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アルトリーネの素敵な朝・牝豚調教編その4
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みなさま。
教育の場作りは大切だと痛感するアルトリーネです。
こういう段取り、というのですか。
ジーナ様のかいしゃの方々を拝見すると、あの方にしてこの方々というのがよくわかります。
…ですから、取って食べませんからつまみ食いくらいはさせてください!わたくしにも精気のノルマ、一応はあるんですから!(涙)
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さて、本日はあたくし、何故かクレーゼ様のお部屋で目覚めまして。
理由は、白金衣返却と、能力測定。
そして本日の午前のイベント向けの装備調整です。
そして、何故か浅黒い女性を筆頭に、学者様らしい方々を従えたジーナ様とクリス様が、朝も早よからクレーゼ様のお部屋に。
といっても、浅黒い女性は例の黒豚ダリアリーネではありません。
ジーナ様曰く、例のぽぴーのお国、そして葉っぱと樹脂の国の人の血を引くお方だそうで、えぬびーの軍人さんだそうです。
もっとも純粋な兵隊さんではなく、軍属と言われる「民間人なんだけど仕事の都合で軍隊に籍がある」人だそうです。長くカラフルな布を身にまとい、ばいんぼいんな人で眉毛も顔もめちゃくちゃ濃いです。
単にサレーニーさんと紹介されましたが、本当は苗字がややこしいそうです。
で、何でこんな人が来たか。
あたくし向けの試作衣装の製作に携わった集団で一番偉い人で、本来はきょうかふくとかいうえぬびーの軍人さんの着る騎士服を作る人らしいです。クレーゼ様のお部屋の一番ベランダ側は寝室なのですが、そこの先におっきなおふねが二隻います。
一隻は、昨日ここに来たばかりという、れぱるす。サレーニー様達ご一行は、これに乗ってこられたそうです。
…他に、例のぽぴーという花の件を調べに行く方々が乗っておられると聞かされました。
そしてもう一隻はてんぷれす。こちらは今日で一旦ここを離れて、あちらにお戻りになるのだとか。
ですが、ジーナ様のお父様の経営する飛脚屋の社員の方をお送りする為に戻ったあと、またすぐこちらに戻られるとか。
てんぷれすはべらんだの少しよこの方に作られたさんばしに停泊して、その社員の方々をお待ちしているようです。
で、サレーニー様。あたくしの側に来たらわかるんですが、ものすごい濃い匂いがします。
(あー、サレーニー博士、インド系やからな…この人種の人は香料や香水きつめが多いんや…あと、額のルビーみたいな石はわしらでいう結婚指輪みたいなものでな。人妻やという標識やから触るなよ)
ジーナ様が注意の思考を送ってきます。
どうももともとの出身地がいぎりすという国の植民地なのに加え、宗教上の決まりがもーんのすごくややこしいところの人みたいですね。
とにかく、ジーナ様の世界の人としては初めて見るタイプの方です。
とけいの翻訳機能とやらで聞いてみると。
「とりあえずこれで午前中動いてもらいましょうか」
「ワーズワース女男爵少将ならびにワーズワース準男爵、こちらのマルチウォッチのアプレットで、装着者のサーマルキャパシタの状態がモニタ可能です。お試しを」
「今で40度か…」ジーナ様がとけいの浮き画面と、あたくしの背中を見ながらふんふんとうなずいています。
「今回はテストモデルMk.2。通常装着用で完全実戦仕様ではありません。パージ温度はキャパシタモジュール部と熱交換ジョイント部で90度、レオタード・ブーツ・グローブは80度に設定。着用者の体温を見ながら順次上げていこうかと」
「問題は模擬戦をした時ですね。刀剣による近接戦闘なので対戦者の力量差など不確定要素がありますが、とりあえず60秒は欲しいところかなぁ」
「どや。アルトくん今は暑くないか?」ジーナ様が聞いてこられます。
「冷やされている感覚はありますね。今のところは大丈夫です」
「あと念のために金衣騎士正装持って行っとくか。現状はパージ後の再装着は出来るんかな」
「熱交換ジョイント部のパージ条件次第ですね。冷却液補充はある程度は必要かと」
「しかし何やねんこの黄金騎士。牙◯斬馬剣持たして金鎧つけた馬に乗せたくなるのう。うはは」
そうです。この服、長靴から手袋から全て金色なのです。
といっても、透明な膜のような薄くて柔らかい素材の中に金箔を入れているようでして、見た目よりはかなり軽い感じです。
元来はアルトリーネな部分と尻穴すら覆うそうですが、こちらの生活習慣をジーナ様が説明された結果ですね「あなあきながそではいれぐてぃーばっくれおたーどへそあなつき」という外観に決められたそうです。
この薄い素材の中に冷却液という特殊な水を巡らせて、主に背中のマントから放熱する仕掛けだとか。
「本当は流体金属が使えたら最高なんだけどねぇ」
「まぁ、それは今後の課題にしましょう。金衣という方なら物体空中浮遊能力があるそうなので、実戦用なら周囲にフローティングシールドを配置する事も可能でしょう」学者らしい方々が色々言っておられますが、とりあえずわかりません。
しかし、頭の中を拝見すると従来のわたくしども騎士よりは、金衣の方々の使う技を多用した新しい戦い方の提案を含めてお考えのようです。ものすごい発想力です。
「おねーさま、仮にマント切られたらどうなさいますの?」クレーゼ様が聞いておられます。そう、この服のマントはかなり重要な役目があるようです。
「はっきり言う。考えてない」
「ええー!いくらダリアリーネがまだ上級新人でも、剣の一太刀も当てられてれいきゃくえきとやらが漏れたら困るのでは?」
「確かにそれもそやな。アルトくん、その子ってどんくらい強い?」
「…瞬殺とはいきませんね、じゅうびょうは頂きたいかと」
「ほな、例のズル技いくか。クレーゼさん、白金衣言うんか、あの黄金騎士服なしでも使ったら効き目あるんやろ?」
「ま、あたくしなら瞬殺して当たり前ですわね」
「よぉーしよーしよーしよーし。ほな、アルトくんは手順を復習。クレーゼさんは魔法の呪文を復習な」
「ごーるどふゅーじょんしょうにん、で間違いございませんわよね」
「そうそう。まーほんまは承認の掛け声いらんねんけどな、あと、この方法では99.9秒経過後自動解除されるからな、いずれは残時間表示をどこかに出せるようにしたいが、現状はアルトくんの注意力にかかっておるな」これご説明が必要ですわね。
昨晩、ダリアリーネの一件について打ち合わせていた際に少々手順を変更したついでに、ジーナ様とクレーゼ様が以前ごらんになっていた「金色の鎧を呼び寄せて戦う騎士様のえいが」を参考に新型衣装について白金衣の力を使って働きを助けるという事は出来ないかと検討されまして。
で、白金衣の力をごく短時間でも使えたら色々はかどるのではと、墓所出禁が解けたお礼ついでにクレーゼ様がご相談されると「面白い考えである。短時間ならいちいち我らに相談せずとも、クレーゼの裁量でぱわーあっぷ可能であろう。長時間の白金衣昇格が必要であれば別途我らに願うとして、かっぷらーめんとやらが作れる時間くらいならばクレーゼに任せてよかろう」というお答えを頂いたのだとか。
で、あたくしの負担軽減と安全のために、決められた時間を超えると自動的に元の駆け出し金衣の状態に戻るのだとか。
そうです。
このアルトリーネ、晴れて金衣の末席に加えて頂く事になりました。ついでながらアレーゼ様は銀衣のままですが、こちらはマリア様とペアを組んでおられるのでこれまで同様、必要に応じて金衣に一時的昇格されるという事を続けられると。
ただ、今までは「バレバレではあるが内緒でこっそりやっていた」のをマリア様の地位で公式に堂々と行えるように認める書類を、ダメル子が泣きながら作っている最中らしいです。今度はちゃんと回覧してくれるとは思いますが。
そしてこの書類は一連の昇格人事のりんぎしょとして、関係者に回るのですが、あたくしの金衣扱いやクレーゼ様の侍従騎士任命の承認についても触れているのだとか。
ええ、ちゃんと作って回覧しないと金衣権限でダメル子をおしおきしようかと。泣かす程度でやめようとは思いますが。
「そしたらこっちはこれでいけると思うわ。サレーニー博士、もう一人の方にかかりましょか」
そうです。
クレーニャの新型服の試験着用も今日行うそうです。
で、体から出ている熱気の正確な測定のためという事で、クレーゼ様は昨晩わたくしやクレーニャが側で寝ているにもかかわらず伽禁止をジーナ様から言い渡されておりまして。
さぞや悶々とされているかと思いきや…なんかやけに清々しいお顔ですよクレーゼ様。
あと、あたくしのリトルクロウの柄、ちゃんと洗って拭いておいてくださいよ。ムカつくので朝もはよから汚した本人に口で掃除させましたが。
…で、クレーニャの方はもっとすごいです。
まず、首から下の素肌の露出は股間以外ありません。
ジーナ様いわく「ぎんいろのぜんしんたいつ」だそうです。
更に銀色のはいれぐれおたーどを重ね着しており、背中から羽根状のマントが垂れています。これ、戦闘などで激しく動いた際はねつこうかんそうちとして、勝手に広がるのだとか。
このほうねつよくが開いた姿を見たジーナ様、ふぇらりおと呟いていました。ふぇらちおの間違いではないそうです。
そりゃ、こんなものを着用図と一緒に渡された時のクレーニャ、驚きますよね。
一部のにゅーはーふや世紀末覇者以外、肌を露出する事が基本なわたくしども女官にしてみれば、全身を覆う服装がいかにかるちゃーしょっくか。クレーニャの姿を見たクレーゼ様、興奮のあまりでかるちゃーとか叫んでましたし。
わたくしにしても、足の指が見えない履き物がこの世に存在するとは存じておりますが、まさかこんなブーツなるものを履く事になるとは。
どうでも良いのですが、やたらにヒールが高いのを告げますとジーナ様が「うちが沖縄で履いてたんと同じ8cmや。慣れなさい」とあっさり申されます。うう。
そしてジーナ様、クリス様、クレーゼ様、クレーニャとわたくしは侍従女官からの連絡で、水圧籠で下の階に降りてアレーゼ様やマリア様と合流します。
そして、とある人物から銀衣正装姿の騎士の引き渡しを受けます。
そうです。なまいきなくろぶ…ダリアリーネと、専属従者としてついた下級騎士は、この聖院のトップクラスの重要人物勢揃いの状況に固まっています。
まぁ、無理もないでしょう。彼女らをここに連れて来たのはマイレーネ様なのですから。
朝一番で部屋の扉をノックされて、誰よと開けたら世紀末覇者が腕組みしてたらそりゃ漏らすか倒れるでしょう。
今のあたくしですら、腰を抜かさずに立っていられる自信はありません。
更に、ついこないだ遅刻を咎めひざまずかせた同格(に見える)騎士が、今までに見た事もない装備で雲上人の皆様と歓談しておれば、よほどのアホでないかぎり「自分が何やらかしたか」察するとは思います。
そんな彼女たちに、クレーゼ様が「ごめーん日本からのお客様が帰るから、ついでに見送りのメンバーを一人でも増やしたいのよ!この後ちゃんとご褒美あげますから楽にしててね」などとフォロー入れてますが、そりゃ固まりもしますって。
で、旅装姿の一団が、向こう様からすれば露出狂かこすぷれいやーにしか見えない我々に眼を剥きますが、ああここはこうだったなと思い直しておられます。
タヌキという生き物を連想させる方にクリス様、こちらの世紀末覇王ほどではありませんが、割と似た感じの壮年の男性にジーナ様が挨拶しておられます。
ジーナ様が急な話で残るハメになって申し訳ない。なるべく1週間以内に戻るようにするとその方にしきりに謝っておられます。
なんでもこのタケウチ様、ジーナ様の幼い頃から陰に日に支援して来られた大恩人らしく、決して足を向けて寝れないお方だそうで。
ジーナ様の恩人とあらば下にも置かぬ扱いをさせて頂きたいところですが、ご本人はお年を召して女より酒・飯なのだとか。
そして細身の理知的な雰囲気の男性とクレーゼ様は大変に面識があるようで、日本式だという頭を下げ合う挨拶を交わしておられます。
なんでもこちらの商会の勘定方をしておられるタナカ様という方で、今後は聖院の経理指導にちょくちょくお越しになるそうです。
あとはなかば慰労でお越しになったというご家族連れの方々と、独身の殿方の一団です。
実は独身の方々はわたくしども女官をよく知らぬということで、到着直後にわたくしとクレーニャに、剣を抜かずに組み手めいた演舞を少しだけ見せておけとジーナ様に指示を受けたとおりにしましたところ…真っ青になっておられました。
で、ジーナ様が「このちょっと褐色の子が、銀髪の上級騎士では二番目に強いから速いのは当たり前やけど、こっちの赤毛さん、髪の毛の色とかフリーダムな下級騎士組の平均的な子な。で、騎士の子と文官の子らは二年サイクルで仕事入れ替えてるから文官も今の子らとだいたい同じくらい強い。つまり、合意なしに手を出したら、剣なしでもどうなるか…君ら、ほんまに注意してくれよ。ただ、君らがちゃんと頼んだ場合は時間があれば各自判断で受けろとは言うてるから」と、きつく注意をしておられました。
…あたくしを避けるのはともかく、クレーニャにすら声がかからなかったのは納得がいかないのですが、タナカ様から言われて納得がいきました。治安のよい向こうの方々からは、わたくしたち騎士が帯剣しているだけでも畏怖の対象に見えるのだ、と。
「こちらでは我々平民の武装は一般的ではないので、武官待遇を受けておられる貴女がたを当社独身社員が避けるのも無理はありません。これが最後ではなく、彼らも今後は交代でお邪魔する事になりますので、どうか仲良くしてやって下さい。そちら様がご希望なさるなら、私や武内からも、彼女達も君達の話を聞きたがっているとは伝えておきますよ」と、さりげなく申し出て下さいます。
ええ、こんな紳士な方ばかりならば下院は天国でしょう。
残念ながら奥様はじめご家族がいらっしゃるとの事ですが、もしかしたらマリア様の絡みでご家族を連れておいでになるかも知れない、その時はよろしくとお願いを受けました。
ええ、今後は金衣としての公式業務もあるから慣れておけと、わたくしもお見送りのご挨拶に回らされています。向こうの方々は剣はともかく、こうした対談対話には慣れていらっしゃるから参考にせよ、と。
皆様が乗り込まれると、階段を仕舞ったてんぷれすがゆっくりとがんぺきを離れて、ほとんど音をさせずに真横に動いていきます。
そして空中に浮かび上がると、ちかちかと灯りを点滅させてから一瞬だけ輝いて消えていきました。
次の瞬間には、てんのうじという場所の上空にいるそうです。わたくしもいつかお邪魔してみたいものです。
変態との出会いだけは勘弁して欲しいですけど。
で、クレーゼ様とダリアリーネと従者は、皆様と別れあたくし達二人を伴って聖炎宮に入ります。
何度もこの痴女の底なしの性欲の犠牲になっているわたくしには馴染みの場所ですが、ダリアリーネと従者はもちろんクレーニャもお初です。
キョロキョロ見回しそうなので、後でゆっくり見れるから今は不敬な挙動は控えておけと心話で言い渡しておきます。
で、聖炎宮はジーナ様いわく、少し小さめの円型闘技場めいた建物です。
中央に安置されたクレーゼ様用の寝台は、いずれこれに寝てファイヤーする予定が決まっている痴女が嫌そうに例の技で浮かせて隅に片付けていました。
あたくしには今更ですが、これまた新人たちには目を丸くする光景ですね。
「さて、ダリアリーネ。楽になさい。此度貴女を呼んだのは、ここにいるアルトリーネとこれから模擬戦…剣術試合をして頂きたいからです。貴女が選ばれたのは我が娘マリアリーゼの選定でして、上級騎士の戦闘時に身体から出る熱を測るためのものです。あくまでも新しい騎士正装を開発するための資料を作る目的であり、騎士として普通に戦えばよろしい。勝敗の結果で貴女の地位を云々する事は全くありませんので安心して欲しいのですが、だからと言って手を抜かれても困ります。ましてや相手は朕の侍従に任命したばかりとは言え、本来なら改名してアルトリーゼと名乗る立場のもの。そこでですね」
「はっ」踵を揃えて直立不動でダリアリーネがクレーゼ様の次の言葉を待ちます。そうです。新型放熱服のテスト要員としてマリア様選定の騎士をクレーゼ様が呼んだという口実で、これからダリアリーネをシメ…先輩として慈愛に満ちた指導を行うのです。
「ダリアリーネ。この黒い下帯は、歴代の金衣銀衣に伝わっている秘蹟の秘具、黒絹そのものです。見込みある騎士を鍛える為に使われるものです。その効能は、本来の騎士の力を倍に引き上げます」クレーゼさまは、その手に持ったふんどしをダリアリーネに見せます。つまり、この呪いのふんどしを締めたダリアリーネは、昨日までのあたくし程度に強化されるわけですね。
「ただし…この黒絹は禁断の秘具でもあり、普段は墓所の奥に隠されており、このクレーゼですら容易に持ち出す事叶わぬ呪われし宝具でもあります」
うそです。
もう衣類庫から手ぬぐいや体拭きを持ち出す感覚であっさり持ち出してこれました。
クレーゼ様、役者感に満ち満ち過ぎるくらいに話を盛りまくっています。
ちなみに先程のてんぷれすを見送ることもあり、クレーゼ様は金の鎖を何本も垂らして出来たマント状の外套を羽織っておられます。
更に痴女衣装には間違いないのですが、各所の鎖が二重三重になったゴージャス感二倍増しの装身具を身につけたお姿です。
賓客を迎えたり会談を行うための典礼装ですが、実はまだこの上に晴れの儀式用の儀礼装が存在するそうですが、クレーゼ様をよく知らないダリアリーネからすれば充分に威厳に満ち満ちて見えることでしょう。
一見すれば、五人しかいない非公式とはいえ、これぞ金衣列席の荘厳な儀式に見えますが、事情を知るものには爆笑コントなのが困りものですね。
ただ、ダリアリーネを教え導く目的があるので真面目にやってはいますが…ええ、クレーゼ様を通じて成り行きを見ているはずの歴代金衣様銀衣様が地下墓所で大爆笑してるのが、金衣なりたてのあたくしにも思いっきり伝わっています。
あたくしも吹き出したいです。
ま、呪いのふんどしという嫌そう感みなぎった代物なのは間違いないですが。
「黒絹の力の源は、これを締めた騎士の心の闇。妬み・嫉み・僻みといった負の感情や性欲はもとより征服欲・支配欲・名誉欲という欲すら糧にして騎士の力を高めます」
これは間違ってはいないでしょう。なお、今は無くなってよかった黒金剛石こと黒いダイヤモンドち◯ぽになると、流石に真剣に危ない代物となるそうです。
仮にクレーゼ様が使うと、向こうの地球をこちらに引き寄せて来ることがあっさり出来てしまうのだとか。うん、ダイヤモンドだけに燃えて正解ですね。
「朕の騎士たる者であれば、この欲に打ち勝ち力を示しなさい。ただしダリアリーネ。貴女は聞けば銀衣昇格から一年未満であるとか。朕の騎士が闇に飲まれては本末転倒であり、下帯姿で戦う制限の刻を設けます。そして、なりたてとは言え金衣のアルトリーネ相手という事で、アルトリーネにははんでぃきゃっぷとやらを与えましょう」
これも打ち合わせ済みです。クレーゼ様をもばいるばってりーに使っての白金衣ぱわーの制限時間は99秒あまりあり。
そしてこの試作衣装は長くて60秒以内に戦闘状態を解除しないと、勝手に脱げてしまうそうです。
つまり、あたくしはダリアリーネを瞬殺…では教えにならないので、一撃を受けた後にボコる流れを指定されています。
いけるかなーと心配するあたくしに「大丈夫です。あたくしが何度も黒絹の女官を瞬殺して罰ゲームとして伽に奉仕させております」だからその行為がどきゅんだと。
「ダリアリーネ。貴女の制限時間はあたくしがこれの食べ頃を待つまで。地球の方でいう三分以内にアルトリーネを地に伏せなさい。アルトリーネは自らの服が脱げてしまうまで、つまり地球の一分以内にダリアリーネを地に伏せなさい」
クレーゼ様が寝台の上に置いたのは赤と白の容器のあさま山荘なアレ、といえば読者様は理解するとか。
既に蓋は開かれ、傍のやかんはクレーゼ様が底に掌を当てて沸かされています。
で、三分を刻むキッチンタイマーなる器具が横に。
そしてクレーゼ様の手で呪いの黒ふんどしを締められる黒豚。
実は父親譲りの精悍な美貌と引き締まった長身のダリアリーネ、ジーナ様に言わせると向こうの世界でも暗黒高原国は美人の産地で有名だそうです。
特に、植民地にしていた葡萄酒国人との混血児は、その大変な美貌をねたまれてかふぇおれと蔑称されることもあるとか。
ええ、黒豚呼ばわりには私情なんて入ってませんよ。ええ、かけらも。
更にふんどしを締める行きがけの駄賃に、痴女の本領発揮で黒豚に痴漢いや痴女行為を働き、あまつさえ耳元に「勝敗はともかく、見るべき戦いを為せば寵愛を授けようぞ、存分に励むがよい」とかくりくりしながら小声で囁いて煽りまくってやがります。
真っ赤な顔をして期待に身をよじらせる黒豚が不憫でなりません。
そしてクレーゼ様はあたくしたちに場の中央に向かい合って立ち、相互に一礼するよう促します。件の容器に湯を注ぎ、キッチンタイマーをセットすると声をかけられます。
「用意。はじめ」並の騎士なら回避不能な俊速さでダリアリーネが抜刀し、一気に間合いを詰めてきます。
あたくしは右手のはりせん、マリア様手ずから作られ、アルトひっしょうきがんと大書されたそれを握ります。
…マリア様…申し訳ございません、瞬殺とはいかないかも知れません!(泣)
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アルトリーネ「うう、せめてしないとやらくらいは…」
クレーゼ「はりせん斬られたらマリアが泣きますわよ!アルトくん負けられませんわよ!」
アルトリーネ「つかぬことをお聞きしますが、会場他、クレーゼ様だけでこのだんどりが出来たとは思えないのですが」
クレーゼ「ええ、復縁記念だと言って我が実母がね、大張り切りでね…はりせん製作までマリアに直接ね…おねーさまには悪いんだけど、取り持ってくれたのは間違ってたんじゃないかなー…」
アルトリーネ「何気に先代金衣様からもどきゅんの気配がします。あの肖像画ですし」
クレーゼ「誤解のないように申し上げておきますけど、歴代金衣って在位中に【最低一度は】何らかの伝説を作ってますのよ!わたくしだけがちじょとかどきゅんではありませんわよ!」
アルトリーネ「何気にするーされていますが、プラウファーネ様の言われた十字軍遠征とやらでも、惨劇があった予感がします。歴代金衣様って、皆様そろって人間るどぅたぶるのような方ばかりなんじゃないかと…」
クレーゼ「あながち間違ってるとは言えませんわね…」
アルトリーネ「ちなみに痴女様の今のお召し物ですがごーじゃすしまい、ひとつ上はこうはくのこ◯やしさちこだそうです。もし本編に出てきたら絶対に皆様の笑いを誘えるのだとか(はりせんのうらみ)」
クレーゼ「アルトくん…その衣装を仕立てたの…あたくしじゃないの…察して!さすがに捨てたいのよあんなもん!」
アルトリーネ「クレーゼ様があんなもんと言うくらいすごいものだと理解しました」
教育の場作りは大切だと痛感するアルトリーネです。
こういう段取り、というのですか。
ジーナ様のかいしゃの方々を拝見すると、あの方にしてこの方々というのがよくわかります。
…ですから、取って食べませんからつまみ食いくらいはさせてください!わたくしにも精気のノルマ、一応はあるんですから!(涙)
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さて、本日はあたくし、何故かクレーゼ様のお部屋で目覚めまして。
理由は、白金衣返却と、能力測定。
そして本日の午前のイベント向けの装備調整です。
そして、何故か浅黒い女性を筆頭に、学者様らしい方々を従えたジーナ様とクリス様が、朝も早よからクレーゼ様のお部屋に。
といっても、浅黒い女性は例の黒豚ダリアリーネではありません。
ジーナ様曰く、例のぽぴーのお国、そして葉っぱと樹脂の国の人の血を引くお方だそうで、えぬびーの軍人さんだそうです。
もっとも純粋な兵隊さんではなく、軍属と言われる「民間人なんだけど仕事の都合で軍隊に籍がある」人だそうです。長くカラフルな布を身にまとい、ばいんぼいんな人で眉毛も顔もめちゃくちゃ濃いです。
単にサレーニーさんと紹介されましたが、本当は苗字がややこしいそうです。
で、何でこんな人が来たか。
あたくし向けの試作衣装の製作に携わった集団で一番偉い人で、本来はきょうかふくとかいうえぬびーの軍人さんの着る騎士服を作る人らしいです。クレーゼ様のお部屋の一番ベランダ側は寝室なのですが、そこの先におっきなおふねが二隻います。
一隻は、昨日ここに来たばかりという、れぱるす。サレーニー様達ご一行は、これに乗ってこられたそうです。
…他に、例のぽぴーという花の件を調べに行く方々が乗っておられると聞かされました。
そしてもう一隻はてんぷれす。こちらは今日で一旦ここを離れて、あちらにお戻りになるのだとか。
ですが、ジーナ様のお父様の経営する飛脚屋の社員の方をお送りする為に戻ったあと、またすぐこちらに戻られるとか。
てんぷれすはべらんだの少しよこの方に作られたさんばしに停泊して、その社員の方々をお待ちしているようです。
で、サレーニー様。あたくしの側に来たらわかるんですが、ものすごい濃い匂いがします。
(あー、サレーニー博士、インド系やからな…この人種の人は香料や香水きつめが多いんや…あと、額のルビーみたいな石はわしらでいう結婚指輪みたいなものでな。人妻やという標識やから触るなよ)
ジーナ様が注意の思考を送ってきます。
どうももともとの出身地がいぎりすという国の植民地なのに加え、宗教上の決まりがもーんのすごくややこしいところの人みたいですね。
とにかく、ジーナ様の世界の人としては初めて見るタイプの方です。
とけいの翻訳機能とやらで聞いてみると。
「とりあえずこれで午前中動いてもらいましょうか」
「ワーズワース女男爵少将ならびにワーズワース準男爵、こちらのマルチウォッチのアプレットで、装着者のサーマルキャパシタの状態がモニタ可能です。お試しを」
「今で40度か…」ジーナ様がとけいの浮き画面と、あたくしの背中を見ながらふんふんとうなずいています。
「今回はテストモデルMk.2。通常装着用で完全実戦仕様ではありません。パージ温度はキャパシタモジュール部と熱交換ジョイント部で90度、レオタード・ブーツ・グローブは80度に設定。着用者の体温を見ながら順次上げていこうかと」
「問題は模擬戦をした時ですね。刀剣による近接戦闘なので対戦者の力量差など不確定要素がありますが、とりあえず60秒は欲しいところかなぁ」
「どや。アルトくん今は暑くないか?」ジーナ様が聞いてこられます。
「冷やされている感覚はありますね。今のところは大丈夫です」
「あと念のために金衣騎士正装持って行っとくか。現状はパージ後の再装着は出来るんかな」
「熱交換ジョイント部のパージ条件次第ですね。冷却液補充はある程度は必要かと」
「しかし何やねんこの黄金騎士。牙◯斬馬剣持たして金鎧つけた馬に乗せたくなるのう。うはは」
そうです。この服、長靴から手袋から全て金色なのです。
といっても、透明な膜のような薄くて柔らかい素材の中に金箔を入れているようでして、見た目よりはかなり軽い感じです。
元来はアルトリーネな部分と尻穴すら覆うそうですが、こちらの生活習慣をジーナ様が説明された結果ですね「あなあきながそではいれぐてぃーばっくれおたーどへそあなつき」という外観に決められたそうです。
この薄い素材の中に冷却液という特殊な水を巡らせて、主に背中のマントから放熱する仕掛けだとか。
「本当は流体金属が使えたら最高なんだけどねぇ」
「まぁ、それは今後の課題にしましょう。金衣という方なら物体空中浮遊能力があるそうなので、実戦用なら周囲にフローティングシールドを配置する事も可能でしょう」学者らしい方々が色々言っておられますが、とりあえずわかりません。
しかし、頭の中を拝見すると従来のわたくしども騎士よりは、金衣の方々の使う技を多用した新しい戦い方の提案を含めてお考えのようです。ものすごい発想力です。
「おねーさま、仮にマント切られたらどうなさいますの?」クレーゼ様が聞いておられます。そう、この服のマントはかなり重要な役目があるようです。
「はっきり言う。考えてない」
「ええー!いくらダリアリーネがまだ上級新人でも、剣の一太刀も当てられてれいきゃくえきとやらが漏れたら困るのでは?」
「確かにそれもそやな。アルトくん、その子ってどんくらい強い?」
「…瞬殺とはいきませんね、じゅうびょうは頂きたいかと」
「ほな、例のズル技いくか。クレーゼさん、白金衣言うんか、あの黄金騎士服なしでも使ったら効き目あるんやろ?」
「ま、あたくしなら瞬殺して当たり前ですわね」
「よぉーしよーしよーしよーし。ほな、アルトくんは手順を復習。クレーゼさんは魔法の呪文を復習な」
「ごーるどふゅーじょんしょうにん、で間違いございませんわよね」
「そうそう。まーほんまは承認の掛け声いらんねんけどな、あと、この方法では99.9秒経過後自動解除されるからな、いずれは残時間表示をどこかに出せるようにしたいが、現状はアルトくんの注意力にかかっておるな」これご説明が必要ですわね。
昨晩、ダリアリーネの一件について打ち合わせていた際に少々手順を変更したついでに、ジーナ様とクレーゼ様が以前ごらんになっていた「金色の鎧を呼び寄せて戦う騎士様のえいが」を参考に新型衣装について白金衣の力を使って働きを助けるという事は出来ないかと検討されまして。
で、白金衣の力をごく短時間でも使えたら色々はかどるのではと、墓所出禁が解けたお礼ついでにクレーゼ様がご相談されると「面白い考えである。短時間ならいちいち我らに相談せずとも、クレーゼの裁量でぱわーあっぷ可能であろう。長時間の白金衣昇格が必要であれば別途我らに願うとして、かっぷらーめんとやらが作れる時間くらいならばクレーゼに任せてよかろう」というお答えを頂いたのだとか。
で、あたくしの負担軽減と安全のために、決められた時間を超えると自動的に元の駆け出し金衣の状態に戻るのだとか。
そうです。
このアルトリーネ、晴れて金衣の末席に加えて頂く事になりました。ついでながらアレーゼ様は銀衣のままですが、こちらはマリア様とペアを組んでおられるのでこれまで同様、必要に応じて金衣に一時的昇格されるという事を続けられると。
ただ、今までは「バレバレではあるが内緒でこっそりやっていた」のをマリア様の地位で公式に堂々と行えるように認める書類を、ダメル子が泣きながら作っている最中らしいです。今度はちゃんと回覧してくれるとは思いますが。
そしてこの書類は一連の昇格人事のりんぎしょとして、関係者に回るのですが、あたくしの金衣扱いやクレーゼ様の侍従騎士任命の承認についても触れているのだとか。
ええ、ちゃんと作って回覧しないと金衣権限でダメル子をおしおきしようかと。泣かす程度でやめようとは思いますが。
「そしたらこっちはこれでいけると思うわ。サレーニー博士、もう一人の方にかかりましょか」
そうです。
クレーニャの新型服の試験着用も今日行うそうです。
で、体から出ている熱気の正確な測定のためという事で、クレーゼ様は昨晩わたくしやクレーニャが側で寝ているにもかかわらず伽禁止をジーナ様から言い渡されておりまして。
さぞや悶々とされているかと思いきや…なんかやけに清々しいお顔ですよクレーゼ様。
あと、あたくしのリトルクロウの柄、ちゃんと洗って拭いておいてくださいよ。ムカつくので朝もはよから汚した本人に口で掃除させましたが。
…で、クレーニャの方はもっとすごいです。
まず、首から下の素肌の露出は股間以外ありません。
ジーナ様いわく「ぎんいろのぜんしんたいつ」だそうです。
更に銀色のはいれぐれおたーどを重ね着しており、背中から羽根状のマントが垂れています。これ、戦闘などで激しく動いた際はねつこうかんそうちとして、勝手に広がるのだとか。
このほうねつよくが開いた姿を見たジーナ様、ふぇらりおと呟いていました。ふぇらちおの間違いではないそうです。
そりゃ、こんなものを着用図と一緒に渡された時のクレーニャ、驚きますよね。
一部のにゅーはーふや世紀末覇者以外、肌を露出する事が基本なわたくしども女官にしてみれば、全身を覆う服装がいかにかるちゃーしょっくか。クレーニャの姿を見たクレーゼ様、興奮のあまりでかるちゃーとか叫んでましたし。
わたくしにしても、足の指が見えない履き物がこの世に存在するとは存じておりますが、まさかこんなブーツなるものを履く事になるとは。
どうでも良いのですが、やたらにヒールが高いのを告げますとジーナ様が「うちが沖縄で履いてたんと同じ8cmや。慣れなさい」とあっさり申されます。うう。
そしてジーナ様、クリス様、クレーゼ様、クレーニャとわたくしは侍従女官からの連絡で、水圧籠で下の階に降りてアレーゼ様やマリア様と合流します。
そして、とある人物から銀衣正装姿の騎士の引き渡しを受けます。
そうです。なまいきなくろぶ…ダリアリーネと、専属従者としてついた下級騎士は、この聖院のトップクラスの重要人物勢揃いの状況に固まっています。
まぁ、無理もないでしょう。彼女らをここに連れて来たのはマイレーネ様なのですから。
朝一番で部屋の扉をノックされて、誰よと開けたら世紀末覇者が腕組みしてたらそりゃ漏らすか倒れるでしょう。
今のあたくしですら、腰を抜かさずに立っていられる自信はありません。
更に、ついこないだ遅刻を咎めひざまずかせた同格(に見える)騎士が、今までに見た事もない装備で雲上人の皆様と歓談しておれば、よほどのアホでないかぎり「自分が何やらかしたか」察するとは思います。
そんな彼女たちに、クレーゼ様が「ごめーん日本からのお客様が帰るから、ついでに見送りのメンバーを一人でも増やしたいのよ!この後ちゃんとご褒美あげますから楽にしててね」などとフォロー入れてますが、そりゃ固まりもしますって。
で、旅装姿の一団が、向こう様からすれば露出狂かこすぷれいやーにしか見えない我々に眼を剥きますが、ああここはこうだったなと思い直しておられます。
タヌキという生き物を連想させる方にクリス様、こちらの世紀末覇王ほどではありませんが、割と似た感じの壮年の男性にジーナ様が挨拶しておられます。
ジーナ様が急な話で残るハメになって申し訳ない。なるべく1週間以内に戻るようにするとその方にしきりに謝っておられます。
なんでもこのタケウチ様、ジーナ様の幼い頃から陰に日に支援して来られた大恩人らしく、決して足を向けて寝れないお方だそうで。
ジーナ様の恩人とあらば下にも置かぬ扱いをさせて頂きたいところですが、ご本人はお年を召して女より酒・飯なのだとか。
そして細身の理知的な雰囲気の男性とクレーゼ様は大変に面識があるようで、日本式だという頭を下げ合う挨拶を交わしておられます。
なんでもこちらの商会の勘定方をしておられるタナカ様という方で、今後は聖院の経理指導にちょくちょくお越しになるそうです。
あとはなかば慰労でお越しになったというご家族連れの方々と、独身の殿方の一団です。
実は独身の方々はわたくしども女官をよく知らぬということで、到着直後にわたくしとクレーニャに、剣を抜かずに組み手めいた演舞を少しだけ見せておけとジーナ様に指示を受けたとおりにしましたところ…真っ青になっておられました。
で、ジーナ様が「このちょっと褐色の子が、銀髪の上級騎士では二番目に強いから速いのは当たり前やけど、こっちの赤毛さん、髪の毛の色とかフリーダムな下級騎士組の平均的な子な。で、騎士の子と文官の子らは二年サイクルで仕事入れ替えてるから文官も今の子らとだいたい同じくらい強い。つまり、合意なしに手を出したら、剣なしでもどうなるか…君ら、ほんまに注意してくれよ。ただ、君らがちゃんと頼んだ場合は時間があれば各自判断で受けろとは言うてるから」と、きつく注意をしておられました。
…あたくしを避けるのはともかく、クレーニャにすら声がかからなかったのは納得がいかないのですが、タナカ様から言われて納得がいきました。治安のよい向こうの方々からは、わたくしたち騎士が帯剣しているだけでも畏怖の対象に見えるのだ、と。
「こちらでは我々平民の武装は一般的ではないので、武官待遇を受けておられる貴女がたを当社独身社員が避けるのも無理はありません。これが最後ではなく、彼らも今後は交代でお邪魔する事になりますので、どうか仲良くしてやって下さい。そちら様がご希望なさるなら、私や武内からも、彼女達も君達の話を聞きたがっているとは伝えておきますよ」と、さりげなく申し出て下さいます。
ええ、こんな紳士な方ばかりならば下院は天国でしょう。
残念ながら奥様はじめご家族がいらっしゃるとの事ですが、もしかしたらマリア様の絡みでご家族を連れておいでになるかも知れない、その時はよろしくとお願いを受けました。
ええ、今後は金衣としての公式業務もあるから慣れておけと、わたくしもお見送りのご挨拶に回らされています。向こうの方々は剣はともかく、こうした対談対話には慣れていらっしゃるから参考にせよ、と。
皆様が乗り込まれると、階段を仕舞ったてんぷれすがゆっくりとがんぺきを離れて、ほとんど音をさせずに真横に動いていきます。
そして空中に浮かび上がると、ちかちかと灯りを点滅させてから一瞬だけ輝いて消えていきました。
次の瞬間には、てんのうじという場所の上空にいるそうです。わたくしもいつかお邪魔してみたいものです。
変態との出会いだけは勘弁して欲しいですけど。
で、クレーゼ様とダリアリーネと従者は、皆様と別れあたくし達二人を伴って聖炎宮に入ります。
何度もこの痴女の底なしの性欲の犠牲になっているわたくしには馴染みの場所ですが、ダリアリーネと従者はもちろんクレーニャもお初です。
キョロキョロ見回しそうなので、後でゆっくり見れるから今は不敬な挙動は控えておけと心話で言い渡しておきます。
で、聖炎宮はジーナ様いわく、少し小さめの円型闘技場めいた建物です。
中央に安置されたクレーゼ様用の寝台は、いずれこれに寝てファイヤーする予定が決まっている痴女が嫌そうに例の技で浮かせて隅に片付けていました。
あたくしには今更ですが、これまた新人たちには目を丸くする光景ですね。
「さて、ダリアリーネ。楽になさい。此度貴女を呼んだのは、ここにいるアルトリーネとこれから模擬戦…剣術試合をして頂きたいからです。貴女が選ばれたのは我が娘マリアリーゼの選定でして、上級騎士の戦闘時に身体から出る熱を測るためのものです。あくまでも新しい騎士正装を開発するための資料を作る目的であり、騎士として普通に戦えばよろしい。勝敗の結果で貴女の地位を云々する事は全くありませんので安心して欲しいのですが、だからと言って手を抜かれても困ります。ましてや相手は朕の侍従に任命したばかりとは言え、本来なら改名してアルトリーゼと名乗る立場のもの。そこでですね」
「はっ」踵を揃えて直立不動でダリアリーネがクレーゼ様の次の言葉を待ちます。そうです。新型放熱服のテスト要員としてマリア様選定の騎士をクレーゼ様が呼んだという口実で、これからダリアリーネをシメ…先輩として慈愛に満ちた指導を行うのです。
「ダリアリーネ。この黒い下帯は、歴代の金衣銀衣に伝わっている秘蹟の秘具、黒絹そのものです。見込みある騎士を鍛える為に使われるものです。その効能は、本来の騎士の力を倍に引き上げます」クレーゼさまは、その手に持ったふんどしをダリアリーネに見せます。つまり、この呪いのふんどしを締めたダリアリーネは、昨日までのあたくし程度に強化されるわけですね。
「ただし…この黒絹は禁断の秘具でもあり、普段は墓所の奥に隠されており、このクレーゼですら容易に持ち出す事叶わぬ呪われし宝具でもあります」
うそです。
もう衣類庫から手ぬぐいや体拭きを持ち出す感覚であっさり持ち出してこれました。
クレーゼ様、役者感に満ち満ち過ぎるくらいに話を盛りまくっています。
ちなみに先程のてんぷれすを見送ることもあり、クレーゼ様は金の鎖を何本も垂らして出来たマント状の外套を羽織っておられます。
更に痴女衣装には間違いないのですが、各所の鎖が二重三重になったゴージャス感二倍増しの装身具を身につけたお姿です。
賓客を迎えたり会談を行うための典礼装ですが、実はまだこの上に晴れの儀式用の儀礼装が存在するそうですが、クレーゼ様をよく知らないダリアリーネからすれば充分に威厳に満ち満ちて見えることでしょう。
一見すれば、五人しかいない非公式とはいえ、これぞ金衣列席の荘厳な儀式に見えますが、事情を知るものには爆笑コントなのが困りものですね。
ただ、ダリアリーネを教え導く目的があるので真面目にやってはいますが…ええ、クレーゼ様を通じて成り行きを見ているはずの歴代金衣様銀衣様が地下墓所で大爆笑してるのが、金衣なりたてのあたくしにも思いっきり伝わっています。
あたくしも吹き出したいです。
ま、呪いのふんどしという嫌そう感みなぎった代物なのは間違いないですが。
「黒絹の力の源は、これを締めた騎士の心の闇。妬み・嫉み・僻みといった負の感情や性欲はもとより征服欲・支配欲・名誉欲という欲すら糧にして騎士の力を高めます」
これは間違ってはいないでしょう。なお、今は無くなってよかった黒金剛石こと黒いダイヤモンドち◯ぽになると、流石に真剣に危ない代物となるそうです。
仮にクレーゼ様が使うと、向こうの地球をこちらに引き寄せて来ることがあっさり出来てしまうのだとか。うん、ダイヤモンドだけに燃えて正解ですね。
「朕の騎士たる者であれば、この欲に打ち勝ち力を示しなさい。ただしダリアリーネ。貴女は聞けば銀衣昇格から一年未満であるとか。朕の騎士が闇に飲まれては本末転倒であり、下帯姿で戦う制限の刻を設けます。そして、なりたてとは言え金衣のアルトリーネ相手という事で、アルトリーネにははんでぃきゃっぷとやらを与えましょう」
これも打ち合わせ済みです。クレーゼ様をもばいるばってりーに使っての白金衣ぱわーの制限時間は99秒あまりあり。
そしてこの試作衣装は長くて60秒以内に戦闘状態を解除しないと、勝手に脱げてしまうそうです。
つまり、あたくしはダリアリーネを瞬殺…では教えにならないので、一撃を受けた後にボコる流れを指定されています。
いけるかなーと心配するあたくしに「大丈夫です。あたくしが何度も黒絹の女官を瞬殺して罰ゲームとして伽に奉仕させております」だからその行為がどきゅんだと。
「ダリアリーネ。貴女の制限時間はあたくしがこれの食べ頃を待つまで。地球の方でいう三分以内にアルトリーネを地に伏せなさい。アルトリーネは自らの服が脱げてしまうまで、つまり地球の一分以内にダリアリーネを地に伏せなさい」
クレーゼ様が寝台の上に置いたのは赤と白の容器のあさま山荘なアレ、といえば読者様は理解するとか。
既に蓋は開かれ、傍のやかんはクレーゼ様が底に掌を当てて沸かされています。
で、三分を刻むキッチンタイマーなる器具が横に。
そしてクレーゼ様の手で呪いの黒ふんどしを締められる黒豚。
実は父親譲りの精悍な美貌と引き締まった長身のダリアリーネ、ジーナ様に言わせると向こうの世界でも暗黒高原国は美人の産地で有名だそうです。
特に、植民地にしていた葡萄酒国人との混血児は、その大変な美貌をねたまれてかふぇおれと蔑称されることもあるとか。
ええ、黒豚呼ばわりには私情なんて入ってませんよ。ええ、かけらも。
更にふんどしを締める行きがけの駄賃に、痴女の本領発揮で黒豚に痴漢いや痴女行為を働き、あまつさえ耳元に「勝敗はともかく、見るべき戦いを為せば寵愛を授けようぞ、存分に励むがよい」とかくりくりしながら小声で囁いて煽りまくってやがります。
真っ赤な顔をして期待に身をよじらせる黒豚が不憫でなりません。
そしてクレーゼ様はあたくしたちに場の中央に向かい合って立ち、相互に一礼するよう促します。件の容器に湯を注ぎ、キッチンタイマーをセットすると声をかけられます。
「用意。はじめ」並の騎士なら回避不能な俊速さでダリアリーネが抜刀し、一気に間合いを詰めてきます。
あたくしは右手のはりせん、マリア様手ずから作られ、アルトひっしょうきがんと大書されたそれを握ります。
…マリア様…申し訳ございません、瞬殺とはいかないかも知れません!(泣)
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アルトリーネ「うう、せめてしないとやらくらいは…」
クレーゼ「はりせん斬られたらマリアが泣きますわよ!アルトくん負けられませんわよ!」
アルトリーネ「つかぬことをお聞きしますが、会場他、クレーゼ様だけでこのだんどりが出来たとは思えないのですが」
クレーゼ「ええ、復縁記念だと言って我が実母がね、大張り切りでね…はりせん製作までマリアに直接ね…おねーさまには悪いんだけど、取り持ってくれたのは間違ってたんじゃないかなー…」
アルトリーネ「何気に先代金衣様からもどきゅんの気配がします。あの肖像画ですし」
クレーゼ「誤解のないように申し上げておきますけど、歴代金衣って在位中に【最低一度は】何らかの伝説を作ってますのよ!わたくしだけがちじょとかどきゅんではありませんわよ!」
アルトリーネ「何気にするーされていますが、プラウファーネ様の言われた十字軍遠征とやらでも、惨劇があった予感がします。歴代金衣様って、皆様そろって人間るどぅたぶるのような方ばかりなんじゃないかと…」
クレーゼ「あながち間違ってるとは言えませんわね…」
アルトリーネ「ちなみに痴女様の今のお召し物ですがごーじゃすしまい、ひとつ上はこうはくのこ◯やしさちこだそうです。もし本編に出てきたら絶対に皆様の笑いを誘えるのだとか(はりせんのうらみ)」
クレーゼ「アルトくん…その衣装を仕立てたの…あたくしじゃないの…察して!さすがに捨てたいのよあんなもん!」
アルトリーネ「クレーゼ様があんなもんと言うくらいすごいものだと理解しました」
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