪癖はある。だが…どこで33-4とか覚えてくるんだろうなぁ…」
「頼むからアレーゼさんとマイレーネさんみたいに瞬殺させてくれや…しかも今回、スケアクロウ降ろすのめんどいから、あたし上空をエンドレスエイトでくるくる回って滞空するつもりやったんやぞ」
「それはその通りにやってくれ。ただ…エマ子。わかるな。スケアクロウの光学偵察アイの向け先だ。そして…衛星回線繋ぐかMIDI連携、どっちでもいいからリアルタイムで広報部オフィスに送信してくれ…かーさん。前もって言っとく。あたしは拒否をした。だが、元来寝たきりなあたしが時間限定とは言えここでピンピンしてるのは、それなりの助力がないと無理だってのを理解してくれ」
「…せやろな。人には平気で恥をかかせる事を全く躊躇しないお前が、そもそもこの格好を拒否しない訳がない。つまり、逆らえない相手に指示されたのやな」
「だからあたしは懲罰服を平然と着せる女の娘だって言ってるだろうがよ。スケアクロウ飛ばしてなかったら頭にN載せるぞN。ナで始まるあれ」
「やめろ、それだけはやめろ。一応リース物件やからなこれ。落とさすなよ。更に対潜モジュール一式はNBからの借り物やからな?」
「ぐぬぬぬぬぬ、せっかく母親が懲罰委員会事案をやらかしたのに全く勝てないっ」
「それは良いからちゃっちゃと鬼はうちに回収する作業に移るんや。わたしらからしたら貴重な資源でも、世間の皆様にはオクロの天然原子炉レベルにやばい有害物件や。しかも生きて動き回りよる」
(かつてのわっちが非難されているようで心が痛む…)
(まぁ黙って生きてるだけでも火山性ガスとか有害物質垂れ流しやもんなぁ…おばちゃんは今の方がええと思いますよ。その代わり、元亭主の牛、あれちゃんとしばいて下さいね)
(お任せあれ)
「よし、マリ公は猿、ベラ子とアルトで玄奘、大江山関係者で牛を泣かせて下さい。あ、そこでへばってる牛夫人、連れて行って交渉材料にしてええよ。ついでに痴女化しといて」
「あいよ。んじゃ行ってくらあ」で、転送。
そして、やや開けた場所で、それなりの街並みがある所に降り立ちますとですね。
「ぐぬぅっ何じゃこれは!我らが陣は何処に!ここは街中ではないか!」
「玄奘様、あれを…さては貴様らの仕業か!我が妻を返し…ぎひぃっ玉面!」
「久しぶりやのう腐れ牛。大人しうして、地の底におれんのか己は…」
「平天…あれは何じゃ…ただの小娘ではないか。貴様の力なら小指で伏せてしまえように…」
「玄奘様、儂と同じに御座います。儂が藩王の身に憑いておるのと同じで、前妻…玉面公主と申しまして狐頭の娘が、あの小娘の身を借りて御座います」
「なるほど。相手出来るか」
「人鬼を数匹拝借したく」
「よし。必ずや蹴散らせ」なんかぶっそうな事言ってはりますね。
で、あたくしたちの前に立ちはだかる連中ですが、白衣で坊さんみたいな姿のおばちゃんが一名。まさみさん基準で言うとだいたい同じ体格です。ただ、何となく悦吏子さんっぽい顔立ちですね。あと着ている装束は前ががばっと割れていてふとももやふんどしがチラチラ見えます。坊さんがそんな格好で良いのですか。
そして髪の毛も肌の色も浅黒いおっさんですが、どうも牛のおばけが憑いているようで、本当の姿になったげどうちゃんくらいは大きくなってむきむきです。強さはともかく、マイレーネさんくらいは大きいですね。
そのおぢさんの周りに、同じくふんどしみたいなものをしめた浅黒い女の人が何人もいます。みなさん短い変な刀を手にしていますので、これがうわさのぐるかというやばい兵隊さんなのでしょう。
で、エテ公とかさんざん言われている白い毛皮のおさるさん。ものすごく凶暴そうなうなり声を上げてマリア様をにらんでいます。どうも赤いものを見るとこうふんするようです。さるの癖に大きくて気色わるいちんちんが元気そうです。あたくしとしては、さるを真っ先に斬りたいのですが…。
「ふっ、エテ公の分際で舐めてんのかてめぇ」不敵に笑うよめはん。髪の毛はまりあ状態で真っ黒ですが、中指を立ててさるをあおっています。
…それ、さるに解るんですか。
「なんか久々に現場仕事するのに猿じゃなー、あたしやる気無くしかけたけどさーアルト。ちょっとマイレーネさんシミュレーションしてみるわ」
よめの身体が膨れ上がります。
「…しまった。闘気までシミュレーションしたぜ…」ああ、かにさんすーつが破けてますね。下着は着けてるから大丈夫なようですが。
さるがその姿を見て飛びかかり…逃げ出しました。
「あっちょっと待て!何逃げてんだてめぇクソ猿!…しまった、もう少し手加減すりゃ良かったぜ…あーつまんねー」ええ、マリア様が逃すわけがありません。さるは一瞬で引き寄せられています。更に吸い取られて小さな姿になってしまいました。
「な、ななな何をしよった小娘!斉天に掛けた術を一瞬で外すとは貴様なに奴!」坊さんが慌てていますが、マリア様知らんのですか。
「知らねば言って聞かせましょう」その横に凛ちゃんが立ちます。
「この方こそ痴女皇国の先帝陛下にして現・上皇」げどうちゃんが左に。
「マリアリーゼ様じゃ、よく覚えておきや三下ども」凛ちゃんの更に右に悦吏子ちゃん…きつねのおばちゃん状態ですね。
「で、アルトこっちこっち。これあたしの旦那役で痴女皇国で二番目に強いアルトリーゼな。こいつを打ち負かせられたらあたしが褒めてやるぜ。それに…今はな、あたしより強いのがいるんだよ」マリア様、そこでウィンク。
(え…あたくしはマリア姉より…)
(ビビるんじゃねぇベラ子。気迫だ気迫。それにお前にゃ加勢がつく。だいいち加勢なしでも、黙ってたってあんな三下、てめぇの敵かよ。自信持て自信)
(はいっ!)
「ふっ、我が姉が褒めて下さいましたが…痴女皇国二代目皇帝マリアヴェッラ・ボルジアでございます。玄奘三蔵とやら。そなたの腕や魔羅に覚えがあるなら受けて立ちましょう!」かぶき役者のように上着を投げ捨てて名乗るりりしい姿。ジーナ様譲りの大柄な体格がめっちゃかっこええです。ぱちぱち。
あたくしも騎士時代からアレーゼ様などに「見た目からしてこいつは出来るように見られる事も戦いを有利に運ぶコツだ。聖院騎士として恥ずかしくない立居振る舞いを心がけろ」と言われていましたが。
(叔父の影響です。あと、叔父の愛人のスカートまくりの直伝でして。ほほほ)
「さててめぇら。よくもウチのやり口を下手に真似して好き放題しやがって。泣いて許しを乞うなら今のうちだぜ?」
「ふん。何者かは知らんがよくも大口叩けるものよ。平天。やれ」
「御意」言うなり、おぢさんは手近な女の人に噛み付いています。ひぇっ。
「ふーん、悪魔化できんのか」
(ちょちょちょおばさま!あれソロモン72柱の悪魔モロクじゃないですか!何であんなの出てくるんですか!)おぢさんが何か巨大化してます。しかも頭が牛さんに変わってますね。
「先帝陛下。うちが殴りましょか」外道ちゃんやる気満々です。
「あのボケ…よりによって地底魔王の技を地表でやらかすか…外道丸はん…これは、枷をはずさな無理ちゃいますか?」
「まーまー、ここで怪獣大決戦やられても迷惑じゃん。それより大江組3名、ちょいと頭の中を貸してくんな。アルト。あの牛魔王はMIDIで泣かせるから、お前はベラ子と二人で坊さんヒイヒイ言わせてくれや」
「了解」言うなりベラ子さん、あっという間に鞭を伸ばして坊さんを縛り上げてしまいます。
「あらほんとだ。…ねーさん。この人、あたしらで言うとせいぜい百万卒くらいですね…とりあえず動けなくしておきますよ」
「んじゃベラ子、アルト。意識貸せ。あと、さっき渡したアレ出せアレ」
「はいはい」で、あたくしは袋に入ったものをマリア様に渡します。
「さーて、こいつがモロクなら口からファイアーくらいやらかすよな。MIDI06、兵装使用形態移行。見とけクソ坊主」
…かりばーんが降りて来た次の一瞬…あたくしが例のあわで水中を飛ぶように泳いでるような姿になりました。
かりばーんの下に、人に近いけど腕が六本の姿のものが取り付けられています。
さっきまでのかりばーんの下がふくらんでいたのは、このお人形さんを隠すためのかばーなの、あたくしは知っております。
うしが口から火を噴きましたが、みでぃがかばー…たてにもなるそうですが、それを左の上のうででかざすと、その手前がきらきら光って炎が吸い取られてしまいます。
「重粒子格子構造障壁。ルドゥタブルF1弾頭どころか、プリュトンの子弾頭全て分の核融合反応でも無力化するのに、たかだか数千度の火炎くらいでどうにかなるかよ。本当なら跳ね返して丸焼きにしてやるんだが…」
(あ、プリュトンってのはCMM-08、アレーゼおばさまが昔呼び込んじまった連邦の駆逐艦に積んでた対艦対惑星大型ミサイルだよ。獣帯級駆逐艦には艦前方に二発。係留搭載した雷電…無人航宙戦闘機には一機につき二発、雷電二機を係留してるのが獣帯級のフル装備だから、合計六発だ。アルト、前にかーさんが獣帯級駆逐艦を何としてでも沈めないと聖院地球が完全に滅亡するっつってただろ。これな、プリュトンに積まれてる破片拡散型対艦爆雷のSBAC100五発と、超短波レーザ爆雷弾頭のGRAC100が六発。こいつら全部、ルドゥタブルと同じ出力の穢れ弾を起動爆発に使うからだよ。対地弾頭として使うと、プリュトン一発だけでも地球表面の生物の八割が死亡して世紀末覇者が必要になる世界になっちまうんだ。だから、あたしやかーさんがMIDI05…まだ06にアップデートしてなかった奴を緊急起動してでも止める必要があったのさ)
(ですよねー。あんなの使われたら痴女化した今ならともかく、女官体質のあたくしたちですら…)
(なるほど、つまりわっちや外道はんが本来の姿になったくらいでも、あの木偶人形みたいなの使えば片手でひねれると…)
(そゆこと。某おっさんや、ワーズワースの祖父様が、簡単に使うなよって仕掛けにしてる理由がそれよ。今からやるけど、あの牛、火星に連れて行くぜ。大気組成に酸素がねぇのに火が噴けない場所に連れて行きゃどうなるかな)
(こらこら!殺すな!あんな牛でも酸素呼吸が必要な炭素系生物のままやねんぞ!あ、金星の暴風大気下とか水星の灼熱環境下も禁止じゃ!)
(んじゃかーさん、ガニメデとかカリストとかアナンケとかエンケラドゥスとかタイタンならいいのかよ)
(あかん。エウロパの水火山に放り込むのも禁止。前方後方トロヤ群もあかんぞ。トリトンとかカロンに連れて行って瞬間凍結も禁止な。せやから普通に超光速粒子銃、マジェステックキャンセラーモードで当ててちゃっちゃと人に戻したれ!)
(へいへい、見せ場のないこって。あ、せっかく用意したんだし、豆型アミノ酸結晶剤で行くわ。MIDIのマイクロマニピュレーターなら豆掴んでぶつけられるから、鬼は外じゃ)
(そもそも今がそうですけど、みでぃってがんなんとかよりおおきいんですよね。あのうしさんが今じゅうめーとるくらいですか、そのにばいはありますね)
(だから暴れんなよクソ牛っ。ま、左手第二腕と第三腕で襟首と頭掴んで持ち上げてっけどな)
(信じられへん…牛魔王状態の平天が赤子同然や…)
(つまり、うちが鬼化しても…)
(まりやはん、あの人形…海の中も…)
(あ、水中行動はあまり得意じゃないけどな。圧壊深度は一応あるけど、MIDIの慣性制御駆動装置の重力制御機能でのしかかってる水の重さ、マイナス質量にすらできるから。ついでに、今牛に撃ち込んだ超光速粒子銃。あれ、障害物突き抜けて効くから)
(つまり…隠れても無駄…)
(そゆこと。稼働させたあれを止められるのは同じMIDIまたはM-IKLAって言う上位互換兵器でないと無理。あたしが痴女皇国建国して武力的に強気だった理由の一つさ。仮に魔法や神通力が使えるやつがいたとしてもあれにゃ敵わないよ。そのふざけた幻想を物理無効化できるんだから。おかみ様なら足止め出来る可能性があるが、あれの上位互換がいてな。機械のくせに神様と同じこと出来るんだから始末に追えねえ。ま、その機械の神様がミスしたせいで、あたしが寝たきり状態なんだが…ほら、あとは玄奘だけだぜアルト。ベラ子と二人で痴女にしてやってくれや)
「はいはい。玄奘とやら。貴方の手駒、これで全て失われたかと存じますが。これでも歯向かいますか?」
「当たり前じゃ!わしの知識も見識も全て否定された故国許すまじ!仮に我が身が滅びようとて末代まで祟ってくれようぞ!」
「…玄奘殿。それが釈尊の教えでしたかな?」あら。どなたでしょ。頭つるつるでごうじゃすな…けさというんですか、お坊さんのふくを着たおぢさんが来ました。
「陛下。中原の方は李自成を折伏致しましたが、この件ですかな?拙僧が呼ばれましたのは」
「ええ。この困った御仁に一つ説法をと思いまして。是非にも漢文詩文の才、ご披露頂きたく」マリア様がていねいにおはなししてますから、かなりえらいひとなのでしょう。落ち着いた感じで頭の良さそうな陽気さがあります。
「ああ、みんなに紹介しとこう。八百比丘尼国の中原担当外交官長、景轍玄蘇閣下だ。禅宗の高僧でもあらせられる。御坊、玄奘法師は見ての通りのなりだが、これでもかつては仏門の人間だろ。可能なら痴女化してでも、やらかしを償う気になって欲しいのだが…」
「いやはや上皇陛下、拙僧の如きしがない坊主にかように丁重な扱いを頂かずとも…のう、玄奘殿。そなた、何故にそもそも天竺に行こうと思い立ったのじゃ」
「玄蘇殿と申されたか…鳩摩羅什をご存知であろうか」
「ふむ。初代三蔵と讃えられた方でありますかな」
「左様。拙僧も原典に触れて世に教えを説く想いはあれど…」
「誰も耳を貸さず、かのう。そもそも釈尊とて、誰でも彼でもが釈尊の尊き教えに耳を貸してくれた訳ではあるまい。それでも諦めずに説いて回られたからこそ、彼の地に初代三蔵が蒐集出来た程の経典が残っていたのではありますまいか? だいたいが、釈尊自体がまず自らが悟りを開かねば教えの効能もないとされ、みだりな苦行を廃し瞑想に至られたかと」
「その辺りも正確に知りたいが故、天竺を目指す思いがございまして」なんか、いつの間にか玄奘というおばはんが素直になってますね。
「例えばですな。仮に玄奘殿が鬼と化してから今に至るまでに千人を喰ろうたと致しますぞ。では千人産めば辻褄は合う」
「ふむ…」
「じゃが、人の身では子を千人孕んで産むだけでも一苦労でござろう。然るに…愚僧の考えですがな、経典一本あればですな、複写のわざをお持ちの方々が仮におられるならば」そこでげんそなるおぼう様は、マリア様とベラ子様をちらり。
「千人に経を配り、学ばせれば千人に教えが説けます道理になるかと。更に万人に配れば万人全てでなくとも教化感銘されるものが出でましょうや。即ち、一千人の賢き子を産むに同じ。これが教えの基本ではありますまいか」
「しかし、かように容易く写しが出来るものやら…」
「ふっふっふっ。さて玄奘さん。ちょいとばかし、これを見てもらおうか」マリア様が一冊のうすい本を出されます。
「これは…別の世界のあんたが天竺から持ち帰った中にあった経文を書物にしたものだ。で」般若心経とか書かれてるほんをげんそのおじさんに渡されます。玄奘のおばはんは縛られたままなので、げんそのおぢさんが本をめくって中を見せてあげています。
「活版印刷ってわざが西洋で開発されてね。これからこの世に広まるんだが、上手く使えば…そうだなぁ、製本作業って言って、本にするわざは必要だが、あたしらの持ってる罪人工場でやれば、一週間ありゃあ十万冊はこれが複製できるんだわ。どうだい。教えが世に広まるかは別にして、教本や経典自体を読みやすくして広く配ることは不可能じゃないんだわ」
「のう玄奘殿…失礼」げんそのおぢさんがふところから短い刀を取り出して、いきなり自分の手のひらにぶっすりと。
「まぁ、見ての通り刀が刺されば血も出る訳だが…ほれ玄奘どの、今の御身は血の匂いに食欲が湧かれますかな?」おばちゃん、くびを横にぷるぷる。
で、マリア様がその傷に手をかざされると、あら不思議元通り。
「そしてこのわざじゃ。これは決して神業でも妖の技でもない。出来るかどうかはともかく、理屈の上では筋が通る話なのじゃ。わしらの身体に元々備わる、傷を塞ぐ力を助けて貰うたに過ぎぬ。しかし、出来ぬものからすれば奇跡だの霊験あらたかな御技に見えようて。同じ書物を何冊も拵える技と根は同じよ。どうじゃ、罪滅ぼしと思うて、梵語の書物経典、ほんにする事、生業にする罰を受けられては如何か。そなたの本望でもあろう?」見ると、何冊ものまきものや本がそこにあります。
「あんたが持ち帰る筈だった梵語の経典や文献だ。六百五十冊以上だったかな…あたしらがいた世界の玄奘法師は唐代にこれらを持ち帰ったんだ。で、経典の全てを生涯に翻訳は不可能だったが、あんたの教えた後進が作業を完遂し、玄奘三蔵法師の偉業を讃えて後世にも伝わっている。中原大陸や日の本など、漢語の伝わってる国で釈尊の教えが広まってんの、うちらの世でのあんたの功績なんだよ」
「わしが…わしがあれを全て漢語に読み替えたと申されますのか」
「んだ。あと、西域の事情を伝えて不毛不踏の地の開拓開発に貢献してんだよ。西方と中原の交易路の整備にはあんたの知見も一役買ってんのさ」と、そこで悪そうな顔をするよめ。
「なぁ、玄奘法師。あんたに寿命…ま、最低でも人間の十倍以上の長寿と、そして研究の場所を与えられる権限のある人間がここにいるんだわ」と、ベラ子様を呼ばれます。
「で。痴女皇国には修学宮という学舎があってな。そこで教えてる非常勤講師に、こういう人もいるんだが…玄蘇閣下。ちょいと呼びたい人がいるんだけどさ、身体、拝借していいかい?元・さる国の王子様で妻子ほったらかして悟り開くために家を飛び出した悪人なんだが」にやにやしてはりますね。げんそのおぢさんも、誰を呼ぶのかわかってにやにやしておられます。
そして、一瞬だけ顔を下げたげんそのおぢさんが顔を起こして口を開きます。
「はい、呼ばれたのだが…うーん、僕はこれ全て言ったり説いた訳じゃないからねぇ。ただ、弟子たちの言いたい事も分かるんだけどさあ」げんそのおぢさん、何かがのりうつったらしく、山のように積まれたほんをぺらぺらめくっては文句をいうてはります。
「いやいや、あると君だっけ。僕だけじゃなしに、あの髪の毛の長い髭ぼうぼうの痩せた人いるでしょ。麺麭を何個も増やせたり、十字架にはりつけにされて死んだけど生き返ってたお兄さん。彼もさ、私はこんな事言ってないとかよく愚痴をこぼしてるよ。あ、玄奘くんだっけ。よかったら痴女宮で君も講座持ってみない?時間があれば僕の講義の時に来れるみたいだし」
「あ、あの…どなた様で…」
「あ、そうか。玄蘇氏の身体を借りてるからわからないか…まぁ、君の信じていた宗教を興した鼻祖開祖扱いをされている、しがない元王子だよ。マリア陛下には無茶苦茶な紹介されたけど、あれ、後できちんと謝罪に行ったし、父からは息子が立派な行者になったので鼻が高いと許されてるからね?」
「玄奘殿。釈尊にあらせられますぞ」一人で声色を使い分けているようにしか聞こえませんが。ですが、瞬間的におばちゃん、ひれ伏してはりますね。よほどえらいひとなんでしょうか。
「アルト…比丘尼国にでかい像作られたり、遺骨を分けられてさ、それを納める塔を世界に何万本も建てられてるおぢさんだからな…」
「陛下…あれ正直、紛い物の骨も多いですし。それに建立に必要な労力や資材を考えると、もう少し別の事に使って頂く方が衆生のためになると思うのですがねぇ。ま、それはともかく。玄奘くん。君さえ良ければ、僕からマリアリーゼ陛下とマリアヴェッラ陛下に口添えしておくけど。どうだい? 一度、君の話を聞く人間がどれだけいるか試させてもらわないかい?」
「うちは優秀な教育者であれば歓迎する。あと、研究者に対する支援を惜しんではいないつもりだが…殿下、ご自身が聴講生として他の教務者の講義を聞かれている立場としては如何かな?」
「有り体に申し上げましょう。僕が存命中に知っていれば、衆生に説く話を少し変えていたかも知れませんな。特に栄養学について知識があれば、菜食主義をもう少し緩めていたでしょうな」
「え…獣の肉は…」
「あの…君達も習っておいた方がいいよ。菜食主義を貫き過ぎると身体に良くないからね。早逝はまだしも、正常な思考を妨げたり、業病の遠因になると聞かされるからね?」
「玄奘さん…骨ってあるだろ。あれの成分は骨か、それに類する貝殻などを摂取するしかないんだよ。肉や魚、最低でも牛や山羊の乳を食べないと、骨や歯が脆くなるんだ。他の動物を食べるのにはちゃんとした生物学という学問を調べる過程で必要性がわかっているんだよ。…ま、人を食うのは遠慮願いたいが」
「玄奘くん。僕が僧侶をやっている際に、苦行で弱った身体を乳粥で回復させたという逸話があるだろう?あれと同じような事だよ。人の肉と同じ成分の栄養も、本来は取るべきなんだ。長い修行と言ってもいい、数代に渡って限定された食生活の果てに、芋を食べて人肉に近い滋養に変える技を体得した種族もいるようだけどね」
「とりあえず苦行は無意味だとまでは言わないが、あそこにある山のてっぺんに上がる方がよほど神様や仏様の領域に近づけるぜ。ま、空気が薄くなるし気温も下がるから人間どころか普通の生き物は生きてられねぇけどな。ただ…あそこの一番高いところ、人間が立つんだ。うちらの歴史で言うと1955年。今から400年近く後だがな」
「あそこに、ですか」無茶言うなって顔してはりますね。痴女なら普通に登れますよ。
「ああ、あのカンチュンジェンガって名前がつく山はこの世界で三番目に高いんだが、あそこの方の二番目と、えーっと、チョモランマはあれだな。この近辺にある一番高い山と二番目と三番目は三つとも、ほぼ同じ時期に登山に成功しているよ。ただ、そこに至るまでに、尊い犠牲を各々の山ごとに数百人は絶対に出してるけどな。亡骸の回収すら難しいから、死んだ場所に放置されている死体も珍しくないのさ。それでも人は困難に挑むんだよ。あんたも天竺に来ようとしたろ?」マリア様が聖環でその死体のがぞうを見せています。
「この中には何でそんな、水が凍るどころじゃない寒さに加えて、平地の三分の一まで空気が薄まって体の動きを阻害する死の場所に行くのかと周りに説き伏せられた奴もいるんだ。だが、その男は「そこに世界一高い山があるから登るのだ」と言い切って、生涯を賭けて目指した山で遭難して、ここにいるんだ。いや、うちらの時代…あんたたちの時代から600年くらい先なら流石に回収できなくはないんだ。だけど、山に挑んで死んだなら山が墓標になるだろうし、空気が薄くて寒いから乾きこそすれ腐らないんだよ。だからそのままにしておく方がいいという意見が多くてな。あと、こいつはその登山家とは別の男だが、この死体、緑の靴を履いているだろ。で、この側に難所があるんだが、難所が近いよって目印にもなってんのさ。こいつを間抜けだって馬鹿にする奴は恐らくいねぇよ。…神の山に挑んで力尽きた英雄さ。そして、人の限界に挑むのは命がけだよって、後に続く奴を導いてんのさ。どうだい玄奘さん。こいつらは全て無駄死にだと思うかい。こいつらの人生は全て無駄だったんだろうか」
「わしと…わたくしと同じに思えまする。この方々は困難と限界に挑まれた方々に思えまする」おばちゃんは泣いています。マリア様が何を言いたいのか。なぜ、げんそのおぢちゃんが微笑みながらおばちゃんを見ているのか。
「ねぇ玄奘くん。君は鬼の力もあったと思うが、ここにいるじゃないか。そして、マリア陛下は君を人の世界に返すつもりだよ?もし君を裁く必要があるなら、君を人の姿に戻して裁くおつもりだ。だが、裁く前に、君が君自身で、僕の教えや弟子の教えを学び直す気があるなら、これからの生涯を賭けてそれをすればいいと思っておられるんだよ。普通は人を一人二人殺せば死罪だし、僕も悪事を働いて、罪の重さを自覚しない者にはそれなりの話をしてきたんだ。だが、君がその罪を自覚して、千人を食い殺したのなら万人、万人を食い殺したのなら億人を救おうとするならば不問にしよう。実際、マリア陛下の世界ではね…四億を超す人が、君の成果によって僕を敬ってくれているらしいんだよ。どうだい。違う世界の君が成し遂げた偉業を自分自身で理解することが出来たかい?」
「玄奘さん。どうかな。せっかくあんたが信じかけた教えを開いた師匠も人生は勉強だって言ってんだ。真剣に学ぶなら力になるぜ」
「玄奘くん…あれ…分かるかな」ぱんちぱーまのおぢさんの本体が薄く見えるげんそのひとがみでぃを指します。
「陛下に言わせるとね、あれは神や仏と同じ事が出来るらしいんだよ。あれの一つ上の存在は僕も、髪の毛の長いお兄さんもよく知ってるけどね。あれも、そして彼もね。人が造ったんだ。わかるかい。人は神様の力と、神様の考えを持つものすら作れたんだよ。ひとが、ね。君だって元々人だろう?人が人を千人産むのは不可能でも、千人や万人や億人を救う技に目覚めることはできるんだよ?」
「承知致しました。釈尊…そこな経典、拙僧にお預け頂きませんでしょうか。必ずや訳典を完成させて見せます!」もういちど、おばちゃんがひれふしています。
「マリア陛下」
「おーけー。話がまとまった記念だ。いいもん見せてやらぁ。おーい白マリ、テンプレス、今空いてるかい?」
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元王子「あー、やっぱり僕の名前…」
黒マリ「まー仕方ないですね。パンチにされないだけマシだと思って」
ジーナ「実はパンチにしたかった天の声だが、流石に仏罰を恐れた模様」
元王子「あれも僕が言った話じゃないんだけどね。経典の中に仏像を彫ったり描く場合の規約を定めたものが存在するんだ。で、その中に仏徳を表す表現として、螺髪…らせん状の髪の毛にしなさいと定めてあるようなんだよね」
黒マリ「なるほど、キャラデザインや設定書だな」
ジーナ「確かに、守らせないと無茶苦茶描かれるからな…」
元王子「そういえば漫画の神様とかいう方が僕を題材に描かれたものがあるでしょう。あれ…あの方がかなり僕の事を調べた上で描いたのは本人から聞いたけど、やはり件の方が意図して入れた創作面があるので、現実の僕そのものではございませんよ。もっとも、悪くは描かれていなかったし、あの人の医者の話は感銘を受けたものも少なくないし、あの話を描くほどの方らしいなぁという大作だから、僕について理解を深めたい場合は一読を試みて頂ければ」
黒マリ「ああ、あのモグリ医者…」
ジーナ「わたしらの話同様、ヤバい事が多数描かれていて漫画の神様だから許されてる面があるとも…」
黒マリ「うちらの方が危険な気もするが、まぁともかく…非常勤講師としての講義内容はどのようなものが」
元王子「それがですね、僕はかなり古い人間なので、基本的に他の方…主に科学技術の講義を密かに聴講させて頂いています。これはロン毛君も同じと言っておられたな。あと進路相談要員」
黒マリ「確かに適役と言えば適役ですが…あ、多分、ロン毛氏か、殿下に一人お願いするかも知れません。人生とはなんぞやについて(にやにや)」
元王子「なんとなく想像は付きますが、相談が参りました場合は、相応に対応させて頂きますよ。ただ…僕の勘なのですが、その方はご自身で最終的に殻を破る必要があるのと、人生の苦楽を共にする人物が側にいた方がよろしいかも知れませんな」
黒マリ「その話はまた本編で語られるとして…殿下、何やら連邦社会に物申したい話があるとか」
元王子「ええ。まず真言宗立川流。あと電気抵抗というのですか、Ωな。ああいう邪教めいた要素の宗派に僕が関係あるように思われるのはちと困りますね」
黒マリ「流石にそれはないとは思いますが」
元王子「あと大聖歓喜天。あのあたりの波羅門が尊びそうな神様は、ちょっと寺とは分けて祀って貰えぬものかと…」
黒マリ「確かにあの神様はある意味煩悩を叶えるからなぁ…うちの国もあれほどではないけど…似たようなものか…」
元王子「痴女皇国での例の行いなら、草木に陽光が必要なのと同じでありましょう。それに、それで人が救われ苦しみ悲しむ者がいないなら、僕が取り沙汰する話ではないかと。…それに、男女のつがいでする場合、子作りに必要なんですよねぇ…」
黒マリ「やはりそうなりますよね。というわけで修学宮の密かな聴講生その一なお方でした」
元王子「なお、ロン毛君も聴講している方が多い方ですね(微笑)」
(へいへい。あの辺の頭痛のする複雑な状況を簡単にと申されますかー。えーとね、チベットの仏教系国家建国に伴って、ダライ・ラマ派と対立していた高僧一派がインドに亡命、で、伝説では4人の賢者が予言を受けて探し出したチベット人…にしとくわよ…を御神輿に担いで建国したのがシッキム王国。その後はチベットやネパールや中国などと国境を接していたせいで揉めに揉めまくり、最終的には何と1970年代までごたごたが続いた挙句、インドのシッキム州として今に至ってます。これが連邦側の歴史。まぁ、乱暴に言っちゃうとバスクのインド版と思ってね)
「あい了解ー。こっちゃ今ダージリン上空なんやけどさー、とりあえずいちいち敵の罠が仕掛けられてるのが解ってる地下要塞に押し入るのもめんどくっさいから、玄奘を転送で拉致してやろうかと横着かまそうかと画策中。エマ子、玄奘一味はここに王朝なり何なりがあったとして滅ぼしてるんかな)
(…チベット系の独自言語体系を持つ先住民族がいましたが、「飼育」されてる状態。更に、雅美さんが言ってらした亡命チベット人も同様です。茶畑ならぬ人畑状態ですよ、あの一帯)
(かーさん、気になるなら、あいつらが人質とかややっこしい事してねぇかエマ子に調べて貰いなよ)
「へいへい。エマ子、ちょっと悪いねんけど、奴らの砦っぽい場所の位置はわかるか?」
「ちょいお待ち。LNAV画面にマッピングデータ出してますけど、連邦世界で言うガントクってちょっと北の街ですね」
「おいっそこダージリンちゃうぞ…まぁ、飛んだらすぐやけどさぁ。エマ子、そのローカル線でも走ってるとか、駄洒落宗の隠れ寺がありそうな場所はテリブルの効果範囲に入ってたん?」
「入ってますよ。あとシッキムやネパールは一応ドラメの効果範囲ではありますね。念の為に弱体化光線撃っときます。完全女体化解除じゃないのでご安心を」
「うむ。更に言うとその砦の中の配置が知りたいのだが」
「だいたい20匹くらいですね。ただ、玄奘と藩王と…猿と、あと牛がいます。平天大聖とか言われてますね。ただこいつ、牛魔人ですよ…」
(え…えまこはん!そいつの情報うちに下さい!玉藻のおばちゃんが泡食って慌ててます!)
(はい…視覚情報これっす…なんか玄奘が進化させたのとは別部類ですかね…)
(…あれか…それ、間違いなく玉藻のおばはんの縁者ですわ。おばはんの前の旦那。で、今の嫁がそこで転がされてる羅刹。悦吏ちゃん…あいつかよ…これちょっとうち、元の姿に戻らんと危ないんちゃうか。そらこいつまでおったら玄奘か何かいう奴、強気にもなるわ)
(えー、前におばちゃん出します。…力は弱まってるし、外道さんが復帰せんでもええんちゃいますかと。わっちらもおるし、凛ちゃんもドス点検してますえ)
「ふむふむ、ほなその何か、牛野郎は鬼関係者。ザコ扱いしたらあかんのはその牛とエテ公と玄奘でええんかな。エマ子、どない攻めよ」
「案の定、罠仕掛けてます。全員転送かけて適当な場所に引っ張り出してそいつら以外全員捕縛。その三匹なら…うん、悦吏子さんと凛さんと外道さんで牛はしゃぶしゃぶでもすき焼きでもステーキでも丸焼きでも、はたまたお米の国の男が命を賭けて挑むバーベキューでもお好きに出来ます。新鮮なうちにホルモンも取り出しましょう。で、玄奘はベラ子かーさんとアルトさんで泣かすとして、猿は…にやぁ」
えまこはんがいやーな笑いを浮かべると…ええ。真っ赤な全身たいつ姿の上に、蟹のかぶりものを頭にかぶった人が。
「おい。何であたしだエマ子。どういう了見だよ!そもそもあたしを起こせるのかよ!起こせるんなら起こしといてくれよ!」いかりにいかってる、あたくしのよめが来ました。忘れてる方もいらっしゃるかもしれませんが、蟹のかぶりものしてるこの女の人、あたくしのよめですよ。
「…おい…マリ公!それは何や!わははははははは!マンモス哀れな格好やないか!エマ子すまんユーハブ!ちょっとあたし腹筋痛い…」
「…いや、確かにあたしが来たらさ、こんなアホな格好しててもさ、くそ猿どころか今いてる鬼ども全員殺れるよ?でもさぁ、何で猿を相手にさせるんだよ!役割分担間違ってねぇのかよ!」
「いや、マリ公。合ってる。あたしにはわかる。猿蟹合戦や。これでお前も、その格好な理由が理解できるやろ」
「…それでこの格好…しかも黄金の衣ですらない童話仕様…いや、正直あんな猿、この格好でも今ですら瞬殺だけどよ…それと、牛の糞は別にいらねぇけど、臼とか栗とか仲間もなしかよ!…まぁとりあえず積尸気冥界波っぽく見える何かを放てばいいのかよ」
「そうや。あの猿にあじゃぱーと言わせればよい。元の猿に戻して、日光でも地獄谷でも箕面でも高崎山でも野毛山でもいいから適当な場所に送り込んで猿生を全うさせてやろうではないか」
「カリマンタン島でいいんじゃね?あそこの猿はうちらの言うこと聞くし、根性の悪い新参者ならごるしとか象や恐竜と組んでしばき回す程度の知恵はあるぜ」
「了解。あとお前、体調大丈夫なん?」
「んー。まぁ2時間ありゃ余裕で片付くし、鬼を痴女宮まで飛ばすか、スケアクロウの対潜装備だけ外してテンプレスに戻して後ろの荷室空けるかできるっしょ。あとな、アルト。鬼切丸は外道ちゃんに戻すとして、だ。君の得物はこれを指定されたんだ。ベラ子お前もだ。いいな、これはここで使い切っていいからな」なんですかこれ。あたくしとベラ子はんが食べるのですか。
「ああ…鬼か…そうなるな…季節外れも甚だしいけどな…」
「あたしも正直、ここまでネタに走らんでも、MIDIで照射するか鬼切でどついたら終わる話だと思ったんだよ。しかしな、この通りにしないと戻ってから「墓所の」黒マジックで落書きさせるとクレーゼ母様に脅されてな。相手がうちらを舐めに舐め切ってた件で思い知らせる必要があるから、こっちも舐めプを極める必要があるとか言われてな…あのおばはん、どこで舐めプなんて言葉覚えたんだよ…天王寺か…」
「ああ、家族会指定戦闘手順を指示されたのか…アルト対ダリア戦の悪夢が蘇るのだが…」
あの思い出したくもない、おっぴろげてけっこうな勝ち方をさせられたあれですね。
「なぁマリ公。もしかしてあたしが火葬された時のオレンジ色の服とか呪いの人形も…」
「かーさん。皆まで言うな。確かにあたしも白マリもあんたの娘だ。つまり、沖縄のママの店でよくやるアホなノリを戦闘にまで持ち込む悪癖はある。だが…どこで33-4とか覚えてくるんだろうなぁ…」
「頼むからアレーゼさんとマイレーネさんみたいに瞬殺させてくれや…しかも今回、スケアクロウ降ろすのめんどいから、あたし上空をエンドレスエイトでくるくる回って滞空するつもりやったんやぞ」
「それはその通りにやってくれ。ただ…エマ子。わかるな。スケアクロウの光学偵察アイの向け先だ。そして…衛星回線繋ぐかMIDI連携、どっちでもいいからリアルタイムで広報部オフィスに送信してくれ…かーさん。前もって言っとく。あたしは拒否をした。だが、元来寝たきりなあたしが時間限定とは言えここでピンピンしてるのは、それなりの助力がないと無理だってのを理解してくれ」
「…せやろな。人には平気で恥をかかせる事を全く躊躇しないお前が、そもそもこの格好を拒否しない訳がない。つまり、逆らえない相手に指示されたのやな」
「だからあたしは懲罰服を平然と着せる女の娘だって言ってるだろうがよ。スケアクロウ飛ばしてなかったら頭にN載せるぞN。ナで始まるあれ」
「やめろ、それだけはやめろ。一応リース物件やからなこれ。落とさすなよ。更に対潜モジュール一式はNBからの借り物やからな?」
「ぐぬぬぬぬぬ、せっかく母親が懲罰委員会事案をやらかしたのに全く勝てないっ」
「それは良いからちゃっちゃと鬼はうちに回収する作業に移るんや。わたしらからしたら貴重な資源でも、世間の皆様にはオクロの天然原子炉レベルにやばい有害物件や。しかも生きて動き回りよる」
(かつてのわっちが非難されているようで心が痛む…)
(まぁ黙って生きてるだけでも火山性ガスとか有害物質垂れ流しやもんなぁ…おばちゃんは今の方がええと思いますよ。その代わり、元亭主の牛、あれちゃんとしばいて下さいね)
(お任せあれ)
「よし、マリ公は猿、ベラ子とアルトで玄奘、大江山関係者で牛を泣かせて下さい。あ、そこでへばってる牛夫人、連れて行って交渉材料にしてええよ。ついでに痴女化しといて」
「あいよ。んじゃ行ってくらあ」で、転送。
そして、やや開けた場所で、それなりの街並みがある所に降り立ちますとですね。
「ぐぬぅっ何じゃこれは!我らが陣は何処に!ここは街中ではないか!」
「玄奘様、あれを…さては貴様らの仕業か!我が妻を返し…ぎひぃっ玉面!」
「久しぶりやのう腐れ牛。大人しうして、地の底におれんのか己は…」
「平天…あれは何じゃ…ただの小娘ではないか。貴様の力なら小指で伏せてしまえように…」
「玄奘様、儂と同じに御座います。儂が藩王の身に憑いておるのと同じで、前妻…玉面公主と申しまして狐頭の娘が、あの小娘の身を借りて御座います」
「なるほど。相手出来るか」
「人鬼を数匹拝借したく」
「よし。必ずや蹴散らせ」なんかぶっそうな事言ってはりますね。
で、あたくしたちの前に立ちはだかる連中ですが、白衣で坊さんみたいな姿のおばちゃんが一名。まさみさん基準で言うとだいたい同じ体格です。ただ、何となく悦吏子さんっぽい顔立ちですね。あと着ている装束は前ががばっと割れていてふとももやふんどしがチラチラ見えます。坊さんがそんな格好で良いのですか。
そして髪の毛も肌の色も浅黒いおっさんですが、どうも牛のおばけが憑いているようで、本当の姿になったげどうちゃんくらいは大きくなってむきむきです。強さはともかく、マイレーネさんくらいは大きいですね。
そのおぢさんの周りに、同じくふんどしみたいなものをしめた浅黒い女の人が何人もいます。みなさん短い変な刀を手にしていますので、これがうわさのぐるかというやばい兵隊さんなのでしょう。
で、エテ公とかさんざん言われている白い毛皮のおさるさん。ものすごく凶暴そうなうなり声を上げてマリア様をにらんでいます。どうも赤いものを見るとこうふんするようです。さるの癖に大きくて気色わるいちんちんが元気そうです。あたくしとしては、さるを真っ先に斬りたいのですが…。
「ふっ、エテ公の分際で舐めてんのかてめぇ」不敵に笑うよめはん。髪の毛はまりあ状態で真っ黒ですが、中指を立ててさるをあおっています。
…それ、さるに解るんですか。
「なんか久々に現場仕事するのに猿じゃなー、あたしやる気無くしかけたけどさーアルト。ちょっとマイレーネさんシミュレーションしてみるわ」
よめの身体が膨れ上がります。
「…しまった。闘気までシミュレーションしたぜ…」ああ、かにさんすーつが破けてますね。下着は着けてるから大丈夫なようですが。
さるがその姿を見て飛びかかり…逃げ出しました。
「あっちょっと待て!何逃げてんだてめぇクソ猿!…しまった、もう少し手加減すりゃ良かったぜ…あーつまんねー」ええ、マリア様が逃すわけがありません。さるは一瞬で引き寄せられています。更に吸い取られて小さな姿になってしまいました。
「な、ななな何をしよった小娘!斉天に掛けた術を一瞬で外すとは貴様なに奴!」坊さんが慌てていますが、マリア様知らんのですか。
「知らねば言って聞かせましょう」その横に凛ちゃんが立ちます。
「この方こそ痴女皇国の先帝陛下にして現・上皇」げどうちゃんが左に。
「マリアリーゼ様じゃ、よく覚えておきや三下ども」凛ちゃんの更に右に悦吏子ちゃん…きつねのおばちゃん状態ですね。
「で、アルトこっちこっち。これあたしの旦那役で痴女皇国で二番目に強いアルトリーゼな。こいつを打ち負かせられたらあたしが褒めてやるぜ。それに…今はな、あたしより強いのがいるんだよ」マリア様、そこでウィンク。
(え…あたくしはマリア姉より…)
(ビビるんじゃねぇベラ子。気迫だ気迫。それにお前にゃ加勢がつく。だいいち加勢なしでも、黙ってたってあんな三下、てめぇの敵かよ。自信持て自信)
(はいっ!)
「ふっ、我が姉が褒めて下さいましたが…痴女皇国二代目皇帝マリアヴェッラ・ボルジアでございます。玄奘三蔵とやら。そなたの腕や魔羅に覚えがあるなら受けて立ちましょう!」かぶき役者のように上着を投げ捨てて名乗るりりしい姿。ジーナ様譲りの大柄な体格がめっちゃかっこええです。ぱちぱち。
あたくしも騎士時代からアレーゼ様などに「見た目からしてこいつは出来るように見られる事も戦いを有利に運ぶコツだ。聖院騎士として恥ずかしくない立居振る舞いを心がけろ」と言われていましたが。
(叔父の影響です。あと、叔父の愛人のスカートまくりの直伝でして。ほほほ)
「さててめぇら。よくもウチのやり口を下手に真似して好き放題しやがって。泣いて許しを乞うなら今のうちだぜ?」
「ふん。何者かは知らんがよくも大口叩けるものよ。平天。やれ」
「御意」言うなり、おぢさんは手近な女の人に噛み付いています。ひぇっ。
「ふーん、悪魔化できんのか」
(ちょちょちょおばさま!あれソロモン72柱の悪魔モロクじゃないですか!何であんなの出てくるんですか!)おぢさんが何か巨大化してます。しかも頭が牛さんに変わってますね。
「先帝陛下。うちが殴りましょか」外道ちゃんやる気満々です。
「あのボケ…よりによって地底魔王の技を地表でやらかすか…外道丸はん…これは、枷をはずさな無理ちゃいますか?」
「まーまー、ここで怪獣大決戦やられても迷惑じゃん。それより大江組3名、ちょいと頭の中を貸してくんな。アルト。あの牛魔王はMIDIで泣かせるから、お前はベラ子と二人で坊さんヒイヒイ言わせてくれや」
「了解」言うなりベラ子さん、あっという間に鞭を伸ばして坊さんを縛り上げてしまいます。
「あらほんとだ。…ねーさん。この人、あたしらで言うとせいぜい百万卒くらいですね…とりあえず動けなくしておきますよ」
「んじゃベラ子、アルト。意識貸せ。あと、さっき渡したアレ出せアレ」
「はいはい」で、あたくしは袋に入ったものをマリア様に渡します。
「さーて、こいつがモロクなら口からファイアーくらいやらかすよな。MIDI06、兵装使用形態移行。見とけクソ坊主」
…かりばーんが降りて来た次の一瞬…あたくしが例のあわで水中を飛ぶように泳いでるような姿になりました。
かりばーんの下に、人に近いけど腕が六本の姿のものが取り付けられています。
さっきまでのかりばーんの下がふくらんでいたのは、このお人形さんを隠すためのかばーなの、あたくしは知っております。
うしが口から火を噴きましたが、みでぃがかばー…たてにもなるそうですが、それを左の上のうででかざすと、その手前がきらきら光って炎が吸い取られてしまいます。
「重粒子格子構造障壁。ルドゥタブルF1弾頭どころか、プリュトンの子弾頭全て分の核融合反応でも無力化するのに、たかだか数千度の火炎くらいでどうにかなるかよ。本当なら跳ね返して丸焼きにしてやるんだが…」
(あ、プリュトンってのはCMM-08、アレーゼおばさまが昔呼び込んじまった連邦の駆逐艦に積んでた対艦対惑星大型ミサイルだよ。獣帯級駆逐艦には艦前方に二発。係留搭載した雷電…無人航宙戦闘機には一機につき二発、雷電二機を係留してるのが獣帯級のフル装備だから、合計六発だ。アルト、前にかーさんが獣帯級駆逐艦を何としてでも沈めないと聖院地球が完全に滅亡するっつってただろ。これな、プリュトンに積まれてる破片拡散型対艦爆雷のSBAC100五発と、超短波レーザ爆雷弾頭のGRAC100が六発。こいつら全部、ルドゥタブルと同じ出力の穢れ弾を起動爆発に使うからだよ。対地弾頭として使うと、プリュトン一発だけでも地球表面の生物の八割が死亡して世紀末覇者が必要になる世界になっちまうんだ。だから、あたしやかーさんがMIDI05…まだ06にアップデートしてなかった奴を緊急起動してでも止める必要があったのさ)
(ですよねー。あんなの使われたら痴女化した今ならともかく、女官体質のあたくしたちですら…)
(なるほど、つまりわっちや外道はんが本来の姿になったくらいでも、あの木偶人形みたいなの使えば片手でひねれると…)
(そゆこと。某おっさんや、ワーズワースの祖父様が、簡単に使うなよって仕掛けにしてる理由がそれよ。今からやるけど、あの牛、火星に連れて行くぜ。大気組成に酸素がねぇのに火が噴けない場所に連れて行きゃどうなるかな)
(こらこら!殺すな!あんな牛でも酸素呼吸が必要な炭素系生物のままやねんぞ!あ、金星の暴風大気下とか水星の灼熱環境下も禁止じゃ!)
(んじゃかーさん、ガニメデとかカリストとかアナンケとかエンケラドゥスとかタイタンならいいのかよ)
(あかん。エウロパの水火山に放り込むのも禁止。前方後方トロヤ群もあかんぞ。トリトンとかカロンに連れて行って瞬間凍結も禁止な。せやから普通に超光速粒子銃、マジェステックキャンセラーモードで当ててちゃっちゃと人に戻したれ!)
(へいへい、見せ場のないこって。あ、せっかく用意したんだし、豆型アミノ酸結晶剤で行くわ。MIDIのマイクロマニピュレーターなら豆掴んでぶつけられるから、鬼は外じゃ)
(そもそも今がそうですけど、みでぃってがんなんとかよりおおきいんですよね。あのうしさんが今じゅうめーとるくらいですか、そのにばいはありますね)
(だから暴れんなよクソ牛っ。ま、左手第二腕と第三腕で襟首と頭掴んで持ち上げてっけどな)
(信じられへん…牛魔王状態の平天が赤子同然や…)
(つまり、うちが鬼化しても…)
(まりやはん、あの人形…海の中も…)
(あ、水中行動はあまり得意じゃないけどな。圧壊深度は一応あるけど、MIDIの慣性制御駆動装置の重力制御機能でのしかかってる水の重さ、マイナス質量にすらできるから。ついでに、今牛に撃ち込んだ超光速粒子銃。あれ、障害物突き抜けて効くから)
(つまり…隠れても無駄…)
(そゆこと。稼働させたあれを止められるのは同じMIDIまたはM-IKLAって言う上位互換兵器でないと無理。あたしが痴女皇国建国して武力的に強気だった理由の一つさ。仮に魔法や神通力が使えるやつがいたとしてもあれにゃ敵わないよ。そのふざけた幻想を物理無効化できるんだから。おかみ様なら足止め出来る可能性があるが、あれの上位互換がいてな。機械のくせに神様と同じこと出来るんだから始末に追えねえ。ま、その機械の神様がミスしたせいで、あたしが寝たきり状態なんだが…ほら、あとは玄奘だけだぜアルト。ベラ子と二人で痴女にしてやってくれや)
「はいはい。玄奘とやら。貴方の手駒、これで全て失われたかと存じますが。これでも歯向かいますか?」
「当たり前じゃ!わしの知識も見識も全て否定された故国許すまじ!仮に我が身が滅びようとて末代まで祟ってくれようぞ!」
「…玄奘殿。それが釈尊の教えでしたかな?」あら。どなたでしょ。頭つるつるでごうじゃすな…けさというんですか、お坊さんのふくを着たおぢさんが来ました。
「陛下。中原の方は李自成を折伏致しましたが、この件ですかな?拙僧が呼ばれましたのは」
「ええ。この困った御仁に一つ説法をと思いまして。是非にも漢文詩文の才、ご披露頂きたく」マリア様がていねいにおはなししてますから、かなりえらいひとなのでしょう。落ち着いた感じで頭の良さそうな陽気さがあります。
「ああ、みんなに紹介しとこう。八百比丘尼国の中原担当外交官長、景轍玄蘇閣下だ。禅宗の高僧でもあらせられる。御坊、玄奘法師は見ての通りのなりだが、これでもかつては仏門の人間だろ。可能なら痴女化してでも、やらかしを償う気になって欲しいのだが…」
「いやはや上皇陛下、拙僧の如きしがない坊主にかように丁重な扱いを頂かずとも…のう、玄奘殿。そなた、何故にそもそも天竺に行こうと思い立ったのじゃ」
「玄蘇殿と申されたか…鳩摩羅什をご存知であろうか」
「ふむ。初代三蔵と讃えられた方でありますかな」
「左様。拙僧も原典に触れて世に教えを説く想いはあれど…」
「誰も耳を貸さず、かのう。そもそも釈尊とて、誰でも彼でもが釈尊の尊き教えに耳を貸してくれた訳ではあるまい。それでも諦めずに説いて回られたからこそ、彼の地に初代三蔵が蒐集出来た程の経典が残っていたのではありますまいか? だいたいが、釈尊自体がまず自らが悟りを開かねば教えの効能もないとされ、みだりな苦行を廃し瞑想に至られたかと」
「その辺りも正確に知りたいが故、天竺を目指す思いがございまして」なんか、いつの間にか玄奘というおばはんが素直になってますね。
「例えばですな。仮に玄奘殿が鬼と化してから今に至るまでに千人を喰ろうたと致しますぞ。では千人産めば辻褄は合う」
「ふむ…」
「じゃが、人の身では子を千人孕んで産むだけでも一苦労でござろう。然るに…愚僧の考えですがな、経典一本あればですな、複写のわざをお持ちの方々が仮におられるならば」そこでげんそなるおぼう様は、マリア様とベラ子様をちらり。
「千人に経を配り、学ばせれば千人に教えが説けます道理になるかと。更に万人に配れば万人全てでなくとも教化感銘されるものが出でましょうや。即ち、一千人の賢き子を産むに同じ。これが教えの基本ではありますまいか」
「しかし、かように容易く写しが出来るものやら…」
「ふっふっふっ。さて玄奘さん。ちょいとばかし、これを見てもらおうか」マリア様が一冊のうすい本を出されます。
「これは…別の世界のあんたが天竺から持ち帰った中にあった経文を書物にしたものだ。で」般若心経とか書かれてるほんをげんそのおじさんに渡されます。玄奘のおばはんは縛られたままなので、げんそのおぢさんが本をめくって中を見せてあげています。
「活版印刷ってわざが西洋で開発されてね。これからこの世に広まるんだが、上手く使えば…そうだなぁ、製本作業って言って、本にするわざは必要だが、あたしらの持ってる罪人工場でやれば、一週間ありゃあ十万冊はこれが複製できるんだわ。どうだい。教えが世に広まるかは別にして、教本や経典自体を読みやすくして広く配ることは不可能じゃないんだわ」
「のう玄奘殿…失礼」げんそのおぢさんがふところから短い刀を取り出して、いきなり自分の手のひらにぶっすりと。
「まぁ、見ての通り刀が刺されば血も出る訳だが…ほれ玄奘どの、今の御身は血の匂いに食欲が湧かれますかな?」おばちゃん、くびを横にぷるぷる。
で、マリア様がその傷に手をかざされると、あら不思議元通り。
「そしてこのわざじゃ。これは決して神業でも妖の技でもない。出来るかどうかはともかく、理屈の上では筋が通る話なのじゃ。わしらの身体に元々備わる、傷を塞ぐ力を助けて貰うたに過ぎぬ。しかし、出来ぬものからすれば奇跡だの霊験あらたかな御技に見えようて。同じ書物を何冊も拵える技と根は同じよ。どうじゃ、罪滅ぼしと思うて、梵語の書物経典、ほんにする事、生業にする罰を受けられては如何か。そなたの本望でもあろう?」見ると、何冊ものまきものや本がそこにあります。
「あんたが持ち帰る筈だった梵語の経典や文献だ。六百五十冊以上だったかな…あたしらがいた世界の玄奘法師は唐代にこれらを持ち帰ったんだ。で、経典の全てを生涯に翻訳は不可能だったが、あんたの教えた後進が作業を完遂し、玄奘三蔵法師の偉業を讃えて後世にも伝わっている。中原大陸や日の本など、漢語の伝わってる国で釈尊の教えが広まってんの、うちらの世でのあんたの功績なんだよ」
「わしが…わしがあれを全て漢語に読み替えたと申されますのか」
「んだ。あと、西域の事情を伝えて不毛不踏の地の開拓開発に貢献してんだよ。西方と中原の交易路の整備にはあんたの知見も一役買ってんのさ」と、そこで悪そうな顔をするよめ。
「なぁ、玄奘法師。あんたに寿命…ま、最低でも人間の十倍以上の長寿と、そして研究の場所を与えられる権限のある人間がここにいるんだわ」と、ベラ子様を呼ばれます。
「で。痴女皇国には修学宮という学舎があってな。そこで教えてる非常勤講師に、こういう人もいるんだが…玄蘇閣下。ちょいと呼びたい人がいるんだけどさ、身体、拝借していいかい?元・さる国の王子様で妻子ほったらかして悟り開くために家を飛び出した悪人なんだが」にやにやしてはりますね。げんそのおぢさんも、誰を呼ぶのかわかってにやにやしておられます。
そして、一瞬だけ顔を下げたげんそのおぢさんが顔を起こして口を開きます。
「はい、呼ばれたのだが…うーん、僕はこれ全て言ったり説いた訳じゃないからねぇ。ただ、弟子たちの言いたい事も分かるんだけどさあ」げんそのおぢさん、何かがのりうつったらしく、山のように積まれたほんをぺらぺらめくっては文句をいうてはります。
「いやいや、あると君だっけ。僕だけじゃなしに、あの髪の毛の長い髭ぼうぼうの痩せた人いるでしょ。麺麭を何個も増やせたり、十字架にはりつけにされて死んだけど生き返ってたお兄さん。彼もさ、私はこんな事言ってないとかよく愚痴をこぼしてるよ。あ、玄奘くんだっけ。よかったら痴女宮で君も講座持ってみない?時間があれば僕の講義の時に来れるみたいだし」
「あ、あの…どなた様で…」
「あ、そうか。玄蘇氏の身体を借りてるからわからないか…まぁ、君の信じていた宗教を興した鼻祖開祖扱いをされている、しがない元王子だよ。マリア陛下には無茶苦茶な紹介されたけど、あれ、後できちんと謝罪に行ったし、父からは息子が立派な行者になったので鼻が高いと許されてるからね?」
「玄奘殿。釈尊にあらせられますぞ」一人で声色を使い分けているようにしか聞こえませんが。ですが、瞬間的におばちゃん、ひれ伏してはりますね。よほどえらいひとなんでしょうか。
「アルト…比丘尼国にでかい像作られたり、遺骨を分けられてさ、それを納める塔を世界に何万本も建てられてるおぢさんだからな…」
「陛下…あれ正直、紛い物の骨も多いですし。それに建立に必要な労力や資材を考えると、もう少し別の事に使って頂く方が衆生のためになると思うのですがねぇ。ま、それはともかく。玄奘くん。君さえ良ければ、僕からマリアリーゼ陛下とマリアヴェッラ陛下に口添えしておくけど。どうだい? 一度、君の話を聞く人間がどれだけいるか試させてもらわないかい?」
「うちは優秀な教育者であれば歓迎する。あと、研究者に対する支援を惜しんではいないつもりだが…殿下、ご自身が聴講生として他の教務者の講義を聞かれている立場としては如何かな?」
「有り体に申し上げましょう。僕が存命中に知っていれば、衆生に説く話を少し変えていたかも知れませんな。特に栄養学について知識があれば、菜食主義をもう少し緩めていたでしょうな」
「え…獣の肉は…」
「あの…君達も習っておいた方がいいよ。菜食主義を貫き過ぎると身体に良くないからね。早逝はまだしも、正常な思考を妨げたり、業病の遠因になると聞かされるからね?」
「玄奘さん…骨ってあるだろ。あれの成分は骨か、それに類する貝殻などを摂取するしかないんだよ。肉や魚、最低でも牛や山羊の乳を食べないと、骨や歯が脆くなるんだ。他の動物を食べるのにはちゃんとした生物学という学問を調べる過程で必要性がわかっているんだよ。…ま、人を食うのは遠慮願いたいが」
「玄奘くん。僕が僧侶をやっている際に、苦行で弱った身体を乳粥で回復させたという逸話があるだろう?あれと同じような事だよ。人の肉と同じ成分の栄養も、本来は取るべきなんだ。長い修行と言ってもいい、数代に渡って限定された食生活の果てに、芋を食べて人肉に近い滋養に変える技を体得した種族もいるようだけどね」
「とりあえず苦行は無意味だとまでは言わないが、あそこにある山のてっぺんに上がる方がよほど神様や仏様の領域に近づけるぜ。ま、空気が薄くなるし気温も下がるから人間どころか普通の生き物は生きてられねぇけどな。ただ…あそこの一番高いところ、人間が立つんだ。うちらの歴史で言うと1955年。今から400年近く後だがな」
「あそこに、ですか」無茶言うなって顔してはりますね。痴女なら普通に登れますよ。
「ああ、あのカンチュンジェンガって名前がつく山はこの世界で三番目に高いんだが、あそこの方の二番目と、えーっと、チョモランマはあれだな。この近辺にある一番高い山と二番目と三番目は三つとも、ほぼ同じ時期に登山に成功しているよ。ただ、そこに至るまでに、尊い犠牲を各々の山ごとに数百人は絶対に出してるけどな。亡骸の回収すら難しいから、死んだ場所に放置されている死体も珍しくないのさ。それでも人は困難に挑むんだよ。あんたも天竺に来ようとしたろ?」マリア様が聖環でその死体のがぞうを見せています。
「この中には何でそんな、水が凍るどころじゃない寒さに加えて、平地の三分の一まで空気が薄まって体の動きを阻害する死の場所に行くのかと周りに説き伏せられた奴もいるんだ。だが、その男は「そこに世界一高い山があるから登るのだ」と言い切って、生涯を賭けて目指した山で遭難して、ここにいるんだ。いや、うちらの時代…あんたたちの時代から600年くらい先なら流石に回収できなくはないんだ。だけど、山に挑んで死んだなら山が墓標になるだろうし、空気が薄くて寒いから乾きこそすれ腐らないんだよ。だからそのままにしておく方がいいという意見が多くてな。あと、こいつはその登山家とは別の男だが、この死体、緑の靴を履いているだろ。で、この側に難所があるんだが、難所が近いよって目印にもなってんのさ。こいつを間抜けだって馬鹿にする奴は恐らくいねぇよ。…神の山に挑んで力尽きた英雄さ。そして、人の限界に挑むのは命がけだよって、後に続く奴を導いてんのさ。どうだい玄奘さん。こいつらは全て無駄死にだと思うかい。こいつらの人生は全て無駄だったんだろうか」
「わしと…わたくしと同じに思えまする。この方々は困難と限界に挑まれた方々に思えまする」おばちゃんは泣いています。マリア様が何を言いたいのか。なぜ、げんそのおぢちゃんが微笑みながらおばちゃんを見ているのか。
「ねぇ玄奘くん。君は鬼の力もあったと思うが、ここにいるじゃないか。そして、マリア陛下は君を人の世界に返すつもりだよ?もし君を裁く必要があるなら、君を人の姿に戻して裁くおつもりだ。だが、裁く前に、君が君自身で、僕の教えや弟子の教えを学び直す気があるなら、これからの生涯を賭けてそれをすればいいと思っておられるんだよ。普通は人を一人二人殺せば死罪だし、僕も悪事を働いて、罪の重さを自覚しない者にはそれなりの話をしてきたんだ。だが、君がその罪を自覚して、千人を食い殺したのなら万人、万人を食い殺したのなら億人を救おうとするならば不問にしよう。実際、マリア陛下の世界ではね…四億を超す人が、君の成果によって僕を敬ってくれているらしいんだよ。どうだい。違う世界の君が成し遂げた偉業を自分自身で理解することが出来たかい?」
「玄奘さん。どうかな。せっかくあんたが信じかけた教えを開いた師匠も人生は勉強だって言ってんだ。真剣に学ぶなら力になるぜ」
「玄奘くん…あれ…分かるかな」ぱんちぱーまのおぢさんの本体が薄く見えるげんそのひとがみでぃを指します。
「陛下に言わせるとね、あれは神や仏と同じ事が出来るらしいんだよ。あれの一つ上の存在は僕も、髪の毛の長いお兄さんもよく知ってるけどね。あれも、そして彼もね。人が造ったんだ。わかるかい。人は神様の力と、神様の考えを持つものすら作れたんだよ。ひとが、ね。君だって元々人だろう?人が人を千人産むのは不可能でも、千人や万人や億人を救う技に目覚めることはできるんだよ?」
「承知致しました。釈尊…そこな経典、拙僧にお預け頂きませんでしょうか。必ずや訳典を完成させて見せます!」もういちど、おばちゃんがひれふしています。
「マリア陛下」
「おーけー。話がまとまった記念だ。いいもん見せてやらぁ。おーい白マリ、テンプレス、今空いてるかい?」
---------------------------------------------
元王子「あー、やっぱり僕の名前…」
黒マリ「まー仕方ないですね。パンチにされないだけマシだと思って」
ジーナ「実はパンチにしたかった天の声だが、流石に仏罰を恐れた模様」
元王子「あれも僕が言った話じゃないんだけどね。経典の中に仏像を彫ったり描く場合の規約を定めたものが存在するんだ。で、その中に仏徳を表す表現として、螺髪…らせん状の髪の毛にしなさいと定めてあるようなんだよね」
黒マリ「なるほど、キャラデザインや設定書だな」
ジーナ「確かに、守らせないと無茶苦茶描かれるからな…」
元王子「そういえば漫画の神様とかいう方が僕を題材に描かれたものがあるでしょう。あれ…あの方がかなり僕の事を調べた上で描いたのは本人から聞いたけど、やはり件の方が意図して入れた創作面があるので、現実の僕そのものではございませんよ。もっとも、悪くは描かれていなかったし、あの人の医者の話は感銘を受けたものも少なくないし、あの話を描くほどの方らしいなぁという大作だから、僕について理解を深めたい場合は一読を試みて頂ければ」
黒マリ「ああ、あのモグリ医者…」
ジーナ「わたしらの話同様、ヤバい事が多数描かれていて漫画の神様だから許されてる面があるとも…」
黒マリ「うちらの方が危険な気もするが、まぁともかく…非常勤講師としての講義内容はどのようなものが」
元王子「それがですね、僕はかなり古い人間なので、基本的に他の方…主に科学技術の講義を密かに聴講させて頂いています。これはロン毛君も同じと言っておられたな。あと進路相談要員」
黒マリ「確かに適役と言えば適役ですが…あ、多分、ロン毛氏か、殿下に一人お願いするかも知れません。人生とはなんぞやについて(にやにや)」
元王子「なんとなく想像は付きますが、相談が参りました場合は、相応に対応させて頂きますよ。ただ…僕の勘なのですが、その方はご自身で最終的に殻を破る必要があるのと、人生の苦楽を共にする人物が側にいた方がよろしいかも知れませんな」
黒マリ「その話はまた本編で語られるとして…殿下、何やら連邦社会に物申したい話があるとか」
元王子「ええ。まず真言宗立川流。あと電気抵抗というのですか、Ωな。ああいう邪教めいた要素の宗派に僕が関係あるように思われるのはちと困りますね」
黒マリ「流石にそれはないとは思いますが」
元王子「あと大聖歓喜天。あのあたりの波羅門が尊びそうな神様は、ちょっと寺とは分けて祀って貰えぬものかと…」
黒マリ「確かにあの神様はある意味煩悩を叶えるからなぁ…うちの国もあれほどではないけど…似たようなものか…」
元王子「痴女皇国での例の行いなら、草木に陽光が必要なのと同じでありましょう。それに、それで人が救われ苦しみ悲しむ者がいないなら、僕が取り沙汰する話ではないかと。…それに、男女のつがいでする場合、子作りに必要なんですよねぇ…」
黒マリ「やはりそうなりますよね。というわけで修学宮の密かな聴講生その一なお方でした」
元王子「なお、ロン毛君も聴講している方が多い方ですね(微笑)」
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