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アルトリーネの素敵な朝・牝豚調教編その2

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アルトリーネでございます。
皆様、人の道を踏み外した者と実際に相対したことはございますでしょうか。
わたくしども聖院、人の道を踏み外した者や踏み外された者を預かるのも責務としております。

ですが、我が院の門外につきましては如何に悲しき事があろうとも、なかなか手を差し伸べる事が難しくある時もございます。

そして、わたくしどもの手を拒まれる方々もいらっしゃいます。

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で、あたくしは目の前の変態仮面に向き直ります。

確かにクレーゼ様がいかなるお姿であろうとも、そうそう苦言を呈する、ご注意ができる者はこの聖院内にはおりません。ええ、なんだかんだ言って昔のやんきー行為の数々がね。皆様の脳裏にね。

そうそう、この世界にも喫煙という習慣はありますが、たばこの葉だのあさのはっぱだの、人の頭によろしくないものがまだまだ高価で一般的ではない事にあたくしは感謝せざるを得ないでしょう。

もし、南洋王国の特産品にたばことやらがあった場合、絶対この方、ジーナ様から見せて頂いたやんきーずわりというポーズでたばこをふかしながら人をにらんでいためんちきってたと思います。

しかるに、あたくしはジーナ様より、はりせんなる紙束を預かっております。

クレーゼ様が狼藉を働きし時。人の道を踏み外しかけた時。

これを振るい、闇を打ち払えと。

ええ、マリア様の手も入ってるからこうかはばつぐんだと聞いております。

問答無用で使います。変態という名の仮面の脳天に振り下ろします。

歴代銀衣騎士最速、アレーゼ様を除けば敵うものなしの抜き打ちの速さで。

加減はしましたけど。

すぱこーんという、おもいっきり気持ちのいい音がしました。

威力のわりにいい音しますわね、うん。

なんかとても気に入りました、はりせん。

寝所にも常備したいものです。量産可能か聞いておきましょう。

で、案の定、変態が怒ります。

「なななななななんですのアルトリーネやぶからぼうに!不敬にもほどがありますわよ!」

「くれーぜさま。まりあさまよりせつめいのおはなしをあずかっております。ごらんください」もう、この展開は全力で予想できていました。

棒読みにも程がある棒読みでお答えしたあたくしは、このはりせんと一緒に届けられたものをクレーゼ様にお見せします。

とけい。そう、時計なるからくりです。機械です。

ジーナ様、クリス様、ゴルディーニ様他、向こうの地球の人が片端から左手首に巻いてるアレです。

確か、クレーゼ様やマリア様の分もあるにはあるはずです。熱問題のせいでお部屋に置いてるそうですが。

あと、菅野様は使い慣れておられないようで、たまに悪戦苦闘の果てに、使い勝手についてジーナ様と言い合いしているのを見ます。あのお二人が口喧嘩を始めるのをまんざいとか言うらしいのですが、ようわかりません。

で、このアルトリーネ、ジーナ様御一行と知り合ってそれなりの月日が経ちました。あの方々の使われるじょうほうききとやらの扱いもそれなりに覚えさせて頂いたと自負しております。

ええ、かつて、目の前のお方、クレーゼ様そのお方のおしっこで汚されたわが机の引き出しにもぱそこんとか言うものを入れております。もっとも、皆様がお使いのものとは形も使い方もかなり違うらしいんですが。

で、かつて、やんきーの猛威を、菅野様が戦われたのとはかなり違う意味で経験したわたくし、そのとけいを操作いたします。側面のボタンをぽちっと押すと、いろいろとできる事を示すボタンが空中に浮かびます。

ほろぐらむとかいうそうです。そして…「どうが。まりあさまから」と、かつてジーナ様がろりこんきちくはげめがねでぶとかふでひげおやじ…ろりやとかふぁんふぁんたいさとか言われた方々の画像を見せて下さった時のように、して欲しい事をとけいに語りかけます。

で、いくつかのマリア様の顔の小さな映像の中から、最新の日付のものを選んでぽちっとな。そしてクレーゼ様にお見せします。

「お母様。これをごらんになっている時は、アルトリーネにはりせんという紙束でたたかれたあとだと思います。このはりせんという紙の束についてはジーナ母様に作り方を教えて頂きました。修学宮で試しに作らせた上質洋紙という紙を使っているそうなので、強さを確かめるために作ってアルトリーネにわたせと言われました。そして、アルトリーネがこれをつかってお母様のあたまをたたいた時は、クレーゼお母様が何かわるいことをした可能性がありますので、アルトリーネをおこらずに、マリアかジーナ母様にですね、なんでたたかれたか教えてください。アルトリーネが悪かった場合はあたくしがしかります。クレーゼお母様にはもうしわけありませんが、よろしくお願いします」と、浮かび上がったマリア様がおっしゃいます。

「クレーゼぇ?あんたがいらんことした時にそれでシバけてアルトリーネに言うといたからな?文句あるんやったら、マリアかあたしのとこ言いにきて。あと、紙の耐久性試してるのはほんまやから。いらんことしたらバンバン使え言うといたからな」と、マリア様の横にジーナ様が顔を出してきておっしゃいます。

ええ、変態は倒されました。

というか自ら床に崩れ落ちました。

正義は勝つ、というやつです。

マリア様のお力だけで勝ってもアレなので、あとで性技でも勝とうとは思いますが。

「で、状況は把握いたしましたわ」

ええ、頭の中を覗いて頂いたり、自らのお力で関係者の脳内を探って回ったクレーゼ様が、あたくしの淹れたお茶をすすられます。こうちゃ、というものだそうで、向こうの地球では量産されているものらしいです。

そして熱いお湯がないとうまく作れないそうです。

お砂糖とれもん、と言うのですか、すっぱい果実を切ったものを添えてお出しする作法があるそうですね。

「クレーゼ様。正直、あたくしが悪いと言えば悪い話です。まぁ、クレーニャのかわいいわがままと思ってたり、ちょっと待たせたらいいっかなーとか思ってたのは事実なので、その辺りについては反省することしきりだと存じます」この辺は、先ほども申し上げた通り、わたくしの思い至らぬ点でしょう。

「そーなのよねー。アルトくん反省してるもんねー。で、反省の内容については、あたくしも間違いないと思います。それでおっけー。さすが筆頭なんばーわん騎士ですわ。素晴らしい。こんな騎士を抱えさせてもらえるあたくしの誇りですわよ誇り」えっへんえっへんと、おっきいおちちを上下にぶんぶんしてクレーゼ様がふんぞり返ります。

正直、くーぱーじんたいというものがぷちんと切れないか不安です。

その、おちちをほりだした、宝石を散りばめた金の鎖でしかないお召し物、ろくにおちちを支える役にも立ってないでしょうに…ちなみにこれがクレーゼ様の普段着です。 

他にも典礼装とか喪装とか、修学宮向けの学業儀礼装とか、色々お持ちなんですけどね。

「ただ、これはやはり、ダリアリーネの今後に関わるやもしれませんね」保護者の目をするクレーゼ様。

「はい…わたくしも、それはかなり気になりました。ダリアリーネの心もその時にちら、と見えましたが、掟を守れぬ者など何の価値あろう、厳格な騎士の生活を忘れ朝から淫行などいかがなものか、と」ええ、普通の騎士団ならそれで良いのですよ。

ですが…わたくしどもは淫行も重要なお仕事なんですよ…床上手であることも職能のうちである、大変に珍妙な騎士団なんです…。

「マリア。お忙しいところすみません。わたくしかアルトリーネのところに、ダリアリーネの経歴を送ってくださるかしら?簡単なもので構いませんわ」敢えて心話の内容を、声に出してクレーゼ様が頼んでおられます。

「ま、あの子の頭の中を読んだ内容だと…西方葡萄酒国人と暗黒高原帝国人の混血児ですね。そして、父親が高原帝国人。両親は…母親のみ現存。父親は…うわちゃー。この子、犯されて産まれてるわ…」どんだけ広範囲に追い込みできるんですかクレーゼ様。

「そりゃ金衣の力をたまにはお見せしないと、アルトくんが尊敬の目で見てくれませんもの!」

「は、はぁ…で、なんでまたそんな犯されるような事になったのでしょうか?」

「ええ、彼女の母親の記憶ですが」

で、クレーゼ様の語る内容ですが、ダリアリーネの父は、食い扶持減らしのために高原帝国からの出荷品の志願奴隷として葡萄酒国に送り込まれたそうです。

つまり、自ら奴隷になったと。

「で、葡萄酒国の小麦荘園で働いていたが、当時十代の若い肌黒男で、精悍な顔立ちの彼には荘園の奴隷として働く娘はもちろん、荘園主の家族からも人気が高かったようですね」クレーゼ様が、ダリアリーネ母の記憶にある父親像を脳裏に送ってこられます。

「ですがこの男…死んでいますが、母親の記憶からすると、どうも自分が婦女子に懸想されている自覚はあったようです。これはあくまでも推測ですが、どうも同族の肌黒族女性よりも、格上に見える葡萄酒国の女性を狙う傾向があったようです」

あああああああああ…ええ、うちの女官でもそういう話はあります。高嶺の花狙いの男どもに狙われて人生が狂った子は少なくとも2桁人数いますね。

「そうですね。で、荘園に出稼ぎに来ていた飯炊き娘が、奴隷の目につきました。長女は既に他家に嫁に出され、次女と三女が母と分担して家事を賄っていましたが、十名程度の奴隷で麦と葡萄を栽培していたようですので、その奴隷たちの食事を作るために飯炊き娘を雇っていたと」

しかし、クレーゼ様の能力は本当に凄いです。恐らく、母親ですら忘れている事を再現しておられますね。

「で…飯炊き娘は当時二〇歳くらいかな?なかなか男好きしそうな体ですが、葡萄酒国の都で生まれたものの、手癖が悪く、官憲に突き出されるすれすれの事をしたり、若いうちから男に体を売ったりしていたようです。…ええ、もしその時に捕まってうちの分院に入ってたら、人生変わった部類ですわねぇ」

そうです、実は、こういう年端がいかねど保護するものがいない娘さんも、結構な数でわたくしどもに連れて来られる場合がございます。

そして、わたくしどもの場合は保護するにやぶさかではありませんが…その…わたくしどもの職務、殿方を相手するんですよねぇ…。

ええ、それが嫌でわたくしどもを避ける場合もままあるとは聞いております。

「ふむふむ、で、都でいられなくなり、高飛びするように田舎に逃げてきたと言うところですか」

「ご明察ですわ。葡萄や小麦の収穫期を狙って忙しい荘家に入り込んだようですわね」じっと半眼になり、集中しながらクレーゼ様は母親の記憶を追っているようです。

「そして収穫と脱穀や葡萄酒仕込みが佳境に入り、雇い人の口を減らすとなった際に…飯炊き娘も、荘園の家人でもう大丈夫となり、暇を出されます」手に汗握る展開です、思わず膝に載せた手を握りしめてしまいます。

「どこに期待しておるのですか…まあ、わたくしもそうなんですが…」

ええ、葡萄酒国に在するダリアリーゼのお母様。自覚なきままに数千里離れた南洋の島から、おのが半生を覗き見られているとは思いもよらないと存じます。犯罪の匂いすらする出歯亀行為をお許しください。

「証拠はございませんわー!まぁ、ともかく、黒肌奴隷は、村を出ようとする飯炊き娘を一緒に送って行ってると。…これ、奴隷も誘われてますわよ?本人の記憶では犯されたと認識してますけど、村の出口まで送っていった奴隷を牧場の牧草小屋に誘い込んで隙を作ってますわ。けいかくてきはんこうというやつですわね」

「おおおおおおおおクレーゼ様、その後はどうなるのでしょう」

「顔が近いですわよアルトリーネ。困ったものです」

言いながらご自身も盛っておられるじゃないですか。

さきほどから何かあたくしの鼻に漂っておりますよ。汗と発情の匂いが。

「わーすごいすごい。よっぽど溜まってましたわね。ちょっとお待ちあそばせ」ぐっ、と強い力であたくしの頭を引き寄せ、おでこ同士をくっつけさせられます。

ええ、まぐわいの記憶がもんのすごく伝わってきます。

「でぇ、これだけじゃありませんね。この奴隷、奴隷と言いながらかなり信頼されていたようで、村周りを割と自由に動き回れたり、お使いとしてパン屋に行かされたりしていたようですわ」パン籠など様々なものを載せた荷馬車の荷台に乗って帰ってくる奴隷の絵図が送られてきます。買い出し要員ですね。

「そして、使われていない炭焼き小屋に飯炊き娘をかくまい寝かせます。どうも、飯炊き娘は次の働きの伝手がないので、とりあえず奴隷が飯を調達して少しの間ですが娘をかくまう事にしたようです」

「で、毎日時間を作り、短い逢瀬ではありますが、体を重ねていたと」

「おお、凄いですわアルトくん。何がすごいってこのちんぽですわ。ものすごく動きが激しく早いですわよがんがん突かれてますわよ」

ええ、口に出して言わないでください。わかっております。かなり鮮烈な記憶で、体を売っていた過去のある飯炊き女ですらよがりまくっていますから。

「アルトくん、アレくらい早くできます?」何を聞いておられるのですかこのクレーゼ様は。

「…わたくしの騎士の力を全力で出せばなんとか」そして、わたくしの足の袋から何か引っ張り出さないで頂けますか。

「今日はクレーニャちゃん、下院でしょ~~~♪おっほほー、わたくしはどちらでもよくってよぉ?」

言いながら張型を装着なさらないでください。ええ、仮にわたくしが断っても絶対おっ始める気満々でしょうに。

…で。

「飯炊き女はどうなったんでしょうか?お、お」

「おお、そこですわそこアルトくん凄い落ちますわあたくし死にそうですわ、飯炊き女は奴隷に犯されて孕まされたとして教会に駆け込む予定だったようですね。畜生ですわね。おおおおお」

もっと畜生なまぐわいを求めている牝豚がいるのですが。

今、まさにここに。

「それにしてもこの新型張型の威力は凄まじいですわねおおおおお当たってますわあああ」

「ええ…相手の卵穴に適した寸法に変わるとか…これ、正直、殿方に逆使用したらどうなるのでしょうか」

「…あんっあんっそういう需要はありますの?尻穴を犯すとかおおおおおんほぉおっおっおっ」

「えーと、6日ほど前でしたか、何処かの商家のあるじに請われまして、まぐわってるあるじの尻に、と」

「ぜぜぜぜ贅沢な。きゃんっ、きゃんっ!もっとぶち当ててくださいまし!」

「あとですね、これの用法ですが、尿を求められた場合に結構良いかも知れません。被虐欲の高い方には特に…おおおおお締めないでくださいまし」

「気持ちいいのですから仕方ありませんわ!おお気をやりますわよ、それよりこの後で口にお出しなさい…おおおおいぐいぐいぐううううううううう」正直、だいこんとかいうものが入ってるのかと気になりますクレーゼ様。錯乱しすぎです。

「ぐぼぼげぼげぼぼ」(もごごごぉおおお!でもアルトくんのはきついんですけど、効き目はありますわよ。あたくしみなぎりますわ~!)

「それは良いのですが後のお掃除、手伝って下さいませ。もうこれ以上マイレーネ様に睨まれたら、真剣にクレーゼ様のお部屋に間借りする必要が出て参りますわよ…」

ええ。

既に部屋の常備品として、他の部屋にはないはずの掃除道具せっとがしっかり片隅に置かれています。

とりあえず清掃回数増やすにも人手が足らぬから、自分たちの事は自分たちでやれ、と、マイレーネ様からの無言のメッセージです。

ある日突然置かれてました。

ええ。口になんか突っ込まれてる状態でごぼごぼこぼしておられます。流石に室内の厠で排泄させて頂いております。

確かに、誰あろうクレーゼ様を汚すのは加虐欲がみなぎる行為ですが、待ち構えてる後の清掃を考えると、手加減せざるを得ません。ええ。延々とモップ拭きとかいやです。

ちなみに聖院内の照明、ちょっと特殊です。多くの場所は吹き抜けになってますが、わたくしどものような個室では、天井で水晶が光ってます。

結構明るいです。魔法の灯りですね。

うそです。

この光、光源からぷりずむとかどうこうばんとかで各部屋に送り込まれてるんだそうです。

つまり、灯りは消せません。

ただし、光源側で消されると真っ暗になりますので、下院の場合は要所要所に非常灯火として松明や油灯が常備されています。

ただ、この非常灯火については、ちょうたいきゅうがたひじょうとうというからくりに置き換えるそうです。百年は何もせずに勝手に光ってるらしいのですが。

そして、各部屋を照らしているのも似た原理の光だそうです。

今でもかなり明るいので、掃除をサボったのがマイレーネ様に発覚しやすいのですよ。これ以上明るくされたら困るんですが。

閑話休題。

「で、飯炊き女は首尾よく罪を奴隷に押し付け、自分は教会の保護を得た、と…」

「ええ、大変によろしくない出自ですわねぇ。これ、我が聖院の下でやられたら嘘が丸わかりですわね。ただ…子に罪はありませんからね?」

「そうですねぇ」

マリア様から送られてきた調査結果も、クレーゼ様の能力で得た情報を裏付けるものでした。

更に教会の庇護にも限りがあると告げられた飯炊き女は、春を待って更に南の港町へ遁走。そこで子を産み…。

「教会の喜捨銭を盗み、馬車に乗る路銀にするとか、なかなかに強烈なくずですわねぇ」

「クレーゼ様。これ、よくダリアリーネが歪みませんでしたね…」

「で、港町で淫売生活ですか…ダリアリーネはこの港町生活の最中、地元の悪所に売られて東内陸海のどこかの奴隷商経由で売りさばかれる予定だったようですね。で、奴隷船が座礁して子供が流され、かろうじて船の残骸から発見された数名がダリアリーネ、という話ですわね」

「聖院には直接送って来られたのですか?」

「船が難破した長靴国の孤児院経由ですね。と申しますか…孤児院暮らしが肌に合わず逃走。その後、一万尺山峰国すいすあるぷすの分院の門を叩き保護…と。あそこの分院の罪人頭はもと地元の傭兵でしたわね。で、分院で育てて剣の筋が良いので本院へ送られた、と」

「せめて葡萄酒国に我が聖院の分院があればもう少しとは思いますが…」

「あそこは中途半端に水の便が悪いですからねぇ。東側の長靴国や山峰国の国境付近なら理想的な立地はありますが、既に山峰国に作らせて頂きましたからねぇ、分院」

そうなのです。

我が聖院は、女官の性質上、必ず冷却用の水源のある場所でないと分院建設が叶わないのです。

「しかし、本人の性格行状をかんがみますと、よく我が聖院の暮らしを我慢しておるものですね。あの苛烈な印象だと、下院で参拝客を相手するだけで大変だったのではと思います」

「アルトリーネ。長靴国から一万尺山峰国の間に何がおありか、わかりましょうや?」真面目な顔でクレーゼ様がおっしゃいます。思わずモップを振る手が止まります。

「確か、かなり急峻な峰がございまして…で合っておりましょうか」

「ええ。そこを、当時十三歳ばかりの子が何も支度せずに越えられましょうや」

「…盗むか、売るか…でございますか…」

「で、盗む売るを生業とした母に捨てられておりますのを忘れぬように」

「普通なら、母と同じ道を歩む危険もあるかと存じます」

ええ、聖院には、そちらでいうひこうしょうじょ、本当に本当に世をすね恨み性格がねじれた子も預けられます。

矯正不可能と判断することはありませんが…ただ、そういう重度の性格破綻したお子様の最終治療は、目の前におわすお方の秘術に委ねられます。

ええ、命は奪いません。

聖院の名にかけて。

ただし、頭の中に積み上げられた、それまでの全てを捨てる事になります。幾度か、そうした施術を最終的に必要としたお子のその後を見ておりますので。

「ま、幸いにして、わたくしの許まで挙げられるほどではなかったようです。むしろ、うまく己の境遇を説明して、道中の民家の庇護を得て聖院を目指したようですね。山越えに長けた商人馬車隊の世話になれたのも大きかったかと」

「運の良い部類、でございますか…確かに、ダリアリーネはそれなりの境遇を経てきており、その人生に同情する事やぶさかではないかと存じます」クレーゼ様に正直な所感を具申いたします。

「しかし、当の本人は剣の道にて身を立てたい様子ですが、出家は…上級に上がってるんですよねぇ…上がってなかったら割と簡単なんですがねぇ…」

「ええ、クレーゼ様のお悩みも我が悩みとして理解のところに存じます」とりあえず清掃を終わらせ、クレーゼ様に来客椅子を勧めます。

「わたくしの先生…先代様のようにはいかぬのですか?」そう、我が教師にして刀の前の所有者、大恩人とすべき先代アルトリーネ様の事例を挙げます。

「ああ、これはアルトくん、知らなかっただろうなー」

「と申しますと…先代様は、普通の出家ではなかったのですか?」

「もちろん。普通の上級女官ないし騎士であれば、何もせねば聖院を出て一年以内に精気枯渇で倒れます。そしてアルトリーネ。今から申し上げる事、朕以外に公言不要です。ジーナ様やクリス様にも不言にて願います」クレーゼ様の自称が朕となった意味を、わたくしは察しました。
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アルトリーネ「久々にクレーゼ様の真面目もうどを拝謁した気がいたします」
クレーゼ「あたくしいつも真面目ですわ!ふうひょうひがいというものですわ!」
マリアリーゼ「クレーゼお母様。なぜアルトにはりせんを授けたか、ジーナ母様にお聞きいただきたく」
クレーゼ「ああ、マリアにまで!…ところでマリアもアルトくんですか…でも、マリアにはまだアルトくんは早いのでは?」
マリアリーゼ「母様。あたくしも背丈をいじれる事をお忘れなきように(ニヤリ)」
アルトリーネ「…あたくしの人生、こんなんばかりなのでしょうか」
クレーゼ「そのようですわね。困難だけに」(はりせんの音)
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